JP2016176993A - 画像形成装置 - Google Patents

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高広 今田
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裕司 荒井
卓弥 瀬下
Takuya Seshimo
卓弥 瀬下
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元義 山野
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Abstract

【課題】定着ベルトとニップ形成部材の間に配設される摺動シートの左右両端部からの潤滑剤漏れを防止する。【解決手段】ニップ形成部材150と定着ベルト104の間の摺動シート135を綾織りで構成する。摺動シート135の傾斜した綾目による溝方向が、定着ベルト104の回転方向に対して一方側に傾斜するとともにニップ形成部材150に接する第1シート部135aと、他方側に傾斜するとともに定着ベルト104に接する第2シート部135bとを二枚重ねにする。【選択図】図5

Description

本発明は、定着ベルトの摺動性を向上させることによって、定着装置の高寿命化を図ることができる定着装置、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
電子写真方式の画像形成装置は、像担持体である感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、感光体ドラム上の静電潜像をトナーなどの現像剤によって現像して顕像化し、このトナー像を転写装置により記録紙に転写して、転写後の記録紙に対して定着装置にて加熱、加圧を加えることによって、記録紙上のトナー画像を定着し、定着された記録紙を装置外に排紙する構成になっている。
前記定着装置は、通常、対向する加熱ローラと加圧ローラからなるローラ対、あるいは定着ベルト、あるいはそれらの組み合わせで構成されており、搬送されてきた記録紙を、加熱ローラと加圧ローラとの間のニップ部で挟み込み、このニップ部を記録紙が通過中に熱及び圧力を加え、トナー像を記録紙上に定着する。
定着ベルトを使用した定着装置にあっては、記録紙の紙詰まり(ジャム)を防止するために、定着ベルトの摺動性を向上させる必要がある。そのような定着装置として、例えば特許文献1(特開2014−164245号公報)や特許文献2(特開2014−174358号公報)のように、定着ベルトとニップ形成部材との間に、潤滑剤を含有した摺動シートを介在させたものがある。
当該摺動シートには、通常、PFA、PTFE等の耐熱性と低摩擦性、高離型性を備えた繊維を撚って布状にしたものが使用される。特許文献1(特開2014−164245号公報)には、加圧ローラが当たる摺動シート上の加圧面部と、加圧ローラが当たらない非加圧面部とで、綾目を逆傾斜にした摺動シートが開示されている。これは綾目に沿って形成された溝を通して潤滑剤が端部から漏れるのを防止するためである。
しかし、このように隣接する加圧面部と非加圧面部との間で綾目が逆傾斜の摺動シートを製作するとコストアップになる。また、加圧面部と非加圧面部の左右両端部では綾目が開放されているので、綾目を互いに逆傾斜にしても左右両端部からの潤滑剤漏れを完全には抑制することができない。なお、漏れ防止のために潤滑剤の粘度を上げる対策も考えられるが、そうすると摺動部分でのトルクが上昇して機器側の負荷が増大してしまう。
一方、特許文献2(特開2014−174358号公報)には、摺動シートを平織りで構成し、その織目を定着ベルトの移動方向と同一方向にした摺動シートが開示されている。摺動シートの織目による溝が定着ベルトの移動方向と平行になることで、摺動シートの左右両端部からの潤滑剤漏れを防止するようにしている。しかし、平織りは綾織りに比べて繊維強度と目付け量の面で不利であり、強度や耐磨耗性の点で課題があった。
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、摺動シートの左右両端部からの潤滑剤漏れを低コストで確実に防止し、潤滑剤漏れによる定着装置周辺の汚損や加圧部材のトルク上昇を防止し、かつ十分な強度と耐磨耗性を備えることで摺動シートの長寿命化を図ることを目的とする。
本発明に係る定着装置は、無端ベルトからなる回転可能な定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材の外周面を加圧することによって前記定着部材との間でニップ部を形成する加圧部材と、前記ニップ部を形成するために前記加圧部材と対向するように前記定着部材の内側に配置されたニップ形成部材と、前記ニップ形成部材と前記定着部材との間に設置されて潤滑剤が含有される布状の摺動シートであって、当該摺動シートは綾織りで構成されてその傾斜した綾目による溝方向が、前記定着部材の回転方向に対して一方側に傾斜するとともに前記ニップ形成部材に接する第1シート部と、他方側に傾斜するとともに前記定着部材に接する第2シート部とを二枚重ねにされた摺動シートと、を有することを特徴とする定着装置である。
本発明に係る定着装置によれば、第1シート部と第2シート部の綾目の溝に沿って片側一方向に流れようとする潤滑剤の流動性を相殺することができ、潤滑剤が右又は左の一方向に偏在して流れて摺動シートの右又は左の端部から潤滑剤漏れを起こすのを防止することができる。これにより、定着部材の摺動性が向上し、定着部材駆動時の駆動側のトルク上昇を防止するができ、定着装置の長寿命化を図ることができる。
本発明の実施形態に係る定着装置を備えたカラープリンタの概略構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る定着装置の構造を示す図である。 本発明の実施形態に係る定着装置のニップ形成部材の斜視図である。 本発明の実施形態に係る定着装置の摺動シートの二枚重ね状態を示す断面図である。 摺動シートの二枚重ね状態を示す図4のV−V線矢視側面図である。 摺動シートの二枚重ね状態を示す図5のVI−VI線矢視断面図である。
以下、本発明に係る定着装置と当該定着装置を備えた画像形成装置の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置としてのカラープリンタ1を示す概略構成図である。まず、当該カラープリンタ1の全体構成及びその動作について説明する。
(カラープリンタの概略構成)
図1に示したカラープリンタ1は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式を用いるカラープリンタある。しかし、本発明の画像形成装置はこの方式に限るものではなく、またプリンタだけでなく、複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
図1においてカラープリンタ1は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成する。そのため、像担持体としての感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
図1に示すカラープリンタ1は、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対峙して矢印A1方向に移動する無端ベルトを用いた中間転写体11(以下、転写ベルト11と呼ぶ。)に対し、1次転写行程を実行する。そして、各々の画像が重畳転写されて、その後、用紙Sに対して2次転写行程を実行することで一括転写されるようになっている。
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの周囲には、感光体ドラムの回転に従い画像形成処理するための装置が配置されている。例えば、ブラック画像形成を行う感光体ドラム20Bkについて説明すると、感光体ドラム20Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk、現像装置40Bk、1次転写ローラ12Bk及びクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電後に行われる書き込みは、光書込装置8によって行われる。
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11が矢印A1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに形成された可視像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるように行われる。この転写は、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対向して配設された1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、矢印A1方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
カラープリンタ1は、色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkの上方に対向して配設されている。また、転写ベルト11及び1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkを備えた転写ベルトユニット15と、転写ベルト11に対向して配設され、転写ベルト11に従動して連れ回る転写部材である2次転写ローラ5と、を備える。そして、さらに、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置13(以下、クリーニング装置と呼ぶ)と、これら4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書込装置8を備える。
光書込装置8は、光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラー及び偏向手段としての回転多面鏡などを装備している。各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lbを出射して感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkに静電潜像を形成する構成とされている。なお、図1では、便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも同様である。
カラープリンタ1は、感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間に向けて搬送される用紙Sを積載した給紙カセットとしてのシート給送装置61を備える。また、シート給送装置61から搬送された用紙Sを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせたタイミングで、各感光体ドラム20Y、20C、20M、20Bkと転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出すタイミングローラ対4を備える。さらに、用紙Sの先端がタイミングローラ対4に到達したことを検知するセンサを備える。
カラープリンタ1は、さらに、トナー像が転写された用紙Sにトナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着装置100と、定着済みの用紙Sをカラープリンタ1の本体外部に排出する排紙ローラ7と、を備える。また、カラープリンタ1は、その本体上部に配設されてカラープリンタ1の本体外部に排出された用紙Sを積載する排紙トレイ17を備える。さらに、排紙トレイ17の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9C、9M、9Bkを備える。
定着装置100は、加圧部材である加圧ローラ102と、可撓性を有する無端ベルトからなる定着部材である定着ベルト104を備える。そして、加圧ローラ102と定着ベルト104の接触部に形成されるニップ部122(図2参照)に、トナー像が転写された未定着の用紙Sを通過させることによって、熱と圧力により未定着画像を定着させる。なお、定着装置100の詳細な構成については後述する。
転写ベルトユニット15は、転写ベルト11、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkの他に、転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、このため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット15と、1次転写ローラ12Y、12C、12M、12Bkと、2次転写ローラ5と、クリーニング装置13とで転写装置71が構成されている。
シート給送装置61は、カラープリンタ1の本体下部に配設されている。そして、最上位の用紙Sの上面に突き当たる給紙ローラとしての給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の用紙Sをタイミングローラ対4に向けて給送するようになっている。
転写装置71に装備されているクリーニング装置13は、転写ベルト11に対向して、突き当たるように配設された、クリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。そして、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
クリーニング装置13は、さらに、転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段を有している。
(定着装置)
次に、カラープリンタ1に備えられた、定着ユニットとしての定着装置100の詳細構成と動作について、図2を用いて説明する。定着装置100は、加圧ローラ102と定着ベルト104を有し、加熱源としての2本のハロゲンヒータ116によって、定着ベルト104が内周側から輻射熱で直接加熱される。
定着ベルト104は、加圧ローラ102とニップ形成部材150との接触部に形成されるニップ部122を、回転方向R1の向きに回転する加圧ローラ102の回転に伴って、回転方向R2の方向に回転しながら移動する。定着ベルト104の内面は、ニップ形成部材150の表面に設置された後述の摺動シート153を介して摺動するようになっている。トナー像Tが転写された用紙(記録紙)Sは、通紙方向に沿って定着装置100に搬送され、ニップ部122を通過することによって加圧、加熱されてトナー像Tが用紙Sに定着し、定着装置100から排紙される。
図2では、ニップ部122の形状は平坦状であるが、凹形状あるいはその他の形状であってもよい。凹形状にした場合は用紙先端の排出方向が加圧ローラ102寄りになり、分離性が向上するので紙詰まり(ジャム)の発生が抑制される。なお、ニップ部122の下流側の定着ベルト104の周面に、用紙分離用の分離板144を当接させてもよい。
定着ベルト104はニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルト(もしくはフィルム)である。定着ベルト104の表層はPFAまたはPTFEなどのフッ素化樹脂で構成された離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。ベルトの基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコンゴムの層などで形成する弾性層があってもよい。
シリコンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときに定着ベルト104表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコンゴム層を100[μm]以上設ける必要がある。シリコンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。なお、定着ベルト104の基材として、前記の他に、フッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂などの耐熱性を有する樹脂を用いてもよい。
定着ベルト104の内部にはニップ部122を支持するための支持部材としてのステー120が設けられて、加圧ローラ102により圧力を受けるニップ形成部材150の撓みを防止するように構成されている。そして、これによって、定着ベルト104の幅方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。
このステー120は、その両端部が定着装置100に左右一対で配設されたフランジに保持固定されることによって位置決めされている。また、ハロゲンヒータ116とステー120の間に反射部材118を備え、ハロゲンヒータ116からの輻射熱などによりステー120が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。ここで反射部材118を備える代わりにステー120表面に、断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることか可能である。
なお、加熱源としては、ハロゲンヒータ116の代わりに、IHを用いてもよいし、抵抗発熱体、カーボンヒータ等を用いてもよい。また、図2の実施例では加熱源としてハロゲンヒータ116を2本用いているが、この本数も2本に限定されることはなく、定着ベルト104に与える熱量を考慮して、適切な加熱源を設計すればよい。
(加圧ローラ)
加圧ローラ102は、芯金102aと、その外側に設けられた弾性ゴム層102bとからなり、さらに弾性ゴム層102bの表面には、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が形成されている。加圧ローラ102は、非図示のカラープリンタ1に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。
加圧ローラ102は、スプリングなどにより定着ベルト104側に押し付けられており、弾性ゴム層102bが押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。なお、加圧ローラ102は中空のローラであってもよく、また、加圧ローラ102の内部にハロゲンヒータなどの加熱源を有していてもよい。
弾性ゴム層102bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ102の内部に加熱源が無い場合にはスポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムを用いた方が、断熱性が高まるため、定着ベルト104の熱が奪われにくくなるため、より望ましい。
定着ベルト104は、加圧ローラ102により連れ回り回転する。図2の場合、加圧ローラ102が駆動源により回転方向R1の向きに回転し、ニップ部122で定着ベルト104に駆動力が伝達されることにより、定着ベルト104が、回転方向R2の向きに回転しながら移動する。定着ベルト104はニップ部122で挟み込まれて回転し、ニップ部122以外では、定着ベルト104の両端部がフランジにガイドされて走行する。
なお、後述する図6のように、加圧ローラ102の幅方向両端の非通紙領域に、定着ベルト104の駆動を補助する高摩擦係数のグリップ部102cを設けることもできる。このようなグリップ部102cは、例えば特開2008−165102号公報で知られており、一般に耐熱発泡体(例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の発泡体)でグリップ部102cが構成されている。高摩擦係数のグリップ部102cを定着ベルト104に押し付けることで、充分なグリップ力を得て定着ベルト104を安定して従動させることができる。
グリップ部102cは離型層(PFAまたはPTFE層)に比べて軸上硬度が低いことで高摩擦係数を有し、用紙Sをニップした時の圧力も小さい。そのため、後述するように当該グリップ部102cに対向する位置に摺動シート153の折り返し部153cを配置することで、折り返し部153cの損傷防止と定着ベルト104の挙動安定化を図ることができる。
定着ベルト104の内側であって走行方向上流側(ニップ部122の上流側)には、潤滑剤を吸収、再塗布する潤滑剤循環部材154が配置されている。潤滑剤循環部材154は、耐熱性、オイル保持性の機能を有するシート状の素材が幾重にも巻きつけられて構成されており、その内部には、シリコンオイル等の潤滑剤が含浸されている。
潤滑剤循環部材154の材質は、後述の摺動シート153と同一の、フッ素化樹脂であるPFA、PTFEの繊維体であってもよいし、フェルトの様な不織布でもよい。繊維体の場合には、そのスペースに合わせて反物状に幾重にも巻きつけて体積を増やして潤滑剤の保持力を高めてもよい。また、潤滑剤循環部材154は、板バネ等の付勢部材によって定着ベルト104に押し付けてもよいし、繊維体、フェルトの弾性力によって定着ベルト104に押し付けてもよい。
(ニップ形成部材の保持手段)
次にニップ形成部材150を保持する保持手段151について説明する。この保持手段151は、図3に示すように、例えば第1断熱部材151a、第2断熱部材151b、第1吸熱部材151c及び第2吸熱部材151dを有する。当該構成の保持手段151は、前述したステー120によって支持されている。
第1断熱部材151aは、均熱部材152より熱伝導率の低い、例えば樹脂からなり、定着ベルト104の長手方向に部分的(中央と両端の3箇所)に延在し、均熱部材152と第2吸熱部材151dとの間で、第1吸熱部材151cが存しない位置に配置されている。なお、ここでは中央の第1断熱部材151aの長手方向の延在幅が、A6サイズの用紙Sの幅と対応している。このような第1断熱部材151aを部分的(3箇所)に有することで、定着ベルト104の熱を過剰に吸収することを回避する。その結果、通紙部での温度落ち込みを防げる。また、ウォームアップ時間の短縮や消費電力の削減を図れる。
第2断熱部材151bは、均熱部材152より熱伝導率の低い、例えば樹脂からなり、均熱部材152と第1吸熱部材151cとの間に設けられる。第2断熱部材151bを設けることにより、均熱部材152から第1吸熱部材151cを介した第2吸熱部材151dへの熱移動量を減らすことができる。
なお、第2断熱部材151bは、厚くしすぎると、定着ベルト104に蓄積された熱が第2吸熱部材151dに移動しなくなるため、非通紙部温度上昇が発生し易くなる。そのため、第2断熱部材151bの厚みや長さは、発生する非通紙部温度上昇の大きさに応じて最適化する必要があるが、その厚みは第1断熱部材151aの厚みより小さい。
第2吸熱部材151dは、第1断熱部材151a及び第2断熱部材151bより熱伝導率の大きい材料から成り、定着ベルト104の長手方向に延在し、第1断熱部材151a及び第1吸熱部材151cに当接して配置されている。
第1吸熱部材151cは、第1断熱部材151a及び第2断熱部材151bより熱伝導率の大きい材料から成り、定着ベルト104の長手方向に部分的に延在し、第2断熱部材151bと第2吸熱部材151dとの間に配置されている。特に、第1吸熱部材151cは、定着ベルト104の中央領域以外に対応する位置、即ち定着ベルト104の非通紙部温度上昇の発生位置に対応して設けられる。
均熱部材152は、その軸方向への熱移動を促進して、定着ベルト104を均熟化し、非通紙部温度上昇を抑える機能を有する。これに対し、第1吸熱部材151c、第2吸熱部材151dは、厚み方向への熱移動を促進し、熱を吸収する役割を有する。即ち、第1吸熱部材151c、第2吸熱部材151dは、均熱部材152の熱容量不足を補うものであり、特に第2吸熱部材151dは大きい熱容量を有し又は放熱量を高めるために大きい表面積を有することが望ましい。
保持手段151と均熱部材152の曲げ部152b、152cとで、摺動シート153の摺動方向で端部領域を挟持し、摺動シート153をより強固に固定できる。また、通紙部での温度落ち込みを防げる。また、ウォームアップ時間の短縮や消費電力の削減を図れる。
なお、第1吸熱部材151cの設置個所は、本実施形態に限定されず、均熱部材152で抑制できない非通紙部温度上昇が離れた複数箇所で生じる場合、それら複数箇所に設けても良い。この際、それぞれの非通紙部温度上昇に応じて第2断熱部材151bの厚みや長さを設定すればよい。第1吸熱部材151cと第2断熱部材151bの厚みの和は、第1断熱部材151aの厚みに略等しい。そのため、第2吸熱部材151dと第1吸熱部材151cは、面接触して互いの熱伝達は良好に行われる。
また、均熱部材152が曲げ部152b、152cを有することで、第1断熱部材151a、第2断熱部材151b、第1吸熱部材151c及び第2吸熱部材151dを、均熱部材152上に載置する際の作業性が向上する。また、第1断熱部材151a、第2断熱部材151b、第1吸熱部材151c及び第2吸熱部材151dを、均熱部材152に確実に受容できる。また、均熱部材152の上面に突起を形成し、第1断熱部材151a、第2断熱部材151b、第2吸熱部材151d等に突起が係合する穴部を形成しても良い。
(摺動シートの構成)
図2に示すように、ニップ形成部材150の回りには、摺動シート153が巻かれて金具で固定されている。当該摺動シート153は、PFA、PTFE等の耐熱性と低摩擦性、高離型性を備えた繊維を撚って布状にしたもので構成されている。この摺動シート153に、潤滑剤循環部材154に浸み込ませた、例えばシリコンオイル等の潤滑剤を、移動している定着ベルト104に付着させることによって塗布する。このようにして塗布された潤滑剤は、定着ベルト104の移動に伴って摺動シート153の表面に移動する。
本発明の実施形態では、図4のように、摺動シート153を、下側の第1シート部153aと、上側の第2シート部153bの上下二枚重ねで配設している。当該摺動シート153は繊維を布状に構成したもので、具体的には綾織りの織布で構成している。当該綾織りの織布は、繊維強度と目付け量(密度)を平織りに比べて高くすることができ、強度や耐磨耗性が必要な摺動シート153に適している。
綾織りは、縦糸と横糸の交差位置を左右の糸と徐々にずらして構成する織り方であるために、巨視的に見ると、表面に斜め状の凹凸(溝と山)が発生する。したがって、従来のように摺動シート153を一枚で構成した場合は、綾織りの表面の斜め状の凹凸(溝と山)によって、右又は左方向に潤滑剤が偏在して流れるため、摺動シート153の右又は左の端部から潤滑剤が漏れる可能性がある。
そこで本発明の実施形態では、摺動シート153を二枚重ねとし、摺動シート153の上下のシート部153a、153bの斜め状の凹凸(溝と山)を互いに交叉(クロス)させるようにした。すなわち、摺動シートは、図5に示すように、繊維織りによって形成された前記凹凸(溝と山)が左斜め上を向いた第1シート部153aと、右斜め上を向いた第2シート部153bで構成している。なお、図5の左側では第2シート部153bの一部を切り欠いて下側の第1シート部153aを図示している。
凹凸(溝と山)の傾斜角θa、θbは例えば45度とすることができるが、当該傾斜角θa、θbは綾織りの構成によって45度以外も可能である。このように上下のシート部153a、153bの斜め状の凹凸(溝と山)を互いに交叉させることで、潤滑剤の左右一方側に流れる動きを互いに打ち消す(相殺する)か緩和することができる。すなわち、凹凸(溝と山)に沿った潤滑剤の流れの全部又は一部を、凹凸(溝と山)を横断する方向(定着ベルト104の回転方向)の流れに変換するのである。
なお、図5の綾目の方向に記入した矢印は、定着ベルト104の回転方向に流れようとする潤滑剤に対して斜め下流方向に作用する力を示すもので、潤滑剤が当該矢印方向に実際に移動することを示すものではない。また、定着ベルト104の回転によって移動する潤滑剤は主として第2シート部153bに存在し、下側の第1シート部153aには毛細管現象で第2シート部153bから移動した少量の潤滑剤が浸潤して滞留しているに過ぎない。したがって、第1シート部153aに記入した矢印は第2シート部153bの潤滑剤に対して斜め下流方向に作用する力を示すものである。斜め下流方向で左右逆方向に作用する2つの力が打ち消し合う結果、第2シート部153bの潤滑剤が定着ベルト104の回転方向に流れるのである。
これにより、潤滑剤は右又は左に偏在して流れることなく(潤滑剤の端部漏れ防止)、摺動シート153の第2シート部153b全体に毛細管現象でムラなく浸透して保持される(潤滑剤の保持性向上)。したがって、定着装置100と、同定着装置100を備えたカラープリンタ1は、定着ベルト104の摺動性を長期間に亘って保持することができて、高寿命化を図ることができる。
潤滑剤の左右一方側に流れる動きを互いに効率的に打ち消すためには、傾斜角θa、θbを等角で正反対に傾斜させるのが理想と考えられるが、実際には、定着ベルト104に直接接触する第2シート部153bの凹凸(溝と山)による流れが支配的になるため、綾目の傾斜角θa、θbを、例えば図5の場合はθa<θbとなるように調節し、潤滑剤の左右の流れのバランス(均衡)を保つことが望ましい。
また、摺動シート153が一枚の場合、磨耗して交換する際は一枚まるごとの交換となるが、二枚の摺動シートを重ね合わせて使用する場合は、第2シート部153bのみの交換で問題ない場合が多いと考えられる。これにより、第1シート部153aと第2シート部153bの材質をうまく組み合わせることで、摺動シート153の交換コストを低減することも可能である。
すなわち、前記下側の第1シート部153aは、ニップ形成部材150とは接するけれども定着ベルト104とは接しない。したがって、当該第1シート部153aに求められる性能は、主として耐熱性と耐油性である。一方、第2シート部153bは定着ベルト104と摺接するので、求められる性能は、主として耐熱性、耐油性に加えて低摩擦性である。
したがって、コスト的な見地からすると、定着ベルト104と摺接する第2シート部153bのみ、耐熱性、耐油性及び低摩擦性を確保するため、アラミド繊維、PPS繊維、ナイロン繊維などの、フッ素系樹脂を使用した耐熱材料の織布を使用するのがよい。
一方、定着ベルト104と直接接しない第1シート部153aには、フッ素系樹脂以外の、アラミド系、PPS系、ナイロン系の繊維の織布を用いる。一般的にこれらの材料はフッ素系樹脂に比べて安価な傾向があり、これらの繊維の織布を採用することにより摺動シート153のコスト低減が可能となる。
(摺動シートの折り返しによる二枚重ね構造)
摺動シート153は前述したように、交換コストを考慮すると第1シート部153aと第2シート部153bを別々にするのがよいが、一枚の摺動シート153を二つ折りにして第1シート部153aと第2シート部153bを構成することで新たな利点を得ることができる。
図6は一枚の摺動シート153を二つ折りにした実施形態を示すもので、上側が第1シート部153a、下側が第2シート部153bである。折り返し部153cはニップ形成部材150の右側又は左側の端部に配置する。摺動シート153を一枚構成とすることで、第1シート部153aと第2シート部153bの二枚構成にした場合よりも、部品点数削減と初期費用のコストダウンが可能である。また、第1シート部153aと第2シート部153bの綾目の傾斜を、定着ベルト104の回転方向に関して完全左右対称とすることが容易であり、これにより潤滑剤の左右の流れのバランス(均衡)を容易に確保することができる。
さらに、摺動シート153の折り返し部153cを以下の(1)〜(3)の3つの位置に配置することで、各々異なる利点を得ることができる。(1)〜(3)のいずれでも、折り返し部153cは、第2シート部153bの綾目に沿った方向の溝によって潤滑剤が流れる側に配置する。折り返し部153cは摺動シート153の他の部位に比べて厚みが出るので、折り返し部153cを潤滑剤の「堰き」として利用するのである。当該折り返し部153cの堰き止め効果で、潤滑剤の端部からの漏れを防止することができる。
(1)折り返し部153cを加圧ローラ102のグリップ部102cに対向する位置に配置する(図6の実線の位置)。
折り返し部153cは前述したように他の部位に比べてどうしても厚みが出てしまう(肥厚化)。したがって、当該折り返し部153cに対して加圧ローラ102から局所的なストレスが作用する。また、定着ベルト104に対しても同様に局所的なストレスが作用し、ベルト幅方向での挙動も不安定化する。
そこで、折り返し部153cをグリップ部102cに対向する位置に配置する。グリップ部102cは他の部位に比べて軸上硬度が低く、ニップ時も圧力が小さい。したがって、折り返し部153cをこのように配置することで、前記ストレスを緩和して折り返し部153cの損傷防止と摺動シート153の長寿命化を図り、同時に定着ベルト104の挙動安定化を図ることができる。
(2)折り返し部153cをニップ形成部材150の外側かつ定着ベルト104の内側に配置する(図6の一点鎖線の位置)。
前述したように、折り返し部153cは摺動シート153の他の部位に比べてどうしても厚みが出てしまう。当該折り返し部153cを定着ベルト104の軸方向内側に配置すると、その部分だけ定着ベルトが盛り上がってしまい、定着ベルト104の幅方向で安定した挙動が得られない。そこで、定着ベルト104に対して局所的なストレスが作用しないように、折り返し部153cをニップ形成部材150の外側かつ定着ベルト104の内側の直接ニップされない位置に配置する。
(3)折り返し部153cを定着ベルト104の外側に配置する(図6の二点鎖線の位置)。
前述したように、折り返し部153cは摺動シート153の他の部位に比べてどうしても厚みが出てしまうので、当該折り返し部153cで定着ベルト104の挙動が変わり、ベルト幅方向で安定した挙動が得られない。そこで、この折り返し部153cを定着ベルト104の軸方向外側に配置する。こうすることで、前記の問題を解消することができる。
但し、この場合は折り返し部153cに耐熱フェルトなどの潤滑剤吸収部材を設置するとよい。さらに、当該潤滑剤吸収部材は交換可能に設置するのが望ましい。これにより、定着ベルト104の端部から漏れた潤滑剤を前記潤滑剤吸収部材で確実に受け止め、潤滑剤の落下による定着装置周辺の汚損を防止することができる。定着ベルト104の外側であれば潤滑剤吸収部材の交換も簡単である。
以上、本発明の実施例を、図面を用いて説明したが、この実施例は本発明の例示にしか過ぎないものである。そのため、本発明はこの実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
1:カラープリンタ 3:給送ローラ
4:タイミングローラ対 5:2次転写ローラ
7:排紙ローラ 8:光書込装置
9Y:トナーボトル 11:中間転写体(転写ベルト)
12Y、12C、12M、12Bk:1次転写ローラ 13:クリーニング装置
15:転写ベルトユニット 17:排紙トレイ
20Y、20C、20M、20Bk:感光体ドラム 30Bk:帯電装置
40Bk:現像装置 50Bk:クリーニング装置
61:シート給送装置 71:転写装置
72:駆動ローラ 73:従動ローラ
100:定着装置 102:加圧ローラ
102a:芯金 102b:弾性ゴム層
102c:グリップ部 104:定着ベルト
116:ハロゲンヒータ 118:反射部材
120:ステー 122:ニップ部
144:分離板 150:ニップ形成部材
151:保持手段 151a:第1断熱部材
151b:第2断熱部材 151c:第1吸熱部材
151d:第2吸熱部材 152:均熱部材
152a、152b:曲げ部 153:摺動シート
153a:第1シート部 153b:第2シート部
153c:折り返し部 154:潤滑剤循環部材
S:用紙 T:トナー像
特開2014−164245号公報 特開2014−174358号公報

Claims (10)

  1. 無端ベルトからなる回転可能な定着部材と、
    前記定着部材を加熱する加熱源と、
    前記定着部材の外周面を加圧することによって前記定着部材との間でニップ部を形成する加圧部材と、
    前記ニップ部を形成するために前記加圧部材と対向するように前記定着部材の内側に配置されたニップ形成部材と、
    前記ニップ形成部材と前記定着部材との間に設置されて潤滑剤が含有される布状の摺動シートであって、当該摺動シートは綾織りで構成されてその傾斜した綾目による溝方向が、前記定着部材の回転方向に対して一方側に傾斜するとともに前記ニップ形成部材に接する第1シート部と、他方側に傾斜するとともに前記定着部材に接する第2シート部とを二枚重ねにされた摺動シートと、
    を有することを特徴とする定着装置。
  2. 前記第1シート部と前記第2シート部の綾目が、前記定着部材の回転方向に関して左右対称に傾斜していることを特徴とする請求項1の定着装置。
  3. 一枚の摺動シートが折り返し部で折り返されて前記第1シート部と前記第2シート部とが二枚重ねにされていることを特徴とする請求項1又は2の定着装置。
  4. 前記折り返し部が、前記定着部材の外側に配置されていることを特徴とする請求項3の定着装置。
  5. 前記折り返し部が、前記加圧部材で加圧されない非加圧領域に配置されていることを特徴とする請求項3の定着装置。
  6. 前記加圧部材の端部に、前記定着部材の駆動を補助するためのグリップ部が配設され、前記折り返し部が、当該グリップ部に対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項3の定着装置。
  7. 前記折り返し部を、前記定着部材の回転方向に対して他方側に傾斜した前記第2シート部の溝方向の当該他方側端部に配置したことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項の定着装置。
  8. 前記折り返し部に、潤滑剤吸収部材を交換可能に配置したことを特徴とする請求項7の定着装置。
  9. 前記第1シート部と前記第2シート部を異なる材料で構成したことを特徴とする請求項1の定着装置。
  10. 請求項1から9のいずれか1項の定着装置を有する画像形成装置。
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