図1及び図2を参照して、繰出装置を備えた播種装置1を後部に装着した走行機体2の全体構成について説明する。播種装置1は、走行機体2が走行するに伴って所定量の種子(本発明における「搬送物」の一実施形態であり、例えば1mmから10mm程度の幅を有する籾である。また、「搬送物」としては、前述の籾の他に、長さ10cm程度の農作物、それよりも大きい幅、径を有するものを広く含む。)を繰出装置によって搬送して地面に直接点播する。走行機体2は、後部に播種装置1が装着された状態で走行する移動農機である。
走行機体2は、エンジン3、エンジン3からの動力を変速するトランスミッション4、エンジン3及びトランスミッション4を支持する機体フレーム5、エンジン3及びトランスミッション4から伝達される動力によって駆動される前輪6及び後輪7等を備える。
エンジン3及びトランスミッション4からの動力は、それぞれフロントアクスルケース8、リアアクスルケース9に伝達される。フロントアクスルケース8は、機体フレーム5の前部に支持されるとともに、その左右両端部に前輪6が支承される。同様に、リアアクスルケース9は、機体フレーム5の後部に支持されるとともに、その左右両端部に後輪7が支承される。
機体フレーム5の上部は、ステップ10によって被覆されており、オペレータは、ステップ10上を移動可能である。
走行機体2の前後中途部に運転席11が配置され、その前方に操向ハンドル12、操作ペダル13、及び、ダッシュボード14等が設けられる。ダッシュボード14には、操向ハンドル12に加えて各種操作用の操作具、表示装置が配置されている。
走行機体2の後部には、昇降リンク機構20を介して播種装置1が連結される。昇降リンク機構20は、左右一対の上リンク21及び下リンク22、昇降シリンダ23、回転アーム24等を備える。昇降シリンダ23は、下リンク22間に固定される回転アーム24に接続される。昇降シリンダ23を伸縮させることによって回転アーム24を移動させることで下リンク22、上リンク21を回動させて播種装置1を昇降させる。
播種装置1には、播種フレームに支持される複数のフロート25及びマーカ26が付設される。フロート25は、播種装置1が泥中に沈まないように支持する。マーカ26は、枕地で周回して次の条の播種をおこなう時の目印を田面上に付ける。その目印に走行機体2の前部に設けられるセンタマーカ27を合わせながら走行することで条間を適正に保ちつつ播種することができる。
播種装置1の前方には、粒状の肥料(搬送物)を施肥するための施肥装置28が設けられる。施肥装置28からフロート25に向けてホース28aが設けられており、ホース28aを通じて肥料が散布される。播種装置1の後方には、粒状の薬剤(搬送物)又は液状の薬剤を散布する薬剤散布装置29が設けられる。なお、これらの施肥装置28及び薬剤散布装置29にも播種装置1の繰出装置と同様の構成を含み、所定量の搬送物を連続的に繰り出す構成としても良い。
[播種装置]
以下では、図3から図6を参照して、播種装置1の構造について説明する。播種装置1は、昇降リンク機構20を介して走行機体2の後方に連結され、走行機体2による走行と同時に、種子を所定位置に所定量播くための播種機である。
播種装置1は、種子を貯留するホッパ30から供給される種子を所定量繰り出すための各部材を収容するロールケース31を備える。播種装置1は、6条分の種子を同時に散布できるように、6つのロールケース31を左右方向に並べて備える。ホッパ30は、2条分の種子を収容するように構成されており、下端部が二股に分かれてロールケース31に接続される。つまり、播種装置1は、3つのホッパ30を左右方向に並べて備える。ロールケース31内には、回転可能に構成される繰出ロール32、繰出ロール32の軸方向に形成され、周方向に沿って複数配列される溝33、繰出ロール32の上方に配置される仕切りブラシ34、及び、繰出ロール32の表面に近接して配置され、繰出ロール32の溝33内に保持される種子を繰出ロール32の下部側に案内するガイド部材35が設けられる。
ロールケース31の上部であって、繰出ロール32の上方には、籾補給センサ36が設けられている。籾補給センサ36は、種子が少なくなり、籾補給センサ36よりも残量の上面が低くなると警報を出す働きがあるが、籾補給センサ36をロールケース31内に設けることによって、ホッパ30とロールケース31の接続部にブリッジが発生した際に、ロールケース31内の種子量の減少を検知することもできる。これにより、ホッパ30からの接続部で種子詰まりが生じた場合の欠粒を防止することができる。籾補給センサ36による検知結果は、例えば、運転席11のダッシュボード14に表示する、若しくは、警告音を発することでオペレータに伝えることができる。
ロールケース31は、樹脂製の軽量ケースである。ロールケース31は、種子を収納するとともに、種子を繰り出すための繰出部として繰出ロール32、仕切りブラシ34、ガイド部材35を内部に収容する。ロールケース31は、ホッパ30と接続される上方が開口するとともに、地面に臨むように下方が開放されている。
ロールケース31の上部、つまり、上端のホッパ30との接続部から繰出ロール32への供給部にかけては、ホッパ30から供給される種子を一時的に貯留する空間である供給通路40がロールケース31に形成されている。そして、供給通路40の下端であって、繰出ロール32の回転軸心よりも下方には、種子の排出案内部となる排出通路41が形成され、その下端側面に排出口42が設けられる。排出通路41は、排出口42に向けて下方に傾斜するように設けられており、排出口42は、蓋43で塞がれる。以上のように、ホッパ30とロールケース31の供給通路40及び排出通路41とで種子を収納するホッパ部を構成している。
排出口42に通じる排出通路41は、仕切りブラシ34を挟んで、ガイド部材35が配置される側と反対側に配置されている。つまり、排出通路41は、繰出ロール32の繰出方向と反対側に設けられる。また、供給通路40は、繰出ロール32表面の上部の略半分(より詳しくは、繰出ロール32の外周のうち、回転軸心の水平よりも上方であって、仕切りブラシ34に至るまでの部分)に面するように設けられている。
これにより、排出時に種子がガイド部材35側に漏れてロールケース31の下方に零れ落ちることがなく、確実に回収することができる。従来構造では、ホッパ及びロールケース内の残留物を排出する際に、仕切りブラシやガイド部材を動かしたり、取り外したりする必要があった。そして、残留物を完全に排出する際にはホッパ自体を取り外したり、傾けたりする必要が生じていた。
供給通路40の水平方向の中心は、繰出ロール32の最外幅よりも外側に位置するように設けられている。言い換えれば、供給通路40の中央部分は、繰出ロール32の外周に接するように設けられる排出通路41の上端よりも下方に配置されている。これにより、ロールケース31の供給通路40内に残留する種子の重心が排出通路41側に位置することとなり、排出通路41を通じて排出する際に、種子の自重を利用した排出が可能となるため、排出速度を向上することができる。
さらに、排出通路41の下端、つまり、排出口42の下端は、繰出ロール32の回転軸心よりも下方に位置することから、ロールケース31内の種子がスムーズに排出口42に到達するように設定されている。
以上のように、供給通路40の下端は、繰出ロール32に臨んで設けられる一方、繰出ロール32の反対側(後方側)では、排出通路41を通じて排出口42に臨んで設けられている。供給通路40から排出通路41への通路は、排出口42側に傾斜して設けられていることから、排出口42から蓋43を外して開放することで、ホッパ30及び供給通路40内に残った種子を簡単に排出することが可能である。言い換えれば、ロールケース31内で貯留された種子の最下端に排出口42が設けられることで、ロールケース31の種子を排出する際に、重力にしたがって排出口42に向かって進み、自然と排出される。これにより、排出速度を向上することができる。
また、排出口42は、播種装置1の後方側、つまり、機体後端に設けられていることから、オペレータは排出口42にダイレクトにアクセスすることができ、種子を排出する際の作業性を向上することができる。さらに、排出口42を通じてロールケース31内の簡単な掃除を行ったり、繰出ロール32の溝33の詰まりを除去したりでき、排出口42を通じてロールケース31内のメンテナンス性を向上できる。メンテナンス性を向上するという観点では、ロールケース31は、駆動系も一体に1条ずつ取り外すことができ、簡単に単体でのメンテナンスを行うことができる。
図4に示すように、ロールケース31内では、供給通路40、仕切りブラシ34、及び、ガイド部材35が繰出ロール32の回転方向に対して順に配置されている。そして、ロールケース31内において、仕切りブラシ34及びガイド部材35は、隔壁44を隔てて供給通路40から独立した空間に配置されている。隔壁44は、ロールケース31の供給通路40に臨む内壁から下方に延出される仕切りであり、その下端は、仕切りブラシ34の毛先の根元まで延びて設けられる。ロールケース31から排出通路41を通じて排出する際に、隔壁44によって、種子がガイド部材35側に溢れて零れ落ちることを防ぐことができる。さらに、隔壁44は、繰出ロール32が回転している間は種子をおおよそ摺り切る役割もはたしている。
繰出ロール32は、円柱状の部材であり、その軸方向に沿って設けられた溝33が外周面に複数形成されている。繰出ロール32は、適宜の回転駆動源に接続された回転軸50を有し、その回転軸50を中心として一定方向に回転駆動される。
溝33は、所定の容積を有する空間であり、繰出ロール32の軸方向に沿って形成される。溝33は、繰出ロール32の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では四つ)設けられる。溝33内に種子を保持した状態で繰出ロール32が回転することで、所定量の種子が連続的に繰り出される。
図5に示すように、繰出ロール32は、回転駆動が伝達される回転軸50、回転軸50に固定され、回転軸50とともに回転するロール本体51、ロール本体51と軸方向において対向するように配置される可動部材52、可動部材52にねじ53を介して接続される溝幅調整軸54、及び、溝幅調整軸54を回転させるギア55を備える。
溝幅調整軸54は、ロール本体51の内部に設けられるバネ56に付勢されたボール57によって、溝幅調整軸54とロール本体51との相対位置(回転方向)が自然に回るのを防止する保持力を与えている。
図6に示すように、ロール本体51の表面には、溝33の一側端部及び底面を構成する溝部51aが形成される。これに対して、ロール本体51を外側から覆うように配置される可動部材52の端部には、溝33の他側端部を構成する溝部52aが形成される。つまり、可動部材52をロール本体51に対して軸方向に移動させることで、溝部51a・52aの位置関係が変更され、溝33の幅が変更される。このようにして溝33の容積を調整可能としている。
以上のように構成される繰出ロール32において、ギア55をロール本体51に対して回転駆動することで、溝幅調整軸54を回転させて、ねじ53を介して可動部材52を移動させる。こうして、ロール本体51の溝部51aと可動部材52の溝部52aによって形成される溝33の容積を所望の値に調整することができる。
仕切りブラシ34は、繰出ロール32の上方(本実施形態では回転軸心の直上方)に配置される。仕切りブラシ34の毛先は、繰出ロール32の表面と所定の隙間を空けるように、繰出ロール32に近接した位置に配置されており、繰出ロール32の溝33から突出した種子の通過を阻止するブラシ状の摺切り部材である。
ガイド部材35は、仕切りブラシ34の下流側に設けられ、仕切りブラシ34を通過した溝33内の種子を外方側から押さえて保持するものである。ガイド部材35は、繰出ロール32の回転軸50の水平方向の高さよりも下側まで延設されている。このように、ガイド部材35は、その表面と繰出ロール32の溝33との間で種子を保持しつつ、仕切りブラシ34を通過した種子を繰出ロール32の下方側に案内する。
図7に示すように、繰出ロール32の回転軸50には、従動ギア90が設けられている。回転軸50は、ロールケース31の外側に延出され、その延出部に従動ギア90が固定される。そして、ロールケース31の外側で、従動ギア90と噛み合う駆動ギア91が設けられる。駆動ギア91には、駆動軸92が固定されており、駆動軸92は、各ロールケース31の駆動ギア91に嵌入されている。つまり、駆動軸92は、各繰出ロール32の回転駆動軸として共通のものである。
駆動ギア91は、エンジン3及びトランスミッション4を介して駆動されるPTO軸93から出力される回転駆動力によって回転駆動される。PTO軸93の後端にはギアケース94が設けられ、ギアケース94から左右方向に連結軸95がそれぞれ延出される。連結軸95の左右一側の中途部に、播種駆動ギア96が固定され、駆動軸92に播種駆動ギア96と噛み合う播種従動ギア97が固定される。播種従動ギア97は、駆動軸92に固定されている。このように、各ロールケース31の回転軸50には、PTO軸93から連結軸95、播種駆動ギア96、播種従動ギア97、駆動軸92、駆動ギア91、従動ギア90を介して回転駆動力が伝達される。
図7及び図8に示すように、溝幅調整軸54を回転させるギア55は、ロールケース31の外側であって、繰出ロール32を回転駆動する従動ギア90及び駆動ギア91と反対側に設けられている。各ギア55と噛み合う操作ギア98が操作軸99に固定されており、操作軸99の一側端部に操作ハンドル100が取り付けられる。操作ハンドル100を回転させることで、操作軸99が回転して操作ギア98及びギア55を回転させて、溝幅調整軸54を回転させる。このようにして、溝幅調整軸54を回転させて、各繰出ロール32の溝33の幅を一様に調整することができる。
図9に示すように、駆動軸92と駆動ギア91との間における駆動ギア91の駆動伝達経路の上流側にはクラッチ機構101がそれぞれ設けられており、クラッチ機構101を断接することで、各繰出装置の作動を停止することができる。クラッチ機構101は、端から順に隣接する2条分の繰出装置の作動を停止する。つまり、クラッチ機構101によって2条毎に作動の有無を切り替えることが可能である。各クラッチ機構101は、播種装置1を支持するフレームの上部に配置されるクラッチ制御装置102とワイヤ103を介して接続されており、クラッチ制御装置102の作動によって、ワイヤ103のテンションを変えることでクラッチ機構101の断接が制御される。
図10に示すように、クラッチ機構101は、ワイヤ103と接続されてワイヤ103のテンションの変化によって左右方向に移動するスライド部材110と、スライド部材110の両端の先端部に設けられるスライダ111と、各スライダ111の移動に伴って移動する爪クラッチ112とを備える。爪クラッチ112は、駆動ギア91の軸部分に設けられる爪部91aと噛み合って係合する。つまり、爪クラッチ112と爪部91aとの係合の有無によってクラッチ機構101による断接が行われる仕組みである。この構造により、各ロールケース31をユニットとして容易に取り外し可能となっている。
図11に示すように、クラッチ制御装置102は、各ワイヤ103と接続される屈曲形状のアーム120と、アーム120の屈曲部分を支持するベース部材121と、アーム120の他端と当接し、ベース部材121に支持されるカム122と、カム122と共に回動する大径ギア123と、大径ギア123を回動するモータ124とを備える。カム122のカムプロフィールは、大径部と小径部とを有するものであり、カム122を回転させることで、アーム120のポジションを変更する。モータ124を駆動して大径ギア123を回動させることで、カム122を回動させてアーム120を回動させる。そして、アーム120の回動によってワイヤ103のテンションが変更され、クラッチ機構101が制御される仕組みである。本実施形態では、播種条数のみを切り替える構成であるが、アーム120に設けた取付孔125を利用することで、施肥装置28や薬剤散布装置29などの条数制御を同時に行うことも可能である。
次に、図12から図16を参照して、ガイド部材35の構成について説明する。
ガイド部材35は、ロールケース31への取り付け部が設けられた本体60と、繰出ロール32に形成される溝33と対向する部位に配置される弾性体61と、弾性体61の表面に貼り付けられる表面シート62を備える。
本体60は、中央部分に凹み60aを有し、その凹み60aの内部に弾性体61を収容する。弾性体61は、例えばスポンジ等、搬送物より柔らかい素材からなる部材であり、所定の厚みを有する。弾性体61は、本体60の凹み60aの底面に貼り付けられている。表面シート62は、ガイド部材35の表面の摩擦係数を低減するためのシート部材であり、弾性体61の表面の全面に亘って設けられている。
このように、弾性体61及び表面シート62は、ロールケース31に固定される本体60に対して貼り付けられている。つまり、弾性体61及び表面シート62は本体60に対して容易に取り替え可能に取り付けられている。
以上のように、ガイド部材35の溝33と対向する部位に弾性体61を配置することで、溝33内に保持された種子が、隣接する種子からの圧力等の外力を受けた場合でも、弾性体61の弾性力で外力を吸収することができる。従って、ガイド部材35による案内時に種子を弾性体61によって保護し、損傷を低減することができる。特に、表面にコーティングが施された種子等の表面の損傷が問題となる搬送物を繰り出す場合に有効である。
図15は、本体60に、弾性体61と表面シート62が取り付けられた状態の縦方向断面を表した図であるが、ガイド部材35の本体60における両側部60bは、繰出ロール32の表面との隙間が略ゼロとなるように設けられる。他方、本体60における凹み60aが形成される部位、つまり弾性体61と表面シート62が取り付けられた本体60における凹み部位では、繰出ロール32の表面に対して所定の隙間を空けるように設けられる。
このように、ガイド部材35において、繰出ロール32の溝33と対向する部位では、その表面と繰出ロール32との間に所定の隙間を設け、かつ、それ以外の部位では、その表面と繰出ロール32の表面との間に隙間が生じないように、それぞれの隙間が異ならしめるように構成される。これにより、繰出ロール32の溝33とガイド部材35によって保持される種子は、ガイド部材35と繰出ロール32の隙間を通じて零れ落ちることがなく、所望量の種子を確実に繰り出すことができる。また、部品精度が低く、組み付ける前の状態で、両側部60bの位置が繰出ロール32の外周より内側に位置しても、組み付け後に両側部60bが繰出ロール32に沿うため、ガイド部材35の表面(表面シート62)と繰出ロール32との隙間は確保され、ガイド部材35からの押圧による種子の損傷を防止できる。
図16に示すように、ガイド部材35の表面(表面シート62の表面)と繰出ロール32の表面との隙間は、ガイド部材35への入口側の隙間D1に比べて、出口側の隙間D2が小さくなるように設定されるとともに、入口側から出口側にかけて徐々に小さくなるように設定されている。
このように、ガイド部材35の上端の入口側の隙間D1を下端の出口側の隙間D2よりも大きく取ることで、溝33からはみ出した種子がガイド部材35と接触する際に損傷する可能性を低くすることができ、ガイド部材35の出口側の隙間D2を狭くすることで、種子がガイド部材35と繰出ロール32の隙間から零れ落ちることを防ぐことができる。
また、出口側の隙間D2は、搬送物である種子の最小幅W1の半分以下に設定されている。これにより、種子がガイド部材35と繰出ロール32の隙間から零れ落ちることを確実に防ぐことができる。なお、搬送物を籾とした場合には、ガイド部材35と繰出ロール32との隙間の下端(隙間D2)を2.0mm以下とすることが好ましい。
なお、本実施形態では、繰出装置1によって繰り出される搬送物を楕円球形の種子としているため、最小幅W1を楕円球の小径W1としている。例えば、球形の搬送物の場合は、最小幅W1は直径となる。
ガイド部材35の繰出ロール32の表面との隙間の設定は、例えば、本体60の凹み60aの厚みを徐々に変えるとともに、弾性体61の厚みを均一にしておくことで実現可能である。このように弾性体61の厚みを均一にすることで、弾性体61を本体60に配置する際の手間が少なくなるという利点がある。
なお、これらの例にとらわれず、弾性体61の厚みを部分的に変えて弾性力をロール周方向に沿って微調整したり、弾性体61の一部又は全部を繰出ロール32に故意に接触させてクリアランスを調整したりすることなども考えられる。
本実施形態では、溝33とガイド部材35との間で保持された種子を保護するために、ガイド部材35の表面側に弾性体61を配置したが、図17に示すように、溝33の底面に配置しても良いし、ガイド部材35と溝33の両方に弾性体61を配置しても良い。溝33の底面に配置する場合も、ガイド部材35の凹み60aに配置する際と同様に貼り付ける等することで配置可能である。溝33の底面に弾性体61を配置することで、搬送物が溝33の底面側にめり込むことによって、搬送物の表面に損傷が生じることを防止できる。
以下では、図18から図20を参照して、仕切りブラシ34の作用幅を溝33の幅に応じて調整する各実施形態について説明する。つまり、以下の実施形態は、仕切りブラシ34のブラシ部の長さを繰出ロール32の軸方向に調整可能としたものである。
図18は、仕切りブラシ34を幅方向に複数に分割して、仕切りブラシ34よりも幅の小さい分割ブラシ70を複数配列し、かつ、溝33の幅を超えた部位では、分割された仕切りブラシ34に代えてその空間を埋めるブロック71を設置する実施形態を示す。ブロック71は、繰出ロール32の軸方向又は周方向に種子が流出することを防止する流出防止部であり、分割ブラシ70のブラシ部に隣接して配置されている。
ブロック71は、仕切りブラシ34の奥行き(繰出ロール32の回転方向に沿った長さ)と同じ奥行きを有する略直方体形状の部材であり、繰出ロール32側の表面と繰出ロール32の表面との間の隙間ができる限り小さいものを用いることで、ブロック71側への種子のこぼれを防ぐことができる。
また、ブロック71の繰出ロール32の回転方向上流側の側面を分割ブラシ70に向かうようにテーパ状に延出することで、溝33が存在しない部位であるブロック71の側面に滞留する種子を分割ブラシ70側に案内して、滞留量を低減することも可能である。
図19は、仕切りブラシ34の入口側及び出口側の側面、並びに溝33側の側面を覆うカバー72を設置する実施形態を示す。カバー72は、仕切りブラシ34のブラシ部と一体的に設けられる流出防止部である。
カバー72は、平板を同一方向に二度山折りすることで形成される屈曲部材であり、その両端に切り込み73が設けられている。仕切りブラシ34の基部34aの両側面には、切り込み73に応じたピン34bを設け、カバー72の切り込み73をピン34bに取り付ける。このように、カバー72を仕切りブラシ34に対して着脱自在に取り付ける。
以上のように、仕切りブラシ34にカバー72を取り付ける簡単な構成で、仕切りブラシ34の作用幅を調整できる。
図20は、ブラシ部34の他に、ブラシが形成される幅の異なる他の仕切りブラシ75・76・77を用意し、溝33の幅に応じた幅を有するブラシ部材を選択する実施形態を示す。この場合も、繰出ロール32の回転方向上流側の側面をテーパ状に延出することで、仕切りブラシ75・76・77の手前に滞留する種子を低減することが可能である。つまり、各仕切りブラシ75・75・77のブラシ部が形成された部位に隣接する部位を流出防止部として一体的に形成することも可能である。
以上のように、複数のブラシ部材から最適な作用幅のものを選択することが可能である。特に、溝33の幅(所望の繰出量)が予め決定されている場合に有効である。
以上、図18から図20に示す実施形態によれば、仕切りブラシ34の作用幅を溝33の幅に応じて調整することができる。従って、溝33から幅方向の側方に種子がはみ出すことがなく、溝33の幅外から種子が通過する割合が減り、所定位置への所定量の点播が担保される。また、想定外の箇所を通る種子が減ることで、種子の損傷を低減することも可能である。
図21及び図22は、仕切りブラシ34の繰出ロール32の回転方向上流側及び下流側のそれぞれの側面に流出防止壁78を設けた実施形態を示す。流出防止壁78は、繰出ロール32の周方向に沿って設けられる平板部材であり、その下端は繰出ロール32の外周面に沿うように形成されている。流出防止壁78は、仕切りブラシ34のブラシ形成部に隣接した箇所(繰出ロール32の軸方向外側)に配置されており、仕切りブラシ34のブラシ部分から種子が繰出ロール32の軸方向に流出することを防止する。流出防止壁78の形状としては上記の形状に限定されず、軸方向の搬送物の流出を防ぐものであれば良い。
図23に示すように、仕切りブラシ34は、その毛先が繰出ロール32の回転方向上流側に向けて傾いた姿勢で配置することも可能である。例えば、仕切りブラシ34を繰出ロール32の回転軸50から5°程度向けて傾いた状態で配置し、仕切りブラシ34全体としては繰出ロール32の回転軸50から見て回転方向下流側に傾けて配置する。つまり、仕切りブラシ34の毛先の先端が根元よりも繰出ロール32の回転方向上流側に位置するように設置する。
このような構成により、仕切りブラシ34の毛先は、種子からの圧力を受けることで略鉛直方向にたわみ、溝33からはみ出した種子をブロックし易くなる。言い換えれば、仕切りブラシ34の毛先で繰り出される種子を面で迎えるように、種子と仕切りブラシ34がコンタクトすることで、溝33の上方に出た種子を確実に仕切ることができる。
また、図23に示すように、仕切りブラシ34を繰出ロール32の上下方向の頂点よりも回転方向上流側に位置させる。このように、仕切りブラシ34を繰出ロール32の直上方よりも下方に配置することで、仕切りブラシ34を通過する際に、溝33から溢れた種子に対して、その上方に滞留する種子から下方への圧力が掛かる。このように、溝33外の種子が仕切りブラシ34を通過する際のブレーキとして自然と作用することで、溝33から突出した種子が仕切りブラシ34へ侵入する確率を小さくすることができる。
[別実施形態]
図24に示すように、繰出装置80は、搬送コンベア81によって供給される搬送物82をコンテナ83に所定量計測して繰り出す。本実施形態の繰出装置80は、地面に固定されて使用される固定農機に備えられている。
搬送コンベア81によって搬送される搬送物82は、例えば、じゃがいも、トマト等の略球形の農作物又はさつまいも等の略楕円球形の農作物であり、繰出装置80によって所定量に計測された後に、所定の大きさのコンテナ83に収容される。
このような繰出装置80においても播種装置1と同様の技術思想を適用することが可能であり、すなわち、搬送物82を保持するガイド部材の表面、又は、溝の底面に弾性体を配置することで、搬送物の損傷を最小限に抑えることが可能である。