JP2016173403A - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記工程(1)〜(4)を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法である。
工程(1):水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)の存在下で、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合を行い、該炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分を含有する結晶性ポリエステル(A)を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた結晶性ポリエステル(A)を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(X)の水系分散体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた樹脂粒子(X)を、水性媒体中で、ポリエステルセグメント(b1)を含有する非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程
工程(4):前記工程(3)で得られた凝集粒子を融着させる工程
【選択図】なし
Description
また、特許文献2には、数平均分子量が400〜1000である1価の脂肪族カルボン酸化合物及び1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種である1価の脂肪族化合物を含有してなる原料モノマーを重縮合させて得られるポリエステルを結着樹脂として含有する電子写真用トナーが、離型剤の分散性に優れ、良好な耐オフセット性を有することが開示されている。
更に、特許文献3には、ポリエステル樹脂部分と、スチレン及び(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含むビニル系樹脂部分とを有し、かつ、融点が60〜110℃である水酸基を有する炭化水素ワックス由来の構造部位を特定量含むトナー用結着樹脂を用いた静電荷像現像用トナーが、低温定着性と高温高湿下での長期保存性を両立できることが開示されている。
工程(1):水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)の存在下で、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合を行い、該炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分を含有する結晶性ポリエステル(A)を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた結晶性ポリエステル(A)を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(X)の水系分散体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた樹脂粒子(X)を、水性媒体中で、ポリエステルセグメント(b1)を含有する非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程
工程(4):前記工程(3)で得られた凝集粒子を融着させる工程
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、下記工程(1)〜(4)を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法である。
工程(1):水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)の存在下で、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合を行い、該炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分を含有する結晶性ポリエステル(A)を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた結晶性ポリエステル(A)を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(X)の水系分散体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた樹脂粒子(X)を、水性媒体中で、ポリエステルセグメント(b1)を含有する非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程
工程(4):前記工程(3)で得られた凝集粒子を融着させる工程
本発明の製造方法により得られるトナーは、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分を含有し、ポリエステル部分を有する結晶性ポリエステル(A)と、ポリエステルセグメント(b1)を有する非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)を含有する。
結晶性ポリエステル(A)を水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)の存在下で調製することで、結晶性ポリエステル(A)は、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)が結合したものとなる。そして、水性媒体中では、炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分が疎水基として内側に存在し、より親水的なポリエステル部分が外側に存在する樹脂粒子(X)が形成される。
この樹脂粒子(X)を非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)の存在下で凝集させることで、結晶性ポリエステル(A)に結合する炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分がワックス(W2)となじみ、結晶性ポリエステル(A)が非晶質樹脂(B)のポリエステルセグメントとなじむことで、ワックス(W2)を凝集粒子中に安定に微分散化できる。そして、この凝集粒子を融着させることにより、粒子中でのワックス(W2)の微分散状態が維持されるとともに、トナー粒子表面へのワックス(W2)の露出も抑制することができる。このため、トナーの流動性の低下が抑制され、連続印刷に対する耐久性が向上するものと考えられる。
また、結晶性ポリエステル(A)に結合する炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分は、結晶性ポリエステル(A)の結晶核剤として作用し、また、結晶性ポリエステル(A)に近接する微分散したワックス(W2)も結晶核剤となる。そのため、結晶性ポリエステル(A)もまた微分散した状態で素早く結晶化し、トナー粒子中で微細な結晶ドメインを安定に維持できるため、得られるトナーは低温定着性に優れ、かつ、低温定着性の経時劣化が抑制されたものとなると考えられる。
以下、本発明の製造方法の各工程等を説明する。
工程(1)は、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)の存在下で、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合を行い、該炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分を含有する結晶性ポリエステル(A)を得る工程である。
炭化水素ワックス(W1)は、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスであり、水酸基及びカルボキシ基のいずれか一方、又は両方を有していてもよいが、ポリエステルとの反応性の観点、得られるトナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、水酸基及びカルボキシ基の両方を有する炭化水素ワックスが好ましい。
水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)は、炭化水素ワックスを公知の方法で変性させて得られる。炭化水素ワックス(W1)の原料の具体例としては、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられるが、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。反応原料となるパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの市販品としては、「HNP−11」、「HNP−9」、「HNP−10」、「FT−0070」、「HNP−51」、「FNP−0090」(以上、日本精蝋株式会社製)等が挙げられる。
水酸基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、「ユニリン700」、「ユニリン425」、「ユニリン550」(以上、ベーカー・ペトロライト社製)等が挙げられる。
カルボキシ基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、例えば、「ハイワックス1105A」(無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
水酸基及びカルボキシ基を有する炭化水素ワックスの市販品としては、「パラコール6420」、「パラコール6470」、「パラコール6490」(以上、日本精蝋株式会社製)等が挙げられる。
なお、炭化水素ワックス(W1)の水酸基価及び酸価は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
結晶性ポリエステル(A)は、炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分を含有し、多価アルコール成分(以下、「多価アルコール成分(A−al)」ともいう)と多価カルボン酸成分(以下、「多価カルボン酸成分(A−ac)」ともいう)とを重縮合して得られる結晶性樹脂である。
結晶性ポリエステル(A)の結晶性指数は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、その値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
前記α,ω−脂肪族ジオールの炭素数は、同様の観点から、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。具体的には、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましく、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールがより好ましく、1,10−デカンジオールが更に好ましい。
これらの多価アルコール成分(A−al)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸は、同様の観点から、炭素数が2以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは16以下である。
炭素数2以上30以下の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられ、トナーの帯電特性を向上させる観点から、フマル酸が好ましい。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。
これらの中でも、テレフタル酸、フマル酸、セバシン酸が好ましく、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、セバシン酸がより好ましい。
これらの多価カルボン酸成分(A−ac)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
結晶性ポリエステル(A)は、例えば、炭化水素ワックス(W1)の存在下で、多価アルコール成分(A−al)と多価カルボン酸成分(A−ac)とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒、エステル化助触媒、ラジカル重合禁止剤等を用いて重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒の使用量は、反応性の観点から、多価アルコール成分(A−al)と多価カルボン酸成分(A−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
重縮合反応におけるエステル化助触媒の使用量は、反応性の観点から、多価アルコール成分(A−al)と多価カルボン酸成分(A−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下である。
ラジカル重合禁止剤の使用量は、多価アルコール成分(A−al)と多価カルボン酸成分(A−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下である。
また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
重縮合反応は、同一容器内で行うことが好ましい。
炭化水素ワックス(W1)の反応率は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。
したがって、結晶性ポリエステル(A)中の炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分の含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、結晶性ポリエステル(A)中、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.4質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
なお、結晶性ポリエステル(A)に含まれる炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分とは、該炭化水素ワックス(W1)がエステル結合している部位であり、その量は、例えば、測定核をプロトンとする核磁気共鳴分光法(1H−NMR)により測定し、ポリエステルと炭化水素ワックスに特徴的なピークの積分値によって算出することができる。
なお、結晶性ポリエステル(A)を2種以上混合して使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、融点、及び酸価の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
工程(2)は、工程(1)で得られた結晶性ポリエステル(A)を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(X)の水系分散体を得る工程である。
樹脂粒子(X)は、本発明の製造方法により得られるトナーを構成する樹脂粒子であり、結晶性ポリエステル(A)を含有する。樹脂粒子(X)は、結晶性ポリエステル(A)を含有する樹脂成分と、必要に応じて着色剤等の任意成分とを水性媒体中に分散させ、水系分散体として得られる。
また、樹脂粒子(X)には、工程(3)で共存させる非晶質樹脂(B)の一部又は全部、及びワックス(W2)の一部又は全部を、予め含有させてもよい。
樹脂粒子(X)の水系分散体を得る方法としては、結晶性ポリエステル(A)等を水性媒体に添加し、分散機等によって分散処理を行う方法、結晶性ポリエステル(A)等に水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法等が挙げられるが、得られるトナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、転相乳化による方法が好ましい。
水とともに水性媒体を構成し得る水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。これらの中でも、有機溶媒のトナーへの混入を防止する観点から、ポリエステルを溶解しない炭素数1以上5以下のアルキルアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールがより好ましい。
方法(1−1)では、まず、結晶性ポリエステル(A)と、その他前記任意成分を有機溶媒に溶解させ、結晶性ポリエステル(A)及びその他の任意成分を含有する混合物の有機溶媒溶液を得、次いで、得られた溶液に水性媒体を添加して転相乳化する方法が好ましい。
具体例としては、エタノール(26.0)、イソプロパノール(23.5)、イソブタノール(21.5)等のアルコール系溶媒;アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、メチルイソブチルケトン(17.2)、ジエチルケトン(18.0)等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル(16.5)、テトラヒドロフラン(18.6)、ジオキサン(20.5)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル(18.6)、酢酸イソプロピル(17.4)等の酢酸エステル系溶媒が挙げられる。なお、各溶媒の後ろのカッコ内の数値はそれぞれのSP値(単位:MPa1/2)である。これらの中で、水性媒体添加後の混合液からの除去が容易である観点から、好ましくはケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒から選ばれる1種以上、より好ましくはメチルエチルケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルから選ばれる1種以上、更に好ましくはメチルエチルケトンが用いられる。
中和剤による結晶性ポリエステル(A)の中和度(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
なお、樹脂の中和度(モル%)は、下記式によって求めることができる。
中和度=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂の酸価(mgKOH/g)×樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
また、樹脂粒子(X)の分散安定性を向上させる観点から、水性媒体と前記有機溶媒との質量比(水性媒体/有機溶媒)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは80/20以上であり、そして、好ましくは97/3以下、より好ましくは93/7以下、更に好ましくは90/10以下である。
水性媒体の添加速度は、小粒径の樹脂粒子(X)を得る観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子(X)を構成する結晶性ポリエステル(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは0.5質量部/分以上、更に好ましくは1質量部/分以上、より更に好ましくは3質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下、より更に好ましくは10質量部/分以下である。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
また、有機溶媒は、完全に除去されず水系分散体中に残留していてもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、水系分散体中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0%である。
ここで、体積中位粒径とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径であり、後述の実施例に記載の方法で求められる。
また、樹脂粒子(X)の粒径分布の変動係数(CV値)(%)は、樹脂粒子(X)の水系分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
なお、CV値は、下記式で表される値である。下記式における体積平均粒径とは、体積基準で測定された粒径に、その粒径値を持つ粒子の割合を掛け、それにより得られた値を粒子数で除して得られる粒径であり、後述の実施例に記載の方法で求められる。
CV値(%)=[粒径分布の標準偏差(nm)/体積平均粒径(nm)]×100
工程(3)は、工程(2)で得られた樹脂粒子(X)を、水性媒体中で、ポリエステルセグメント(b1)を含有する非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程である。
具体的には、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、次の(3−1)〜(3−3)のいずれかの方法が好ましい。
(3−1)樹脂粒子(X)の水系分散体、非晶質樹脂(B)を含有する樹脂粒子(Y)の水系分散体、ワックス(W2)を含有するワックス(W2)粒子分散液、及び必要に応じて、凝集剤、界面活性剤、着色剤等の任意成分を水性媒体中で凝集して凝集粒子を得る方法
(3−2)前記工程(2)において樹脂粒子(X)の水系分散体を製造する際に、結晶性ポリエステル(A)と非晶質樹脂(B)を混合した樹脂混合物を用いて、樹脂粒子(X)中に非晶質樹脂(B)を含有する樹脂粒子(XAB)を製造し、ワックス(W2)を含有するワックス(W2)粒子分散液、及び必要に応じて、凝集剤、界面活性剤、着色剤等の任意成分を水性媒体中で凝集して凝集粒子を得る方法
(3−3)前記工程(2)において樹脂粒子(X)の水系分散体を製造する際に、結晶性ポリエステル(A)と非晶質樹脂(B)とワックス(W2)を混合した混合物を用いて、樹脂粒子(X)中に非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)を含有する樹脂粒子(XABW2)を製造し、必要に応じて、凝集剤、界面活性剤、着色剤等の任意成分を水性媒体中で凝集して凝集粒子を得る方法
前記のとおり、工程(3)において、ポリエステルセグメント(b1)を含有する非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)は、樹脂粒子(X)中に含まれる状態で存在していてもよく、非晶質樹脂(B)を含有する樹脂粒子(Y)、ワックス(W2)粒子等のように樹脂粒子(X)には含まれない状態で存在していてもよい。
これらの方法のうち、トナーの生産安定性を向上させる観点から、(3−1)又は(3−2)の方法が好ましく、(3−1)の方法がより好ましい。
工程(3A):工程(2)で得られた樹脂粒子(X)を、水性媒体中で非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)の存在下で凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程(3B):工程(3A)で得られた凝集粒子(1)に、非晶質ポリエステル(C)を含有する樹脂粒子(Z)を添加して、凝集粒子(1)に該樹脂粒子(Z)を付着してなる凝集粒子(2)を得る工程
なお、工程(3A)及び工程(3B)を実施する場合には、工程(4)における「工程(3)で得られた凝集粒子」とは、「工程(3B)で得られた凝集粒子(2)」のことをいう。また、工程(3A)を実施し、工程(3B)を実施しない場合には、工程(4)における「工程(3)で得られた凝集粒子」とは、「工程(3A)で得られた凝集粒子(1)」のことをいう。
工程(3A)は、工程(2)で得られた樹脂粒子(X)を、水性媒体中で、非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)の存在下で凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程である。
以下においては、前記(3−1)の方法、すなわち、樹脂粒子(X)の水系分散体、非晶質樹脂(B)を含有する樹脂粒子(Y)の水系分散体、ワックス(W2)を含有するワックス(W2)粒子分散液、及び必要に応じて、凝集剤、界面活性剤、着色剤等の任意成分を水性媒体中で凝集して凝集粒子を得る方法を例に説明する。
非晶質樹脂(B)は、多価アルコール成分(以下、「多価アルコール成分(B−al)」ともいう)と多価カルボン酸成分(以下、「多価カルボン酸成分(B−ac)」ともいう)とを重縮合して得られるポリエステル樹脂からなるセグメント(以下、「ポリエステルセグメント(b1)」ともいう)を含有する非晶質樹脂である。
結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、その値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
ポリエステルセグメント(b1)は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、多価アルコール成分(B−al)と多価カルボン酸成分(B−ac)とを重縮合して得られるポリエステル樹脂からなるセグメントである。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、好ましくは、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(ポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)から選ばれる1種以上であり、より好ましくはビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは4以下である。
これらの多価アルコール成分(B−al)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
多価カルボン酸成分(B−ac)には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸は、同様の観点から、炭素数2以上30以下が好ましく、炭素数3以上20以下がより好ましい。
炭素数2以上30以下の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられ、トナーの帯電特性を向上させる観点から、フマル酸が好ましい。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。
これらの中でも、テレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸が好ましく、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、これらを組み合わせて使用することがより好ましく、テレフタル酸及びフマル酸を併用することが更に好ましい。
また、3価以上の多価カルボン酸を含む場合の含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、多価カルボン酸成分(B−ac)中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
これらの多価カルボン酸成分(B−ac)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ビニル系樹脂セグメント(b2)は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、スチレン系化合物由来の構成単位を含有することが好ましい。
ビニル系樹脂セグメント(b2)の由来成分である原料ビニルモノマー中、スチレン系化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
ここで、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを示す。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、また、モノマーの入手容易性の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル又はメタクリル酸ステアリルが好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
なお、「(イソ又はターシャリー)」とは、ノルマル、イソ又はターシャリー、「(イソ)」とは、ノルマル又はイソを意味する。
スチレン系化合物と(メタ)アクリル酸エステルとを併用する場合、ビニル系樹脂セグメント(b2)の由来成分である原料ビニルモノマー中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
また、ビニル系樹脂セグメント(b2)の由来成分である原料ビニルモノマー中における、スチレン系化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの総量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
非晶質樹脂(B)が複合樹脂である場合、原料モノマーとして両反応性モノマーを用いると、該両反応性モノマーがポリエステルセグメント(b1)とビニル系樹脂セグメント(b2)との両方と反応することにより、複合樹脂を製造することができる。すなわち、複合樹脂である非晶質樹脂(B)は、両反応性モノマーに由来する構成単位を含むことが好ましく、該両反応性モノマーに由来する構成単位が、前記ビニル系樹脂セグメント(b2)と前記ポリエステルセグメント(b1)との結合点となることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上の官能基を有するビニルモノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及び/又はカルボキシ基を有するビニルモノマーが好ましく、カルボキシ基を有するビニルモノマーがより好ましい。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
また、複合樹脂中のビニル系樹脂セグメント(b2)の含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
また、複合樹脂中のポリエステルセグメント(b1)とビニル系樹脂セグメント(b2)との総含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
非晶質樹脂(B)は、具体的には、以下の(i)の方法により製造することが、重縮合反応の反応温度の自由度が高い点から好ましい。
(i)多価アルコール成分(B−al)及び多価カルボン酸成分(B−ac)による重縮合反応の後に、必要に応じて用いられるビニル系樹脂セグメント(b2)の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応を行う方法
なお、非晶質樹脂(B)が複合樹脂の場合、反応性の観点から、ビニル系樹脂セグメント(b2)の原料モノマーとともに両反応性モノマーが反応系に供給されることが好ましい。また、反応性の観点から、エステル化触媒、エステル化助触媒等の触媒を用いてもよく、更にラジカル重合開始剤及びラジカル重合禁止剤を用いてもよい。
また、多価カルボン酸成分(B−ac)は、一部を重縮合反応に供し、次いで付加重合反応を行った後に再度反応温度を上昇させ、残部を反応系に添加することが、重縮合反応及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応を更に進めることができるためより好ましい。
(ii)ビニル系樹脂セグメント(b2)の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の後に、ポリエステルセグメント(b1)の原料モノマーによる重縮合反応を行う方法
(iii)多価アルコール成分(B−al)及び多価カルボン酸成分(B−ac)による重縮合反応とビニル系樹脂セグメント(b2)の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応とを並行して行う方法
前記(i)〜(iii)の方法の重縮合反応及び付加重合反応は、いずれも、同一容器内で行うことが好ましい。
また、重縮合反応の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
エステル化触媒の使用量は、反応性の観点から、多価アルコール成分(B−al)と多価カルボン酸成分(B−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
エステル化助触媒の使用量は、反応性の観点から、多価アルコール成分(B−al)と多価カルボン酸成分(B−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。
ラジカル重合禁止剤の使用量は、多価アルコール成分(B−al)と多価カルボン酸成分(B−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。
付加重合反応の重合開始剤としては、ジブチルパーオキサイド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、ビニル系樹脂セグメント(b2)の原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
なお、非晶質樹脂(B)を2種以上混合して使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
樹脂粒子(Y)は、非晶質樹脂(B)を含有する樹脂成分と、必要に応じて着色剤等の任意成分とを水性媒体中に分散させ水系分散体として得ることが好ましい。
水系分散体を得る方法は、樹脂粒子(X)の場合と同じく、非晶質樹脂(B)等を水性媒体に添加し、分散機を用いて分散する方法、非晶質樹脂(B)等に水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法等が挙げられ、得られるトナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、転相乳化による方法が好ましい。
転相乳化法においても、樹脂粒子(X)の場合と同様に、樹脂と、その他前記任意成分とを有機溶媒に溶解させて得られた溶液に、水性媒体を添加して転相乳化する方法が好ましい。使用できる水性媒体及び有機溶媒の好ましい態様も、前記樹脂粒子(X)の製造と同様である。
中和剤による非晶質樹脂(B)の中和度(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
同様の観点から、水性媒体と前記有機溶媒との質量比(水性媒体/有機溶媒)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは80/20以上であり、そして、好ましくは97/3以下、より好ましくは93/7以下、更に好ましくは90/10以下である。
水性媒体の添加速度は、小粒径の樹脂粒子(Y)を得る観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子(Y)を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは0.5質量部/分以上、更に好ましくは1質量部/分以上、より更に好ましくは5質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下、より更に好ましくは10質量部/分以下である。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
有機溶媒の除去方法及び水系分散体中の有機溶媒の残存量の好ましい態様は、前記樹脂粒子(X)の製造と同様である。
ワックス(W2)としては、エステル系ワックス、炭化水素ワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミド等を用いることができる。中でも、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、炭化水素ワックスが好ましい。
炭化水素ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス等が挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックスが好ましい。
エステル系ワックスとしては、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の長鎖アルコールと脂肪酸とからなるエステル;ペンタエリスリトールとベヘン酸等の脂肪酸とからなるエステル;カルナウバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、ミツロウ等の天然ワックスが挙げられ、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくはペンタエリスリトールとベヘン酸等の脂肪酸とからなるエステルである。
ワックス(W2)粒子は、ワックス(W2)を水性媒体に分散した分散液として得ることが好ましい。具体的には、ワックス(W2)と水性媒体とを、界面活性剤等の存在下、ワックス(W2)の融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。
超音波分散機としては、例えば超音波ホモジナイザーが挙げられる。その市販品としては、「US−150T」、「US−300T」、「US−600T」(株式会社日本精機製作所製)、「SONIFIER(登録商標)4020−400」、「SONIFIER(登録商標)4020−800」(ブランソン社製)等が挙げられる。
高圧分散機として市販される装置としては、高圧湿式微粒化装置「ナノマイザー(登録商標)NM2−L200−D08」(吉田機械興業株式会社製)が挙げられる。
また、前記分散機を使用する前に、ワックス(W2)、界面活性剤、及び水性媒体を、予めホモミキサー、ボールミル等の混合機で予備分散させておくことが好ましい。
ワックス(W2)の水性媒体の好ましい態様は、前記樹脂粒子(Y)の水系分散体を得る際に用いられる水性媒体と同様である。
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、ワックス粒子の分散安定性を向上させる観点、及びワックス粒子と樹脂粒子の凝集性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤である。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等が挙げられ、好ましくはアルケニルコハク酸ジカリウムである。
ワックス(W2)粒子の体積中位粒径及びCV値は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で求められる。
なお、本発明で製造されるトナーには、必要に応じて、着色剤、帯電制御剤を含有させてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤等を含有させてもよい。
凝集粒子(1)は、樹脂粒子(X)の水系分散体、樹脂粒子(Y)の水系分散体、ワックス(W2)粒子分散液、及び必要に応じて、凝集剤、界面活性剤、着色剤等の任意成分を水性媒体中で凝集して凝集粒子を得る方法によって好適に製造することができる。
具体的には、まず、樹脂粒子(X)の水系分散体、樹脂粒子(Y)の水系分散体、ワックス(W2)粒子分散液、及び必要に応じて、凝集剤、界面活性剤、着色剤等の任意成分を水性媒体中で混合して、混合分散液を得ることが好ましい。そして、混合分散液中の粒子を凝集させて、凝集粒子(1)の分散液を得る。凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
なお、樹脂粒子(X)又は樹脂粒子(Y)に着色剤を混合しない場合には、該混合分散液中に着色剤を混合することが好ましい。また、混合分散液には、樹脂粒子(X)及び樹脂粒子(Y)以外の樹脂粒子を混合してもよい。
樹脂粒子(X)及び樹脂粒子(Y)の含有量は、該混合分散液中の全樹脂粒子中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
混合の順序は、いずれかを順に添加しても、同時に添加してもよい。
前記混合分散液中に着色剤を混合する場合、着色剤を水性媒体に分散した着色剤粒子の分散液を用いることが好ましい。
前記着色剤としては、顔料及び染料が挙げられ、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料が挙げられる。シアン顔料は、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料は、モノアゾ顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料が好ましい。マゼンタ顔料は、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックが好ましい。
染料としては、アクリジン染料、アゾ染料、ベンゾキノン染料、アジン染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、フタロシアニン染料、アニリンブラック染料等が挙げられる。
着色剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の使用量は、印刷物の画像濃度を向上させる観点、及び高画質の画像を得る観点から、樹脂粒子(X)及び樹脂粒子(Y)の総量100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
着色剤粒子の分散液は、着色剤と水性媒体とを、界面活性剤等の存在下、分散機を用いて分散して得ることが好ましい。分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。
前記水性媒体の好ましい態様は、前記樹脂粒子(X)の水系分散体に用いられる水性媒体と同様である。
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点、並びに着色剤粒子と樹脂粒子(X)及び樹脂粒子(Y)との凝集性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤である。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等が挙げられ、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
前記混合分散液中の樹脂粒子(X)と樹脂粒子(Y)との質量比〔(X)/(Y)〕は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは2/98以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは8/92以上であり、そして、好ましくは30/70以下、より好ましくは25/75以下、更に好ましくは15/85以下、より更に好ましくは12/88以下である。
次に、混合分散液中の粒子を凝集させて、凝集粒子(1)の分散液を得る。凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
凝集剤は、過剰な凝集を防ぎつつ、所望の粒径のトナーを得る観点から、電解質であることが好ましく、塩であることがより好ましい。具体的には、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が挙げられる。凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、無機系凝集剤が好ましく、無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましい。
無機系凝集剤のカチオンの価数は、過剰な凝集を防ぎつつ、所望の粒径のトナーを得る観点から、好ましくは5価以下、より好ましくは2価以下、更に好ましくは1価である。無機系凝集剤の1価のカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられ、得られるトナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、アンモニウムイオンが好ましい。
無機金属塩としては、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。
無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
凝集剤としては、硫酸アンモニウムがより好ましい。
凝集剤は、凝集を制御して所望の粒径の凝集粒子を得る観点から、水溶液として滴下することが好ましく、凝集剤の水溶液の濃度は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。
また、凝集を制御して所望の粒径及び粒径分布の凝集粒子を得る観点から、凝集剤の水溶液は、pHを7.0以上9.0以下に調整して使用することが好ましい。
また、凝集剤を滴下する温度は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下、より更に好ましくは30℃以下である。
前記温度範囲にて、凝集粒子の体積中位粒径をモニタリングすることによって、凝集の進行を確認することが好ましい。
工程(3B)は、工程(3A)で得られた凝集粒子(1)に、非晶質ポリエステル(C)を含有する樹脂粒子(Z)を添加して、凝集粒子(1)に該樹脂粒子(Z)を付着してなる凝集粒子(2)を得る工程である。
工程(3)は、工程(3A)のみでも本発明の効果であるトナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性、並びにトナーの耐久性を向上させることができるが、更に工程(3B)を行うことで、凝集粒子(1)中に微分散されたワックス(W2)が次の工程(4)における凝集粒子(2)中の各粒子の融着の際に、より脱離しにくくなるとともに、得られるトナー粒子の表面にワックス(W2)が露出することを更に抑制できる。
樹脂粒子(Z)は、非晶質ポリエステル(C)を含有する樹脂成分を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(Z)の水系分散体として得る方法によって製造する。
本発明において、非晶質樹脂とは、前述の結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満のものであり、非晶質ポリエステル(C)は、前述の結晶性指数が、1.4を超えるか、0.6未満のポリエステルである。
結晶性指数は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度等)等により調整することができ、また、その値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
非晶質ポリエステル(C)は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、多価アルコール成分(C−al)と多価カルボン酸成分(C−ac)とを重縮合して得られるポリエステル樹脂である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、好ましくは、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(ポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)から選ばれる1種以上であり、より好ましくはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは4以下である。
これらの多価アルコール成分(C−al)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
多価カルボン酸成分(C−ac)には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸は、同様の観点から、炭素数2以上30以下が好ましく、炭素数3以上20以下がより好ましい。
炭素数2以上30以下の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられ、トナーの帯電特性を向上させる観点から、フマル酸が好ましい。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。
これらの中でも、テレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸が好ましく、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、これらを組み合わせて使用することがより好ましく、これら3種を併用することが更に好ましい。
また、3価以上の多価カルボン酸を含む場合の含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、多価カルボン酸成分(C−ac)中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
これらの多価カルボン酸成分(C−ac)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、非晶質ポリエステル(C)を2種以上混合して使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
非晶質ポリエステル(C)は、例えば、前記多価アルコール成分(C−al)と前記多価カルボン酸成分(C−ac)とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒、エステル化助触媒、ラジカル重合禁止剤等を用いて重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒、エステル化助触媒、及びラジカル重合禁止剤は、前記ポリエステルセグメント(b1)の合成に用いたものと同様のものを挙げることができる。
エステル化助触媒の使用量は、反応性の観点から、多価アルコール成分(C−al)と多価カルボン酸成分(C−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下である。
ラジカル重合禁止剤の使用量は、多価アルコール成分(C−al)と多価カルボン酸成分(C−ac)との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、更に好ましくは0.15質量部以下である。
また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
樹脂粒子(Z)は、非晶質ポリエステル(C)を含有する樹脂成分と、必要に応じて前記の任意成分とを水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(Z)の水系分散体として得ることが好ましい。
水系分散体を得る方法は、樹脂粒子(X)の場合と同様である。
中和剤による非晶質ポリエステル(C)の中和度(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
同様の観点から、水性媒体と前記有機溶媒との質量比(水性媒体/有機溶媒)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは80/20以上であり、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である。
水性媒体の添加速度は、小粒径の樹脂粒子(Z)を得る観点から、転相が終了するまでは、樹脂粒子(Z)を構成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部/分以上、より好ましくは0.5質量部/分以上、更に好ましくは1質量部/分以上、より更に好ましくは3質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下、より更に好ましくは10質量部/分以下である。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
有機溶媒の除去方法及び水系分散体中の有機溶媒の残存量の好ましい態様は、前記樹脂粒子(X)の製造と同様である。
樹脂粒子(Z)に含まれる全樹脂成分中における非晶質ポリエステル(C)の含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
また、樹脂粒子(Z)には、必要に応じて、前記着色剤、帯電制御剤を含有させてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤等を含有させてもよい。
工程(3B)は、工程(3A)で得られた凝集粒子(1)に、樹脂粒子(Z)を添加して、凝集粒子(1)に樹脂粒子(Z)を付着してなる凝集粒子(2)を得る工程であり、前述した凝集粒子(1)の分散液に、樹脂粒子(Z)の水系分散体を添加することにより、凝集粒子(1)に更に樹脂粒子(Z)を付着させ、凝集粒子(2)の分散液を得ることが好ましい。
樹脂粒子(Z)の水系分散体を連続的に添加する場合の添加速度は、均一な凝集粒子(2)を得る観点、及びトナーの生産性を向上させる観点から、凝集粒子(1)100質量部に対して、樹脂粒子(Z)が、好ましくは0.03質量部/min以上、より好ましくは0.07質量部/min以上であり、そして、好ましくは1.0質量部/min以下、より好ましくは0.5質量部/min以下、更に好ましくは0.3質量部/min以下である。
工程(3B)を行う場合、結晶性ポリエステル(A)、非晶質樹脂(B)、及び非晶質ポリエステル(C)の合計含有量は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、トナーを構成する全樹脂成分中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
また、非晶質ポリエステル(C)と結晶性ポリエステル(A)及び非晶質樹脂(B)の合計との質量比[(C)/((A)+(B))]は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下である。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、より好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、更に好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムである。
凝集停止剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、樹脂粒子(X)、樹脂粒子(Y)、及び樹脂粒子(Z)の総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。凝集停止剤は、トナーの生産性を向上させる観点から、水溶液で添加することが好ましい。
工程(4)は、工程(3)で得られた凝集粒子中の各粒子を融着させる工程である。
凝集粒子中の、主として物理的にお互いに付着している状態であった各粒子が融着されて一体となり、融着粒子(トナー粒子)が形成される。
保持温度は、凝集粒子の融着性を向上させる観点、及びトナーの生産性を向上させる観点から、樹脂粒子(Y)を構成する樹脂又は樹脂粒子(Z)を構成する樹脂のガラス転移温度の最大値より、好ましくは2℃高い温度以上、より好ましくは4℃高い温度以上、更に好ましくは6℃高い温度以上であり、そして、樹脂粒子(Y)を構成する樹脂又は樹脂粒子(Z)を構成する樹脂のガラス転移温度の最大値より、好ましくは30℃高い温度以下、より好ましくは20℃高い温度以下、更に好ましくは12℃高い温度以下である。
その際、樹脂粒子(Y)を構成する樹脂又は樹脂粒子(Z)を構成する樹脂のガラス転移温度の最大値以上の温度で保持する時間は、得られるトナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは240分以下、より好ましくは180分以下、更に好ましくは120分以下、より更に好ましくは90分以下である。
工程(4)で得られる分散液中の融着粒子の円形度は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
工程(4)の後に後処理工程を行ってもよく、単離することによってトナー粒子を得ることが好ましい。
工程(4)で得られた分散液中の融着粒子は、水性媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。このとき、添加した界面活性剤も除去することが好ましいため、界面活性剤の曇点以下で水性媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
<トナー粒子>
乾燥等を行うことによって得られたトナー粒子は、静電荷像現像用トナーとしてそのまま用いることもできるが、後述のようにトナー粒子の表面を処理したものを静電荷像現像用トナーとして用いることが好ましい。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、トナーの生産性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー粒子のCV値は、トナーの生産性を向上させる観点から、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上、更に好ましくは16%以上であり、そして、高画質の画像を得る観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは26%以下である。
トナー粒子の円形度は、トナーの低温定着性及び低温定着性の経時安定性を向上させる観点、並びにトナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
前記トナー粒子は、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等が挙げられ、これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
JIS K 0070に従って測定した。但し、測定溶媒をクロロホルムとした。
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。
結晶性ポリエステルの場合には、該ピーク温度を融点とした。また、非晶質ポリエステルの場合に、ピークが観測される時はそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測される時は該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の高温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
JIS K 0070に従って測定した。但し、測定溶媒をキシレン/エタノール混合溶媒(質量比3:5)とした。
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
以下に示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量(Mn)を測定した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をクロロホルムに25℃で溶解させ、次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター(製品名:「DISMIC」、型式「25JP」、ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)測定
以下の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、1mL/minの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させ、そこに前記試料溶液100μLを注入して分子量を測定した。試料の分子量(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)は、数種類の単分散ポリスチレン(製品名:「TSKgel標準ポリスチレン」;タイプ名(Mw):「A−500(5.0×102)」、「A−1000(1.01×103)」、「A−2500(2.63×103)」、「A−5000(5.97×103)」、「F−1(1.02×104)」、「F−2(1.81×104)」、「F−4(3.97×104)」、「F−10(9.64×104)」、「F−20(1.90×105)」、「F−40(4.27×105)」、「F−80(7.06×105)」、「F−128(1.09×106)」;いずれも東ソー株式会社製)を標準試料として、予め作成した検量線に基づき算出した。
・測定装置:「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)
・分析カラム:「GMHXL」及び「G3000HXL」(東ソー株式会社製)
・測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」(株式会社堀場製作所製)
・測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度を適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を測定した。また、CV値は、下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
・測定装置:赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)
・測定条件:測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5min/変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は、下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−水分(質量%)
凝集粒子(1)の体積中位粒径(D50)は、以下のとおり測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
下記条件で融着粒子の円形度を測定した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:融着粒子の分散液を固形分濃度が0.001〜0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
トナー粒子の体積中位粒径は、以下の通り測定した。
測定装置、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、凝集粒子の体積中位粒径と同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を求めた。
また、CV値(%)は下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
(最低定着温度)
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が1.4〜1.5mg/cm2となるベタ画像をA4紙の上端から5mmの余白部分を残し、50mmの長さで定着させずに出力した。
次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を90℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.3秒の速度で定着し、印刷物を得た。
同様の方法で定着器の温度を5℃ずつ上げて、定着し、印刷物を得た。
印刷物の画像上の上端の余白部分からベタ画像にかけて、メンディングテープ「Scotch(登録商標)メンディングテープ810」(住友スリーエム株式会社製、幅18mm)を長さ50mmに切ったものを軽く貼り付けた後、500gのおもりを載せ、速さ10mm/secで1往復押し当てた。その後、貼付したテープを下端側から剥離角度180度、速さ10mm/secで剥がし、テープ剥離後の印刷物を得た。テープ貼付前及び剥離後の印刷物の下に上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(株式会社沖データ製)を30枚敷き、各印刷物のテープ貼付前及び剥離後の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、これらの値から下記の式で定着率を算出した。
定着率(%)=(テープ剥離後の反射画像濃度/テープ貼付前の反射画像濃度)×100
定着率が90%以上となる最低の温度を最低定着温度(1)とした。最低定着温度(1)が低いほど低温定着性に優れることを表す。
トナーを40℃の恒温槽で24時間保持した後、前記と同様の方法で最低定着温度(2)を測定した。次に、最低定着温度(1)と最低定着温度(2)の差を算出し、低温定着性の経時安定性を評価した。数値の絶対値が小さいほど、低温定着性の経時安定性に優れていることを表す。
(スジムラ発生までの時間)
現像ローラを目視で見ることができるように改造したIDカートリッジを備えた市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)のIDカートリッジにトナーを実装し、温度30℃、相対湿度80%の条件下で、70r/min(36枚/分相当)で空回し運転を行い、現像ローラ表面のスジムラの発生を目視にて観察し、スジムラが発生するまでの時間を測定し、耐久性の指標とした。数値が大きいほど、耐久性に優れていることを表す。
なお、スジムラとは現像ローラ上に付着しているトナー量にばらつきが発生している状態のことをいい、スジムラの発生により、印刷の際に画像濃度に濃淡が発生する。
製造例A1
(結晶性ポリエステルA−1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10−デカンジオール3416g、セバシン酸4084g及び炭化水素ワックス(W1)「パラコール6490」(日本精蝋株式会社製、Mn800、融点76℃、酸価18mgKOH/g、水酸基価97mgKOH/g)341gを入れた。撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間維持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)16gを加え、更に200℃にて1時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持し、結晶性ポリエステルA−1を得た。物性を表1に示す。
(結晶性ポリエステルA−2〜A−7、A−9、A−10の製造)
原料モノマー及び炭化水素ワックス(W1)の種類及び量を表1に示すように変更した以外は製造例A1と同様にして、結晶性ポリエステルA−2〜A−7、A−9、A−10を得た。物性を表1に示す。
(結晶性ポリエステルA−8の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,9−ノナンジオール4294g、フマル酸3206g、炭化水素ワックス(W1)「パラコール6490」(日本精蝋株式会社製、Mn800、融点76℃、酸価18mgKOH/g、水酸基価97mgKOH/g)327g、及び4−tert−ブチルカテコール5gを入れた。撹拌しながら、140℃に昇温し、140℃で6時間維持した後、140℃から200℃まで6時間かけて昇温した。その後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)16gを加え、更に200℃にて1時間維持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間維持し、結晶性ポリエステルA−8を得た。物性を表1に示す。
(非晶質樹脂B−1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3061g、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1281g、テレフタル酸1327g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g及び没食子酸3gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン723g、アクリル酸2−エチルへキシル616g、アクリル酸72g及びジブチルパーオキサイド54gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、180℃まで冷却し、フマル酸58g、トリメリット酸無水物264g及び4−tert−ブチルカテコール0.5gを加え、220℃まで10℃/hrで昇温し、その後、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶質樹脂B−1を得た。物性を表2に示す。
(非晶質樹脂B−2の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3489g、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1388g、テレフタル酸709g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g及び没食子酸3gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、230℃で8時間保持した後、180℃まで冷却し、フマル酸496g、ドデセニルコハク酸無水物1145g、トリメリット酸無水物273g、及び4−tert−ブチルカテコール3.8gを加え、220℃まで10℃/hrで昇温し、その後、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶質樹脂B−2を得た。物性を表2に示す。
(非晶質ポリエステルC−1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5001g、テレフタル酸1788g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)30g及び没食子酸3gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で8時間保持した後、180℃まで冷却し、フマル酸179g、ドデセニルコハク酸無水物206g、トリメリット酸無水物325g、及び4−tert−ブチルカテコール3.8gを加え、220℃まで10℃/hrで昇温し、その後、フラスコ内の圧力を下げ、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶質ポリエステルC−1を得た。物性を表2に示す。
製造例X1
(樹脂粒子の水系分散体X−1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、結晶性ポリエステルA−1 300g、メチルエチルケトン180gを入れ、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、結晶性ポリエステルA−1の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水1000gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子の水系分散体X−1を得た。物性を表3に示す。
(樹脂粒子の水系分散体X−2〜X−9、X−11、Y−1、Y−2、Z−1の製造)
樹脂の種類を表3に示すように変更した以外は、製造例X1と同様にして樹脂粒子の水系分散体X−2〜X−9、X−11、Y−1、Y−2、及びZ−1を得た。物性を表3に示す。
(樹脂粒子の水系分散体X−10の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、結晶性ポリエステルA−1 30g、非晶質樹脂B−1 270g、メチルエチルケトン180gを入れ、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、[(結晶性ポリエステルA−1の酸価)×0.1+(非晶質樹脂B−1の酸価)×0.9]に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、280r/min(周速度88m/min)で撹拌しながら、脱イオン水1000gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子の水系分散体X−10を得た。物性を表3に示す。
製造例D1
(ワックス(W2)粒子分散液D−1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水213g、アニオン性界面活性剤「ラテムル(登録商標)ASK」(花王株式会社製、アルケニルコハク酸ジカリウム水溶液、有効濃度28質量%)5.36gを混合した後、これに、パラフィンワックス「HNP−9」(日本精鑞株式会社製、融点75℃)50gを添加し、95〜98℃に温度を保持しながらホモミキサーにより撹拌し、予備分散液を得た。
得られた予備分散液を更に90〜95℃に温度を保持しながら、高圧湿式微粒化装置「ナノマイザー(登録商標)NM2−L200−D08」(吉田機械興業株式会社製)を用いて、20MPaの圧力で2回処理した後に25℃まで冷却し、脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、ワックス(W2)粒子分散液D−1を得た。分散液中のワックス(W2)の体積中位粒径(D50)は0.44μm、CV値は40%であった。
(ワックス(W2)粒子分散液D−2の製造)
製造例D1において、パラフィンワックス「HNP−9」(日本精鑞株式会社製、融点75℃)を、エステル系ワックス「WEP−8」(日本精蝋株式会社製、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、融点78℃)に変更した以外は製造例D1と同様にして、ワックス(W2)粒子分散液D−2を得た。分散液中のワックス(W2)粒子の体積中位粒径(D50)は0.40μm、CV値は38%であった。
製造例E1
(着色剤分散液E−1の製造)
1リットル容のビーカーに、銅フタロシアニン顔料「ECB−301」(大日精化工業株式会社製)116.2g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G−15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)154.9g及び脱イオン水340gを混合し、ホモジナイザーを用いて室温下で3時間分散させた後、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤分散液E−1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は0.118μmであった。
実施例1
(トナー1の製造)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3リットルの4つ口フラスコに、樹脂粒子の水系分散体X−1 30g、樹脂粒子の水系分散体Y−1 270g、ワックス(W2)粒子分散液D−1 28g、着色剤分散液E−1 23g、及び非イオン性界面活性剤「エマルゲン(登録商標)150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレン(50mol)ラウリルエーテル)の10質量%水溶液6gを温度25℃で混合した。次に、該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム17gを脱イオン水178gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.1に調整した溶液を、25℃で5分かけて滴下した後、60℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径が5.1μmになるまで、60℃で保持し、凝集粒子(1)の分散液を得た。
得られた凝集粒子(1)の分散液に、アニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E−27C」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)9.4g、脱イオン水970gを混合した水溶液を添加した。その後、73℃まで1時間かけて昇温し、円形度が0.970になるまで73℃で保持することにより、融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却して、分散液を吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、33℃で乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の物性を表4に示す。該トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュのフルイを通過させてトナー1を得た。トナーの評価を表4に示す。
(トナー2、3、6〜12、15、16の製造)
実施例1において、使用する樹脂粒子の水系分散体及びワックス粒子分散液を表4に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、トナー2、3、6〜12、15、16を得た。物性及び評価を表4に示す。
(トナー4の製造)
実施例1において、樹脂粒子の水系分散体X−1の使用量を15g、樹脂粒子の水系分散体Y−1の使用量を285gに変更した以外は実施例1と同様にして、トナー4を得た。物性及び評価を表4に示す。
(トナー5の製造)
実施例1において、樹脂粒子の水系分散体X−1の使用量を60g、樹脂粒子の水系分散体Y−1の使用量を240gに変更した以外は実施例1と同様にして、トナー5を得た。物性及び評価を表4に示す。
(トナー13の製造)
実施例1において、樹脂粒子の水系分散体X−1 30g及び樹脂粒子の水系分散体Y−1 270gを、樹脂粒子の水系分散体X−10 300gに変更した以外は実施例1と同様にして、トナー13を得た。物性及び評価を表4に示す。
(トナー14の製造)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3リットルの4つ口フラスコに、樹脂粒子の水系分散体X−1 30g、樹脂粒子の水系分散体Y−1 270g、ワックス(W2)粒子分散液D−1 28g、着色剤分散液E−1 23g、及び非イオン性界面活性剤「エマルゲン(登録商標)150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレン(50mol)ラウリルエーテル)の10質量%水溶液6gを温度25℃で混合した。次に、該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム17gを脱イオン水178gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.1に調整した溶液を、25℃で5分かけて滴下した後、56℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径が4.3μmになるまで、56℃で保持し、凝集粒子(1)の分散液を得た。
得られた凝集粒子(1)の分散液の温度を56℃に保持しながら、樹脂粒子の水系分散体Z−1 79gを0.3ml/minの速度で滴下し、凝集粒子(2)の分散液を得た。
得られた凝集粒子(2)の分散液に、アニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E−27C」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)10g、脱イオン水1000gを混合した水溶液を添加した。その後、73℃まで1時間かけて昇温し、円形度が0.970になるまで73℃で保持することにより、融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却して、分散液を吸引濾過で固形分を分離した後、脱イオン水で洗浄し、33℃で乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の物性を表4に示す。該トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れ、撹拌し、150メッシュのフルイを通過させて、トナー14を得た。トナーの評価を表4に示す。
(トナー17の製造)
実施例1において、樹脂粒子の水系分散体Y−1の使用量を300gとし、樹脂粒子の水系分散体X−1を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、トナー17を得た。物性及び評価を表4に示す。
Claims (9)
- 下記工程(1)〜(4)を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程(1):水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)の存在下で、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合を行い、該炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分を含有する結晶性ポリエステル(A)を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた結晶性ポリエステル(A)を水性媒体中に分散させ、樹脂粒子(X)の水系分散体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた樹脂粒子(X)を、水性媒体中で、ポリエステルセグメント(b1)を含有する非晶質樹脂(B)及びワックス(W2)の存在下で凝集させて、凝集粒子を得る工程
工程(4):前記工程(3)で得られた凝集粒子を融着させる工程 - 炭化水素ワックス(W1)の融点が60℃以上120℃以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 結晶性ポリエステル(A)中の炭化水素ワックス(W1)由来の構成成分の含有量が、0.7質量%以上15質量%以下である、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 炭化水素ワックス(W1)の数平均分子量が500以上2000以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 結晶性ポリエステル(A)と非晶質樹脂(B)との質量比〔(A)/(B)〕が2/98以上30/70以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 結晶性ポリエステル(A)とワックス(W2)との質量比〔(A)/(W2)〕が0.10以上5.0以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 結晶性ポリエステル(A)が、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックス(W1)の存在下で、炭素数4以上16以下のα,ω−脂肪族ジオールを80モル%以上含む多価アルコール成分と、炭素数2以上30以下の脂肪族ジカルボン酸を含む多価カルボン酸成分とを重縮合して得られる、請求項1〜6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記工程(3)が、樹脂粒子(X)の水系分散体、非晶質樹脂(B)を含有する樹脂粒子(Y)の水系分散体、及びワックス(W2)を含有するワックス粒子分散液を混合し、凝集させる工程である、請求項1〜7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 結晶性ポリエステル(A)に対する炭化水素ワックス(W1)の使用量が、使用した炭化水素ワックス(W1)がすべて結晶性ポリエステル(A)と反応した場合に、結晶性ポリエステル(A)中の炭化水素ワックス(W1)の含有量が1質量%以上15質量%以下となる量である、請求項1〜8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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