JP2016143542A - 錫めっき銅合金端子材 - Google Patents

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Abstract

【課題】汎用の錫めっき端子材を用いた端子に対しても嵌合時の挿入力を低減することができる錫めっき銅合金端子材の提供を目的とする
【解決手段】Cu合金からなる基材上表面に錫系表面層が形成され、錫系表面層と基材との間に銅錫合金層が形成されており、錫系表面層を溶解除去して、銅錫合金層を表面に現出させたときに測定される銅錫合金層の油溜り深さRvkが0.2μm以上であり、かつ前記錫系表面層の平均厚みが0.2μm以上0.6μm以下であり、錫系表面層に銅錫合金層の一部が露出し、最表面に0.005μm以上0.05μm以下の膜厚のコバルトまたはコバルト錫合金からなるコバルト系被覆層が形成され、コバルト系被覆層は、錫系表面層から露出している銅錫合金層の上に形成されており、表面の動摩擦係数が0.3以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車や民生機器等の電気配線の接続に使用されるコネクタ用端子、特に多ピンコネクタ用の端子として有用な錫めっき銅合金端子材に関するものである。
錫めっき銅合金端子材は、銅合金からなる基材の上に銅(Cu)めっき及び錫(Sn)めっきを施した後にリフロー処理することにより、表層の錫系表面層の下層に銅錫(CuSn)合金層が形成されたものであり、端子材として広く用いられている。
近年、例えば自動車においては急速に電装化が進行し、これに伴い電気機器の回路数が増加するため、使用するコネクタの小型・多ピン化が顕著になっている。コネクタが多ピン化すると、単ピンあたりの挿入力は小さくても、コネクタを挿着する際にコネクタ全体では大きな力が必要となり、生産性の低下が懸念されている。そこで、錫めっき銅合金材の摩擦係数を小さくして単ピンあたりの挿入力を低減することが試みられている。
例えば、錫めっき銅合金材の最表面に錫とは異なる結晶構造を持つ金属層を形成することで挿入力を低減させるもの(特許文献1)があるが、接触抵抗が増大する、ハンダ濡れ性が低下するといった問題があった。
特許文献2では、表面めっき層を、錫めっき層と銀(Ag)またはインジウム(In)を含むめっき層とをリフロー処理または熱拡散処理された層としている。
また、特許文献3では、錫めっき層の上に銀めっき層を形成して熱処理することにより、銀錫(Sn−Ag)合金層を形成することが示されている。
これらの特許文献2、3記載の技術は、いずれも全面に銀錫合金めっきもしくは銀めっき等を施すものであり、コストが高くなる。
ここで、コネクタの挿入力Fは、メス端子がオス端子を圧し付ける力(接圧)をP、動摩擦係数をμとすると、通常オス端子は上下2方向からメス端子に挟まれるので、F=2×μ×P となる。このFを小さくするには、Pを小さくすることが有効だが、コネクタ嵌合時のオス・メス端子の電気的接続信頼性を確保するためにはいたずらに接圧を小さくすることができず、3N程度は必要とされる。多ピンコネクタでは、50ピン/コネクタを超えるものもあるが、コネクタ全体の挿入力は100N以下、できれば80N以下、あるいは70N以下が望ましいため、動摩擦係数μとしては、0.3以下が必要とされる。
特開2007−100220号公報 特開2005−154819号公報 特開2010−61842号公報
従来、表層の摩擦抵抗を下げた錫めっき材が開発されているが、その多くは同種の錫めっき材同士での摩擦抵抗の低減に有効である。しかし実際には、オス、メス端子を嵌合する接続端子の場合、両者に同じ材種を用いることが少なく、特にオス端子は、黄銅を基材とした汎用の錫めっき付き端子材が広く用いられている。そのため、メス端子のみに低挿入力端子材を用いても、挿入力低減の効果が小さいといった問題があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、汎用の錫めっき端子材を用いた端子に対しても嵌合時の挿入力を低減することができる錫めっき銅合金端子材の提供を目的とする。
発明者らは、端子材表層の摩擦抵抗を下げる手段として、銅錫合金層と錫系表面層との界面の形状を制御し、錫系表面層の直下に急峻な凹凸形状の銅錫合金層を配置することで摩擦係数が小さくなることを見出した。但し、この低挿入力端子材を端子の一方にのみ用い、他方を汎用の錫めっき材とした場合、摩擦係数低減の効果が半減した。
いずれも最表面が錫めっきであるため、同種の錫どうしが接触することで錫の凝着が発生して摩擦係数低減の効果が半減する。特に、低挿入力端子材は、錫系表面層の直下に硬い銅錫合金層が配置されているため、汎用の錫めっき端子材の軟らかい錫めっき層の錫が削れて凝着すると考えられる。
発明者らは鋭意研究した結果、最表面に薄くコバルト(Co)めっきを施すことで、低挿入力端子材の摩擦係数低減効果を確保しつつ、さらに錫の凝着を抑制し、他方の端子に汎用材を用いても摩擦抵抗の低減が可能となることを見出した。
本発明の錫めっき銅合金端子材は、銅合金からなる基材上表面に錫系表面層が形成され、前記錫系表面層と前記基材との間に銅錫合金層が形成されており、前記錫系表面層を溶解除去して、前記銅錫合金層を表面に現出させたときに測定される前記銅錫合金層の油溜り深さRvkが0.2μm以上であり、かつ前記錫系表面層の平均厚みが0.2μm以上0.6μm以下であり、前記錫系表面層に前記銅錫合金層の一部が露出しており、該銅錫合金層の露出部分の表面に0.005μm以上0.05μm以下の膜厚のコバルトまたはコバルト錫合金からなるコバルト系被覆層が形成され、表面の動摩擦係数が0.3以下である。
銅錫合金層の油溜まり深さRvkを0.2μm以上、錫系表面層の平均厚みを0.2μm以上0.6μm以下とし、最表面に0.005μm以上0.05μm以下のコバルト系被覆層を設けることで、動摩擦係数を0.3以下とすることができる。
銅錫合金層の油溜り深さRvkは、0.2μm未満では、銅錫合金層の凹部内に存在する錫が少なくなるので、動摩擦係数が増大する。また、錫系表面層の平均厚みを0.2μm以上0.6μm以下としたのは、0.2μm未満でははんだ濡れ性の低下、電気的接続信頼性の低下を招き、0.6μmを超えると銅錫合金層の油溜り深さRvkを0.2μm以上とすることができず、錫の占める厚さが大きくなるので動摩擦係数が増大するためである。
最表面のコバルトまたはコバルト錫合金からなるコバルト系被覆層は、錫との凝着が生じにくい層であるため銅錫合金層以上の摩擦係数の低減効果が得られる。この場合、コバルト系被覆層の膜厚が0.005μm未満では効果が得られない。コバルト系被覆層の膜厚が0.05μmを超えると、錫系表面層と銅錫合金層との特殊な界面形状による摩擦係数低減効果とコバルト系被覆層による錫凝着抑制効果とを同時に得ることができず、コバルト系被覆層による凝着抑制効果のみであるため十分な摩擦係数低減効果が得られず、また、はんだ濡れ性の低下を招く。また、錫系表面層に露出している銅錫合金層の露出部分の上に形成されたコバルト系被覆層は、硬い銅錫合金層により保持されて剥離しにくくなり、摩擦係数低減効果を長期に維持することができる。
ここで、表面の動摩擦係数は、本発明の錫めっき銅合金端子材同士の間ではもちろんのこと、最表面に錫めっき層を有する汎用の錫めっき端子材に対しても、0.3以下となる。
最表面に錫めっき層を有する汎用の錫めっき端子材とは、基材に銅めっき、錫めっきを施してリフロー処理することにより得られるが、銅錫合金層の油溜り深さRvkが0.2μm未満で、平均厚み0.2μm以上3μm以下の錫めっき層を最表面に有する錫めっき端子材、あるいは、リフロー処理することなく、基材に厚み0.5μm以上3μm以下の錫めっき層を形成した錫めっき端子材をいう。
本発明の錫めっき銅合金端子材において、前記コバルト系被覆層は、前記銅錫合金層の前記露出部分の上及び該露出部分以外の前記錫系表面層の上にそれぞれ形成されているとよい。
銅錫合金層の露出部分の上ではなく、錫系表面層上に形成されたコバルト系被覆層は、端子材どうしの摩擦の際にコバルト系被覆層が剥離し、その結果、コバルト系被覆層の剥離片が固体潤滑剤のように機能し、摩擦係数低減の効果が得られると推測される。このため、銅錫合金層の露出部分以外の銅錫合金層の上にもコバルト系被覆層が形成されていると、特に製造直後から初期の段階でのコネクタ脱着力低減に有利である。
本発明の錫めっき銅合金端子材において、前記銅錫合金層の平均厚みが0.6μm以上1μm以下であるとよい。
銅錫合金層の平均厚みが0.6μm未満では油溜まり深さRvkを0.2μm以上とすることが難しく、1μm以上の厚みに形成するためには錫系表面層を必要以上に厚くする必要があり不経済である。
本発明の錫めっき銅合金端子材において、前記基材が、0.5質量%以上5質量%以下のニッケル(Ni)、0.1質量%以上1.5質量%以下のシリコン(Si)を含有し、更に必要に応じて亜鉛(Zn),錫,鉄(Fe),マグネシウム(Mg)の群から選ばれた1種以上を合計で5質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物から構成されるとよい。
銅錫合金層の油溜まり深さRvkを0.2μm以上とするためには、銅錫合金層中にニッケル及びシリコンが固溶することが必要である。この場合、ニッケル及びシリコンを含有している基材を用いれば、リフロー時に基材よりニッケル及びシリコンを銅錫合金層中に供給することができる。ただし、基材中のこれらニッケル及びシリコンの含有量は、ニッケルが0.5質量%未満、シリコンが0.1質量%未満では、それぞれニッケル又はシリコンの効果が現れず、ニッケルでは5質量%を越えると鋳造や熱間圧延時に割れを生じるおそれがあり、シリコンでは1.5質量%を超えると導電性が低下するため、ニッケルは0.5質量%以上5質量%以下、シリコンは0.1質量%以上1.5質量%以下が好ましい。
亜鉛,錫は、強度、耐熱性向上のために添加するとよく、また、鉄,マグネシウムは、応力緩和特性向上のために添加するとよいが、合計で5質量%を超えると導電率が低下するので好ましくない。
本発明の錫めっき銅合金端子材によれば、銅錫合金層と錫系表面層との界面の凹凸形状を制御した低挿入力端子材の最表面に0.005μm以上0.05μm以下の膜厚のコバルトまたはコバルト錫合金からなるコバルト系被覆層を形成したことにより、汎用の錫めっき材との組み合わせで用いる場合でも、嵌合時の挿入力を低減することが可能となる。
本発明の錫めっき銅合金端子材を模式的に示す断面図である。 本発明の端子材が適用される嵌合型接続端子の例を示す嵌合部の断面図である。 オス端子に用いられる端子材を模式的に示す断面図である。 動摩擦係数を測定するための装置を概念的に示す正面図である。 動摩擦係数測定後の実施例5のオス端子試験片表面の顕微鏡写真である。 動摩擦係数測定後の比較例1のオス端子試験片表面の顕微鏡写真である。 動摩擦係数測定前の実施例2のオス端子試験片表面の顕微鏡写真である。 図7のオス端子試験片表面のAES分析による元素分布を示す写真である。
本発明の一実施形態の錫めっき銅合金端子材を説明する。
この錫めっき銅合金端子材は、図1の模式図に示すように、銅合金からなる基材5上表面に錫系表面層6が形成され、錫系表面層6銅合金基材5との間に銅錫合金層7が形成されており、錫系表面層6を溶解除去して、銅錫合金層7を表面に現出させたときに測定される銅錫合金層7の油溜り深さRvkが0.2μm以上であり、かつ錫系表面層6の平均厚みが0.2μm以上0.6μm以下であり、最表面に、0.005μm以上0.05μm以下の膜厚のコバルトまたはコバルト錫合金からなるコバルト系被覆層8が形成され、表面の動摩擦係数が0.3以下である。
この場合、錫系表面層6に銅錫合金層7の一部が露出しており、錫系表面層6から露出している銅錫合金層7の露出部分、またはこの銅錫合金層7の露出部分とその周囲の錫系表面層6にかけた領域に、コバルト系被覆層8が形成される。
基材は、銅ニッケルシリコン(Cu−Ni−Si)系合金、銅ニッケルシリコン亜鉛(Cu−Ni−Si−Zn)系合金等、ニッケル及びシリコンを含有し、更に必要に応じて亜鉛,錫,鉄,マグネシウムの群から選ばれた1種以上を合計で5質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物から構成される銅合金である。ニッケル及びシリコンを必須成分としたのは、後述するリフロー処理により形成される銅錫合金層の油溜まり深さRvk0.2μm以上にするために、リフロー時に基材よりニッケル及びシリコンを供給し、銅錫合金層中にニッケル及びシリコンを固溶させるためである。基材中のニッケルの含有量としては0.5質量%以上5質量%以下が、シリコンの含有量としては0.1質量%以上1.5質量%以下が好ましい。ニッケルが0.5質量%未満ではニッケルの効果、シリコンが0.1質量%未満ではシリコンの効果がそれぞれ現れず、ニッケルが5質量%を越えると鋳造や熱間圧延時に割れを生じるおそれがあり、シリコンが1.5質量%を超えると導電性が低下するおそれがある。
また、亜鉛,錫は、強度、耐熱性を向上させ、鉄,マグネシウムは、応力緩和特性を向上させる。これら亜鉛,錫,鉄,マグネシウムのいずれか1種以上を添加する場合は、その合計の含有量が5質量%を超えると導電性が低下するので好ましくない。特に、亜鉛,錫,鉄,マグネシウムの全てを含むことが好ましい。
銅錫合金層は、後述するように基材の上に銅めっき層と錫めっき層とを形成してリフロー処理することにより形成されたものであり、その大部分は銅錫合金層(CuSn)であるが、基材との界面付近に、基材中のニッケル及びシリコンと銅の一部が置換した(Cu,Ni,Si)Sn合金が薄く形成される。また、この銅錫合金層と錫系表面層との界面は、凹凸状に形成され、その油溜り深さRvkが0.2μm以上とされる。
この油溜まり深さRvkは、JIS B0671−2で規定される表面粗さ曲線の突出谷部平均深さであり、平均的な凹凸よりも深い部分がどの程度あるかを示す指標とされ、この値が大きければ、非常に深い谷部分の存在により、急峻な凹凸形状となっていることを示す。
この銅錫合金層の平均厚みは0.6μm以上1μm以下であるとよく、0.6μm未満では銅錫合金層の油溜まり深さRvkを0.2μm以上とすることが難しく、1μm以下と規定したのは、1μm以上の厚みに形成するためには錫系表面層を必要以上に厚くする必要があり不経済である。
なお、この銅錫合金層の一部(CuSn)が錫系表面層に露出している。その場合、各露出部の円相当直径が0.6μm以上2.0μm以下で、露出面積率は10%以上40%以下とされ、その限られた範囲であれば、錫系表面層の持つ優れた電気接続特性を損なうことはない。
錫系表面層は平均厚みが0.2μm以上0.6μm以下に形成される。その厚みが0.2μm未満でははんだ濡れ性の低下、電気的接続信頼性の低下を招き、0.6μmを超えると表層を錫と銅錫の複合構造とすることができず、錫だけで占められるので動摩擦係数が増大するためである。より好ましい錫系表面層の平均厚みは0.25μm以上0.5μm以下である。
コバルト系被覆層は、コバルト又はコバルト錫合金からなる被覆層であり、後述するように、リフロー処理した後の錫系表面層から露出する銅錫合金層の露出部分、またはその露出部分から周囲の錫系表面層の上にかけて形成され、膜厚が0.005μm以上0.05μm以下とされる。ただし、最表面の全面にコバルト系被覆層が形成されるのではなく、錫系表面層から露出した銅錫合金層の露出部分の上に主として形成される。したがって、最表面は、錫系表面層とコバルト系被覆層とが混在した表面となる。この場合、錫系表面層に点在している銅錫合金層の露出部分は、そのほとんどがコバルト系被覆層により被覆されるが、その露出部分のすべてがコバルト系被覆層によって完全に被覆されることまで要求されるものではなく、コバルト系被覆層に被覆されずに露出した状態でわずかに残っている部分があってもよい。
また、このコバルト系被覆層が銅錫合金層の露出部分上に形成されずに錫系表面層にのみ形成されると、端子材どうしの摩擦の際にコバルト系被覆層が破れ、同種の錫どうしが接触することで錫の凝着が発生し、摩擦係数低減の効果が得られない。
この場合、コバルト系被覆層の膜厚が0.005μm未満では効果が得られない。0.05μmを超える膜厚では、錫系表面層と銅錫合金層との特殊な界面形状による摩擦係数低減効果とコバルト系被覆層による錫凝着抑制効果とを同時に得ることができず、コバルト系被覆層による凝着抑制効果のみであるため十分な摩擦係数低減効果が得られず、また、はんだ濡れ性の低下を招く。
次に、この端子材の製造方法について説明する。
基材として、銅ニッケルシリコン系合金、銅ニッケルシリコン亜鉛系合金等、ニッケル及びシリコンを含有し、更に必要に応じて亜鉛,錫,鉄,マグネシウムの群から選ばれた1種以上を合計で5質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物から構成される銅合金からなる板材を用意する。この板材に脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にした後、銅めっき、錫めっきをこの順序で施す。
銅めっきは一般的な銅めっき浴を用いればよく、例えば硫酸銅(CuSO)及び硫酸(HSO)を主成分とした硫酸銅浴等を用いることができる。めっき浴の温度は20℃以上50℃以下、電流密度は1A/dm以上20A/dm以下とされる。この銅めっきにより形成される銅めっき層の膜厚は0.03μm以上0.15μm以下とされる。0.03μm未満では合金基材の影響が大きく、表層にまで銅錫合金層が成長し、光沢度、はんだ濡れ性の低下を招き、0.15μmを超えると、リフロー時に基材よりニッケルが十分に供給されず、所望の銅錫合金層の形状を得られないためである。
錫めっき層形成のためのめっき浴としては、一般的な錫めっき浴を用いればよく、例えば硫酸(HSO)と硫酸第一錫(SnSO)を主成分とした硫酸浴を用いることができる。めっき浴の温度は15℃以上35℃以下、電流密度は1A/dm以上10A/dm以下とされる。この錫めっき層の膜厚は0.6μm以上1.3μm以下とされる。錫めっき層の厚みが0.6μm未満であると、リフロー後の錫系表面層が薄くなって電気接続特性が損なわれ、1.3μmを超えると、表面への銅錫合金層の露出が少なくなって動摩擦係数を0.3以下にすることが難しい。
リフロー処理条件としては、還元雰囲気中で基材の表面温度が240℃以上360℃以下となる条件で3秒以上15秒以下の時間加熱し、急冷される。240℃より低い温度、3秒未満の加熱では錫の溶解が進まず、360℃を超える温度、15秒を超える加熱では銅錫合金層中の結晶が大きく成長してしまい所望の形状を得られず、また銅錫合金層が表層にまで達し錫系表面層が残留しなくなるためである。望ましくは260℃以上300℃以下で5秒以上10秒以下の加熱後急冷である。
リフロー処理後の素材に脱脂、酸洗等の処理を行って、表面を洗浄した後、コバルトめっきを施す。コバルトめっきは一般的なコバルトめっき浴を用いればよく、例えば硫酸コバルト(CoSO)、ホウ酸(HBO)、および硫酸ナトリウム(NaSO)を主成分とした硫酸コバルト浴等を用いることができる。コバルトめっき浴の温度は15℃以上35℃以下、電流密度は0.1A/dm以上10A/dm以下とされる。このコバルトめっき層の膜厚は0.005μm以上0.05μm以下とされる。
そして、この端子材は、例えば図2に示すような形状のメス端子2に成形される。
このメス端子2は、図2に示す例では、全体としては角筒状に形成され、その一方端の開口部15からオス端子1を嵌合することにより、このオス端子1を両側から挟持した状態に保持して接続される。メス端子2の内部には、嵌合されるオス端子1の一方の面に接触される弾性変形可能な接触片16が設けられるとともに、この接触片16に対向している側壁17に、オス端子1の他方の面に接触する半球状の凸部18がエンボス加工により内方に突出した状態に形成されている。接触片16にも、凸部18に対向するように山折り状の折り曲げ部19が設けられている。これら凸部18及び折り曲げ部19は、オス端子1を嵌合したときにオス端子1に向けて凸となるように突出しており、該オス端子1に対する摺動部11となる。
なお、オス端子1に用いられる端子材は、図3に模式的に示すように、銅合金からなる基材21上表面に錫系表面層22が形成され、錫系表面層22と銅合金基材21との間に銅錫合金層23が形成された、一般的なリフロー処理材から構成される。このオス端子1において、錫系表面層22を溶解除去して、銅錫合金層23を表面に現出させたときに測定される銅錫合金層23の油溜り深さRvkは0.2μm未満、通常は0.15μm程度であり、かつ錫系表面層22の平均厚みは0.2μm以上3μm以下である。
オス端子1は平板状に形成され、銅合金板に銅めっき及び錫めっきをこの順に施した後、リフロー処理することにより形成される。この場合、リフロー処理の加熱条件としては、一般には、240℃以上400℃以下の温度で1秒以上20秒以下の時間保持した後、急冷される。
なお、リフロー処理することなく、銅合金からなる基材に錫めっきにより平均厚み0.5μm以上3μm以下の錫系表面層を形成した端子材をオス端子材としてもよい。
このようなメス端子材及びオス端子材を用いて形成したコネクタは、メス端子2の開口部15から接触片16と側壁17との間にオス端子1を挿入すると、接触片16は二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に弾性変形し、その折り曲げ部19と凸部18との間にオス端子1を挟持した状態に保持する。
前述したように、メス端子2は、銅錫合金層と錫系表面層との界面を油溜り深さRvkが0.2μm以上の急峻な凹凸形状に形成され、かつ錫系表面層の平均厚みが0.1μm以上0.6μm以下、最表面に0.005μm以上0.05μm以下の膜厚のコバルト系被覆層が形成されているので、メス端子2の凸部18及び折り曲げ部19の表面にSnが凝着することが抑制され、銅錫合金層と錫系表面層との界面が急峻な凹凸形状に形成されていることによる動摩擦係数の低減効果が有効に発揮され、オス端子1が通常のリフロー処理による錫系表面層のものであっても、動摩擦係数を0.3以下にすることができる。
コバルト系被覆層の膜厚は0.005μm以上0.05μm以下とされ、0.05μmを超える膜厚では、錫系表面層と銅錫合金層との特殊な界面形状による摩擦係数低減効果とコバルト系被覆層による錫凝着抑制効果とを同時に得ることができず、コバルト系被覆層による凝着抑制効果のみとなるため十分な摩擦係数低減効果が得られず、また、はんだ濡れ性の低下を招く。0.005μm未満では効果が得られない。
このコバルト系被覆層は、錫系表面層から露出した銅錫合金層(CuSn合金からなる層)の露出部分の上に優先的に形成される。したがって、最表面は、錫系表面層とコバルト系被覆層とが混在した表面となる。また、コバルト系被覆層のコバルトは錫系表面層の錫と合金化し易く、銅錫合金層の露出部分の上でコバルト錫合金を形成しており、端子材どうしの摩擦によっても剥離することなく、摩擦低減効果を長期的に維持することができる。
また、錫系表面層上に形成されたコバルト系被覆層は、端子材どうしの摩擦の際に剥離し、その結果、コバルト系被覆層の剥離片が固体潤滑剤のように機能し、摩擦係数低減の効果が得られると推測される。ただし、端子材どうしの摩擦が繰り返されるにしたがって、コバルト系被覆層の剥離片による摩擦低減効果は減少すると想定される。したがって、銅錫合金層の露出部分の上のコバルト系被覆層により、摩擦係数低減効果を長期に維持しつつ、特に、製造直後のコネクタ組立時の挿入力、あるいは、その後の初期のメンテナンス時のコネクタ脱着力を小さくすることができる。このコバルト系被覆層が銅錫合金層の露出部分上に形成されずに錫系表面層にのみ形成されると、コネクタとして使用初期の段階で、端子材どうしの摩擦の際にコバルト系被覆層が破れ、同種の錫どうしが接触することで錫の凝着が発生し易く、摩擦係数低減の効果が持続しにくい。
メス端子試験片として、板厚0.25mmの銅合金(ニッケル;0.5質量%以上5.0質量%以下−亜鉛;1.0質量%−錫;0質量%以上0.5質量%以下−シリコン;0.1質量%以上1.5質量%以下−鉄;0質量%以上0.03質量%以下−マグネシウム;0.005質量%)を基材とし、銅めっき、錫めっきを順に施した後に、リフロー処理として、還元雰囲気中で、基材表面温度が240℃以上360℃以下の温度になるまで昇温し、3〜15秒保持した後、水冷した。リフロー処理後、コバルトめっきを施した。比較例として、基材のニッケル及びシリコン濃度や、銅めっき厚、錫めっき厚を変量したもの、コバルトめっきを施さなかったものも作製した。
この場合、銅めっき及び錫めっき、コバルトめっきのめっき条件は、表1に示す通りとした。表1中、Dkはカソードの電流密度、ASDはA/dmの略である。
各めっき層の厚さ、リフロー条件は、表2に示す通りとした。
これらの試料について、リフロー後の錫系表面層の厚み、銅錫合金層の厚み、銅錫合金層の油溜まり深さRvk、コバルト系被覆層の厚み、銅錫合金層の露出部分上のコバルト系被覆層の有無、動摩擦係数、はんだ濡れ性、接触抵抗を測定した。
リフロー後の錫系表面層及び銅錫合金層の厚み、コバルト系被覆層の厚みは、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製蛍光X線膜厚計(SFT9400)にて測定した。
錫系表面層及び銅錫合金層の厚みは、コバルト系被覆層を形成する前の試料について、最初にリフロー後の試料の全錫系表面層の厚みを測定した後、例えばレイボルド株式会社製のL80等の、純錫をエッチングし銅錫合金を腐食しない成分からなるめっき被膜剥離用のエッチング液に数分間浸漬することにより錫系表面層を除去し、その下層の銅錫合金層を露出させ純錫換算における銅錫合金層の厚みを測定した後、(全錫系表面層の厚み−純錫換算における銅錫合金層の厚み)を錫系表面層の厚みと定義した。
銅錫合金層の油溜まり深さRvkは、錫めっき被膜剥離用のエッチング液に浸漬して錫系表面層を除去し、その下層の銅錫合金層を露出させた後、株式会社キーエンス製レーザ顕微鏡(VK−X200)を用い、対物レンズ150倍(測定視野94μm×70μm)の条件で、長手方向で5点、短手方向で5点、計10点測定した値の平均値より求めた。
銅錫合金層上のコバルト系被覆層の有無は、ニッケルめっき後の試料についてAES(Auger Electron Spectroscopy)で表面を徐々にエッチングしていきコバルト系被覆層を除去してコバルト系被覆層の下方の層を露出させる事により確認した。他にニッケルめっき後の試料断面についてTEM(Transmission Electron Microscopy)分析を行うことにより確認した。
一方、オス端子試験片として、板厚0.25mmの銅合金(C2600、銅:70質量%−亜鉛:30質量%)を基材とし、銅めっき、錫めっきを順に施し、リフロー処理した。このオス端子材のリフロー条件としては、基材温度270℃、保持時間6秒とし、リフロー後の錫系表面層の厚みは0.6μm、銅錫合金層の厚みは0.5μmとした。
このオス端子試験片と、表2のメス端子試験片とを用いて動摩擦係数を測定した。
動摩擦係数については、株式会社トリニティーラボ製の摩擦測定機(μV1000)を用い、両試験片間の摩擦力を測定して動摩擦係数を求めた。図4により説明すると、水平な台31上にオス端子試験片32を固定し、その上にメス端子試験片33の半球凸面を置いてめっき面同士を接触させ、メス端子試験片33に錘34によって500gfの荷重Pをかけてオス端子試験片32を押さえた状態とする。この荷重Pをかけた状態で、オス端子試験片32を摺動速度80mm/分で矢印により示した水平方向に10mm引っ張ったときの摩擦力Fをロードセル35によって測定した。その摩擦力Fの平均値Favと荷重Pより動摩擦係数(=Fav/P)を求めた。
また、はんだ濡れ性として、試験片を10mm幅に切り出し、活性フラックスを用いてメニスコグラフ法にてゼロクロスタイムを測定した。(はんだ浴温260℃のSn−3%Ag−0.5%Cuはんだに浸漬させ、浸漬速度2mm/sec、浸漬深さ1mm、浸漬時間10秒の条件にて測定した。)はんだゼロクロスタイムが3秒以下を○と評価し、3秒を超えた場合を×と評価した。
電気的信頼性を評価するため、大気中で150℃×500時間加熱し、接触抵抗を測定した。測定方法はJIS−C−5402に準拠し、4端子接触抵抗試験機(山崎精機研究所製:CRS−1)により、摺動式(1mm)で0から50gまでの荷重変化−接触抵抗を測定し、荷重を50gとしたときの接触抵抗値で評価した。
この表3から明らかなように、実施例はいずれも動摩擦係数が0.3以下と小さく、良好なはんだ濡れ性と接触抵抗値を示した。
これに対して、各比較例は以下のような不具合が認められた。比較例1、2は、いずれもコバルト系被覆層がないので、動摩擦係数が大きい。比較例3は、コバルト系被覆層の膜厚が大きいため、はんだ濡れ性が悪くなる。比較例4、5は油溜まり深さRvkの低い汎用の錫めっき材にコバルトめっきを施すだけでは低減効果はあるものの大きな効果は得られない。比較例6、7は銅錫合金層が大きく成長しすぎてしまい、表面に残留する錫系表面層が少なくなり過ぎるため、はんだ濡れ性が悪くなる。比較例8、9は銅錫合金層の成長を促進する添加元素量が少ないため、十分な油溜まり深さRvkが得られず、大きな効果が得られない。
図5は実施例5の動摩擦係数測定後のオス端子試験片の摺動面の顕微鏡写真であり、図6は比較例1の顕微鏡写真である。これらの写真を比較してわかるように、実施例のものは、錫の凝着が抑制され摺動面が滑らかなのに対し、実施例は錫の凝着のため摺動面が粗い。
図7は実施例2の動摩擦係数測定前のオス端子試験片の表面のSEM(Scanning Electron Microscopy)顕微鏡写真であり、図8は、そのAES(Auger Electron Spectroscopy)分析による表面の元素分布を示す写真である。図7及び図8で島状に見えるのが、錫系表面層に露出しているCuSn合金(銅錫合金層)の部分と、コバルト錫合金(コバルト系被覆層)であり、その周囲の部分が錫面である。
1 オス端子
2 メス端子
5 基材
6 錫系表面層
7 銅錫合金層
8 コバルト系被覆層
11 摺動部
15 開口部
16 接触片
17 側壁
18 凸部
19 折り曲げ部
21 基材
22 錫系表面層
23 銅錫合金層
31 台
32 オス端子試験片
33 メス端子試験片
34 錘
35 ロードセル

Claims (4)

  1. 銅合金からなる基材上表面に錫系表面層が形成され、前記錫系表面層と前記基材との間に銅錫合金層が形成されており、前記錫系表面層を溶解除去して、前記銅錫合金層を表面に現出させたときに測定される前記銅錫合金層の油溜り深さRvkが0.2μm以上であり、かつ前記錫系表面層の平均厚みが0.2μm以上0.6μm以下であり、前記錫系表面層に前記銅錫合金層の一部が露出しており、該銅錫合金層の露出部分の表面に0.005μm以上0.05μm以下の膜厚のコバルト系被覆層が形成され、表面の動摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする錫めっき銅合金端子材。
  2. 前記コバルト系被覆層は、前記銅錫合金層の前記露出部分の上及び該露出部分以外の前記錫系表面層の上にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の錫めっき銅合金端子材。
  3. 前記銅錫合金層の平均厚みが0.6μm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の錫めっき銅合金端子材。
  4. 前記基材が、0.5質量%以上5質量%以下のニッケル、0.1質量%以上1.5質量%以下のシリコンを含有し、更に必要に応じて亜鉛,錫,鉄,マグネシウムの群から選ばれた1種以上を合計で5質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物から構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の錫めっき銅合金端子材。

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