JP2008294411A - 軟磁性粉末、圧粉磁心の製造方法、圧粉磁心、及び磁性部品 - Google Patents

軟磁性粉末、圧粉磁心の製造方法、圧粉磁心、及び磁性部品 Download PDF

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Abstract

【課題】 Fe基アモルファス粉末を用いた圧粉磁心と同等以下の低損失でかつ高磁束密度の圧粉磁心を提供する。
【解決手段】 結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ前記母相組織の表面側にアモルファス層を有する軟磁性粉末を圧粉体とし、その後に前記圧粉体を熱処理して、前記軟磁性粉末を結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有する微結晶組織の軟磁性粉末とする圧粉磁心の製造方法。
【選択図】図1

Description

各種リアクトル、ノイズ対策、各種モータ、各種発電機等に用いられる圧粉磁心に好適な高飽和磁束密度で低保磁力な軟磁性粉末およびそれにより製造する高磁束密度で低損失な圧粉磁心、それらを用いた磁性部品に関する。
各種リアクトル、ノイズ対策、各種モータ、各種発電機等に用いられる圧粉磁心やそれを製造する軟磁性粉末には、鉄粉、ケイ素鋼、Fe-Si-Al合金、アモルファス合金やナノ結晶合金材料等が用いられている。
各種リアクトル、ノイズ対策、各種モータ、各種発電機等の磁心材料には、高磁束密度で低損失な軟磁性材料が求められており、近年、その形状は製品の形態に合わせて、小型化並びに複雑化してきている。従来のケイ素鋼板やアモルファス薄帯などの2次元的な自由度しかもたない材料から、より自由度の高い3次元的な設計が可能となる軟磁性粉末材料を用いた圧粉磁心に注目が集まっている。また、軟磁性粉末から成る圧粉磁心は、粉末間の絶縁処理を適切に施す、または粉末の形状を扁平化することによって渦電流損失を低減できるという特長を有している。
圧粉磁心は一般的に以下のような手順において製造される。所定の組成の軟磁性合金に機械粉砕やアトマイズ法を適用して、軟磁性粉末を得る。その軟磁性粉末間の絶縁をとるため、例えば、水ガラスやリン酸シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の絶縁材料でかつ結着能力を有する材料を混合して粉末表面に絶縁層を形成させ、絶縁被膜で被覆された軟磁性粉末を製造する。絶縁層の形成には、例えばシリカやアルミナ粉末等の極小粒径なセラミックス粉末を混合して、圧粉した際に軟磁性粉末間の隙間に存在させることによって、絶縁するという方法、または、TEOS等の金属アルコキシドを粉末表面に付着させ、熱処理を施すことによって、絶縁層を形成させる方法等が行われている。
圧粉磁心は絶縁被覆させた軟磁性粉末に、例えばステアリン酸亜鉛等の潤滑剤とともに金型に充填し、プレス成形して所定の形状に製造される。また、プレス成形時の成形歪みが粉末に導入されるが、所定の温度で焼鈍することにより成形歪みを除去し、性能の向上を図っている。
このような圧粉磁心を前述した用途に用いる場合、使用時における磁心損失が小さいこと、また磁心の磁束密度が高いことが重要である。磁心損失が小さくなれば、電力エネルギーのロスが小さくなり、高効率となり省エネルギー化が図られる。また、磁束密度が高くなれば、直流重畳特性等が改善され圧粉磁心を小型化することが可能となり、製品の小型化が図れるばかりでなく、圧粉磁心の周辺の部品も小型化できることによる材料費の削減や、回路の省スペース化により設計上の自由度が向上することも期待できる。
磁心損失は、通常、ヒステリシス損失と渦電流損失に分離される。ヒステリシス損失は金属磁性粉組成および組織、またはプレス成形時に生じた金属磁性粉の歪み等に影響を受ける。渦電流損失は金属磁性粉粒子サイズや金属粉末粒子間の絶縁性に影響を受ける。ヒステリシス損失は保磁力と相関がある。低磁心損失な圧粉磁心を得るためには、低保磁力な軟磁性粉末が求められる。
圧粉磁心用の軟磁性粉末として、最も用いられているのは鉄粉であるが、さらに低損失、特に低ヒステリシス損を有する圧粉磁心を得たい場合には、鉄よりも保磁力の小さいケイ素鋼の粉末が用いられ、さらにヒステリシス損を低減したい場合はFe-Si-Al合金、アモルファス合金、ナノ結晶合金の粉末が用いられている。アモルファス合金やナノ結晶合金の粉末を得るためには、たとえば、急冷薄帯を機械的に粉砕して得る方法、アトマイズにて直接粉末を得る方法等が適用されている。
急冷薄帯を機械的に粉砕して得る場合には、まず、たとえば単ロール法や双ロール法などにて急冷薄帯を作製し、その後、たとえばディスクミル、ボールミル、ピンミルなどの粉砕機を用いて粉砕し粉末を得る。しかし、良好な磁気特性を得られる急冷薄帯は、一般に粉砕しづらく、粉砕前に脆化熱処理を施す必要があること、また、粉砕によって粉末に粉砕歪みが導入されることなどから、急冷薄帯での良好な磁気特性が粉末に反映されない場合がある。
アモルファス合金やナノ結晶合金の粉末をアトマイズにて製造する場合には、一般に、アトマイズ装置の急冷速度によって、その組成が限定され、磁気特性にも影響が出る。たとえば、従来のFe基ナノ結晶合金の場合、Nb等の飽和磁束密度を低下させる元素を含むため、飽和磁束密度が低下し、高磁束密度の圧粉磁心が得られない問題がある。
非特許文献1では、アトマイズ装置の冷却機構の改善を行い急冷速度を向上させ、従来のアトマイズでは得られなかった組成のアモルファス粉末を製造することが出来たとしている。そのアモルファス粉末を用いて非特許文献2では低損失な圧粉磁心を得ている。
しかし、Fe基アモルファス軟磁性粉末および従来のFe基ナノ結晶軟磁性粉末を用いて製造した圧粉磁心は低損失を示すが、材料自体の飽和磁束密度が1.68T以下であり、Fe粉、ケイ素鋼粉より飽和磁束密度が低い。圧粉磁心の磁束密度は材料の飽和磁束密度に占積率をかけたものになる。Fe基アモルファス軟磁性粉末はFe粉、ケイ素鋼粉などの結晶質材料と比較して、硬く成形性も悪いため、圧粉磁心の占積率をパーマロイ、Fe等の結晶質材のように高くし、圧粉磁心の磁束密度を高めることが困難である。
KUBITA TECHNICAL REPORT No.29 7〜13頁 電気学会マグネティックス研究会資料 MAG-98, 201-215 73〜78頁
本発明は、Fe基アモルファス粉末を用いた圧粉磁心と同等またはそれ以下の低損失でかつ高磁束密度の圧粉磁心を得ることを目的とする。圧粉磁心の磁束密度を向上させるには、圧粉占積率を向上させる方法と、材料粉末の飽和磁束密度を向上させる方法とがあるが、本発明では後者を目的とした。
また、圧粉磁心とした時に効率良くかつ安定してコア損失を低減させることができる熱処理工程を提供することを課題とし、鋭意検討を行った。
本発明の軟磁性粉末は、平均粒径が300μm以下であり、結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ前記母相組織の表面側にアモルファス層を有することを特徴とする。
本発明の軟磁性粉末は、最表面に結晶組織から成る結晶層が形成され、前記結晶層の内部側に前記アモルファス層が形成されている。また、アモルファス層と母相組織の間に、前記母相組織の平均粒径よりも粒径が大きい結晶から成る粗大結晶粒層を有するものでもよい。
本発明の軟磁性粉末は、組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0<x≦5、10≦y≦24により表される場合好ましい結果が得られる。
本発明の軟磁性粉末は、形状が扁平であっても良く、厚さが10μm以下でアスペクト比が30以上のものが好ましい。アスペクト比が大きい扁平粉末を用いると圧粉磁心の渦電流損を低減させることができる。
本発明の軟磁性粉末は、金属溶湯を噴霧し、その後直ちに冷却媒体に接触させて急冷する二段階急冷製法を用いて製造されてもよい。または、単ロール法、双ロール法あるいはストリップキャスティング法によって製造された急冷薄帯あるいはフレークを粉砕して製造されてもよい。
本発明の軟磁性粉末を成形し圧粉体とした後、熱処理を施すことで、結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ前記母相組織の表面側にアモルファス層を有した、軟磁気特性に優れる低損失で高磁束密度な圧粉磁心を作製できる。
前記熱処理は、300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるように行うことが好ましく、さらに好ましくは300℃以上の平均昇温速度が150℃/min以上とするとよい。
前記熱処理は、最高温度Tが軟磁性粉末の、結晶化温度−30℃≦T≦結晶化温度+50℃であることが好ましく、さらには−10℃≦T≦結晶化温度+30℃とすることが好ましい。例えば、結晶化温度が430℃の軟磁性粉末Aでは、最高温度TAを400℃≦TA≦480℃とすることがよく、さらには420℃≦TA≦460℃とすることがよい。
前記熱処理は、最高温度に昇温後、300℃以下に冷却する温度サイクルを複数回くり返す熱処理パターンで行うことで、軟磁気特性に優れる低損失で高磁束密度な圧粉磁心を安定して作製できる。サイクルを繰り返す方法としては、例えば、箱型炉などで1サイクルを1工程として、その工程を数回に分けて行うようでもよいし、例えば、連続炉などで数サイクルを1工程として連続的に行うようでもよい。
本発明の軟磁性粉末および圧粉磁心製造方法を用いて圧粉磁心を作製することでで、磁束密度が1.80Tで0.1T、10kHzにおける磁心損失が5.0W/kg以下の軟磁気特性に優れた圧粉磁心を得ることができる。
本発明の軟磁性粉末を用いて製造した圧粉磁心を用いることで、高性能磁性部品を得ることができる。
本発明の軟磁性粉末は、平均粒径が300μm以下であり、結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ粉末の表面側にアモルファス層を有するという特徴を持つ。上記の本発明の軟磁性粉末は、母相と異なる組織が内部に存在しているため、従来のアモルファス粉末、ナノ結晶粉末では得られなかった高飽和磁束密度、低保磁力を併せ持つ軟磁性粉末を実現できることを見出した。
本発明の軟磁性粉末は、図2(a)、(b)に示すように、粉末の表面2より深さ120nmの位置で結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織Dを有し、かつ粉末の表面側にアモルファス層Bを有する。このアモルファス層は、粉末の周囲全体に観察されることもあるし、薄帯形状から粉砕した軟磁性粉末は一部のみ観察されることも有る。この軟磁性粉末は、最表面に結晶組織から成る結晶層Aが形成され、結晶層Aの内部側に前記アモルファス層Bが形成されているものも有る。さらに、アモルファス層Bと母相組織Dの間に、母相組織の平均粒径よりも粒径が大きい結晶から成る粗大結晶粒層Cを有することもある。
アモルファス層が発現する理由を以下に推定する。本合金系は、Feを主成分としかつCu及び/又はAu(以下、A元素)が必須である。Feとほぼ非固溶のA元素は、凝集してナノオーダーのクラスターを形成し、結晶粒の核生成を助ける。表面から離れた部分では、A元素は均一に分散しやすく、そのためにナノ結晶の母相組織Dが形成される。また、非固溶の性質から、最表面ではA元素が偏析しやすくA元素の濃度が高くなり、母相と同様に結晶組織が形成される。一方、最表面の直下内部では、A元素が表面側に取られる分、A元素の濃度が低くなる。そのため、この領域では結晶粒の核生成が起きずにアモルファス層となる。本発明の軟磁性粉末は、熱処理によって微結晶粒層を析出させるが、上述のようにA元素の分布により微結晶粒の核の濃度が決まる。そのため、表面近傍に核が現れにくくなり、アモルファス層ができると思われる。
また、粗大結晶粒層Cが発現する理由を以下に推定する。アモルファス層のさらに内側では、A元素の濃度は母相組織となる領域ほど高くなく、核生成も少ない。ナノ結晶粒の粒径は核の濃度と結晶粒成長のスピードの兼ね合いで決まる。A元素の濃度が均一な母相組織の領域では昇温速度の違いによる組織の違いは現れにくいが、A元素の少ないCの領域では、昇温速度が遅ければ、A元素の熱拡散に十分な時間が与えられて核が減る。そのため、結晶粒が粗大化し易くなり、粗大結晶粒層Cが形成される。例えば、昇温速度を速くすると、粗大結晶粒層Cの結晶粒は微細になり、平均粒径が母相に近づく。また、粗大結晶粒層Cの幅は減少する。昇温速度を制御することにより、組織制御がなされ、用途に合わせた磁気的性質が得られる。
ここで、粗大結晶粒層Cとは、母相組織の平均結晶粒径に対して1.5倍以上の部分を指すものとする。また、粗大結晶粒層Cの平均結晶粒径は、母相組織の平均結晶粒径の2倍以下とすることが好ましい。
結晶粒径の測定は、電子顕微鏡による組織写真で観察される組織の長径と短径の平均値を取ったものである。平均粒径とは、その結晶粒径を30個以上した値の平均値である。
結晶粒の体積分率は、線分法、すなわち顕微鏡組織中に任意の直線を想定しそのテストラインの長さをLt、結晶相により占められる線の長さLcを測定し、結晶粒により占められる線の長さの割合LL=Lc/Lt×100求めることにより求められる。ここで、結晶粒の体積分率VV=LLある。
本発明の軟磁性粉末を用いて圧粉磁心とすることで、飽和磁束密度が1.4T以上の圧粉磁心が得られる。本発明の軟磁性粉末をVSMで測定した場合の粉末の飽和磁束密度は1.80T以上であり、圧粉磁心の占積率は80%以上となる。また、本発明の軟磁性粉末を用いた圧粉磁心は、アスペクト比が大きく、球状のアモルファス粉末を用いた圧粉磁心の場合よりも渦電流損失が低減できる。
母相組織中の結晶粒は体積分率で50%以上、さらには60%以上分散したものが好ましい。平均結晶流径は60nm以下である必要があるが、特に望ましい平均結晶粒径は2nmから25nmであり、この範囲において特に低い保磁力および磁心損失が得られる。
前述の本発明合金中に形成する微結晶粒は主にFeを主体とする体心立方構造(bcc)の結晶相であり、Si,B,AlやGe等が固溶しても良い。また、規則格子を含んでも良い。前記結晶相以外の残部は主にアモルファス相であるが、実質的に結晶相だけからなる合金も本発明に含まれる。一部にCuを含む面心立方構造の相(fcc相)も存在する場合がある。
また、アモルファス相が結晶粒の周囲に存在する場合、抵抗率が高くなり、結晶粒成長の抑制により結晶粒が微細化され、より好ましい軟磁気特性が得られる。
本発明の軟磁性粉末において化合物相が存在しない場合により低い磁心損失を示すが、化合物相を一部に含んでも良い。
本発明の軟磁性粉末は、組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0≦x≦5、10≦y≦24により表されるものが好ましい。以下にその限定理由を述べる。
A元素(Cu、Au)の量は5%以下(0%を含まず)とする。本発明の合金組成におけるA元素は特に重要である。前述したように、A元素はFeとほぼ非固溶のため、熱処理によって拡散を起こす。特に、粉末表面と内部で温度分布や温度差が生じやすい熱処理を施した場合には、拡散が起き易い部位と相互の拡散が妨げられ易い部位が存在し、内部で組織は傾斜的、層状的に変質する。磁気的性質を制御するには、粉末の大きさ、組成の制御、熱処理時の熱処理温度、熱処理時間、昇温速度、降温速度を制御するとことが有効である。
A元素の量は好ましくは3%以下とする。また、A元素は、上記の効果を得るために0.1原子%以上、さらには0.5原子%以上、さらには0.8原子%以上を添加することが好ましい。A元素は原料コストを考慮するとCuを選択することが好ましい。
X元素(B,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Be)はA元素(Cu,Au)が同一粉末内に存在する本発明の軟磁性粉末を形成するために不可欠な元素である。10原子%未満であるとアモルファスの形成を促進する効果が不十分である。また24原子%を超えると軟磁気特性が悪化してしまう。好ましい範囲は12原子%以上20原子%以下である。
特にBはアモルファスの形成を促進するために重要な元素であり添加することが好ましい。Bの濃度が10≦y≦20原子%であると、Feの含有量を高く維持しつつアモルファス相が安定に得られる。
また、Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beを添加すると、結晶磁気異方性の大きいFe-Bが析出開始する温度が高くなるため、熱処理温度を高温にできる。高温の熱処理を施すことで微結晶相の割合が増え、BSが増加する。また、試料表面の変質、変色を抑える効果がある。Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beの添加量は、0原子%超〜7原子%とすることが好ましい。特にSiはこの効果が顕著であり、好ましい。
Feの一部をFeとA元素に共に固溶するNi、Coから選ばれた少なくとも一種以上の元素で置換してもよい。これらの元素を置換した軟磁性粉末はアモルファス相の形成能が高くなり、A元素の含有量を増加させることが可能である。A元素の含有量が増加することで、結晶組織の微細化が促進され軟磁気特性が改善される。また、Ni,Coを置換した場合には飽和磁束密度が増加する。これらの元素を多く置換すると、価格の高騰につながるため、Niの置換量は10%未満、好ましくは5%未満、さらには2%未満が適当であり、Coの場合は10%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満が適当である。
Feの一部をTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、白金族元素、Ag、Zn、In、Sn、As、Sb、Sb、Bi、Y、N、O及び希土類元素から選ばれた少なくとも一種以上の元素で置換した場合、これらの元素はA元素やメタロイド元素と共に熱処理後も残留するアモルファス相に優先的に入るため、Fe濃度の高い微細結晶粒の生成を助ける働きをする。そのため、軟磁気特性の改善に寄与する。一方、本発明合金における実質的な磁性の担い手はFeであるため、Feの含有量を高く保つ必要があるが、これら、原子量の大きい元素を含有することは、単位重量あたりのFeの含有量が低下することになる。特に、置換する元素がNb,Zrの場合、置換量は5%未満程度、より好ましくは2%未満が適当であり、置換する元素がTa,Hfの場合、置換量は2.5%未満、より好ましくは1.2%未満が適当である。また、Mnを置換する場合は飽和磁束密度の低下がおこるため、置換量は5%未満が妥当であり、より好ましくは2%未満である。
但し、特に高い飽和磁束密度を得るためには、これらの元素の総量が1.8原子%以下とすることが好ましい。また、総量が1.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
本発明の具体的な製造方法は、100℃/sec以上の冷却速度で急冷し、非晶質相中に平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質相中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織のFe基合金を作製後、これを加工し、結晶化温度の近傍で熱処理を施し、平均粒径が60nm以下の微結晶組織を形成することによって得られる。
本発明において、溶湯を急冷する方法としては、単ロール法の他、双ロール法、回転液中防止法、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ガスまたは水などにより金属溶湯を噴霧し、直後に水または水冷円盤、水冷ロールなどの冷却媒体に接触させて急冷する二段階の冷却を連続的に行う二段階急冷製法などがあり、薄片や薄帯、粉末を製造することができる。また、溶湯急冷時の溶湯温度は、合金の融点よりも50℃〜300℃程度高い温度とするのが望ましい。
単ロール法や冷却ロールを用いる二段階急冷製法などの超急冷法は、活性な金属を含まない場合は大気中あるいは局所Arあるいは窒素ガスなどの雰囲気中で行うことが可能であるが、活性な金属を含む場合はAr,Heなどの不活性ガス中、窒素ガス中あるいは減圧中、あるいはノズル先端部のロール表面付近のガス雰囲気を制御する。また、CO2ガスをロールに吹き付ける方法や、COガスをノズル近傍のロール表面付近で燃焼させながら合金粉末製造を行う。
冷却ロール周速は、単ロール法では30〜50m/s、冷却ロールを用いる二段急冷製法では10〜50m/s程度の範囲が望ましく、冷却ロール材質は、熱伝導が良好な純銅やCu−Be、Cu−Cr、Cu−Zr、Cu−Zr−Crなどの銅合金が適している。大量に製造する場合、冷却ロールは水冷構造とした方が好ましい。
一般にFe基アモルファス合金またはナノ結晶合金を形成するのに必要な冷却速度(105℃/sec)以上の急冷により、本願発明の軟磁性粉末が提供される。105℃/sec以上の冷却速度を有する急冷方法としては、単ロール法、水アトマイズ法、ガスで水や油などの冷却媒体に粉体を噴霧したのち沈降させる方法、さらに、後述する、ガスで回転させた水冷円盤に粉体を吹き付けて急冷する方法などがある。
金属溶湯から直接、急冷による非平行相を有する粉末を作製できる方法として、高圧ガスなどで金属溶湯を噴霧し、さらに、回転させた水冷円盤などの冷却媒体に接触させて急冷するものが好ましい。本発明では、これを二段階急冷法(以後、二段急冷と略す)と呼ぶ。二段急冷では金属溶湯を高圧ガスで噴霧する過程と、金属溶湯粒が水冷円盤に密着されて急冷される過程とが連続的に行われる。前過程は金属溶湯を分断しつつ冷却する過程でもあり、高圧ガスの圧力やガスを噴出する噴霧口の設定を変更することにより、作製する粉末の粒度分布を制御することができる。後過程は前過程で分断された金属溶湯粒を急冷する過程であり、水冷円盤の回転数や表面の密着性などによって急冷組織を制御できる。
高圧ガスは、不活性ガス(例えば窒素やアルゴン、ヘリウム)であればどのようなものでも用いることが可能である。また、ガスの温度は規定しないが、噴霧後、水冷円盤に接触する前に金属溶湯が冷却されてしまうと所望の急冷組織が得られないため、あまり低温でないことが望ましい。後述の本願発明では常温で使用している。
水冷円盤の形状は、金属溶湯を噴霧し吹き付ける面が、噴霧方向に対して垂直方向であるお盆状でも良いし、噴霧方向と角度を持たせた円錐形でも良い。お盆状の場合には、ディスク状の薄い粉末ができ、円錐形の場合には、楕円形で厚さの薄い粉末ができる。このように水冷円盤の形状を変更することによって、粉末の形状を制御することも可能である。
二段急冷によって作製された粉末の厚みは1〜10μm程度で、単ロール法で作製されるアモルファスリボンよりも厚さが半分以下であるため、二段急冷は単ロール法よりも効率の良い急冷が可能であり、均一な非平行組織が得られる。
軟磁性粉末を得る方法としては、単ロール法、双ロール法あるいはストリップキャスティング法によって製造された急冷薄帯あるいはフレークを粉砕して得ることも出来る。薄帯の粉砕方法としては、ディスクミルやボールミルまたはピンミルなどの一般的な粉砕設備を用いることが出来る。粉砕の工程は、後述する熱処理をする前でも後でも良い。また、粉砕工程によって粉末に導入される粉砕歪みを除去するための熱処理を別途行っても良い。
本発明の軟磁性粉末は、合金粉末表面を被覆処理する化成処理により表面に絶縁層を形成する、アノード酸化処理により表面に酸化物絶縁層を形成し粉末間絶縁を行う等の処理を行うとより好ましい結果が得られる。絶縁層は有機または無機バインダーの様なものでも良いし、酸素雰囲気、窒素雰囲気中にて熱処理することで粉末表面を酸化または窒化して形成しても良い。これは特に粉末間を渡る高周波における渦電流の影響を低減し、高周波における磁心損失を改善する効果があるためである。
本発明の軟磁性微結晶粉末を圧粉磁心に成形する際には、冷間成形、温間成形、静水圧成形、プラズマ焼結成形、磁場中成形などいずれで行って良い。特に、プラズマ焼結成形を行うと占積率を高める効果と損失を低減する効果が顕著に得られる。また、磁場中成形を行うと扁平粉の配列を揃えることも可能となり、高透磁率、損失低減の効果が得られる。
本発明の軟磁性粉末は、300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるような熱処理を施すことで優れた軟磁気特性を実現する。この熱処理を施す場合は、前記の急冷により得た非晶質相中に平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質相中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織のFe基軟磁性粉末を成形して、圧粉体としてから行うことが好ましい。
前記の熱処理を圧粉体としてから施す場合では、熱処理によって、微結晶組織が形成されるのと同時に、成形時に粉末に導入される成形歪みが除去される。アモルファス相から微結晶が生成するには、組織構造の変化が起こり、その構造変化が成形歪みの除去に効果的な役割を果たしている。圧粉体に成形歪みが残留すると、残留度合いに応じて保磁力が増大し、損失が増大する。成形歪みの除去は圧粉磁心製造方法において、最も重要な課題である。
300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるような熱処理においては、昇温速度が比較的速いため、熱処理炉の構造やプログラム設定によっては、炉の設定温度と試料の実温との間に差が生じることがある。本発明の圧粉磁心においては、粉末の結晶化温度を炉の設定温度とし、試料の実温が「結晶化温度−30℃≦T≦結晶化温度+50℃」とすることが好ましい。さらに好ましくは、試料の実温が「結晶化温度−10℃≦T≦結晶化温度+30℃」がよい。
本発明の軟磁性粉末であって結晶化温度が460℃の粉末を成形した圧粉体の熱処理においては、図3に示すように、試料の最高到達温度を430〜510℃とすることで0.1T、10kHzの条件で10W/kg以下の低損失を実現できる。さらには、試料の最高到達温度を450〜490℃とすることで、5W/kg以下の低損失を実現できる。
試料の実温が「結晶化温度−30℃」よりも低い場合は、微結晶化が促進されず、本発明の軟磁性粉末組織が得られないばかりでなく、成形歪みも完全に除去できないため、磁心損失が十分に低減できない。試料の実温が「結晶化温度+50℃」よりも高い場合は、結晶が粗大化してしまい本発明の軟磁性粉末組織が得られないため、磁心損失が十分に低減できない。
前記の熱処理は、1サイクルでも優れた軟磁気特性を有する圧粉磁心を製造できるが、数サイクル繰り返すことで、安定した製造が可能となる。前記の熱処理は昇温速度が比較的高いため、試料の大きさや形状によっては、例えば試料の表面近傍と内部など、部分により温度差が生じる可能性がある。繰り返し熱処理を行うことで粉体全体に均一な熱が与えられて、磁心損失が低い本発明の軟磁性粉末が得られる。
図4に示す試料にように、1サイクルで磁心損失が28W/kgであったものが、2サイクル以上熱処理を繰り返すことによって、5W/kg以下まで低減できた。これは、1サイクル目では試料全体にわたって均一な微結晶化が行えず、部分的にアモルファス相が残留したためである。2サイクル以上の熱処理を繰り返すことによって、微結晶化が促進されて、磁心損失が低減する。
本発明の熱処理方法によると、図4に示すように、3〜4サイクル目の磁心損失はほとんど変化しておらず、本発明の範囲においては、サイクル数を増やすことによって、微結晶化した部分の組織が粗大化することがなく、磁心損失が劣化することはない。量産現場において、試料を大量に一度に熱処理する際は、炉内における温度分布などの影響や、試料間の重量の差違などの影響から試料全てに均一な熱処理を施すことは難しいが、本発明の熱処理方法によれば、熱処理サイクルを必要数回繰り返すことにより、安定して優れた軟磁気特性を有する圧粉磁心を製造できる。
本発明によれば、大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、電磁シールド材料などのノイズ対策部品、モータ、発電機等に用いられる高飽和磁束密度で低保磁力の軟磁性粉末およびそれを用いた高磁束密度で低損失なの圧粉磁心を実現することができるため、その効果は著しいものがある。
以下本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
単ロール法において、1360℃に加熱した合金溶湯を、周速30m/sで回転する水冷されたCuロールに噴射し、厚さ18〜20μmのFebalCu1.5Si5B13合金薄帯を作製した。合金薄帯を所定の温度にて脆化処理した後に粉砕し、厚さ18〜20μm、粒径300μm以下の扁平粉末を作製した。X線回折および透過電子顕微鏡(TEM)により断面観察の結果、非晶質相中に微細結晶が体積分率で30%未満分散した組織であることが確認した。
作製した粉末にTEOS処理を施すことによって厚さ0.1〜0.2μmのSiO2被膜を粉末表面に均一に形成させ、絶縁被覆軟磁性扁平粉末を得た。さらに潤滑剤であるZn-St粉末を混合し、金型に充填して、10〜20ton/cm2の圧力でプレス成形を行った。
得られた成形体を300℃以上の平均昇温速度が300℃/min以上となるような条件にて、熱処理を行い、ナノ結晶構造を持つ軟磁性粉末からなる圧粉磁心を得た。圧粉成形してから熱処理を施すことは、成形時に粉末に加えられる歪みを完全に除去するのに有効である。表1に0.1T、10kHzにおける磁心損失Pcm、粉末の飽和磁束密度Bs、圧粉磁心の占積率を示す。圧粉磁心の見かけの磁束密度は、粉末の飽和磁束密度×占積率である。本発明の軟磁性粉末を用いて製造された圧粉磁心は、アモルファス圧粉磁心並の磁心損失を有し、かつケイ素鋼粉末圧粉磁心と同様の磁束密度を有するという優れた磁気特性を持つ。
(実施例2)
二段階急冷製法において、1400℃に加熱した合金溶湯を6.0MPaの窒素ガスにて噴霧し、その直後に周速10m/sで回転する外径380mm、回転軸と45°の傾斜面をもつ円錐形のCu-Cr合金水冷円錐ロータに溶湯を吹き付け、厚さ1〜5μmのFebalCu1.5Si4B14合金扁平粉末を作製した。扁平粉末はアスペクト比が30以上を有し、形状は楕円形である。楕円形状の長径は500μm以上のものも得られるが、成形性を考慮して、長径が300μm以下の粉末のみを採用した。X線回折および透過電子顕微鏡(TEM)により断面観察の結果、非晶質相中に微細結晶が体積分率で30%未満分散した組織であることを確認した。
作製した粉末にTEOS処理を施すことによって厚さ0.1〜0.2μmのSiO2被膜を粉末表面に均一に形成させ、絶縁被覆軟磁性扁平粉末を得た。さらに潤滑剤であるZn-St粉末を混合し、金型に充填して、10〜20ton/cm2の圧力でプレス成形を行った。
得られた成形体を300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるような条件にて、熱処理を行い、圧粉磁心を得た。表1に0.1T、10kHzにおける磁心損失Pcm、粉末の飽和磁束密度Bs、圧粉磁心の占積率を示す。
(実施例3)
単ロール法において、1360℃に加熱した合金溶湯を、周速30m/sで回転する水冷されたCuロールに噴射し、厚さ19〜21μmのFebalCu1.5Si5B13合金薄帯を作製した。合金薄帯を所定の温度にて脆化処理した後に粉砕し、厚さ18〜20μm、粒径300μm以下の扁平粉末を作製した。この合金粉末に熱処理を施した。熱処理のパターンは、300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上とした。熱処理の保持温度は450℃で10分間とし、その後、急冷して本発明の軟磁性粉末を得た。
(実施例4)
実施例1で製造した本発明の軟磁性粉末に、TEOS処理を施すことによってSiO2の被膜を粉末表面に形成させ、絶縁被覆軟磁性扁平粉末を得た。この粉末に潤滑剤であるZn-St粉末を混合し、金型に充填して、20ton/cm2の圧力でプレス成形を行った。その後、400℃で2時間の歪み焼鈍熱処理を施し、圧粉磁心を得た。表1に0.1T、10kHzにおける磁心損失Pcm、粉末の飽和磁束密度Bs、圧粉磁心の占積率を示す。
(実施例5)
二段階急冷製法において、1400℃に加熱した合金溶湯を6.0MPaの窒素ガスにて噴霧し、その直後に周速10m/sで回転する外径380mm、回転軸と45°の傾斜面をもつ円錐形のCu-Cr合金水冷円錐ロータに溶湯を吹き付け、厚さ1〜5μmのFebalCu1.5Si4B14合金扁平粉末を作製した。扁平粉末はアスペクト比が30以上を有し、形状は楕円形である。楕円形状の長径は500μm以上のものも得られるが、成形性を考慮して、長径が300μm以下の粉末のみを採用した。X線回折および透過電子顕微鏡(TEM)により断面観察の結果、非晶質相中に微細結晶が体積分率で30%未満分散した組織であることが確認された。
この合金粉末に熱処理を施した。熱処理のパターンは、300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上とした。熱処理の保持温度は450℃で10分間とし、その後、急冷して本発明の軟磁性粉末を得た。
図1は、本発明の軟磁性粉末の透過型電子顕微鏡による粉末表面近傍の組織写真である。最表面から順に、ナノ結晶粒の表面層A、アモルファス層B、母相Dの構造から成る。母相は平均粒径が約25nmの微細結晶粒が80%以上で存在していた。
この軟磁性粉末に、TEOS処理を施すことによってSiO2の被膜を粉末表面に形成させ、絶縁被覆軟磁性扁平粉末を得た。この粉末に潤滑剤であるZn-St粉末を混合し、金型に充填して、10〜20ton/cm2の圧力でプレス成形を行った。その後、400℃で2時間の歪み焼鈍熱処理を施し、圧粉磁心を得た。表1に0.1T、10kHzにおける磁心損失Pcm、粉末の飽和磁束密度Bs、圧粉磁心の占積率を示す。表1中の実施例1−3と比較すると磁心損失が若干高い。これは粉末の時点でナノ結晶化の熱処理を行っているため、圧粉後の焼鈍熱処理でナノ結晶が粗大化したためと思われる。
(実施例6)
表2に示す合金組成の原料を用いた以外は実施例1と同様にして圧粉磁心を製造した。表2に0.1T、10kHzにおける磁心損失Pcm、粉末の飽和磁束密度Bs、圧粉磁心の占積率を示す。
(実施例7)
単ロール法において、1360℃に加熱した合金溶湯を、周速30m/sで回転する水冷されたCuロールに噴射し、厚さ18〜20μmのFebalCu1.5Si5B13合金薄帯を作製した。合金薄帯を所定の温度にて脆化処理した後に粉砕し、厚さ18〜20μm、粒径300μm以下の扁平粉末を作製した。
作製した粉末にTEOS処理を施すことによって厚さ0.1〜0.2μmのSiO2被膜を粉末表面に均一に形成させ、絶縁被覆軟磁性扁平粉末を得た。さらに潤滑剤であるZn-St粉末を混合し、金型に充填して、10〜20ton/cm2の圧力でプレス成形を行った。
得られた成形体に対して、300℃以上の平均昇温速度を300℃/minで昇温し、430℃まで加熱した後、ただちに300℃以下まで急冷する熱処理を1〜4回繰り返して行った。図4に示すように熱処理を繰り返すことによって、磁心損失が低減した。
(実施例8)
実施例7と同様に作製した成形体に対して、300℃以上の平均昇温速度を300℃/minで昇温、最高到達温度400〜583℃に達した後、ただちに300℃以下まで急冷する熱処理行った。図3に最高到達温度によって磁心損失が変化するが、430〜510℃で磁心損失が低減した。
この高飽和磁束密度低損失の軟磁性粉末から圧粉磁性部品を構成することにより、アノードリアクトルなどの大電流用の各種リアクトル、アクティブフィルタ用チョ−クコイル、平滑チョークコイル、磁気シールド、電磁シールド材料などのノイズ対策部品、モータ、発電機等に好適な高性能あるいは小型の磁性部品を実現することができる。
軟磁性粉末の表面近傍に見られる層状構造を示す組織写真。 本発明の軟磁性薄帯の組織の状態を示す模式図。 熱処理の保持温度と磁心損失との関係を示す図。 熱処理のサイクル数と磁心損失との関係を示す図。 組織写真
符号の説明
1:軟磁性粉末、2:粉末の表面

Claims (12)

  1. 平均粒径が300μm以下の軟磁性粉末であって、結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ前記母相組織の表面側にアモルファス層を有することを特徴とする軟磁性粉末。
  2. 前記軟磁性粉末は、最表面に結晶組織から成る結晶層が形成され、前記結晶層の内部側に前記アモルファス層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性粉末。
  3. 前記アモルファス層と母相組織の間に、前記母相組織の平均粒径よりも粒径が大きい結晶から成る粗大結晶粒層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟磁性粉末。
  4. 前記軟磁性粉末は、組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0<x≦5、10≦y≦24により表されることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の軟磁性粉末。
  5. 前記軟磁性粉末であって、厚さが10μm以下、アスペクト比が30以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の軟磁性粉末。
  6. 金属溶湯を噴霧し、その後直ちに冷却媒体に接触させて急冷する二段階急冷製法を用いて製造されることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の軟磁性粉末。
  7. 組成式:Fe100-x-yAX(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0<x≦5、10≦y≦24により表される軟磁性粉末を圧粉体とし、その後に前記圧粉体を熱処理して、前記軟磁性粉末を結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有する微結晶組織の軟磁性粉末とする圧粉磁心の製造方法。
  8. 前記熱処理は、300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるように行うことを特徴とする請求項7に記載の圧粉磁心の製造方法。
  9. 前記熱処理は、最高温度Tが軟磁性粉末の、結晶化温度−30℃≦T≦結晶化温度+50℃であることを特徴とする請求項7,8に記載の圧粉磁心の製造方法。
  10. 前記熱処理は、最高温度に昇温後、300℃以下に冷却する温度サイクルを複数回くり返す熱処理パターンで行うことを特徴とする請求項7乃至請求項9に記載の圧粉磁心の製造方法。
  11. 請求項1乃至請求項6に記載の軟磁性粉末を用いて、請求項7乃至請求項10に記載の製造方法にて製造された圧粉磁心であり、0.1T、10kHzにおける磁心損失が5.0W/kg以下であることを特徴とする圧粉磁心。
  12. 請求項11に記載の圧粉磁心を用いたことを特徴とする磁性部品。

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