JP4983111B2 - セメント組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、劣化した道路、トンネル、橋梁等の各種コンクリート構造物の表面および断面の補修において、補修箇所に型枠を設けて、流動性に優れたグラウト材を流し込み施工および/または注入施工する補修工法及びその工法に使用されるグラウトに関する。
近年、コンクリート片の落下やコンクリートの塩害等のコンクリート構造物の劣化が報告され、維持・補修への対応がクローズアップされており、さまざまな補修材料や補修方法が提案・実施されている。
劣化したコンクリート構造物の表面補修について特許文献1には、ウォータージェットにより、劣化したコンクリート部分を除去し、その後、繊維を含み収縮率が500マイクロストレーン以下のモルタル組成物でその除去した部分を埋めるコンクリート構造物の補修方法が開示されている。
高強度セメント硬化体の初期ひび割れ防止方法として特許文献2には、炭素繊維、耐アルカリ繊維、ポリプロピレン繊維など、引張強度が70kg/mm以上の短繊維を含有させた、初期ひび割れが発生せず、美観に優れた耐久性のある高強度セメント硬化体が開示されている。
特許第3541023号公報 特開昭64−69541号公報
本発明は、劣化した各種コンクリート構造物の表面および断面の補修において、補修部に型枠を設けてグラウトを流し込み施工する及び/又は注入施工する補修工法に好適に使用される、流動性に優れかつコンクリートとの付着強度に優れたコンクリート補修用のグラウトを提供することを目的とする。
本発明者は、ポルトランドセメント、細骨材、有機系短繊維、無機系膨張材、金属系膨張材、再乳化形粉末樹脂、消泡剤、増粘剤、流動化剤を用い、収縮低減材を用いることなく高強度で長さ変化率が小さい硬化体が得られ、さらに硬化体とコンクリート補修部分との間で高い付着強度を得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポルトランドセメント、細骨材、有機系短繊維、無機系膨張材、再乳化形粉末樹脂、消泡剤、金属系膨張材、増粘剤及び流動化剤を含み、
ポルトランドセメント100質量部に対し、細骨材の含有割合が120〜180質量部、繊維径が0.1〜0.3mmでかつ繊維長が9〜16mmの有機系短繊維の含有割合が0.2〜0.8質量部、無機系膨張材の含有割合が4〜15質量部、再乳化形粉末樹脂の含有割合が4〜15質量部、消泡剤の含有割合が0.05〜1.2質量部であることを特徴とするセメント組成物である。
本発明のセメント組成物の好ましい態様を示し、これらは複数組み合わせることが出来る。
1)消泡剤がポリエーテル系消泡剤であること。
2)金属系膨張材の含有割合が0.0001〜0.01質量部であること。
3)セメント組成物100質量部と水8〜30質量部とを混練して得られるグラウトであること。
4)セメント組成物100質量部と水8〜30質量部とを混練して得られるグラウトが硬化して得られる硬化体であること。
5)コンクリート構造物の表面および断面の補修において、補修箇所部分を除去したのちに型枠を設置し、補修箇所と型枠の隙間部分にグラウトを流し込む及び/又は注入することを特徴とする補修工法であること。
本発明のセメント組成物は、特定の繊維長と繊維径を有する有機系短繊維を用い、再乳化形粉末樹脂と消泡剤とを組合わせて用い、さらに無機系膨張材と金属系膨張材とを配合することにより、収縮低減材を用いることなく、流動性に優れたグラウトおよびコンクリート補修部分との付着強度が高く、圧縮強度特性に優れ、さらに寸法安定性に優れたグラウト硬化体を提供するものである。
本発明のセメント組成物は、土木建築分野のコンクリート構造物の補修工事で広く利用でき、特にコンクリートの補修部に型枠を設け、グラウトを流し込み施工する補修工法及び/又は注入施工する補修工法に好適に使用できる。
本発明のセメント組成物は、ポルトランドセメント100質量部に対し、細骨材を好ましくは120〜180質量部、さらに好ましくは125〜175質量部、より好ましくは130〜170質量部、特に好ましくは135〜165質量部を含むものである。
本発明で用いるポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、等を用いることができる。
特に、建設工期の短縮のために短期間に良好な強度発現を必要とする場合には、早強ポルトランドセメントや超早強ポルトランドセメントを用いるのが好ましい。
本発明に係る細骨材は、珪砂、川砂、海砂、山砂、陸砂などの砂類が使用できる。
細骨材の粒度は、3.5mm以下のものを用いることが好ましく、細骨材100質量%中に、粒径0.15〜2mmの細骨材が好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%であり、特に好ましくは90質量%以上含むものを用いることが好ましい。
また、細骨材としては、粒度分布の異なる細骨材を2種以上混ぜ合わせて用いることができ、5号珪砂、6号珪砂及び7号珪砂など、5号珪砂と5号珪砂より粒度の小さな珪砂などの骨材との混合物などを好ましく用いることができる。
本発明のセメント組成物では、セメント組成物に水を加えて得られるグラウトが、流し込み施工及び/又は注入施工に適した流動性を有するように、繊維径と繊維長が特定の範囲の有機系短繊維を使用して適正量を添加する。また、有機系短繊維は、グラウト硬化体の靭性を向上させる効果も併せ持つ。
有機系短繊維の好ましい例は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ポリスチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ビニロン繊維等のポリビニルアルコール繊維が用いることができ、特にポリビニルアルコール繊維が好適に用いられる。
有機系短繊維の繊維径は、グラウトの粘性を適正な範囲に保つため、0.1mm〜0.3mmが好ましく、さらに0.13mm〜0.27mmが好ましく、特に0.15mm〜0.25mmが好ましい。
有機系短繊維の繊維長は、グラウト中に良好に分散させることができ、安定した流動性が得られ、また、グラウト硬化体の靭性の向上効果を得るために、9mm〜16mmが好ましく、さらに9.5mm〜15mmが好ましく、特に10mm〜14mmが好ましい。
有機系短繊維の繊維長が9mm未満では、フロー値の低下が顕著となり、さらに曲げ強度の低下も大きくなる。繊維長が15mmを超えると、グラウトの粘性が大きくなり、Jロート流下時間が増加するだけでなく、硬化体の長さ変化が大きくなることから好ましくない。
有機系短繊維の添加量は、良好な施工性が得られる粘性を持ったグラウトが得られ、良好な靭性を有するグラウト硬化体を得るために、ポルトランドセメント100質量部に対して好ましくは0.2〜0.8質量部、さらに好ましくは0.3〜0.75質量部、特に好ましくは0.4〜0.7質量部を添加する。
特に、有機系短繊維の添加量が、0.8質量部を超えるとグラウト硬化体の長さ変化が顕著になり、硬化体の曲げ強度の低下やコンクリートと付着強度が低下するため好ましくない。
本発明に係る膨張材は、セメント組成物の硬化過程に起こる体積変化を補償するものであり、特に金属系膨張材と石灰系膨張材とを併用して用いることで、コンクリート補修部分とグラウト硬化体の密着性が向上して、高い付着強度が得られる。
膨張材としては、アルミニウム粉、鉄粉等の金属系膨張材、カルシウムサルフォアルミネート系、石灰系などの無機系膨張材などを使用することが好ましい。
金属系膨張材としては、比重が小さく反応性が高いことから、アルミニウム粉の使用が特に好ましい。アルミニウム粉は、JIS・K−5906「塗装用アルミニウム粉」の第2種に準ずるものが好適に使用できる。
金属系膨張材の添加量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは0.0001〜0.01質量部、さらに好ましくは0.0003〜0.005質量部、より好ましくは0.0005〜0.004質量部、特に0.001〜0.003質量部の範囲で用いることが好ましい。
無機系膨張材は、カルシウムサルフォアルミネート系としてはアウイン、石灰系としては生石灰、生石灰−石膏系、石灰−エトリンガイト系、仮焼ドロマイト等が好適に用いられ、これらから選ばれた少なくとも1種を使用できる。
特に、石灰−エトリンガイト系の膨張材を用いた場合、グラウト硬化体の寸法変化が際立って小さく、コンクリートとの付着強度においても特に優れた特性を示すことから特に好ましい。
無機系膨張材の添加量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは4〜15質量部、さらに好ましくは4.5〜13質量部、より好ましくは5.5〜12質量部、特に6〜10質量部を用いることが好ましい。
無機系膨張材の添加量が、4質量部未満の場合、コンクリートとの付着強度が充分に得られないばかりでなく、硬化体の長さ変化率が大きくなるため好ましくない。また、16質量部以上では、硬化体の膨張が著しくなり好ましくない。
本発明では、再乳化形粉末樹脂と消泡剤とを併せて用いることにより、高い圧縮強度のグラウト硬化体が得られるとともに、その硬化体とコンクリート補修箇所の表面との間で高い付着強度が得られる。
本発明に係る再乳化形粉末樹脂は、屋外利用における耐久性上好ましいものとして、ポリアクリル酸エステル樹脂系、スチレンブタジエン合成ゴム系、又は酢酸ビニルベオバアクリル共重合系のものが使用することができ、これらを予めセメント等と混合しておくことで、施工現場で水を加えるだけでポリマーディスバージョンを用いた場合より、より分散性を高く、硬化後のコンクリートとの付着強度の高い硬化体が得られる。
再乳化形粉末樹脂は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは4〜15質量部、さらに好ましくは4.5〜13.5質量部、より好ましくは5〜12質量部、特に6〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。
再乳化形粉末樹脂の割合が、上記範囲より大きい場合、水を加えて得られるグラウトの粘度が高くなり施工性が低下するとともに、硬化体の圧縮強度の低下が顕著になるとめ好ましくなく、また、上記範囲より小さい場合には、コンクリート補修部分との付着強度が充分に得られず、硬化体の長さ変化も大きくなり好ましくない。
本発明に係る消泡剤は、硬化後のグラウト硬化体の組織を緻密化して、コンクリート補修部分との付着強度を向上させるとともに、グラウト硬化体の外側表面の状態を密実にして、炭酸化などに対する耐候性を向上させる効果がある。
消泡剤には、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系などの合成物質、石油精製由来の鉱物油系又は植物由来の天然物質など、公知のものを用いることが出来る。特にポリエーテル系の消泡剤を好適に用いることができる。
消泡剤の添加量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは0.05〜1.2質量部、さらに好ましくは0.1〜1.0質量部、より好ましくは0.15〜0.9質量部、特に0.2〜0.8質量部含むことが好ましい。
消泡剤が上記範囲に満たない場合、コンクリートとの付着強度が低く、さらに硬化体の収縮が大きくなるため好ましくない。また、上記範囲を超えて消泡剤を添加した場合、硬化体の長さ変化が増加するため好ましくない。
再乳化形粉末樹脂と消泡剤とをそれぞれ上記範囲で添加すると、グラウト硬化体とコンクリート補修部分との付着強度の向上効果が更に大きくなり、また高い圧縮強度の硬化体が得られることから好ましい。
本発明に係る増粘剤は、グラウトの粘性と流動性を調整し、材料分離を抑制しつつ適正な施工性を確保するために添加することが好ましい。
増粘剤には、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、及び水溶性ポリマー系などを用いることが出来、特にメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系などを用いることが好ましい。
増粘剤の添加量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.005〜1質量部、特に0.0075〜0.5質量部の範囲が好ましい。増粘剤の添加量が上記範囲を超えると、流動性の低下を招く恐れがある。
本発明に係る流動化剤は、材料分離を抑制しつつ適度な流動性を確保し、硬化体の強度を高め、且つ、乾燥収縮を低減させるために、減水効果を合わせ持つ流動化剤を添加することが好ましい。
流動化剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリエーテル系、ポリカルボン酸系、ポリカルボン酸ポリエーテル系等、市販のものが、その種類を問わず使用できる。
流動化剤は、ポルトランドセメント100質量部に対し、0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜4質量部、特に好ましくは0.05〜3質量部の範囲で使用する。
本発明のセメント組成物は、水の添加量を調整することにより、グラウトの流動性、可使時間、材料分離抵抗性などの性状を調整することができる。
水の添加量は、本発明の流動特性および強度特性を損なわない範囲で添加でき、ポルトランドセメント100質量部に対し、好ましくは8〜30質量部、さらに好ましくは10〜25質量部、より好ましくは12〜22質量部、特に好ましくは14〜20質量部の範囲で添加することが好ましい。
本発明のセメント組成物は、水と混練して
1)Jロート流下値が、充填性を損なわないために、好ましくは20秒以下、さらに好ましくは18秒以下、より好ましくは16秒以下、特に好ましくは15秒以下であり、
また、Jロート流下値の下限は、材料分離抵抗性を損なわないために、好ましくは5秒以上、さらに好ましくは7秒以上、特に好ましくは8秒以上であり、
2)モルタルフロー値が、より確実な充填性のために好ましくは280mm以上、さらに好ましくは300mm以上のポリマーセメントモルタルを得ることができる。
本発明のセメント組成物は、水と混練して気中養生により得られたグラウト硬化体の圧縮強度が、材齢28日で好ましくは44N/mm以上、さらに好ましくは46N/mm以上、より好ましくは48N/mm以上、特に好ましくは50N/mm以上の硬化物を得ることができる。
本発明のセメント組成物は、水と混練して気中養生により得られたグラウト硬化体の曲げ強度が、材齢28日で好ましくは9N/mm以上、さらに好ましくは9.5N/mm以上、より好ましくは10N/mm以上、特に好ましくは10.5N/mm以上の硬化物を得ることができる。
本発明のセメント組成物は、水と混練して水中養生により得られたグラウト硬化体の圧縮強度が、材齢28日で好ましくは40N/mm以上、さらに好ましくは45N/mm以上、より好ましくは48N/mm以上、特に好ましくは50N/mm以上の硬化物を得ることができる。
本発明のセメント組成物は、水と混練して水中養生により得られたグラウト硬化体の曲げ強度が、材齢28日で好ましくは7.5N/mm以上、さらに好ましくは7.7N/mm以上、より好ましくは7.9N/mm以上、特に好ましくは8N/mm以上の硬化物を得ることができる。
本発明のセメント組成物は、水と混練して湿空養生により得られたグラウト硬化体のモルタル板との付着強度においては、材齢28日で好ましくは1.8N/mm以上、さらに好ましくは2.0N/mm以上、より好ましくは2.2N/mm以上、特に好ましくは2.5N/mm以上の硬化物を得ることができる。
本発明のセメント組成物は、水と混練して得られるグラウト硬化体の長さ変化率が、材齢28日で好ましくは−0.15〜0%であり、さらに好ましくは−0.12〜0%、より好ましくは−0.1〜0%、特に好ましくは−0.06〜0%の範囲にある硬化体を得ることができる。
本発明のセメント組成物は、流動性に優れたグラウト、および、コンクリート補修部分との付着強度が高く、圧縮強度発現に優れたグラウト硬化体を得ることができ、土木建築分野のコンクリート構造物の補修工事で広く利用でき、特に補修部に型枠を設けてグラウトを流し込み施工する及び/又は注入施工する補修工法に好適に使用できる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
(特性の評価方法)
1)Jロート(秒):
土木学会充てんモルタル試験方法(案)(JSCE・F542−1993) J14ロートによる流下値を示す。
2)フロー値(mm):
JIS R 5201のフロー試験に定めるフローコーンを用いて,厚さ5mm以上の磨き板ガラスの上で練り混ぜたグラウトをJIS R 5201に示されている方法によって充填した後、直ちにフローコーンを上方に引き上げる。広がりが静止した後、最大と認める方向とこれに直角となる方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とする。
3)付着強度(N/mm):
JHS416「断面修復材品質規格試験方法」(以下、JHS416規格という)のコンクリートとの付着性試験方法に準じ、24時間水中に浸漬したモルタル板表面に厚さ1cm充填施工し、温度20±2℃、湿度85%以上で28日間養生を行った試験体を用いて、接着強度を建研式引張試験機で測定する。
4)気中養生圧縮強度、曲げ強度(N/mm):
JHS416規格の圧縮強度試験方法に準じ、JIS R 5201に示すモルタル供試体成形用型を用いて成形後、温度20±2℃、湿度65±5%で28日間養生を行った40×40×160mm試験体を用いて、圧縮強度をJIS R 5201圧縮強さ試験機で測定し、曲げ強度をJIS R 5201曲げ強さ試験機で測定する。
5)水中養生圧縮強度、曲げ強度(N/mm):
JIS R 5201に示すモルタル供試体成形用型を用いて成形後2日間、温度20±2℃、湿度65±5%で養生した後、脱型した試験体を水温20±2℃で28日間水中養生を行った40×40×160mm試験体を用いて、圧縮強度をJIS R 5201圧縮強さ試験機で測定し、曲げ強度をJIS R 5201曲げ強さ試験機で測定する。
6)長さ変化(%):
JHS416規格の硬化収縮性試験方法に準じ、ゲージプラグ付金型を用いて成形後2日間、温度20±2℃、湿度65±5%で養生した後脱型した試験体を用い、JIS A 1129−3に示すダイヤルゲージ方法(以下、ダイヤルゲージ方法という)で脱型後の基長を測定し、更に温度20±2℃、湿度65±5%で28日間養生した試験体の長さ変化量を測定し、ダイヤルゲージ方法に記載された計算式により、長さ変化率を計算する。
原料は以下のものを使用した。
1)水硬性成分:
・ポルトランドセメント(宇部早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積4500cm/g)。
2)細骨材:
・珪砂(5号+6号)、粒度(篩)は表3に示す。
3)有機系短繊維:
・ポリビニルアルコール短繊維a:繊維長12mm、繊維径0.2mm(クラレ社製)。
・ポリビニルアルコール短繊維b:繊維長8mm、繊維径0.2mm(クラレ社製)。
・ポリビニルアルコール短繊維c:繊維長18mm、繊維径0.2mm(クラレ社製)。
4)再乳化形粉末樹脂:
・酢酸ビニル・ベオバ・アクリル酸エステル共重合体(ニチゴーモビニール社製)
5)膨張材:
・無機系膨張材a:石灰−エトリンガイト系膨張材(電気化学工業社製、パワーCSA)。
・無機系膨張材b:石灰−石膏系膨張材(太平洋セメント社製、太平洋ジプカル)。
・無機系膨張材c:エトリンガイト系膨張材(電気化学工業社製、CSA#20)。
・金属系膨張材 :アルミニウム粉(粒度44μm以下を60質量%以上含有、大和金属粉工業社製、ALCファイン及びK−250の混合品)。
6)流動化剤 :
・ポリカルボン酸エーテル系流動化剤(デグサ社製)。
7)消泡剤 :
・ポリエーテル系消泡剤(サンノプコ社製)。
8)増粘剤 :
・セルロース−エーテル系増粘剤(信越化学工業社製)。
[実施例1、比較例1]
表1及び表2に示す成分をアイリッヒミキサを使用して混合してセメント組成物を得た。
温度20℃、相対湿度65%の条件下で、セメント組成物100質量部に対し、水17質量部を加え、ホバートミキサーを用いて、低速1分間、さらに高速2分間混練して、グラウトを調製した。
グラウトのJロート及びフロー値、および、グラウト硬化体とモルタル板との付着強度、気中及び水中で養生した場合の圧縮強度及び曲げ強度、長さ変化率を評価した結果を表1及び表2に示す。
Figure 0004983111
Figure 0004983111
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1)消泡剤を添加していない比較例1と消泡剤を添加した実施例1とを比較すると、グラウトの流動特性を示すJロート流下値およびモルタルフロー値にはほとんど差異がなく、また硬化体の長さ変化のおいてもほとんど同等の特性を示している。
しかしながら、モルタル板との付着強度および圧縮強度においては、比較例1と較べて実施例1では強度特性の向上が極めて顕著である。
2)消泡剤を増加して添加量を適正化した実施例2の場合、実施例1と比較してモルタル板との付着強度がさらに向上し、グラウト硬化体の寸法安定性(長さ変化)においてもより優れた特性が得られた。
3)無機系膨張材について、実施例2とは異なる成分の無機系膨張材を用いた実施例3および実施例4でも、流動特性、付着強度、圧縮強度、曲げ強度及び長さ変化のいずれの性状についても優れた性状を示した。
実施例2と実施例3、4を比較すると、実施例2は特に付着強度および長さ変化においてより優れた特性を示した。
4)繊維長が8mmの有機系短繊維を用いた比較例2の場合、グラウトの流動性の低下が顕著であり、また、繊維長が18mmの有機系短繊維を用いた比較例3では、繊維長が12mmの有機系短繊維を用いた実施例2と比較して、グラウトの流動性の低下と、グラウト硬化体の寸法変化の増加(材齢7日)が見られた。
5)有機系短繊維の配合量が、適正な配合量を超えた比較例4及び比較例5の場合、実施例2と比較してモルタル板との付着強度が明確に低下し、材齢28日の長さ変化においては著しい増加が見られた。
6)無機系膨張材を配合しない比較例6の場合、モルタル板との付着強度が小さく、材齢28日の硬化体の長さ変化も著しく大きい。一方、無機系膨張材を過剰に配合した比較例7の場合、膨張が著しく、無機系膨張材を適正量配合した実施例2と比較して、圧縮強度及び曲げ強度の低下が著しい。
7)再乳化形粉末樹脂を配合しない比較例8では、モルタル板との付着強度が著しく小さく、硬化体の長さ変化は大きい。再乳化形粉末樹脂を適正量を超えて配合した比較例9では、流動性および圧縮強度の低下が著しく、長さ変化についても顕著である。
8)消泡剤を過剰添加した比較例10の場合、流動性や強度性状には大きな変化はないが、長さ変化が著しく大きくなっている。
本発明のセメント組成物は、特定の繊維長と繊維径を有する有機系短繊維を用い、再乳化形粉末樹脂と消泡剤とを組合わせて用い、さらに無機系膨張材と金属系膨張材とを配合することにより、収縮低減材を用いることなく、流動性に優れたグラウトおよびコンクリート補修部分との付着強度が高く、圧縮強度特性に優れ、さらに寸法安定性に優れたグラウト硬化体を提供するものである。
本発明のセメント組成物は、土木建築分野のコンクリート構造物の補修工事で広く利用でき、特にコンクリートの補修部に型枠を設け、グラウトを流し込み施工する補修工法及び/又は注入施工する補修工法に好適に使用できる。

Claims (6)

  1. ポルトランドセメント、細骨材、有機系短繊維、無機系膨張材、再乳化形粉末樹脂、消泡剤、金属系膨張材、増粘剤及び流動化剤を含み、
    ポルトランドセメント100質量部に対し、細骨材の含有割合が120〜180質量部、繊維径が0.1〜0.3mmでかつ繊維長が10〜14mmの有機系短繊維の含有割合が0.2〜0.8質量部、無機系膨張材の含有割合が4〜12質量部、再乳化形粉末樹脂の含有割合が4〜15質量部、消泡剤の含有割合が0.05〜1.2質量部であり、
    前記消泡剤は、ポリエーテル系消泡剤であり、
    前記有機系短繊維は、ポリビニルアルコール繊維である、
    ことを特徴とするセメント組成物。
  2. 前記細骨材は、珪砂、川砂、海砂、山砂及び陸砂からなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、かつ、細骨材100質量%中に、粒径0.15〜2mmの細骨材が80質量%以上含む、
    ことを特徴とする請求項1に記載のセメント組成物。
  3. 金属系膨張材の含有割合が0.0001〜0.01質量部であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のセメント組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメント組成物100質量部と水8〜30質量部とを混練して得られるグラウト。
  5. 請求項4に記載のグラウトが硬化して得られる硬化体。
  6. コンクリート構造物の表面および断面の補修において、補修箇所部分を除去したのちに型枠を設置し、補修箇所と型枠の隙間部分に請求項4に記載のグラウトを流し込む及び/又は注入することを特徴とする補修工法。
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