JP2016184699A - 回路基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回路基板は、絶縁性の基板と、前記基板の少なくとも一方の表面に形成されたシード層と、前記シード層の表面に形成され、かつ結晶粒子を含むめっき被膜とを備える。前記シード層の厚みは1μm未満である。前記回路基板の厚み方向の断面を、双晶を1つの結晶とみなして電子線後方散乱回折法による結晶解析したとき、前記基板の前記表面からの距離が1μm〜2μmの範囲にある前記めっき被膜の領域において幅100μm当たりに含まれる粒界の長さの合計の平均が15μm以下である。
【選択図】図1
Description
特許文献2では、回路基板のめっき層を薄くする観点から、絶縁性の基板と、めっき層との間に、導電性粒子を含む導電性インクの塗布層を形成している。
本発明の目的は、回路基板の耐屈曲性を高めることである。
前記シード層の厚みは、1μm未満であり、
前記回路基板の厚み方向の断面を、双晶を1つの結晶とみなして電子線後方散乱回折法(EBSD:Electron Backscatter Difraction)により結晶解析したとき、前記基板の前記表面からの距離が1μm〜2μmの範囲にある前記めっき被膜の領域において、幅100μm当たりに含まれる結晶粒子の粒界の長さの合計の平均が15μm以下である、回路基板に関する。
絶縁性の基板の少なくとも一方の表面に、前記インクを塗布し、熱処理することにより、シード層を形成する第2工程と、
前記シード層の表面にめっき被膜を形成する第3工程と、を含み、
前記第1工程は、
前記金属粒子、分散剤、および分散媒を含む混合物を調製する工程A、および
前記混合物と、バインダとを混合する工程Bを含み、
前記金属粒子の平均粒径D50は、1nm〜500nmである、回路基板の製造方法に関する。
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に係る回路基板は、絶縁性の基板と、基板の少なくとも一方の表面に形成されたシード層と、シード層の表面に形成されためっき被膜とを備える。ここで、シード層の厚みは、1μm未満である。回路基板の厚み方向の断面を、双晶を1つの結晶とみなしてEBSDにより結晶解析したとき、基板の上記表面からの距離が1μm〜2μmの範囲にあるめっき被膜の領域において、幅100μm当たりに含まれる粒界の長さの合計の平均が15μm以下である。
なお、平均粒径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置などにより測定される体積基準の粒度分布におけるメディアン径である。
本発明の実施形態に係る回路基板およびその製造方法について、適宜図面を参照しつつ以下により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
回路基板は、絶縁性の基板と、基板の少なくとも一方の表面に形成されたシード層と、シード層の表面に形成されためっき被膜とを備える。回路基板は、片面基板および両面基板のいずれであってもよい。
絶縁性の基板としては、回路基板用途で使用される公知の基板(リジッド基板、フレキシブル基板、またはこれらの組み合わせ(リジッドフレキシブル基板)など)が使用できる。リジッド基板としては、例えば、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、テフロン(登録商標)基板、セラミックス基板、ガラス基板などが挙げられる。フレキシブル基板としては、ポリマー(絶縁性ポリマーなど)を含むフィルム(またはシート)が例示できる。
基板の厚みは、用途および材質に応じて適宜選択できる。フィルム基板の厚みは、例えば、10μm〜100μm、好ましくは10μm〜50μmである。
シード層は、めっき被膜の下地となる層である。シード層は、基板の一方の表面(または主面)に形成してもよく、両方の表面(または主面)に形成してもよい。また、シード層は、単層構造であってもよく、組成が異なる複数の層を有する多層構造であってもよい。
めっき被膜はシード層の表面に形成され、結晶粒子を含む。本実施形態では、回路基板の厚み方向の断面において、めっき被膜のシード層側領域(基板の表面からの距離が1〜2μmの範囲)の幅100μm当たりに含まれる粒界の長さの合計の平均が15μm以下と短いこと(つまり、小粒子が少ないこと)が重要である。このような特徴により、小粒子とより大きな粒子との間でひずみが生じるのを抑制できる。なお、めっき被膜における粒界の長さおよび結晶粒子の粒径は、回路基板の厚み方向の断面についてのEBSDによる結晶解析で、双晶を1つの結晶とみなして測定することができる。より詳しくは、EBSDによる結晶解析で、粒界を形成する隣り合う結晶粒子の方位ずれを測定し、この方位ずれが双晶特有のずれ量の範囲内であれば、これらの結晶粒子を1つの結晶とみなす。
めっき被膜の厚み(平均厚み)は、回路基板の用途に応じて適宜選択でき、例えば、4〜100μm、好ましくは5〜100μmまたは8〜50μmであってもよい。
図1のように、回路基板は、めっき被膜の表面に形成された保護層をさらに含んでもよい。保護層は、ポリマーを含むことが好ましい。ポリマーとしては、例えば、基板について例示したポリマーの他、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂が好ましい。
パターン状に形成されためっき被膜(およびシード層)の隙間、および/またはめっき被膜と保護層との間には、接着剤を配置することができる。このような接着剤としては、回路基板に使用される公知の接着剤(または封止剤)、例えば、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、および/またはポリエステル系接着剤などが使用できる。
本実施形態に係る回路基板は、絶縁性の基板の少なくとも一方の表面にシード層を形成し、シード層の表面にめっき被膜を形成することにより形成される。ただし、めっき被膜が上記の特徴を有するように、シード層におけるひずみを小さくすることが重要である。シード層におけるひずみを小さくする具体的な手法は特に制限されず、シード層中に含まれる結晶粒子の配向性をできるだけ低減できる方法であればよい。例えば、結晶粒子がより均一に分散されたシード層を形成してもよい。
第1工程では、金属粒子を含むインクを調製する。金属粒子は、既述のように、金属ナノ粒子を含むことが好ましい。また、インクは、金属粒子に加え、分散剤、バインダおよび/または分散媒を含むことが好ましい。
分散剤としては、カチオン性の分散剤が好ましく用いられる。カチオン性分散剤としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI:Polyethyleneimine)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのカチオン性の高分子分散剤(アミノ基および/または第4級アンモニウム塩基などを有する高分子分散剤など)が好ましい。分散剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。高分子分散剤の重量平均分子量は、特に制限されないが、例えば、300〜10,000または500〜2,000であってもよい。中でも、PEI(重量平均分子量が500〜2,000のPEIなど)が好ましい。PEIのアミン価は、PEIの固形分1g当たり、例えば、15mmol〜25mmolであり、好ましくは18mmol〜22mmolである。
金属粒子と、分散剤と、分散媒との混合順序は特に制限されず、これらの成分を一度に混合してもよく、一部の成分を予め混合し、残りの成分を添加してさらに混合してもよい。例えば、金属粒子の分散性を高める観点から、金属粒子と分散媒の一部とを予め混合し、この混合物に分散剤と残りの分散媒とを添加して、さらに混合してもよい。
混合は、金属粒子が混合物中に十分に分散するまで行われる。工程Aにおける混合時間は、装置および/または材料の量などに応じて適宜選択でき、例えば、1時間〜10時間、好ましくは1.5時間〜5時間であってもよい。材料を複数の段階を経て混合する場合には、各段階の混合時間の合計がこのような範囲となるように調整してもよい。例えば、金属粒子と分散媒の一部とを0.5時間〜7時間(または0.5時間〜3時間)混合し、次いでこの混合物に分散剤と残りの分散媒とを添加して、さらに0.5時間〜3時間(または0.5時間〜2時間)混合してもよい。
工程Bでは、工程Aで得られた混合物に、バインダを添加して混合することで、インクを調製する。バインダは一度に全量を添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。
バインダは、必要に応じて、媒体に分散または溶解させて混合物に添加してもよい。媒体としては、上記で分散媒として例示したものから適宜選択できる。
混合は、公知の装置、例えば、ニーダー、ミキサー、および/またはホモジナイザーなどを用いて行うことができる。
第2工程では、絶縁性の基板の少なくとも一方の表面にインクを塗布し、熱処理することにより、シード層を形成することが好ましい。
インクの塗布は、公知の塗布方法、例えば、スピンコート、スプレーコート、バーコート、ダイコート、スリットコート、ロールコート、ディップコートなどにより行うことができる。また、インクの塗布は、スクリーン印刷などにより行ってもよい。
第3工程では、シード層の表面にめっき被膜を形成する。めっき被膜は、公知の方法で行うことができる。めっき被膜は、無電解めっきにより形成してもよいが、より均質なめっき被膜を形成する観点からは、電解めっきにより形成することが好ましい。
(1)シード層用のインクの調製
Cu粉末(D50=80nm、D90=160nm)に純水(分散媒)を添加し、ミキサー(自転および公転型ミキサー、回転数200rpm)で脱泡しながら2時間かけて混合した。純水は、Cu粉末100体積部に対して100体積部の割合で混合した。
得られた混合物に、Cu粉末100体積部に対して、50体積部の割合の純水(分散媒)と、12体積部のPEI(分散剤)とを添加し、ミキサーの回転数200rpmでさらに1時間かけて混合した。
得られたインクを、ポリイミドフィルム(基板、厚み25μm)の一方の表面に、バーコーターを用いて塗布し、大気中、60℃で30分乾燥した。乾燥物を、窒素雰囲気中、300℃で1時間かけて熱処理することにより、基板上にシード層(厚み0.4μm)を形成した。
ドライフィルムレジストを貼り付けたシード層の表面に、所定パターンのフォトマスクを配置し、約120mJ/cm2の露光量で紫外線露光を行った。ついで、10質量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、未露光部分を溶解させて除去することによりフォトレジストパターンを形成した。なお、フォトマスクとしては、幅60μmのスリットが100μmのピッチで形成されたガラスフォトマスクを用いた。
めっき浴の組成:硫酸銅五水和物100g/L、硫酸180g/L、塩素50mg/L、添加剤(RF−MU((株)JCU製)10mL/L、RF−B((株)JCU製)0.75mL/L)
電流密度:1.5A/dm2×38分(めっき初期電流密度:0.175A/dm2×10分)
めっき浴温度:25℃
アノード:溶解性アノード
次いで、エポキシ樹脂を含む封止剤を、めっき被膜側の表面に塗布し、ポリイミドフィルム(厚み25μm)をめっき被膜の表面に貼り付けて、保護層を形成した。このようにして、回路基板を作製した。
(a)耐屈曲性の評価(MIT試験)
JIS P8115に準拠して、下記の条件で回路基板を回路パターンに断線が起こるまで繰り返し曲げ伸ばしすることで耐屈曲性を評価した。断線は、回路パターンの導通検出により確認した。断線が検知されたときの曲げ回数を耐屈曲性の指標とした。
回路基板の曲げ角度:135°
曲げ速度:90rpm
チャックのR:0.38mm
荷重:500g
上記MIT試験後の回路基板について、非屈曲部の断面が確認できるように、回路基板を厚み方向にカットし、エポキシ樹脂で断面を包埋し、次いで断面をポリッシャー(JEOL製、クロスセクションポリッシャ(登録商標))で研磨した。このようにして結晶解析用のサンプルを作製した。
加速電圧:15kV
照射電流:1.8nA(絞り:直径60μm、直流大電流:ON)
EBSD:Exp:Long0.05s、Binning:4×4、WD:15mm、Tilt:70°、BKD:Capture
シード層のCu結晶粒子の粒径は、Grainマップの非屈曲部の所定の範囲において、任意に選択した粒子(100個)の断面について、粒子と同じ面積を有する相当円の直径として算出したところ、1nm〜500nmの粒径を有する粒子の割合は個数基準で60%以上であった。
ポリイミドフィルム(基板、厚み25μm)の一方の表面に、Cuを0.4μmの厚みでスパッタリングすることによりシード層(銅箔)を形成する以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製した。得られた回路基板を用いて実施例1に準じて評価を行った。
下記の手順で調製したシード層用のインクを用いる以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製し、耐屈曲性を評価し、EBSDによる結晶解析を行った。
Cu粉末(D50=80nm、D90=160nm)に純水(分散媒)を添加し、ミキサー(自転および公転型ミキサー、回転数200rpm)で脱泡しながら2時間かけて混合した。純水は、Cu粉末100体積部に対して100体積部の割合で混合した。
得られた混合物に、Cu粉末100体積部に対して12体積部の割合のPEI(分散剤)を添加し、ミキサーの回転数200rpmでさらに8時間かけて混合した。このようにして、シード層用のCu粉末を含むインクを調製した。
下記の手順で調製したシード層用のインクを用いる以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製し、耐屈曲性を評価し、EBSDによる結晶解析を行った。
Cu粉末(D50=80nm、D90=160nm)に純水(分散媒)を添加し、ミキサー(自転および公転型ミキサー、回転数200rpm)で脱泡しながら2時間かけて混合した。純水は、Cu粉末100体積部に対して100体積部の割合で混合した。
実施例および比較例の結果を表1に示す。実施例1はA1、比較例1〜3はB1〜B3である。
実施例1および比較例1の回路基板の断面(非摺動部)のEBSDのGrainマップをそれぞれ図2および図3に示す。図3に示されるように、比較例1では、めっき被膜のシード層側領域において、小粒子が多く形成されており、粒界の長さの合計が大きくなっている。これに対し、実施例1では、シード層側領域には小粒子は極めて少なくなっており、粒界の長さの合計が短い。また、めっき被膜における大粒子の割合が多い。よって、実施例1では、結晶粒子の粒径のばらつきが小さいと言える。
2:絶縁性の基板(ポリイミドフィルム)
3:シード層
4:めっき被膜
5:保護層
6:接着剤(または封止剤)
Claims (9)
- 絶縁性の基板と、前記基板の少なくとも一方の表面に形成されたシード層と、前記シード層の表面に形成されためっき被膜とを備える回路基板であって、
前記シード層の厚みは、1μm未満であり、
前記回路基板の厚み方向の断面を、双晶を1つの結晶とみなして電子線後方散乱回折法により結晶解析したとき、前記基板の前記表面からの距離が1μm〜2μmの範囲にある前記めっき被膜の領域において、幅100μm当たりに含まれる結晶粒子の粒界の長さの合計の平均が15μm以下である、回路基板。 - 前記粒界の長さの合計の平均が8μm以下である、請求項1に記載の回路基板。
- 個数基準で、前記シード層に含まれる結晶粒子の60%以上が、1nm〜500nmの粒径を有する、請求項1または請求項2に記載の回路基板。
- 前記シード層は、金属粒子を含むインクを用いて形成された被膜であり、
前記金属粒子の平均粒径D50は、1nm〜500nmである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回路基板。 - 前記基板は、耐熱性樹脂を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の回路基板。
- 前記基板は、ポリイミド樹脂を含むフィルムである、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の回路基板。
- 金属粒子を含むインクを調製する第1工程と、
絶縁性の基板の少なくとも一方の表面に、前記インクを塗布し、熱処理することにより、シード層を形成する第2工程と、
前記シード層の表面にめっき被膜を形成する第3工程と、を含み、
前記第1工程は、
前記金属粒子、分散剤、および分散媒を含む混合物を調製する工程A、および
前記混合物と、バインダとを混合する工程Bを含み、
前記金属粒子の平均粒径D50は、1nm〜500nmである、回路基板の製造方法。 - 前記分散剤は、カチオン性であり、
前記バインダは、非イオン性のポリマーバインダである、請求項7に記載の回路基板の製造方法。 - 前記分散剤の量は、前記金属粒子100体積部に対して、5体積部〜20体積部であり、
前記バインダの量は、前記金属粒子100体積部に対して、8体積部〜25体積部である、請求項7または請求項8に記載の回路基板の製造方法。
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