JP2016151009A - 歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物 - Google Patents

歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物 Download PDF

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Abstract

【解決手段】(A)平均重合度300以上3000未満のジオルガノポリシロキサン、
(B)平均重合度300未満ジオルガノポリシロキサン、
(C)平均重合度3000以上のジオルガノポリシロキサン、
(D)R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、RSiO3/2単位(T単位)から選択されてなり、M及びQ単位を必須構成とし、全構成単位のうちMとQの合計量が80mol%以上で、かつmol数比が0.5〜1.5であるオルガノポリシロキサン、
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(F)ヒドロシリル化反応触媒、
(G)充填剤
を含み、23℃での粘度が100Pa・s以上300Pa・s未満の範囲である歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物。
【効果】本発明によれば、透明性が高く、十分な強度を確保し、歯科印象施術に適した流動性のシリコーンエラストマー組成物を提供できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物に関し、歯科治療における義歯、クラウン等の作製や、歯列矯正で使用される硬質マウスピース作製に必要な口腔内歯列模型を作製する際に使用される型取り材(以下、歯科印象材と表記)としてのシリコーンエラストマー組成物に関する。
歯科印象材は、従来、寒天、アルギン酸塩、多硫化ゴム、ポリエーテルゴム、シリコーンエラストマー等を素材としており、特に、シリコーンエラストマーは、高精度の寸法安定性を有しているため広く使用されている。
いずれの材料も、液状、パテ状の組成物を歯科医師が口腔内の歯列に被覆し、それぞれの硬化機構により常温で硬化させた後、硬化物を脱型してゴム型を成型する。このゴム型に石膏を流し込んで、硬化、脱型すると、石膏製の口腔内歯列模型が成型される。従来の歯科印象材は、各種素材にゴム強度を付与するため、ベースポリマーにカーボンやシリカ等の補強性充填剤が配合されており、一般に不透明であった。また、脱型性を改善する離型剤や、硬さや流動性を調整するための可塑剤、その他の特性を付与するための各種添加剤等は、それぞれの素材のベースポリマーに相溶しないものも多く、組成物が不透明となる原因になっていた。
また、未硬化の歯科印象材を歯列に被覆する際、ゴム型の完成度に大きく影響する位置決めや気泡の排除を行うために施術上の微調整が必須となるが、上記の理由により歯科印象材が不透明であることから目視確認が不可能で、歯科医師には専門技術や高度の熟練が要求されていた。
また、歯科印象材はカートリッジタイプの容器に充填されて流通され、歯科医師が手動吐出機から印象材を取り出して施術することが一般的であるが、歯科印象材の粘性が低すぎると歯列への被覆が困難であるし、粘性が高すぎるとカートリッジからの手動吐出が困難となる。
特公平8−13732号公報 特許第2731987号公報 特許第2967236号公報 特許第3928071号公報 特許第4090536号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、硬化前において歯科印象施術に適した流動性を示し、硬化後における引裂き強度や伸びなどの機械的強度に優れ、かつ高透明な硬化物を与える歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物の提供を本発明の目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、シリカ等の補強性充填剤を、透明性を損なう範囲において含まないシリコーンエラストマー組成物を使用することにより上記目的が達成されることを見出した。また、分子量の異なる複数のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを併用することにより、歯科印象材として十分な強度を確保し、歯科印象施術に適した流動性のシリコーンエラストマー組成物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕 歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物であって、
(A)平均重合度が300以上3,000未満で、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)平均重合度が300未満で、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン:10〜100質量部、
(C)平均重合度が3,000以上で、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する、室温で生ゴム状のジオルガノポリシロキサン:10〜200質量部、
(D)R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、M単位及びQ単位を必須構成単位として含み、全構成単位のうちM単位とQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつ(M単位のmol数)/(Q単位のmol数)の比が0.5〜1.5の範囲であるオルガノポリシロキサン(ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の少なくとも二個はアルケニル基である):0〜20質量部、
(E)一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基一個当たり、ケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5〜5.0となる量、
(F)ヒドロシリル化反応触媒:(A)〜(E)成分の合計重量に対して0.5〜1,000ppm、
(G)平均粒子径が1μm以下の充填剤:0〜1質量部
を含み、
23℃での粘度が100Pa・s以上300Pa・s未満の範囲であることを特徴とする、歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物、
〔2〕 上記(A)、(B)、(C)成分のジオルガノポリシロキサンが、下記平均組成式(I)で示されるものである〔1〕記載のシリコーンエラストマー組成物
1 aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、aは1.9〜2.4の範囲の数である。)
を提供する。
本発明のシリコーンエラストマー組成物からなる歯科印象材は、透明性が高く、歯列と歯科印象材の位置関係や施術中に巻き込んだ気泡の除去等について、歯科医師は歯科印象材を歯列に被覆した状態で直接目視確認しながらの作業が可能となる。
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
(A)成分
本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物に用いられる(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、平均重合度が300以上3,000未満であり、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するものである。
(A)成分としては、通常、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物のベースポリマーとして用いられる公知のものを使用することができる。
(A)成分の粘度としては、好ましくは23℃において2〜200Pa・s、更に好ましくは5〜100Pa・sである。なお、粘度は回転粘度計により測定することができる。
(B)成分
(B)成分のジオルガノポリシロキサンは、平均重合度が300未満であり、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するものである。
(B)成分としては、通常、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物のベースポリマーとして用いられる公知のものを使用することができる。
(B)成分の粘度としては、好ましくは23℃での粘度が20〜2,000mPa・s、更に好ましくは100〜1,000mPa・sである。
(C)成分
(C)成分の室温で生ゴム状のジオルガノポリシロキサンは、平均重合度が3,000以上であり、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するものである。
(C)成分としては、通常、ミラブルタイプのシリコーンゴムコンパウンドのベースポリマーとして用いられる公知のものを使用することができる。
(C)成分の平均重合度は、好ましくは3,000〜30,000、より好ましくは5,000〜10,000を示す。
なお、平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量より求めることができる。
上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分はいずれもアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンであるが、互いに分子量(重合度)が異なる。これらは通常、下記平均組成式:(I)で表されるものが好ましい。
1 aSiO(4-a)/2 (I)
ここで、R1は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基で、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基などの非置換一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換一価炭化水素基である。複数の置換基は異なっていても同一であってもよいが、分子中にアルケニル基を二個以上含んでいることが必要である。また、aは1.9〜2.4、好ましくは1.95〜2.05の範囲の数である。上記ジオルガノポリシロキサンは、いずれも直鎖状であっても分岐していても良い。好ましくは主鎖がジオルガノポリシロキサン単位(D単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(M単位)で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンであるものが例示され、ケイ素原子に結合した置換基はメチル基、又はフェニル基が好ましい。また、一分子中に二個以上含有することが必須であるケイ素原子と結合したアルケニル基はビニル基が好ましく、これは分子鎖末端に存在していても側鎖に存在していても良いが、両末端に二個含有するものが好ましい。
(D)成分
(D)成分のシリコーン樹脂は、R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、これらの全構成単位のうちM単位及びQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつ(M単位のmol数)/(Q単位のmol数)の比が0.5〜1.5の範囲である。ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の少なくとも二個はアルケニル基である。
上記Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、並びにフェニル基等の非置換一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換一価炭化水素基が挙げられ、(D)成分のシリコーン樹脂に含まれる複数のRは同じでも異なっても良いが、シリコーンエラストマー組成物の他の成分との相溶性の観点から、Rの80mol%以上がメチル基であることが好ましい。各成分の相溶性が悪化すると、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の透明性が低下するためである。また、アルケニル基としてはビニル基が好ましいが、これも他の成分との相溶性を保つことが理由である。
上記の(D)成分のシリコーン樹脂において、上記四種の構成単位のうちR3SiO1/2単位(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)は必須であり、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の硬さを向上させるためには、全構成単位に占めるこの二種の構成単位の割合が80mol%以上であることが必要であり、好ましくは90mol%以上、より好ましくは100mol%である。R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)は含まれていてもいなくても良い。
また、(M単位のmol数)/(Q単位のmol数)の比が0.5より小さいとヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の他の成分との相溶性が悪化し、1.5よりも大きいとヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の硬さが低下してしまう。従ってM単位とQ単位のmol比は0.5〜1.5の範囲にあることが必要とされ、好ましくは0.7〜1.2の範囲である。
上記の(D)成分のシリコーン樹脂として具体的には、ビニルジメチルシロキシ基とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・トリメチルシロキシ基とQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・ジメチルシロキサンとQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・フェニルシルセスキオキサンとQ単位の共重合体、ビニルジメチルシロキシ基・ジメチルシロキサン・フェニルシルセスキオキサンとQ単位の共重合体、トリメチルシロキシ基・ビニルメチルシロキサンとQ単位の共重合体などが挙げられる。
本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物は、未硬化時の流動性と硬化後のゴム特性を考慮し、(A)成分100質量部に対し、(B)成分は10〜100質量部、(C)成分は10〜200質量部、(D)成分は0〜20質量部の範囲で配合される。(B)成分がこの範囲を超える組成では、未硬化時の流動性が高すぎて歯列上に留まらないためゴム型を成型できないし、硬化物は硬くて脆いものとなる。(B)成分が少なすぎると、未硬化時の粘性が高すぎて歯科印象の施術が困難となる。(C)成分がこの範囲を超える組成では、未硬化時の粘性が高すぎて歯科印象の施術が困難となるし、硬化物は柔らかく表面粘着性のあるものとなり扱いにくい。(C)成分が少なすぎると、未硬化時の流動性が高すぎて歯列上に留まらないためゴム型を成型できない。(D)成分がこの範囲を超える組成では、未硬化時の粘性は高く、硬化物は硬くて脆いものになるため、歯科印象材として適さない。より好ましくは、(A)成分100質量部に対し、(B)成分は50〜100質量部、(C)成分は50〜100質量部、(D)成分は0〜10質量部である。
(B)成分と(C)成分の併用は、本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物の未硬化時粘度と硬化後の硬さ、引裂き強度、伸びのバランスを取るために重要である。一般的には、歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物のゴム特性としては、未硬化時における23℃での粘度が100Pa・s以上300Pa・s未満の範囲、硬化物のデュロメータタイプAでの硬さが10以上30以下の範囲、JIS−K6249による引裂き強さ、切断時伸びがそれぞれ0.8kN/m以上2.0kN/m以下、150%以上300%以下の特性を全て満たすことが好ましい。
(E)成分
(E)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)〜(D)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化付加反応により架橋を形成し、組成物を硬化させる成分である。上記(E)成分は一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するもので、下記平均組成式:(II)で示されるものが好ましい。
2 bcSiO(4-b-c)/2 (II)
ここで、R2は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基で、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基などの非置換一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換一価炭化水素基である。bは0.7〜2.1、cは0.18〜1.0、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくはbは0.8〜2.0、cは0.2〜1.0、かつb+cは1.0〜2.5を満足する正数で示される。
(E)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜200個程度の室温で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端に存在していても側鎖に存在していても、その両方に存在していても良い。
(E)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物の硬化後のゴム型において、適度な強度と伸び、硬さを実現するため、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基一個当たり、ケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5〜5.0の範囲となるように(E)成分の量を調整する必要があり、好ましくは1.0〜2.0である。0.5未満では柔らかく表面粘着性のある硬化物となり、5.0を超えると硬く脆い硬化物となる。
(F)成分
(F)成分のヒドロシリル化反応触媒としては、公知のものが適用可能で、例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。なお、このヒドロシリル化反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量に対し、0.5〜1,000ppm、好ましくは1〜200ppmである。
(G)成分
本発明の(G)成分は、硬化前の粘度や流動性並びに硬化後の強度を調整するための成分であり、歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物及びその硬化物の透明性を損なわない範囲で添加してもよい。具体的には0〜1質量部の範囲で使用されるが、0.5質量部以下が好ましく、(G)成分を含まないことがより好ましい。上記範囲を超えると歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物及びその硬化物の透明性が損なわれ、また、未硬化時の粘性が高くなり歯科印象の施術が困難となる。
(G)成分としては、例えば、煙霧質シリカ、湿式系の微粉末シリカ、結晶性シリカ、カーボンブラック、ベンガラ、酸化セリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、チタン酸エステル等の補強性充填剤、更にこれらの充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水化処理した充填剤が挙げられ、中でも、シリコーンエラストマー組成物に添加した際の透明性への影響が小さいシリカが好適に用いられる。
なお、充填剤としては、レーザー回折法で粒度分布を測定した際の50%重量平均径が1μm以下であり、0.1μm以下であることが好ましい。1μmを超えると歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物及びその硬化物の透明性が損なわれる。
本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物の硬化後のゴム型において、厚さ2mmの全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%以上であれば、歯科医師が歯科印象材を歯列に被覆する際に目視確認を行うのに適している。
その他の成分
更に、本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物は、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサンや1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(トリアリルイソシアヌレート)等の多官能アルケニル化合物、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール誘導体などのヒドロシリル化反応遅延剤を、ポットライフの確保のために添加しても良い。
本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物には本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンや(D)成分のシリコーン樹脂以外のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンや、アルコキシシリル基を含有するアルコキシシラン系化合物、シランカップリング剤、チタン系やジルコニウム系等の縮合触媒などを架橋補助剤として配合しても良い。更に染料、顔料、離型剤、親水性付与剤等の配合も、本発明の効果を損なわない範囲ならば可能である。これらの各任意成分は、一種単独で用いても二種以上を併用しても良い。
本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物は、通常の混合攪拌器、混練器等を用いて上記の各成分を溶解混合、均一分散することにより調製することができる。
本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物の硬化方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、本組成物を成形後、室温で放置する方法、患者の口腔内で成形し、そのまま放置する方法、又は本組成物を成形後、50〜200℃に加熱する方法などが挙げられる。
以下、実施例と比較例によりこの発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量の単位は質量部である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の値を示す。
[実施例1〜7及び比較例1〜6]
歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物の各例について、(A)高粘度アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)低粘度アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(C)生ゴム状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(D)シリコーン樹脂、(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(F)ヒドロシリル化反応触媒、(G)充填剤、(H)ヒドロシリル化反応遅延剤、それぞれの配合量を表1,2に示した。各組成物は均一に混合撹拌、減圧脱泡して粘度を回転粘度計により測定した。
プレス板上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ライナー、厚さ2mmの枠を重ね、この枠内に上記の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物を流し込み、この上に更にPETライナー、プレス板を積層して室温(23℃)で5分間プレス成型した。二枚のプレス板間からPETライナーごと硬化物を取り出し、PETライナーを剥離して厚さ2mmのシリコーンエラストマー製透明シートを得た。これらについて、JIS−K6249によるゴム硬度、引裂き強さ、切断時伸びと、全光線透過率を測定した。
実施例、比較例で使用した材料
(A)高粘度アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
A−1 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
平均重合度:約1,100(重量平均分子量=約80,000)
粘度:約100Pa・s
A−2 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
平均重合度:約450(重量平均分子量=約33,000)
粘度:約5Pa・s
A−3 両末端トリメチルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
平均重合度:約750(重量平均分子量=約56,000)
粘度:約30Pa・s
一分子当たりのアルケニル基数:5.3個
(B)低粘度アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
B−1 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
平均重合度:約180(重量平均分子量=約13,000)
粘度:約600mPa・s
B−2 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
平均重合度:約70(重量平均分子量=約5,000)
粘度:約100mPa・s
B−3 両末端トリメチルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
平均重合度:約180(重量平均分子量=約13,000)
粘度:約700mPa・s
一分子当たりのアルケニル基数:2.7個
(C)生ゴム状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
C−1 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
平均重合度:約8,000(重量平均分子量=約600,000)
一分子当たりのアルケニル基数:10個
C−2 両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
平均重合度:約8,000(重量平均分子量=約600,000)
(D)シリコーン樹脂
D−1 (CH33SiO1/2単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2単位、SiO4/2単位の共重合体
mol比:(CH33SiO1/2/(CH2=CH)(CH32SiO1/2/SiO4/2=40/10/50
一分子当たりのアルケニル基数:4.2個(重量平均分子量=3,000)
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
E−1 両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体
粘度:12mPa・s
一分子当たりのSiH基数:8個(SiH基含有量0.006mol/g)
E−2 両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体
粘度:45mPa・s
一分子当たりのSiH基数:45個(SiH基含有量0.011mol/g)
(F)ヒドロシリル化反応触媒
F−1 Pt−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のB−1溶液
Pt濃度:1wt%
(G)充填剤
G−1 表面処理乾式シリカ アエロジルR8200(日本アエロジル製)
比表面積160±25m2/g、平均1次粒子径12nm
G−2 結晶性シリカ クリスタライト5X(龍森製)
平均1次粒子径1.5μm
(H)ヒドロシリル化反応遅延剤
H−1 1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン
Figure 2016151009
Figure 2016151009
※ (A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の数/(E)成分のケイ素原子に結合した水素原子の数
本発明の範囲を満たす実施例1〜7は、硬化前において歯科印象施術に適した粘度を有し、硬化後における引裂き強度及び切断時伸びに優れ、かつ高透明な歯科印象材を与える。
(G)成分の配合量が本発明の範囲を満たさない比較例1では透明性が低くなるほか、組成物の粘度が高くなりすぎて歯科印象施術の作業性に劣り、(G)成分の平均粒径が本発明の範囲を満たさない比較例2では透明性が悪化する。
(B)成分の配合量が本発明の上限を超える比較例3及び(C)成分の配合量が本発明の下限を下回る比較例6では、組成物の粘度が低くなりすぎて歯科印象施術の作業性に劣る。
(B)成分の配合量が本発明の下限を下回る比較例5及び(C)成分の配合量が本発明の上限を超える比較例4では、組成物の粘度が高くなりすぎて歯科印象施術の作業性に劣り、硬化物の引裂き強度が低いものとなる。
本発明の歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物によれば、高透明性を達成した歯科印象材の提供が可能となり、これを使用した歯科印象施術に際し、歯科医師は歯列と歯科印象材の位置関係の微調整や巻き込んだ気泡の除去等について、直接目視確認しながら作業することができる。これは、歯科医師にとって非常に有用であるとともに、歯科印象施術時間の短縮につながるため、患者にも利益を供与するものである。

Claims (2)

  1. 歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物であって、
    (A)平均重合度が300以上3,000未満で、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン:100質量部、
    (B)平均重合度が300未満で、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン:10〜100質量部、
    (C)平均重合度が3,000以上で、一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する、室温で生ゴム状のジオルガノポリシロキサン:10〜200質量部、
    (D)R3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2SiO2/2単位(D単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、M単位及びQ単位を必須構成単位として含み、全構成単位のうちM単位とQ単位の合計量が80mol%以上であり、かつ(M単位のmol数)/(Q単位のmol数)の比が0.5〜1.5の範囲であるオルガノポリシロキサン(ここで、Rは炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の少なくとも二個はアルケニル基である):0〜20質量部、
    (E)一分子中に少なくとも二個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基一個当たり、ケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5〜5.0となる量、
    (F)ヒドロシリル化反応触媒:(A)〜(E)成分の合計重量に対して0.5〜1,000ppm、
    (G)平均粒子径が1μm以下の充填剤:0〜1質量部
    を含み、
    23℃での粘度が100Pa・s以上300Pa・s未満の範囲であることを特徴とする、歯科印象材用シリコーンエラストマー組成物。
  2. 上記(A)、(B)、(C)成分のジオルガノポリシロキサンが、下記平均組成式(I)で示されるものである請求項1記載のシリコーンエラストマー組成物。
    1 aSiO(4-a)/2 (I)
    (式中、R1は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、aは1.9〜2.4の範囲の数である。)
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