JP6160911B2 - あと施工アンカー工法 - Google Patents
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Description
前記アンカー筋を施工する方法としては、前記コンクリート構造物の表面に所定の深さの円筒形状の孔を形成し、該孔にセメント等を含む充填材を充填し、アンカー筋を前記充填材で固定することでアンカー筋を施工するあと施工アンカー工法が知られている。
例えば、特許文献1及び2には、充填材として膨張材を含むモルタル系の充填材を用い、該充填材を充填後に膨張させて硬化させることで、アンカー筋と充填材との付着強度、及び、充填材とコンクリート構造物に形成された孔の内周面との付着強度を向上させ、アンカー筋の引き抜き強度を向上させることが記載されている。
コンクリート構造物の表面に開口する円筒形状の孔を形成する穿孔工程と、
前記孔に充填材を充填する充填工程と、前記孔にアンカー筋を挿入する挿入工程と
を備えたあと施工アンカー工法であって、
前記孔の開口径から下記式(1)を用いて前記充填材の膨張圧の範囲を算出する工程と、該膨張圧の範囲を満たす前記充填材を形成する工程とを更に備えるあと施工アンカー工法。
0≦Y≦−0.04X+4.7(1)
(但し、X=孔の開口径(mm)、Y=充填材の膨張圧(N/mm2)である。)
開口径が前記範囲である場合には、前記式を満たすような充填材を孔に充填することで、アンカー筋の引き抜き強度をより効果的に向上させることができる。
前記充填材が、無機系充填材である場合には、前記式を満たしやすく、コンクリートとの付着性も良好であるため、より確実にアンカー筋の引き抜き強度を向上させることができる。
前記無機系充填材が速硬性を有するセメントを含んでいる場合には、充填後、短時間で充填材が硬化するためアンカー筋の引き抜き強度を短時間で向上させることができる。
本実施形態のあと施工アンカー工法は、
コンクリート構造物の表面に開口する円筒形状の孔を形成する穿孔工程と、
前記孔にアンカー筋を挿入する挿入工程と、
前記孔に充填材を充填する充填工程とを備えたあと施工アンカー工法であって、
前記充填材は下記式(1)を満たすような膨張圧を有する。
0≦Y≦−0.04X+4.7(1)
(但し、X=孔の開口径(mm)、Y=充填材の膨張圧(N/mm2)である。)
本実施形態のあと施工アンカー工法においては、コンクリート構造物の表面に開口する円筒形状の孔を形成する穿孔工程を実施する。
既設のコンクリート構造物は、耐震性を向上させる目的等で補強工事が行なわれることが多い。
かかるコンクリート構造物の補強工事あるいは増設工事において、コンクリート構造物にまず、アンカー筋を施工し、該アンカー筋を介して補強用あるいは増設用の新設部材がコンクリート構造物に取り付けられる。
かかる孔は一般的にはドリル等の穿孔装置で形成する。従って、前記孔は、開口部が略円形であって、深さ方向に略同断面積の略円筒形状に形成される。
尚、本実施形態において、孔の開口径とは、開口部の内径であって、最も長い箇所の長さとその直交方向の長さとの平均値をいう。
開口径の大きさは特に限定されるものではないが、例えば、10mm以上100mm以下、好ましくは16mm以上50mm以下である。
孔の開口径を前記範囲にした場合には、前記式(1)を満たすような膨張圧を有する充填材を用いてアンカー筋を施工した場合に、アンカー筋の引き抜き強度をより効果的に向上させることができる。
ドリルの中でも、コアドリルは、騒音や粉塵の発生が比較的少ないため、好ましい。
ドリルを用いて孔を形成する場合には、ドリルを所定の径のものを用いることで、孔の開口径を調整することができる。
前記定着長は、アンカー筋の材質、径、長さによって変わるが、通常、5D以上(D=アンカー筋の公称直径を表す)程度である。
前記定着長を確保するために、孔の深さは前記定着長以上であることが好ましい。
本実施形態のあと施工アンカー工法では、前記孔に充填材を充填する充填工程を実施する。
尚、充填工程と挿入工程とは、いずれの工程を先に実施してもよい。例えば、充填工程をまず実施することで、孔に充填材を充填してから、その後挿入工程を実施することで、アンカー筋を孔に挿入してもよい。
或いは、挿入工程をまず実施することで、アンカー筋を前記孔に挿入し、その後充填工程を実施することで、アンカー筋と孔の内周面の間に充填材を充填してもよい。
本実施形態では、まず、充填工程を実施する。
かかる充填材としては、エポキシ樹脂等の有機化合物を主成分として含む有機系充填材、セメント、膨張材、混和材、細骨材等の無機化合物を主成分として含む無機系充填材が挙げられるが、コンクリートとの接着性(一体性)が良好であること、不燃性材質であること等の理由から、無機系充填材が好ましい。
前記無機系充填材の中でも、セメントを含むセメント系充填材が好ましく、さらには、速硬性セメントを含む充填材であることが好ましい。
前記速硬性セメントとしては、例えば、ポルトランドセメントと急硬材とを含有するセメント、アルミナセメント、超速硬セメント等が挙げられる。
超速硬セメントとしては、「ジェットセメント(住友大阪セメント社製)」、「マイルドジェットセメント(住友大阪セメント社製)」等が例示される。
前記膨張圧は、JCI基準 JCI−S−009−2012『円筒型枠を用いた膨張コンクリートの拘束膨張試験方法』で算出される円周方向の膨張応力(N/mm2)をいう。
膨張材としては、カルシウムサルホアルミネート系膨張材、生石灰系膨張材等が挙げられる。中でも、カルシウムサルホアルミネート系膨張材が単位量あたりの膨張量の大きさの観点から好ましい。
すなわち、開口径が大きくなるほど、充填材が膨張した際に、該充填材を周方向から拘束する力が小さくなる。さらに、開口径が大きくなるほど、充填材がコンクリートと接触する面積の割合は単位体積当たりでは小さくなり、コンクリートとの接触面による摩擦で充填材が上方へ向かって膨張していくのを抑制する力は弱くなる。充填材が上方に膨張しやすくなれば、充填材を周方向から拘束する力が小さくなる。
従って、孔の開口径と充填材の膨張圧との関係を特定の範囲に調整することで、充填材が膨張することでアンカー筋に対して周方向から拘束する力を効果的に発生させ、アンカー筋の引き抜き強度を向上させることができる。
セメント成分30質量%〜60質量%、好ましくは40質量%〜55質量%、
細骨材40質量%〜70質量%、好ましくは45質量%〜60質量%、
水/セメント成分比30%〜60%、好ましくは35%〜55%、
のモルタルにおいて、膨張材は0.5質量%〜20質量%、好ましくは1質量%〜12質量%程度含まれている充填材等が挙げられる。
膨張材の含有量が前記範囲である場合には、適度な膨張性が得られ、前記式(1)を満たす充填材が得られやすいと同時に、過剰に膨張材が含まれることによって充填材の強度が低下することを防止できる。
混和材としては、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、石膏、等が挙げられる。添加剤としては、例えば、AE剤、減水剤、AE減水剤、流動化剤、増粘剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、急結剤、収縮低減剤、短繊維、消泡剤、起泡剤、発泡剤、防水剤等が挙げられる。
前記混和材、添加剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
前記孔にアンカー筋を挿入する挿入工程を実施する。
本実施形態では、前記充填工程を実施した後に、充填材が完全に硬化するまでの間にアンカー筋を充填材が充填された部分の所定位置に挿入する。
また、アンカー筋の径としては、例えば、8mm以上50mm以下、好ましくは12mm以上30mm以下である。尚、本実施形態で用いられるアンカー筋の径とは、JIS B 0205『一般用メートルねじ』およびJIS G 3112『鉄筋コンクリート用棒鋼』で規定する呼び径をいう。
尚、充填材を硬化させる条件は、特に限定されるものではないが、例えば、速硬性セメントを用いたモルタルを充填材として用いた場合には、5℃〜30℃の大気環境下で、10分〜60分程度で硬化させることが挙げられる。
例えば、アンカー筋の引き抜き強度は、24N/mm2以上、好ましくは25N/mm2以上であることが、補修部材あるいは増設部材の引き抜き強度の観点から好ましい。
本実施形態のあと施工アンカー工法においては、孔の開口径が異なる場合でも、アンカー筋の引き抜き強度を前記範囲にすることが容易に行なえる。
開口径が比較的大きい孔にアンカー筋を施工する場合には、充填材の膨張圧を高くすることが必要であるが、膨張圧が高すぎる充填材は強度が低下したり、膨張により孔内で充填材が上方へ膨張しやすくなり、周方向からのアンカー筋への拘束力が低下したりするおそれがある。
充填材が前記式(1)を満たすことで、開口径が比較的大きい孔にアンカー筋を挿入して施工する場合でも、アンカー筋のコンクリート構造物への引き抜き強度を効果的に向上させることができる。
充填材の作製方法は、20℃の温度条件下で、プレミクス材料に注水し、ミキサーで1分間混練した。
前記充填材1〜7についてそれぞれ膨張圧を測定した。
膨張圧は、JCI基準 JCI−S−009−2012『円筒型枠を用いた膨張コンクリートの拘束膨張試験方法』に従って円周方向の膨張応力(N/mm2)を算出した。
尚、ひずみ測定器は、株式会社東京測器研究所社製のひずみゲージPFL-30-11-3LTとデータロガーTDS530を用いた。
コンクリート硬化体の各成分は以下のとおりである。
アンカー筋として、M12 SNB7及びM24 SNB7の2種類を準備した。
該孔に、前記充填材1〜7をそれぞれ充填し、アンカー筋を挿入した。
その後、7日間、20℃で養生して、充填材を硬化させた。
尚、アンカー筋の定着長は6.5Dであった。
各開口径18mm、35mm、50mm、85mmにおいて、前記式(1)から算出される充填材の膨張圧の範囲を表2に示した。
前記コンクリート硬化体に施工したアンカー筋の引き抜き強度を測定した。
引き抜き強度は、センターホールジャッキを用いて測定した。
評価は引き抜き強度が24N/mm2以上のものを○とし、24N/mm2未満のものを×とした。
結果を表2に示す。
特に、開口径が大きくなると、充填材の膨張圧が高くても各開口径に対する膨張圧の範囲からはずれると、アンカー筋の引き抜き強度を24N/mm2以上にすることはできないことが明らかである。
Claims (5)
- コンクリート構造物の表面に開口する円筒形状の孔を形成する穿孔工程と、
前記孔に充填材を充填する充填工程と、前記孔にアンカー筋を挿入する挿入工程と
を備えたあと施工アンカー工法であって、
前記孔の開口径から下記式(1)を用いて前記充填材の膨張圧の範囲を算出する工程と、該膨張圧の範囲を満たす前記充填材を形成する工程とを更に備えるあと施工アンカー工法。
0≦Y≦−0.04X+4.7(1)
(但し、X=孔の開口径(mm)、Y=充填材の膨張圧(N/mm2)である。) - 前記孔は、開口径が10mm以上100mm以下である請求項1に記載のあと施工アンカー工法。
- 前記孔は、開口径が18mm以上85mm以下である請求項1に記載のあと施工アンカー工法。
- 前記充填材は、無機系充填材である請求項1乃至3の何れか一項に記載のあと施工アンカー工法。
- 前記無機系充填材は、速硬性を有するセメントを含む請求項4に記載のあと施工アンカー工法。
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