以下、本発明の実施形態を図面を参照して、本発明の一実施形態に係る建設機械の起伏部材1について説明する。本実施形態に係る起伏部材1は、図1〜図3に示すようなクレーン100(建設機械)に適用される。図1は、本実施形態に係る起伏部材1が適用されるクレーン100の作業姿勢を示す概略的な側面図である。図2は、図1に示したクレーン100において起伏部材1が屈折した状態を示す概略的な側面図である。図3は、図1に示したクレーン100において起伏部材1が地面に倒伏した状態を示す概略的な側面図である。なお、図1〜図3は、クレーン100の概略的な構成を示すものであり、起伏部材1の後述するジブバックストップ12及びバックストップ受部16については図示を省略している。起伏部材1が適用されるクレーン100は、クローラ式の下部走行体2と、その下部走行体2上に縦軸回りに旋回自在となるように搭載された上部旋回体3とを備えている。上部旋回体3は、本発明の建設機械の本体の概念に含まれるものであり、起伏部材1は、この上部旋回体3に設けられている。また、図4〜図6は、本実施形態に係る起伏部材1において、後記のジブバックストップ12がバックストップ受部16の被係合部16bに係合する様子を示す、ブーム8の先端部及びジブ10の基端部近傍の側面図である。
起伏部材1は、吊荷の吊り作業に用いられるものであり、その先端から吊り下げたフック装置6により吊荷を吊るようになっている。起伏部材1は、ブーム8と、ジブ10と、一対のジブバックストップ12(図4)とを備えている。
ブーム8は、上部旋回体3に起伏自在となるように取り付けられている。ブーム8は、その軸方向に連結された複数の単位ブームからなり、各単位ブームは、4本の主柱材とその4本の主柱材のうち隣り合うもの同士をラチス構造を成すように連結する複数の副材とを有する。ブーム8は、水平軸回りに回動自在となるように上部旋回体3に取り付けられた基端部を有しており、その基端部を支点として起伏するようになっている。
ジブ10は、水平軸回りに回動自在となるようにブーム8の先端部8aに取り付けられている。ジブ10は、ジブ本体14と、一対のバックストップ受部16(図4)とを有する。
ジブ本体14は、その軸方向に連結された複数の単位ジブからなり、各単位ジブは、ジブ本体14が延びる方向と直交する断面において方形の各頂点に相当する位置に配置された4本の主柱材14a(図4)と、その4本の主柱材14aのうち隣り合うもの同士をラチス構造を成すように連結する複数の副材14b(図4)とを有する。また、ジブ本体14は、ブーム8の先端部8aに取り付けられた基端部14c(図1)を有する。この基端部14cは、ブーム8の先端部8aのうちブーム8が起立したときに前方へ突出する部位に取り付けられている。ジブ本体14は、その基端部14cを中心として水平軸回り(ブーム8の回動軸と平行な軸回り)に回動自在となっている。また、ジブ本体14は、基端部14cと反対側の端部である先端部14d(図1)を有している。この先端部14dは、図2に示すように、当該先端部14dが接地するときに地面に対して当該先端部14dを支えるローラ14eを備えている。
一対のバックストップ受部16(図4)は、一対のジブバックストップ12が後述するようにジブ10を後方から支えるときにそれらのバックストップ本体20の係合部20mを受け止めるためのものである。各バックストップ受部16は、ジブ本体14が起立した状態で後側を向くジブ本体14の背面のうち基端部14c近傍の位置に設けられている。具体的には、ジブ本体14の最も基端側の単位ジブを構成する4本の主柱材14aのうちジブ本体14が起立した状態で後側に配置される2本の主柱材14aの後側を向く面に、バックストップ受部16がそれぞれ取り付けられている。両バックストップ受部16の構成は共通しているため、以下、一方のバックストップ受部16の構成について代表して説明する。
バックストップ受部16は、図4の左右方向(紙面と直交する方向)に所定の厚みを有する板材からなり、当該バックストップ受部16が取り付けられる主柱材14aの前記後側を向く面に立設されている。バックストップ受部16は、当該バックストップ受部16が取り付けられる主柱材14aの延びる方向に沿って延びており、基端側部位16aと、被係合部16bと、先端側部位16cとを有する(図4)。
基端側部位16aは、バックストップ受部16のうちジブ10の基端部14c寄りに位置する部位である。被係合部16bは、バックストップ受部16においてこの基端側部位16aに対してジブ10の先端側に配置されている。また、先端側部位16cは、バックストップ受部16のうち被係合部16bに対してジブ10の先端側に配置された部位である。先端側部位16cの主柱材14aに対する取付面から反対側の端面までの幅は、基端側部位16aの主柱材14aに対する取付面から反対側の端面までの幅よりも大きく、それによって、先端側部位16cと基端側部位16aとの間には段差が形成されている。この段差部分によって被係合部16bが形成されている。被係合部16bは、後述のバックストップ本体20がジブ10を後方から支えるときにそのバックストップ本体20の係合部20mと係合するものである。
更に、ジブ10のジブ本体14は、突起部17(制限機構、規制部)を備えている(図4、図14参照)。突起部17は、ブーム8の回動軸の軸方向においてバックストップ受部16の基端側部位16aに並ぶように主柱材14aから突設されている。突起部17は、直方体形状を備えている。突起部17は、ジブ10の基端部の一部を構成する。
一対のジブバックストップ12は、ブーム8が起立した状態で、ブーム8の延びる方向(ブーム8の軸線方向)とジブ10の延びる方向(ジブ本体14の軸線方向)とが成す角度であるオフセット角度が所定の角度に達したときに、ジブ10を後方から支えてそのジブ10が後方へ転倒するのを阻止する。一対のジブバックストップ12は、ブーム8の先端部8aに設けられている。具体的には、これらのジブバックストップ12は、ブーム8の先端部8aのうちジブ本体14の基端部14cが取り付けられた箇所よりもブーム8が起立したときに後側に位置する箇所に取り付けられている。また、各ジブバックストップ12は、ジブ本体14の回動軸の延びる方向において各バックストップ受部16が配置された位置と対応する位置にそれぞれ配置されている。両ジブバックストップ12の構成は共通しているため、以下、一方のジブバックストップ12の構成について代表して説明する。図7は、本実施形態に係る起伏部材1において、ジブバックストップ12のバックストップアウタ20aの側面図である。図8は、ジブバックストップ12のバックストップインナ20bの側面図である。図9は、図8に示したバックストップインナ20bの上面図である。
ジブバックストップ12は、バックストップ本体20と、サポート部材22とを有する(図4)。
バックストップ本体20は、伸縮自在となるように構成され、収縮した状態でジブ10を後方から支えるものである。バックストップ本体20は、バックストップアウタ20aと、バックストップインナ20bと、ピン20cと、バネ部材20dとを有する。
バックストップアウタ20a(図7)は、所定の方向に延びており、その一端部がブーム8の先端部8a(図4)に取り付けられている。バックストップアウタ20aは、図7に示すように、略円筒状のアウタ本体20eと、ブーム側端部20f(バックストップ本体20の基端部)と、アウタ側鍔部20gと、接続部20hとを有する。
ブーム側端部20fは、バックストップアウタ20aの前記一端部に相当し、アウタ本体20eの一端部に設けられている。ブーム側端部20fは、ジブ10の回動軸と平行な軸回りに回動自在となるようにブーム8の先端部8aに取り付けられており、バックストップアウタ20aは、このブーム側端部20fを中心としてブーム8の先端部8aに対して回動可能となっている。アウタ本体20eのブーム側端部20fと反対側の端部である他端部は、開口している。また、アウタ本体20eには、当該アウタ本体20eをその径方向に貫通する貫通穴20i(図7)が設けられている。アウタ側鍔部20gは、環状の円板からなり、アウタ本体20eの他端部近傍の部位に外嵌されて固定されている。前記貫通穴20iは、このアウタ側鍔部20gの固定部位よりもブーム側端部20f側の位置に配設されている。接続部20h(図7)は、サポート部材22の一端を接続するためのものであり、アウタ本体20eのうちアウタ側鍔部20gのブーム側端部20f側に近接した位置に設けられている。
バックストップインナ20bは、バックストップアウタ20aが延びる方向(アウタ本体20eの軸方向)において当該バックストップアウタ20aに対して進退自在となるように当該バックストップアウタ20aに収容されている。バックストップインナ20bは、図8及び図9に示すように、インナ本体20jと、インナ側鍔部20kと、係合部20m(係合部)とを有する。
インナ本体20jは、アウタ本体20eの内径よりも僅かに小さい外径を有しており、アウタ本体20eの前記他端部の開口を通じてその一端部側からアウタ本体20e内に挿嵌されている。インナ本体20jのうちアウタ本体20e内に挿嵌される部位の特定範囲には、長穴20nが形成されている。この長穴20nは、インナ本体20jをその径方向に貫通しているとともにインナ本体20jの軸方向に沿って延びている。インナ側鍔部20kは、環状の円板からなり、インナ本体20jのうちアウタ本体20e内に挿嵌される部位よりも当該インナ本体20jの他端部寄りの部位に外嵌されて固定されている。
係合部20mは、バックストップ本体20がジブ10を後方から支えるときにジブ10に当接する部位である。具体的には、係合部20mは、バックストップ本体20がジブ10を後方から支えるときにバックストップ受部16の被係合部16bに係合する。この係合部20mは、インナ本体20jのうちアウタ本体20e内に挿嵌される一端部と反対側の端部である他端部に配設されている。係合部20mは、側方から見て先端が円弧状の板体であるセンタープレート20oと、そのセンタープレート20oを板厚方向の両側から挟み込んだ状態で当該センタープレート20oに結合された一対のサイドプレート20pと、両サイドプレート20pから外側に張り出すようにそのサイドプレート20pに取り付けられた一対のガイド部材20qとを有する。両サイドプレート20pは、センタープレート20oの先端の円弧状の外周よりも一回り大きい外周形状を有している。係合部20mがバックストップ受部16の被係合部16bに係合するときには、センタープレート20oの先端の外周面が被係合部16bのうちジブ10の基端側を向く面に当接するとともに、両サイドプレート20pのうちセンタープレート20oの外周からはみ出た部分同士の間に被係合部16bが配置された状態になる。一対のガイド部材20qは、係合部20mが被係合部16bに係合するときに側方へ多少ぶれた場合でも、その係合部20mを被係合部16bに対する適切な係合位置に導くためのものである。
ピン20cは、アウタ本体20eの貫通穴20i及びインナ本体20jの長穴20nに挿嵌されて抜け止めされている。このピン20cにより、バックストップインナ20bがバックストップアウタ20aに対して進退するときの移動範囲が、長穴20nの長さに相当する範囲に規制されている。具体的には、バックストップインナ20bがバックストップアウタ20aから進出するときには、ピン20cが長穴20nの係合部20mと反対側の端縁に当接することによりバックストップインナ20bがそれ以上進出するのが規制され、バックストップインナ20bがバックストップアウタ20a側に退避するときには、ピン20cが長穴20nの係合部20m側の端縁に当接することによりバックストップインナ20bがそれ以上バックストップアウタ20aのブーム側端部20f側へ退避するのが規制されるようになっている。
バネ部材20d(図4)は、ジブバックストップ12のバックストップ本体20がジブ10を後方から支えるときにそのジブ10からバックストップインナ20bに加えられる力に対抗するためのものである。このバネ部材20dは、コイルバネからなり、アウタ側鍔部20gとインナ側鍔部20kとの間でバックストップアウタ20a及びバックストップインナ20bに外嵌されている。バックストップ本体20がジブ10を後方から支えるときにジブ10からバックストップインナ20bに力が加えられると、バネ部材20dは、インナ側鍔部20kによって押し縮められる。
サポート部材22は、バックストップ本体20のバックストップアウタ20aとブーム8の先端部8aとの間に架設され、バックストップ本体20がジブ10を後方から支えるときにそのバックストップ本体20の姿勢を保持するように当該バックストップ本体20を支えるものである。具体的には、サポート部材22は、バックストップ本体20がジブ10を後方から支えるときに、バックストップ本体20が係合部20m側へ向かうにつれて上方へ向かうように斜めに延びる姿勢を維持するように当該バックストップ本体20を下側から支える。サポート部材22の一端は、ジブバックストップ12の接続部20h(図7)に軸支され、サポート部材22の他端は、ブーム8の先端部8aに配設された軸支部8s(図4)に軸支されている。更に、サポート部材22は、伸縮可能となるように構成されている。
更に、ジブバックストップ12は、揺動部材50を備える(図4、図8、図9)。揺動部材50は、バックストップ本体20のうちブーム側端部20fよりも係合部20mに近い位置に配置されている。本実施形態では、図8に示すように、揺動部材50は、係合部20mの直ぐインナ側鍔部20k側に配置されている。揺動部材50は、ブーム8の回動軸と平行な軸回りに揺動可能である。揺動部材50は、図8に示すように、長い楕円形の板材からなり、当接部51と、軸穴52と、を備える。当接部51は、揺動部材50の外周面の下側部分に相当する。
軸穴52は、揺動部材50の上端側に開口された孔部である。軸穴52は、バックストップインナ20bの側面からブーム8の回動軸と平行に突設された軸部25(揺動軸)に嵌め込まれている。この結果、揺動部材50が軸部25回りに揺動可能とされる。そして、本実施形態では、揺動部材50に外力が加えられていない場合、揺動部材50の自重(重心位置)によって、当接部51が下を向くように揺動部材50がバックストップ本体20から鉛直下方に向かって延びる、垂下姿勢となる。なお、他の実施形態において、当接部51は鉛直方向に対して所定の角度をもった方向(特定の方向)に向くものでもよい。
なお、ジブ本体14が備える前述の突起部17(図4)は、ジブ10の回動における軸方向と直交し揺動部材50を通る面上に配置されている。
次に、本実施形態による起伏部材1の動作について説明する。以下、図4乃至図6を参照して、本発明のジブ起立時の起伏部材1の動作について説明する。
図1および図4を参照して、クレーンによる作業時には、ブーム8が起立されている。この状態では、サポート部材22は、最も収縮した状態にあり、このサポート部材22によってバックストップ本体20がブーム8の先端部8aからジブ10側に向かって先上がりに延びた状態で支持されている。このとき、図4に示すように、揺動部材50は、自重によって鉛直下方に向かって延びるように、バックストップ本体20から垂れ下がっている(垂下姿勢)。この状態で、ブーム8に対するジブ10のオフセット角度θが小さくなるようにジブ10がブーム8に対して矢印D41方向に回動され、ジブ10が起立していく。そして、ブーム8に対するジブ10のオフセット角度θがジブバックストップ12による規制角度に近づくと、やがて、図5および図6に示すように、ジブバックストップ12の係合部20mがバックストップ受部16の被係合部16bに係合する。この状態からさらにジブ10が起立すると、ジブ10からバックストップインナ20bに荷重が加えられ、それによって、バックストップインナ20bは、バネ部材20dを収縮させながらブーム側端部20f側へ退避する。このとき、バックストップインナ20bは、バネ部材20dを最も収縮させるとともにピン20cが長穴20nの係合部20m側の端縁に当接する位置まで退避する。この状態で、バックストップ本体20は、ジブ10を後方から支え、ジブ10のそれ以上の後方への回動が阻止される。
なお、図4乃至図6に示すように、ジブ10の起立に伴って、揺動部材50の下端部(当接部51)がジブ本体14の基端部に当接すると、揺動部材50の下端部がバックストップ受部16から離れる方向に揺動部材50が軸部25(図9)回りに回動する。すなわち、ジブ10の起立動作時、ジブバックストップ12の先端から垂下された揺動部材50は、バックストップ本体20の係合部20mとバックストップ受部16の被係合部16bとの係合を許容するように動作する。このため、ジブ10が後方へ転倒することが防止される。
次に、図1乃至図3に加え、図10乃至図16を参照して、本発明の起立部材倒伏時の起伏部材1の動作について説明する。図10は、本実施形態に係る起伏部材1のブーム8およびジブ10が倒伏する際の、ブーム8の先端部およびジブ10の基端部近傍の側面図である。図11は、図10の状態からさらにブーム8およびジブ10が倒伏した状態を示す図である。図12は、図11の状態からさらにブーム8およびジブ10が倒伏した状態を示す図である。図13は、図12の状態からさらにブーム8およびジブ10が倒伏した状態を示す図である。図14は、本実施形態に係る起伏部材1のブーム8およびジブ10が倒伏する際の、ジブバックストップ12の先端部およびバックストップ受部16近傍の上面図である。図15は、図14の状態からさらにブーム8およびジブ10が倒伏した状態を示す図である。図16は、図15の状態からさらにブーム8およびジブ10が倒伏した状態を示す図である。
起伏部材1の分解作業を行うときには、図2に示すように、ジブ10の基端部14cがブーム8の先端部8aに支持されかつジブ10の先端部14dのローラ14eが地上に接触するように、起伏部材1が屈曲姿勢とされる。この際、図10に示すように、バックストップ本体20はブーム8の先端部8aからジブ10側に向かって先下がりに延びた状態となっている。この状態から、ブーム8が地面へ向かって徐々に倒伏され、それに伴って、ローラ14eが転動しつつジブ10の先端部14dが前方へ移動し、且つ、ジブ10の基端部14cが降下していく。すなわち、ブーム8に対するジブ10のオフセット角度θが徐々に小さくなるように、ブーム8およびジブ10がそれぞれクレーン100の上部旋回体3およびブーム8に対して回動される(図10の矢印D101、102)。
このような起伏部材1の倒伏時には、図3に示すように、ブーム8の延びる方向に沿ってジブ10が配置される。換言すれば、ブーム8に対するジブ10のオフセット角度θがジブバックストップ12によって規制される所定の角度よりも小さくなる必要がある。本実施形態では、このようなブーム8およびジブ10のオフセット角度θが揺動部材50によって実現される。すなわち、図10に示すように、ブーム8およびジブ10の倒伏時、バックストップ本体20の先端から自重によって垂れ下がった揺動部材50の下端部(図8の当接部51)が、突起部17に当接する(図14、図15参照)。そして、ブーム8およびジブ10が更に回動されると(図11の矢印D111、D112)、揺動部材50が、バックストップ本体20の係合部20m側を下方から支持しながら、ジブ10の基端部との当接位置を支点としてジブ10の先端側に回動する。この結果、係合部20mを被係合部16bよりもジブ10の先端部14d側に移動させる(図12)。本実施形態では、図10に示すように、主柱材14aに対するバックストップ受部16の先端側部位16cの突出高さよりも、揺動部材50の鉛直方向に延びる長さのほうが大きく設定されている。換言すれば、ブーム8の回動軸と直交する断面において、揺動部材50の当接部51とジブ10の基端部(主柱材14a)との当接位置と軸部25(図9)の軸心との距離が、バックストップ受部16の被係合部16bとジブ10の基端部(主柱材14a)との距離よりも大きく設定されている。したがって、当接部51がジブ10の基端部に当接した際に、係合部20mが被係合部16bよりもジブ10の基端部から離れた位置(高い位置)に配置される。このため、揺動部材50の回動に伴って、係合部20mを被係合部16bよりもジブ10の先端側に確実に移動させることができる。
図12に示される状態から、ブーム8およびジブ10が更に回動されると(図12の矢印D121、D122)、揺動部材50が突起部17を乗り越えながら、バックストップ本体20の係合部20mが先端側部位16cの前端部に至る(図13、図16)。この結果、ブーム8に対するジブ10のオフセット角度θがジブバックストップ12によって規制される所定の角度よりも小さくなることが可能になり、ブーム8及びジブ10は図3および図13に示すように地面に完全に倒伏される。そして、ブーム8及びジブ10が完全に倒伏された状態で、ブーム8及びジブ10の分解作業が行われる。
以上のように、本実施形態では、揺動部材50は、ジブ起立時に、バックストップ本体20の係合部20mがバックストップ受部16の被係合部16bと係合することを許容する。このため、ジブ10が後方へ転倒することが防止される。一方、起伏部材1の分解時にブーム8およびジブ10が倒伏する際には、揺動部材50の当接部51がジブ10の基端部に当接し、バックストップ本体20を被係合部16bよりもジブ10の先端側に移動させる。そして、上記のような動作が可能となるように、バックストップ本体20の姿勢に関わらず揺動部材50の当接部51が特定の方向を向くように揺動部材50が自重によって一定の垂下姿勢をとる。この場合、図2に示すように、ブーム8およびジブ10を含む起伏部材1の倒伏準備が開始された際、既に、揺動部材50はジブ本体14の基端部に当接する際と同じ姿勢になっている。したがって、バックストップ本体20の係合部20mがバックストップ受部16に近づいた際に、係合部20mと被係合部16bとの係合を回避する回避姿勢に姿勢変更する構造と比較して、係合部20mと被係合部16bとの係合を安定して回避することができる。
また、本実施形態では、起伏部材1の姿勢変更時に、バックストップ本体20と揺動部材50とが一体に移動することができる。一般的に、ジブ10はジブバックストップ12よりも遥かに大きな構造物である。このため、起立部材倒伏時に、ジブバックストップ12の下方には、当該ジブバックストップ12よりも大きなジブ10が配置される。したがって、本実施形態では、バックストップ本体20から垂下する姿勢をとる揺動部材50の当接部51が、安定してジブ10側に当接することができる。この結果、本構成では、ジブに支持されたアームとジブバックストップとが当接することで係合部と被係合部との係合を回避する従来の技術と比較して、揺動部材50を確実にジブ10に当接させることができる。
この結果、起伏部材倒伏時において、ブーム10に対するジブ8のオフセット角度θがジブバックストップ12によって規制される角度を超えて小さくなるようにジブ10をブーム8に対して相対的に回動させることができ、ブーム8およびジブ10を地面に倒伏させることができる。また、この起伏部材1では、ブーム8およびジブ10の長さの組み合わせが変更されて起伏部材倒伏時におけるブーム8とジブ10の相対的な動き、およびバックストップ本体20の係合部20mがバックストップ受部16に近接するタイミングが変化しても、自重によって下方に延びている揺動部材50の当接部51がジブバックストップ12よりも大きなジブ10の基端部に安定して当接することができる。このため、ブーム8およびジブ10の長さの組み合わせに関わらず、係合部20mと被係合部16bとの係合を回避することができる。すなわち、本実施形態では、ジブバックストップ12よりも大きく、かつ、起伏部材倒伏時にジブバックストップ12の下方に位置するジブ10に対して、ジブバックストップ12のバックストップ本体20から垂下した揺動部材50が上から当接することによって、揺動部材50の当接不良(空振り)が抑止されるものである。従って、本構成では、起伏部材1の設計上の煩雑さを軽減しつつ、起伏部材1の分解時にジブバックストップ12によるブーム8に対するジブ10の相対的な回動の規制を確実に回避してブーム8とジブ10を地面に倒伏させることができる。
更に、本実施形態では、バックストップ受部16に並んで配置された突起部17(規制部)が、起伏部材倒伏時に揺動部材50に当接する。突起部17は、揺動部材50がバックストップ本体20を下方から支持しながら当接部51とジブ10の基端部との当接位置を支点としてジブ10の先端部14d側に回動するように、ジブ10の基端部上における当接部51の当接位置の変化を制限する。具体的には、突起部17は当接部51の当接位置が突起部17よりもジブ10の先端側に移動することを一時的に制限する。したがって、揺動部材50の回動および係合部20mと被係合部16bとの係合回避を確実に実現することができる。なお、本発明に係る規制部は、突起部17の形態に限定されるものではない。一例として、ジブ10の基端部(主柱材14a)に凹部が形成されており、当該凹部に揺動部材50の当接部51が一時的に嵌りこむ態様でもよい。
以上、本発明の実施形態に係る起伏部材1について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記の実施形態では、揺動部材50がバックストップ本体20の側面に1つ配置される態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図17は、本発明の第1の変形実施形態に係る起伏部材1Pのブームおよびジブが倒伏する際の、ジブバックストップ12の係合部20mおよびバックストップ受部16近傍の上面図である。図17のように、揺動部材50は、ブーム8の回動における軸方向においてバックストップ本体20を挟んでその両側の位置に一対配置されているものでもよい。この場合、軸方向の両側において揺動部材50がジブ10(主柱材14a)の基端部(突起部17)に当接するため、バックストップ本体20の係合部20mを被係合部16bよりもジブ10の先端部側に安定して移動させることができる。なお、図17のように、一対の揺動部材50に対応して、突起部17も一対配置されることが望ましい。
(2)また、上記の実施形態では、揺動部材50の当接部51が、ジブ本体14の基端部に当接する態様にて説明した。この際、揺動部材50の姿勢を維持するために、当接部51の外周面には、小さな凹凸(制限機構)が形成されていてもよい。当該凹凸は、当接部51の表面粗さを高めるために形成されている。そして、当該凹凸は、起立部材倒伏時に揺動部材50の当接部51がジブ10の基端部に当接した際の揺動部材50の滑りを防止する機能を備えている。この結果、揺動部材50の下端部がジブ10の基端部に当接した際に、ジブ10の基端部上において揺動部材50が前後方向に滑ることが抑止され、揺動部材50の当接位置の変化が制限される。したがって、揺動部材50がバックストップ本体20の係合部20m側を安定して支えながら、揺動部材50の上端部がジブ10の先端側に回動することができる。
また、本発明は、揺動部材50の当接部51に形成された凹凸が制限機構として機能する態様に限定されるものではない。凹凸の代わりに、ゴムなどの弾性部材が揺動部材50の外周面(当接部51)に固定されてもよい。また、当接部51およびジブ10の基端部の少なくとも一方に磁性部材が備えられ、磁気的吸着力によって、揺動部材50の滑りが一時的に抑止される態様でもよい。また、制限機構は、ジブ本体14の主柱材14a側に配置されてもよい。
(3)また、上記実施形態では、ブーム8の先端部8aに取り付けられるバックストップ本体20の基端側のバックストップアウタ20aがアウタで、先端側のバックストップインナ20bがインナに配置される態様にて説明したが、これら両部材はインナとアウタとが逆に構成されていてもよい。また、バックストップ本体20は伸縮しない態様でも良い。
(4)更に、図18は、本発明の第2の変形実施形態に係る起伏部材1Qのブームおよびジブが倒伏する際の、ジブバックストップ12の係合部20mおよびバックストップ受部16近傍の上面図である。本変形実施形態では、先の実施形態に係る突起部17が備えられていない代わりに、バックストップ受部16の基端側部位16aの幅が広く設定されている。基端側部位16aの幅は、基端側部位16aが係合部20mおよび揺動部材50の両方に対向するように大きく設定されている。この場合、揺動部材50の当接部が基端側部位16a(ジブ10の基端部)に当接することで、先の実施形態と同様に、バックストップ本体20の係合部20mを被係合部16bよりもジブ10の先端部側に移動させることができる。すなわち、本発明は、先の実施形態のように、ジブ8が突起部17を備える態様に限定されるものではない。揺動部材50の当接部がバックストップ受部16やジブ10の主柱材14a(いずれもジブ10の基端部)に直接当接する態様でもよい。この場合も、揺動部材50の当接部がジブ10の基端部に当接することで、揺動部材50がバックストップ本体20の係合部20mを被係合部16bよりもジブ10の先端部側に移動させることができる。
更に、図19は、本発明の第3の変形実施形態に係る起伏部材の1Rブームおよびジブが倒伏する際の、ジブバックストップ12の係合部20mおよびバックストップ受部16近傍の上面図である。また、図20は、起伏部材1Rのブームおよびジブが倒伏する際の、ジブバックストップ12の係合部20mおよびバックストップ受部16近傍の側面図である。更に、図21は、起伏部材1Rのジブバックストップ12の係合部20mの正面図である。また、図22は、起伏部材1Rのブームおよびジブが倒伏した際の、ジブバックストップ20の係合部20mおよびバックストップ受部16近傍の側面図である。起伏部材1Rでは、揺動部材50の下端部から幅方向内側に向かって突設されたピン26(突部)が設けられている。図19に示すように、ジブバックストップ12の長手方向において、ピン26はバックストップ受部16の基端側部位16aに対向するように配置されている。ピン26は、本発明の当接部を構成する。この場合、ピン26が基端側部位16a(ジブ10の基端部)に当接することで、先の実施形態と同様に、バックストップ本体20の係合部20mを被係合部16bよりもジブ10の先端部側に移動させることができる。基端側部位16aに当接したピン26は、被係合部16b上を通過しながら、やがて先端側部位16c上に至る。この結果、図22に示すように、係合部20mおよびピン26が先端側部位16c上に配置された状態で、ブームおよびジブの倒伏が可能とされる。
また、図23は、本発明の第4の変形実施形態に係る起伏部材のジブバックストップ12の上面図である。図24は、本発明の第4の変形実施形態に係る起伏部材のジブバックストップ12の先端部の正面図である。本変形実施形態では、先の第1の変形実施形態と同様に、揺動部材50が、ブーム8の回動における軸方向においてバックストップ本体20を挟んでその両側の位置に一対配置されている。そして、一対の揺動部材50の下端部を接続するように、ピン26(当接部)が配置されている。本変形実施形態においても、ジブバックストップ12の長手方向において、ピン26はバックストップ受部16の基端側部位16a(図20参照)(ジブ10の基端部)に対向するように配置されている。そして、ピン26が基端側部位16aに当接することで、先の実施形態と同様に、バックストップ本体20の係合部20mを被係合部16bよりもジブ10の先端部側に移動させることができる。基端側部位16aに当接したピン26は、第3の変形実施形態と同様に、被係合部16b上を通過しながら、やがて先端側部位16c上に至る。この結果、図22と同様に、係合部20mおよびピン26が先端側部位16c上に配置された状態で、ブームおよびジブの倒伏が可能とされる。