JP2016140988A - 断熱フィルム、断熱ガラスおよび窓 - Google Patents

断熱フィルム、断熱ガラスおよび窓 Download PDF

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Abstract

【課題】銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる断熱フィルム、断熱ガラスおよび窓の提供。【解決手段】支持体と、支持体の一方の面上に配置され、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層とを有する断熱フィルムであって、断熱フィルムの最表面の水接触角が90°以上である、断熱フィルム。【選択図】図2

Description

本発明は、断熱フィルム、断熱ガラスおよび窓に関する。より詳しくは、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる断熱フィルム、この断熱フィルムを用いた断熱ガラスおよびこの断熱フィルムを用いた窓に関する。
近年、二酸化炭素削減のための省エネルギー施策の一つとして環境負荷の少ない商品、いわゆるエコな商品が求められており、自動車や建物等の窓に対する日射調整フィルムや断熱フィルムが注目されている。断熱フィルムとは窓などに貼ることで屋内側と屋外側の熱の行き来を遅くさせるフィルムのことであり、これを使用することにより冷暖房の使用量が減り、節電効果が期待できる。断熱性は、熱貫流率で定義される。国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(いわゆるグリーン購入法)における窓用日射調整フィルム調達基準では、断熱性については、JIS(Japanese Industrial Standards) A 5759「建築窓ガラス用フィルム」による計測方法で、熱貫流率5.9W/(m2・K)未満であることが求められており、この数字が小さいほど断熱性が高いことになる。JIS A 5759によれば、熱貫流率は波長5μm〜50μmの遠赤外線の反射スペクトルから求めることができる。すなわち、熱貫流率を下げるには波長5μm〜50μmの遠赤外線の反射率を上げることが好ましい。
断熱フィルムとして、断熱フィルムとしてスパッタ法などの蒸着により形成した金属薄膜と高屈折率膜の積層体を用い、表面の物性を改良する観点から表面層を設けた構成が知られている。
例えば、特許文献1には、熱線反射フィルムの少なくとも片面の最表層に保護層を形成した積層熱線反射フィルムであって、保護層と水との接触角が90°以上であり、保護層を構成する樹脂のガラス転移温度が100℃以上でありかつ透明である積層熱線反射フィルムが開示されている。特許文献1の[0005]段落には「本発明の積層熱線反射フィルムは、(イ)基材フィルムの少なくとも片面に、(ロ)金属層、(ハ)金属酸化物層及び(ニ)保護層を設けた積層フィルムである」と記載されている。
特許文献2には、透明なガラス基材の少なくとも片面にアルミ粉末及び紫外線吸収剤を含む樹脂層からなる熱線反射性層を設け、ガラス基材の片面に光触媒粒子とシリコーン又は無定形シリカと撥水性フッ素樹脂とを含有する実質的に透明な表面層を積層し、表面層の表面は水との接触角が90°以上である水滴付着防止性及び熱線遮断性を有するガラス板が開示されている。
特許文献3には、透明基材フィルムの一方の面に、少なくとも赤外線遮蔽層を設けたフィルムにおいて、上記赤外線遮蔽層が、(A)電離放射線硬化型樹脂と、(B)赤外線吸収剤と、電離放射線硬化型樹脂100質量部当たり、(C)電離放射線硬化型シリコーン樹脂0.1〜50質量部とを含む塗膜の硬化物からなる防汚性赤外線遮蔽フィルムが開示されている。
また、断熱フィルムの材料に繊維状金属粒子を用い、塗布方法により製造する方法が知られている。例えば、特許文献4には、透明フィルム、およびその表面に設けられた遠赤外線反射層を含む熱線遮蔽フィルムであって、遠赤外線反射層が、繊維状金属粒子を含む熱線遮蔽フィルムが記載されている。特許文献4によれば、熱線遮蔽フィルムの遠赤外線反射層が繊維状金属粒子を含んでいるので、屋内から放射される暖房等の熱線を反射して逃がさず、外気の熱を屋内に取り込まない断熱性に優れる等と記載されている。
特開平10−286900号公報 特開2002−127310号公報 特開2000−211063号公報 特開2012−252172号公報
窓ガラスの内側に貼付されて使用される断熱フィルムは、室内からの遠赤外線を反射して熱が窓ガラスを通して逃げることを防止する。
本発明者らが断熱フィルムを湿熱環境下で経時させる(例えば冬期に温かい室内で使用する)ことを検討したところ、特許文献4などに記載の銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、断熱フィルム表面に結露が発生するなどの問題が生じ、水が遠赤外線の良好な吸収体となり、熱伝導により熱を逃がしてしまうため、断熱フィルムの性能を発揮できなくなることがわかった。いかなる理論に拘泥するものでもないが、銀を主成分とする繊維状金属粒子とバインダーとを有する繊維状金属粒子含有層を用いた遠赤外線反射層の場合は、湿熱経時後の断熱性変化が生じやすい。銀が金属酸化物でバリアされておらず、比表面積が大きく、端面以外の膜のどこからでも腐食開始されるために銀が腐食されやすい点と、銀を主成分とする繊維状金属粒子が切断され長さが変わると遠赤外線反射性能の劣化に直結する点などに起因すると考えられる。特許文献4はフィルム表面が結露することの課題を見いだせていないため、結露による断熱効率の顕著な低下が発生するものであった。また、特許文献4の構成ではフィルム表面に長時間水滴が滞留することで、繊維状金属粒子含有層の経時劣化も発生してしまうと予想される。なお、特許文献4では結露から反射層を保護するため2重ガラス窓の中空内部に断熱フィルムを配置する構成をとっており、断熱フィルム上に直接、結露防止層を配置することの記載はない。
これに対し、特許文献1〜3では、赤外線反射層において、銀を主成分とする繊維状金属粒子を使用することの記載はない。また、特許文献1〜3の熱線遮蔽フィルムや断熱ガラスでは、湿熱環境下で経時させた場合の断熱性変化はあまり大きくなかった。そのため、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に湿熱経時後の断熱性変化が大きくなってしまうという課題は、銀を主成分とする繊維状金属粒子を使用していない特許文献1〜3ではあまり問題とならなかった新規課題であった。
したがって、特許文献1〜4に記載の方法を含め、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる断熱フィルムについては知られていないのが実情であった。
本発明が解決しようとする課題は、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる断熱フィルムを提供することである。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、断熱フィルムの最表面の水接触角が90°以上であることで、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる断熱フィルムを提供できることを見出した。
即ち、本発明は、以下の具体的手段により達成できる。
[1] 支持体と、
支持体の一方の面上に配置され、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層とを有する断熱フィルムであって、
断熱フィルムの最表面の水接触角が90°以上である、断熱フィルム。
[2] [1]に記載の断熱フィルムは、断熱フィルムの水接触角が90°以上である最表面が、支持体よりも繊維状金属粒子含有層に近い側の最表面であることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層の支持体とは反対の面上に、さらに水接触角が90°以上である表面層を含むことが好ましい。
[4] [3]に記載の断熱フィルムは、表面層の主成分が、フッ素を含有する材料またはケイ素を含有する材料であることが好ましい。
[5] [3]または[4]に記載の断熱フィルムは、表面層の膜厚が、1μm以下であることが好ましい。
[6] [3]〜[5]のいずれか一つに記載の断熱フィルムは、表面層が、単分子膜であることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一つに記載の断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分が、ケイ素を含有する材料であることが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一つに記載の断熱フィルムは、支持体の繊維状金属粒子含有層が配置された面とは反対の面に、さらに近赤外線遮蔽層を含むことが好ましい。
[9] [1]〜[8]のいずれか一つに記載の断熱フィルムは、断熱フィルムの最表面の水接触角が110°以上であることが好ましい。
[10] [1]〜[9]のいずれか一つに記載の断熱フィルムは、支持体が、透明フィルムであることが好ましい。
[11] [1]〜[10]のいずれか一つに記載の断熱フィルムは、繊維状金属粒子の平均長軸長が5〜50μmであることが好ましい。
[12] [1]〜[11]のいずれか一つに記載の断熱フィルムは、窓の内側に配置され、
繊維状金属粒子含有層が、支持体の窓側の面とは反対側の面上に配置されることが好ましい。
[13] [1]〜[12]のいずれか一つに記載の断熱フィルムと、ガラスとを積層した断熱ガラス。
[14] 窓用透明支持体と、窓用透明支持体に貼り合わせた[1]〜[12]のいずれか一つに記載の断熱フィルムを含む、窓。
本発明によれば、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる断熱フィルムを提供することができる。
図1は、本発明の断熱フィルムの一例の断面を示す概略図である。 図2は、本発明の断熱フィルムの他の一例の断面を示す概略図である。 図3は、本発明の断熱フィルムの他の一例の断面を示す概略図である。 図4は、本発明の断熱フィルムの他の一例の断面を示す概略図である。 図5は、本発明の断熱ガラスの一例の断面を示す概略図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中、組成物の主成分とは、組成物の全量に対して50質量%以上含まれる成分のことを言う。例えば、バインダーの主成分とは、バインダーの全量に対して50質量%以上含まれる成分のことを意味する。表面層の主成分とは、表面層の全量に対して50質量%以上含まれる成分のことを意味する。
[断熱フィルム]
本発明の断熱フィルムは、支持体と、支持体の一方の面上に配置され、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層とを有する断熱フィルムであって、断熱フィルムの最表面の水接触角が90°以上である。
このような構成により、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる断熱フィルムを提供できる。ここで、断熱フィルムの表面に水滴が付着すると、水滴が遠赤外線を吸収し、断熱性が顕著に損なわれる。いかなる理論に拘泥するものでもないが、断熱フィルムの表面を疎水性にすることによって、水分を素早く凝集落下することが必要であると考えられる。本発明によれば、断熱フィルムの最表面の水の接触角を90°以上の疎水性とすることにより、水蒸気による結露自体を抑制するか、あるいは、結露した水滴を自重で落としやすくして、断熱効率を維持するとともに、水滴の長期滞留による繊維状金属粒子含有層の劣化を防止することができると考えられる。また、水蒸気による結露自体を抑制するか、あるいは、結露した水滴を自重で落としやすくして、水滴を通して侵入する硫黄成分によって銀が腐食される時間を短くして、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できると考えられる。本発明の断熱フィルムに用いている遠赤外線反射を担う銀を主成分とする繊維状金属粒子は、水滴がフィルム表面に長期に留まることで、空気中から溶け込んだ硫黄成分で硫化してしまいやすく、断線や導電性低下による断熱性能の劣化が、Agスパッタ膜等よりも発生しやすいため、断熱フィルムの最表面の水接触角が90°以上であることによる湿熱経時後の断熱性変化の抑制効果が極めて高い。
本発明の断熱フィルムの好ましい態様は、断熱フィルム表面が疎水性であるため、埃や油汚れ等が付着した場合でも、水拭きにより簡単に除去できる効果を有する。
また、本発明の断熱フィルムの好ましい態様の一例である、さらに近赤外線遮蔽層を含む遮熱/断熱の両機能を有する断熱フィルムでは、太陽光からの熱線が遮蔽され、結露しやすい状況になるため、さらに湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる効果が高い。
本発明の断熱フィルムの好ましい態様では、真空成膜法で形成された積層導電層よりも製造性に優れる。
以下、本発明の断熱フィルムの好ましい態様を説明する。
<特性>
(最表面の水接触角)
本発明の断熱フィルムは、断熱フィルムの最表面の水接触角が90°以上である。断熱フィルムの最表面の水接触角は、100°以上であることが湿熱経時後の断熱性変化を抑制する観点から好ましく、105°以上であることがより好ましく、110°以上であることが特に好ましい。
特に断熱フィルムの最表面の水接触角が110°以上であると、水蒸気による結露自体を抑制するか、あるいは、結露した水滴を自重で落としやすくことで、繊維状金属含有層への水分の浸透を抑制して湿熱経時後の断熱性変化を抑制できるようになる。さらに、水接触角が大きい材料は吸水率や水蒸気透過率が低く、繊維状金属粒子含有層への水分の侵入を抑制することで、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる。
断熱フィルムの最表面の水接触角を制御する方法としては特に制限はないが、繊維状金属粒子含有層が最表面である場合は、繊維状金属粒子含有層の水接触角が90°以上となるバインダーを用いて繊維状金属粒子含有層を形成する方法や、繊維状金属粒子含有層に添加剤を添加する方法を挙げることができる。表面層が最表面である場合は、水接触角が大きい表面を形成できる材料を表面層の主成分として用いる方法を挙げることができる。耐擦性の観点からは、本発明の断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層の支持体とは反対の面上に、さらに水接触角が90°以上である表面層を含むことが好ましい。
(断熱性の湿熱経時後変化率)
本発明の断熱フィルムは、断熱性(後述の熱貫流率、U値)の湿熱経時後変化率が小さい。本発明の断熱フィルムは、後述の実施例に記載の方法で求められる湿熱経時後変化率が、10%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、7%以下であることが特に好ましく、5%以下であることがより特に好ましく、4%以下であることがさらにより特に好ましい。
(断熱性)
本発明の断熱フィルムは、断熱性(熱貫流率、U値)の初期値が優れることが好ましい。本発明の断熱フィルムは、断熱性(U値)の初期値が5.5W/m2・K以下であることが好ましく、5.2W/m2・K以下であることがより好ましく、4.9W/m2・K以下であることが特に好ましい。
本発明の断熱フィルムの好ましい態様では、さらに電波透過性にも優れることが、携帯電話等の発する有用電波の透過性を高める観点から好ましい。電波透過性の観点では表面抵抗を高くすることが好ましい。一般に繊維状金属粒子含有層は、スパッタ金属積層体よりも表面抵抗が高く、好ましい。繊維状金属粒子含有層の表面抵抗を高くすることで、電波透過性はより良好となる。表面抵抗が1000Ω/□以上であることが、電波透過性を高める観点から好ましく、10000Ω/□以上がより好ましい。
<構成>
本発明の断熱フィルムの構成について、説明する。
図1〜図4に本発明の断熱フィルムの一例の断面を示す概略図を示した。図5に本発明の断熱フィルムを含む、本発明の断熱ガラスの一例の断面を示す概略図を示した。
図1に示した本発明の断熱フィルムは、支持体10と、繊維状金属粒子含有層20とを含む。図2に示した本発明の断熱フィルムは、支持体10と、繊維状金属粒子含有層20と、表面層21とをこの順で含む。ここで、本発明の断熱フィルムは、断熱フィルムの水接触角が90°以上である最表面が、支持体よりも繊維状金属粒子含有層に近い側の最表面であることが好ましい。図1に示した断熱フィルムの一例では、繊維状金属粒子含有層20が、水接触角が90°以上である最表面であることが好ましい。一方、図2に示した断熱フィルムの一例では、表面層21が、水接触角が90°以上である最表面であることが好ましい。すなわち、本発明の断熱フィルムは、図2に示すとおり、繊維状金属粒子含有層20の支持体10とは反対の面上に、さらに水接触角が90°以上である表面層21を含むことが好ましい。
本発明の断熱フィルムは窓用の断熱フィルムであることが好ましい。本発明の断熱フィルムは、窓の内側に配置されることが好ましく、繊維状金属粒子含有層20が支持体10の窓(図5におけるガラス61)側の面とは反対側の面上に配置されることが遠赤外線を反射しやすいために好ましい。断熱フィルムがないときは屋内の遠赤外線がガラスに吸収されて、ガラス中を熱伝導することにより、屋内の熱が屋外に出てしまうが、断熱フィルムがあると遠赤外線を屋内に反射するため屋内の熱が屋外に出にくくなる。繊維状金属粒子含有層20は、できるだけ屋内側の最外層に近い層にあることが好ましく、表面層21が最外層であり、繊維状金属粒子含有層20が最外層の次の層にあることが断熱性を高める観点から好ましい。
図3に示した本発明の断熱フィルムは、粘着層51と、支持体10と、繊維状金属粒子含有層20と、表面層21とをこの順で含む。
本発明の断熱フィルムは図3または図4に示すように粘着層51を支持体10の窓(図5におけるガラス61)側の面に有することが好ましく、ガラス61と粘着層51を貼り合わせられることが好ましい。
本発明の断熱フィルムは、支持体の繊維状金属粒子含有層が配置された面とは反対の面に、さらに近赤外線遮蔽層を含むことが好ましく、例えば図4に示す層構成で近赤外線遮蔽層41を含むことが好ましい。図4では、本発明の断熱フィルムの一例は、近赤外遮蔽材料を含む近赤外線遮蔽層41を有する。近赤外遮蔽材料は、近赤外線遮蔽層41を単独で形成せずに、その他の層に含まれていてもよい。例えば、近赤外遮蔽材料が、繊維状金属粒子含有層20に含まれていてもよく、第1の接着層31や第2の接着層32に含まれていてもよく、粘着層51に含まれていてもよい。近赤外遮蔽材料は、支持体の繊維状金属粒子含有層が配置された面とは反対の面、すなわち支持体10の窓(ガラス61)側の面側の層に含まれることが、近赤外光を遮蔽する観点から好ましい。
図5に示した本発明の断熱ガラス111は、本発明の断熱フィルム103と、ガラス61を含む。本発明の断熱フィルム103は、ガラス61が窓の一部(窓ガラス)である場合に、窓の内側(屋内側、室内側、日中における太陽光入射側とは反対側、図5中のIN側)に配置されることが好ましい。
支持体10と、繊維状金属粒子含有層20と、表面層21が、接着層を介して貼り合わせられた積層体を断熱部材102と言うことがある。接着層は単層でも2層以上の積層体でもよく、図5では接着層は第1の接着層31および第2の接着層32の積層体である。また、支持体10上に、接着層(図5では第1の接着層31および第2の接着層32の積層体)を設けた積層体を、接着層付きの支持体101と言うことがある。
以下、本発明の断熱フィルムを構成する各層の好ましい態様を説明する。
<支持体>
上記支持体としては、繊維状金属粒子含有層を担うことができるものである限り、目的に応じて種々のものを使用することができる。一般的には、板状またはシート状のものが使用される。
支持体は、透明であっても、不透明であってもよいが、透明であることが好ましく、可視光に透明であることがより好ましい。支持体は全可視光透過率が70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。なお、支持体の全可視光透過率は、ISO(International Organization for Standardization) 13468−1(1996)に準拠して測定される。
本発明の断熱フィルムは、支持体が、透明フィルムであることが好ましい。
支持体を構成する素材としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン等の合成樹脂を挙げることができる。これらの支持体の繊維状金属粒子含有層が形成される表面は、所望により、アルカリ性水溶液による清浄化処理、シランカップリング剤などの薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などにより前処理がされていてもよい。
支持体の厚さは、用途に応じて所望の範囲のものが使用される。一般的には、1μm〜500μmの範囲から選択され、3μm〜400μmがより好ましく、5μm〜300μmが更に好ましい。
<繊維状金属粒子含有層>
本発明では、繊維状金属粒子含有層は、支持体の一方の面上に配置され、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む。
繊維状金属粒子含有層は、遠赤外線を反射させるには空隙サイズが小さいことが好ましく、例えば繊維状金属粒子含有層の断面写真において、80%以上の空隙の空隙サイズが25(μm)2以下の空隙面積であることがより好ましい。
(繊維状金属粒子)
本発明では、銀を主成分とする繊維状金属粒子を用いる。
繊維状金属粒子は繊維状であり、繊維状は、ワイヤ状や線状と同義である。
繊維状金属粒子としては、金属ナノワイヤ、棒状金属粒子を挙げることができる。繊維状金属粒子としては、金属ナノワイヤが好ましい。以下、金属ナノワイヤを繊維状金属粒子の代表例として説明することがあるが、金属ナノワイヤに関する説明は繊維状金属粒子の一般的な説明として用いることができる。
繊維状金属粒子含有層は、繊維状金属粒子として、平均短軸長150nm以下の金属ナノワイヤを含有することが好ましい。平均短軸長が150nm以下であると、断熱性が向上し、光散乱等による光学特性の悪化が生じにくくなるため、好ましい。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、中実構造であることが好ましい。
より透明な繊維状金属粒子含有層を形成しやすいという観点からは、例えば、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、平均短軸長が1nm〜150nmのものが好ましい。
製造時の扱い易さから、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短軸長(平均直径)は、100nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、特に25nm以下であることがヘイズに関して一段と優れるものが得られるので好ましい。平均短軸長を1nm以上とすることにより、耐酸化性が良好で、耐候性に優れる繊維状金属粒子含有層が容易に得られる。平均短軸長は5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが特に好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均長軸長は、反射したい遠赤外線の反射帯域と同じ程度であることが、その反射したい遠赤外線の反射帯域を反射しやすい観点から好ましい。本発明では、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均長軸長は、5μm〜50μmであることが波長5〜50μmの遠赤外線を反射しやすい観点から好ましく、10μm〜40μmがより好ましく、15μm〜40μmが更に好ましい。特に、金属ナノワイヤの平均長軸長が40μm以下であると、金属ナノワイヤを凝集物が生じることなく合成することが容易となり、平均長軸長が15μm以上であると、十分な断熱性を得ることが容易となる。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短軸長(平均直径)および平均長軸長は、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができる。具体的には、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短軸長(平均直径)および平均長軸長は、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、商品名:JEM−2000FX)を用い、ランダムに選択した300個の金属ナノワイヤについて、各々短軸長と長軸長を測定し、その平均値から金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の平均短軸長と平均長軸長を求めることができる。本明細書ではこの方法で求めた値を採用している。なお、金属ナノワイヤの短軸方向断面が円形でない場合の短軸長は、短軸方向の測定で最も長い箇所の長さを短軸長とする。また。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、および曲率から算出される値を長軸長とする。
ある実施態様においては、繊維状金属粒子含有層における全金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量に対する、短軸長(直径)が150nm以下であり、かつ長軸長が5μm以上50μm以下である金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量が、金属量で50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましい。
短軸長(直径)が150nm以下であり、長さが5μm以上50μm以下である金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の割合が、50質量%以上であることで、十分な断熱性が得られるとともに、短軸長の大きい粒子や長さの短い粒子に起因するヘイズの低下を抑制しうるため好ましい。繊維状金属粒子以外の導電性粒子が繊維状金属粒子含有層に実質的に含まれない構成では、プラズモン吸収が強い場合にも透明度の低下を避け得る。
繊維状金属粒子含有層に用いられる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の短軸長(直径)の変動係数は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
変動係数が40%以下であると、波長5〜50μmの遠赤外線を反射しやすい金属ナノワイヤの比率が増えて、透明性と断熱性の観点で好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の短軸長(直径)の変動係数は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)像からランダムに選択した300個のナノワイヤの短軸長(直径)を計測し、その標準偏差と算術平均値を算出し、標準偏差を算術平均値で除することにより、求めることができる。
本発明に用いうる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子のアスペクト比は、10以上であることが好ましい。ここで、アスペクト比とは、平均短軸長に対する平均長軸長の比(平均長軸長/平均短軸長)を意味する。前述の方法により算出した平均長軸長と平均短軸長から、アスペクト比を算出することができる。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子のアスペクト比は、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜100,000が好ましく、50〜100,000がさらに好ましく、100〜100,000がより好ましい。
アスペクト比が10以上であると、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子同士が均一に分散したネットワークが容易に形成され、高い断熱性を有する繊維状金属粒子含有層が容易に得られる。また、アスペクト比が100,000以下であると、例えば支持体上に繊維状金属粒子含有層を塗布により設ける際の塗布液において、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子同士が絡まって凝集物を形成することが抑制され、安定な塗布液が得られるので、繊維状金属粒子含有層の製造が容易となる。
繊維状金属粒子含有層に含まれる全金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の質量に対するアスペクト比が10以上の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量は特に制限されない。例えば、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80%質量%以上であることが最も好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状であり得るが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面が5角形以上の多角形であって鋭角的な角が存在しない断面形状であるものが好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の断面形状は、支持体上に金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより検知することができる。
本発明では、繊維状金属粒子を形成する金属は銀を主成分とすること以外は特に制限がない。1種の金属以外にも2種以上の金属を組み合わせて用いてもよく、合金を用いることも可能である。これらの中でも、金属単体又は金属化合物から形成されるものが好ましく、金属単体から形成されるものがより好ましい。
繊維状金属粒子を形成する金属としては、長周期律表(IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)1991)の第4周期、第5周期、および第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2〜14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、および第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましいが、少なくとも銀を主成分として含む。
金属としては、具体的には銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、および、これらのうちいずれかを含む合金などが挙げられる。これらの中でも、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム又はこれらの合金が好ましく、パラジウム、銅、銀、金、白金、錫、又は、これらのうちいずれかを含む合金がより好ましく、銀又は銀を含有する合金が特に好ましい。ここで銀を含有する合金における銀の含有量は合金の全量に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
銀を主成分繊維状金属粒子は、銀ナノワイヤであることが好ましい。
繊維状金属粒子含有層に含まれる全金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の質量に対する銀ナノワイヤの含有量は、本発明の効果を妨げない限り特に制限されない。例えば、繊維状金属粒子含有層に含まれる全金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の質量に対する銀ナノワイヤの含有量は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、全金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が実質的に銀ナノワイヤであることが更に好ましい。ここで「実質的に」とは、不可避的に混入する銀以外の金属原子を許容することを意味する。
繊維状金属粒子含有層の単位面積当たりの質量(製膜時の塗布液の全固形分の塗布量)は、繊維状金属粒子含有層の断熱性、全光透過率およびヘイズ値が所望の範囲となるよう選択される。塗布量が少なすぎると十分な断熱性を得られなくなり、多すぎるとヘイズ増加の原因となったり、繊維状金属粒子含有層の割れや剥がれなどの故障の原因となる。好ましくは0.050〜1.000g/m2の範囲であり、より好ましくは0.100〜0.600g/m2の範囲であり、0.110〜0.500g/m2であることが特に好ましい。
繊維状金属粒子含有層に対する繊維状金属粒子の量は、繊維状金属粒子含有層の断熱性、全光透過率およびヘイズ値が所望の範囲となるよう選択されることが好ましい。繊維状金属粒子の量が十分に多いと良好な断熱性を得られ、十分に少ないとヘイズ増加の原因とならず、繊維状金属粒子含有層の電波透過性が低下する原因とならなくなる。繊維状金属粒子含有層に対する繊維状金属粒子の量は、1〜65質量%であることが好ましく、3〜50質量%であることがより好ましく、5〜35質量%であることが特に好ましい。
−繊維状金属粒子の製造方法−
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、特に制限はなく、いかなる方法で作製されたものであってもよい。以下のように、ハロゲン化合物と分散剤を溶解した溶媒中で金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。また、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を形成した後は、常法により脱塩処理を行うことが、分散性、繊維状金属粒子含有層の経時安定性の観点から好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造に用いられる溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
加熱する場合、その加熱温度は、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下が更に好ましく、40℃以上170℃以下が特に好ましい。上記温度を20℃以上とすることで、形成される金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の長さが分散安定性を確保しうる好ましい範囲となり、且つ、250℃以下とすることで、金属ナノワイヤの断面外周が鋭角を有しない、なめらかな形状となるため、金属粒子の表面プラズモン吸収による着色が抑えられ、透明性の観点から好適である。
なお、必要に応じて、粒子形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更は核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
加熱処理は、還元剤を添加して行うことが好ましい。
還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
還元剤によっては、機能として分散剤や溶媒としても機能する化合物があり、同様に好ましく用いることができる。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造は分散剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子を添加して行うことが好ましい。
分散剤とハロゲン化合物の添加のタイミングは、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよい繊維状金属粒子を得るためには、核形成と成長を制御できるためか、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
分散剤を添加する段階は特に制限されない。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を調製する前に添加し、分散剤存在下で金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を添加してもよいし、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子調製後に分散状態の制御のために添加しても構わない。
分散剤としては、例えばアミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子化合物類、などが挙げられる。これらのうち分散剤として好ましく用いられる各種高分子化合物類は、後述するポリマーに包含される化合物である。
分散剤として好適に用いられるポリマーとしては、例えば保護コロイド性のあるポリマーであるゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン構造を含む共重合体、アミノ基やチオール基を有するポリアクリル酸、等の親水性基を有するポリマーが好ましく挙げられる。
分散剤として用いるポリマーはゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;GPC)により測定した重量平均分子量(weight average molecular weight;Mw)が、3000以上300000以下であることが好ましく、5000以上100000以下であることがより好ましい。
分散剤として使用可能な化合物の構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書店発行、2000年)の記載を参照できる。
使用する分散剤の種類によって得られる金属ナノワイヤの形状を変化させることができる。
ハロゲン化合物は、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム等のアルカリハライドや下記の分散添加剤と併用できる化合物が好ましい。
ハロゲン化合物は、分散添加剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
また、分散剤の機能とハロゲン化合物の機能との双方を有する単一の物質を用いてもよい。即ち、分散剤としての機能を有するハロゲン化合物を用いることで、1つの化合物で、分散剤とハロゲン化合物の双方の機能を発現する。
分散剤の機能を有するハロゲン化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)、アミノ基と塩化物イオンを含むヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド(HTAC)、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含むドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリド、などが挙げられる。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造方法においては、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子形成後に脱塩処理を行うことが好ましい。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子形成後の脱塩処理は、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲン化物イオン等の無機イオンをなるべく含まないことが好ましい。金属ナノワイヤを水性溶媒に分散させてなる分散物の電気伝導度は1mS/cm以下が好ましく、0.1mS/cm以下がより好ましく、0.05mS/cm以下が更に好ましい。
金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の水分散物の25℃における粘度は、0.5mPa・s〜100mPa・sが好ましく、1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
電気伝導度および粘度は、水分散物における金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の濃度を0.45質量%として測定される。水分散物における金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の濃度が上記濃度より高い場合には、水分散物を蒸留水にて希釈して測定する。
(バインダー)
繊維状金属粒子含有層は、バインダーを含む。
上記バインダーを含むことにより、繊維状金属粒子含有層における金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の分散が安定に維持される上、支持体表面に繊維状金属粒子含有層を、接着層を介することなく形成した場合においても支持体と繊維状金属粒子含有層との強固な接着が確保される傾向がある。
好ましいバインダーとしては、Si、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解および重縮合して得られるゾルゲル硬化物、導電性高分子、有機高分子ポリマー(導電性高分子を除く)を挙げることができる。繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分が、ゾルゲル硬化物であることが好ましい。
また、本発明の断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分がケイ素を含有する材料であることがより好ましい。ケイ素を含有する材料としては、Si元素のアルコキシド化合物を加水分解および重縮合して得られるゾルゲル硬化物、またはシリコーンであることが特に好ましく、Si元素のアルコキシド化合物を加水分解および重縮合して得られるゾルゲル硬化物であることがより特に好ましい。
以下、上記のゾルゲル硬化物、導電性高分子、有機高分子ポリマー(導電性高分子を除く)の好ましい態様を順に説明する。
−ゾルゲル硬化物−
本発明の断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分が、Si、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解および重縮合して得られるゾルゲル硬化物を含むことが好ましく、製造コストや遠赤外線領域の反射率の点で、Si元素のアルコキシド化合物を加水分解および重縮合して得られるゾルゲル硬化物が特に好ましい。
Si、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物(以下、特定アルコキシド化合物とも言う)を加水分解および重縮合して得られるゾルゲル硬化物は、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、および酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種である。前述の繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分がSi、Ti、ZrおよびAlからなる群より選ばれる元素(b)のアルコキシド化合物を加水分解および重縮合して得られるゾルゲル硬化物である場合、当然ながら前述の繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分は酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、および酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種である。
繊維状金属粒子含有層は、下記条件(i)または(ii)の少なくとも一つを満たすことが好ましく、下記条件(ii)を少なくとも満たすことがより好ましく、下記条件(i)および(ii)を満たすことが特に好ましい。
(i)繊維状金属粒子含有層に含まれる元素(b)の物質量と、繊維状金属粒子含有層に含まれる金属元素(a)の物質量との比〔(元素(b)のモル数)/(金属元素(a)のモル数)〕が0.10/1〜22/1の範囲にある。
(ii)繊維状金属粒子含有層においてゾルゲル硬化物の形成に使用されるアルコキシド化合物の質量と、繊維状金属粒子含有層に含まれる金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の質量の比〔(アルコキシド化合物の含有量)/(金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量)〕が0.25/1〜30/1の範囲にある。
繊維状金属粒子含有層は、前述の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の使用量に対する特定アルコキシド化合物の使用量の比率、即ち、〔(特定アルコキシド化合物の質量)/(金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の質量)〕の比が0.25/1〜30/1の範囲で形成され得ることが好ましい。上記質量比が0.25/1以上である場合、断熱性(繊維状金属粒子の導電性が高いことに起因すると考えられる)と透明性が優れると同時に、耐摩耗性、耐熱性、湿熱耐久性および耐屈曲性の全てが優れた繊維状金属粒子含有層となり得る。上記質量比が30/1以下である場合、導電性および耐屈曲性が優れた繊維状金属粒子含有層となり得る。
上記質量比は、より好ましくは0.5/1〜25/1の範囲、更に好ましくは1/1〜20/1、最も好ましくは2/1〜15/1の範囲である。質量比を好ましい範囲とすることで、得られた繊維状金属粒子含有層は、高い断熱性と高い透明性(可視光透過率およびヘイズ)と、を有すると共に、耐摩耗性、耐熱性および湿熱耐久性に優れ、かつ耐屈曲性に優れることになり、好適な物性を有する断熱フィルムを安定的に得ることができる。
−導電性高分子−
本発明の断熱フィルムは、前述の繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分が導電性高分子であることが好ましい。導電性高分子も赤外線を効果的に遮断し、断熱性を発揮する。これは導電性高分子の自由電子によるプラズマ吸収波長が、地上気温付近の物体の放射よりも短波長側にあり、そのプラズマ吸収波長より高波長の電磁波を反射するためと考えられる。
繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分に用いられる導電性高分子としては、特開2012−189683号公報の[0038]〜[0046]および実施例に記載の導電性高分子を好ましく用いることができる。具体的には、導電性高分子は、一般に共役型の二重結合を基本骨格に有する有機高分子で、具体的にはポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフラン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、これらの誘導体、およびこれらを構成する単量体の共重合体から選ばれた導電性高分子のいずれか1種又は2種以上の混合物が好ましく挙げられる。中でも、水又はその他の溶媒に対して可溶性、又は分散性を有し、高い導電性および透明性を示す、ポリチオフェン誘導体が好ましい。特に、下記式(I):
Figure 2016140988
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子若しくは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、又はR1およびR2が相互に結合して任意に置換されていても良い炭素原子数1〜4のアルキレン基を形成し、nは50〜1000の整数を表す)で表される繰り返し単位を含むポリチオフェン誘導体が好ましい。
式(I)において、R1およびR2が相互に結合して形成される、置換されていても良い炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、具体的にはアルキル基で置換されたメチレン基、任意に炭素原子数1〜12のアルキル基又はフェニル基で置換されたエチレン−1,2基、プロピレン−1,3基、ブテン−1,4基を形成する基等が挙げられる。
式(I)におけるR1およびR2として、好ましくはメチル基又はエチル基であるか、R1およびR2が相互に結合して形成するメチレン基、エチレン−1,2基又はプロピレン−1,3基である。特に好ましいポリチオフェン誘導体としては、下記式(II):
Figure 2016140988
(式中、pは50〜1000の整数を表す)で示される繰り返し単位、即ち、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)単位を有するポリチオフェン誘導体である。
導電性高分子は、更にドーパント(電子供与剤)を含むことが好ましい。ドーパントとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルスルホン酸が好ましく挙げられる。特に、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。これらにより導電性高分子の導電性を向上することができ、繊維状金属粒子含有層の断熱性を高めることができる。ドーパントの数平均分子量(number average molecular weight;Mn)は、好ましくは1,000〜2,000,000であり、特に好ましくは2,000〜500,000である。
ドーパントの含有量は導電性高分子100質量部に対して、通常20〜2000質量部であり、好ましくは、40〜200質量部である。例えば、式(II)のポリチオフェン誘導体を導電性高分子とし、ポリスチレンスルホン酸をドーパントとして使用する場合はポリチオフェン100質量部に対して、ポリスチレンスルホン酸100〜200質量部が好ましく、特に120〜180質量部が好ましい。
−有機高分子ポリマー−
繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分に用いられる有機高分子ポリマーの具体例には、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、ポリアクリレート、およびポリアクリロニトリルなどのポリアクリル酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、フェノールまたはクレゾール−ホルムアルデヒド(Novolacs(登録商標))、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、およびポリフェニルエーテルなどの高芳香性を有する高分子、ポリウレタン(PU;例えば三井化学(株)製タケラック(登録商標)WS−4000)、エポキシ、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、およびポリシクロオレフィン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、セルロース、シリコーンおよびその他のシリコン含有高分子(例えば、ポリシルセスキオキサンおよびポリシラン、(株)トクシキ製SQ100など)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、およびフッ化炭素系重合体(例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)、またはポリヘキサフルオロプロピレン)、フルオロ−オレフィンの共重合体(例えば、旭硝子株式会社製「LUMIFLON」(登録商標))、および非晶質フルオロカーボン重合体または共重合体(例えば、旭硝子株式会社製の「CYTOP」(登録商標)またはデュポン社製の「Teflon」(登録商標)AF)が挙げられるがそれだけに限定されない。
繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分に用いられるポリシクロオレフィンとしては、特開2012−189683号公報の[0020]〜[0022]および実施例に記載の透明フィルムの材料を好ましく用いることができる。具体的には、繊維状金属粒子含有層のバインダーの主成分に用いられるポリシクロオレフィンは、好ましくはポリノルボルネンである。ポリノルボルネンは、赤外領域の吸収が少なく、断熱性と耐候性に優れる。ポリノルボルネンとして、市販のもの(例えば、日本ゼオン社製、ZEONEX(登録商標)あるいはZEONOR(登録商標))を用いてもよい。
これらの有機高分子ポリマーの中でも、繊維状金属粒子含有層の水接触角が90°以上となるバインダーを用いて繊維状金属粒子含有層を形成する観点からは、シリコーンが好ましい。ただし、シリコーンを用いて繊維状金属粒子含有層を形成しても繊維状金属粒子含有層の水接触角が90°以上とは限らないため、水接触角が90°以上となるような構造を主鎖や側鎖に有する変性シリコーン(例えばアクリル変性シリコーン)を用いることがより好ましい。水接触角が90°以上となるような構造を主鎖や側鎖に有する変性シリコーンとしては、特開平10−286900号公報の[0010]に記載の材料を挙げることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。変性シリコーンとしては、アクリル変性シリコーンが好ましい。市販の変性シリコーンとしては、大成ファインケミカル(株)製、商品名アクリット 8SS−723などを好ましく用いることができる。
(その他マトリックス)
繊維状金属粒子含有層に含まれるバインダーはマトリックスとしての機能も有するが、繊維状金属粒子含有層はさらにバインダー以外のマトリックス(以下、「その他マトリックス」という。)を含んでもよい。ここで「マトリックス」は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を含んで層を形成する物質の総称である。
その他マトリックスを含む繊維状金属粒子含有層は、後述の液状組成物中に、その他マトリックスを形成し得る材料を含有させておき、これを支持体上に(例えば、塗布により)付与して形成すればよい。
その他マトリックスは、非感光性のものであっても、フォトレジスト組成物のような感光性のものであっても良い。
繊維状金属粒子含有層がその他マトリックスを含む場合、バインダーの含有量に対して、0.10質量%〜20質量%、好ましくは0.15質量%〜10質量%、更に好ましくは0.20質量%〜5質量%の範囲から選ばれることが断熱性、透明性、膜強度、耐摩耗性および耐屈曲性の優れる繊維状金属粒子含有層が得られるので有利である。
−水接触角を調整するための添加剤−
繊維状金属粒子含有層が最表面である場合は、繊維状金属粒子含有層に添加剤を添加する方法により、繊維状金属粒子含有層の水接触角が90°以上にすることができる。
繊維状金属粒子含有層の水接触角を調整するための添加剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤、フッ素樹脂などの撥水性材料からなるフィラーなどを用いることができる。
繊維状金属粒子含有層に用いる界面活性剤としては、特開2014−697号公報の[0087]〜[0090]に記載の材料を挙げることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。市販のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル(株)製、商品名サーフロンなどを好ましく用いることができる。
−分散剤−
分散剤は、光重合性組成物中における前述の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が凝集することを防止しつつ分散させるために用いられる。分散剤としては、金属ナノワイヤを分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、顔料分散剤として市販されている分散剤を利用でき、特に金属ナノワイヤに吸着する性質を持つ高分子分散剤が好ましい。このような高分子分散剤としては、例えばポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(登録商標、ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(登録商標、日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(登録商標、味の素株式会社製)などが挙げられる。
繊維状金属粒子含有層中における分散剤の含有量は、特開2013−225461号公報の[0086]〜[0095]に記載のバインダーを用いる場合、のバインダー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が特に好ましい。
バインダーに対する分散剤の含有量を0.1質量部以上とすることで、分散液中での金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の凝集が効果的に抑制され、50質量部以下とすることで、塗布工程において安定な液膜が形成され、塗布ムラの発生が抑制されるため好ましい。
−溶媒−
溶媒は、前述の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子並びにバインダーを含む組成物を支持体の表面、または接着層付き支持体の接着層の表面に膜状に形成するための塗布液とするために使用される成分であり、目的に応じて適宜選択することができる。溶媒は、バインダーを0.1質量%以上溶解できるものであれば何でもよく、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。この溶媒は、前述の金属ナノワイヤの分散液の溶媒の少なくとも一部が兼ねていてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような溶媒を含む塗布液の固形分濃度は、0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましい。
−金属腐食防止剤−
繊維状金属粒子含有層は金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の金属腐食防止剤を含有することが好ましい。このような金属腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類などが好適である。
金属腐食防止剤を含有させることで、防錆効果を発揮させることができ、繊維状金属粒子含有層の経時による断熱性および透明性の低下を抑制することができる。金属腐食防止剤は繊維状金属粒子含有層形成用組成物中に、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末で添加するか、後述する導電層用塗布液による導電膜を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
金属腐食防止剤を添加する場合、繊維状金属粒子含有層中におけるその含有量は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有量に対して0.5質量%〜10質量%であることが好ましい。
その他マトリックスとしては、前述の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の製造の際に使用された分散剤としての高分子化合物を、マトリックスを構成する成分の少なくとも一部として使用することが可能である。
−他の導電性材料−
繊維状金属粒子含有層には、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子に加え、他の導電性材料、例えば、導電性粒子などを本発明の効果を損なわない限りにおいて併用しうる。導電性粒子としては、例えば金属粒子、スズドープ酸化インジウム(Indium Tin Oxide;ITO)粒子、アンチモンドープ酸化スズ(Antimony Tin Oxide;ATO)粒子、セシウムドープ酸化タングステン(cesium−doped tungsten oxide;CWO)粒子などの導電性酸化物粒子が挙げられる。特に、ITOが繊維状金属粒子含有層の赤外線反射を増加させるため好ましい。効果の観点からは、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子(好ましくは、アスペクト比が10以上の金属ナノワイヤ)の含有比率は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子を含む導電性材料の総量に対して体積基準で、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の含有比率を50%とすることにより、高い断熱性を有する繊維状金属粒子含有層を容易に得ることができる。
また、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子以外の形状の導電性粒子は、繊維状金属粒子含有層における導電性に大きく寄与しない上に可視光領域に吸収を持つ場合がある。特に導電性粒子が金属であって、球形などのプラズモン吸収が強い形状ではないことが、繊維状金属粒子含有層の透明度が悪化しないようにする観点から好ましい。
ここで、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の比率は、下記のように求めることができる。例えば、繊維状金属粒子が銀ナノワイヤであり、導電性粒子が銀粒子である場合には、銀ナノワイヤ水分散液をろ過して、銀ナノワイヤと、それ以外の導電性粒子とを分離し、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量とを各々測定し、金属ナノワイヤの比率を算出することができる。金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子のアスペクト比は、ろ紙に残っている金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子をTEMで観察し、300個の金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の短軸長および長軸長をそれぞれ測定することにより算出される。
(膜厚)
繊維状金属粒子含有層の平均膜厚は、通常、0.005μm〜2μmの範囲で選択される。例えば、平均膜厚を0.001μm以上0.5μm以下とすることで、十分な耐久性、膜強度が得られる。特に、平均膜厚を0.01μm〜0.1μmの範囲とすれば、製造上の許容範囲が確保され得るので好ましい。
前述の条件(i)または(ii)の少なくとも一つを満たす繊維状金属粒子含有層とすることで、断熱性と透明性とを高く維持しうるとともに、ゾルゲル硬化物に起因して、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子が安定に固定化されるとともに、高い強度と耐久性とを実現し得ることが好ましい。例えば、繊維状金属粒子含有層の膜厚を0.005μm〜0.5μmという薄層としても、実用上問題のない耐摩耗性、耐熱性、湿熱耐久性および耐屈曲性を有する繊維状金属粒子含有層を得ることができる。このため、本発明の一実施形態である断熱フィルムは種々の用途に好適に使用される。薄層を必要とする態様では、膜厚は、0.005μm〜0.5μmとしてもよく、0.007μm〜0.3μmがさらに好ましく、0.008μm〜0.2μmがより好まく、0.01μm〜0.1μmが最も好ましい。このように繊維状金属粒子含有層をより薄層とすることで、繊維状金属粒子含有層の透明性がさらに向上し得る。
繊維状金属粒子含有層の平均膜厚は、電子顕微鏡による繊維状金属粒子含有層断面の直接観察により、繊維状金属粒子含有層の膜厚を5点測定し、その算術平均値として算出される。なお、繊維状金属粒子含有層の膜厚は例えば、触針式表面形状測定器(Dektak(登録商標)150、Bruker AXS製)を用いて、繊維状金属粒子含有層を形成した部分と繊維状金属粒子含有層を除去した部分の段差として測定することもできる。しかし、繊維状金属粒子含有層を除去する際に支持体の一部まで除去してしまう恐れがあることがあり、また形成される繊維状金属粒子含有層が薄膜なため誤差が生じやすい。そのため、後述の実施例においては電子顕微鏡を用いて測定される平均膜厚を記載している。
<表面層>
本発明の断熱フィルムは、繊維状金属粒子含有層の支持体とは反対の面上に、さらに水接触角が90°以上である表面層を含むことが好ましい。
(表面層の組成)
表面層としては特に制限は無いが、優れた耐擦性を有することが好ましい。表面層の組成としては、フッ素を含有する材料またはケイ素を含有する材料などが好ましく、フッ素を含有する材料がより好ましい。
本発明の断熱フィルムは、表面層の主成分がフッ素を含有する材料またはケイ素を含有する材料であることが耐擦性を高める観点から好ましい。
水接触角が90°以上である表面層を形成するためのフッ素を含有する材料としては、フッ素樹脂、フッ素原子含有の単分子膜などを挙げることができる。
表面層に用いるフッ素樹脂としては、特開2002−127310号公報の[0021]〜[0022]に記載のフッ素樹脂を挙げることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。他のフッ素樹脂としては、フッ化炭素系重合体(例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)、またはポリヘキサフルオロプロピレン)、フルオロ−オレフィンの共重合体(例えば、旭硝子株式会社製「LUMIFLON」(登録商標))、および非晶質フルオロカーボン重合体または共重合体(例えば、旭硝子株式会社製の「CYTOP」(登録商標)またはデュポン社製の「Teflon」(登録商標)AF)が挙げられる。市販のフッ素樹脂としては、旭硝子(株)製、商品名サイトップCTX−109MPなどを好ましく用いることができる。
表面層に用いるフッ素原子含有の単分子膜を形成するための材料としては、特開2013−245849号公報の[0086]〜[0093]に記載の材料を挙げることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。市販の単分子膜を形成するための材料としては、ダイキン工業(株)製、商品名オプツールDSXなどを好ましく用いることができる。本発明の断熱フィルムは、表面層が単分子膜であることが断熱性(初期U値)を改善する観点から好ましい。
水接触角が90°以上である表面層を形成するためのケイ素を含有する材料としては、疎水化シリカ、変性シリコーンなどを挙げることができ、疎水化シリカが断熱性(初期U値)を改善する観点からより好ましい。
表面層に用いる疎水化シリカとしては、特開2013−123660号公報の[0040]〜[0043]に記載の材料を挙げることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。疎水化シリカとしては、疎水性ヒュームドシリカが好ましい。市販の疎水化シリカとしては、日本アエロジル(株)製、商品名AEROSIL R 202などを好ましく用いることができる。
表面層に用いる変性シリコーンとしては、特開平10−286900号公報の[0010]に記載の材料を挙げることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。変性シリコーンとしては、アクリル変性シリコーンが好ましい。市販の変性シリコーンとしては、大成ファインケミカル(株)製、商品名アクリット 8SS−723などを好ましく用いることができる。
表面層は、透湿度が低いことが、断熱性の湿熱耐久性を改善する観点から好ましい。表面層の透湿度としては、水蒸気透過率と膜厚の積を指標とすることができる。本発明において表面層に好ましく用いることができる水蒸気透過率の低い材料としては、ケイ素を含有する材料などを挙げることができる。表面層の水蒸気透過率としては例えば10g/m2・day以下が好ましく、5g/m2・day以下がより好ましく、1g/m2・day以下が特に好ましい。
(表面層の膜厚)
本発明の断熱フィルムは、前述の表面層の膜厚が1μm以下であることが断熱性の初期値を改善する観点から好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることが特に好ましい。
表面層には、屈折率を調整したり、表面硬度を増加させる目的で、酸化物粒子を含有させてもよい。酸化物粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。表面層が、断熱フィルムの最表層となるため、屈折率の低い酸化ケイ素を用いることが反射防止の点から好ましく、中空粒子の酸化ケイ素を用いることが特に好ましい。
酸化物粒子の粒径は、1〜500nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましい。酸化物粒子の添加量は、1〜50質量%の範囲が好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましい。
<中間層>
断熱フィルムは、支持体と繊維状金属粒子含有層との間に少なくとも一層の中間層を有することが好ましい。支持体と繊維状金属粒子含有層との間に中間層を設けることにより、支持体と繊維状金属粒子含有層との密着性、繊維状金属粒子含有層の全光透過率、繊維状金属粒子含有層のヘイズ、および繊維状金属粒子含有層の膜強度のうちの少なくとも一つの向上を図り得る。
中間層としては、支持体と繊維状金属粒子含有層との接着力を向上させるための接着剤層、繊維状金属粒子含有層に含まれる成分との相互作用により機能性を向上させる機能性層などが挙げられ、目的に応じて適宜設けられる。
中間層を更に有する断熱フィルムの構成について、図面を参照しながら説明する。
図5においては、支持体上に中間層(第1の接着層31と第2の接着層)を有してなる接着層付きの支持体101上に繊維状金属粒子含有層20が設けられている。支持体10と繊維状金属粒子含有層20との間に、支持体10との親和性に優れた第1の接着層31と、繊維状金属粒子含有層20との親和性に優れた第2の接着層32とを含む中間層を備える。
図5以外の構成の中間層を有していてもよく、例えば、支持体10と繊維状金属粒子含有層20との間に、図5の実施形態と同様の第1の接着層31および第2の接着層32に加え、繊維状金属粒子含有層20に隣接して機能性層を備えて構成される中間層を有することも好ましい(不図示)。
<近赤外線遮蔽層>
さらに、近赤外遮蔽材料を用いることで、近赤外光の遮蔽性を高めることができる。
近赤外遮蔽材料としては、平板状金属粒子(例えば、銀ナノディスク)、有機多層膜、球状の金属酸化物粒子(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)粒子、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)粒子、セシウムドープ酸化タングステン(CWO)粒子)などを挙げることができる。
また、近赤外遮蔽材料は、近赤外線遮蔽層に含まれることが好ましく、近赤外線遮蔽層を単独で形成する材料であることがより好ましい。
近赤外線遮蔽層は、含まれる材料によって熱線反射型の近赤外線反射層と熱線吸収型の近赤外線吸収層に分けられる。
(平板状金属粒子を用いた近赤外線反射層)
熱線遮蔽性(日射熱取得率)の観点からは、吸収した光の屋内への再放射(吸収した日射エネルギーの約1/3量)がある熱線吸収型より再放射がない熱線反射型が望ましい。近赤外光の反射をする観点からは、近赤外遮蔽材料として平板状金属粒子を用いることが好ましい。このような平板状金属粒子を用いた近赤外線反射層は、特開2013−228694号公報の[0019]〜[0046]、特開2013−083974号公報、特開2013−080222号公報、特開2013−080221号公報、特開2013−077007号公報、特開2013−068945号公報などに記載の近赤外遮蔽材料を用いることができ、これらの公報の記載は本明細書に組み込まれる。
具体的には、近赤外線反射層は、少なくとも1種の金属粒子を含有する層であり、金属粒子が、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子を60個数%以上有し、六角形状乃至円形状の平板状金属粒子の主平面が、近赤外線反射層の一方の表面に対して平均0°〜±30°の範囲で面配向していることが好ましい。
金属粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱線(近赤外線)の反射率が高い点から、銀、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金などが好ましい。
(有機多層膜、球状の金属酸化物粒子を用いた近赤外線反射層)
有機多層膜を用いた近赤外線反射層としては、特開2012−256041号公報の[0039]〜[0044]に記載のものを好ましく用いることができ、この公報の記載は本明細書に組み込まれる。
球状の金属酸化物粒子を用いた近赤外線反射層としては、特開2013−37013号公報の[0038]〜[0039]に記載のものを好ましく用いることができ、この公報の記載は本明細書に組み込まれる。
(近赤外線吸収層)
繊維状金属粒子含有層の表面に結露した水滴を早く水蒸気化する観点からは、近赤外線遮蔽層の中でも断熱フィルム上に熱を発生させやすい熱線吸収型の近赤外線吸収層が好ましい。
近赤外線吸収層としては、特開2014−240907号公報の[0033]、特開2014−214299号公報の[0011]〜[0022]、特開2014−148567号公報の[0013]〜[0017]、特開2014−139617号公報の[0010]〜[0034]、特開2014−80466号公報の[0022]〜[0035]に記載のものを好ましく用いることができ、これらの公報の記載は本明細書に組み込まれる。
<粘着層>
本発明の断熱フィルムは、粘着層を有することが好ましい。粘着層は、紫外線吸収剤を含むことができる。
粘着層の形成に利用可能な材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの材料からなる粘着層は、塗布により形成することができる。
さらに、粘着層には帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
粘着層の厚みとしては、0.1μm〜10μmが好ましい。
<断熱フィルムの製造方法>
本発明の断熱フィルムを製造するための方法としては特に制限はないが、以下の製造方法が好ましい。
断熱フィルムの製造方法は、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液を支持体上に塗布して繊維状金属粒子含有層を形成する工程を含むことが好ましい。
水接触角が90°以上である表面層形成用の塗布液を前述の繊維状金属粒子含有層の上に塗布して表面層を形成する工程と、を含むことも好ましい。
繊維状金属粒子含有層を支持体上に形成する方法としては、バインダーを繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液に用いる場合は、一般的な塗布方法で行うことができる。
ある実施態様では、繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の水分散液を調製し、これと前述の特定アルコキシド化合物由来の金属酸化物以外の材料(例えば前述の導電性高分子)を主成分とするバインダーとを混合して調製されてもよい。
一方、繊維状金属粒子含有層を支持体上に形成する方法としては、例えば前述の特定アルコキシド化合物由来の金属酸化物を主成分とするバインダーを用いる場合、繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液(以下、「ゾルゲル塗布液」ともいう)を、支持体上に塗布して液膜を形成すること、および、この液膜中で特定アルコキシド化合物の加水分解と重縮合の反応(以下、この加水分解と重縮合の反応を「ゾルゲル反応」ともいう。)を起こさせることにより繊維状金属粒子含有層を形成すること、を少なくとも含む方法により製造することができる。この方法は、更に必要に応じて、繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液中に溶媒として含まれ得る水を加熱により蒸発させること(乾燥)を含んでもよく含まなくてもよい。
ある実施態様では、ゾルゲル塗布液は、金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の水分散液を調製し、これと特定アルコキシド化合物とを混合して調製されてもよい。ある実施態様では、特定アルコキシド化合物を含む水溶液を調製し、この水溶液を加熱して特定アルコキシド化合物の少なくとも一部を加水分解および重縮合させてゾル状態とし、このゾル状態にある水溶液と金属ナノワイヤなどの繊維状金属粒子の水分散液とを混合してゾルゲル塗布液を調製してもよい。
ゾルゲル反応を促進させるために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが反応効率を高められるので、実用上好ましい。
塗布後は任意の方法で乾燥することができ、加熱して乾燥することが好ましい。
前述の特定アルコキシド化合物由来の金属酸化物を主成分とするバインダーを用いる場合、支持体上に形成されたゾルゲル塗布液の塗布膜中においては、特定アルコキシド化合物の加水分解および縮合の反応が起こるが、その反応を促進させるために、上記塗布膜を加熱、乾燥することが好ましい。ゾルゲル反応を促進させるための加熱温度は、30℃〜200℃の範囲が適しており、50℃〜180℃の範囲がより好ましい。
加熱、乾燥時間は10秒間〜300分間が好ましく、1分間〜120分間がより好ましい。
(塗布方法)
繊維状金属粒子含有層の形成方法において、前述の各工程における塗布方法には特に制限はなく、一般的な塗布方法で行うことができ、目的に応じて適宜選択することができる。例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
(表面層の形成)
表面層形成用の塗布液は、繊維状金属粒子含有層と同様の溶媒を用いることで、繊維状金属粒子含有層上に、均一な液膜を形成することができる。
繊維状金属粒子含有層の上に塗布して表面層を形成する方法としては、特に制限はなく、繊維状金属粒子含有層と同様の塗布方法で行うことができる。
[断熱ガラス、窓]
本発明の断熱ガラスは、本発明の断熱フィルムと、ガラスとを積層した断熱ガラスである。
本発明の窓は、窓用透明支持体と、窓用透明支持体に貼り合わせた本発明の断熱フィルムを含む窓である。
窓用透明支持体は、厚み0.5mm以上の窓用透明支持体であることが好ましく、厚み1mm以上の窓用透明支持体であることがより好ましく、窓用透明支持体の厚みに起因する熱伝導を抑制して温暖性を高める観点からは厚み2mm以上の窓用透明支持体であることが特に好ましい。
窓用透明支持体は一般的には、板状またはシート状のものが使用される。
窓用透明支持体としては、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス;ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、窓用透明支持体が、ガラスまたは樹脂板であることが好ましく、ガラスであることがより好ましい。
ガラスや窓ガラスを構成する成分としては特に制限は無く、ガラスや窓ガラスとして、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラスを用いることができる。
なお、本発明に用いられるガラスは、表面が平滑であることが好ましく、フロートガラスであることが好ましい。
本発明の断熱ガラスの可視光透過率を求める際に、本発明の断熱フィルムを3mmの青板ガラスに貼り合わせて測定することが好ましい。3mmの青板ガラスについてはJISA5759に記載されているガラスを使用することが好ましい。
本発明の断熱フィルムは、窓の内側、すなわち窓ガラスの屋内側に貼り付ける。
本発明の断熱ガラスまたは本発明の窓は、本発明の断熱フィルムの繊維状金属粒子含有層が、支持体の窓(ガラス)側の面とは反対側の面上に配置される。本発明では、繊維状金属粒子含有層は、その層の厚みにもよるが繊維状金属粒子含有層と屋内側の最外面の距離が5μm以内にあることが断熱性を高める観点から好ましく、5μm以内にあることがより好ましく、0.1〜5μm以内にあることが特に好ましく、2〜4μm以内であることが更に特に好ましい。
また、本発明の断熱フィルムの繊維状金属粒子含有層は屋内側の最外層の次の層にあることが断熱性を高める観点から好ましい。
本発明の断熱ガラスまたは本発明の窓は、近赤外線遮蔽層をなるべく太陽光側に設置している方が、屋内へ入射しようとする赤外線をあらかじめ反射できるため好ましく、この観点において近赤外線遮蔽層を太陽光入射側に設置されるように粘着層を積層することが好ましい。具体的には近赤外線遮蔽層の上、または、近赤外線遮蔽層上に設けられたオーバーコート層等の機能性層の上に粘着層を設け、その粘着層を介して窓ガラスへ貼合することが好ましい。
窓ガラスに本発明の断熱フィルムを貼り付ける際、粘着層を塗工、あるいは、ラミネートにより設けた本発明の断熱フィルムを準備し、あらかじめ窓ガラス表面と本発明の断熱フィルムの粘着層表面に界面活性剤(主にアニオン系)を含んだ水溶液を噴霧してから、粘着層を介して窓ガラスに本発明の断熱フィルムを設置すると良い。水分が蒸発するまでの間、粘着層の粘着力は落ちるため、ガラス表面では本発明の断熱フィルムの位置の調整が可能である。窓ガラスに対する本発明の断熱フィルムの貼り付け位置が定まった後、スキージー等を用いて窓ガラスと本発明の断熱フィルムの間に残る水分をガラス中央から端部に向けて掃き出すことにより、窓ガラス表面に本発明の断熱フィルムを固定できる。このようにして、窓ガラスに本発明の断熱フィルムを設置することが可能である。
<建築材料、建築物、乗物>
本発明の断熱フィルム、断熱ガラスおよび窓は、使用される態様に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、乗物用、建築材料や建築物用、農業用などが挙げられる。これらの中でも、省エネルギー効果の点で、建築材料、建築物、乗物に用いられることが好ましい。
建築材料は、本発明の断熱フィルムまたは本発明の断熱ガラスを含む建築材料である。
建築物は、本発明の断熱フィルム、本発明の断熱ガラス、本発明の建築材料または本発明の窓を含む建築物である。建築物としては、家、ビル、倉庫などを挙げることができる。
乗物は、本発明の断熱フィルム、本発明の断熱ガラスまたは本発明の窓を含む乗物である。乗物としては、自動車、鉄道車両、船舶などを挙げることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[繊維状金属粒子のサイズの測定法]
<繊維状金属粒子の平均短径(平均直径)と平均長径(平均長軸長)>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用いて拡大観察される繊維状金属粒子から、ランダムに選択した300個の繊維状金属粒子の短径(短軸長、直径)と長径(長軸長)を測定し、その平均値から繊維状金属粒子の平均短径(平均短軸長、平均直径)と平均長径(平均長軸長)を求めた。
[調製例1]
<銀ナノワイヤ水分散液(1)の調製>
予め、下記の添加液A、GおよびHを調製した。
(添加液A)
硝酸銀粉末5.1gを純水500mLに溶解した。その後、1mol/Lのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が1000mLになるように純水を添加した。
(添加液G)
グルコース粉末1gを280mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
(添加液H)
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末4gを220mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤ水分散液(1)を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、添加液H 82.5mL、および添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、添加液A 206mLを流量2.0mL/分、攪拌回転数800rpm(round per minutes)で添加した(二段目)。その10分間後、添加液Hを82.5mL添加した(三段目)。その後、3℃/分で内温73℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5.5時間加熱した。得られた水分散液を冷却した。
限外濾過モジュールSIP1013(商品名、旭化成株式会社製、分画分子量:6,000)、マグネットポンプ、およびステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、限外濾過装置とした。
上述の冷却後の水分散液を限外濾過装置のステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。限外濾過モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。前述の洗浄を電気伝導度(東亜ディーケーケー(株)製CM−25Rで測定)が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、0.84%銀ナノワイヤ水分散液(1)を得た。得られた銀ナノワイヤ水分散液(1)を、調製例1の銀ナノワイヤ水分散液とした。得られた調製例1の銀ナノワイヤ水分散液に含まれる繊維状金属粒子である銀ナノワイヤについて、前述のようにして平均短軸長、平均長軸長、および繊維状金属粒子の短軸長の変動係数を測定した。その結果、平均短軸長17.2nm、平均長軸長34.2μm、変動係数が17.8%の銀ナノワイヤを得たことがわかった。以後、「銀ナノワイヤ水分散液(1)」と表記する場合は、上記方法で得られた銀ナノワイヤ水分散液を示す。
[調製例2]
<接着層付き支持体(PET基板;図5中の符号101)の作製>
下記の配合で接着用溶液1を調製した。
(接着用溶液1)
・タケラック(登録商標)WS−4000 5.0質量部
(コーティング用ポリウレタン、固形分濃度30%、三井化学(株)製)
・界面活性剤 0.3質量部
(商品名:ナロアクティーHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.3質量部
(サンデット(登録商標)BL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
・水 94.4質量部
支持体として用いる厚さ75μmのPETフィルム(図5中の符号10)の一方の表面にコロナ放電処理を施し、このコロナ放電処理を施した表面に、上記の接着用溶液1を塗布し120℃で2分間乾燥させて、厚さが0.11μmの第1の接着層(図5中の符号31)を形成した。
以下の配合で、接着用溶液2を調製した。
(接着用溶液2)
・テトラエトキシシラン 5.0質量部
(商品名:KBE−04、信越化学工業(株)製)
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 3.2質量部
(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)
・2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン 1.8質量部
(商品名:KBM−303、信越化学工業(株)製)
・酢酸水溶液(酢酸濃度=0.05%、pH=5.2) 10.0質量部
・硬化剤 0.8質量部
(ホウ酸、和光純薬工業(株)製)
・コロイダルシリカ 60.0質量部
(スノーテックス(登録商標)O、平均粒子径10nm〜20nm、固形分濃度20%、pH(power of Hydrogen ion concentration)=2.6、日産化学工業(株)製)
・界面活性剤 0.2質量部
(商品名:ナロアクティーHN−100、三洋化成工業(株)製)
・界面活性剤 0.2質量部
(サンデット(登録商標)BL、固形分濃度43%、三洋化成工業(株)製)
接着用溶液2は、以下の方法で調製した。酢酸水溶液を激しく攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、この酢酸水溶液中に3分間かけて滴下した。次に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを酢酸水溶液中に強く攪拌しながら3分間かけて添加した。次に、テトラエトキシシランを、酢酸水溶液中に強く攪拌しながら5分かけて添加し、その後2時間攪拌を続けた。次に、コロイダルシリカと、硬化剤と、界面活性剤とを順次添加し、接着用溶液2を調製した。
前述の第1の接着層(図5中の符号31)の表面をコロナ放電処理したのち、その表面に、上記の接着用溶液2をバーコート法により塗布し、170℃で1分間加熱して乾燥し、厚さ0.5μmの第2の接着層(図5中の符号32)を形成して、接着層付きの支持体(PET基板;図5中の符号101)を得た。
[実施例1]
<繊維状金属粒子含有層の塗布による形成>
下記組成のアルコキシド化合物の溶液を60℃で1時間撹拌して均一になったことを確認した。調製した溶液をゾルゲル溶液とした。
(アルコキシド化合物の溶液)
・テトラエトキシシラン 5.0質量部
(商品名:KBE−04、信越化学工業(株)製)
・1%酢酸水溶液 10.0質量部
・蒸留水 4.0質量部
なお、ゾルゲル溶液中のテトラエトキシシランはゾルゲル反応後にはゾルゲル硬化物のSiO2として膜中に存在するため、下記表1の繊維状金属粒子含有層のバインダー材料には「ゾルゲルSiO2」として記載した。
得られたゾルゲル溶液2.09質量部と、調製例1で得られた銀ナノワイヤ水分散液(1)32.70質量部を混合し、さらに蒸留水で希釈して繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液であるゾルゲル塗布液を得た。
上記の接着層付き支持体の第2の接着層の表面にコロナ放電処理を施し、その表面にバーコート法で銀量が0.040g/m2、全固形分塗布量が0.120g/m2となるように上記ゾルゲル塗布液を塗布した。そののち、175℃で1分間乾燥してゾルゲル反応を起こさせて、繊維状金属粒子含有層を形成した。繊維状金属粒子含有層におけるテトラエトキシシラン(アルコキシド化合物)/銀ナノワイヤの質量比は2/1となった。
<表面層の塗布による形成>
(表面層組成物)
表面層組成物として、フッ素樹脂の9質量%溶液(商品名サイトップCTX−109MP、旭硝子(株)製)を準備した。
(塗布方法)
繊維状金属粒子含有層の表面上に、上記の表面層組成物を、アプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が0.2μmとなるように塗布し、170℃で1分間加熱して乾燥して表面層を形成し、実施例1の断熱フィルムを得た。
[実施例2]
実施例1において、上記の表面層組成物を乾燥後の膜厚が0.8μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例2の断熱フィルムを得た。
[実施例3]
実施例1において、上記の表面層組成物を乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例3の断熱フィルムを得た。
[実施例4]
<表面層組成物>
表面層材料として用いるフッ素樹脂(商品名オプツール DSX、ダイキン工業(株)製)を、パーフルオロヘキサンで0.1質量%に希釈した溶液を表面層組成物として準備した。
<塗布方法>
実施例1と同様にして調製した繊維状金属粒子含有層の表面上に、上記の表面層組成物を引き上げ速度1cm/minでディップ塗布し、60℃、相対湿度90%の環境にて1時間放置した後、パーフルオロヘキサンを染み込ませた不織布で表面のムラがなくなるまで拭き取りを行って表面層を形成し、実施例4の断熱フィルムを得た。得られた表面層は、X線反射率測定により単分子膜であることを確認した。
[実施例5]
<疎水性シリカ分散液>
エタノール200質量部に、表面層材料である疎水性ヒュームドシリカ粒子(商品名AEROSIL R 202、日本アエロジル(株)製)を添加し、疎水性シリカ分散液を調製した。
<塗布方法>
実施例1と同様にして調製した繊維状金属粒子含有層の表面上に、上記の疎水性シリカ分散液を、アプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が0.2μmとなるように塗布し、170℃で1分間加熱して乾燥して表面層を形成し、実施例5の断熱フィルムを得た。
[実施例6]
<アクリルシリコーン系疎水性組成物>
表面層材料として、UV(Ultraviolet)反応性基を有するアクリルシリコーンポリマーのメトキシプロパノールであるアクリルシリコーン系疎水性組成物(商品名アクリット 8SS−723、大成ファインケミカル(株)製)を準備した。
<塗布方法>
実施例1と同様にして調製した繊維状金属粒子含有層の表面上に、上記のアクリルシリコーン系疎水性組成物を、アプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が0.2μmとなるように塗布し、60℃で10分間加熱して乾燥した。その後、UV照射によりアクリルシリコーンポリマーのUV反応性基を硬化させて表面層を形成し、実施例6の断熱フィルムを得た。
[実施例7]
<繊維状金属粒子含有層の塗布による形成>
実施例1で得られたゾルゲル溶液2.09質量部と、調製例1で得られた銀ナノワイヤ水分散液(1)32.70質量部と、フッ素系界面活性剤(商品名サーフロン、AGCセイミケミカル(株)製)0.1質量部とを混合し、さらに蒸留水で希釈して繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液であるゾルゲル塗布液を得た。
上記の接着層付き支持体の第2の接着層の表面にコロナ放電処理を施し、その表面にバーコート法で銀量が0.040g/m2、全固形分塗布量が0.120g/m2となるように上記ゾルゲル塗布液を塗布した。そののち、175℃で1分間乾燥してゾルゲル反応を起こさせて、繊維状金属粒子含有層を形成した。繊維状金属粒子含有層におけるテトラエトキシシラン(アルコキシド化合物)/銀ナノワイヤの質量比は2/1となった。
得られた積層体を実施例7の断熱フィルムとした。
[実施例8]
<PEDOT/PSSバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層の形成>
下記組成のポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)溶液を調製した。
・ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体 50.0質量部
(CleviosP AI 4083、ヘレウス(株)製)
・蒸留水 2.0質量部
・エタノール 8.0質量部
得られたPEDOT溶液18.0質量部と、調製例1で得られた銀ナノワイヤ水分散液(1)32.70質量部を混合し、さらに蒸留水で希釈して、繊維状金属粒子含有層形成用の塗布液である銀ナノワイヤ分散PEDOT塗布液を得た。
上記の接着層付き支持体の第2の接着層の表面にコロナ放電処理を施し、その表面にバーコート法で銀量が0.040g/m2、全固形分塗布量が0.120g/m2となるように上記銀ナノワイヤ分散PEDOT塗布液を塗布した。そののち、100℃で2分間乾燥して、PEDOT/PSSバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層を形成した。PEDOT/PSSバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層におけるバインダー/銀ナノワイヤの質量比は2/1となった。
上記のPEDOT/PSSバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層の表面上に、実施例2と同様にして表面層を形成して、実施例8の断熱フィルムを得た。
[実施例9]
<COPバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層の形成>
調製例1で得られた銀ナノワイヤ水分散液を、分散液の銀ナノワイヤ濃度を変更せずに、n−プロパノールへ溶媒置換したのち、さらに1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサンへ溶媒置換を行った。
下記組成のシクロオレフィンポリマー(COP)溶液を調製した。
・シクロオレフィンポリマー 1.0質量部
(商品名、ゼオネックス480R、日本ゼオン(株)製)
・1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサン 15.0質量部
上記のCOP溶液3.50質量部と、上記溶媒置換を行った銀ナノワイヤ水分散液32.70質量部を混合し、銀ナノワイヤ分散COP塗布液を得た。
上記の接着層付き支持体の第2の接着層の表面にコロナ放電処理を施し、その表面にバーコート法で銀量が0.040g/m2、全固形分塗布量が0.120g/m2となるように上記銀ナノワイヤ分散COP塗布液を塗布した。そののち、100℃で2分間乾燥して、COPバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層を形成した。COPバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層におけるCOP/銀ナノワイヤの質量比は2/1となった。
上記のCOPバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層の表面上に、実施例2と同様にして表面層を形成して、実施例9の断熱フィルムを得た。
[実施例10]
<PUバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層の形成>
下記組成のポリウレタン(PU)溶液を調製した。
・ポリウレタン水分散液 5.0質量部
(商品名、タケラック(登録商標)WS−4000、三井化学(株)製)
・蒸留水 95.0質量部
得られたPU溶液15.0質量部と、調製例1で得られた銀ナノワイヤ水分散液(1)32.70質量部を混合し、さらに蒸留水で希釈して銀ナノワイヤ分散PU塗布液を得た。
上記の接着層付き支持体の第2の接着層の表面にコロナ放電処理を施し、その表面にバーコート法で銀量が0.040g/m2、全固形分塗布量が0.120g/m2となるように上記銀ナノワイヤ分散PU塗布液を塗布した。そののち、120℃で2分間乾燥して、PUバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層を形成した。PUバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層におけるPU/銀ナノワイヤの質量比は2/1となった。
上記のPUバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層の表面上に、実施例2と同様にして表面層を形成して、実施例10の断熱フィルムを得た。
[実施例11]
<シリコーンバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層の形成>
下記組成のシリコーン溶液を調製した。
・シリコーン変性アクリル樹脂(商品名SQ100、固形分50%、(株)トクシキ製)
5.0質量部
・イソシアネート系硬化剤(商品名UAX−615、(株)トクシキ製) 1.0質量部
・錫系触媒(商品名UA−38、(株)トクシキ製) 0.2質量部
・メチルエチルケトン 93.8質量部
調製例1で得られた銀ナノワイヤ水分散液を、分散液の銀ナノワイヤ濃度を変更せずに、n−プロパノールへ溶媒置換したのち、さらにメチルエチルケトンへ溶媒置換を行った。
得られたシリコーン溶液4.4質量部と、上記溶媒置換を行った銀ナノワイヤ水分散液32.70質量部を混合し、銀ナノワイヤ分散シリコーン塗布液を得た。
上記の接着層付き支持体の第2の接着層の表面にコロナ放電処理を施し、その表面にバーコート法で銀量が0.040g/m2、全固形分塗布量が0.120g/m2となるように上記銀ナノワイヤ分散シリコーン塗布液を塗布した。そののち、100℃で2分間乾燥して、シリコーンバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層を形成した。シリコーンバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層におけるシリコーン/銀ナノワイヤの質量比は2/1となった。
上記のシリコーンバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層の表面上に、実施例2と同様にして表面層を形成して、実施例11の断熱フィルムを得た。
[実施例12]
断熱フィルムに対し、近赤外線反射層を以下の方法で設けた。
<銀平板粒子分散液B1の調製>
(銀平板粒子分散液A1の調製)
NTKR−4(日本金属工業(株)製)製の反応容器にイオン交換水13Lを計量し、SUS316L製のシャフトにNTKR−4製のプロペラ4枚およびNTKR−4製のパドル4枚を取り付けたアジターを備えるチャンバーを用いて撹拌しながら、10g/Lのクエン酸三ナトリウム(無水物)水溶液1.0Lを添加して35℃に保温した。反応容器にさらに8.0g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液0.68Lを添加し、更に0.04mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて23g/Lに調製した水素化ホウ素ナトリウム水溶液0.041Lを添加した。反応容器にさらに0.10g/Lの硝酸銀水溶液13Lを5.0L/minで添加した。
反応容器にさらに10g/Lのクエン酸三ナトリウム(無水物)水溶液1.0Lとイオン交換水11Lを添加して、更に80g/Lのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液0.68Lを添加した。撹拌を800rpmに上げて、反応容器にさらに0.10g/Lの硝酸銀水溶液8.1Lを0.95L/minで添加した後、30℃に降温した。
反応容器にさらに44g/Lのメチルヒドロキノン水溶液8.0Lを添加し、次いで、後述する方法で調製した40℃のゼラチン水溶液を全量添加した。撹拌を1200rpmに上げて、反応容器にさらに後述する方法で調製した亜硫酸銀白色沈殿物混合液を全量添加した。
調製液のpH変化が止まった段階で、反応容器にさらに1mol/LのNaOH水溶液5.0Lを0.33L/minで添加した。その後、反応容器にさらに2.0g/Lの1−(m−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム水溶液(NaOHとクエン酸(無水物)とを用いてpH=7.0±1.0に調節して溶解した)0.18Lを添加し、更に70g/Lの1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(NaOHで水溶液をアルカリ性に調節して溶解した)0.078Lを添加した。このようにして銀平板粒子分散液A1を調製した。
−ゼラチン水溶液の調製−
SUS316L製の溶解タンクにイオン交換水16.7Lを計量した。SUS316L製のアジターで低速撹拌を行いながら、脱イオン処理を施したアルカリ処理牛骨ゼラチン(GPC重量平均分子量20万)1.4kgを添加した。更に、脱イオン処理、蛋白質分解酵素処理、および過酸化水素による酸化処理を施したアルカリ処理牛骨ゼラチン(GPC重量平均分子量2.1万)0.91kgを添加した。その後40℃に昇温し、ゼラチンの膨潤と溶解を同時に行って完全に溶解させた。得られた溶液をゼラチン水溶液として、上述の銀平板粒子分散液A1の調製に用いた。
−亜硫酸銀白色沈殿物混合液の調製−
SUS316L製の溶解タンクにイオン交換水8.2Lを計量し、100g/Lの硝酸銀水溶液8.2Lを添加した。SUS316L製のアジターで高速撹拌を行いながら、140g/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液2.7Lを短時間で添加して、亜硫酸銀の白色沈澱物を含む混合液を調製した。得られた混合液を亜硫酸銀白色沈殿物混合液として、上述の銀平板粒子分散液A1の調製に用いた。この混合液は、使用する直前に調製した。
(銀平板粒子分散液A1の特性)
銀平板粒子分散液A1をイオン交換水で希釈し、分光光度計((株)日立製作所製U−3500)を用いて分光吸収を測定したところ、吸収ピーク波長は900nmであり、半値全幅は270nmであった。
銀平板粒子分散液A1の物理特性は、25℃においてpH=9.4(アズワン(株)製KR5Eで測定)、電気伝導度8.1mS/cm(東亜ディーケーケー(株)製CM−25Rで測定)、粘度2.1mPa・s((株)エー・アンド・デイ製SV−10で測定)であった。得られた銀平板粒子分散液A1は、ユニオンコンテナーII型(低密度ポリエチレン製、販売元:アズワン(株))の20Lの容器に収納し、30℃で貯蔵した。
(平板状金属粒子分散液の脱塩および再分散)
前述の銀平板粒子分散液A1を遠沈管に800g採取して、1mol/LのNaOHおよび/または0.5mol/Lの硫酸を用いて25℃でpH=9.2±0.2に調整した。遠心分離機(日立工機(株)製himacCR22GIII、アングルローターR9A)を用いて、35℃に設定して、遠沈管中の銀平板粒子分散液A1に9000rpm60分間の遠心分離操作を行った後、上澄み液を784g捨てた。沈殿した銀平板粒子に0.2mmol/LのNaOH水溶液を加えて合計400gとし、撹拌棒を用いて手撹拌して粗分散液にした(脱塩処理)。
これと同様の操作で24本分の粗分散液を調製して合計9600gとし、SUS316L製のタンクに添加して混合した。更に、タンクにPluronic31R1(BASF社製)の10g/L溶液(メタノール:イオン交換水=1:1(体積比)の混合液で希釈)を10cm3添加した。プライミクス(株)製オートミクサー20型(撹拌部はホモミクサーMARKII)を用いて、タンク中の粗分散液に9000rpmで120分間のバッチ式分散処理(再分散処理)を施した。再分散処理中の液温は50℃に保った。再分散処理の後、タンク中の再分散液を25℃に降温してから、プロファイルIIフィルター(日本ポール(株)製、製品型式MCY1001Y030H13)を用いてシングルパスの濾過を行った。
このようにして、銀平板粒子分散液A1に脱塩処理および再分散処理を施して、銀平板粒子分散液B1を調製した。
(銀平板粒子分散液B1の特性)
銀平板粒子分散液B1の分光透過率を、銀平板粒子分散液A1と同様の方法で測定したところ、吸収ピーク波長および半値全幅は銀平板粒子分散液A1とほぼ同じ結果であった。
銀平板粒子分散液B1の物理特性は、25℃においてpH=7.6、電気伝導度0.37mS/cm、粘度1.1mPa・sであった。得られた銀平板粒子分散液B1は、ユニオンコンテナーII型の20Lの容器に収納し、30℃で貯蔵した。
<近赤外線反射層用の塗布液M1の作製>
以下、近赤外線反射層用の塗布液M1の作製について記載する。塗布液の調製に用いた原材料は、購入した素原料を希釈したり、あるいは分散物にしたりするなど、適宜加工して使用した。
(近赤外線反射層用の塗布液M1の調製)
以下の配合で、近赤外線反射層用の塗布液M1を調製した。
−塗布液M1−
水性ウレタン樹脂:ハイドランHW350
(DIC(株)製、固形分30質量%) 0.27質量部
上記銀平板粒子分散液B1 10.24質量部
1−(メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
(和光純薬工業(株)製、固形分2質量%のアルカリ性水溶液を調製)
0.61質量部
界面活性剤A:リパール870P
(ライオン(株)製、固形分1質量%イオン交換水希釈) 0.96質量部
界面活性剤B:ナロアクティーCL−95
(三洋化成工業(株)製、固形分1質量%イオン交換水希釈) 1.19質量部
メタノール 30.00質量部
蒸留水 50.73質量部
<近赤外線反射層の塗布による形成>
実施例1の断熱フィルムに対し、接着層付き支持体(PET基板;図5中の符号101)の繊維状金属粒子含有層が配置された面の裏面に、上記の近赤外線反射層用の塗布液M1を、ワイヤーバーを用いて10.6cm3/m2となるように塗布し、140℃で乾燥処理を施して、近赤外線反射層(図5には不図示)を設けた。塗布乾燥後の近赤外線反射層の膜厚は10nmであった。
得られた断熱フィルムを、実施例12の断熱フィルムとした。
[比較例1]
実施例1の断熱フィルムの作製において、表面層無しとした以外は実施例1と同様にして、比較例1の断熱フィルムを得た。
[比較例2]
実施例9の断熱フィルムの作製において、表面層無しとした以外は実施例9と同様にして、比較例2の断熱フィルムを得た。
[比較例3]
実施例10の断熱フィルムの作製において、表面層無しとした以外は実施例10と同様にして、比較例3の断熱フィルムを得た。
[比較例4]
実施例11の断熱フィルムの作製において、表面層無しとした以外は実施例11と同様にして、比較例4の断熱フィルムを得た。
[参考例1]
<ITO/Ag/ITO系の積層体である赤外線反射層>
特開平10−139489号公報の実施例1参照に記載の方法にしたがって、支持体上に、ITO/Ag/ITOの積層体である赤外線反射層を設けた。
上記のITO/Ag/ITOの積層体である赤外線反射層の表面上に、実施例1と同様にして表面層を形成して、参考例1の断熱フィルムを得た。
[参考例2]
参考例1の断熱フィルムの作製において、表面層無しとした以外は参考例1と同様にして、参考例2の断熱フィルムを得た。
[断熱ガラスの作製]
<粘着層の形成>
各実施例および比較例で作製した断熱フィルムの繊維状金属粒子含有層と対向する支持体の表面上に、粘着材を以下の方法で貼り合わせ、粘着層を形成した。粘着材としてパナック(株)製パナクリーンPD−S1(粘着層25μm)を使用して、粘着材の軽剥離セパレータ(シリコーンコートPET)を剥がしてから、支持体の表面に貼り合わせた。
<断熱ガラスの製造>
上記の方法で形成した粘着層から粘着材PD−S1の他方の重剥離セパレータ(シリコーンコートPET)を剥がし、フィルム施工液であるリアルパーフェクト(リンテック(株)製)の0.5質量%希釈液を使用してソーダ石灰珪酸塩である板ガラス(板ガラス厚み:3mmの青板ガラス)と貼り合わせて、各実施例および比較例の断熱ガラスを作製した。
[評価]
上記で得られた各実施例および比較例の断熱フィルムまたは断熱ガラスを用いて、後述する各種の評価を実施した。
<断熱フィルムの評価>
(最表面の水接触角)
各断熱フィルムにおいて、支持体よりも繊維状金属粒子含有層に近い側の最表面について、水接触角を以下の方法で測定した。
環境条件:25℃、相対湿度60%において、接触角計 Drop Master 300(協和界面化学(株) 製)を用い、作製した各断熱フィルムの表面に純水を2μl滴下して、θ/2法により接触角[°]を測定し、5回測定して得た値の平均値を最表面の水接触角とした。
得られた結果を下記表1に記載した。
(耐傷性)
環境条件:25℃、相対湿度60%においてラビングテスタ(AB301、テスター産業(株)製)を用い、作製した各断熱フィルムの表面を、スチールウール(#0000、日本スチールウール(株)製)に、200gの荷重をかけて、ストローク幅25mm、速度30mm/secで10回往復摩擦した。その後の各断熱フィルムの摩擦した表面を目視観察し、以下の評価基準に従ってランク付けした。
評価基準:
AA;真上から確認できる傷が、0〜5本
A;真上から確認できる傷が、6〜10本
B;真上から確認できる傷が、11〜20本
C;真上から確認できる傷が、21本以上
得られた結果を下記表1に記載した。
(汚れ拭き取り試験)
環境条件:25℃、相対湿度60%において、各断熱フィルム表面に黒マジック(マッキー極細(商品名:ZEBRA製))のペン先(細)にて直径5mmの円形を3周書き込み、書き込み部分を覆うのに十分な量の水をかけた。10秒後に10枚重ねに折り束ねたベンコット(商品名、旭化成(株))でベンコットの束がへこむ程度の荷重でかけた水がなくなるまで拭き取った。5名の観察者でマジック跡を目視で以下の5段階で評価し、その平均値を採用した。
評価基準:
AA;マジック跡が全く見えない
A;マジック跡がかすかに見える
B;マジック跡がうっすらと見える
C;マジック跡が見える
得られた結果を下記表1に記載した。
<断熱ガラスの評価>
(断熱性(U値)の初期値)
環境条件:85℃、相対湿度85%の恒温高湿槽で100時間保持する前の断熱性(U値)の初期値を以下の方法で評価した。
各断熱ガラスの反射スペクトルを、赤外分光機(IFS66v/S、ブルカー・オプティクス社製)を用いて波長5μm〜25μmの範囲で測定した。JIS A 5759に準拠して熱貫流率(U値)を算出した。尚、波長25μm〜50μmの反射率はJIS A 5759に従って25μmの反射率から外挿した。熱貫流率(U値)が小さいほど、断熱性が高く、好ましい。
得られた結果を、断熱性(U値)の「初期値」として下記表1に記載した。
(断熱性の湿熱経時後変化率)
環境条件:85℃、相対湿度85%の恒温高湿槽で100時間保持した後の断熱性を評価した。
各断熱ガラスを、環境条件:85℃、相対湿度85%の恒温高湿槽で100時間保持したのち、上記の初期の断熱性の評価と同様の方法で熱貫流率(U値)を測定し、湿熱経時後の熱貫流率を求めた。
湿熱処理前の初期の断熱性(湿熱前U値)に対する湿熱処理後の断熱性(湿熱後U値)の変化量(絶対値)を百分率で評価した。
計算式:湿熱経時後変化率=100×|(湿熱前U値−湿熱後U値)|/湿熱前U値
得られた結果を、断熱性(U値)の「湿熱経時後変化率」として下記表1に記載した。
Figure 2016140988
以上より、本発明の断熱フィルムは、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層を用いた場合に、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できることがわかった。
一方、比較例1〜4より、断熱フィルムの最表面の水接触角が90°未満である場合、湿熱経時後の断熱性変化が大きいことがわかった。特に比較例4より、特開2012−252172号公報の[0048]に記載されているシリコン樹脂バインダー(シリコーンバインダー)を用いた層が最表面となっている場合であっても、接触角が90°未満となるシリコーンバインダーを用いた繊維状金属粒子含有層を用いたときは、湿熱経時後の断熱性変化が大きいことがわかった。
さらに本発明の断熱フィルムの好ましい態様によれば、耐擦性や、汚れ拭き取り試験結果や、断熱性の初期値も改善できることがわかった。
各実施例の断熱フィルムを建材の窓に貼ったところ、使用しなかった場合に比べて冬場の平均で10%エアコンの消費量を抑えられた。
また、各実施例の断熱フィルムを自動車の窓に貼ったところ、冬場の平均で15%エアコンの消費量を抑えられた。
近赤外線反射層との積層の実施例12では、さらに夏場のエアコン消費量を抑えられた。
本発明の断熱フィルムの好ましい態様によれば、水の接触角110°以上であると、相対湿度90%以上の高湿度環境に断熱フィルムを配置しても、水滴による表面の曇りが目視で明らかに観察しにくくなったことから、湿熱経時後の断熱性変化が抑制できたと考えられる。また、水の接触角が110°以上の材料(サイトップ CTX−109M)は、吸水率および/または水蒸気透過率が他のバインダーと表面層に使用した材料に比べて低いことが確認できたため、水分の浸透を抑制できたと考えられる。
本発明の断熱フィルムを用いた本発明の断熱ガラスは、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できるため、本発明の断熱フィルムが窓の内側に配置されると湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる窓を提供できる。このような本発明の断熱フィルムは、ヘイズの低さと断熱性の高さを両立できる窓を含む建築物や乗物を提供することができる。さらに、既存の近赤外線遮蔽層と組合わせることで、窓の屋外側の光を屋内側に取り入れつつ、窓の屋外側からの光照射による屋内側の温度上昇を抑制でき、窓の屋外側の光が長期にわたって屋内側に取り入れる場合も屋内側から屋外側への熱交換の抑制をすることができるため、このような窓が設けられた建築物や乗物の屋内側(室内側、車内側)を望ましい環境に保つことができる。
また、本発明の断熱フィルムは、既存の窓(例えば建築物や乗物の窓)に対して、窓の内側に貼ること(内貼り)によっても、湿熱経時後の断熱性変化を抑制できる窓を提供できる。
10 支持体
20 繊維状金属粒子含有層
21 表面層
31 第1の接着層
32 第2の接着層
41 近赤外線反射層
51 粘着層
61 ガラス
101 接着層付きの支持体
102 断熱部材
103 断熱フィルム
111 断熱ガラス
IN 屋内側
OUT 屋外側

Claims (14)

  1. 支持体と、
    前記支持体の一方の面上に配置され、銀を主成分とする繊維状金属粒子およびバインダーを含む繊維状金属粒子含有層とを有する断熱フィルムであって、
    前記断熱フィルムの最表面の水接触角が90°以上である、断熱フィルム。
  2. 前記断熱フィルムの水接触角が90°以上である前記最表面が、前記支持体よりも前記繊維状金属粒子含有層に近い側の最表面である、請求項1に記載の断熱フィルム。
  3. 前記繊維状金属粒子含有層の前記支持体とは反対の面上に、さらに水接触角が90°以上である表面層を含む、請求項1または2に記載の断熱フィルム。
  4. 前記表面層の主成分が、フッ素を含有する材料またはケイ素を含有する材料である、請求項3に記載の断熱フィルム。
  5. 前記表面層の膜厚が、1μm以下である、請求項3または4に記載の断熱フィルム。
  6. 前記表面層が、単分子膜である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の断熱フィルム。
  7. 前記繊維状金属粒子含有層の前記バインダーの主成分が、ケイ素を含有する材料である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の断熱フィルム。
  8. 前記支持体の前記繊維状金属粒子含有層が配置された面とは反対の面に、さらに近赤外線遮蔽層を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の断熱フィルム。
  9. 前記断熱フィルムの最表面の水接触角が110°以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の断熱フィルム。
  10. 前記支持体が、透明フィルムである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の断熱フィルム。
  11. 前記繊維状金属粒子の平均長軸長が5〜50μmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の断熱フィルム。
  12. 窓の内側に配置され、
    前記繊維状金属粒子含有層が、前記支持体の前記窓側の面とは反対側の面上に配置される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の断熱フィルム。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の断熱フィルムと、ガラスとを積層した、断熱ガラス。
  14. 窓用透明支持体と、前記窓用透明支持体に貼り合わせた請求項1〜12のいずれか一項に記載の断熱フィルムを含む、窓。
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