JP2016163008A - 圧粉磁心、圧粉磁心の製造方法、および発熱抑制方法 - Google Patents

圧粉磁心、圧粉磁心の製造方法、および発熱抑制方法 Download PDF

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美帆 千葉
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Abstract

【課題】軟磁性粉末の相変態に伴う発熱を抑制する圧粉磁心を提供する。
【解決手段】圧粉磁心は、非晶質軟磁性合金粉末と、非晶質軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度−50℃以上、第2結晶化開始温度未満の範囲に、少なくとも1つの吸熱ピークを有する添加剤と、を含有する。添加剤の量は、非晶質軟磁性合金粉末の重量に対し、0.05wt%以上、0.6wt%以下である。添加剤は、脂肪酸塩であり、脂肪酸塩は、ステアリン酸塩であり、特にステアリン酸リチウムであることが望ましい。
【選択図】図4

Description

本発明は、インダクタやリアクトル用磁心に好適な圧粉磁心、圧粉磁心の製造方法、および発熱抑制方法に関する。
圧粉磁心の製造方法として、非晶質軟磁性合金よりなる粉末(以下、軟磁性粉末と呼ぶ)とバインダとを混合し、金型で圧縮成型した後に熱処理し、ナノ結晶化と、バインダの硬化を行うことで圧粉磁心を作製する方法が知られている。この種の圧粉磁心の製造方法に関連する技術を開示した特許文献として以下の3件を挙げることができる。
特許文献1は、非晶質軟磁性合金粉末を体積分率10%以上90%以下の範囲で樹脂と混合し、固化成形した、軟磁性合金粉末成形体を開示している。
特許文献2は、アモルファス相と、α−Fe結合相との混相組織で形成されたFe基軟磁性合金と、Fe基軟磁性合金の粉末を結着剤で固化成形した圧粉コアを開示している。
特許文献3は、ナノ結晶が析出したナノ結晶軟磁性合金粉末と、結合剤とを混合し、圧縮成型した圧粉磁心を開示している。
特開2005−194565号公報 国際公開第2010/084900号 特開2013−055182号公報
軟磁性粉末に潤滑剤を添加して圧粉磁心を作製した場合、高密度な圧粉磁心が得られる反面、製造過程での熱処理において、結晶の相変態に伴う発熱により、温度が急激に上昇し、所定の温度を超えてしまうことがある。軟磁性粉末が所定の温度を超えてしまうと、結晶粒が粗大化したり、結晶中に不純物が発生したりして、圧粉磁心の磁気特性が悪化するおそれがある。したがって、良好な磁気特性を有する圧粉磁心を得るためには、結晶の相変態に伴う発熱を抑制することが必要である。
なお、特許文献1〜3は、圧粉磁心を高密度にしたり、成形の際の金型からの抜けを容易にしたりするために、軟磁性粉末に潤滑剤を添加しているが、結晶の相変態に伴う発熱による結晶粒の粗大化や不純物の発生に伴う磁気特性の劣化防止についての考察はなされていない。
本発明の目的は、軟磁性粉末の相変態に伴う発熱を抑制することのできる圧粉磁心の製造方法、および発熱抑制方法並びに圧粉磁心を提供することにある。
本発明の圧粉磁心は、非晶質軟磁性合金粉末と、前記非晶質軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度−50℃以上、第2結晶化開始温度未満の範囲に、少なくとも1つの吸熱ピークを有する添加剤と、を含有する。
本発明の圧粉磁心の製造方法は、非晶質軟磁性合金粉末と、前記非晶質軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度−50℃以上、第2結晶化開始温度未満の範囲に、少なくとも1つの吸熱ピークを有する添加剤と、を混合する工程を含む。
本発明の発熱抑制方法は、非晶質軟磁性合金粉末に、前記非晶質軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度−50℃以上、前記第2結晶化開始温度未満の範囲に、少なくとも1つの吸熱ピークを有する添加剤を混合することで、前記非晶質軟磁性合金粉末の相変態に伴う発熱を抑制する。
本発明によれば、軟磁性粉末の相変態に伴う発熱を抑制することができ、磁気特性の劣化を防止することができる。
軟磁性粉末の発熱の挙動を確認するためのDSC曲線を示すグラフである。 本発明において添加剤として使用されるステアリン酸リチウムの大気中での熱特性を示すTG−DTAである。 本発明において添加剤として使用されるステアリン酸塩リチウムの不活性雰囲気中での熱特性を示すTG−DTAである。 本発明に係る圧粉磁心の製造方法を2つの形態について説明するためのフローチャートである。
本発明者らは、軟磁性粉末の相変態に伴う発熱を抑制する手段について鋭意、実験、分析を重ねた結果、これまで、軟磁性粉末の高密度化のために使用されてきた潤滑剤のうち、脂肪酸塩、特にステアリン酸塩には、不活性雰囲気にて加熱すると分解に伴う吸熱反応が起こることを見出した。そして、更に上記吸熱反応の温度領域について実験、分析を進めた結果、ステアリン酸塩の中にも、不活性雰囲気にて加熱すると、軟磁性粉末の相変態に伴う発熱が起こる温度領域と上記吸熱反応の温度領域とが近い材料が存在することを見出した。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係る圧粉磁心の製造方法の実施形態について、使用材料である軟磁性粉末、添加剤と共に詳細に説明する。
(1.軟磁性粉末)
本発明において使用される軟磁性粉末は、Feを主成分として、少なくともB、P、およびCuを含む。
図1は、上記の軟磁性粉末の示差走査熱量測定分析(DSC: Differential Scanning Calorimetry)の結果である。DSCは、試料を一定の昇温速度で加熱しながら、その試料の温度に対する発熱反応、および吸熱反応を測定する分析方法である。
DSC曲線10は、横軸が温度を示し、縦軸が発熱量を示している。DSC曲線10を参照すると、本発明において使用される軟磁性粉末は、2つの発熱ピークとして第1ピーク11および第2ピーク15を有している。以下、DSC曲線10について説明する。
第1ピーク11は、bccFe結晶の析出に伴う発熱である。
第1立ち上がり部12は、bccFe結晶の析出に伴い、軟磁性粉末の発熱量が上昇していることを示している。
第1ベースライン20は、bccFe結晶の析出が始まる前の発熱量を示している。
第1上昇接線32は、第1立ち上がり部12のうち正の傾きが最も大きい点を通る接線である。
第1ベースライン20と、第1上昇接線32との交点TX1は、bccFe結晶の析出が始まる温度である。以下、この温度を第1結晶化開始温度TX1と呼ぶ。本発明において使用される軟磁性粉末の第1結晶化開始温度TX1は、400〜450℃である。
第2ピーク15は、Fe−B系や、Fe−P系等の化合物の析出に伴う発熱である。この発熱により、結晶粒が粗大化したり、不純物が発生したりする。
第2立ち上がり部16は、化合物の析出に伴い、軟磁性粉末の発熱量が上昇していることを示している。
第2ベースライン21は、化合物の析出が始まる前の発熱量を示している。
第2上昇接線42は、第2立ち上がり部16のうち正の傾きが最も大きい点を通る接線である。
第2ベースライン21と、第2上昇接線42との交点TX2は、化合物の析出が始まる温度である。以下、この温度を第2結晶化開始温度TX2と呼ぶ。
圧粉磁心は、Fe−B系や、Fe−P系等の化合物を含むと、磁気特性が劣化してしまう。したがって、良好な磁気特性を有する圧粉磁心を作製するためには、軟磁性粉末を、bccFe結晶は析出するが、化合物は析出しない温度範囲で熱処理することが必要である。
また、上述したように、圧粉磁心は、結晶粒の粗大化や、不純物の生成によっても、磁気特性が低下する。したがって、良好な磁気特性を有する圧粉磁心を作製するためには、第2ピーク15の発熱を抑制する必要がある。
なお、本発明において使用される軟磁性粉末は、発熱ピークを2つ有しているが、これは例示であり、さらに複数の発熱ピークを有していてもよい。
(2.添加剤)
本発明において使用される添加剤は、少なくとも不活性雰囲気中において、所定の温度領域で吸熱反応を示す物質である。
本発明では、bccFe結晶が析出する第2ピーク15の発熱を抑制するために、添加剤を軟磁性粉末に添加する。そのため、添加剤は、少なくとも軟磁性粉末の第1結晶化開始温度TX1の近傍の温度に、吸熱ピークを有する物質であることが好ましい。具体的には、添加剤は、「第1結晶化開始温度Tx1−50℃」以上「第2結晶化開始温度TX2」未満の領域に少なくとも1つの吸熱ピークを有することが更に好ましい。
なお、「第1結晶化開始温度Tx1−50℃」以上としたのは、実験により、この温度以上でbccFe結晶の析出に伴う発熱反応が開始するからである。
本発明者らは、本発明において使用される軟磁性粉末に適したこのような添加剤は、脂肪酸塩であり、特にステアリン酸塩であることを見出だした。
図2、および図3を参照して、ステアリン酸塩の一例としてステアリン酸リチウムの発熱反応・吸熱反応の分析結果について説明する。
図2は、大気中のステアリン酸リチウムの熱特性を示すTG−DTA(Thermogravimetry - Differential Thermal Analysis:熱重量−示差熱分析)の結果である。TG−DTAは、所定の昇温速度で試料を加熱することで、その試料の重量の変化と発熱・吸熱の反応を同時に測定することのできる分析方法である。
図3は、不活性雰囲気中のステアリン酸リチウムの熱特性を示すTG−DTAの結果である。TG曲線は、横軸が時間を示し、縦軸が重量の変化を示している。DTA曲線は、横軸が時間を示し、縦軸が発熱反応、または吸熱反応を示している。温度曲線は、横軸が時間を示し、縦軸が温度を示している。
図2を参照すると、ステアリン酸リチウムは、大気中では、210.1℃,320.5℃,394.0℃,431.2℃,521.5℃において、周辺の温度に比べて相対的に大きな発熱反応を示す。
図3を参照すると、ステアリン酸リチウムは、不活性雰囲気中では、107.9℃,196.2℃,226.6℃,467.8℃において、周辺の温度に比べて相対的に大きな吸熱反応を示す。本発明において使用される軟磁性粉末の第1結晶化開始温度TX1は、上述したように、400〜450℃である。したがって、ステアリン酸リチウムは、軟磁性粉末の「第1結晶化開始温度Tx1−50℃」以上「第2結晶化開始温度TX2」未満の領域に吸熱ピークを有する。
以上の分析結果によれば、ステアリン酸リチウムは、不活性雰囲気中で吸熱反応を示し、かつ「第1結晶化開始温度Tx1−50℃」以上「第2結晶化開始温度TX2」未満の領域に吸熱ピークを有するため、軟磁性粉末の相変態に伴う発熱を抑制することができる。
そのため、ステアリン酸リチウムを添加することで、軟磁性粉末の発熱を抑制した場合、圧粉磁心の応力歪の残存や、飽和磁束密度の低下を抑制することができる。
(3.製造方法)
次に、本発明に係る圧粉磁心の製造方法の実施形態について説明する。
図4は、圧粉磁心の製造方法を示すフローチャートである。図4(a)は磁心作製工程1のフローを示し、図4(b)は磁心作製工程2のフローを示す。磁心作製工程1と、磁心作製工程2とは、添加剤を添加するタイミングが異なっている。圧粉磁心は、磁心作製工程1、および磁心作製工程2のいずれかの工程で作製することができる。最初に、磁心作製工程1について説明する。
磁心作製工程1では、まず、軟磁性粉末に添加剤を添加し、混合する(S101)。添加剤の添加量は、軟磁性粉末の重量に対し、0.05wt%以上、0.6wt%以下であり、好ましくは0.1wt%以上、0.4wt%以下である。これは、圧粉磁心を作製した際に、添加剤の量が0.05wt%未満ではコアロスが増加し、0.6wt%を超えると強度が低下するためである。
次に、添加剤を混合した軟磁性粉末と、シリコーン系などの耐熱性が高く絶縁性が良好な結合材(バインダ)とを混合する(S102)。結合剤の量は、軟磁性粉末の重量に対し、例えば2wt%である。
次に、結合剤と混合した軟磁性粉末を粒度調整して、造粒粉末を得る(S103)。粒度調整は、例えば軟磁性粉末をメッシュに通すことで行うことができる。
次に、金型を用いて造粒粉末を、加圧成形して成形体を作製する(S104)。
最後に、成形体を不活性雰囲気にて熱処理して、結合材の硬化と、ナノ結晶化を行い、圧粉磁心を作製する(S105)。熱処理の方法としては、例えば赤外線加熱装置を用いて、一定の速度で「第1結晶化開始温度Tx1」まで加熱し、その温度で一定時間保持した後に空冷する方法がある。
なお、(S104)と(S105)については、ホットプレス等を使用して、同じ工程で行っても良い。
添加剤を添加・混合するタイミングについては、磁心作製工程2に示すように、造粒粉末を作製した後でもよい。以下、磁心作製工程2について説明する。
磁心作製工程2では、まず、軟磁性粉末と結合剤とを混合する(S201)。
次に、結合剤と混合した軟磁性粉末を粒度調整することで、造粒粉末を作製する(S202)。
次に、造粒粉末に添加剤を添加し、混合する(S203)。磁心作製工程2は、添加剤を造粒粉末に混合する点のみが、磁心作製工程1と異なっている。
次に、添加剤を混合した造粒粉末を金型で加圧して圧粉体を作製する(S204)。
最後に、圧粉体を不活性雰囲気にて熱処理して、結合剤の硬化とナノ結晶化を行う(S205)。
本実施形態による製造方法においては、軟磁性粉末に添加剤を0.05wt%以上、0.6wt%以下の範囲で添加し、不活性雰囲気にて熱処理を行っていることから、ナノ結晶化に伴う発熱を効果的に吸熱し、軟磁性粉末の過熱を抑制することが可能である。したがって、結晶の粗大化や、不純物の生成を容易に抑制できるため、圧粉磁心においても優れた磁気特性を有するものとなる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。
[添加剤の吸熱効果の検討]
添加剤を軟磁性粉末に添加するタイミングと、圧粉磁心の磁気特性の関係について検討を行った。
(実施例1,2、および比較例1,2)
実施例1,2、および比較例1,2の圧粉磁心の作製条件について説明する。
軟磁性粉末としては、水アトマイズ法で作製した平均粒径50μmのFe82.9Si6.5Cu0.6粉末を使用した。
添加剤には、ステアリン酸リチウムを使用し、添加量は磁性粉末に対して重量比で0.2wt%とした。
バインダには、信越シリコーン製の固体シリコーンレジンKR220Lを使用し、軟磁性粉末に対して重量比で2wt%となるように秤量し、IPA(Isopropyl Alcohol:イソプロピルアルコール)に撹拌溶解してから使用した。
軟磁性粉末とバインダ混合後の粒度調整は、500μmのメッシュを通すことで行った。
造粒粉4.5gを金型に入れ、油圧式自動プレス機により圧力980MPaにて成型し、外径20mm−内径13mmの円筒形状の圧粉体を作製した。
熱処理については、赤外線加熱装置を用いて、毎分40℃の昇温速度で所定の温度まで圧粉体を加熱し、所定の温度で20分間保持した後、空冷した。
実施例1,2、および比較例1,2のステアリン酸リチウムを添加するタイミングは、以下の通りである。
・実施例1は、図4の磁心作製工程1に示すように、ステアリン酸リチウムを軟磁性粉末に混合して造粒粉末を作製した後、加圧成形によって圧粉磁心を作製した例である。
・実施例2は、図4の磁心作製工程2に示すように、造粒粉末にステアリン酸リチウムを混合した後、加圧成形によって圧粉磁心を作製した例である。
・比較例1は、添加剤を添加していない例である。
・比較例2は、ステアリン酸リチウムを圧粉体の作製の際に使用する金型内壁の摺動面に付着させた例である。
比較例2におけるステアリン酸リチウムの付着方法については、ステアリン酸リチウムをIPAに分散させた後、刷毛を用いて圧粉体の作製の際に使用する金型内壁の摺動面に塗布し自然乾燥させた。
<実施例1,2、および比較例1,2の磁気特性の評価>
圧粉磁心の磁気特性評価としては、B−Hアナライザを用いて、周波数20kHz−磁束密度100mTにおけるコアロスPcvを測定した。
ナノ結晶化による磁気特性の変化を確認するため、保持温度をナノ結晶化する前の温度である350℃と、ナノ結晶化した後の温度である400℃の2水準で実施した。
表1に、評価結果を示す。
Figure 2016163008
表1より、比較例1、および比較例2において、コアロスPcvは、ナノ結晶化により増加した。
一方、実施例1、および実施例2において、コアロスPcvは、ナノ結晶化の前後で、ほとんど変化しなかった。
これは、実施例1、および2の場合、軟磁性粉末のナノ結晶化に伴う発熱をステアリン酸リチウムが吸収したことで、圧粉磁心が過熱状態にならず、bccFe結晶が粗大化しなかったためである。
なお、実施例1の方が、実施例2よりも効果が高いのは、バインダの混合前に軟磁性粉末にステアリン酸リチウムを混合した結果、ステアリン酸リチウムが発熱体である軟磁性粉末に直接接触しているためと考えられる。
[添加剤の添加量の検討]
次に、添加剤の添加量に対する、コアロスPcv、および強度について検討を行った。
(実施例3〜7、および比較例3,4の圧粉磁心)
実施例3〜7、および比較例3,4の圧粉磁心の作製条件について説明する。
軟磁性粉末としては、水アトマイズ法にて作製した平均粒径50μmのFe83.4SiCu0.6粉末を使用した。
添加剤には、ステアリン酸リチウムを使用した。実施例3〜7、および比較例3、4における添加剤の添加量は、表2に示す通りである。
バインダには、信越シリコーン製の固体シリコーンレジンKR220Lを使用し、軟磁性粉末に対して、重量比で2wt%となるように秤量し、IPAに撹拌溶解してから使用した。
バインダ混合後の粒度調整は、500μmのメッシュを通すことで行った。造粒粉2.5gを金型に入れ、油圧式自動プレス機により圧力980MPaにて成型し、外径13mm−内径8mmの円筒形状の圧粉体を作製した。
熱処理については、赤外線加熱装置を用いて、毎分40℃の昇温速度で所定の温度まで加熱し、所定の温度で20分間保持した後、空冷した。
<実施例3〜7、および比較例3,4の磁気特性の評価>
圧粉磁心の磁気特性評価としては、B−Hアナライザを用いて、周波数20kHz−磁束密度100mTにおけるコアロスPcvを測定した。
ナノ結晶化による磁気特性の変化を確認するため、保持温度をナノ結晶化する前の温度である350℃と、ナノ結晶化した後の温度である400℃の2水準で実施した。
圧粉磁心の強度評価としては、圧環強度試験を実施した。具体的には、レオテック製レオメータNRM−2010J−CWを使用し、一定荷重をかけた場合のコアの状態(変化なし:○、ヒビ:△、破損:×)で判断した。
表2に、圧粉磁心の評価結果を示す。
Figure 2016163008
表2より、熱処理温度350℃における圧粉磁心のコアロスPcvは、ステアリン酸リチウムの添加量によらずほぼ同じである。
熱処理温度400℃におけるコアロスPcvは、ステアリン酸リチウムの添加量が増加するにつれて、低減している。
これは、発熱体である軟磁性粉末に対して、吸熱体であるステアリン酸リチウムの割合が増えたことで、圧粉磁心の過熱が効果的に抑制できたためである。
しかしながら、ステアリン酸リチウムの添加量が0.8wt%を超えると、圧粉磁心の強度低下が著しくなりコアが破損した。したがって、ステアリン酸リチウムの添加量としては、0.05wt%以上、0.6wt%以下が望ましいといえる。
以上より、本発明の製造方法では、不活性雰囲気にて吸熱反応を示す添加剤を軟磁性粉末の近傍に存在させることで、圧粉磁心形成後の熱処理工程において、軟磁性粉末の相変態に伴う発熱を抑制し、磁気特性の劣化を防ぐことができたといえる。
以上、本発明を実施形態、および実施例に基づき説明したが、上記の説明は本発明を限定するものではない。
10・・・DSC曲線
11・・・第1ピーク
12・・・第1立ち上がり部
15・・・第2ピーク
16・・・第2立ち上がり部
20・・・第1ベースライン
21・・・第2ベースライン
32・・・第1上昇接線
42・・・第2上昇接線

Claims (15)

  1. 非晶質軟磁性合金粉末と、
    前記非晶質軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度−50℃以上、第2結晶化開始温度未満の範囲に、少なくとも1つの吸熱ピークを有する添加剤と、を含有する、圧粉磁心。
  2. 前記添加剤の量は、前記非晶質軟磁性合金粉末の重量に対し、0.05wt%以上、0.6wt%以下である、請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記添加剤は、脂肪酸塩である、請求項1または2に記載の圧粉磁心。
  4. 前記脂肪酸塩は、ステアリン酸塩である、請求項3に記載の圧粉磁心。
  5. 前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸リチウムである、請求項4に記載の圧粉磁心。
  6. 非晶質軟磁性合金粉末と、
    前記非晶質軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度−50℃以上、第2結晶化開始温度未満の範囲に、少なくとも1つの吸熱ピークを有する添加剤と、を混合する工程を含む、圧粉磁心の製造方法。
  7. 前記添加剤の量は、前記非晶質軟磁性合金粉末の重量に対し、0.05wt%以上、0.6wt%以下である、請求項6に記載の圧粉磁心の製造方法。
  8. 前記添加剤は、脂肪酸塩である、請求項6または7に記載の圧粉磁心の製造方法。
  9. 前記脂肪酸塩は、ステアリン酸塩である、請求項8に記載の圧粉磁心の製造方法。
  10. 前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸リチウムである、請求項9に記載の圧粉磁心の製造方法。
  11. 非晶質軟磁性合金粉末に、前記非晶質軟磁性合金粉末の第1結晶化開始温度−50℃以上、前記第2結晶化開始温度未満の範囲に、少なくとも1つの吸熱ピークを有する添加剤を混合することで、前記非晶質軟磁性合金粉末の相変態に伴う発熱を抑制する、発熱抑制方法。
  12. 前記添加剤の量は、前記非晶質軟磁性合金粉末の重量に対して、0.05wt%以上、0.6wt%以下の範囲である、請求項11に記載の発熱抑制方法。
  13. 前記添加剤は、脂肪酸塩である、請求項11または12に記載の発熱抑制方法。
  14. 前記脂肪酸塩は、ステアリン酸塩である、請求項13に記載の発熱抑制方法。
  15. 前記ステアリン酸塩は、ステアリン酸リチウムである、請求項14に記載の発熱抑制方法。
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