以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付し、また、説明を省略することがある。また、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と対応(類似)する構成について、既に説明した実施形態の構成に付した符号と異なる符号を付した場合において、特に断りがない事項については、既に説明した実施形態の構成と同様である。
<第1実施形態>
図1(a)〜図1(c)は、本発明の第1実施形態に係るキャスター付き機器1の要部の構成を示す模式図である。図1(a)は、地震等(以下、単に地震)による変位を抑制しない状態を示し、図1(b)は、地震による変位を抑制可能な状態を示し、図1(c)は、地震による変位が現に抑制されている状態を示している。
これらの図において、紙面上下方向は鉛直方向を示し、紙面左右方向は水平方向を示している。なお、キャスター付き機器1全体、又は、その一部(例えばキャスター)は、倉庫に保管されているとき、又は、流通されているとき等においては、適宜な向きで載置される。ただし、以下では、説明を簡単にするために、図示の状態(キャスターが接地されている状態)を基準として鉛直及び水平の用語を用いることにより、キャスター付き機器1等の構成を説明するものとする。
キャスター付き機器1は、種々の種類の機器であってよく、所定の動作を行う機械乃至は装置であってもよいし、そのような動作を行わない器具であってもよい。また、キャスター付き機器1の大きさ乃至は重量も特に限定されない。例えば、キャスター付き機器1は、医療用機器(例えば人工透析装置)、ベッド、コピー機、音響機器、テーブル、椅子、棚又は台車である。
キャスター付き機器1は、基本的には、概略水平な載置面101(図1(a))に載置される。載置面101は、屋内のものであってもよいし、屋外のものであってもよい。また、載置面101を構成する材料は、硬質のものであってもよいし、軟質のものであってもよい。例えば、載置面101は、一般家屋、ビル若しくは倉庫の床面、野外の床面(例えばステージの床面)、又は、地面である。床面は、例えば、木材若しくは石材からなり、又は、その上に繊維、樹脂若しくはゴムからなるシートが敷かれてなる。地面は、例えば、アスファルト又は土からなる。
キャスター付き機器1は、機器本体3と、機器本体3を支持するキャスター5とを有している。
機器本体3の構成は、上記のキャスター付き機器1の例示から理解されるように、種々の構成とされてよく、キャスター5との連結部分の構成も適宜なものとされてよい。図1では、一例として、水平方向に延び、キャスター5が連結されるフレーム部材7と、フレーム部材7に支持された被支持部9(図1(a))とを有する機器本体3を示している。
キャスター5は、いわゆる自在式のキャスターによって構成されている。すなわち、キャスター5は、鉛直な旋回軸A2回りに機器本体3に対して旋回することによって、水平方向の任意の方向へ走行可能に構成されている。
キャスター5は、例えば、車輪11と、車輪11を回転可能に保持するとともに機器本体3(フレーム部材7)に旋回可能に連結される旋回部13と、キャスター5の旋回を規制するスイッチ15とを有している。なお、以下では、車輪11及び旋回部13を含む、機器本体3に対して旋回軸A2回りに回転可能な部分をキャスター本体17ということがある。
キャスター5の構成には、スイッチ15に係る部分を除いて、公知の種々の構成が適用されてよい。従って、以下で述べる車輪11及び旋回部13の基本構成は、一例に過ぎない。
キャスター5は、例えば、2つの車輪11が同軸に配置され(別の実施形態であるが図3(c)参照)、その間に旋回部13の一部が位置し、当該一部が2つの車輪11を軸支する構成とされている。
車輪11は、例えば、概略円盤状乃至は概略円柱状である。車輪11の材料及び形状は、公知の適宜なものとされてよい。例えば、車輪11の載置面101に接する外周面は、金属、樹脂又はゴムのいずれによって構成されていてもよい。別の観点では、車輪11と載置面101との静止摩擦係数及び/又は運動摩擦係数は適宜に設定されてよい。
旋回部13は、車輪11を水平な回転軸A1回りに回転可能に軸支している。なお、ここでいう回転軸A1は、車軸等の部材ではなく、回転中心を示す仮想線(例えば車軸の軸心)をいうものとする。軸支構造は公知の種々の構造と同様とされてよい。また、旋回部13は、例えば、車輪11の上方側を覆うカバー13aを有している。
旋回部13は、例えば、旋回軸A2を軸心とする不図示の軸状部材(他の実施形態であるが図4の軸状部材425参照)によって機器本体3に連結されている。この軸状部材は、フレーム部材7及び旋回部13の少なくとも一方に対して旋回軸A2回りに旋回可能とされており、これにより、旋回部13は機器本体3に対して旋回可能とされている。軸支構造は公知の種々の構造と同様とされてよい。
なお、上記の軸状部材は、キャスター付き機器1において、機器本体3の一部として捉えられてもよいし、キャスター5の一部として捉えられてもよい。また、キャスター5の流通の際には、軸状部材は、キャスター5の一部として流通されてよい。軸状部材がキャスター5の一部として流通される場合、軸状部材は、旋回部13に対して旋回可能に連結されていることが好ましい。
旋回軸A2と回転軸A1とは、回転軸A1に直交する水平方向に離れている(偏心している)。すなわち、旋回軸A2と車輪11の接地位置(載置面101との接触位置)とは水平方向にずれている。従って、機器本体3に水平方向の力が加えられると、車輪11と載置面101との摩擦力によって、旋回軸A2回りに旋回部13を旋回させるモーメントが生じる。これにより、キャスター本体17は、水平方向の力の向きとは反対方向へ向かって旋回し、キャスター5は力の方向へ走行可能となる。このようにしてキャスター付き機器1は任意の方向へ移動可能となっている。
スイッチ15は、例えば、旋回部13に設けられており(旋回部13の一部と捉えられてもよい)、旋回部13の旋回を規制しないオフ状態(図3(a))と、旋回部13の旋回を規制するオン状態(図3(b)及び図3(c))との間で切り換えられる。
具体的には、スイッチ15は、例えば、オフ状態に対応するオフ位置と、オン状態に対応するオン位置との2位置の間で移動(回転移動を含む)が可能な係合部材19を有している。係合部材19は、例えば、オフ位置においては、機器本体3の下面よりも下方に位置し、オン位置においては、少なくとも一部が、平面視において機器本体3の外側の範囲(機器本体3に重ならない範囲)に位置していることを前提として、機器本体3の下面よりも上方に位置する。また、係合部材19の、オン位置にて機器本体3の下面よりも上方に位置する部分は、旋回軸A2回りの大きさ(角度範囲)が、機器本体3の外側の範囲よりも小さい。例えば、フレーム部材7が平面視において矩形の角部(90°)を構成していれば、機器本体3の外側範囲の旋回軸A2回りの大きさは約270°であり、これよりも係合部材19の旋回軸A2回りの大きさ(例えば10°〜30°)は小さい。
別の観点では、係合部材19は、キャスター本体17に対する機器本体3の相対的な移動可能領域内であって機器本体3の非配置範囲に少なくとも一部が位置するオン位置と、前記の移動可能領域から退避したオフ位置との間で移動可能である。また、係合部材19の、オン位置にて機器本体3と係合する部分は、旋回軸A2回りの大きさが、機器本体3の非配置範囲(より厳密には機器本体3の係合部材19と係合する位置を通る円周内における非配置範囲)よりも小さい。
従って、係合部材19は、オフ位置にあるときは、キャスター本体17が旋回しても機器本体3に当接しない。すなわち、キャスター本体17は、エンドレスな旋回(360°を超える継続的な旋回、複数回転の旋回)が可能である。一方、図1(c)に示すように、係合部材19は、オン位置にあるときは、キャスター本体17が旋回すると、機器本体3(被係合部7a、図1(c))に旋回方向において係合する。これにより、キャスター本体17は、その係合位置(規制位置)を超える旋回が規制される。
ただし、キャスター本体17は、係合部材19が被係合部7aに係合するまではその係合する方向への旋回が許容されている。また、キャスター本体17は、係合部材19が被係合部7aから離れる方向(係合方向とは反対方向)への旋回も許容されている。キャスター本体17が、図1(c)に示す規制位置から係合方向とは反対方向へ旋回した場合、係合部材19が図1(c)とは別の被係合部7a(機器本体3の他の部位)に係合し、キャスター本体17の旋回は規制される。
このキャスター本体17が旋回を許容されている範囲は、係合部材19の、オン位置にて機器本体3と係合する部分の旋回軸A2回りの大きさと、機器本体3の非配置範囲の旋回軸A2回りの大きさとの差によって規定される。例えば、上記のように、係合部材19の大きさが10°〜30°であり、機器本体3の非配置範囲の大きさが270°程度であれば、旋回可能な大きさは、240°〜260°である。なお、当該旋回可能な大きさは、この例に限定されず、例えば、350°、180°、90°程度など、適宜に設定されてよい。
スイッチ15の構造は、適宜なものとされてよい。例えば、種々の技術分野で利用されているレバー型の操作部(例えばキャスターのロック用の操作部)の構造が利用されてよい。具体的には、例えば、係合部材19は、一端がカバー13aに軸支されることにより他端が揺動可能となっており、この揺動によってオン位置とオフ位置との間を移動可能とされている。また、例えば、係合部材19は、オフ位置からオン位置に亘って、又は、オフ位置及びオン位置において、キャスター本体17との摩擦抵抗及び/又は係合によって位置保持可能とされている。オフ位置及び/又はオン位置へ係合部材19を付勢するばね部材が設けられてもよい。スイッチ15は、オン位置にしたいときにオン位置側へ、オフ位置にしたいときにオフ位置側へそれぞれ操作のための力が加えられるものであってもよいし、いずれか一方側へのみ操作のための力が加えられ、ばね部材等によって順次オン位置とオフ位置とが切り換えられるものであってもよい。
なお、スイッチ15及び被係合部7aは、キャスター本体17の旋回を規制する規制機構21(符号は図1(c))を構成している。
以上のとおり、本実施形態のキャスター付き機器1は、機器本体3と、車輪11の水平な回転軸A1から偏心した鉛直な旋回軸A2回りに機器本体3に対して旋回可能であり、機器本体3を支持するキャスター本体17と、キャスター本体17の旋回を規制可能な規制機構21と、を有している。規制機構21は、キャスター本体17のエンドレスな旋回を許容するオフ状態(図1(a))と、キャスター本体17の所定の規制位置(図1(c))を超える旋回を規制するとともに規制位置の手前における旋回を許容するオン状態(図1(b)及び図1(c))と、の間で切り替えられるスイッチ15を有している。
従って、スイッチ15がオン状態とされているときに地震が生じ、キャスター付き機器1を載置面101に対して移動させようとする力が機器本体3に加えられた場合、キャスター付き機器1の自由な走行は規制される。その具体的な動作は、単純化して理論的に考えると、以下のとおりである。
機器本体3に水平方向の力が加えられ、その力の方向とは反対方向へ向かってキャスター本体17が旋回している途中において係合部材19が機器本体3に係合すると、キャスター本体17は、その向き(前進する側)を力の方向とすることができない。その結果、キャスター付き機器1は、力の方向へ走行することができない。
機器本体3に加えられた力の方向に対して、旋回が規制されたキャスター本体17の向きが傾斜している場合においても、機器本体3に加えられた力のうちキャスター本体17の向きへの成分によって、キャスター本体17の向いている方向へキャスター付き機器1は走行する。ただし、その速度は、キャスター本体17が力の方向に向いているときに比較すれば低く、ひいては、変位が抑制される。
キャスター本体17の旋回が規制されている状態において、機器本体3に加えられた力のうちキャスター本体17の向きに直交する方向の成分が車輪11と載置面101との最大摩擦力以内であれば、当該直交する方向においてキャスター付き機器1は載置面101に対して停止する。また、上記の成分が最大摩擦力を超えたときは、車輪11が載置面101に対して摺動する。すなわち、キャスター付き機器1は運動摩擦力に抗して移動する。この際、運動エネルギーの一部は摩擦によって消費される。
機器本体3に水平方向の力が加えられても、これに伴うキャスター本体17の旋回の過程において係合部材19の係合が生じない場合、キャスター本体17は、その向きを力の方向とすることができる。従って、キャスター付き機器1は、力の方向へ走行することができる。
以上のような走行の規制(及び許容)により、例えば、自由な走行が許容されている場合に比較して、キャスター付き機器1の変位が抑制される。当該効果は、特に、キャスター付き機器1の変位が大きくなりやすい長周期地震動が生じたときに有効である。また、例えば、車輪11の回転又は旋回部13の旋回が完全にロックされている場合に比較して、キャスター付き機器1の移動が許容され、ひいては、キャスター付き機器1に加えられる加速度が低減される。その結果、例えば、キャスター付き機器1の転倒のおそれが低減される。当該効果は、特に、大きな加速度が加えられやすい短周期地震動が生じたときに有効である。
なお、実際の地震においては、載置面101は、水平方向の一方向のみにおいて振動するのではなく、水平方向の多方向に振動する。従って、例えば、旋回が許容されている角度範囲が比較的大きい場合(例えば360°よりも少し小さい程度)であっても、旋回が全く規制されないおそれは低い。また、地震の多方向の振動によって、自由な走行が許容されたキャスター付き機器は、繰り返し円を描くように移動することがある。すなわち、キャスター本体は、右回り及び左回りの一方へ複数回(360°を超えて)旋回することがある。このような旋回に対しては、旋回が許容されている角度範囲が広くても、旋回を規制可能である。
上記のような旋回の規制は、常に生じているのではなく、スイッチ15の切り替えによって解除可能である。従って、例えば、キャスター本体17に固定された部材が機器本体3に係合可能とされている場合(なお、自在式のキャスターの本来的な用途に照らしてそのような従来技術はないと考えられる)に比較して、キャスター付き機器1の利便性が高い。例えば、スイッチ15のオフ状態では、キャスター付き機器1を任意の場所へ移動させることが容易である。
また、本実施形態では、スイッチ15は係合部材19を有する。係合部材19は、キャスター本体17に設けられている。また、係合部材19は、機器本体3のキャスター本体17に対する相対的な旋回軸A2回りの移動可能領域内であって機器本体3の非配置範囲に少なくとも一部が進入し、これにより機器本体3に対して規制位置(図1(c))にて係合可能なオン位置(図1(b)及び図1(c))と、前記の移動可能領域から退避したオフ位置(図1(a))との間で移動可能である。さらに、係合部材19は、オン位置にあるときに機器本体3と係合する部分の旋回軸A2回りの大きさが機器本体3の非配置範囲よりも小さい。
従って、例えば、少なくとも2位置を移動する係合部材19を設ける簡便な構造で、上述した一部の角度範囲における旋回を規制し、他の角度範囲における旋回を許容する規制機構21が実現される。また、例えば、係合部材19が機器本体3に係合可能であれば、機器本体3側に特別な機構等は不要である。
<第2実施形態>
図2(a)〜図2(c)は、第2実施形態に係るキャスター付き機器201の要部の構成を示す図1(a)〜図1(c)に相当する模式的な側面図である。
第1実施形態では、キャスター5に設けられた係合部材19が機器本体3に対して係合したのに対して、本実施形態では、機器本体203に設けられた係合部材219がキャスター205に係合する。別の観点では、第1実施形態では、スイッチ15は、キャスター5に組み込まれた組み込み型デバイスであったのに対して、本実施形態では、スイッチ215は、キャスター205ではなく、機器本体203に取り付けられる外付け型デバイスとされている。具体的には、以下のとおりである。
機器本体203は、例えば、概略、第1実施形態の機器本体3にスイッチ215を設けた構成である。また、キャスター205は、例えば、概略、第1実施形態のキャスター5からスイッチ15を無くした構成である。
スイッチ215は、例えば、オフ位置とオン位置との2位置の間で移動可能(回転移動を含む)な係合部材219を有している。係合部材219は、例えば、オフ位置においては、キャスター本体17(旋回部13)の上面よりも上方に位置し、オン位置においては、少なくとも一部が、平面視においてキャスター本体17の外側に位置することを前提として、キャスター本体17の上面よりも下方に位置する。また、この下方に位置する部分は、旋回軸A2回りの大きさが、キャスター本体17の外側の範囲よりも小さい。
別の観点では、係合部材219は、キャスター本体17の機器本体3に対する相対的な移動可能領域内であってキャスター本体17の非配置範囲に少なくとも一部が進入し、これによりキャスター本体17に対して規制位置(図2(c))にて係合可能なオン位置((図2(b)及び図2(c))と、前記の移動可能領域から退避したオフ位置との間で移動可能である。また、係合部材219のキャスター本体17と係合する部分は、旋回軸A2回りの大きさが、キャスター本体17の非配置範囲(厳密にはキャスター本体17の係合部材219と係合する位置を通る円周内における非配置範囲)よりも小さい。
従って、係合部材219は、オフ位置にあるときは、キャスター本体17が旋回してもキャスター本体17に当接しない。すなわち、キャスター本体17は、エンドレスに旋回可能である。一方、図2(c)に示すように、係合部材219は、オン位置にあるときは、キャスター本体17が旋回すると、キャスター本体17(例えば旋回部13)に旋回方向において係合する。これにより、キャスター本体17は、その係合位置(規制位置)を超える旋回が規制される。ただし、第1実施形態と同様に、図2(c)に示す規制位置と、キャスター本体17が図2(c)とは反対側に旋回したときの不図示の規制位置との間においては、キャスター本体17の旋回は許容されている。
スイッチ215の構造は、適宜なものとされてよい。例えば、図2では、係合部材219は、鉛直方向に平行移動するように構成されている。オン位置及び/又はオフ位置における位置保持、及び、適宜な操作方法が採用されてよいことは第1実施形態と同様である。
なお、キャスター本体17のうち係合部材219が係合する部分(符号省略)、及び、スイッチ215は、キャスター本体17の旋回を規制する規制機構221(符号は図2(c))を構成している。
以上のとおり、本実施形態では、キャスター付き機器201の規制機構221は、キャスター本体17のエンドレスな旋回を許容するオフ状態(図2(a))と、キャスター本体17の規制位置(図2(c))を超える旋回を規制するとともに規制位置の手前における旋回を許容するオン状態(図2(b)及び図2(c))と、の間で切り替えられるスイッチ215を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
また、本実施形態では、スイッチ215は、機器本体203に設けられ、キャスター本体17に係合する係合部材219を有している。従って、例えば、第1実施形態と同様に、2位置を移動する係合部材219を設ける簡単な構造で、規制位置を超える旋回を規制するとともにその手前における旋回を許容する規制機構221が実現される。また、例えば、キャスター本体17に特別な機構等は不要である。
<第3実施形態>
図3(a)〜図3(c)は、第3実施形態に係るキャスター付き機器301の要部の構成を示す図1(a)〜図1(c)に相当する模式的な側面図である。
本実施形態では、補助部材323が設けられている点が第1実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
補助部材323は、機器本体3に固定されており、また、旋回軸A2回りにキャスター本体17と相対回転可能である。補助部材323とキャスター本体17との間の軸支構造は公知のものと同様とされてよい。例えば、補助部材323は、キャスター本体と、キャスター本体に旋回可能に連結された板状の取付座とを有する公知のキャスターにおいて、取付座の代わりに設けられてよい。補助部材323は、例えば、金属又は樹脂等の硬質の材料から構成されている。
なお、本実施形態の説明では、便宜上、補助部材323を機器本体3及びキャスター5とは別個の部材として説明する。ただし、補助部材323は、機器本体3に固定されているから、機器本体3及び補助部材323を含む第3実施形態の機器本体の一部と捉えられてもよい。逆に、補助部材323は、キャスター5とともに流通され(連結されていても、されていなくてもよい)、キャスター5及び補助部材323を含む第3実施形態のキャスターの一部と捉えられてもよい。
補助部材323は、例えば、キャスター5と機器本体3との連結部付近に位置している。なお、補助部材323は、旋回部13とフレーム部材7との間に介在していてもよいし、旋回部13の軸部分の外周に位置していてもよい。また、補助部材323は、旋回軸A2回りに配列された複数の被係合部323aを有している。各被係合部323aは、例えば、概略、旋回軸A2を中心とする放射方向に延びるロッド状である(変形例であるが図6の被係合部623aも参照。)。
スイッチ15の構成は、第1実施形態において説明した構成と同様である。ただし、係合部材19は、機器本体3(フレーム部材7)に代えて(又は加えて)、被係合部323aに係合可能とされている。すなわち、係合部材19は、オン位置では、少なくとも一部が、複数の被係合部323aの移動可能領域内に進入し、オフ位置では、前記の移動可能領域から退避する。なお、係合部材19は、オン位置において、複数の被係合部323aの移動可能領域内だけでなく、機器本体3の移動可能領域内にも進入すれば、機器本体3及び被係合部323aの双方に係合可能である。
複数の被係合部323aが設けられていることから、係合部材19は、オン位置において、複数の被係合部323aの間(複数の非配置範囲)に選択的に進入する。なお、係合部材19は、一の被係合部323aが設けられ、この一の被係合部323aと、機器本体3(被係合部7a(図1(c)))とによって構成される複数の非配置範囲に選択的に進入してもよい。
各非配置範囲(厳密には係合部材19が係合する位置を通る円周内における非配置範囲)は、旋回軸A2回りの大きさが、係合部材19のオン位置にて係合する部分よりも大きい。従って、他の実施形態と同様に、係合部材19がオン位置にあるとき、キャスター5の旋回は、完全に規制されるのではなく、係合部材19が被係合部323a(及び機器本体3)に係合する複数の規制位置間において許容される。
なお、スイッチ15及び補助部材323は、キャスター本体17の旋回を規制する規制機構321(符号は図3(c))を構成している。
以上のとおり、本実施形態では、キャスター付き機器301の規制機構321は、キャスター本体17のエンドレスな旋回を許容するオフ状態(図3(a))と、キャスター本体17の規制位置(図3(c))を超える旋回を規制するとともに規制位置の手前における旋回を許容するオン状態(図3(b)及び図3(c))と、の間で切り替えられるスイッチ15を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
また、本実施形態では、オン位置の係合部材19に係合可能な複数の被係合部323a(及び7a)が旋回軸A2回りに設けられ、複数の被係合部323a(及び7a)の間に複数の非配置範囲が構成されている。係合部材19は、オフ位置からオン位置への移動によって複数の非配置範囲のいずれかに選択的に進入する。
従って、例えば、被係合部323a(及び7a)の数及び配置によって、非配置範囲の大きさを適宜に調整することができる。これにより、地震が生じたときのキャスター付き機器301の挙動を好適に調整することができる。
また、例えば、補助部材323を設けることから、機器本体3の構成によらずに係合部材19を被係合部323aに係合させることができる。また、例えば、キャスター5及び補助部材323の組み合わせであって、係合部材19がオン位置にて補助部材323の上面を超えない(機器本体3に係合しない)ものをキャスターとして流通する場合、このキャスターは汎用性が高い。
<第4実施形態>
図4は、第4実施形態に係るキャスター付き機器401の要部の構成を示す図1(a)に相当する模式的な側面図(ただし、一部に断面図を含む)である。
本実施形態のキャスター付き機器401は、第3実施形態において、補助部材323を機器本体3に対して旋回軸A2回りに旋回可能にした構成である。ただし、補助部材323は、キャスター本体17との旋回に対する抵抗モーメントよりも、機器本体3との旋回に対する抵抗モーメントが大きくなるように設けられている。具体的には、例えば、以下のとおりである。
機器本体3とキャスター本体17とは、例えば、第1実施形態と同様に、旋回軸A2を軸心とする軸状部材425によって連結されている。軸状部材425は、フレーム部材7及びキャスター本体17の少なくとも一方に対して軸回りに旋回可能とされている。これにより、キャスター本体17は、機器本体3に対して旋回軸A2回りに旋回可能となっている。軸支構造は、公知の種々の構造と同様とされてよい。
補助部材323は、例えば、軸状部材425が軸回りに旋回可能に補助部材323に挿通されることによって、機器本体3及びキャスター本体17の双方に対して旋回軸A2回りに旋回可能とされている。軸支構造は、公知の種々の構造と同様とされてよい。なお、軸状部材425が機器本体3及びキャスター本体17の双方に対して軸回りに旋回可能である場合においては、軸状部材425と補助部材323とは固定されていてもよい。
補助部材323は、例えば、上下方向において、機器本体3とキャスター本体17との間に介在している。補助部材323とキャスター本体17との間は、例えば、適宜なベアリングが設けられることなどによって、静止摩擦係数及び運動摩擦係数が比較的小さくされている。これに対して、補助部材323と機器本体3との間は、例えば、適宜な摩擦機構427が設けられることによって、静止摩擦係数及び運動摩擦係数が比較的大きくされている。
摩擦機構427は、例えば、機器本体3に固定された第1摩擦板429Aと、補助部材323に固定された第2摩擦板429Bとを有している(以下、両者を区別せずに単に「摩擦板429」ということがある。)。2枚の摩擦板429は、軸状部材425が挿通され、軸状部材425の軸方向において互いに重ねられている。従って、機器本体3と補助部材323とが旋回軸A2回りに相対的に旋回すると、2枚の摩擦板429は互いに摺動し、摩擦力を生じる。各摩擦板429の材料及び面粗さは、例えば、機器本体3及び補助部材323を直接に摺動させた場合に比較して摩擦係数が高くなるように適宜に選択及び設定されてよい。
なお、スイッチ15、補助部材323及び摩擦機構427は、キャスター本体17の旋回を規制する規制機構421を構成している。本実施形態の説明では、便宜上、摩擦機構427について、機器本体3及びキャスター5とは別個の機構として説明した。ただし、キャスター付き機器401において、摩擦機構427は、機器本体の一部として捉えられてもよいし、キャスターの一部として捉えられてもよい。また、摩擦機構427は、キャスターの流通において、キャスターの一部として(キャスター本体に連結されていても、されていなくてもよい)流通されてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、キャスター付き機器401の規制機構421は、キャスター本体17のエンドレスな旋回を許容するオフ状態(図4)と、キャスター本体17の規制位置(他の実施形態であるが図3(c)参照)を超える旋回を規制するとともに規制位置の手前における旋回を許容するオン状態(図3(b)及び図3(c)参照)と、の間で切り替えられるスイッチ15を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。
また、本実施形態では、キャスター付き機器401は、機器本体3及びキャスター本体17の双方に対して旋回軸A2回りに旋回可能であり、機器本体3との旋回に対する抵抗モーメントが、キャスター本体17との旋回に対する抵抗モーメントよりも大きい補助部材323を更に有している。スイッチ15の係合部材19は、キャスター本体17に設けられており、補助部材323のキャスター本体17に対する相対的な旋回軸A2回りの移動可能領域内であって補助部材323の非配置範囲に少なくとも一部が進入し、これにより補助部材323に対して規制位置にて係合可能なオン位置と、移動可能領域から退避したオフ位置との間で移動可能であり、且つ、オン位置にあるときに補助部材323と係合する部分の旋回軸A2回りの大きさが補助部材323の非配置範囲よりも小さい。
従って、地震が生じてキャスター本体17が旋回すると、オン位置にある係合部材19は、被係合部323aに係合する。キャスター本体17の機器本体3に対する旋回軸A2回りのモーメントが、摩擦機構427の最大摩擦力に応じたモーメント内である場合においては、キャスター本体17の機器本体3に対する旋回は停止される。このような場合における効果は、既に説明した他の実施形態と同様である。
一方、キャスター本体17の機器本体3に対する旋回軸A2回りのモーメントが、摩擦機構427の最大摩擦力に応じたモーメントを超えると、キャスター本体17は、摩擦機構427の運動摩擦力によるモーメントに抗して機器本体3に対して旋回する。この場合も、係合部材19がオフ位置にあるときに比較して、キャスター付き機器1の自由な走行が規制され、キャスター付き機器1の変位が抑制される。また、車輪11と載置面101(図1(a))との摺動によって運動エネルギーが消費され得る。
キャスター本体17は、摩擦機構427からの抵抗モーメントによって旋回に規制を受けるものの、旋回可能である。従って、既に説明した実施形態のようにキャスター本体17の旋回が完全に停止される場合に比較して、機器本体3に対して大きな加速度が加えられることを抑制する観点において有利である。その結果、例えば、機器本体3の転倒がより抑制される。なお、変位抑制の観点からは、既に説明した実施形態が有利である。
キャスター本体17が摩擦機構427からのモーメントに抗して旋回しているとき、機器本体3に加えられた運動エネルギーは、摩擦機構427における摩擦によって消費される。摩擦機構427による運動エネルギーの消費は、車輪11と載置面101との間の摩擦による運動エネルギーの消費に比較して、載置面101に依存しない点において有利である。すなわち、キャスター付き機器401の配置される環境によらずに、一定の運動エネルギーの消費を期待することができる。
なお、本実施形態の説明から理解されるように、キャスター本体17の旋回の規制は、キャスター本体17の旋回を完全に停止させる態様に限定されず、抵抗モーメントを増加させる態様を含む。また、規制位置は、機器本体に対して固定位置でなくてもよい。
<第5実施形態>
図5は、第5実施形態に係るキャスター付き機器501の要部の構成を示す図1(a)に相当する模式的な側面図(ただし、一部に断面図を含む)である。
本実施形態のキャスター付き機器501は、第4実施形態と同様に、機器本体3及びキャスター本体17の双方に対して旋回可能な補助部材323が設けられ、キャスター本体17に設けられた係合部材19が補助部材323に対して係合する構成である。ただし、摩擦機構及びその周辺の具体的な構成が第4実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
機器本体3とキャスター本体17とは、例えば、補助部材323を介して連結されている。例えば、キャスター本体17と補助部材323とは、旋回軸A2を軸心とする軸状部材525によって連結されている。軸状部材525は、キャスター本体17及び補助部材323の少なくとも一方に対して軸回りに旋回可能とされている。軸支構造は、公知の種々の構造と同様とされてよい。また、例えば、機器本体3とキャスター本体17とは、例えば、後述するように摩擦機構527によって旋回軸A2回りに互いに旋回可能に連結されている。このように、キャスター本体17及び機器本体3は、それぞれが補助部材323に対して旋回可能とされることにより、互いに旋回可能とされている。
摩擦機構527は、例えば、トルクリミッタによって構成されており、例えば、内輪531と、内輪531を回転可能に収容する外側部品529とを有している。外側部品529は、例えば、筒状部材と、この筒状部材と内輪531との間に介在する不図示のスプリングとを有している。スプリングは、筒状部材に対して回転不可能とされ、また、内輪531を締め付けている。スプリングと内輪531との間には潤滑剤が介在されている。
従って、内輪531を外側部品529に対して回転させるモーメントが摩擦機構527に入力された場合、そのモーメントが内輪531と外側部品529(より詳細にはスプリング)との間の最大摩擦力に応じたモーメントを超えないときは、内輪531は外側部品529に対して回転せず、超えたときは、内輪531は、運動摩擦力によるモーメントに抗して外側部品329に対して回転する。
そして、摩擦機構527は、その軸心が旋回軸A2と一致するように配置され、内輪531及び外側部品529のうち一方(図5では内輪531)が補助部材323に固定され、他方(図5では外側部品529)が機器本体3に固定される。これにより、補助部材323は、機器本体3に対して旋回軸A2回りに旋回可能とされている。また、補助部材323は、機器本体3との旋回に対する抵抗モーメントが、キャスター本体17との旋回に対する抵抗モーメントよりも、大きくされている。なお、補助部材323及びキャスター本体17において、その間に適宜なベアリングが設けられることなどによって、両者の静止摩擦係数及び運動摩擦係数が比較的小さくされてよいことは第4実施形態と同様である。
なお、スイッチ15、補助部材323及び摩擦機構527は、キャスター本体17の旋回を規制する規制機構521を構成している。摩擦機構527は、第4実施形態と同様に、キャスター付き機器501において、機器本体の一部として捉えられてもよいし、キャスターの一部として捉えられてもよく、また、キャスターの流通の際に、キャスターの一部として流通されてもよい。
<変形例>
図6(a)〜図6(c)は、変形例に係る補助部材623を示す模式的な平面図である。
補助部材623は、例えば、第3〜第5実施形態において、補助部材323に代えて用いられるものである。補助部材623は、例えば、少なくとも複数の被係合部623aがゴム等の弾性材料から構成されている。
従って、オン位置にある係合部材19が旋回軸A2回りに旋回し、被係合部623aに係合すると(図6(a))、被係合部623aは、係合部材19から受ける力によって弾性変形する(図6(b))。そして、係合部材19は、被係合部623aの変形量に応じた復元力によって旋回が規制される。
係合部材19が更に旋回しようとすると、被係合部623aの弾性変形によって、係合部材19は、被係合部623aとの係合が解除され、被係合部623aとの係合位置(規制位置)を超える旋回が許容される(図6(c))。
このような構成においては、例えば、係合部材19が被係合部623aに係合した後、キャスター本体17の旋回に対する抵抗モーメント(被係合部623aの復元力によるモーメント)が徐々に大きくなることから、実施形態に比較して、キャスター本体17の旋回の規制が緩やかに行われる。その結果、例えば、機器本体3に大きな加速度が加えられることが抑制され、機器本体3の転倒が抑制される。
また、同一方向への旋回を断続的に規制及び許容することから、例えば、第1〜第3実施形態のように完全に旋回を停止させる場合に比較して、機器本体3に大きな加速度が加えられることが抑制され、機器本体3の転倒が抑制される。なお、変位抑制の観点からは、第1〜第3実施形態が好ましい。
なお、以上の実施形態において、第4及び第5実施形態の補助部材323は、機器本体及びキャスター本体の双方に対して旋回可能な中間部材の一例である。変形例の被係合部623aは、弾性部の一例である。第3実施形態において、キャスター5及び補助部材323の組み合わせをキャスターとして捉えた場合において、補助部材323は、取付部の一例である。第4実施形態において、キャスター5、軸状部材425、補助部材323及び摩擦機構427の組み合わせをキャスターとして捉えた場合において、第1摩擦板429Aは取付部の一例である。第5実施形態において、キャスター5、軸状部材525、補助部材323及び摩擦機構527の組み合わせをキャスターとして捉えた場合において、外側部品529は取付部の一例である。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、本願発明における、キャスターの旋回を規制する規制機構は、公知の種々の構造のキャスターに対して適用可能であり、規制機構を除くキャスターの基本的な構成は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、キャスターは、2つの車輪を有するものに限定されず、1つの車輪と、その1つの車輪の両側から車輪を保持する旋回部(フォーク)とを有するものであってもよい。また、例えば、キャスターを機器本体に対して取り付けるための部材は、旋回部に軸支された軸状部材に限定されず、旋回部に旋回可能に連結され、機器本体に固定される板状の取付座であってもよい。また、例えば、旋回部は、車輪の外周を囲むカバーを有していなくてもよい。なお、カバーが設けられていなくても、スイッチ等を設ける箇所は、旋回部に適宜に確保可能である。
本発明の旋回の規制機構は、既に述べたように、車輪の回転及び/又は旋回部の旋回をロックする機構に比較して、地震等においてキャスター付き機器の転倒を抑制できる。ただし、本発明の規制機構と、車輪及び/又は旋回部をロックする機構との双方がキャスター付き機器又はキャスターに設けられていてもよい。この場合、例えば、キャスター付き機器(機器本体)が配置される場所若しくは周囲の設備、及び/又は、キャスター付き機器の使用状況等に応じて、いずれの規制を行うかを選択することができる。
スイッチの係合部材は、係合する部分が上下方向に移動するものに限定されない。例えば、キャスターに設けられた係合部材が水平方向に移動して、機器本体の下方へ突出する被係合部に係合したり、機器本体の下方に突出する部分に設けられた係合部材が水平方向に移動してキャスター本体に係合したりしてもよい。係合部材が係合する被係合部は、第3実施形態の被係合部のように本発明の規制機構のために新たに設けられた部位であってもよいし、第1及び第2実施形態のように、本発明の規制機構の有無に関わらず本来的に機器本体又はキャスター本体に設けられている部位であってもよい。機器本体に設けられてキャスター本体に係合する係合部材は、車輪を軸支する旋回部ではなく、車輪の側面に係合してもよい。
第4及び第5実施形態のように、機器本体及びキャスター本体の双方に旋回可能な中間部材(補助部材323)が設けられる場合において、係合の態様は、キャスター本体に設けられたスイッチが中間部材に係合する態様に限定されない。例えば、機器本体に設けられたスイッチが中間部材に係合してもよいし、中間部材に設けられたスイッチがキャスター本体又は機器本体に係合してもよい。これらの態様において、抵抗モーメントは、キャスター本体及び機器本体のうちスイッチによって中間部材と係合するものと中間部材との間における旋回に対する抵抗モーメントが、キャスター本体及び機器本体のうち他方と中間部材との間における旋回に対する抵抗モーメントよりも小さくされる。なお、キャスター本体及び機器本体のうち前記他方と中間部材との間における旋回に対する抵抗モーメントを大きくするために摩擦機構を設ける場合においては、キャスター本体又は中間部材よりも機器本体のほうが摩擦機構を配置するスペースを確保しやすいので、キャスター本体及び中間部材との間で係合がなされる態様が好ましい。
第4及び第5実施形態のように機器本体及びキャスター本体の双方に旋回可能な中間部材が設けられる場合において、その抵抗力の大小は、摩擦の有無によって設定されるものに限定されない。例えば、変形例における弾性部材からなる複数の被係合部623aは、係合部材19に対して抵抗モーメントを付与しつつ係合部材19の旋回を許容している。このような構成を、中間部材と、機器本体及びキャスター本体のうちのスイッチによって中間部材と係合されないもの(第4及び第5実施形態では機器本体3)との間に適用して、抵抗モーメントを大きくしてもよい。
また、摩擦によって抵抗モーメントが大きくされる場合において、摩擦機構の構成は適宜なものとされてよい。例えば、第4実施形態において、摩擦板を設ける代わりに、樹脂又は繊維のシートを補助部材323及び/又はフレーム部材7に貼り付けるなどしてもよい。また、摩擦力を大きくするための部材が明確に設けられていなくてもよい。例えば、第4実施形態において、補助部材323と機器本体3のフレーム部材7とが直接に摺動し、摩擦機構を構成してもよい。摺動抵抗を減じるためにベアリング等が設けられていなければ、摩擦機構が設けられているともいえる。
第3実施形態では、スイッチはキャスター本体に設けられ、複数の被係合部は機器本体(より詳細には補助部材323)に設けられた。これとは逆に、スイッチが機器本体に設けられ、複数の被係合部がキャスター本体に設けられてもよい。また、第4及び第5実施形態においては、スイッチはキャスター本体に設けられ、複数の被係合部は中間部材に対して固定的とされた。ただし、上述のように、スイッチ及び被係合部の配置の組み合わせは、これ以外に3通りあり、いずれにおいても複数の係合部が適用されてよい。
変形例では、弾性部は、スイッチが係合する被係合部に設けられた。ただし、弾性部は、被係合部に代えて又は加えて、スイッチ(係合部材)に設けられてもよい。また、弾性部は、係合部材及び/又は被係合部の全体である必要はなく、その一部であってもよい。また、弾性部は、ゴムではなく、ばねによって構成されてもよい。ばねの材料は、金属又は樹脂等の適宜な材料とされてよく、また、その構造もコイルばね又は板ばね等の適宜な構造とされてよい。弾性部は、係合が解除される状態まで弾性変形可能である必要はなく、例えば、一定の変形量まで変形すると、係合部材及び被係合部のうち一方がストッパに当接して変形が規制されてもよい。