JP2011169409A - キャスター付き機器及び回転慣性付加装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】相対変位を好適に抑制できるキャスター付き機器を提供する。
【解決手段】キャスター付き機器1は、機器本体3と、機器本体3を載置面103に対して移動可能に支持するキャスター5と、機器本体3と壁部105とを連結し、第2関節部11Bにおける回転により機器本体3の壁部105に対する移動を許容可能な第2アーム9Bと、第2アーム9Bの回転を増速して伝達する増速装置27と、増速された回転が伝達されることにより回転する回転質量体29とを有する。
【選択図】図1
【解決手段】キャスター付き機器1は、機器本体3と、機器本体3を載置面103に対して移動可能に支持するキャスター5と、機器本体3と壁部105とを連結し、第2関節部11Bにおける回転により機器本体3の壁部105に対する移動を許容可能な第2アーム9Bと、第2アーム9Bの回転を増速して伝達する増速装置27と、増速された回転が伝達されることにより回転する回転質量体29とを有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、キャスター付き機器及び回転慣性付加装置に関する。
支持構造物に対して水平方向に移動可能に免震対象物を支持する免震装置が知られている(例えば特許文献1)。免震装置が設けられることにより、支持構造物の振動が免震対象物へ伝達されることが抑制され、ひいては、免震対象物に大きな加速度が加えられることが抑制される。
特許文献1では、免震対象物と支持構造物とを2本のアームにより連結し、2本のアームの相対回転をベルト機構又は歯車機構により増速して回転質量体に伝達する技術も開示している。この技術では、2本のアームの相対変位が抑制され、ひいては、免震対象物の支持構造物に対する変位が抑制される。
キャスター付き機器は、床面などの載置面に対して移動可能であるので、地震が生じたときは、免震対象物と同様に動作する。すなわち、キャスターの車輪が載置面を転がることにより、キャスター付き機器は、載置面に移動不可能に載置された他の機器やキャスター付き機器が配置された部屋の壁などに対して相対移動する。しかし、そのような視点でキャスター付き機器の相対変位を好適に抑制する技術についての検討は殆どなされていない。
本発明の目的は、相対変位を好適に抑制できるキャスター付き機器及び回転慣性付加装置を提供することにある。
本発明のキャスター付き機器は、機器本体と、前記機器本体を載置面に対して移動可能に支持するキャスターと、前記機器本体と非免震対象物とを連結し、関節部における回転により前記機器本体の前記非免震対象物に対する移動を許容可能なアームと、前記アームの回転を増速して伝達する増速装置と、増速された回転が伝達されることにより回転する回転質量体と、を有する。
好適には、前記増速装置及び前記回転質量体は、前記関節部に設けられている。
好適には、前記アームの回転の加速度が相対的に高いときに、相対的に低いときよりも、前記アームの回転の前記回転質量体への伝達率を低くする伝達率調整部を更に有する。
好適には、前記伝達率調整部は、前記アームの回転が伝達されて回転する第1スライダと、前記第1スライダと摺動可能であるとともに、前記第1スライダとの間の摩擦力により前記第1スライダの回転が伝達されて回転し、その回転が前記回転質量体へ伝達される第2スライダと、を有する。
好適には、前記第1スライダ及び前記第2スライダは、前記機器本体において前記機器本体の水平設計震度よりも小さい振動が生じているときに摺動可能である。
好適には、前記伝達率調整部は、前記アームの回転が伝達されて回転する第1スライダと、前記第1スライダの回転が伝達されて回転し、その回転が前記回転質量体へ伝達される第2スライダと、所定面を転がることにより、前記第1スライダと前記第2スライダとの相対回転を許容し、前記所定面を転がらないことにより、前記第1スライダと前記第2スライダとの相対回転を規制する中継回転体と、を有し、前記所定面及び前記中継回転体の外周面は、当接状態から離間状態への移行に対する抵抗力を発揮可能に構成されている。
好適には、前記所定面は、第1の面ファスナーにより構成され、前記中継回転体の外周面は、前記第1の面ファスナーに着脱可能な第2の面ファスナーにより構成されている。
本発明の回転慣性付加装置は、関節部において相対回転可能に連結された2本のアームと、前記関節部に設けられ、前記2本のアームの相対回転を増速して伝達する伝達装置と、前記関節部に設けられ、増速された相対回転が伝達されることにより回転する回転質量体と、を有する。
本発明によれば、キャスター付き機器などの免震対象物の相対変位を好適に抑制できる。
以下、図面を参照して各種の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態以降において、既に説明された実施形態と同一又は類似する構成については、既に説明された実施形態と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
符号は、同一又は類似する構成のものについて、「第1アーム9A、第2アーム9B」などのように、同一の数字の符号と、互いに異なる大文字のアルファベットの付加符号とが組み合わされたものが使用されることがある。また、この場合において、単に「アーム9」というなど、名称の頭の番号、及び、上記の付加符号を省略することがあるものとする。
<第1の実施形態>
図1(a)及び図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係るキャスター付き機器1を示す模式図である。
図1(a)及び図1(b)は、本発明の第1の実施形態に係るキャスター付き機器1を示す模式図である。
キャスター付き機器1は、例えば、医療用機器、椅子、台車、棚である。図1では医療用機器を模式的に示している。キャスター付き機器1は、機器本体3と、機器本体3を支持するキャスター5と、キャスター付き機器1の変位を抑制する回転慣性付加装置7とを有している。
機器本体3は、キャスター5に支持されるものであり、種々の部材や装置とされてよい。キャスター5は、特に図示しないが、車輪、車輪を軸支するシャフト、シャフトを支持するフォーク、フォークと機器本体3とを固定する取付部などを有している。キャスターは、車輪が鉛直軸回りに回転可能な旋回キャスターであってもよいし、車輪が鉛直軸回りに回転不可能な固定キャスターであってもよい。
機器本体3は、キャスター5により、載置面103に対して載置面103に沿う方向(水平方向)に移動可能に支持される。載置面103は、例えば、支持構造物101の床面である。支持構造物101は、例えば、ビルや家屋等の建築物である。
回転慣性付加装置7は、キャスター付き機器1と支持構造物101とを連結する第1アーム9A及び第2アーム9Bを有している。2本のアーム9は、端部同士が回転軸RA(図2参照)回りに相対回転可能に連結され、その連結部分は第2関節部11Bを構成している。回転軸RAは、例えば、水平方向に延びている。ただし、回転軸RAは、鉛直方向などに延びていてもよい。
2本のアーム9は、キャスター付き機器1又は支持構造物101に対して、回転軸RAと平行な回転軸回りに回転可能に連結される。具体的には、第1アーム9Aの第2関節部11Bとは反対側の端部は、支持構造物101の壁部105に対して回転軸RAに平行な回転軸回りに回転可能に連結され、その連結部分は第1関節部11Aを構成している。また、第2アーム9Bの第2関節部11Bとは反対側の端部は、機器本体3に対して回転軸RAに平行な回転軸回りに回転可能に連結され、その連結部分は第3関節部11Cを構成している。
なお、第1関節部11A及び第3関節部11Cは、回転軸RAに平行な回転軸回りにのみ回転可能であってもよいし、自在継手のように任意の回転軸回りに回転可能であってもよい。
キャスター5の車輪が載置面103を転がることにより、機器本体3が壁部105に対して近接又は離間すると、2本のアーム9は、第2関節部11Bにおける相対回転により、屈曲又は伸長する。すなわち、2本のアーム9は、機器本体3の載置面103に沿う方向の移動を許容する。
図2(a)は、回転慣性付加装置7を回転軸RAに直交する方向に見た図である。図2(b)は、回転慣性付加装置7を回転軸RA方向に見た、一部を透視して示す図である。
回転慣性付加装置7は、第2関節部11Bにおいて、2本のアーム9の相対回転を回転慣性の回転運動に変換する回転装置15と、2本のアーム9の相対回転の回転慣性への伝達率を変化させる伝達率調整部17とを有している。
図3(a)は、第2関節部11Bを回転軸RAに直交する方向に見た、一部を透視して示す図である。図3(b)は、回転装置15を回転軸RA方向に見た透視図である。なお、図3(a)及び図3(b)は、概念的なものであり、歯車の歯数や歯の大きさは精緻なものではない。
2本のアーム9は、これらに挿通されたシャフト19により互いに相対回転可能に連結されている。シャフト19は、2本のアーム9に対して相対回転可能である。シャフト19の両端には、シャフト19のアーム9からの抜けを防止する係止部材21が設けられている。係止部材21は、シャフト19及びアーム9の少なくとも一方と回転軸RA回りに相対回転可能である。シャフト19、アーム9、及び、係止部材21の間には、ボールベアリングや潤滑剤が適宜に配置されてよい。
伝達率調整部17は、例えば、全体として概ね円柱状に形成されている。伝達率調整部17は、第2アーム9Bの回転が伝達される第1スライダ23Aと、第1スライダ23Aの回転が伝達され、その回転を回転装置15に入力する第2スライダ23Bとを有している。
スライダ23は、例えば、金属や樹脂などの適宜な材料により形成され、また、回転軸RAを中心とする円盤状に形成されている。第1スライダ23Aは、第2アーム9Bに固定されており、第2アーム9Bと一体的に回転軸RA回りに回転する。2つのスライダ23の対向面は、互いに摺動可能に構成されている。第1スライダ23Aの回転は、摩擦力を介して第2スライダ23Bに伝達される。
2つのスライダ間において生じる最大摩擦力若しくは運動摩擦力は、2つのスライダ23の摩擦面における垂直荷重と、摩擦面における摩擦係数とにより決定される。
摩擦面における垂直荷重は、例えば、係止部材21がアーム9を回転軸RA方向において係止する係止力(圧縮力)により決定される。なお、係止部材21は、シャフト19に対する軸方向の位置調整などにより、2つのスライダ23の摩擦面における垂直荷重を調整可能に構成されていてもよい。
2つのスライダ23の間の摩擦係数は、例えば、比較的低く設定される。例えば、静摩擦係数は、0.3以下であり、好ましくは、0.2程度である。2つのスライダ23の間には、摩擦係数を適宜な値とするために、潤滑剤などが適宜に配置されてもよい。また、2つのスライダ23の間に塵などが侵入しないように、適宜なカバー部材により、2つのスライダ23は覆われてよい。
第1スライダ23Aの回転の加速度が小さいときには、第1スライダ23Aと第2スライダ23Bとは摺動せず、一体的に回転する。すなわち、第1スライダ23Aの回転は、静止摩擦力により第2スライダ23Bに伝達される。このとき、第1スライダ23Aから第2スライダ23Bへの回転の伝達率(=第2スライダ23Bの回転数/第1スライダ23Aの回転数)は1である。
一方、第1スライダ23Aの回転の加速度が大きいときには、第1スライダ23Aと第2スライダ23Bとは摺動し、第2スライダ23Bは、第1スライダ23Aよりも低速で回転する。すなわち、第1スライダ23Aの回転は、動摩擦力により第2スライダ23Bに伝達される。このとき、第1スライダ23Aから第2スライダ23Bへの回転の伝達率は1未満である。なお、動摩擦力は速度や加速度によらず概ね一定であるから、第1スライダ23Aの速度が大きくなるほど、伝達率は低下する。
回転装置15は、第2スライダ23Bに固定され、第2スライダ23Bとともに回転軸RA回りに回転可能な回転筐体25と、回転筐体25の回転を増速する増速装置27と、増速装置27により増速された回転が伝達される回転質量体29とを有している。
回転筐体25は、例えば、回転軸RAを軸とする概ね筒状に形成されている。回転筐体25は、2本のアーム9に対して回転軸RA回りに回転可能に軸支されている。例えば、回転装置15は、シャフト19が回転筐体25に回転可能に挿通されることにより、回転軸RA回りに回転可能となっている。また、回転筐体25は、図2(a)に示すように、第1アーム9Aに固定された下板31にベアリング39を介して支持されており、2つのアーム9の間の回転軸RA方向の圧縮荷重を支持可能である。
増速装置27は、例えば、歯車機構により構成され、回転筐体25に収容されている。歯車機構は、下板31と、下板31に立設された柱部材33により支持された上板35との間に配置されている。
増速装置27は、回転筐体25の外周面部の内側面に形成された入力ギヤ部25a(図3(b))と、入力ギヤ部25aに噛合する第1ギヤ41と、第1ギヤ41と噛合する小径ギヤ43a及び小径ギヤ43aよりも大径の大径ギヤ43bを有する第2ギヤ43と、第2ギヤ43の大径ギヤ43bと噛合する第3ギヤ45とを有している。
第1ギヤ41及び第2ギヤ43は、それぞれ、下板31及び上板35に支持された軸部材を介して2本のアーム9に対して回転軸RAに平行な回転軸回りに回転可能に支持されている。第3ギヤ45は、シャフト19に固定されている。シャフト19には、回転質量体29が固定されている。従って、回転筐体25の回転は、入力ギヤ部25a、第1ギヤ41及び第2ギヤ43を介して第3ギヤ45に伝達され、回転質量体29は第3ギヤ45とともに一体的に回転する。
第1ギヤ41の歯数は、入力ギヤ部25aの歯数よりも少なく、第1ギヤ41は回転筐体25よりも高速で回転する。第2ギヤ43の小径ギヤ43aの歯数は、第1ギヤ41の歯数よりも少なく、第2ギヤ43は第1ギヤ41よりも高速で回転する。第3ギヤ45の歯数は、第2ギヤの大径ギヤ43bの歯数よりも少なく、第3ギヤ45は第2ギヤ43よりも高速で回転する。従って、増速装置27により回転筐体25の回転が増速されて回転質量体29に伝達される。
回転質量体29は、回転筐体25に収容されている。具体的には、回転質量体29は、回転筐体25の上方側の端面と、上板35との間に配置されている。回転質量体29は、シャフト19に固定されることにより、2本のアーム9に対して軸支されている。回転質量体29は、例えば、増速装置27に含まれるギヤよりも回転慣性が大きくなるように、金属等の密度の高い材質により形成されるとともに、外径が大きく設定されている。
伝達率調整部17及び回転装置15の動作を説明する。
上述のように、機器本体3が水平方向に移動すると、2本のアーム9は回転軸RA回りに相対回転する。これにより、第1スライダ23Aは第2アーム9Bとともに回転する。なお、第1スライダ23Aの回転の加速度は、機器本体3の支持構造物101に対する振動の加速度に比例する。
第1スライダ23Aの回転の加速度が小さい場合、第1スライダ23Aと第2スライダ23Bとは相対回転せず、第1スライダ23Aの回転は、全て第2スライダ23Bに伝達される。そして、第2スライダ23Bの回転は、増速装置27を介して回転質量体29に伝達される。その結果、振動の一部は回転質量体29の運動エネルギーに変換され、機器本体3の支持構造物101に対する変位が抑制される。
回転の伝達に際しては、増速装置27により増速がなされることから、機器本体3の変位を効率的に回転質量体29の運動エネルギーに変換することができる。その結果、比較的小型の回転質量体29により十分な変位抑制効果を得ることが可能となる。
一方、第1スライダ23Aの回転の加速度が大きい場合、第1スライダ23Aと第2スライダ23Bとは相対回転する。すなわち、第1スライダ23Aと第2スライダ23Bとが一体的に回転する場合に比較して、機器本体3の支持構造物101に対する変位抑制効果が低減される。その結果、機器本体3に大きな加速度が加えられることが抑制される。また、第1スライダ23Aの回転エネルギーの少なくとも一部は、摩擦抵抗により消費される。
このように、回転慣性付加装置7は、加速度に応じて、相対変位抑制効果が期待される状態と、加速度の抑制効果が期待される状態とを切り換えつつ、好適に機器本体3の変位を抑制する。
振動終了後、機器本体3は、支持構造物101に対して、振動前の位置(原点)からずれた位置において停止し得る。すなわち、残留変位が生じ得る。そこで、機器本体3に力を加えて、機器本体3を原点に復帰させる。
このとき、回転慣性付加装置7は、機器本体3が支持構造物101に対して振動しているときと同様に動作する。ただし、機器本体3には、静的荷重が加えられるから、回転慣性付加装置7は、加速度が低い振動が生じているときと同様に動作する。
すなわち、2つのスライダ23は相対回転せず、機器本体3の支持構造物101に対する移動は、回転質量体29の回転に変換される。低い加速度で回転されるときの回転質量体29の生じる抵抗は小さいことから、小さい荷重で機器本体3は原点に復帰される。
図4は、上記の回転慣性付加装置7の導入例を示している。
支持構造物101においては、例えば、患者が横臥するベッドを機器本体3とするキャスター付き機器51が配置され、その周囲に、上述のキャスター付き機器1、及び、これとは別の医療用機器としてのキャスター付き機器53が配置されている。
キャスター付き機器51は、例えば、不図示の回転慣性付加装置7により支持構造物101の壁部105と連結されている。なお、回転慣性付加装置7は、ベッド基礎とベッド上部との間において複数個設置されるなどしてもよい。
キャスター付き機器53は、例えば、キャスター付き機器1よりも背が高い機器本体3を有している。そして、キャスター付き機器53は、床(載置面103)に連結される回転慣性付加装置7と、天井107に連結される回転慣性付加装置7とを有している。このような回転慣性付加装置7の配置によっても、上述した変位抑制等の効果が得られる。
図4において例示したように、回転慣性付加装置7は、医療現場において好適に利用可能である。特に、人工透析を行う医療現場など、患者が長時間に亘って医療用機器に隣接してベッドに横臥する必要があり、患者が地震に遭遇することに対する強い恐怖心を抱く医療現場において有効である。また、人工透析用の医療機器など、チューブが接続されている医療機器においては、変位が大きくなることによるチューブの破損が抑制される。
<第2の実施形態>
図5(a)は、第2の実施形態に係る回転慣性付加装置の伝達率調整部217を示す断面図である。図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における断面図である。
図5(a)は、第2の実施形態に係る回転慣性付加装置の伝達率調整部217を示す断面図である。図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における断面図である。
伝達率調整部217は、第1の実施形態と同様に、第2アーム9B(図5では不図示)に固定され、第2アーム9Bとともに回転軸RA回りに回転する第1スライダ223と、回転筐体25(図5では不図示)に固定され、回転筐体25とともに回転軸RA回りに回転する第2スライダ224とを有している。
第1スライダ223及び第2スライダ224は、第1の実施形態と同様に、回転の加速度が大きいときには互いに相対回転し、回転の加速度が小さいときには一体的に回転するように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
第1スライダ223は、第2スライダ224側に突出する突部223aを有している。突部223aは、回転軸RAと同軸であり、また、突部223aの平面形状(回転軸RA方向に見た形状)は、円形である。
一方、第2スライダ224は、突部223aが収容される凹部224aを有している。凹部224a内においては、突部223aの周囲において第1スライダ223側へ突出する軸部224bと、軸部224bに軸支された複数の車輪251が設けられている。複数の車輪251の外周面は、突部223aの外周面223bに当接している。
従って、第1スライダ223と、第2スライダ224とは、複数の車輪251が突部223aの外周面223bを転がることにより、回転軸RA回りに相対回転可能である。逆に、複数の車輪251が突部223aの外周面223bを転がらないときは、第1スライダ223と、第2スライダ224との相対回転は規制される。
車輪251の外周面は、第1の面ファスナー253により構成されている。突部223aの外周面223bは、第2の面ファスナー255により構成されている。第1の面ファスナー253及び第2の面ファスナー255は、互いに着脱可能なものである。
特に図示しないが、第1の面ファスナー253及び第2の面ファスナー255の一方は、複数のフックを有し、他方は、複数のループを有している。複数のフックと複数のループとが係合することにより、第1の面ファスナー253及び第2の面ファスナー255は互いに固定される。そして、第1の面ファスナー253及び第2の面ファスナー255を引き剥がすときには、複数のフックと複数のループとの係合解除に複数のフックの変形を要し、その結果、剥離抵抗(面ファスナーの引き剥がしに対する抵抗力)が生じる。
フックは、例えば、樹脂により形成されている。ループは、例えば、繊維により形成されている。フック及びループの径は、一般的な面ファスナーと同程度でもよいし、それよりも大きくてもよい。
第1の面ファスナー253及び第2の面ファスナー255は、例えば、シート状(テープ状)部材であり、接着剤、接着剤が塗布された布、ネジ、又は、係合部材などの適宜な固定手段により、車輪251の外周面や突部223aの外周面に貼り付けられている。
車輪251が突部223aの外周面223bを転がると、第1の面ファスナー253と第2の面ファスナー255との引き剥がしが生じ、剥離抵抗が生じる。その結果、車輪251の転がりに対する抵抗力(剥離摩擦抵抗)が生じる。
以上の伝達率調整部217の構成によれば、第1スライダ223に伝達される回転の加速度が小さいときには、第1の面ファスナー253及び第2の面ファスナー255の剥離摩擦抵抗により、複数の車輪251の突部223aの外周面223bに対する転がりが規制される。その結果、第1スライダ223及び第2スライダ224は、相対回転が規制され、一体的に回転する。
一方、第1スライダ223に伝達される回転の加速度が大きいときには、複数の車輪251は突部223aの外周面223bを転がる。その結果、第1スライダ223及び第2スライダ224は相対回転する。すなわち、第1スライダ223から第2スライダ224への回転の伝達率は低下する。なお、第1スライダ223及び第2スライダ224が相対回転しているときにも、剥離摩擦抵抗により、第1スライダ223から第2スライダ224へ回転は伝達され、第2スライダ224は回転する。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に好適に変位を抑制することができる。さらに、第2の実施形態は、剥離摩擦抵抗を利用することから、第1の実施形態のように通常の摩擦抵抗を利用する場合に比較して、より好適に変位を抑制することができる。具体的には、以下のとおりである。
図6は、伝達率調整部17及び217の効果を説明する図である。横軸は振動の加速度、縦軸は第1スライダ(23A,223)と第2スライダ(23B、224)との間で伝達される力を示している。実線L1は、第2の実施形態における力の変化を示している。実線L2は、第1の実施形態における力の変化を示している。
第1の実施形態のように、通常の摩擦抵抗により力の伝達を行った場合、加速度が小さいときは、力の伝達は静止摩擦力によりなされる。この間、振動の加速度が上昇するにつれ、伝達される力は徐々に上昇する。加速度が大きく、荷重が最大摩擦力を超えると(加速度a1)、力の伝達は動摩擦力により行われる。そして、伝達される力は最大摩擦力よりも低下するとともに、加速度の変化によらず、概ね一定の値となる。
従って、通常の摩擦抵抗により力の伝達を行った場合、静止摩擦力から動摩擦力に切り換えられるときに、機器本体3に衝撃が加えられるおそれがある。また、以下に述べるように、エネルギーの消費効率が低い。第1スライダ23Aと第2スライダ23Bとの間で伝達される力の最大値は、機器本体3の水平設計震度(後述)に応じて設定される。そして、伝達率調整部17は、最大摩擦力が、その最大値を超えないように構成される。従って、加速度a1以上の加速度のときに、摩擦力により消費されるエネルギーは、上記の最大値に対して小さい動摩擦力によるものであり、エネルギーの消費効率が低い。さらに、通常の摩擦抵抗は、摩擦面における垂直荷重によって大きさが変動することから、設計を複雑化させる。
一方、第2の実施形態のように、剥離摩擦抵抗により力の伝達を行った場合は、伝達される力は、振動の加速度が上昇するにつれ大きくなる。そして、加速度が大きいときは、伝達される力は、概ね一定の値になる。従って、上述した通常の摩擦抵抗を利用する場合に比較して、滑らかに変位抑制が期待される状態と加速度抑制が期待される状態との遷移が行われ、且つ、加速度抑制が期待される状態への遷移後の、剥離摩擦抵抗によるエネルギーの消費効率もよい。また、剥離摩擦抵抗は、剥離面における垂直荷重の影響を殆ど受けないことから、設計が容易化される。
なお、第2の実施形態において、突部223aの外周面223bは本発明の所定面の一例であり、車輪251は本発明の中継回転体の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
本発明の回転慣性付加装置は、キャスター付き機器の変位抑制に好適に利用可能であるが、一般的な免震対象物に対しても好適に利用可能である。例えば、回転慣性付加装置は、支持構造物(非免震対象物)に対して、転がり支承やすべり支承などの免震を目的とした支承により支持された免震対象物の変位を抑制することに利用されてもよい。免震対象物は、基盤(非免震対象物、支持構造物)に支持された建築物であってもよいし、建築物(非免震対象物、支持構造物)に支持された家具であってもよい。
回転装置(増速装置及び回転質量体)や伝達率調整部の構成は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、ベルト機構により増速装置が構成されてもよいし、アーム全体に亘る大きさの増速装置が設けられてもよい。
回転装置や伝達率調整部が関節部に設けられる場合、その関節部は、アーム間の関節部(実施形態では第2関節部11B)に限定されない。例えば、実施形態において、回転装置等は、第1関節部11Aに設けられ、第1アーム9Aの支持構造物101に対する回転が入力されてもよいし、第3関節部11Cに設けられ、第2アーム9Bの機器本体3に対する回転が入力されてもよい。また、回転装置は、2以上の関節部それぞれにおいて設けられてもよい。
なお、本願において、回転装置等が関節部に設けられているとは、回転装置等がアームの中央(2つの関節部の中央)よりも、一方の関節部側に設けられており、一方の関節部側からアームの中央を超えて他方の関節部側へ跨って設けられていないことをいうものとする。
アームは、2本に限定されない。例えば、1本のアームにより、免震対象物と非免震対象物とを連結してもよい。この場合、アームは、揺動することにより免震対象物の移動を許容する。また、3本以上のアームが連結されて、免震対象物と非免震対象物とを連結してもよい。
当接状態から離間状態への移行に対する抵抗力を発揮する回転体の外周面及び所定面は、面ファスナーにより構成されるものに限定されない。
例えば、図7(a)に示すように、回転体301の外周面に粘着性が付与され、所定面303は適宜な部材の凹凸のない表面により構成されてもよい。この場合、粘着により抵抗力が生じる。なお、粘着性は、外周面に接着剤305が塗布されたり、粘着性の材料によりタイヤが形成されることにより付与される。
また、例えば、図7(b)に示すように、回転体311の外周面に複数の吸盤315が設けられ、所定面313は適宜な部材の凹凸のない表面により構成されてもよい。この場合、吸盤315の所定面313に対する吸着により抵抗力が生じる。
また、例えば、図7(c)に示すように、回転体321の外周面及び所定面323の一方に複数の突部325が設けられ、他方に突部325が嵌合する凹部327が設けられてもよい。この場合、突部325が凹部327から引き抜かれるときに、突部325と凹部327との隙間が一時的に真空となり、抵抗力が生じる。
面ファスナーは、互いに係合可能な複数の係合部(フック)及び被係合部(ループ)が設けられることにより着脱可能であればよく、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、面ファスナーは、マッシュルーム型の係合部が用いられるものであってもよい。また、第1の面ファスナー及び第2の面ファスナーの少なくとも一方は、係合部及び被係合部の双方が設けられるものであってもよい。
また、所定面を転がることにより、第1スライダと第2スライダとの相対回転を許容する中継回転体は、車輪に限定されず、球体であってもよい。例えば、第2の実施形態において、突部223aと凹部224aの間に、軸支されていない球体が配置されてもよい。
伝達率調整部における摩擦抵抗若しくは剥離摩擦抵抗の大きさは、適宜に設定されてよい。例えば、以下のように設定されてよい。一般に、免震対象物(ビル、住宅、PCラック、医療機器など)は、適宜に水平設計震度(設計水平震度)が設定され、その水平設計震度に耐えうる強度となるように設計される。水平設計震度は、免震対象物の自重(重力加速度)に対する水平荷重(水平方向の加速度)の比で表わされ、例えば、自重相当の水平荷重は1で表わされる。水平設計震度は、免震対象物の種類、免震対象物が設置される地域などの種々の事情を考慮して設定され、一般には、0.2〜0.4である。
ここで、免震対象物の加速度を抑制する効果が期待される状態は、少なくとも、免震対象物において水平設計震度以上の振動が生じているときには生じていることが好ましい。そこで、摩擦抵抗若しくは剥離摩擦抵抗は、免震対象物において水平設計震度よりも小さい振動が生じているときに、第1スライダ及び第2スライダが相対回転するように設定されてよい。
第1の実施形態のように摩擦抵抗を利用する場合において、2つのスライダは、互いに同軸状に配置され、回転軸方向において対向する面を摩擦面とするものに限定されない。例えば、2つのスライダは、シャフト、及び、当該シャフトが挿通されるギアであってもよい。
1…キャスター付き機器、3…機器本体、5…キャスター、9B…第2アーム、11B…第2関節部、27…増速装置、29…回転質量体、103…載置面、105…壁部(非免震対象物)。
Claims (8)
- 機器本体と、
前記機器本体を載置面に対して移動可能に支持するキャスターと、
前記機器本体と非免震対象物とを連結し、関節部における回転により前記機器本体の前記非免震対象物に対する移動を許容可能なアームと、
前記アームの回転を増速して伝達する増速装置と、
増速された回転が伝達されることにより回転する回転質量体と、
を有するキャスター付き機器。 - 前記増速装置及び前記回転質量体は、前記関節部に設けられている
請求項1に記載のキャスター付き機器。 - 前記アームの回転の加速度が相対的に高いときに、相対的に低いときよりも、前記アームの回転の前記回転質量体への伝達率を低くする伝達率調整部を更に有する
請求項1又は2に記載のキャスター付き機器。 - 前記伝達率調整部は、
前記アームの回転が伝達されて回転する第1スライダと、
前記第1スライダと摺動可能であるとともに、前記第1スライダとの間の摩擦力により前記第1スライダの回転が伝達されて回転し、その回転が前記回転質量体へ伝達される第2スライダと、
を有する請求項3に記載のキャスター付き機器。 - 前記第1スライダ及び前記第2スライダは、前記機器本体において前記機器本体の水平設計震度よりも小さい振動が生じているときに摺動可能である
請求項4に記載のキャスター付き機器。 - 前記伝達率調整部は、
前記アームの回転が伝達されて回転する第1スライダと、
前記第1スライダの回転が伝達されて回転し、その回転が前記回転質量体へ伝達される第2スライダと、
所定面を転がることにより、前記第1スライダと前記第2スライダとの相対回転を許容し、前記所定面を転がらないことにより、前記第1スライダと前記第2スライダとの相対回転を規制する中継回転体と、
を有し、
前記所定面及び前記中継回転体の外周面は、当接状態から離間状態への移行に対する抵抗力を発揮可能に構成されている
請求項3に記載のキャスター付き機器。 - 前記所定面は、第1の面ファスナーにより構成され、
前記中継回転体の外周面は、前記第1の面ファスナーに着脱可能な第2の面ファスナーにより構成されている
請求項6に記載のキャスター付き機器。 - 関節部において相対回転可能に連結された2本のアームと、
前記関節部に設けられ、前記2本のアームの相対回転を増速して伝達する伝達装置と、
前記関節部に設けられ、増速された相対回転が伝達されることにより回転する回転質量体と、
を有する回転慣性付加装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010034030A JP2011169409A (ja) | 2010-02-18 | 2010-02-18 | キャスター付き機器及び回転慣性付加装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010034030A JP2011169409A (ja) | 2010-02-18 | 2010-02-18 | キャスター付き機器及び回転慣性付加装置 |
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JP2011169409A true JP2011169409A (ja) | 2011-09-01 |
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ID=44683742
Family Applications (1)
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JP2010034030A Pending JP2011169409A (ja) | 2010-02-18 | 2010-02-18 | キャスター付き機器及び回転慣性付加装置 |
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JP (1) | JP2011169409A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016141181A (ja) * | 2015-01-30 | 2016-08-08 | 国立大学法人埼玉大学 | キャスター付き機器及びキャスター |
-
2010
- 2010-02-18 JP JP2010034030A patent/JP2011169409A/ja active Pending
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