JP2016172888A - 冷間加工性に優れた鋼線材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼成分が質量%で、C:0.1〜1.2%、Si:0.02〜1.0%、Mn:0.2〜1.5%、Al:0.001〜0.05%を含有し、N:0.03%以下、P:0.020%以下、S:0.020%以下に制限し、フェライト粒径が1μm≦フェライト粒径≦15μm、であり、かつしきい値以上の粒径の分布から極値統計法によって算出する球状化セメンタイトの最大径が1.5μm以下の微細球状化セメンタイト−微細フェライト組織とする。
【選択図】なし
Description
(1)鋼成分が質量%で、C:0.1〜1.2%、Si:0.02〜1.0%、Mn:0.2〜1.5%、Al:0.001〜0.05%を含有し、N:0.03%以下、P:0.020%以下、S:0.020%以下に制限し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、フェライト粒径が1μm<フェライト粒径<15μmとなり、パーライト面積率が10%以下となり、しきい値以上の粒径の分布から極値統計法によって算出する球状化セメンタイトの最大径が1.5μm以下となることを特徴とする冷間加工性に優れた鋼線材。
さらに、球状化セメンタイトの粒径分布のうち、しきい値以上の粒径の分布から極値統計法によって算出する球状化セメンタイトの最大値が1.5μm以下の場合、加工時のセメンタイトの割れを抑制することができることが分かった。
[セメンタイトと組織の定義]
本発明において、板状セメンタイトとはアスペクト比で5以上のセメンタイトを指し、球状化セメンタイトとはアスペクト比で5以下のセメンタイトを指すものとする。なお、セメンタイトのアスペクト比はセメンタイト最大径(長径)と最小径(短径)とを求め、アスペクト比=(長径)/(短径)として計算する。
本発明において、球状化セメンタイト組織とは、球状化セメンタイトを有するフェライト組織をさし、パーライト組織やベイナイト、マルテンサイトを非球状化セメンタイト組織とする。非球状化セメンタイト組織面積率の測定には、鋼線材の表層、中間、中心部において1000倍以上のSEM画像を各々2枚以上取得し、行った。
球状化セメンタイト径の測定情報を基にした鋼線材の一定体積中に存在し得る最大の球状化セメンタイト径の予測方法を説明する。
X1≦X2≦X3・・・・・・・・≦Xn
ここでnはしきい値uを超える球状化セメンタイト粒数であり、Xnは最大の球状化セメンタイト径である。次にXi以下の存在確率YをYi=i/(N+1)で定義し、これを点(Xi,Yi)としてXY直交座標系にプロットする。なお、Nは測定した全球状化セメンタイト粒数である。これを下記式(3)で示すベータ関数H(X)に近似する。
ベータ関数のパラメータσ、ξの算出は最尤法を用い、その対数尤度l(σ、ξ)は、下記式(4)となる。
フェライト粒径は鋼線材中心部を測定箇所とし、電子線後方散乱(Electron BackScatter Diffraction、EBSDという)法によって測定する。鋼線材長手方向に垂直な断面をコロイダルシリカ粒子により鏡面研磨し、径方向の中心部近傍でEBSD法による測定を行い、フェライト結晶方位のマップを作成する。マッピングの領域は一辺がいずれも500μm以上の矩形領域で行い、ピクセル形状は正6角形要素配置、ステップは0.5μm間隔で行う。
変態直前のオーステナイト粒径は、オーステナイト域から変態させるための冷却時に急冷を行い、マルテンサイト組織とし、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムでのエッチングにて旧オーステナイト粒界を現出させることで測定する。測定方法はJIS切断法にのっとり、平均値を算出する。
以下、成分に関する記載において、%は全て質量%である。
[C]
Cは、鋼材の強度を付与するためのセメンタイトを形成する元素である。C量が0.10%未満であると、必要な強度を得ることができず、一方、C量が1.20%を超えると、強度が過大となり、延性、靭性が低下する。したがって、C量は、0.10〜1.20%の範囲に限定する。好ましくはC量を0.20%以上とする。より好ましくは0.40%以上である。さらに好ましくは0.60%以上である。
Siは、鋼の脱酸に用いられる元素である。効果を得るためには、0.02%以上のSiを添加する。好ましくは、Si量を0.05%以上とする。一方、Si量が1.0%を超えると、熱間圧延工程で表面脱炭が発生し易くなるほか、固溶強化も過大となるため、上限を1.0%とする。好ましくはSi量を0.8%以下、より好ましくは0.5%以下とする。
Mnは、脱酸や脱硫に用いられるほか、鋼の焼き入れ性を向上させる元素であり、0.1%以上を添加する。一方、Mn量が1.5%を超えると、フェライト変態が著しく遅延するために過冷組織が発生し、鋼線材の取り扱い中に割れなどが発生する可能性がある。従って、Mn量を1.5%以下とする。好ましくはMn量を1.0%以下とする。
Alは、脱酸作用を有する元素であり、鋼中の酸素量低減のために必要である。しかし、Al含有量が0.001%未満ではこの効果が得難い。一方で、Alは硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、特に、Al含有量が0.05%を超えると、粗大な酸化物系介在物の形成が著しくなるので伸線加工性の低下が顕著になる。したがって、Alの含有量を0.001〜0.05%とした。より好ましい下限は0.01%以上であり、より好ましい上限は0.04%以下である。
Nは、冷間での加工中に転位に固着して鋼の強度を向上させ、変形能を低下させる元素である。特に、N含有量が0.02%を超えると変形能の低下が著しくなる。したがって、N含有量を0.02%以下に制限した。より好ましくは0.01%以下である。
Pは、鋼中で偏析しやすく、偏析すると著しく変態を遅らせるため、変態が完了せず、硬質なマルテンサイトが形成されやすい。これを防止するため、P含有量は0.02%以下に制限する。
Sは、多量に存在するとMnSを多量に形成し、鋼の変形能を低下させるので0.020%以下に制限する。より好ましくは0.010%以下である。
Moの添加は任意である。添加すれば、鋼線材の焼き入れ性を向上させる効果がある。この効果を得るためには、Moを0.02%以上添加することが望ましい。しかし、Moの含有量が0.20%を超えると、マルテンサイト組織が生成しやすくなり、靭性が低下する。したがって、Moの含有量は0.02〜0.20%が好ましい。より好ましくは0.08%以下である。
Bの添加は任意である。添加すれば、鋼線材の焼き入れ性を向上させる効果がある。この効果を得るためには、Bを0.0003%以上添加することが望ましい。しかし、Bの含有量が0.003%を超えると、粗大な窒化物が生成しやすくなり、伸線加工性が低下する場合がある。したがって、Bの含有量は0.0003〜0.003%が好ましい。より好ましくは0.002%以下である。
Vの添加は任意である。添加すれば、鋼線材中に炭窒化物を形成して、フェライト径を小さくする。この効果を得るためには、Vを0.02%以上添加することが望ましい。しかし、Vの含有量が0.20%を超えると、粗大な炭窒化物が生成しやすくなり、変形能が低下する場合がある。したがって、Vの含有量は0.02〜0.20%が好ましい。より好ましくは0.08%以下である。
Nbの添加は任意である。添加すれば、鋼線材中に炭窒化物を形成して、フェライト径を小さくする。この効果を得るためには、Nbを0.002%以上添加することが望ましい。しかし、Nbの含有量が0.05%を超えると、粗大な炭窒化物が生成しやすくなり、変形能が低下する場合がある。したがって、Nbの含有量は0.002〜0.05%が好ましい。より好ましくは0.02%以下である。
Tiの添加は任意である。添加すれば、鋼線材中に炭窒化物を形成して、フェライト径を小さくする。この効果を得るためには、Tiを0.002%以上添加することが望ましい。しかし、Tiの含有量が0.05%を超えると、粗大な炭窒化物を形成しやすくなり、変形能が低下する場合がある。したがって、Tiの含有量を0.02〜0.05%とすることが好ましい。より好ましくは0.03%以下である。
Crは、焼き入れ性の向上のほか、旧オーステナイト(γ)粒径の微細化に寄与する元素である。効果を得るためには0.03%以上のCrを添加する。好ましくは0.1%以上である。一方、Cr量が2.0%を超えると上記Mnと同様に焼き入れ性が大きくなり、過冷組織の発生を助長する可能性がある。従って、上限を2.0%とする。より好ましくは1.6%以下とする。
次に、本発明の鋼線材の金属組織および製造方法について説明する。
[非球状化セメンタイト面積率]
非球状化セメンタイト組織の面積率が大きいと、変形抵抗が過大となるため、変形能が低下する。本発明の実施形態では、変形能を高めるため、非球状化セメンタイト組織の面積率を10%以下とする。残部は、初析フェライトや球状化セメンタイトを有するフェライトなどの組織である。より好ましくは7%以下である。
粗大な球状化セメンタイトが存在する場合、粗大な球状化セメンタイトに変形が集中して欠陥が生じ、割れの原因となるため、変形能が低下する。本発明の変形能の良否を判断するための球状化セメンタイト径の上限として、1.5μmとした。なお、下限は低い方が好ましいが、0.3μm未満にすることは鋼線材製造工程上から難しい。
変態後のフェライト粒径は、粗大になると、変形抵抗は小さくなるものの、変形能が低下する。フェライトの平均粒径が15μmよりも大きくなると変形能の確保が困難となる。より好ましくは12μm以下である。フェライトの平均粒径が微細になりすぎると変形抵抗が大きくなるため、1μm以上とする、より好ましくは3μm以上である。
変態直前のオーステナイト粒径を5μm以下とすることで、変態直後から球状化セメンタイトを得ることが可能となる。オーステナイト粒径が5μm以上になると、変態後の組織はパーライト組織が主となってしまい、変形能の向上のためには長時間の球状化焼鈍が必要となる。より好ましくは3μm以下である。なお、変態直前のオーステナイト粒径を1μm以下とすることは製造上困難であることから、1μm以上とする。
微細なオーステナイトから変態させることで、パーライト組織を抑制し、球状化セメンタイトを得ることができる。従って、変態温度域はパーライト変態が可能である550℃〜Ac1点とする。より好ましい下限は600℃であり、上限は670℃である。
550℃〜Ac1点の領域で保持することでフェライトへの変態が完了するが、60秒以下の保持では未変態組織が残存し、焼割れの原因となるため、60秒以上とする。好ましくは100秒以上である。一方で、変態完了後にAc1点以下で保持することで粒径を調整し、変形抵抗を制御できるが、生産性を考慮すると600秒以下が望ましい。
次に、本発明の鋼線材の製造方法について具体的な例で説明する。なお、以下の説明は本発明を説明するための例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
Claims (5)
- 鋼成分が質量%で、C:0.1〜1.2%、Si:0.02〜1.0%、Mn:0.2〜1.5%、Al:0.001〜0.05%を含有し、N:0.03%以下、P:0.020%以下、S:0.020%以下に制限し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、フェライト粒径が1μm≦フェライト粒径≦15μmとなり、非球状化セメンタイト面積率が10%以下となり、しきい値以上の粒径の分布から極値統計法によって算出する球状化セメンタイトの最大径が1.5μm以下となることを特徴とする冷間加工性に優れた鋼線材。
- 質量%でさらにMo:0.02〜0.20%、B:0.0003〜0.003%を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼線材。
- 質量%でさらにNb:0.002〜0.05%、V:0.02〜0.20%、Ti:0.002〜0.05%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼線材。
- 質量%でさらにCr:0.03〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の鋼線材。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の成分からなる鋼片をA1点以上に加熱してオーステナイト化した際のフェライト変態直前のオーステナイト粒径が5μm以下であり、550℃〜Ac1点の温度域で60秒以上保持、または冷却することを特徴とする冷間加工性に優れた鋼線材の製造方法。
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