JP2016179921A - 無機系アンカー材料及び該アンカー材料を用いたアンカー筋の定着方法 - Google Patents
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Abstract
高温度の環境下においても超速硬セメントを用いたアンカー材料のコンクリート構造物との付着強度を良好に維持することができる、超速硬セメントを用いた無機系アンカー材料及び該材料を用いたアンカー筋の定着方法を提供する。
【解決手段】
無機系アンカー材料は、超速硬セメント、シリカフューム、リチウム塩と骨材を主成分とする粉体と水とを含有し、前記超速硬セメント100質量部に対して、シリカフュームを0.5~5.0質量部、リチウム塩を0.5〜5.0質量部含有する無機系アンカー材料であり、20℃及び80℃におけるアンカー筋の付着強度が、JCAAの「あと施工アンカー試験方法」に準拠して測定して20N/mm2以上の付着強度を有する。
【選択図】 なし
Description
かかる建築・土木構造物であるコンクリート構造物に設けられた孔に注入するアンカーとしては、無機系アンカーと有機系アンカーとに大別することができ、また施工形態として、カプセルタイプと注入タイプとがある。
更に、火災等の影響を考慮した場合、アンカー筋の有効埋め込み長さを十分に確保しなければならない必要があり、耐熱性を有する箇所へ使用するアンカーは、埋め込み長さの大きな施工が可能な注入式アンカーが好ましく用いられている。
普通ポルトランドセメントを用いたアンカー材料よりも、アンカー筋の付着強度は5〜10N/mm2程度高いが、エトリンガイトを多量に発生する超速硬セメントを用いた場合には、高温度環境下においては、エトリンガイトの脱水・分解により、アンカー筋の付着強度が低下してしまうという問題があった。
また、本発明の他の目的は、本発明の超速硬セメントを用いた無機系アンカー材料を用いて、アンカー筋を簡易に且つ有効に定着することができる、アンカー筋の定着方法を提供することである。
また、本発明の無機系アンカー材料は、凝結時間が短く、現場でのアンカー筋の定着施工性に優れ、更に、高い圧縮強度を維持することができる。
また本発明のアンカー筋の定着方法は、コンクリート構造物の穿孔に充填した該無機系アンカーが垂れることなく、効率よく少量の無機系アンカーで簡単に施工することができ、定着されたアンカー筋は、耐熱性に優れることができる。
また、特に、無機系アンカー用カートリッジを用いることで、無機系アンカーの撹拌混合作業と充填作業を同一の容器で行うこともでき、撹拌混合作業中の粉塵の発生をほぼゼロに抑え、穿孔内充填、特に上向き穿孔充填を簡便に行うことができる。
本発明の無機系アンカー材料は、超速硬セメント、シリカフューム、リチウム塩、骨材を主成分とする粉体と水とを含有し、前記超速硬セメント100質量部に対して、シリカフュームを0.5〜5.0質量部とリチウム塩を0.5〜5.0質量部を含有する。
本発明に用いるセメントとしては、超速硬セメントが用いられ、例えば、カルシウムフルオロアルミネート(11CaO・7Al2O3・CaF2)を主成分とする、いわゆるジェットセメント、アーウィンを含有してなるアーウィン系セメント、アルミナセメント等を例示することができる。
超速硬セメントを用いることで、現場で、アンカー筋の定着を迅速に実施することが可能となるとともに、得られる圧縮強度に優れることとなる。
本発明において使用できる超速硬セメントしては、特に限定されず、任意の超速硬セメントを適用することができる。
本発明の無機系アンカー材料に用いるシリカフュームとしては、特に限定されず、任意のシリカフュームを用いることができるが、その配合量は、上記超速硬セメント100質量部に対して、0.5〜5.0質量部、好ましは1.0〜2.5質量部である。
リチウム塩としては、例えば、炭酸リチウムや硫酸リチウムが例示され、その粒度については特に限定されないが、その配合量は、上記超速硬セメント100質量部に対して、0.5〜5.0質量部、好ましくは1.0〜2.5質量部である。
かかる範囲で超速硬セメントとシリカフュームとリチウム塩とを組み合わせて用いることにより、超速硬セメントを用いたアンカー材料であっても、高温環境下での付着強度を良好に保持することが可能となる。
細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂等の天然細骨材、再生細骨材、人工細骨材を例示することができる。
細骨材の配合割合は、特に限定されず、現場での所望する要求に応じて、任意に配合することができるが、好適には、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜200質量部が望ましく、細骨材の最大寸法は1.2mmであることが、充填する際のノズルの大きさへの注入適用性を考慮すると望ましい。
具体的には、コンクリート構造物に表面より穿孔し、該穿孔にアンカー筋を挿入して、該アンカー筋の周囲の穿孔に、本発明の無機系アンカー材料を充填して、該材料を硬化させて、アンカー筋を定着させる。
アンカー筋を定着させるための穿孔へのアンカー材料の充填方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができるが、施工性の容易性より、例えば、カートリッジにアンカー材料を充填し、該カートリッジを注入ガンと称される吐出機に取り付けて、ノズルからアンカー材料を穿孔の奥に注入して硬化させる方法を好適に用いることができる。
また、本発明の無機系材料を用いているため、凝結時間が短く、注入したアンカー材料が垂れてくることがなく、迅速にアンカー筋を定着することができる。
特に、穿孔又は削孔は、コンクリートドリル等の乾式で削孔した場合、切りくずの粉塵を清掃して取り除くだけでよいが、コアドリル等の湿式で穿孔する場合には、付着性をより良好とするために、該孔内の水分を除去してから注入することが望ましい。
前記カートリッジの該空洞の容積は、前記充填された粉体と反応する水を、該吐出口を経て導入すべき容量より大きく、前記カートリッジの該ピストン壁は該シリンダの内面と密着する形状であることが好ましい。
本発明の定着方法は、所望する急硬性を現場で得ることができるとともに、耐熱性にも優れ、高強度を保持できるとともに、アンカー筋の付着性を著しく向上させることができる。
(1)原材料
アンカー材料を調製するにあたり、以下の表1に示す各原材料を用いた。
上記表1に示す各原材料を用いて、表2に示す配合比で各原材料を配合して、各アンカー材料を調製した。
具体的には、表2に示すように各セメント100質量部に対して、シリカフューム、硬化促進剤(炭酸リチウム又はソーダ灰)、骨材及び水と、必要に応じて添加される凝結遅延剤とを配合して、ホバートミキサーを用いて均一に混練することにより、アンカー材料を調製した。なお、表1に示す、セメント、シリカフューム、珪砂、硬化促進剤及び凝結遅延剤の各材料からなる粉体1000質量部に対して、水を200質量部の割合で配合した。
(試験例1)充填性
上記実施例及び比較例で得られた各アンカー材料を、市販のシーリングガン用のカートリッジ樹脂製注入器(330mlタイプ :エーディーワイ株式会社)に充填し、前記カートリッジに注入用ノズル(φ12mm)を取付け、コンクリート構造物に穿孔したφ16mmの孔(水平孔)に、カートリッジ注入器のノズルを挿入して、アンカー材料の注入の可否を試験した。
その結果を表3に示す。
なお、以下の評価基準で評価した。
○:カートリッジからの注入が可能
×:カートリッジからの注入が不可のもの
JSCE−G505−2010「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に準拠して圧縮強度試験を実施した。
具体的には、φ50×100mmに各アンカー材料を成形し、20℃、材齢28日における圧縮強度を測定した、
その結果を表3に示す。
鋼管に打設したコンクリートに、φ16mmの穿孔を形成し、各アンカー材料を注入して、全ねじボルトM12(材質SNB7)を定着させて、付着強度試験を実施した。
付着試験におけるアンカー筋等の条件は以下のとおりである。
・アンカー筋:M12
・種類:SNB7
・有効埋め込み長さ:72mm(6da)
・穿孔径:φ16mm
・母材コンクリート:鋼管打ち込みコンクリート(σB=30N/mm2)
アンカー筋である全ねじボルトM12を穿孔内から引き抜く際の最大荷重Aを測定した。
次いで、最大荷重Aと付着面積Bとから付着強度Cを算出した。
その結果を表3に示す。
なお、付着面積B及び付着強度Cは、下記式(1)及び(2)により算出した。
付着面積B=アンカー筋の直径D×π×定着長(埋め込み深さ)L・・・(1)
付着強度C=最大荷重A/付着面積B・・・(2)
20℃の恒温槽に24時間入れた後、次いで80℃の恒温槽に24時間入れて、その後付着強度試験を実施した以外は、試験例3と同様にして付着試験を実施した。
その結果を表3に示す。
JIS A 1147:2001「コンクリートの凝結時間試験方法」に準じて、各アンカー材料の凝結時間を測定した。
その結果を表3に示す。
一方、シリカフュームの含まない比較例1のアンカー材料、炭酸リチウムを含まない比較例2のアンカー材料、炭酸リチウムを含まずソーダ灰を用いた比較例10のアンカー材料は、80℃における付着強度が、所望する20N/mm2となることができず付着性能に劣る。
炭酸リチウムの含有量が本発明の範囲外である比較例3のアンカー材料、シリカフュームの含有量が本発明の範囲外である比較例4のアンカー材料は、混練性が悪く均一な材料を調製することができない。
Claims (3)
- 超速硬セメント、シリカフューム、リチウム塩、骨材を主成分とする粉体と水とを含有し、前記超速硬セメント100質量部に対して、シリカフュームを0.5~5.0質量部、リチウム塩を0.5〜5.0質量部含有することを特徴とする、無機系アンカー材料。
- 請求項1記載の無機系アンカー材料において、20℃及び80℃におけるアンカー筋の付着強度が、JCAAの「あと施工アンカー試験方法」に準拠して測定して20N/mm2以上であることを特徴とする、無機系アンカー材料。
- 請求項1又は2記載の無機系アンカー材料を、カートリッジに内包し、該カートリッジを注入ガンに取り付けて、無機系アンカー材料をコンクリート構造物の穿孔に充填して硬化させて、アンカー筋を固定することを特徴とする、アンカー筋の定着方法。
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