JP2016174542A - 魚節の製造方法 - Google Patents

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明宏 稲田
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光作 桑田
孝之 都倉
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孝之 都倉
佳史 藤原
Yoshifumi Fujiwara
佳史 藤原
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Abstract

【課題】特別な製造設備を用いることなく、ベンゾ(a)ピレンの含量が抑えられ、なお且つ煙感も十分有する魚節を製造する方法、並びに当該方法により製造された魚節を提供する。【解決手段】魚節原料を煮熟して得られた煮熟物について、煮熟物の水分を一定範囲内に調節したうえで、煮熟物の表面温度を15℃以上40℃以下に保って、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を燻付に使用する、魚節の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、複雑な製造設備を用いることなく、ベンゾ(a)ピレンの含量が低減され、且つ煙感を損なうことなく魚節を製造する方法、及びその製造方法により製造された魚節に関する。
概して、魚節は、原料となる魚肉を適温にて一定時間煮熟した後、原料の水分を減少させ、そして保存性を高めるための焙乾処理を行うことによって、製造される。
この焙乾処理は薪を燃焼することにより行われるが、その目的としては、薪の燃焼により得られる熱を利用して煮熟物を乾燥すること、及び、同時に得られる煙によって煮熟物に煙風味を付与すること、の二点がある。
しかしながら、焙乾処理において薪の熱分解温度がおよそ425℃を超えると、ベンゾ(a)ピレン等の人体に有害な物質が発生し、薪が燃焼しているときに生ずる煙に当該有害物質が含まれるため、焙乾された魚節にも当該有害物質が付着してしまうことが指摘されていた。
そこで、ベンゾ(a)ピレンのような有害物質の魚節への付着を抑制するための手段が幾つか提案されている。
例えば、特許文献1に記載の発明は、燻材を、燻材から煙が発生する温度以上且つ425℃未満の温度範囲にて不完全燃焼させることにより、ベンゾピレンの発生を抑制しようとする手段を提案している。また同時に、この特許文献1に記載の発明は、煮熟済みの原料魚を不織布で覆った後、上記の温度条件で発生させた燻煙と接触させる手段も開示している。当該手段を用いた場合、製造されたかつお節のベンツピレン含量は0.27ppbであったことが記載されている。
また、特許文献2に記載の発明は、遠赤外線照射による加熱を行うことにより、又は、遠赤外線照射による加熱と焙乾とを併用することにより、焙乾による乾燥時間を短縮化し得ること、及び、これによりベンゾピレン等の有害物質の影響を最小限に抑える方法を開示している。
さらにまた、特許文献3は、ナラなどの植物原料を燃焼、不完全燃焼又は熱分解して燻煙を発生させる工程、当該燻煙を加熱する工程、及び前記燻煙を食品に接触させる工程を含む、鰹節等の燻製食品の製造方法を開示しており、当該燻煙は425℃以下の温度で熱分解することにより発生させることが望ましい旨記載されている。当該方法により製造された荒節のベンゾ(a)ピレン含量が4ppbであることも示されている。
特開2011−250735号公報 特開2002−58420号公報 国際公開第2007/142086号
食品価値及び安全性の観点から、鰹節に不可欠である煙感を与えつつ、且つ、ベンゾ(a)ピレン含量をできるだけ低い水準に、できれば5ppb以下に抑えることが可能な魚節の製造方法が必要である。さらにまた、当該方法は、製造者の設備投資の観点から、既存の製造設備を利用して製造し得る方法であることが望ましい。
これらの点について、特許文献1にあっては、製造された魚節の煙感品質につき何ら開示されておらず、特に、煮熟済の原料魚を不織布で包む手段については、煙が十分に付着せず、得られた魚節の煙感が十分でないことは明らかである。
また、特許文献2には、そこに記載の方法により得られた魚節に含まれるベンゾピレン含量が具体的に示されていないため、その含量の見積もりが出来ないという問題点がある。
さらにまた、特許文献3に記載の発明は、そこに記された方法を実現するための製造装置は装置全体が複雑であるため、導入が事実上容易ではない。
本発明者らは、鋭意研究の結果、原料魚の煮熟物を特定の条件で燻付することにより、既成の燻煙装置と乾燥機を利用して、魚節に不可欠である煙感を与えつつ、ベンゾ(a)ピレン含量を一定の含量以下に抑えることが可能であるという知見を見出した。
即ち、本発明は、魚節原料を煮熟して得られた煮熟物について、煮熟物の水分を調節したうえで、煮熟物の表面温度を15℃以上40℃以下に保って、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を燻付に使用する、魚節の製造方法に関する。
前記製造方法において好ましい態様は、前記水分の調節範囲が、46質量%以上51質量%以下である、魚節の製造方法に関する。
前記製造方法における別の好ましい態様は、前記水分の調節範囲が、36質量%以上40質量%以下である、魚節の製造方法に関する。
前記製造方法におけるさらに別の好ましい態様は、前記水分の調節範囲が、30質量%以上34質量%以下である、魚節の製造方法に関する。
また本発明の別の態様は、魚節原料を煮熟して得られた煮熟物を、水分が46質量%以上51質量%以下となるまで乾燥して乾燥物を得、得られた乾燥物の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を用いて、前記乾燥物に燻付し、燻付された乾燥物を、水分が36質量%以上40質量%以下となるまで乾燥し、得られた乾燥物の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を用いて、前記乾燥物に燻付し、 燻付された乾燥物を、水分が30質量%以上34質量%以下となるまで乾燥し、得られた乾燥物の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を用いて、前記乾燥物に燻付し、さらに、燻付された乾燥物を、水分が25質量%以下となるまで乾燥する、ことを特徴とする、魚節の製造方法にも関する。
さらに本発明は、上記製造方法のうちいずれかの方法で得られる、ベンゾ(a)ピレンの含量が5ppb(質量に基づく)以下である魚節にも関する。
本発明において用いられる魚節原料は、例えば、鰹、宗田鰹、鮪、鰯、鯵又は鯖が挙げられる。
これら魚節原料は、必要であれば解凍し、頭、腹皮、骨及び内臓を除去して、適切な大きさに切り分け、当業者に知られている方法によって煮熟する。
そして、燻付に先立って、得られた煮熟物を乾燥してその水分を調節する。燻付に先立っての乾燥は、煮熟物における微生物繁殖を防止する目的で行う。
乾燥後の水分の調節範囲としては、30質量%以上51質量%以下の範囲である。30質量%未満であると、煮熟物の乾燥が進みすぎており、煙の付着効率が悪くなることが懸念される。また51質量%を超えると、前述のとおり、微生物の繁殖が懸念される。
乾燥後の水分の調節範囲としては、その乾燥物当り46%以上51%以下の範囲、又は、36%以上40%以下の範囲である。より好ましい水分の調節範囲は30%以上34%以下であり、かかる範囲に水分を調整した後の燻付を経て得られる魚節は、煙感がより改良される。
煮熟物の乾燥は、例えば、電気熱風乾燥器を用いて、概ね50℃以上100℃以下で、好ましくは80℃以上95℃以下の温度で、一乾燥工程当り数時間〜24時間行う。
次に、水分量が一定範囲内に調節された煮熟物を燻付するが、本発明においては、ベンゾ(a)ピレンの魚節への付着を抑えるため、燻付に用いる煙の発生において、木材チップの加熱温度を425℃以下で燻付を行う。具体的には、当該加熱温度は320℃以上370℃以下が好ましい。320℃以下では煙の香りが十分ではなく、また、370℃以上ではベンゾ(a)ピレンの発生が増加してしまう。
より好ましい加熱温度は、355℃以上365℃以下の温度範囲である。
さらには、燻付をするときには、煮熟物の表面温度が室温程度に保たれていればよい。但し、表面温度が50℃を超えると、煮熟物に付着した燻煙物質が熱によって乖離しやすくなり、煙感が損なわれやすくなるため、40℃以下であることが好ましい。他方、5℃以下の低温にすることは、温度の制御装置が別途必要となるため、望ましくない。従って、煮熟物の表面温度は、概ね15℃以上40℃以下が好ましい。 また、煙の発生に用いる木材チップは、一般に燻付で用いられるものであればよく、例えば、ブナ、ナラ又はコナラなどの落葉広葉樹の木材を用いることが出来る。
本発明においては、上記の、煮熟物の乾燥及び燻付を、繰り返すことによって、魚節を製造することもできる。煮熟物の乾燥が進行するごとに、燻付をその都度行うことによって、魚節の煙感が効率的に増し、魚節の商品価値もより高まる。
具体的には、まずは、上記の乾燥と同様の条件で、煮熟した魚節原料を、一定の水分量、好ましくは46%以上51%以下の範囲となるように乾燥させる。その後、上記と同様の燻付の条件で第一回目の燻付を行う。さらにその後、同様の条件で乾燥を行い、好ましくは36%以上40%以下の範囲となるように乾燥させる。それ以降は、同様の条件下での燻付、水分が30%以上34%以下となるまでの乾燥、さらなる燻付を経て、最終的に25%以下の水分量となるように乾燥を行うことによって、魚節を製造することができる。
以上説明した本発明の製造方法によって得られる魚節は、ベンゾ(a)ピレンの含有濃度が5ppb以下であり、なお且つ、製造に特殊な専用設備を用意することなく、既成の装置を利用して、簡便に製造し得る。
本発明の製造方法は、魚節原料を煮熟して得られた煮熟物について、煮熟物の水分を調節したうえで、煮熟物の表面温度を15℃以上40℃以下に保って、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を燻付に使用する。そのため、ベンゾ(a)ピレンの含有濃度が5ppb以下に抑えられ、且つ、十分な煙感をも備えた魚節を提供することができ、さらには、複雑な製造設備も特に必要なく、既成のものを利用できるため、設備投資の点でも有利であるという効果を奏する。
また、上記の水分の調節範囲を、46%以上51%以下、36%以上40%以下、又は30%以上34%以下のいずれの範囲とすることによって、ベンゾ(a)ピレンの含量及び魚節の煙感がより改良されるという利点をも有する。
さらにまた、本発明の製造方法は、魚節原料を煮熟して得られた煮熟物を、水分が46%以上51%以下となるまで乾燥して乾燥物を得、得られた乾燥物の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を用いて、前記乾燥物に燻付し、燻付された乾燥物を、水分が36%以上40%以下となるまで乾燥し、上記と同様に燻付し、燻付された乾燥物を、水分が30%以上34%以下となるまで乾燥し、上記と同様に燻付し、さらに、燻付された乾燥物を、水分が25%以下となるまでさらに乾燥するという工程を経ることによって、より煙感が改良された、商品価値の高い魚節を得ることも出来るという効果を奏する。
以下、本発明をより具体的に説明するが、下記実施例は、本発明を必要以上に限定解釈することを目的として記載するのではない点に留意されるべきである。
(試験例1)
鰹の煮熟物(サンプルサイズ=6)について、電気熱風乾燥機により90℃にて12時間乾燥して乾燥物1を得た。
乾燥物1の水分は46質量%以上51質量%以下であった。次に、乾燥物1の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で乾燥物1に燻付をおこなった。燻付は(株)北陽製ホットプレート式煙発生器を接続したドラム(φ60cm×100cm)内に設置の金網上に乾燥物1を置き、このドラムにコナラチップを加熱して得られる煙を供給して行った。ホットプレート(30cm×30cm)の設定温度は360℃に設定し、10分に1回の頻度でコナラのチップ130gをホットプレート上に供給して煙を発生させた。なお、コナラチップの供給直前毎にホットプレート上の未燃等チップは取除いた(燻付1回目)。煙は8時間連続して供給し、燻付物1を得た。
その後、燻付物1をさらに90℃にて12時間乾燥して乾燥物2を得た。
乾燥物2の水分は36質量%以上40質量%以下であった。乾燥物2の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で再び燻付を行った。燻付けは燻付1回目と同様の方法で得た煙を用いて8時間連続して行い、燻付物2を得た。
さらにその後、燻付物2を90℃にて12時間乾燥して乾燥物3を得た。
乾燥物3の水分は30質量%以上34質量%以下であり、表面温度が15℃以上40℃以下の状態でさらに燻付1回目と同様の方法で得た煙を用いて8時間連続して燻付けを行い、燻付物3を得た。
その後、燻付物3の水分が25質量%となるまで電気熱風乾燥機で乾燥し、常法にて切削して鰹節の薄削りを作成し、本発明の鰹節である試作品1を得た。
試作品1の煙感の強さを削りぶしの開発に従事するパネル10名によって官能評価した。
比較の為、煮熟後全く燻付けを行わずに乾燥のみ行って得られた鰹節、及び、常法にて製造した鰹節をも評価した。またこれらについてベンゾ(a)ピレン含量を測定した。
なお、常法で製造した鰹節は、鰹の煮熟物について燻乾(燻乾時の煮熟物の温度40〜70℃)と罨蒸(罨蒸時の煮熟物の温度20〜40℃)を交互に12時間程度ずつ繰返し、これを14日間行って得られた鰹節を用いた。
また、ベンゾ(a)ピレン含量については、「鰹節に含まれるBenzo(a)pyrene簡易分析法の確立」(北田ら,2014年,第84回 日本衛生学会学術総会)に記載の方法に従い測定した。
結果は表1のとおりである。
Figure 2016174542
結果として、試作品1は、常法にて製造した鰹節の薄削りよりも煙感が強かった。また、ベンゾ(a)ピレン含量は、バラツキを考慮した推定最大値(平均値+3×標準偏差)として4ppb以下であった。
これにより、本発明の製造方法で得られた鰹節は、安全性及び商品価値が高く、且つ、複雑な工程及び装置を必要とせず製造され得ることが示された。
(試験例2)
鰹の煮熟物について、電気熱風乾燥機により乾燥し、水分49質量%であることを確認して、試験例1の燻付1回目と同様の方法で燻付を6時間連続で行い、その後、煮熟物の水分が25質量%となるまで電気熱風乾燥機により乾燥した後に、常法にて切削してこれを薄削り1(本発明の鰹節)とした。
上記とは別に、鰹の煮熟物について、電気熱風乾燥機により乾燥し、水分39質量%であることを確認して、試験例1の燻付1回目と同様の方法で燻付を6時間連続で行い、その後、煮熟物の水分が25質量%となるまで電気熱風乾燥機により乾燥した後に、常法にて切削してこれを薄削り2(本発明の鰹節)とした。
さらに上記とは別に、鰹の煮熟物について、電気熱風乾燥機により乾燥し、水分31%であることを確認して、試験例1の燻付1回目と同様の方法で燻付を6時間連続で行い、その後、煮熟物の水分が25%となるまで電気熱風乾燥機により乾燥した後に、常法にて切削してこれを薄削り3(本発明の鰹節)とした。なお薄削り3はサンプルサイズ=8で試作した。
上述のようにして得られた薄削り1、2、3について、付着した煙の強さを官能評価した。評価は実験1と同様の方法で行った。また、薄削り3についてはベンゾ(a)ピレン含量を測定(サンプルサイズ=8)した。結果は表2のとおりである。なお、表中の「煮熟物の乾燥品」を比較例とした。
Figure 2016174542
結果として、薄削り1、2、3のいずれも煙感の強さは煮熟物の乾燥品よりも高く、また、薄削り3のベンゾ(a)ピレン含量は、バラツキを考慮した推定最大値(平均値+3×標準偏差)として2.5ppb以下であった。
これにより、本発明の製造方法で得られた鰹節は、安全性及び商品価値が高く、且つ、複雑な工程及び装置を必要とせず製造され得ることが示された。

Claims (6)

  1. 魚節原料を煮熟して得られた煮熟物について、煮熟物の水分を調節したうえで、煮熟物の表面温度を15℃以上40℃以下に保って、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を燻付に使用する、魚節の製造方法。
  2. 請求項1に記載の水分の調節範囲が、46質量%以上51質量%以下である、請求項1に記載の魚節の製造方法。
  3. 前記煮熟物の水分の調節範囲が、36質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載の魚節の製造方法。
  4. 前記煮熟物の水分の調節範囲が、30質量%以上34質量%以下である、請求項1に記載の魚節の製造方法。
  5. 魚節原料を煮熟して得られた煮熟物を、水分が46質量%以上51質量%以下となるまで乾燥して乾燥物を得、
    得られた乾燥物の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を用いて、前記乾燥物に燻付し、
    燻付された乾燥物を、水分が36質量%以上40質量%以下となるまで乾燥し、
    得られた乾燥物の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を用いて、前記乾燥物に燻付し、
    燻付された乾燥物を、水分が30質量%以上34質量%以下となるまで乾燥し、
    得られた乾燥物の表面温度が15℃以上40℃以下の状態で、木材チップを320℃以上370℃以下で加熱して得られる煙を用いて、前記乾燥物に燻付し、さらに、
    燻付された乾燥物を、水分が25質量%以下となるまで乾燥する、
    ことを特徴とする、魚節の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の方法で得られる、ベンゾ(a)ピレンの含量が5ppb(質量に基づく)以下である魚節。
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