JP5335176B2 - ポリマーセメントグラウト材 - Google Patents
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Description
また、コンクリート構造物の大断面の補修には吹き付け工法やグラウトの充填工法が用いられているが、流し込み成型ができ、人的負担が少なく、マニュアル化による施工安定性の高いグラウト充填工法が大規模な断面修復または増厚には多く適用されている。
一方、ポリマーセメント系グラウト材は、ポリマーによる粘性増加による注入・充填性の低下や、乾燥収縮の増加が大きいため、特開平10−265251号公報に、セメント、石灰石微粉末、珪砂、再乳化性粉体樹脂及び粉体添加物に加えて、スメクタイト型粘土鉱物、シリカヒュームまたは低減収縮剤が所定の割合で均一に混合されて調製された組成物に更にジエチレングリコールが0.05〜0.5質量%混合された半たわみ性舗装用ポリマーセメント組成物が開示されている。
また、単純に減水剤の添加や水量の増加によって、かかるポリマーセメント組成物の粘性を低下させると、骨材が沈降し、ひび割れが発生するといった問題点がある。
特にこの傾向は、再乳化型粉末樹脂を用いた材料に現れるため、市販レベルでの一材化ポリマーセメントグラウト材の商品化が困難となっている。
すなわち、本発明のポリマーセメントグラウト材は、セメント100質量部に対し、ブレーン粉末度5000cm2/g以上の分級フライアッシュまたは高炉スラグ微粉末を10〜120質量部、2種類以上の粉末減水剤を合計で0.5〜2.5質量部、収縮低減剤を2〜10質量部、再乳化型粉末樹脂を5〜30質量部、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材を5〜20質量部、細骨材を120〜400質量部配合し、さらに水を混合してなることを特徴とする。
前記本発明のポリマーセメントグラウト材において、前記粉末減水剤はポリカルボン酸系減水剤と、メラミン系減水剤および/またはナフタレン系減水剤とよりなり、セメント100質量部に対し、前記ポリカルボン酸系減水剤を0.1〜0.5質量部、メラミン系減水剤および/またはナフタレン系減水剤を0.3〜2.0質量部配合することを特徴とする。
また、本発明のポリマーセメントグラウト材は、断面修復または増厚面が大断面であっても、コンクリート構造物母体との付着性が良好で、表面硬度も優れ、ひび割れ発生を抑制できるため、耐久性に優れるものとすることができる。
本発明のポリマーセメントグラウト材は、セメント100質量部に対し、ブレーン粉末度5000cm2/g以上の分級フライアッシュまたは高炉スラグ微粉末を10〜120質量部、2種以上の粉末減水剤を合計で0.5〜2.5質量部、収縮低減剤を2〜10質量部、再乳化型粉末樹脂を5〜30質量部、細骨材を120〜400質量部配合し、さらに水を混合してなる、ポリマーセメントグラウト材である。
かかる特定の組成として配合することで、グラウト材としての流動性を損なうことなく、細骨材の材料分離現象を防止して、コンクリートとの付着性を大きく改善し、さらには硬化後も温度応力および乾燥収縮によるひび割れ発生を抑制することができ、硬化後の表面硬度を向上させることができる。
特に安価で早期強度を発現することから、早強セメントを用いることが好ましい。
その配合割合は、特に限定されず、適宜設計することができるが、特にカルシウムサルフォアルミネート系膨張材は、セメント100質量部に対して、5〜20質量部が好ましく、これは、自己収縮を抑制するとともに過剰膨張を防止することが容易となるからである。
当該分級フライアッシュもしくは高炉スラグ微粉末の粉末度(比表面積)は、5000cm2/g以上であることを要する。
ブレーン比表面積が5000cm2/g未満では、断面修復用グラウト材の施工時において、配合している細骨材がグラウト材中で分離し、沈降し易くなるため、施工箇所の上下で不均一な硬化体となってしまうからであり、これは、乾燥収縮低減剤を添加した場合に、さらに顕著となる。
かかる粉末度(ブレーン比表面積)は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積を表すものである。
なお、粉末度としては、上記したように5000cm2/g以上であれば良いが、特に5500cm2/g以上12000cm2/g以下のものがより好ましい。
配合量がかかる範囲であると、本発明のポリマーセメントグラウト材中、珪砂等の細骨材の分離、沈降防止に有効となる。
当該分級フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末の配合量が10質量部未満では分離防止効果が十分でなく、一方、120質量部を越えると、初期強度の低下等を引き起こし、好ましくない。
粉末減水剤としては、リグニンスルフォン酸系、オキシ有機酸系、ナフタレン系、ポリカルボン酸系、メラミン系の塩等の公知のものが使用することができるが、収縮を低減させる観点から、本発明においては減水効果の大きいポリカルボン酸系減水剤を使用する。
更に、ポリカルボン酸系減水剤の他に、メラミン系減水剤および/またはナフタレン系減水剤を配合して、2種類以上の減水剤を併用する。
かかる2種以上の減水剤を併用することにより、細骨材を分離することなく、収縮低減を図ることができる。
0.1質量部未満では、所定の減水効果が得られず、また、0.5質量部を超えて混合すると、セメントの硬化遅延や骨材の沈降分離を引き起こす恐れがある。
同様に、メラミン系粉末減水剤もしくはナフタレン系粉末減水剤の混合量としては、セメント100質量部に対して、0.3〜2.0質量部が好ましく、0.4〜1.5質量部がより好ましい。
0.3質量部未満では、十分な減水効果が得られず、また、2.0質量部以上では、減水効果は変わらず、かえって強度発現等への悪影響が出る可能性がある。
更に、ポリカルボン酸塩系粉末減水剤と、メラミン系減水剤および/またはナフタレン系減水剤との合計配合量は、セメント100質量部に対して0.5〜2.5質量部、好ましくは0.5〜1.5質量部であることが、セメントの硬化遅延を抑制し、流動性を確保し単位水量を減少させる点から望ましい。
乾燥収縮低減剤は、低級アルコールアルキレンオキシド付加物、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体、ポリエーテル、低分子量アルキレンオキシド共重合体などを用いることができ、その組成および形状(液体もしくは粉体)に関わらず、断面修復用グラウト材硬化体中の水の表面張力を低下させることで乾燥収縮を低減できるものであれば任意の1種以上の乾燥収縮低減剤を用いることができる。
乾燥収縮低減剤の混合量としては、セメント100質量部に対して、2〜10質量部、好ましくは2〜5質量部が好ましい。2質量部未満では、乾燥収縮低減効果が小さく、また、10質量部を越えて混合しても、乾燥収縮低減効果がほとんど変わらず、経済的ではない。
る。
特に、耐水性等の耐久性が要求される部材に用いる場合には、アクリル系の再乳化型粉末樹脂の使用が好ましい。
ポリマーを安定化する方法としては、例えば、アクリル酸を共重合するカルボキシル方式(アニオン化方式)、水溶性ポリマー例えばポリビニルアルコール等の水溶液中で重合する保護コロイド方式、重合反応性界面活性剤等を共重合する方式、非重合反応性界面活性剤による安定化方式がある。
かかる再乳化形粉末樹脂の製造方法は特に限定されることなく、これらのポリマーディスパージョンを粉末化方法やブロッキング防止法等の公知の任意の方法を用いて調製することができる。
再乳化形粉末樹脂の再乳化液としては、最低造膜温度が0℃以上であることが望ましい。
最低造膜温度が0℃以上であることにより、コンクリートとの付着性およびポリマーセメントグラウト材の表面硬度が硬く、早期強度発現性に優れることとなる。
これは、かかる配合比で、再乳化形粉末樹脂を混合することより、ポリマーセメントグラウト材として使用した際に、コンクリートに対して、良好な接着性を有するものとなるからである。
再乳化形粉末樹脂がセメントに対して5質量部未満では、コンクリートとの付着性能が十分に発揮できず、また、30質量部を超えると、ポリマーセメントグラウト材の流動性や強度が低下し、コンクリート構造物の断面修復または増厚材としての性能に支障が発生する恐れがあるからである。
その配合割合は、上記セメント100質量部に対して、120〜400質量部、好ましくは150〜300質量部とすることが望ましい。
これは、かかる配合比で細骨材を混合することより、作業性が良く、実用的な強度発現性を有し、実用上問題のない硬化収縮を有する補修材料となるからである。
細骨材がセメントに対して120質量部未満では、乾燥収縮や水和熱によるひび割れが発生するおそれがあり、また、400質量部を超えると、コンクリート構造物をはつり取った箇所への充填性や強度発現性に支障の出るおそれがあるからである。
当該水の量は、日本道路公団試験方法 JHS 312−1992(無収縮モルタル品質管理試験方法)に規定されるJ14ロート流下時間が6〜10秒となるように添加調整されることで、上記効果をより有効に発現させる。
(使用材料)
・セメント
早強ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
・フライアッシュA(分級フライアッシュ;ブレーン粉末度5600cm2/g)
商品名「FA20」(テクノ・リソース社製)
・フライアッシュB(ブレーン粉末度4000cm2/g)
商品名「フライアッシュ」(関西電力社製)
・高炉スラグ粉末A(高炉スラグ微粉末;ブレーン粉末度7800cm2/g)
商品名「ファインセラメント10A」(第一セメント社製)
・高炉スラグ粉末B(ブレーン粉末度4000cm2/g)
商品名「エスメント」(住友金属工業社製)
・膨張材(カルシウムサルフォアルミネート系膨張材)
商品名「サクス」(住友大阪セメント社製)
但し、上記ブレーン粉末度とは、ブレーン方法で測定した比表面積を表す。
商品名「マイティ21P」(花王社製ポリカルボン酸塩系;粉末減水剤A)
商品名「シーカメントFF86/100」(日本シーカ社製メラミンスルフォン酸
塩系;粉末減水剤B)
・消泡剤
商品名「アデカネートB−211F」(旭電化社製)
・乾燥収縮低減剤
商品名「テスタF#100」(住友大阪セメント社製)
・再乳化型粉末樹脂
商品名「モビリスDM2072P」(ニチゴー・モビニール社製)
・乾燥珪砂
珪砂3号と珪砂6号を1:1の割合で混合したもの
・繊維(ビニロン繊維)
商品名「REC15 6mm」(クラレ社製)
20℃の恒温槽内で高速ハンドミキサを用いて、上記材料を以下の表1に示す配合割合で各材料を均一に混練して、ポリマーセメントグラウト材を得た。
なお、比較例は、実施例において用いたフライアッシュA(ブレーン粉末度5600cm2/gの分級フライアッシュ)に替えて、ブレーン粉末度4000cm2/gの通常のフライアッシュB(関電社製)を、また、高炉スラグA(ブレーン粉末度7800cm2/gの高炉スラグ微粉末)に替えて、ブレーン粉末度4000cm2/gの高炉スラグ粉末Bを用い、更に必要に応じて、短繊維であるビニロン繊維REC15 6mm(クラレ社製)を用いた。
但し、配合する水の量は、各ポリマーセメントグラウト材において、日本道路公団試験方法 JHS 312−1992(無収縮モルタル品質管理試験方法)に規定されるJ14ロート流下時間が6〜10秒となるように調整されて添加した。
しかし、比較例6及び比較例7では、グラウト材として一定の性能を得るためには、流下時間での調整が困難なため、表1に示す適量の水を添加した。
上記実施例1〜2、比較例1〜7で得られた各ポリマーセメントグラウト材を、以下の試験に供した。
その結果も上記表1に示す。
(1)流動性試験
日本道路公団試験方法JHS 312−1992に準じ、J14ロートにより各ポリマーセメントグラウト材の流下時間(秒)を測定した。
(2)材料分離抵抗性試験
混練して得られた各ポリマーセメントグラウト材を内容積5Lの容器に入れ、混練後1時間まで静置し、細骨材の分離およびブリーディングの有無を目視により観察した。
但し、材料分離抵抗性については、以下の基準により評価した。
○:細骨材の分離なし、かつブリーディングなし
×:細骨材の分離またはブリーディングあり、もしくは両方あり
日本道路公団試験方法JHS 312−1992に準じ、各ポリマーセメントグラウト材を型枠に流し込み、φ50mm×h100mmの各円柱供試体を作成し、20℃の60%RHで28日間養生した(材齢4週経た後)各円柱供試体の圧縮強度を測定した。
(4)乾燥収縮率試験
日本道路公団材料施工資料(第1号)「型枠コンクリート工用断面修復材の品質規格試験」に準じ、各ポリマーセメントグラウト材を40mm×40mm×160mmの型枠に流し込み、48時間後に脱型し、温度20℃、湿度60%RHで28日間養生して、乾燥収縮を測定した。
一方、フライアッシュ及び高炉スラグ粉末のブレーン粉末度を下げた比較例1及び2では、細骨材の沈降が観察され、材料の均質性が保持されておらず、現場での施工においては、注入機材内でのグラウト材の詰まりやコンクリート構造物の断面修復施工面でのひび割れの発生の可能性がある。
また、骨材量を増大させた比較例4では、乾燥収縮量は小さくなるものの、材料分離が観察され、圧縮強度も低くなった。
また、粉末減水剤をメラミン系1種類にした比較例6では、JHS 312−1992(無収縮モルタル品質管理試験方法)に規定されるJ14ロート流下時間が6〜10秒となるように調整することができず、なおかつ、流下時間が遅いにもかかわらず、材料分離が観察され、また、圧縮強度も低下した。
更に、短繊維を添加し、ひび割れ抑制を意図した比較例7は、特開2005−82416号公報に公開されている技術であり、J14ロート流下時間が6〜10秒の範囲内ではなく、22.9秒であった。
なお、比較例7において水量添加を多くすると、骨材分離が発生し、乾燥収縮が大きくなり、強度も低下する。
Claims (1)
- セメント100質量部に対し、ブレーン粉末度5000cm2/g以上の分級フライアッシュまたは高炉スラグ微粉末を10〜120質量部、ポリカルボン酸系減水剤を0.1〜0.5質量部、メラミン系減水剤および/またはナフタレン系減水剤を0.3〜2.0質量部であって、かつ該減水剤を合計で0.5〜2.5質量部、収縮低減剤を2〜10質量部、再乳化型粉末樹脂を7〜15質量部、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材を5〜20質量部、細骨材を120〜400質量部配合し、さらに水を、日本道路公団試験方法 JHS 312−1992(無収縮モルタル品質管理試験方法)に規定されるJ14ロート流下時間が6〜10秒となるように混合してなることを特徴とする、ポリマーセメントグラウト材。
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