JP2016172198A - スラリーの洗浄装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】トナー母粒子や樹脂微粒子を含むスラリーをより短時間で効率的に洗浄することのできるスラリーの洗浄装置を提供する。【解決手段】スラリーの洗浄装置10は、積層された複数の部屋を備えている。複数の部屋は、濾過部材によって仕切られている。複数の部屋のうち少なくとも1つの部屋は、スラリーと洗浄液とを接触させるための洗浄室となっている。洗浄室に隣接する一方の部屋は、洗浄液を貯留するための洗浄液貯留室となっている。洗浄室に隣接する他方の部屋は、濾液を貯留するための濾液貯留室となっている。洗浄室にスラリーが連続的に供給されるとともに、洗浄液貯留室に洗浄液が連続的に供給される。洗浄液貯留室に供給された洗浄液は、洗浄液貯留室と洗浄室の間に配置された濾過部材を通過して、洗浄室に流入する。スラリーは洗浄室に流入した洗浄液と混合されることで洗浄される。【選択図】図2

Description

本発明は、例えば静電荷像現像用トナーの製造工程において、トナー母粒子や樹脂微粒子を含有するスラリーを洗浄するための洗浄装置に関する。
静電荷像現像用トナーは、プリンターや複写機、ファクシミリなどにおいて、静電荷像を可視化する画像形成に用いられる。例えば、電子写真方式による画像形成では、先ず、感光体ドラム上に静電潜像を形成する。つぎに、静電潜像をトナーにより現像した後、現像された像を転写紙等に転写する。そして、トナーを熱によって定着させることで画像形成が行われる。
従来、静電荷像現像用トナーの製造方法として、溶融混練粉砕法が知られている。この方法では、各種バインダ樹脂と、着色剤と、必要に応じて帯電制御剤や磁性体などとを混合する。つぎに、これらの混合物を押出機により溶融混練し、次いで粉砕及び分級する。しかし、この方法は、制御できるトナーの粒径に限界があり、実質的に10μm以下の平均粒径のトナーを歩留まり良く製造することは困難であった。そのため、この方法は、電子写真に要求される高解像度化を達成するためには十分なものとはいえなかった。
そこで、近年、溶融混練粉砕法に代わるトナーの製造法として、湿式重合法が提案されている。湿式重合法は、例えば、乳化重合凝集法、懸濁重合法等である。特に、乳化重合凝集法でトナーを製造した場合、得られるトナーの粒径、粒度分布、及び形状を比較的容易に制御することができる。
近年、電子写真複写機などの画像形成装置の用途は拡大している。それに伴い、使用されるトナーの各種性能への要求はより高いものになってきている。
例えば、複写やプリントの高速化に伴い、トナーの定着速度の高速化が望まれている。紙の送り速度が高速の場合は、低速時に比べて、定着ローラ表面に温度ムラが発生しやすくなり、結果として画質(特に定着強度、光沢性)が悪化する。このような画質不良を改善する方法として、定着ローラの表面温度をより精密に制御することが考えられる。しかし、この場合、定着装置の複雑化、大型化、耐久性低下、コストアップなどの問題が発生する。そのため、高速での複写やプリントにおいて良好な画質を得るため、トナーの定着時にオフセットが発生しない、より広い定着温度範囲を有するトナーが望まれている。
また、近年、画像形成時に必要なエネルギーの削減の要求が高まっており、大きなエネルギーを消費する定着工程の省電力化が求められている。このような省電力化の要求へ対応するために、トナーの定着温度をより低温化させることが望まれている。トナーの定着温度をより低温化させるためには、トナーのガラス転移温度を下げる必要がある。しかし、トナーのガラス転位温度を下げた場合、トナーの保存安定性が悪化する。このため、トナーの低温定着性と、トナーの保存安定性とを両立させることが困難であった。このような問題を解決するため、従来、低温定着性に優れた樹脂からなるコア粒子の表面に、硬い樹脂からなるシェル層を被覆したトナーが提案されている。
コアシェル構造を有するトナー母粒子の製造方法として、例えば外添剤を用いる乾式カプセル法や、湿式カプセル法が知られている。
乾式カプセル法は、トナーのコア粒子の表面に、シェル層となる樹脂粒子を機械的に衝突させることによりコアシェル構造を形成する方法である。コア粒子としては、溶融混練粉砕法などの乾式法で作ったコア粒子や、湿式法で作成して乾燥させたコア粒子が用いられる。しかし、この方法では、カプセル化できるシェル粒子量に制限がある。また、この方法では、機械的衝突の不均一性や、衝突による発熱などが原因で、均一なコアシェル構造を形成するのが困難である。
湿式カプセル法は、トナーのコア粒子を含むスラリーあるいは乳化分散液に、シェル粒子の分散液を直接的に添加する方法である。コア粒子としては、乳化重合凝集法や懸濁重合法等の湿式重合法で形成したコア粒子、あるいは、溶融混練粉砕法のような乾式法で形成したコア粒子が用いられる。湿式カプセル法では、液中の粒子間の静電吸着によってコア粒子をカプセル化する。更に、その後、熱処理により、コア粒子の表面にカプセル層を固定する。湿式カプセル法は、カプセル層の厚み、付着強度などの制御が可能であるため、特に湿式重合トナーの製造に多く利用されている。
コアシェル構造を有するトナー母粒子の製造工程では、コア粒子の表面に、シェル粒子を静電気的に吸着させる。優れた性能を有するトナー母粒子を製造するためには、コア粒子及びシェル粒子の表面の帯電状態を精密に制御する必要がある。一般的に、コア粒子あるいはシェル粒子を含むスラリーに含有される電解質濃度の調整により、帯電状態を制御することができる。電解質濃度の調整の方法として、凝集剤及び分散剤などの電解質を更に添加する方法と、水などの媒体を添加することにより電解質溶液を薄める方法と、洗浄工程において電解質濃度を低下させる方法がある。
重合トナーのコア粒子が湿式法で製造された場合、得られたスラリーには、造粒工程で大量に添加した添加剤に由来する電解質が含まれている。このスラリーに、更に凝集剤及び分散剤などの電解質を添加する。このようにしてコアシェル構造を制御する方法は、電解質濃度によって制御できる限界があり、場合によっては、綺麗なコアシェル構造を得ることは困難である。
水などの溶媒を添加することにより電解質溶液を薄める方法がある。この方法では、電解質溶液を薄めるために、水などの溶媒を大量に添加する必要があるため、生産効率が低下するとともに、生産コストが増加する恐れがある。
一方、電解質を取り除くための洗浄工程によって、電解質の濃度を制御する方法がある。この方法は、スラリーから余分な電解質を取り除く方法であり、電解質の濃度を制御できる範囲が大きい。このため、この方法は、シェル粒子のカプセル制御にもっとも有効な方法であると考えられる。
電解質を取り除くための洗浄工程は、湿式重合法によるトナー製造に不可欠の工程である。その工程の洗浄性能は、トナーの性能に大きく影響する。
トナー母粒子を含むスラリーの洗浄技術として、特許文献1〜7に記載されているように、ベルトフィルター、フィルタープレス、遠心脱水、真空濾過などの技術が知られている。これらの技術では、トナー母粒子表面の不純物を除去するために、スラリーを固液分離した後に、ケーキの表面に洗浄液を供給する。洗浄効率を高めるため、トナー母粒子のケーキを水などの洗浄液に再分散して洗浄する方法もよく行われている。このように、濾過工程とリスラリー洗浄工程を繰り返し行うことにより、目標の洗浄レベルまでトナー母粒子を洗浄することができる。最終的に、得られたトナー母粒子のケーキを水などに再分散してシェル粒子のカプセル工程に進むか、トナー母粒子をそのまま乾燥させる。
しかし、その洗浄方法にはいくつか問題点が残っている。例えば、固液分離により形成したトナー母粒子のケーキに洗浄液を供給する場合、洗浄液がケーキ中に形成された割れ面に沿ってバイパスしてしまい、ケーキ全体へ洗浄液を均一に供給することが困難となる。ケーキ全体へ洗浄液を均一に供給できない場合、洗浄斑が発生しやすくなるとともに、より多くの洗浄液が必要となる場合がある。トナー母粒子のケーキを洗浄液に再分散することにより、洗浄斑をある程度緩和することは可能である。しかし、水を絞ったトナー母粒子はケーキ状態となっているため、トナー母粒子の水への完全な再分散は困難である。特に、トナー母粒子の洗浄が進行すると、トナー母粒子の表面に付着する乳化剤などの分散剤が減少する。その結果、トナー母粒子ケーキの分散が更に困難となり、リスラリーに分散しない状態のトナー母粒子の凝集体が多く残ってしまう。トナー母粒子の凝集体が存在すると、凝集体間に含まれる不純成分の洗い出しが困難となり、洗浄斑が発生しやすくなる。トナー母粒子の凝集体を含むスラリーにシェル粒子を添加することでカプセル化を行う場合は、凝集体内部のトナー母粒子のカプセル化が困難である。この場合、トナー母粒子の均一なカプセル化ができなくなるため、トナーの性能が悪化する恐れがある。また、リスラリー洗浄を含む濾過洗浄方式は、基本的に、バッチ操作で行われるため、連続システムに適用することは困難である。
その他、特許文献8に記載された連続式加圧濾過装置が知られている。この装置を用いて、トナー母粒子のケーキを経由せずに、トナー母粒子のスラリーを濾過する方法も知られている。この方法では、トナー母粒子のスラリーを濾過することにより濃縮してから、スラリーに洗浄液を混合して、スラリーを洗浄する。しかし、この方法では、スラリーの濾過量が多くなると、スラリーの固形分濃度と粘度が上昇する。このため、フィルターの目詰まりが発生しやすく、濾過量に限界があり、濾過効率は悪いと考えられる。
特許文献9には、凝集ゾーンと、合体ゾーンと、洗浄ゾーンとを含む単一反応容器中でトナーを製造する方法が記載されている。この方法は、着色剤とラテックスエマルジョンを凝集させて、凝集したトナー粒子を前記単一反応容器の凝集ゾーン中に形成する工程と、前記凝集したトナー粒子を前記単一反応容器の合体ゾーン中で合体させて、凝集および合体したトナー粒子を形成する工程と、前記凝集および合体したトナー粒子を前記単一反応容器の洗浄ゾーン中で洗浄し、それによってトナーを形成する工程と、を含む。特許文献9に記載の洗浄方法では、トナー母粒子を含むスラリーと洗浄液との接触効率が悪く、洗浄が不十分となってしまい、トナー母粒子の品質が悪化してしまうという問題があった。また、装置の構造上、濾過面積が極めて小さく、洗浄効率が悪くなるため、スラリーの洗浄工程に多くの時間がかかってしまうという問題があった。
特開2001−281925号公報 特開2003−215841号公報 特開2002−372803号公報 特開2007−058201号公報 特開2000−292976号公報 特開2002−156788号公報 特開2001−194826号公報 特開2004−279483号公報 特開2006−350340号公報
トナーの性能を高めるため、湿式方式で製造したトナー母粒子の洗浄に対する要求が厳しくなっている。更に、湿式カプセル法の場合は、シェル剤によりトナーの構造を制御するためには、トナー粒子凝集体を発生させることなく、スラリーの電解質濃度を容易に調整できる方法が求められる。しかし、特許文献1〜9に記載された従来の洗浄方式は、トナー母粒子の洗浄効率が悪い。また、トナー母粒子を均一に洗浄することが困難である。更に、トナー母粒子の洗浄時、トナー母粒子の凝集体が発生しやすいため、スラリーの濃度管理が困難であるという問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされてなされたものであり、例えばトナー母粒子や樹脂微粒子を含むスラリーを、より短時間で効率的に洗浄することのできるスラリーの洗浄装置およびスラリーの洗浄方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段は、以下の発明である。
積層された複数の部屋を備えるスラリーの洗浄装置であって、
前記複数の部屋は濾過部材によって仕切られており、
前記複数の部屋のうち少なくとも1つの部屋は、スラリーと洗浄液とを接触させるための洗浄室となっており、
前記洗浄室に隣接する一方の部屋は、洗浄液を貯留するための洗浄液貯留室となっており、
前記洗浄室に隣接する他方の部屋は、濾液を貯留するための濾液貯留室となっており、
前記洗浄室に前記スラリーが連続的に供給されるとともに、前記洗浄液貯留室に前記洗浄液が連続的に供給され、前記洗浄液貯留室に供給された洗浄液は、前記洗浄液貯留室と前記洗浄室の間に配置された濾過部材を通過して前記洗浄室に流入し、前記スラリーは前記洗浄室に流入した前記洗浄液と混合されることで洗浄され、洗浄後の前記スラリーは前記洗浄室と前記濾液貯留室の間に配置された濾過部材によって濾過され、前記濾過部材を通過した濾液が前記濾液貯留室に貯留され、前記濾液貯留室に接続する配管から前記濾液が外部に排出され、濾液が分離された後の前記スラリーが前記洗浄室から前記洗浄液貯留室または前記濾液貯留室を挟んだ次の洗浄室に移送されるように構成されていることを特徴とする、スラリーの洗浄装置。
上記スラリーの洗浄装置において、前記洗浄液貯留室及び前記濾液貯留室は、ほぼ同一の構造を有しており、前記洗浄液貯留室と前記濾液貯留室の機能を入れ替えることが可能に構成されていることが好ましい。
上記スラリーの洗浄装置において、前記洗浄室には、前記スラリー及び前記洗浄液を撹拌するための撹拌部材が配置されていることが好ましい。
上記スラリーの洗浄装置において、前記撹拌部材は、回転可能な羽根部材によって構成されており、前記羽根部材には、前記洗浄室と前記濾液貯留室の間に配置された濾過部材に堆積したトナー固形分を掻き取るための歯部が形成されていることが好ましい。
上記スラリーの洗浄装置において、前記羽根部材には、前記羽根部材を回転させる際の抵抗を低減するための通液孔が形成されていることが好ましい。
上記スラリーの洗浄装置において、前記スラリーは、樹脂微粒子を含有するスラリーであることが好ましい。
上記スラリーの洗浄装置において、前記スラリーは、乳化重合凝集法によって得られたトナー母粒子を含有するスラリーであることが好ましい。
本発明によれば、例えばトナー母粒子や樹脂微粒子を含むスラリーをより効率的に洗浄することのできるスラリーの洗浄装置を提供することができる。
スラリーの洗浄装置の斜視図である。 第1の運転モードにおけるスラリーの洗浄装置の側断面図である。 スラリーの洗浄装置の平断面図である。 羽根部材の拡大斜視図である。 第2の運転モードにおけるスラリーの洗浄装置の側断面図である。
以下では、まず、静電荷像現像用トナー及びその製造方法について説明する。
静電荷像現像用トナー及びその製造方法について説明した後、本発明のスラリーの洗浄装置について詳しく説明する。
本明細書では、特に、コアシェル構造(カプセル構造)を有するトナー母粒子を含む静電荷像現像用トナー及びその製造方法について説明する。
<1.コア粒子>
コア粒子は、結着樹脂、着色剤を含有する。コア粒子は、その他、必要に応じて、ワックス、帯電制御剤などを含有する。
コア粒子は、粉砕法、或いは湿式重合法によって製造することができる。
粉砕法によってコア粒子を製造する場合は、結着樹脂、着色剤及びワックスなどを高温で溶融混練した後、粉砕工程及び分級工程を経ることによって、コア粒子を得ることができる。得られたコア粒子は、乳化剤により水に分散させて、コア粒子のスラリーを得ることができる。更に、コア粒子のスラリーに後述のシェル粒子を添加することにより、コアシェル構造を形成することができる。
湿式重合法の例としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法、及び溶解懸濁法が挙げられる。
懸濁重合法によってコア粒子を製造する場合は、結着樹脂モノマーに着色剤およびワックスを溶解させた後、そのモノマー溶液を水性媒体中で機械的せん断力によりモノマー滴として懸濁させる。その後、モノマーを重合させることによって、コア粒子を得ることができる。
乳化重合凝集法によってコア粒子を製造する場合は、まず、重合開始剤及び乳化剤等を含有する水性媒体中において、結着樹脂の重合性単量体を乳化させる。次に、重合性単量体を攪拌下で重合させることによって、重合体一次粒子を得ることができる。次に、重合体一次粒子に着色剤及び必要に応じて帯電制御剤等を添加して、重合体一次粒子を凝集させる。得られた凝集粒子を熟成させることによって、コア粒子を得ることができる。
溶解懸濁法によってコア粒子を製造する場合は、溶媒中に結着樹脂、ワックス等を溶解させて油相を得る。油相を得た後、その油相を水系媒体中に油滴として懸濁させる。水系媒体中に油滴を懸濁させた後、溶媒を除去することでコア粒子を得ることができる。
コア粒子を製造するためには、湿式重合法の中では、乳化重合凝集法を用いることが好ましい。乳化重合凝集法は、トナー粒子の粒径や形状などを制御しやすいからである。
本発明において、結着樹脂を製造するために用いる単量体成分としては、トナーの結着樹脂として従来から用いられている単量体を用いることが出来る。
例えば、酸性基を有する重合性単量体(以下、酸性単量体と称することがある)、塩基性基を有する重合性単量体(以下、塩基性単量体と称することがある)、または酸性基も塩基性基も有さない重合性単量体(以下、その他の単量体と称することがある)を使用することができる。
酸性単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有する重合性単量体、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性単量体、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性単量体等が挙げられる。
塩基性単量体の例としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有重合性単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
酸性単量体及び塩基性単量体は、本発明に用いられるラジカル性単量体とともに、懸濁重合法、乳化重合凝集法、または溶解懸濁法でトナー母粒子を製造する過程において、粒子の水中での安定化に寄与する。これらの単量体は、単独で用いても複数種類を混合して用いてもよい。また、これらの単量体は、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
結着樹脂を構成する重合性単量体の例としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられる。重合性単量体は、単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
結着樹脂を架橋樹脂として用いる場合、上述の重合性単量体と共にラジカル重合性を有する多官能性単量体が用いられる。多官能性単量体の例としては、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、反応性基をペンダントグループに有する重合性単量体、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。これらの中では、ラジカル重合性の二官能性重合性単量体が好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。これらの多官能性重合性単量体は、単独で用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
結着樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記載する)における数平均分子量が、好ましくは2000以上、より好ましくは2500以上、さらに好ましくは3000以上であり、好ましくは5万以下、より好ましくは4万以下、さらに好ましくは3.5万以下である。また、同様にして求めた重量平均分子量が、好ましくは3万以上、より好ましくは4万以上、さらに好ましくは5万以上であり、好ましくは200万以下、より好ましくは100万以下、さらに好ましくは50万以下である。結着樹脂の数平均分子量および重量平均分子量が上記の範囲にある場合、トナーの耐久性、保存性、及び定着性が良好となる。
結着樹脂の重合を開始させるために、必要に応じて公知の重合開始剤を1種又は2種以上組み合わせて使用する事ができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩、及び、これら過硫酸塩に酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合性開始剤に第一鉄塩等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤系、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、等が用いられる。これらの重合開始剤は、モノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加してもよい。必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
本発明では、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤の具体的な例としては、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン、等があげられる。連鎖移動剤は、単独または2種類以上の併用でもよい。連鎖移動剤は、重合性単量体に対して0〜5重量%用いられる。
本発明では、必要に応じて公知の懸濁安定剤を使用することができる。懸濁安定剤の具体的な例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは、一種或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。懸濁安定剤は、重合性単量体100質量部に対して1質量部以上、10質量部以下の量で用いてもよい。
重合開始剤および懸濁安定剤は、何れも、重合性単量体添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加してもよい。必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
その他、反応系には、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
本発明において、結着樹脂を乳化重合法によって製造する場合、公知の乳化剤を使用することができる。カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる一種又は二種以上の乳化剤を用いることが好ましい。
カチオン性界面活性剤の例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。アニオン性界面活性剤の例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
本発明において、乳化剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下であることが好ましい。これらの乳化剤に、例えば、部分或いは完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の一種或いは二種以上を保護コロイドとして使用することができる。
本発明において、乳化重合法により得られる重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。粒径が前記範囲よりも小さいときは、凝集工程において凝集速度の制御が困難となる場合がある。粒径が前記範囲よりも大きいときは、凝集して得られるトナー母粒子の粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。
トナーには、オフセット防止剤として、ワックスを使用することができる。近年、トナーの低温定着性の改善が試みられている。トナーの低温定着性と、耐ブロッキング性及び耐高温オフセット性とは、通常は二律背反の関係にある。それらの相反する性質を両立させるためには、オフセット防止剤としてのワックスの使用が好ましい。
トナーには、公知のワックスを任意に使用することができる。ワックスとして、具体的には、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基を有するシリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、長鎖脂肪酸アルコール、ペンタエリスリトール等の長鎖脂肪酸多価アルコール、及びその部分エステル体、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、等を例示することができる。好ましくは、パラフィンワックスまたはフィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス、エステル系ワックス、及び、シリコーン系ワックスを例示することができる。
本発明において、ワックスは、単独で用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。トナーの定着性を改善するため、ワックスの融点は、120℃以下が好ましく、110℃以下が更に好ましく、100℃以下が特に好ましい。ワックスの融点は、40℃以上が好ましく、さらに好ましくは50℃以上である。ワックスの融点が高すぎると、トナーの定着温度低減の効果が得られない場合がある。ワックスの融点が低すぎると、トナーの固結性、保存性に問題が生じる場合がある。
本発明において、ワックスの量は、トナー100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。ワックスの量は、トナー100質量部に対して40質量部以下であることが好ましく、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。トナー中のワックス含有量が少なすぎると、高温オフセット性等の性能が十分でない場合がある。ワックス含有量が多すぎると、耐ブロッキング性が十分でなかったり、ワックスがトナーから漏出することにより装置を汚染したりする場合がある。
重合法においてワックスを配合する方法としては、予め水中に体積平均粒径0.01μm以上、2.0μm以下のワックスを分散させておくことが好ましい。ワックスの粒径は、1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。
さらに、乳化重合凝集法においては、上記平均粒径範囲のワックスが分散した分散液を乳化重合時に添加するか、あるいは凝集工程で添加することが好ましい。
トナー中に好適な粒径のワックスを分散させるためには、乳化重合時にワックスをシードとして添加する方法、いわゆるシード重合法を用いることが好ましい。ワックスをシードとして添加することにより、ワックスがトナー中に微細かつ均一に分散するため、トナーの帯電性や耐熱性の悪化を抑制することができる。
ワックスを、ステアリルアクリレートなどの長鎖重合性単量体とともに予め水系分散媒体中で分散させることによって、ワックス・長鎖重合性単量体分散液を調製することができる。ワックス・長鎖重合性単量体の存在下において、重合性単量体を重合させることもできる。
コア粒子に含有される着色剤としては、公知の着色剤を任意に用いることができる。着色剤の具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染料及び顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系染料及び顔料、ジスアゾ系染料及び顔料、及び、縮合アゾ系染料及び顔料を挙げることができる。染料及び顔料は、1種類のみ用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。フルカラートナーの場合には、イエローは、ベンジジンイエロー、モノアゾ系、または縮合アゾ系染顔料を用いるのが好ましい。マゼンタは、キナクリドン、またはモノアゾ系染顔料を用いるのが好ましい。シアンは、フタロシアニンブルーを用いるのが好ましい。着色剤の量は、重合体一次粒子100質量部に対して3質量部以上、20質量部以下であることが好ましい。
乳化重合凝集法における着色剤の配合は、通常、凝集工程で行われる。重合体一次粒子の分散液と、着色剤粒子の分散液とを混合した後、これらの粒子を凝集させることで粒子凝集体を得ることができる。着色剤は、乳化剤の存在下で、水中に分散した状態で用いるのが好ましい。着色剤粒子の体積平均粒径は、0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上である。着色剤粒子の体積平均粒径は、3μm以下、より好ましくは1μm以下である。
本発明のコア粒子は、懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法などの何れの重合法で製造してもよく、特に限定されない。
懸濁重合法によってコア粒子を製造する場合には、上述の結着樹脂の単量体中に、着色剤、重合開始剤、必要に応じてワックス、極性樹脂、荷電制御剤、及び架橋剤を加える。これらの添加剤を単量体中に均一に溶解又は分散させることによって、単量体組成物を調製する。この単量体組成物を、分散安定剤等を含有する水系媒体中に分散させる。好ましくは、単量体組成物の液滴が所望のコア粒子のサイズを有するように、撹拌速度及び撹拌時間を調整する。その後、分散安定剤の作用により、単量体組成物を粒子の状態に維持する。単量体組成物の粒子が沈降しない程度に、単量体組成物の撹拌を行う。これらの操作によって、単量体組成物を重合させる。
得られたコア粒子は、トナー母粒子として利用することができるコア粒子を洗浄する工程、及び、コア粒子を乾燥する工程の後、必要に応じてコア粒子に対して外添処理を施す。これらの工程を経ることによって、コア粒子から静電荷像現像用トナーを製造することができる。一般的な洗浄方法によってコア粒子を洗浄することができる。本発明のスラリーの洗浄装置を使って、コア粒子を洗浄してもよい。洗浄効率を考慮すると、本発明の洗浄装置を使うことが好ましい。
トナーの性能を更に向上させるためには、本発明のスラリーの洗浄装置を使ってコア粒子を洗浄することが好ましい。コア粒子を洗浄した後、コア粒子に後述のシェル粒子を添加することが好ましい。コア粒子にシェル粒子を添加することによって、コアシェル構造を形成することができる。
乳化重合凝集法によってコア粒子を製造する場合には、まず、着色剤分散液及びワックス分散液を準備する。つぎに、乳化重合により得られた結着樹脂単量体の重合体一次粒子、又は、ワックス分散液存在下で乳化重合により得られたワックス内包結着樹脂単量体の重合体一次粒子を準備する。つぎに、着色剤分散液、ワックス分散液、及び結着樹脂単量体の重合体一次粒子を混合する。その後、この混合液を加熱して、凝集、及び熟成工程を経ることによって、コア粒子を製造することができる。
乳化重合凝集法によってコア粒子を製造した後、後述するように、シェル粒子をコア粒子の表面に被覆させる(カプセル工程)。カプセル工程を経ることによって、コアシェル構造を有するトナー母粒子を製造することができる。
上記の乳化重合凝集法の製造方法の中では、凝集工程で着色剤分散液を添加する方法が好ましい。着色剤存在下で結着樹脂単量体を重合させると、着色剤中の金属がラジカル重合に影響するためである。この場合、樹脂の分子量やレオロジー制御が困難となるため、所望の重合体一次粒子が得られないおそれがある。
乳化重合凝集法において、重合体一次粒子、着色剤粒子、ワックス、及び、必要に応じて帯電制御剤は、同時に混合してもよいし、逐次に混合してもよい。あるいは、それぞれの成分の分散液を調製した後に、これらの分散液を混合してもよい。
乳化重合凝集法によってコア粒子を製造する場合には、攪拌装置を備えた槽内において凝集工程を行うことが好ましい。この場合、粒子同士の凝集力と、攪拌による剪断力とのバランスによって、粒子凝集体の粒径を制御することができる。また、重合体一次粒子を含む混合液を加熱する、あるいはこの混合液に電解質を加えることによって、重合体一次粒子の凝集力を大きくすることができる。
本発明において、電解質を添加して凝集を行う場合に用いる電解質は、酸、アルカリ、塩、有機系電解質、及び無機系電解質のいずれでもよい。具体的には、酸の例として、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸等を挙げることができる。アルカリの例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等を挙げることができる。塩の例として、NaCl、KCl、LiCl、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgCl2、CaCl2、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO43、Fe2(SO43、CH3COONa、C65SO3Na等を挙げることができる。これらの中では、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
本発明において、電解質の添加量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なる。電解質の添加量は、混合分散液の固形成分100質量部に対して、0.02質量部以上が好ましく、0.05質量部以上が更に好ましい。電解質の添加量は、混合分散液の固形成分100質量部に対して、25質量部以下が好ましく、15質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が特に好ましい。電解質の添加量が少なすぎると、凝集反応の進行が遅くなる。凝集反応の進行が遅くなると、凝集反応後も1μm以下の微粉が残る、あるいは、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しないなどの問題が生じる場合がある。電解質の添加量が多すぎると、凝集反応の進行が急速になりやすい。凝集反応の進行が急速になると、粒径の制御が困難となるため、得られた粒子凝集体中に粗粉や不定形のものが含まれるなどの問題が生じる場合がある。電解質を加えて凝集を行う場合、凝集温度は、20℃以上、好ましくは30℃以上であり、80℃以下、好ましくは70℃以下である。
凝集に要する時間は、装置形状や処理スケールにより最適化される。コア粒子の粒径が目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度を、通常、30分以上保持することが好ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度の昇温でもよいし、段階的な昇温でもよい。
トナーの構造を制御することにより、トナーの帯電性、保存安定性などの性能を向上させることができる。トナーの構造を制御するためには、得られた粒子凝集体に、更に重合体一次粒子を添加し、粒子凝集体の表面にカプセル層を形成することが好ましい。この重合体一次粒子は、コア粒子凝集体の重合体一次粒子と同じものでもよく、違うものでもよい。
凝集工程で得られた粒子凝集体の安定性を向上させるために、凝集工程の後の熟成工程において、粒子同士の融着を行うことが好ましい。熟成工程の温度は、好ましくは重合体一次粒子のTg以上であり、より好ましくはTg+5℃以上である。熟成工程の温度は、好ましくはTg+80℃以下であり、より好ましくはTg+50℃以下である。熟成工程に要する時間は、目的とするコア粒子の形状により異なる。熟成工程では、粒子凝集体の温度が重合体一次粒子のガラス転移温度以上に到達した後、通常0.1〜10時間、好ましくは1〜6時間保持することが好ましい。
なお、凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、粒子凝集体に界面活性剤を添加するか、pH値を上げるか、または両方を行うことが好ましい。界面活性剤としては、重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から選択された一種以上を用いることができる。特に、重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。界面活性剤の添加量は限定されない。界面活性剤の添加量は、混合分散液の固形成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。界面活性剤の添加量は、混合分散液の固形成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に、界面活性剤を添加するか、pH値を上げることができる。これにより、凝集工程で生成した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができるとともに、熟成工程後の粗大粒子の生成を抑制することができる。
熟成工程で行われる加熱処理により、凝集体中の重合体一次粒子同士が融着して一体化する。重合体一次粒子同士が融着して一体化することにより、凝集体としてのコア粒子の形状が球形に近いものとなる。熟成工程前の粒子凝集体は、重合体一次粒子が静電気的あるいは物理的に凝集した集合体であると考えられる。熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着しており、コア粒子の形状が球状に近いものとなる。熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、重合体一次粒子の凝集体の形状を制御することができる。例えば、凝集体の形状を、葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等に制御することができる。これにより、目的に応じて様々な形状のコア粒子を製造することができる。
得られたコア粒子は、トナー母粒子として使用することができる。トナー母粒子は、洗浄工程、乾燥工程を経た後、必要に応じて外添処理を施されることによって、静電荷像現像用トナーとなることもできる。トナー母粒子は、一般的な方法で洗浄してもよい。トナー母粒子は、本発明のスラリーの洗浄装置を使って洗浄してもよい。洗浄効率を考慮すると、本発明の洗浄装置を使うことが好ましい。
トナーの性能を更に向上させるためには、本発明のスラリーの洗浄装置を使ってコア粒子を洗浄した後、後述のシェル粒子を添加する。シェル粒子を添加することによって、コアシェル構造を形成することができる。
溶解懸濁法のようなその他の湿式重合法の場合も、上述した懸濁重合法及び乳化重合凝集法と同様に、コア粒子の洗浄及び乾燥工程を経ることによって、トナー母粒子を製造することができる。または、スラリーを洗浄することによって、スラリーに含まれるコア粒子以外の不純物をある程度除去する。その後、後述するように、シェル粒子をコア粒子の表面に被覆することによって、コアシェル構造を有するトナー母粒子を製造することができる。
<2.シェル粒子>
本発明において、コア粒子の表面に被覆するシェル粒子は、無機粒子でもよく、樹脂性粒子でもよく、特に限定されない。なお、シェル粒子は、「殻剤」と呼ばれることもある。
シェル粒子が樹脂性粒子の場合は、特に限定しないが、シェル粒子の原料として、例えばスチレン系、アクリル系、エステル系など一般的なトナーバインダ樹脂として使われる樹脂、或いはそれらの共重合系あるいはブレンド系の樹脂を用いることができる。シェル粒子は、樹脂の乳化によって製造するか、あるいは、乳化重合、懸濁重合などの重合法によって製造することができる。シェル粒子は、粒子径制御及び微粒子化のしやすさの観点から、重合法を用いて製造することが好ましい。シェル粒子は、微粒子の粒子径及び粒度分布の制御のしやすさの観点から、特に、乳化重合法を用いて製造することが好ましい。
シェル粒子の体積平均粒径は、特に限定されないが、20nm以上が好ましく、50nm以上が更に好ましい。シェル粒子の体積平均粒径は、500nm以下が好ましく、150nm以下がさらに好ましい。
シェル粒子の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜30,000、より好ましくは4,000〜25,000、特に好ましくは6,000〜20,000である。
シェル粒子のガラス転移温度は、特に限定されないが、40℃以上であり、好ましくは45℃以上である。一方、シェル粒子のガラス転移温度は、100℃以下であり、好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは75℃以下である。
トナーの耐ブロッキング性を高めるためには、シェル粒子のガラス転移温度(Tg)は、コア粒子のガラス転移温度(Tg)より高いことが好ましい。
シェル粒子のガラス転移温度(Tg)は、コア粒子のガラス転移温度(Tg)以上が好ましく、(コア粒子のガラス転移温度(Tg)+2)℃以上がより好ましく、(コア粒子のガラス転移温度(Tg)+5)℃以上が更に好ましい。一方、シェル粒子のガラス転移温度(Tg)は、(コア粒子のガラス転移温度(Tg)+50)℃以下が好ましく、(コア粒子のガラス転移温度(Tg)+30)℃以下がより好ましく、(コア粒子のガラス転移温度(Tg)+20)℃以下が更に好ましい。
シェル粒子の重量平均分子量及びガラス転移温度が低すぎると、トナーの耐ブロッキング性が悪化する場合がある。一方、シェル粒子の重量平均分子量及びガラス転移温度が高すぎると、トナーの低温定着性が悪化する場合がある。
シェル粒子の含有率は、トナー母粒子に対して、0.01wt%以上であり、好ましくは0.3wt%以上である。
シェル粒子の含有率は、トナー母粒子に対して、10wt%以下が好ましい。
シェル粒子は、使用目的に応じて、非帯電性、帯電性のいずれのものでもよい。
本発明のコアシェル構造を有するトナーは、低温定着性と耐ブロッキング性との両立が可能であるだけでなく、帯電性シェル粒子を使用することで、トナーの帯電性を制御することもできる。
トナーの帯電性は、一般的に、帯電制御剤、結着樹脂または外添剤によって調整される。帯電制御剤は、一般的に、無機系の帯電制御剤が用いられる。近年では、帯電制御能を有する樹脂(帯電制御樹脂)が帯電制御剤として使用されている。結着樹脂中に種々の官能基を導入し、その官能基の特性を利用して帯電性を調整することも行われている。例えば、正帯電トナーの場合は、アミノ基あるいはアミド結合を有する単量体を結着樹脂に共重合させて帯電性を制御することができる。
トナーの帯電性を制御する方法として、一般的に、帯電制御剤をトナーの結着樹脂中に分散させる方法が知られている。帯電制御能を有する重合性単量体(帯電制御樹脂)を結着樹脂と共重合させる方法も知られている。しかしながら、トナー母粒子中やトナー母粒子表面における帯電制御剤や帯電制御樹脂の分散が不均一であると、かぶりの増加、トナー飛散などの問題につながる。このため、近年の高精細画質化を目的とした小粒径トナーでは、帯電制御剤や帯電制御樹脂のより均一な分散性が求められている。一般的に、トナーの帯電性は、トナー表面の樹脂の性能により制御されると言われている。
トナー結着樹脂中に帯電制御剤や帯電制御樹脂を均一に分散させる場合は、帯電制御効果を充分に得るために、多くの量の帯電制御剤や帯電制御樹脂を添加する必要がある。このため、帯電制御剤や帯電制御樹脂の添加量が多くなることに起因して、トナーの低温定着性が悪化する場合がある。
このような理由から、トナー粒子の表面側に、より多くの量の帯電制御剤や帯電制御樹脂が分散していることが好ましい。粉砕法により得られるトナー母粒子と比較して、重合法により得られるトナー母粒子、特に乳化凝集法により得られるトナー母粒子は、このような制御が容易である。すなわち、重合法により得られるトナー母粒子は、帯電制御剤又は帯電制御樹脂の添加・混合のタイミングを変更することにより、トナー母粒子中における帯電制御剤や帯電制御樹脂を分散させる位置を容易に制御することができる。
トナー母粒子に帯電性を付与する場合、シェル粒子に帯電制御剤または帯電制御樹脂を添加することによって、コアシェル構造におけるシェル層に帯電制御性能を持たせることが好ましい。
シェル粒子が樹脂性微粒子の場合、シェル粒子に用いられる樹脂と帯電制御樹脂とを共重合させることが好ましい。
シェル粒子が正帯電性の樹脂微粒子の場合は、帯電制御樹脂の例としては、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHC、−N(C、−NHCOH等のアミノ基を含有する樹脂;それらがアンモニウム塩化された4級アンモニウム塩を含有する樹脂が挙げられる。これらの中では、4級アンモニウム塩を含有する樹脂が好ましい。
このような正帯電性を示す帯電制御樹脂は、例えば、アミノ基を含有するモノビニル単量体と、それと共重合可能な単量体とを共重合することによって得られる。また、正帯電性帯電制御樹脂は、アミノ基を含有する共重合体をアンモニウム塩化することによっても得ることができる。4級アンモニウム塩を含有する樹脂は、アンモニウム塩の基を含有するモノビニル単量体と、それと共重合可能なモノビニル単量体とを共重合することによっても得ることができる。ただし、正帯電性帯電制御樹脂の製造方法は、これらの方法に限定されない。共重合させる単量体としては、結着樹脂に一般的に用いられる単量体を用いることができる。
正帯電性帯電制御樹脂は、4級アンモニウム塩の基を含有する樹脂であることが好ましい。4級アンモニウム塩の基を含有する樹脂の中では、下記の構造式(1)に示す4級アンモニウム塩を含有するアクリレート、及び下記の構造式(2)に示す4級アンモニウム塩を含有するアクリルアミドが好ましく、下記の構造式(1)に示す4級アンモニウム塩を含有するアクリレートがより好ましい。
上記の構造式(1)及び構造式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、アルキレン基であり、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、あるいは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基であり、Xは、ハロゲンイオンまたはベンゼンスルホン酸イオン若しくはアルキルベンゼンスルホン酸イオンである。
上記の構造式(1)に示す4級アンモニウム塩において、Xは、塩化物イオンまたはトルエンスルホン酸イオンであることが好ましく、Rは、水素原子またはメチル基であることが好ましく、Rは、CH、C、Cなどの炭素数1〜3のアルキレン基及びその誘導体であることが好ましく、R〜Rは、それぞれ独立にCH、C、Cなどのアルキル基であることが好ましい。
アミノ基含有(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、エチルメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ−1−エチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ−1−エチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノ−1−エチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノ−1−エチル(メタ)アクリレート、エチルメチルアミノ−1−エチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノ−1−エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ−2−エチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ−2−エチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノ−2−エチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノ−2−エチル(メタ)アクリレート、エチルメチルアミノ−2−エチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノ−2−エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ−1−プロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ−1−プロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノ−1−プロピル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノ−1−プロピル(メタ)アクリレート、エチルメチルアミノ−1−プロピル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノ−1−プロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ−2−プロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ−2−プロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノ−2−プロピル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノ−2−プロピル(メタ)アクリレート、エチルメチルアミノ−2−プロピル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノ−2−プロピル(メタ)アクリレートなどのN,N−二置換アミノアルキル(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
共重合体をアンモニウム塩化するために用いられる4級化剤としては、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、臭化メチル、及び臭化エチル等のハロゲン化アルキル;パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、及びパラトルエンスルホン酸プロピル等のパラトルエンスルホン酸アルキルエステル等が挙げられる。
市場で入手可能な4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート単量体としては、ブレンマーQA(日油(株)製)等がある。
アミノ基及びアンモニウム塩基等の官能基を有する帯電性単量体単位の量は、帯電制御樹脂中、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜12重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。該官能基を有する単量体単位の量が少なすぎると、必要な帯電量を得るために多量の帯電制御樹脂が必要になり、トナーの環境安定性が低下しやすくなる。該官能基を有する単量体単位の量が多すぎると、高温高湿下におけるトナーの帯電量の低下が大きくなり、カブリが発生する場合がある。
正帯電性の帯電制御樹脂は、種々の市販品を用いることもできる。例えば、藤倉化成社製FCA−161P(スチレン/アクリル樹脂)、FCA−207P(スチレン/アクリル樹脂)、及びFCA−201−PS(スチレン/アクリル樹脂)等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御樹脂として、特に制限はないが、一般的に負帯電トナーで使われる樹脂、例えば、スチレン−アクリル樹脂、またはポリエステル樹脂を利用できる。市販の負帯電制御樹脂を利用することもできる。
シェル粒子は、帯電制御樹脂の乳化によって製造することができる。シェル粒子は、帯電制御樹脂の乳化重合、あるいは懸濁重合等によって製造することもできる。シェル粒子の粒子径の制御及び微粒子化のしやすさの観点から、重合法が好ましい。シェル粒子の粒子径及び粒度分布の制御のしやすさの観点から、乳化重合法が更に好ましい。
帯電制御樹脂をシェル粒子、コア粒子あるいはトナー母粒子の製造に用いる場合、帯電性単量体の含有量は、特に限定するものではないが、トナー母粒子に対して0.01wt%以上であり、好ましくは0.05wt%以上であり、より好ましくは0.1wt%以上である。一方、帯電性単量体の含有量は、5wt%以下であり、好ましくは2wt%以下であり、より好ましくは1wt%以下である。
<3.シェル粒子をコア粒子に被覆する方法(カプセル工程)>
以降、コア粒子をシェル粒子で被覆する工程をカプセル工程と称することがある。コア粒子をシェル粒子で被覆するための制御を、カプセル制御と称することがある。
カプセル工程を実施する方法には、以下の2つの方法がある。
(1)コア粒子を形成する工程の後半に、シェル粒子成分を混合することによりカプセル構造を形成する方法。
(2)コア粒子を形成した後に、コア粒子の表面にシェル粒子を被覆してカプセル構造を形成する方法。
上記(1)の方法の場合、コア粒子の形成中に、シェル粒子がコア粒子に付着する。このため、シェル粒子がコア粒子に埋まり込みやすく、コア粒子へのシェル粒子の付着強度が強くなる。一方、コア粒子の表面にシェル粒子が埋まり込んでいるため、コア粒子をシェル粒子により完全に被覆(カプセル化)するために、より多くのシェル粒子が必要となる。
上記(2)の方法の場合、完成したコア粒子の表面にシェル粒子を被覆する。このため、シェル粒子はコア粒子の表面に留まりやすく、より少ない量のシェル粒子で均一の厚みのシェル層を形成することができる。
カプセル工程において、コア粒子の帯電極性とシェル粒子の帯電極性は、逆であることが好ましい。この場合、コア粒子の表面に、シェル粒子を静電気的に付着させることができる。この静電気的な付着により、シェル粒子のコア粒子への付着効率(カプセル化効率)を高めることが可能となり、その結果、コア粒子の露出を防ぐことができる。更に、シェル粒子間の静電気的な反発により、コア粒子の表面に、より少ない量のシェル粒子で、単層に近い、均一な厚みのシェル層を形成することができる。シェル粒子の静電気的な付着によって形成された単層シェル層の厚みは、シェル粒子の体積平均粒径とほぼ同じである。単層シェル層の厚みは、特に限定するものではないが、20nm以上、好ましくは50nm以上であり、500nm以下、好ましくは150nm以下である。
また、ある帯電極性を有するシェル粒子によりシェル層を形成した後、該シェル粒子と逆極性のシェル粒子により更にシェル層を形成することにより、二重シェル層を形成することもできる。このようなシェル層の形成を繰り返すことで、多重シェル層を形成することもできる。
シェル粒子によりコア粒子を被覆する工程(カプセル工程)では、コア粒子の分散液に、シェル粒子を直接添加して混合することができる。粉砕法により得られたコア粒子を用いる場合は、乳化剤によりコア粒子を分散させた分散液を用いることができる。重合法により得られたコア粒子を用いる場合は、コア粒子製造時のスラリーをそのまま利用することができる。より精密なカプセル制御を実施するために、コア粒子同士の凝集体が発生しない程度に、コア粒子分散液中に存在する乳化剤を洗浄などの方法で取り除くことが好ましい。
カプセル工程におけるコア粒子とシェル粒子の混合温度は、特に限定しないが、コア粒子のTg及びシェル粒子のTgのうち、低い方のTgよりも10℃以上低い温度であることが好ましい。混合温度がこの範囲に設定されることによって、粒子の凝集体の発生を防ぐことができるとともに、コア粒子とシェル粒子とを均一に混合することができる。
<4.トナー母粒子の洗浄及び乾燥>
コア粒子をシェル粒子で被覆することによって、トナー母粒子を製造することができる。トナー母粒子を洗浄する工程、及び、トナー母粒子を乾燥する工程の後、必要に応じて、トナー母粒子に外添処理が施される。洗浄工程、乾燥工程、及び必要に応じて外添処理を経ることにより、トナー母粒子から静電荷像現像用トナーが製造される。
トナー母粒子は、水を用いて洗浄することができる。酸またはアルカリの水溶液で洗浄することもできる。温水または熱水で洗浄することもできる。これらの方法を併用することもできる。このような洗浄工程を経ることによって、懸濁安定剤、乳化剤、未反応の残存モノマー等を低減または除去することができる。洗浄後のトナー母粒子は、回収される。回収された後のトナー母粒子は、ウェットケーキ状であることが好ましい。回収されたトナー母粒子がウェットケーキ状である場合、引き続き行われる乾燥工程において、トナー母粒子の取り扱いが容易になる。
乾燥工程では、振動型流動乾燥法や循環型流動乾燥法など流動乾燥法、気流乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法、スプレードライ法、フラッシュジェット法などが用いられる。乾燥工程における温度、風量、減圧度等の操作条件は、着色粒子のTg、使用する装置の形状、機構、大きさ等に応じて最適化される。
トナー母粒子の体積平均粒径は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。トナー母粒子の体積平均粒径は、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
トナー母粒子の平均円形度は、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.94以上である。トナー母粒子の平均円形度は、好ましくは0.99以下である。トナー母粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を用いて測定することができる。平均円形度が小さすぎると、着色粒子への外添剤の付着不良により、着色粒子の帯電性が悪化する。着色粒子の帯電性が悪化すると、画像濃度が低下する場合がある。一方、平均円形度が大きすぎると、着色粒子の形状に起因するクリーニング不良が発生する場合がある。
トナーのDSC法によるガラス転移点Tgは、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。トナーのDSC法によるガラス転移点Tgは、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。Tgが前記範囲である場合、トナーの保存性及び定着性が良好となる。
<5.外添剤(外添微粒子)>
本発明においては、トナーの流動性または帯電制御性を向上させるために、必要に応じて、外添微粒子をトナーに添加する。外添微粒子としては、例えば、無機微粒子または有機微粒子を使用することができる。
無機微粒子としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化セリウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物、リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト、各種カーボンブラックや導電性カーボンブラック、マグネタイト、フェライト等を用いることができる。有機微粒子としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の微粒子を用いることができる。
これら外添微粒子の中では、特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、各種カーボンブラックや導電性カーボンブラック等が好適に使用される。また、外添微粒子は、前記の無機または有機微粒子の表面に、疎水化などの処理を施したものであってもよい。表面処理に用いる処理剤は、例えば、ヘキサメチルジシラザン( H M D S ) 、ジメチルジクロロシラン( D M D S ) 等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル処理剤、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等である。処理剤は、二種以上を併用することもできる。
トナーには、帯電制御の観点から、外添剤として導電性微粒子を添加することが好ましい。導電性微粒子の抵抗は、400Ω・cm以下であり、好ましくは200Ω・cm以下であり、より好ましくは100Ω・cm以下であり、さらに好ましくは60Ω・cm以下である。導電性微粒子の抵抗は、0.1Ω・cm以上であり、好ましくは1Ω・cm以上であり、より好ましくは5Ω・cm以上であり、さらに好ましくは15Ω・cmである。
外添剤として、導電性微粒子を用いることができる。導電性微粒子としては、例えば、導電性酸化チタン、シリカ、マグネタイト、等の金属酸化物またはそれらに導電性物質をドープしたもの、ポリアセチレンやポリフェニルアセチレン、ポリ- p -フェニレン等の共役2重結合を有するポリマーに金属等の導電性物質をドープした有機微粒子、カーボンブラックやグラファイトに代表される炭素等が挙げられる。これらの導電性微粒子中では、導電性酸化チタンまたはそれに導電性物質をドープしたものが好ましい。これらの導電性微粒子は、トナーの流動性を損なわずに、トナーに導電性を付与できるからである。導電性微粒子の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.05質量部以上であり、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。導電性微粒子の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、3質量部以下であり、2質量部以下が好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
本発明において、導電性微粒子以外の外添微粒子を使用する場合、外添微粒子の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
トナーへの外添剤の添加方法は、特に限定するものではない。例えば、ヘンシェルミキサー等の高速攪拌機を用いてトナーと外添剤を混合することができる。トナーに複数種類の外添剤を添加する場合には、複数種類の外添剤を同時に添加してもよいし、複数種類の外添剤を複数回に分けて添加してもよい。
<6.スラリーの洗浄装置>
以上では、コアシェル構造を有するトナー母粒子を含む静電荷現像用トナー及びその製造方法について詳しく説明した。以下では、そのようなコアシェル構造を有するトナー母粒子の製造に用いることのできるスラリーの洗浄装置について詳しく説明する。
本実施形態のスラリーの洗浄装置は、トナー母粒子を含有するスラリーの洗浄に好適に用いることができる。また、本実施形態のスラリーの洗浄装置は、コア粒子やシェル粒子等の樹脂微粒子を含有するスラリーの洗浄に好適に用いることができる。更に、本実施形態のスラリーの洗浄装置は、樹脂微粒子以外の固形粒子を含有するスラリーの洗浄にも好適に用いることができる。
図1は、スラリーの洗浄装置の斜視図である。図2は、スラリーの洗浄装置の側断面図である。図3は、スラリーの洗浄装置の平断面図である。
図1、図2に示すように、スラリーの洗浄装置10は、スラリーを供給するためのスラリー供給口12と、定量的に(一定の流量で)スラリーを供給するスラリー供給装置46と、スラリーを排出するためのスラリー排出口14と、スラリーの排出量を制御するスラリー排出装置48と、洗浄液を供給するための第1及び第2の洗浄液供給口16a、16bと、濾液を排出するための第1及び第2の濾液排出口18a、18bと、を備えている。
図2に示すように、スラリーの洗浄装置10は、スラリーと洗浄液とを接触させるための3つの洗浄室(第1の洗浄室20a、第2の洗浄室20b、及び第3の洗浄室20c)を備えている。洗浄室内においてスラリーと洗浄液とを接触させることによって、スラリーに含まれる界面活性剤等の不要な成分を除去することができる。
スラリーの洗浄装置10は、第1の洗浄液供給口16aを介して供給される洗浄液を貯留するための第1の洗浄液貯留室24aを備えている。また、スラリーの洗浄装置10は、第2の洗浄液供給口16bを介して供給される洗浄液を貯留するための第2の洗浄液貯留室24bを備えている。
スラリーの洗浄装置10は、スラリー洗浄後の洗浄液を濾過して得られる濾液を貯留するための第1の濾液貯留室26a及び第2の濾液貯留室26bを備えている。
図2に示すように、スラリーの洗浄装置10は、複数の略円筒状の部屋が上下方向に積み重ねられた構造を有している。それぞれの部屋は、ほぼ同一の構造を有している。すなわち、スラリーの洗浄装置10は、第1の洗浄液貯留室24a、第1の洗浄室20a、第1の濾液貯留室26a、第2の洗浄室20b、第2の洗浄液貯留室24b、第3の洗浄室20c、及び、第2の濾液貯留室26bを備えている。これらの部屋は、この順番で下から積み重ねられている。また、これらの部屋は、互いにほぼ同一の構造を有している。
第1の洗浄液貯留室24aと第1の洗浄室20aの間には、第1の濾過部材22aが配置されている。第1の洗浄室20aと第1の濾液貯留室26aの間には、第2の濾過部材22bが配置されている。第1の濾液貯留室26aと第2の洗浄室20bの間には、第3の濾過部材22cが配置されている。第2の洗浄室20bと第2の洗浄液貯留室24bの間には、第4の濾過部材22dが配置されている。第2の洗浄液貯留室24bと第3の洗浄室20cの間には、第5の濾過部材22eが配置されている。第3の洗浄室20cと第2の濾液貯留室26bの間には、第6の濾過部材22fが配置されている。
スラリー供給装置46によって、定量的にスラリー供給口12から第1の洗浄室20aにスラリーが供給される。一方、第1の洗浄液供給口16aから供給された洗浄液は、第1の洗浄液貯留室24aに一旦貯留された後、第1の濾過部材22aを通過して、第1の洗浄室20aに流入する。第1の洗浄室20aの内部において、スラリー供給口12から供給されたスラリーと、第1の濾過部材22aを通過して流入した洗浄液とが混合される。これにより、スラリーが洗浄される。
第1の洗浄室20aで洗浄されたスラリーは、第1の洗浄室20aと第1の濾液貯留室26aの間に配置された第2の濾過部材22bによって濾過される。第2の濾過部材22bを通過した濾液は、第1の濾液貯留室26aに一旦貯留された後、第1の濾液貯留室26aに接続する第1の濾液排出口18aから外部に排出される。濾液が分離された後のスラリーは、第1の洗浄室20aと第2の洗浄室20bとを接続する接続配管28aを経由して、第2の洗浄室20bに移送される。
第2の洗浄液供給口16bから供給された洗浄液は、第2の洗浄液貯留室24bに一旦貯留された後、下方側に配置された第4の濾過部材22dを通過して、第2の洗浄室20bに流入する。また、第2の洗浄液供給口16bから供給された洗浄液は、第2の洗浄液貯留室24bに一旦貯留された後、上方側に配置された第5の濾過部材22eを通過して、第3の洗浄室20cに流入する。
第2の洗浄室20bの内部において、接続配管28aを経由して第2の洗浄室20bに移送されたスラリーと、第4の濾過部材22dを通過して流入した洗浄液とが混合される。これにより、スラリーが更に洗浄される。
第2の洗浄室20bで洗浄されたスラリーは、第2の洗浄室20bと第1の濾液貯留室26aの間に配置された第3の濾過部材22cによって濾過される。第3の濾過部材22cを通過した濾液は、第1の濾液貯留室26aに一旦貯留された後、第1の濾液貯留室26aに接続する第1の濾液排出口18aから外部に排出される。濾液が分離された後のスラリーは、第2の洗浄室20bと第3の洗浄室20cとを接続する接続配管28bを経由して、第3の洗浄室20cに移送される。
第3の洗浄室20cの内部において、接続配管28bを経由して第3の洗浄室20cに移送されたスラリーと、第5の濾過部材22eを通過して流入した洗浄液とが混合される。これにより、スラリーが更に洗浄される。
第3の洗浄室20cで洗浄されたスラリーは、第3の洗浄室20cと第2の濾液貯留室26bの間に配置された第6の濾過部材22fによって濾過される。第6の濾過部材22fを通過した濾液は、第2の濾液貯留室26bに一旦貯留された後、第2の濾液貯留室26bに接続する第2の濾液排出口18bから外部に排出される。濾液が分離された後のスラリーは、スラリー排出口14から外部に排出される。スラリー排出装置48によって、洗浄後のスラリーがスラリー排出口14から定量的に排出される。
スラリー供給装置46及びスラリー排出装置48は、スラリーの流量を制御できる装置である。スラリー供給装置46及びスラリー排出装置48は、例えば、定量ポンプ、流量コントローラー、または圧力調整弁によって構成される。スラリー供給装置46及びスラリー排出装置48によって、スラリーの流量を制御することにより、洗浄後のスラリーの濃度を調整することができる。
第1及び第2の洗浄液供給口16a、16bには、それぞれ、一定流量で洗浄液を供給するための図示しない洗浄液供給装置が設置されている。洗浄液流量を制御しやすい観点から、洗浄液供給装置は、定量ポンプ或いは流量バルブなどの流量制御装置を含むことが好ましい。スラリーの流量及びスラリーの濃度は、洗浄液供給装置によって供給される洗浄液の流量により制御することができる。
上述したように、本実施形態のスラリーの洗浄装置10は、積層された複数の部屋を備えている。複数の部屋は、濾過部材によって仕切られている。複数の部屋のうち少なくとも1つの部屋は、スラリーと洗浄液とを接触させるための洗浄室(第1の洗浄室20a、第2の洗浄室20b)となっている。洗浄室に隣接する一方の部屋は、洗浄液を貯留するための洗浄液貯留室(第1の洗浄液貯留室24a、第2の洗浄液貯留室24b)となっている。洗浄室に隣接する他方の部屋は、濾液を貯留するための濾液貯留室(第1の濾液貯留室26a、第2の濾液貯留室26b)となっている。
本実施形態のスラリーの洗浄装置10によれば、洗浄室(第1及び第2の洗浄室20a、20b)にスラリーが連続的に供給されるとともに、洗浄液貯留室(第1及び第2の洗浄液貯留室24a、24b)に洗浄液が連続的に供給される。洗浄液貯留室に供給された洗浄液は、洗浄液貯留室と洗浄室の間に配置された濾過部材を通過して洗浄室に流入する。スラリーは、洗浄室に流入した洗浄液と混合されることで洗浄される。洗浄後のスラリーは、洗浄室と濾液貯留室の間に配置された濾過部材によって濾過される。濾過部材を通過した濾液は、濾液貯留室に貯留される。濾液貯留室に接続する配管から、濾液が外部に排出される。濾液が分離された後のスラリーは、洗浄室から洗浄液貯留室または濾液貯留室を挟んだ次の洗浄室に移送される。
本実施形態のスラリーの洗浄装置10によれば、各洗浄室の上面側又は下面側に配置された濾過部材によって、スラリー及び洗浄液の混合液を濾過することが可能である。このため、濾過面積を広く確保することが可能であり、スラリー及び洗浄液の混合液を効率良く濾過することが可能である。
濾過方式は、加圧濾過でも、減圧濾過でもよい。加圧濾過の場合は、排出側の圧力より高い圧力で洗浄液を供給する。減圧濾過の場合は、排出側から洗浄液を負圧吸引することにより、供給側の洗浄液を吸い込む。洗浄液の供給側と排出側の圧力差を調整することにより、濾過速度を制御することができる。更に、スラリーの流量と洗浄液の流量とを同時に制御することで、洗浄効率を精密に制御できる。洗浄効率を精密に制御することによって、安定的な洗浄効果を得ることができる。
本実施形態のスラリーの洗浄装置10によれば、第1及び第2の洗浄室20a、20bにおいて、スラリーと洗浄液を効率よく接触させることができる。したがって、例えばトナーの製造工程において添加された界面活性剤や乳化剤、着色剤、あるいはトナーとならなかった未反応のモノマー等の不要な成分を効率良くスラリーから取り除くことができる。
図2に示すように、第1〜第6の濾過部材22a〜22fは、それぞれ、その上面側及び下面側に配置された2枚の支持部材によって挟まれることで支持されている。
第1の濾過部材22aは、その上面側及び下面側に配置された2枚の支持部材22a1、22a2によって挟まれることで支持されている。その他の濾過部材も、第1の濾過部材22aと同様に、その上面側及び下面側に配置された2枚の支持部材によって挟まれることで支持されている(図2参照)。
第1〜第6の濾過部材22a〜22fとしては、例えば濾布を用いることができる。濾布としては、スラリー中に含まれるトナー母粒子や樹脂微粒子を分離することのできるものであれば、どのような濾布を用いることもできる。例えば、ナイロンやポリエステル、ポリプロピレン等の樹脂製の濾布を用いることができる。使用する濾布の目開きの大きさは、スラリー中に含まれるトナー母粒子や樹脂微粒子を分離することができ、かつ、洗浄液の通水を過度に阻害しない程度の大きさであれば、どのような大きさであってもよい。
濾過部材を支持するための支持部材としては、濾過部材が撓まないように支持できる程度の剛性を有する部材であれば、どのようなものでも用いることが可能である。支持部材としては、例えば、ステンレス等の金属製のメッシュ部材やパンチングプレートを用いることができる。
このように、第1〜第6の濾過部材22a〜22fは、上面側及び下面側に配置された2枚の支持部材で挟まれている。これにより、濾過部材の形状が保持されており、濾過部材が洗浄液の圧力によって上方又は下方に撓むことが防止されている。
図3に示すように、略円筒状に形成された第1〜第3の洗浄室20a〜20cの内部には、撹拌部材40が配置されている。撹拌部材40は、第1〜第3の洗浄室20a〜20cの内部において、スラリー及び洗浄液を撹拌して混合することのできる手段である。
本実施形態において、撹拌部材40は、4枚の羽根を有する回転可能な羽根部材42によって構成されている。羽根部材42は、例えば硬質の合成樹脂や、ステンレス等の金属によって形成されている。羽根部材42は、隣り合う2枚の羽根がなす角度が90度となるように構成されている。羽根部材42の羽根の枚数は、4枚に限定されず、例えば3枚以下でもよいし、5枚以上でもよい。
図1、図2に示すように、第2の濾液貯留室26bのさらに上方には、各洗浄室に配置された羽根部材42を回転させるための回転手段44が設置されている。回転手段44は、例えば電動モータによって構成されている。この回転手段44によって、羽根部材42を任意の回転方向に、任意の回転速度で回転させることが可能となっている。
図3に示すように、本実施形態のスラリーの洗浄装置10において、羽根部材42の回転する方向と、スラリーが流れる方向は一致している。すなわち、図3において、羽根部材42が左に回転する場合、スラリーは左に回転する方向に流れる。羽根部材42が右に回転する場合、スラリーは右に回転する方向に流れる。
羽根部材42の回転方向は、洗浄室の外周内壁に沿ってスラリーが流れる距離が長くなる方向であることが好ましい。すなわち、例えば第1の洗浄室20aにおいて、羽根部材42の回転方向は、スラリー供給口12から接続配管28aまでスラリーが流れる距離が長くなる方向であることが好ましい。この場合、スラリー供給口12から供給されるスラリーは、羽根部材42の回転によって移動する。略円筒状に形成された第1の洗浄室20aの中において、スラリーの移動距離は最大となる。スラリーの移動距離が最大となることによって、スラリーの洗浄効率がより高くなる。
本実施形態のスラリーの洗浄装置10において、スラリーは羽根部材42によって連続的に運ばれるため、濾過部材(第1〜第6の濾過部材22a〜22f)の上にトナー母粒子が堆積して不均一な厚みの層が形成されることを防止することができる。したがって、濾過部材がトナー母粒子によって目詰まりすることを防止することができる。その結果、スラリーを連続的にかつ安定的に洗浄することができる。
図4は、羽根部材42の拡大斜視図である。
図4に示すように、羽根部材42は4枚の羽根を備えている。各羽根の上縁部及び下縁部には、鋸状の歯部42aが形成されている。この歯部42aによって、濾過部材(第1〜第6の濾過部材22a〜22f)に堆積したトナー固形分を物理的に掻き取ることが可能となっている。歯部42aによってトナー固形分を掻き取ることによって、濾過部材がトナー母粒子によって目詰まりすることを防止することができる。その結果、スラリーを連続的にかつ安定的に洗浄することができる。
図4に示すように、羽根部材42は4枚の羽根を備えている。各羽根の中央部付近には、羽根部材42を回転させる際の抵抗を低減するための通液孔42bが形成されている。この通液孔42bをスラリー及び洗浄液が通過することによって、羽根部材42を回転させる際の抵抗を低減することができる。羽根部材42を回転させる際の抵抗を低減することによって、羽根部材42を回転させるための回転手段44(例えば電動モータ)を小型化することができる。また、各洗浄室内において、トナー及び洗浄液をより均一に撹拌及び混合することができる。
本実施形態のスラリーの洗浄装置10において、スラリーは洗浄室内を回転する方向に流れる。一方、洗浄液は、スラリーの回転面に対して垂直方向(洗浄液貯留室から濾液貯留室へ向かう方向)に流れる。これにより、スラリーと洗浄液とを極めて効率的に接触させることが可能となっており、スラリーに含まれる界面活性剤等の不要成分を短時間で効率的に除去することが可能となっている。
図5は、運転モードを切り換えた後のスラリーの洗浄装置の側断面図である。
図5に示すように、本実施形態のスラリーの洗浄装置10は、洗浄液が流れる方向を切り換えることによって、運転モードを切り換えることが可能である。すなわち、洗浄液が流れる方向を逆方向に切り換えることによって、図2に示す「第1の運転モード」から、図5に示す「第2の運転モード」に切り換えることが可能である。
運転モードを「第1の運転モード」から「第2の運転モード」に切り換えることによって、各部屋の機能を以下のように切り換えることができる。
(1)図2における第1の洗浄液貯留室24aが、図5における第1の濾液貯留室24aとなる。
(2)図2における第1の濾液貯留室26aが、図5における第1の洗浄液貯留室26aとなる。
(3)図2における第2の洗浄液貯留室24bが、図5における第2の濾液貯留室24bとなる。
(4)図2における第2の濾液貯留室26bが、図5における第2の洗浄液貯留室26bとなる。
(5)図2における第1の洗浄液供給口16aが、図5における第1の濾液排出口16aとなる。
(6)図2における第2の洗浄液供給口16bが、図5における第2の濾液排出口16bとなる。
(7)図2における第1の濾液排出口18aが、図5における第1の洗浄液供給口18aとなる。
(8)図2における第2の濾液排出口18bが、図5における第2の洗浄液供給口18bとなる。
このように、洗浄液が流れる方向を逆方向に切り換えることによって、洗浄液貯留室と濾液貯留室の機能を入れ替えることができる。洗浄液貯留室と濾液貯留室はほぼ同一の構造を有しているため、このような運転モードの切り換えには構造的な変更は不要である。例えば、洗浄液を供給するための配管、及び、濾液を排出するための配管にそれぞれバルブを設置して、このバルブを操作することによって、洗浄液が流れる方向を逆方向に切り換えることが可能である。
運転モードを「第1の運転モード」から「第2の運転モード」へ切り換えることによって、洗浄液貯留室と濾液貯留室の機能を入れ替えることができる。洗浄液貯留室と濾液貯留室の機能を入れ替えることによって、第1〜第6の濾過部材22a〜22fに堆積したトナー固形分を逆洗によって取り除くこと可能であり、長時間にわたって安定的にトナーを洗浄することが可能である。
本実施形態のスラリーの洗浄装置10は、コアシェル構造を有するトナー母粒子を製造する際に特に好ましく用いることができる。特に、粒子表面の帯電状態を厳密に制御することが要求される、コア粒子やシェル粒子を含むスラリーの洗浄工程に好ましく適用することができる。
本実施形態のスラリーの洗浄装置10によれば、スラリーを連続的に流しながら洗浄することができるため、バッチ式の洗浄方式よりも効率的にスラリーを洗浄することができる。
上記実施形態では、洗浄室、洗浄液貯留室、及び濾液貯留室が上下方向に積み重ねられている例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。洗浄室、洗浄液貯留室、及び濾液貯留室は、水平方向に並べられてもよい。
上記実施形態では、洗浄室が3つであり、洗浄液貯留室が2つであり、濾液貯留室が2つである例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。洗浄室の数は、4つ以上であってもよく、2つ以下であってもよい。洗浄液貯留室の数は、1つでもよく、3つ以上であってもよい。濾液貯留室の数は、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
10 洗浄装置
12 スラリー供給口
14 スラリー排出口
16a、16b 洗浄液供給口(第1の運転モード)/濾液排出口(第2の運転モード)
18a、18b 濾液排出口(第1の運転モード)/洗浄液供給口(第2の運転モード)
20a、20b 洗浄室
22a、22b、22c、22d、22e、22f 濾過部材
28a、28b 接続配管
24a、24b 洗浄液貯留室(第1の運転モード)/濾液貯留室(第2の運転モード)
26a、26b 濾液貯留室(第1の運転モード)/洗浄液貯留室(第2の運転モード)
40 撹拌部材
42 羽根部材
42a 歯部
42b 通液孔
44 回転手段
46 スラリー供給装置
48 スラリー排出装置

Claims (7)

  1. 積層された複数の部屋を備えるスラリーの洗浄装置であって、
    前記複数の部屋は濾過部材によって仕切られており、
    前記複数の部屋のうち少なくとも1つの部屋は、スラリーと洗浄液とを接触させるための洗浄室となっており、
    前記洗浄室に隣接する一方の部屋は、洗浄液を貯留するための洗浄液貯留室となっており、
    前記洗浄室に隣接する他方の部屋は、濾液を貯留するための濾液貯留室となっており、
    前記洗浄室に前記スラリーが連続的に供給されるとともに、前記洗浄液貯留室に前記洗浄液が連続的に供給され、前記洗浄液貯留室に供給された洗浄液は、前記洗浄液貯留室と前記洗浄室の間に配置された濾過部材を通過して前記洗浄室に流入し、前記スラリーは前記洗浄室に流入した前記洗浄液と混合されることで洗浄され、洗浄後の前記スラリーは前記洗浄室と前記濾液貯留室の間に配置された濾過部材によって濾過され、前記濾過部材を通過した濾液が前記濾液貯留室に貯留され、前記濾液貯留室に接続する配管から前記濾液が外部に排出され、濾液が分離された後の前記スラリーが前記洗浄室から前記洗浄液貯留室または前記濾液貯留室を挟んだ次の洗浄室に移送されるように構成されていることを特徴とする、スラリーの洗浄装置。
  2. 前記洗浄液貯留室及び前記濾液貯留室は、ほぼ同一の構造を有しており、
    前記洗浄液貯留室と前記濾液貯留室の機能を入れ替えることが可能に構成されている、請求項1に記載のスラリーの洗浄装置。
  3. 前記洗浄室には、前記スラリー及び前記洗浄液を撹拌するための撹拌部材が配置されている、請求項1または請求項2に記載のスラリーの洗浄装置。
  4. 前記撹拌部材は、回転可能な羽根部材によって構成されており、
    前記羽根部材には、前記洗浄室と前記濾液貯留室の間に配置された濾過部材に堆積したトナー固形分を掻き取るための歯部が形成されている、請求項3に記載のスラリーの洗浄装置。
  5. 前記羽根部材には、前記羽根部材を回転させる際の抵抗を低減するための通液孔が形成されている、請求項4に記載のスラリーの洗浄装置。
  6. 前記スラリーは、樹脂微粒子を含有するスラリーである、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載のスラリーの洗浄装置。
  7. 前記スラリーは、乳化重合凝集法によって得られたトナー母粒子を含有するスラリーである、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載のスラリーの洗浄装置。
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