JP2016139757A - 接着剤組成物、回路部材接続用接着剤シート及び半導体装置の製造方法 - Google Patents

接着剤組成物、回路部材接続用接着剤シート及び半導体装置の製造方法 Download PDF

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利泰 秋吉
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朗 永井
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慎 佐藤
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Takahiro Nakata
貴広 中田
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Abstract

【課題】接続信頼性に優れる半導体装置の作製を可能な接着剤組成物、それを用いた回路部材接続用接着剤シート、及び半導体装置の製造方法を提供する。【解決手段】(A)熱硬化性樹脂と、(B)硬化剤と、(C)モノカルボン酸と、を含む接着剤組成物であって、前記モノカルボン酸の溶解度パラメータが13.1以下であり、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の前記接続部の少なくとも一部を封止するために用いられる、接着剤組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、接着剤組成物、回路部材接続用接着剤シート及び半導体装置の製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化、薄型化に伴い、回路部材に形成された回路の高密度化が進展し、隣接する電極との間隔や電極の幅が非常に狭くなる傾向がある。これに伴い、半導体パッケージの薄型化や小型化に対する要求も高まっている。そのため、半導体チップ実装方式として、金属ワイヤを用いて接続する従来のワイヤーボンディング方式に代えて、チップ電極上にバンプと呼ばれる突起電極を形成し、基板電極とチップ電極とをバンプを介して直接接続するフリップチップ接続方式が注目されている。
フリップチップ接続方式としては、ハンダバンプを用いる方式、金バンプと導電性接着剤を用いる方式、熱圧着方式、超音波方式などが知られている。これらの方式では、チップと基板との熱膨張係数差に由来する熱ストレスが接続部分に集中して接続信頼性が低下するという問題がある。このような接続信頼性の低下を防止するために、一般に、チップと基板との間隙を充填するアンダーフィルが樹脂により形成される。アンダーフィルへの分散により熱ストレスが緩和されるため、接続信頼性を向上させることが可能である。
アンダーフィルを形成する方法としては、一般に、チップと基板とを接続した後に液状樹脂をチップと基板との間隙に注入する方法が知られている(特許文献1参照)。また、異方導電性接着フィルム(以下ACFと称する)や、非導電性接着フィルム(以下NCFと称する)等のフィルム状樹脂を用いてチップと基板とを接続する工程において、アンダーフィル形成も完了させる方法も知られている(特許文献2参照)。
一方、近年ではさらなる高機能化、高速動作を可能とするものとしてチップ間を最短距離で接続する3次元実装技術であるシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)が注目されている(非特許文献1参照)。この結果、半導体ウエハの厚さはできるだけ薄く、かつ機械的強度が低下しないことが要求されてきている。
また、半導体装置の更なる薄型化の要求に伴い、半導体ウエハをより薄くするために、ウエハの裏面を研削する、いわゆるバックグラインドが行われており、半導体装置の製造工程は煩雑になっている。そこで、工程の簡略化に適した方法としてバックグラインド時に半導体ウエハを保持する機能とアンダーフィル機能を兼ね備える樹脂の提案がなされてきている(特許文献3、4参照)。
特開2000−100862号公報 特開2003−142529号公報 特開2001−332520号公報 特開2005−028734号公報
OKIテクニカルレビュー、2007年10月/第211号、Vol.74、No.3
しかしながら、半導体装置の薄膜化に伴って、接続部の空隙や端子間のピッチがより一層狭くなってきている。このため、接続時のフィルム状樹脂の流動不足による界面への濡れ不足やフィルム状樹脂の発泡によるボイドの発生等により、フィルム状樹脂のピッチ間への充填が不十分となり、接続信頼性を低下させることがある。そこで、回路部材の接続に用いられるフィルム状接着剤には、接続信頼性を確保する点から、圧着時にボイドが発生し難く優れた埋込性を有していることや、硬化後の接着力が十分に高いことが必要とされている。
また、半導体チップの電極部分にハンダバンプを形成し、ハンダ接合により直接回路基板に半導体チップを接続するフェイスダウンボンディング方式では、良好な電気的接合を得るために、ハンダ表面及び接続端子部分の金属表面に形成される酸化皮膜を除去することが求められている。しかし、従来の接着剤では、短時間の加熱でハンダ接合を行う場合、ハンダ表面及び接続端子部分の金属表面の酸化膜を除去するためのフラックス活性が得られず、ハンダの濡れが不十分となり、接続信頼性を低下させることがある。
また、ハンダ接続時にハンダを溶融させる為260℃の高温がかかる、これに対して従来用いられるフラックス剤は、揮発し難く、ボイドの発生を一層抑制できるという観点からジカルボン酸を用いることが多かった。
しかしジカルボン酸を用いた場合、熱硬化性樹脂と硬化剤による熱硬化反応中で、フラックス剤のカルボン酸がエステル結合し、硬化物のネットワークに取込まれてしまい、信頼性試験にてエステル加水分解の影響によるネットワーク破壊の影響が大きく、基板やチップに対する接着力を著しく低下させていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルム状にしたときの埋込性に十分に優れるとともに、接続信頼性に優れる半導体装置の作製を可能とする接着剤組成物、それを用いた回路部材接続用接着剤シート、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、(A)熱硬化性樹脂と、(B)硬化剤と、(C)モノカルボン酸で構成されており、前記モノカルボン酸の溶解度パラメータが13.1以下である接着剤組成物を提供する。
本発明の接着剤組成物は、(A)熱硬化性樹脂と、(B)硬化剤と、(C)モノカルボン酸と、を含む接着剤組成物であって、前記(C)モノカルボン酸の溶解度パラメータが13.1以下であり、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の前記接続部の少なくとも一部を封止するために用いられる、接着剤組成物である。
本発明の接着剤組成物によれば、上記(A)、(B)、(C)成分を含むことにより、接続時の埋込性に優れ、ボイドの発生を十分に低減できる。
本発明の接着剤組成物において、耐熱性及び接着性を向上する観点から、(A)成分がエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
(C)成分の溶解度パラメータが13.1以下であるにより樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒に溶解する。その後、フィルム形成工程で、加熱により有機溶媒が気化することで、溶解していた(C)成分が再度析出し、微粉末としてフィルム内に均一に存在する。フラックス剤の比表面積が増え、酸化膜との接触点が多くなる為、酸化膜を除去しやすくなり、ハンダ接続性が向上する。よって、(C)成分を配合することで十分なハンダ濡れ性を発現することができる。
また本発明の接着剤組成物によれば、一度溶解した(C)成分が微粉末結晶となりフィルム内に均一に再析出する為、大粒径の結晶が存在しない。これにより半導体チップを熱圧着により接続する際、チップとチップ、あるいはチップと基板の間に大粒径物が入り、チップを破壊するチップクラックという現象を起こり難くすることが出来る。
同様にフィルム内に大粒径(C)成分が存在しない為、バンプ間に大粒径物が噛み込むことも無く、導通不良の発生を抑制することが出来る。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分の融点が150℃以下である前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも1つの置換基を有する前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも1つの電子供与基を有する前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも1つの電子供与基を持ち、その電子供与基が2つ以上の炭素から構成されている前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも1つのアルキル基を有する前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも2つの置換基を有する前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分のカルボキシル基のα位に3つの置換基を有する前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分がヒドロキシル基を有する前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分がヒドロキシルメチル基を有する前記の接着剤組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、前記(C)成分として、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸を含む、前記の接着性組成物に関する。
また、本発明の接着剤組成物は、相対向しハンダ接合される回路電極を有する回路部材間に介在させ、前記回路部材同士を接着するために用いられる、前記の接着剤組成物に関する。
本発明の接着剤組成物は、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置における前記接続部の少なくとも一部を封止するために、好適に用いることができる。このような用途によれば、耐リフロー性及び接続信頼性に優れる半導体装置が実現される。
耐リフロー性の向上には、高温における吸湿後の接着力の低下を抑制することが必要である。従来、フラックス剤としてカルボン酸が用いられているが、従来のフラックス剤では、以下の理由により接着力の低下が生じていると、本発明者らは考えている。
通常、熱硬化性樹脂と硬化剤とが反応して硬化反応が進むが、この際にフラックス剤であるカルボン酸が当該硬化反応に取り込まれる。すなわち、熱硬化性樹脂の置換基とフラックス剤のカルボキシル基とが反応することにより、エステル結合が形成される場合がある。このエステル結合は、吸湿等による加水分解等を生じやすく、このエステル結合の分解が、吸湿後の接着力の低下の一因であると考えられる。
これに対して、本発明の接着剤組成物は、フラックス剤としてモノカルボン酸を含有している。そのため、本発明では、硬化反応にカルボン酸が取込まれた場合において、エステル部位は高分子ネットワークの末端に位置するものであり、エステル加水分解が起きてもネットワーク破壊の影響は小さく、接着力は低下し難く、信頼性に優れる半導体装置が実現できる。
また、本発明では、カルボキシル基の近傍に置換基が存在するため、立体障害により、(C)成分は硬化反応に取込まれ難く、エステル結合が生成し難くなっている。更に、エステル部位が形成されても、立体障害の影響により水分子が近接し難い為、エステル加水分解が起こり難いと考えられる。
また、本発明では、カルボキシル基の近傍に電子供与基が存在するため、エステル結合部の電子密度があがりエステル結合の分解が抑制されると考えられる。
これらの理由により、本発明の接着剤組成物では、吸湿等による組成変化が生じにくく、優れた接着力が維持される。また、上述の作用は、熱硬化性樹脂と硬化剤との硬化反応がフラックス剤により阻害されにくく、エステル加水分解を抑制することもでき、当該作用により、熱硬化性樹脂と硬化剤との硬化反応の十分な進行による接続信頼性の向上という効果も期待できる。
本発明の接着剤組成物は、相対向しハンダ接合される回路電極を有する回路部材間に介在させ、回路部材同士を接着するために用いることができる。この場合、回路部材同士を熱圧着することにより、ボイド発生を抑制しつつ十分な接着力で接着することができ、且つ、回路電極同士を良好にハンダ接合できる。これにより、接続信頼性に優れた接続体を得ることができる。
本発明の回路部材接続用接着剤シートは、支持基材と、該支持基材上に設けられ、上記本発明の接着剤組成物からなる接着剤層とを備えることを特徴とする。
上記支持基材は、プラスチックフィルムと該プラスチックフィルム上に設けられた粘着剤層とを備え、上記接着剤層が粘着剤層上に設けられていることが好ましい。これにより、本発明の回路部材接続用接着剤シートは、半導体ウエハのバックグラインド時に半導体ウエハを安定して保持することができる。
また、本発明の回路部材接続用接着剤シートは、相対向しハンダ接合される回路電極を有する回路部材間に介在させ、回路部材同士を接着するために用いることができる。この場合、回路部材同士を熱圧着することにより、ボイド発生を抑制しつつ十分な接着力で接着することができ、且つ、回路電極同士を良好にハンダ接合できる。これにより、接続信頼性に優れた接続体を得ることができる。
本発明は、また、主面の一方に複数の回路電極を有する半導体ウエハを準備し、該半導体ウエハの回路電極が設けられている側に、本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を設ける工程と、半導体ウエハの回路電極が設けられている側とは反対側を研削して半導体ウエハを薄化する工程と、薄化した半導体ウエハ及び接着剤層をダイシングしてフィルム状接着剤付半導体素子に個片化する工程と、フィルム状接着剤付半導体素子の回路電極を半導体素子搭載用支持部材の回路電極にハンダ接合する工程とを備える半導体装置の製造方法を提供する。
本発明の製造方法によれば、上記接着剤組成物を用いることにより、半導体装置の耐リフロー性及び接続信頼性を向上させることができる。
本発明は、また、上記製造方法によって得られる、半導体装置を提供する。本発明の半導体装置は、耐リフロー性及び接続信頼性に優れる。
本発明によれば、フィルム状にしたときの埋込性に十分に優れるとともに、吸湿に強く、接続信頼性に優れる半導体装置の作製を可能とする接着剤組成物及びそれを用いた回路部材接続用接着剤シートを提供することができる。また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、接続信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
本発明に係る回路部材接続用接着剤シートの好適な一実施形態を示す模式断面図である。 本発明に係る回路部材接続用接着剤シートの好適な一実施形態を示す模式断面図である。 本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。 本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。 本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。 本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。 本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
図1は、本発明に係る回路部材接続用接着剤シートの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す回路部材接続用接着剤シート10は、支持基材3と、該支持基材3上に設けられ、本発明の接着剤組成物からなる接着剤層2と、接着剤層2を被覆する保護フィルム1とを備えている。
まず、接着剤層2を構成する本実施形態の接着剤組成物について説明する。
本実施形態の接着剤組成物は、(A)熱硬化性樹脂と、(B)硬化剤と、(C)溶解度パラメータ13.1以下のモノカルボン酸と、を含む。
(A)熱硬化性樹脂としては、特に制限なく用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、シアノアクリレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂及びシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。耐熱性及び接着性を向上する観点から、(A)成分として、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂ハンドブック(新保正樹編、日刊工業新聞社)等に記載されるエポキシ樹脂を広く使用することができる。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することができる。
(A)成分の配合量は、硬化後の接着剤の耐熱性、接着性を維持し、高信頼性を発現させるため、樹脂成分である熱可塑性樹脂、及び(A)成分の合計100質量部に対して5〜88質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることが更に好ましく、15〜35質量部であることが特に好ましい。(A)成分の配合量が5質量部未満では、硬化物の凝集力が低下し、接続信頼性が低下し易くなる。一方、(A)成分の配合量が88質量部を超えると、硬化前のフィルム状態における低分子量成分が多くなりすぎてフィルム状形体を保持しにくくなる。
(A)成分は、高温での接続時に分解して揮発成分が発生することを抑制する観点から、接続時の温度が250℃の場合は、250℃における熱重量減少量率が5%以下の樹脂を用いることが好ましく、300℃の場合は、300℃における熱重量減少量率が5%以下の樹脂を用いることが好ましい。
(B)硬化剤としては、例えば、フェノール系、イミダゾール系、ヒドラジド系、チオール系、ベンゾオキサジン、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド及び有機過酸化物系の硬化剤を挙げることができる。ところで、回路部材接続用接着剤シート10は、半導体ウエハへの貼付、半導体ウエハの研削時の回路電極の保護、半導体ウエハのダイシング、及び得られた半導体素子の回路電極への接合等の半導体装置の製造の一連の工程に適用される際、長期間の常温環境下に暴露されると共に、製造工程での熱、湿度、光等に影響されずに回路電極への接合時に使用可能な特性を保持する必要がある。この点に加えて、使用可能な期間を延長できる必要がある。
(B)成分としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ホスフィン系硬化剤が挙げられる。以下、各硬化剤について説明する。
(i)イミダゾール系硬化剤
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。これらの中でも、優れた硬化性、保存安定性及び接続信頼性の観点から、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、これらをマイクロカプセル化した潜在性硬化剤としてもよい。
イミダゾール系硬化剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜45質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましく、10〜35部であることが更に好ましく、10〜25部であることが特に好ましい。配合量が0.1質量部未満では、硬化反応が進み難くなる傾向にある。一方、配合量が45質量部を超えると、接着剤組成物の硬化剤の割合が多くなりすぎるため、相対的に熱硬化性樹脂の割合が少なくなり、耐熱性や接着性などの特性を低下させる傾向にある。また、硬化剤が過剰に残存し、吸水率が高くなり、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
(ii)フェノール樹脂系硬化剤
フェノール樹脂系硬化剤としては、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール樹脂及び各種多官能フェノール樹脂を使用することができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
上記(A)成分に対するフェノール樹脂系硬化剤の当量比(フェノール性水酸基/熱硬化性官能基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から、0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.5〜1.0が更に好ましい。当量比が0.3未満では、硬化反応が進み難くなる傾向にある。一方、当量比が1.0を超えると、接着剤組成物の硬化剤の割合が多くなりすぎるため、相対的に熱硬化性樹脂の割合が少なくなり、耐熱性や接着性などの特性を低下させる傾向にある。また、硬化剤が過剰に残存し、吸水率が高くなり、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
(iii)酸無水物系硬化剤
酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを使用することができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
上記(A)成分に対する酸無水物系硬化剤の当量比(酸無水物基/熱硬化性官能基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から、0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.5〜1.0が更に好ましい。当量比が0.3未満では、硬化反応が進み難くなる傾向にある。一方、当量比が1.0を超えると、接着剤組成物の硬化剤の割合が多くなりすぎるため、相対的に熱硬化性樹脂の割合が少なくなり、耐熱性や接着性などの特性を低下させる傾向にある。また、硬化剤が過剰に残存し、吸水率が高くなり、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
(iv)アミン系硬化剤
アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドを使用することができる。
上記(A)成分に対するアミン系硬化剤の当量比(アミン/熱硬化性樹脂、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.5〜1.0が更に好ましい。当量比が0.3未満では、硬化反応が進み難くなる傾向にある。一方、当量比が1.0を超えると、接着剤組成物の硬化剤の割合が多くなりすぎるため、相対的に熱硬化性樹脂の割合が少なくなり、耐熱性や接着性などの特性を低下させる傾向にある。また、硬化剤が過剰に残存し、吸水率が高くなり、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
(v)ホスフィン系硬化剤
ホスフィン系硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−メチルフェニル)ボレート及びテトラフェニルホスホニウム(4−フルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
ホスフィン系硬化剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。ホスフィン系硬化剤の含有量が0.1質量部未満であると硬化反応が進み難くなる傾向があり、10質量部を超えると金属接合が形成される前に接着剤組成物が硬化し、接続不良が発生する傾向がある。
フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びアミン系硬化剤は、それぞれ1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。イミダゾール系硬化剤及びホスフィン系硬化剤はそれぞれ単独で用いてもよいが、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はアミン系硬化剤と共に用いてもよい。
接着剤組成物が(B)成分として、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はアミン系硬化剤を含む場合、酸化膜を除去するフラックス活性を示し、接続信頼性、及び絶縁信頼性をより向上することができる。
(B)の平均粒径は、分散性とフィルムの平坦性確保の観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましい。平均粒径が10μmより大きいとフィルム加工時のワニスで硬化剤が沈降しやすく作業性が悪く、また、大粒径硬化剤によりフィルムの平坦性が悪くなる。
(C)成分は、溶解度パラメータ13.1以下のモノカルボン酸化合物であり、本実施形態の接着剤組成物において、フラックス剤として機能する。すなわち、(C)成分は、ハンダの融点よりも低い温度に融点を持ち、溶融した後にはんだ表面及び回路電極等の金属表面の酸化物を除去することで、接着剤層2のハンダ濡れ性を向上することができる。
溶解度パラメータ(SP値)とは、沖津法によって求めることができる。なお、沖津法は当業界で周知のSP値を算出する方法の一つであり、例えば、日本接着学会誌Vol.29、No.6(1993年)249〜259頁に詳述されている。本明細書における溶解度パラメータは、沖津による各原子団のモル引力定数(ΔF)とモル容積(Δv)の値を用い、溶解度パラメータ=(ΣΔF/ΣΔv)として算出した値を示す。
(C)成分は樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒に溶解する。その後、フィルム形成工程で、加熱により有機溶媒が気化することで、溶解していた(C)成分が再度析出し、微粉末としてフィルム内に均一に存在する。よって、フラックス剤の比表面積が増え、酸化膜との接触点が多くなる為、酸化膜を除去しやすくなり、ハンダ接続性が向上する。
(C)成分の溶解度パラメータは13.1以下であり、12.8以下であることが好ましく、12.5以下であることがより好ましい。(C)成分の溶解度パラメータが13.1を超えると、樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒に溶融せず、塗工外観が悪くなる。また、フィルム内で大粒径の粉末として存在し、フラックス剤と酸化膜の接触点が少ない為、フラックス活性を十分に発現させ難く、ハンダ接続性が悪くなる傾向がある。
(C)成分として、例えば、クロトン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、フェニル酢酸、チグリン酸、ピコリン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ベンジル酸、安息香酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アセチルサリチル酸、が挙げられる。しかし、溶解度パラメータ13.1以下であるモノカルボン酸化合物であれば、これらに限定されるものではない。なお、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸が好ましい。
(C)成分の融点は、熱圧着時に微粉末フラックス剤が溶融し、液状化することでフラックス性が向上するという観点から、150℃以下であることが好ましく、50〜150℃であることがより好ましく、60〜140℃であることが更に好ましく、80〜110℃であることが特に好ましい。(C)成分の融点が50℃未満では、フィルム形成時の乾燥温度で(C)成分が、熱硬化性成分と反応し、保存性が損なわれる傾向がある。また、ウエハへのラミネート工程でかかる熱により(C)成分と熱硬化性成分が反応し、粘度が上昇し、ハンダ接続性を悪化させる傾向がある。一方、融点が150℃を超えると、熱圧着工程で(C)成分の溶融が遅く、フラックス効果の発現するタイミングが遅くなるため、熱硬化性樹脂と硬化剤の反応が先に進行し、ハンダ接続性を悪化させる傾向がある。
フラックス化合物の融点は、一般的な融点測定装置を用いて測定できる。融点を測定する試料は、微粉末に粉砕され且つ微量を用いることで試料内の温度の偏差を少なくすることが求められる。試料の容器としては一方の端を閉じた毛細管が用いられることが多いが、測定装置によっては2枚の顕微鏡用カバーグラスに挟み込んで容器とするものもある。また急激に温度を上昇させると試料と温度計との間に温度勾配が発生して測定誤差を生じるため融点を計測する時点での加温は毎分1℃以下の上昇率で測定することが望ましい。
(C)成分の配合量は、接着剤組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。(F)成分の配合量が0.5質量部未満ではハンダ濡れ性を改善する効果が十分ではなく、ハンダ接続性が悪くなる傾向がある。一方、20質量部を超えると、酸化膜除去に使用されなかった(C)の過剰成分が熱硬化反応のネットワークに取込まれ、樹脂の機械特性を低下させる傾向がある。
(C)成分はエステル加水分解抑制による信頼性向上の観点から、カルボキシル基に隣接するα炭素を有しており、少なくとも1つ以上の置換基を有していることが好ましい。これによりα炭素の置換基が立体障害となり、水分子がエステル結合部位に接近し難く、エステル加水分解が起こり難くなるため、接着力と信頼性が向上する。
α位炭素に有する置換基は電子供与基であることが好ましい。エステルの加水分解は水分子の求核置換反応の一種であるため、電子供与基がエステル結合部位の近くに存在し、カルボニル炭素を電子リッチにすることで、加水分解の求核攻撃を受け難く、信頼性が向上する。電子供与性基としては、例えば、アルキル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基が挙げられる。また、(C)成分は、カルボキシル基のα位に少なくとも1つのアルキル基を有することが好ましい。
電子供与性が強くなると、上述のエステル結合の分解を抑制する効果が得られ易くなる傾向にある。また、電子供与基の立体障害が大きいと、上述のカルボキシル基とエポキシ樹脂との反応を抑制する効果が得られ易くなり、電子供与基は、電子供与性及び立体障害をバランス良く有していることが好ましい。
また、電子供与基は2つ以上の炭素から構成されている置換基が好ましい。カルボキシル基の水素結合の影響によりフラックス剤は結晶構造を取りやすいが、α炭素に2つ以上の炭素数からなる置換基が結合することで、カルボキシル基の水素結合間に置換基が介入し、その物自体の結晶剛直性が低くなり、融点が下がる為、フラックス性が向上する。また、(C)成分において、カルボキシル基のα位に、少なくとも2つの置換基を有し、さらには、3つの置換基を有することが好ましい。
また、電子供与基としては、(A)成分と反応し難い官能基であるアルキル基、水酸基又はアルコキシ基が好ましいく、カルボキシル基の水素結合に介入する置換基として、極性を持たないアルキル基がより好ましい。
(C)成分としては、結晶での安定性の観点からヒドロキシル基を有する化合物を用いることが好ましく、ヒドロキシルメチル基を有する化合物を用いることがより好ましい。これにより、接続時の高温によっても揮発し難く、ボイドの発生を一層抑制でき、半導体装置の耐リフロー性及び接続信頼性を一層向上させることができる。
樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒は、特に限定されないが、(A)成分と(C)成分を溶解し、接着剤層形成時の揮発性などを沸点から考慮して決めることが好ましい。具体的には、例えば、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶媒は接着剤層形成時に接着剤層の硬化が進みにくい点で好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態の接着剤組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂成分(以下、(D)成分とする。)を含有していてもよい。(D)成分を含有する接着剤組成物は、耐熱性及びフィルム形成性に一層優れる。
(D)成分としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリル酸共重合体が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
(D)成分は、接着剤組成物のフィルム形成性を良好にすることができる。フィルム形成性とは、接着剤組成物をフィルム状とした場合に、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械特性を示すものである。通常の状態(例えば、常温)でフィルムとしての取扱いが容易であると、フィルム形成性が良好であるといえる。上述した熱可塑性樹脂の中でも、耐熱性及び機械強度に優れることから、ポリイミド樹脂やフェノキシ樹脂を使用することが好ましい。
(D)成分の配合量は、樹脂成分である(D)成分と(A)成分の合計100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、15〜40質量部であることがより好ましく、20〜35質量部であることが更に好ましい。(D)成分の配合量がこの範囲にあると、接着剤組成物のフィルム形成性を良好にしつつ、熱圧着時に流動性を示し、バンプと回路電極間の樹脂排除性を良好にできる。(D)成分の配合量が10質量部未満では、フィルム形成性が低下したり、支持基材と保護フィルムの脇からはみ出したりする傾向がある。一方、(D)の配合量が50質量部を超えると、熱圧着時の流動性が低下し、バンプと電極間からの排除性が低下する傾向がある。
(D)成分の重量平均分子量は1万〜80万であることが好ましく、3万〜50万であることがより好ましく、3.5万〜10万であることが更に好ましく、4万〜8万であることが特に好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、シート状又はフィルム状とした接着剤層2の強度、可とう性を良好にバランスさせることが容易となるとともに接着剤層2のフロー性が良好となるため、配線の回路充填性(埋込性)を十分確保できる。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
また、フィルム形成性を維持しつつ、硬化前の接着剤層2に粘接着性を付与する観点から、(D)成分のガラス転移温度は、20〜170℃であることが好ましく、25〜120℃がより好ましい。(D)成分のガラス転移温度が20℃未満では室温でのフィルム形成性が低下し、バックグラインド工程での半導体ウエハの加工中に接着剤層2が変形し易くなる傾向があり、170℃を超えると接着剤層2を半導体ウエハに貼り付ける際の貼付温度が170℃よりも高温にする必要が生じるため、(A)成分の熱硬化反応が進行し、接着剤層2の流動性が低下して接続不良が発生し易くなる傾向がある。
本実施形態の接着剤組成物は、必要に応じて、無機フィラー(以下、(E)成分とする。)を含有していてもよい。(E)成分によって、接着剤組成物の粘度、接着剤組成物の硬化物の物性等を制御することができる。具体的には、(E)成分によれば、例えば、接続時のボイド発生の抑制、接着剤組成物の硬化物の吸湿率の低減、等を図ることができる。
接着剤組成物は(E)成分を含むことで、硬化後の接着剤層2の吸湿率及び線膨張係数を低減し、弾性率を高くすることができるため、作製される半導体装置の接続信頼性を向上することができる。また、(E)成分としては、接着剤層2における可視光の散乱を防止して可視光透過率を向上するために、可視光透過率を低減しない無機フィラーを選択することができる。可視光透過率の低下を抑制可能な(E)成分として、可視光の波長よりも細かい粒子径を有する無機フィラーを選択すること、あるいは、接着剤組成物の屈折率に近似の屈折率を有する無機フィラーを選択することが好ましい。
可視光の波長よりも細かい粒子径を有する(E)成分としては、透明性を有するフィラーであれば特にフィラーの組成に制限はなく、平均粒径0.3μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。また、係る無機フィラーの屈折率は、1.46〜1.7であることが好ましい。
接着剤組成物の屈折率に近似の屈折率を有する(E)成分としては、接着剤組成物を作製し、屈折率を測定した後、該屈折率に近似の屈折率を有する無機フィラーを選定することができる。該無機フィラーとして、接着剤層2の半導体チップと回路基板との空隙への充填性の観点及び接続工程でのボイドの発生を抑制する観点から、微細なフィラーを用いることが好ましい。このような無機フィラーの平均粒径は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましく、0.3〜1μmであることが更に好ましい。平均粒径が0.01μm未満では、粒子の被表面積が大きくなり接着剤組成物の粘度が増加して、突起電極への埋め込み性が悪くなり、ボイドの残留が置きやすくなる。 一方で、5μmを超えると可視光の散乱が発生し、可視光透過率が低下する。
接着剤組成物の屈折率に近似の屈折率を有する(E)成分の屈折率は、接着剤組成物の屈折率±0.06の範囲であることが好ましい。例えば、接着剤組成物の屈折率が1.60であった場合、屈折率が1.54〜1.66である無機フィラーを好適に用いることができる。屈折率は、アッベ屈折計を用いナトリウムD線(589nm)を光源として測定することができる。このような無機フィラーとしては、複合酸化物フィラー、複合水酸化物フィラー、硫酸バリウム及び粘土鉱物が挙げられ、具体的には、コージェライト、フォルスイト、ムライト、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、バリウム又はシリカチタニアを使用することができる。 なお、これらの無機フィラーは2種以上を併用して用いることができる。
また、(E)成分は、接着剤層2の弾性率を向上する観点から、線膨張係数が0〜700℃の温度範囲で7×10−6/℃以下であることが好ましく、3×10−6/℃以下であることがより好ましい。
(E)成分の配合量は、(E)成分を除く接着剤組成物100質量部に対して、25〜200質量部であることが好ましく、50〜150質量部であることがより好ましく、75〜125質量部であることが更に好ましい。(E)成分の配合量が25質量部未満では接着剤組成物から形成される接着剤層2の線膨張係数の増大と弾性率の低下を招き易くなる。このため、圧着後の半導体チップと基板との接続信頼性が低下し易く、さらに、接続時のボイド抑制効果も得られ難くなる。一方、(E)成分の含有量が200質量部を超えると、接着剤組成物の溶融粘度が増加し、半導体チップと接着剤層2との界面又は回路基板と接着剤層2との界面の濡れ性が低下することによって、剥離又は埋め込み不足によるボイドの残留が起き易くなる。
本実施形態の接着剤組成物は、必要に応じて、有機微粒子(以下、(F)成分とする。)を含有していてもよい。(F)成分によって、接着剤組成物の接着性等を制御することができる。具体的には、(F)成分によれば、架橋構造を有するため、又は超高分子量樹脂であるため、有機溶剤に溶解しないことから、粒子形状を維持したままで接着剤組成物中に配合することができる。このため、硬化後の接着剤層2中に(F)成分を島状に分散することができ、接続体の強度を高く保つことができる。それにより、接着剤組成物は応力緩和性を有する耐衝撃緩和剤としての機能を付与することが出来る。
(F)成分としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂等を成分として含む共重合体が挙げられる。有機微粒子としては、接着剤組成物への分散性、応力緩和性、接着性向上の観点から、分子量が100万以上の有機微粒子又は三次元架橋構造を有する有機微粒子が好ましい。このような有機微粒子としては、(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル共重合体又は複合体から選ばれる1種類以上が挙げられる。ここで、「分子量が100万以上の有機微粒子又は三次元架橋構造を有する有機微粒子」とは、超高分子量であるが故に溶媒への溶解性が乏しいもの、あるいは三次元網目構造を有しているため溶媒への溶解性が乏しいものである。また、(E)成分として、コアシェル型の構造を有し、コア層とシェル層で組成が異なる有機微粒子を用いることもきる。コアシェル型の有機微粒子として、具体的には、シリコーン−アクリルゴムをコアとてアクリル樹脂をガラフトした粒子、アクリル共重合体にアクリル樹脂をグラフトとした粒子が挙げられる。
(F)成分は、平均粒径が0.1〜2μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満では接着剤組成物の溶融粘度が増加し、接続時のハンダ濡れ性を妨げる傾向があり、2μmを超えると溶融粘度の低減効果が少なくなり、接続時にボイド抑制効果が得られ難い傾向にある。
(F)成分の配合量は、接続時のボイド抑制と接続後の応力緩和効果を接着剤層2に付与させるため、(F)成分を除く接着剤組成物100質量部に対して、5〜20質量部であることが好ましい。有機微粒子の配合量が5質量部未満では接続時のボイドを抑制する効果を発現し難くなると共に、応力緩和効果も発現され難くなる傾向があり、20質量部を超えると流動性が低くなるためハンダ濡れ性が低下し残留ボイドの原因となると共に、硬化物の弾性率が低くなりすぎて接続信頼性が低下する傾向にある。
接着剤組成物には、フィラーの表面を改質し異種材料間の界面結合を向上させ接着強度を増大するために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系及びアルミニウム系のカップリング剤が挙げられ、中でも効果が高い点でシラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を向上するために、イオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては特に制限はない。例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤が挙げられる。
接着剤組成物は、半導体チップと回路基板とを接続した後の温度変化や、加熱吸湿による膨張等を抑制し、高接続信頼性を達成するため、硬化後の接着剤層2の40〜100℃における線膨張係数が60×10−6/℃以下であることが好ましく、55×10−6/℃以下であることがより好ましく、50×10−6/℃以下であることが更に好ましい。硬化後の接着剤層2の線膨張係数が60×10−6/℃を超えると、実装後の温度変化や加熱吸湿による膨張によって半導体チップの接続端子と回路基板の配線との間での電気的接続が保持できなくなる場合がある。また、回路部材接続用接着剤シート10は、接着剤層2を構成する接着剤組成物に導電粒子を含有させて異方導電性接着フィルム(ACF)とすることができるが、導電粒子を含有させずに非導電性接着フィルム(NCF)とすることが好ましい。
接着剤組成物から形成される接着剤層2は、250℃10秒加熱した後、示差走査熱量測定(以下、「DSC」という)で測定される反応率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、回路部材接続用組成物シートを室温で14日間保管した後、DSCで測定される接着剤層2の反応率が10%未満であることが好ましい。これにより、本実施形態の接着剤組成物を用いることで、接続時の反応性に十分に優れ、かつ、保存安定性にも優れるフィルム状接着剤を得ることができる。
接着剤層2は、未硬化時の可視光透過率が5%以上であることが好ましく、可視光透過率が8%以上であることがより好ましく、可視光透過率が10%以上であることが更に好ましい。可視光透過率が5%未満ではフリップチップボンダーでの認識マーク識別が行えなくなり、位置合わせ作業ができなくなる傾向がある。一方、可視光透過率の上限に関しては特に制限はない。
可視光透過率は、株式会社日立製作所製U−3310形分光光度計を用いて測定することができる。例えば、膜厚50μmの帝人デュポンフィルム株式会社製PETフィルム(ピューレックス、555nmでの透過率86.03%、「ピューレックス」は登録商標)を基準物質としてベースライン補正測定を行った後、PETフィルムに25μmの厚みで接着剤層2を形成した後、400〜800nmの可視光領域の透過率を測定する。フリップチップボンダーで使用されるハロゲン光源とライトガイドの波長相対強度において550〜600nmが最も強いことから、本明細書においては555nmにおける透過率を用いて接着剤層2の透過率の比較を行っている。
接着剤層2は、上述した本実施形態に係る接着剤組成物を溶剤に溶解若しくは分散してワニスとし、このワニスを保護フィルム(以下、場合により「第一のフィルム」という)1上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって形成することができる。その後、接着剤層2に支持基材3を常温〜80℃で積層し、本実施形態の回路部材接続用接着剤シート10を得ることができる。また、接着剤層2は、上記ワニスを支持基材3上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって形成することもできる。
保護フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることができる。剥離性の観点から、保護フィルム1として、ポリテトラフルオロエチレンフィルムのようなフッ素樹脂からなる表面エネルギーの低いフィルムを用いることも好ましい。
保護フィルム1の剥離性を向上するために、保護フィルム1の接着剤層2を形成する面をシリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の離型剤で処理することが好ましい。市販のものとして、例えば、帝人デュポンフィルム株式会社製の「A−63」(離型処理剤:変性シリコーン系)や、「A−31」(離型処理剤:Pt系シリコーン系)を入手することができる。
保護フィルム1は、厚みが10〜100μmであることが好ましく、10〜75μmであることがより好ましく、25〜50μmであることが特に好ましい。この厚みが10μm未満では塗工の際、保護フィルムが破れる傾向があり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
上記ワニスを保護フィルム1(又は支持基材3)上に塗布する方法としては、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等、一般に周知の方法が挙げられる。
接着剤層2の厚みは、特に制限はないが、5〜200μmが好ましく、7〜150μmであることがより好ましく、10〜100μmであることが更に好ましい。厚みが5μmより小さいと、十分な接着力を確保するのが困難となり、回路基板の凸電極を埋められなくなる傾向があり、200μmより厚いと経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる。
支持基材3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。また、支持基材3は、上記の材料から選ばれる2種以上が混合されたもの、又は、上記のフィルムが複層化されたものでもよい。
支持基材3の厚みは、特に制限はないが、5〜250μmが好ましい。厚みが5μmより薄いと、半導体ウエハの研削(バックグラインド)時に支持基材が切れる可能性があり、250μmより厚いと経済的でなくなるため好ましくない。
支持基材3は、光透過性が高いことが好ましく、具体的には、500〜800nmの波長域における最小光透過率が10%以上であることが好ましい。
また、支持基材3として、上記プラスチックフィルム(以下、場合により「第二のフィルム」という)上に粘着剤層が積層されたものを用いることができる。
図2は、本実施形態に係る回路部材接続用接着剤シートの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す回路部材接続用接着剤シート11は、プラスチックフィルム3bと該プラスチックフィルム3b上に設けられた粘着剤層3aとを有する支持基材3と、該粘着剤層3a上に設けられ、本実施形態の接着剤組成物からなる接着剤層2と、接着剤層2を被覆する保護フィルム1とを備えている。
第二のプラスチックフィルム3bと粘着剤層3aとの密着性を向上させるために、第二のフィルムの表面には、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理を施してもよい。
粘着剤層3aは、室温で粘着力があり、被着体に対する必要な密着力を有することが好ましく、かつ、放射線等の高エネルギー線や熱によって硬化する(すなわち、粘着力を低下させる)特性を備えるものが好ましい。粘着剤層3aは、例えば、アクリル系樹脂、各種合成ゴム、天然ゴム、ポリイミド樹脂を用いて形成することができる。粘着剤層3aの厚みは、通常5〜20μm程度である。
上述した回路部材接続用接着剤シート10及び11は、相対向しハンダ接合される回路電極を有する回路部材と半導体素子との間又は半導体素子同士の間に介在させ、回路部材と半導体素子又は半導体素子同士を接着するために用いることができる。この場合、回路部材と半導体素子又は半導体素子同士を熱圧着することにより、ボイド発生を抑制しつつ十分な接着力で接着することができ、且つ、回路電極同士を良好にハンダ接合できる。これにより、接続信頼性に優れた接続体を得ることができる。また、回路部材接続用接着剤シート10及び11は、シリコン貫通電極を用いた積層技術における接着剤として用いることも可能である。
次に、回路部材接続用接着剤シート10を用いて半導体装置を製造する方法について説明する。
図3〜図7は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の好適な一実施形態を説明するための模式断面図である。本実施形態の半導体装置の製造方法は、
(a)主面の一方に複数の回路電極を有する半導体ウエハを準備し、該半導体ウエハの回路電極が設けられている側に、本実施形態の接着剤組成物からなる接着剤層を設ける工程と、(b)半導体ウエハの回路電極が設けられている側とは反対側を研削して半導体ウエハを薄化する工程と、
(c)薄化した半導体ウエハ及び接着剤層をダイシングしてフィルム状接着剤付半導体素子に個片化する工程と、
(d)フィルム状接着剤付半導体素子の回路電極を半導体素子搭載用支持部材の回路電極にハンダ接合する工程と、
を備える。
本実施形態における(a)工程では、上述の接着剤シート10の接着剤層2を半導体ウエハの回路電極が設けられている側に貼付けることにより、接着剤層が設けられる。また、本実施形態における(d)工程では、加熱によりハンダ接合が行われるとともに、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との間に介在するフィルム状接着剤の硬化も行われる。以下、図面を参照しながら、各工程について説明する。
(a)工程
先ず、回路部材接続用接着剤シート10を所定の装置に配置し、保護フィルム1を剥がす。続いて、主面の一方に複数の回路電極20を有する半導体ウエハAを準備し、半導体ウエハAの回路電極が設けられている側に接着剤層2を貼付け、支持基材3/接着剤層2/半導体ウエハAが積層された積層体を得る(図3を参照)。回路電極20には、ハンダ接合用のハンダが塗布されたバンプが設けられている。なお、半導体素子搭載用支持部材の回路電極にハンダを設けることもできる。
上記(a)工程において、支持基材3/接着剤層2/半導体ウエハAが積層された積層体を得る方法としては、市販のフィルム貼付装置又はラミネータを使用することができる。半導体ウエハAにボイドの巻き込み無く、接着剤層2を貼り付けるため、貼付装置には加熱機構及び加圧機構が備わっていることが望ましく、真空吸引機構が備わっていることはより望ましい。また、接着剤シート10の形状は、貼付装置で作業できる形状であればよく、ロール状又はシート状でもよく、半導体ウエハAの外形に合わせて加工されたものであってもよい。
半導体ウエハAと接着剤層2とのラミネートは接着剤層2が軟化する温度で行うことが好ましい。ラミネート温度は、40〜80℃が好ましく、50〜80℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。接着剤層2が軟化する温度未満でラミネートする場合、半導体ウエハAの突出した回路電極20周辺への埋込不足が発生し、ボイドが巻き込まれた状態となる。この場合、ダイシング時の接着剤層の剥離、ピックアップ時の接着剤層の変形、位置合わせ時の認識マーク識別不良、さらにボイドによる接続信頼性の低下が生じ易くなる。
(b)工程
次に、図4に示されるように、半導体ウエハAの回路電極20が設けられている側とは反対側をグラインダー4によって研削し、半導体ウエハを薄化する。半導体ウエハの厚みは、例えば、10〜300μmとすることができる。半導体装置の小型化、薄型化の観点から、半導体ウエハの厚みを20〜100μmとすることが好ましい。
(b)工程において、半導体ウエハAの研削は一般的なバックグラインド(B/G)装置を用いて行うことができる。B/G工程で半導体ウエハAを厚みムラなく均一に研削するためには、(a)工程において接着剤層2をボイドの巻き込みなく均一に貼り付けることが好ましい。
(c)工程
次に、図5(a)に示されるように、積層体の半導体ウエハAにダイシングテープ5を貼付け、これを所定の装置に配置して支持基材3を剥がす。このとき、支持基材3が粘着剤層3aを備えており、粘着剤層3aが放射線硬化性である場合には、支持基材3側から放射線を照射することにより、粘着剤層3aを硬化させ接着剤層2と支持基材3との間の接着力を低下させることができる。ここで、使用される放射線としては、例えば、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。これにより支持基材3を容易に剥がすことができる。支持基材3の剥離後、図5(b)に示されるように、半導体ウエハA及び接着剤層2をダイシングソウ6によりダイシングする。こうして、半導体ウエハAは複数の半導体素子A’に分割され、接着剤層2は複数のフィルム状接着剤2aに分割される。
次に、図6に示されるように、ダイシングテープ5をエキスパンド(拡張)することにより、上記ダイシングにより得られた各半導体素子A’を互いに離間させつつ、ダイシングテープ5側からニードルで突き上げられた半導体素子A’及びフィルム状接着剤2aからなるフィルム状接着剤付半導体素子12を吸引コレット7で吸引してピックアップする。フィルム状接着剤付半導体素子12は、トレー詰めして回収してもよく、そのままフリップチップボンダーで回路基板に実装してもよい。
(c)工程において、研削された半導体ウエハAにダイシングテープ5を貼り合わせる作業は、一般的なウエハマウンタを使用して、ダイシングフレームへの固定と同一工程で実施できる。ダイシングテープ5は市販のダイシングテープを適用することができ、UV硬化型であってもよく、感圧型であってもよい。
(d)工程
次に、図7に示されるように、フィルム状接着剤2aが付着した半導体素子A’の回路電極20と、半導体素子搭載用支持部材8の回路電極22とを位置合わせし、フィルム状接着剤付半導体素子12と半導体素子搭載用支持部材8とを熱圧着する。この熱圧着により、回路電極20と回路電極22とがハンダ接合により電気的且つ機械的に接続されるとともに、半導体素子A’と半導体素子搭載用支持部材8との間にフィルム状接着剤2aの硬化物が形成される。
熱圧着時の温度は、ハンダ接合の観点から、200℃以上であることが好ましく、220〜260℃であることがより好ましい。熱圧着時間は、1〜20秒間とすることができる。熱圧着の圧力は、0.1〜5MPaとすることができる。
フリップチップボンダーを用いた回路基板への実装では、半導体チップの回路面に形成されたアライメントマークを半導体チップの回路面に形成されたフィルム状接着剤2aを透過して確認し、回路基板への搭載位置を確認して実施することができる。
以上の工程を経て、半導体装置30が得られる。本実施形態に係る接着剤組成物からなるフィルム状接着剤は、埋込性及び硬化後の接着力に優れるとともに、短時間でのハンダ接合においてもハンダ表面に形成される酸化皮膜を除去することができハンダ濡れ性を向上することができる。そのため、半導体装置30は、ボイドの発生が十分抑制され、回路電極同士が良好にハンダ接合され、半導体素子A’と半導体素子搭載用支持部材とが十分な接着力で接着され、耐リフロークラック性や接続信頼性に優れたものになり得る。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
各実施例及び比較例で使用した化合物は以下の通りである。
(A)熱硬化性樹脂
・トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「EP1032H60」、以下「EP1032」という。)
・ビスフェノールF型液状エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「YL983U」、以下「YL983」という。)
・柔軟性エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「YL7175」、以下「YL7175」という。)
(B)硬化剤
・2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体(四国化成工業株式会社製、商品名「2MAOK−PW」、以下「2MAOK」という。)
・2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「2PHZ−PW」、以下「2PHZ」という。)
(C)請求項に該当するカルボン酸
・2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(東京化成工業株式会社製、以下「BHBA」という、融点109℃、溶解度パラメータ12.46)
・ベンジル酸(東京化成工業株式会社製、融点149℃、溶解度パラメータ13.13)
(C’)請求項に該当しないカルボン酸(溶解度パラメータが13.1を超える、又は、モノカルボン酸ではない)
・2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成工業株式会社製、以下「BHPA」という、融点189℃、溶解度パラメータ13.21)
・グルタル酸(東京化成工業株式会社製、融点98℃、溶解度パラメータ11.62)
・2−メチルグルタル酸(和光純薬工業株式会社製、融点78℃、溶解度パラメータ11.04)
・アジピン酸(東京化成工業株式会社製、融点153℃、溶解度パラメータ11.10)
・マロン酸
・ペンタントリカルボン酸
(D)熱可塑性樹脂
・フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「ZX1356−2」、Tg:約71℃、Mw:約63000、以下「ZX1356」という。)
(E)無機フィラー
・シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2050」、平均粒径0.5μm、以下「SE2050」という。)
・エポキシシラン処理シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2050−SEJ」、平均粒径0.5μm、以下「SE2050−SEJ」という。)
・エポキシ表面処理ナノシリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C−SE1」、平均粒径約50nm、以下「ナノシリカ」という。)
(F)有機微粒子
・有機フィラー(ロームアンドハースジャパン株式会社製、商品名「EXL−2655」、コアシェルタイプ有機微粒子、以下「EXL−2655」という。)
<フィルム状接着剤組成物の作製>
(実施例1)
エポキシ樹脂3g(「EP1032」を2.4g、「YL983」を0.5g、「YL7175」を0.2g)、硬化剤「2MAOK」0.1g、BHBAを0.08g(0.6mmol)、無機フィラー1.9g(「SE2050」を0.4g、「SE2050−SEJ」を0.4g、「SMナノシリカ」を1.1g)、樹脂フィラー(EXL−2655)0.3g、及びメチルエチルケトン(固形分量が63質量%になる量)を仕込み、直径0.8mmのビーズ及び直径2.0mmのビーズを固形分と同重量加え、ビーズミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、遊星型微粉砕機P−7)で30分撹拌した。その後、フェノキシ樹脂(ZX1356)を、1.7gを加え、再度ビーズミルで30分撹拌した後、撹拌に用いたビーズをろ過によって除去し、樹脂ワニスを得た。
得られた樹脂ワニスを、基材フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA53」)上に、小型精密塗工装置(株式会社廉井精機製)で塗工し、クリーンオーブン(ESPEC製)で乾燥(70℃/10min)して、フィルム状接着剤を得た。
(実施例2〜5、比較例1〜8)
使用した材料の組成を下記表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5及び比較例1〜8のフィルム状接着剤を作製した。
以下に、実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤の評価方法を示す。
<初期接続性の評価>
実施例又は比較例で作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(縦8mm×横8mm×厚さ0.045mm)に切り抜き、ガラスエポキシ基板(ガラスエポキシ基材:420μm厚、銅配線:9μm厚)上に貼付し、はんだバンプ付き半導体チップ(チップサイズ:縦7.3mm×横7.3mm×厚さ0.15mm、バンプ高さ:銅ピラー+はんだ計約40μm、バンプ数328)をフリップ実装装置「FCB3」(パナソニック株式会社製、商品名)で実装した(実装条件:圧着ヘッド温度350℃、圧着時間5秒、圧着圧力0.5MPa)。これにより、図4と同様に上記ガラスエポキシ基板と、はんだバンプ付き半導体チップとがデイジーチェーン接続された半導体装置を作製した。
得られた半導体装置の接続抵抗値を、マルチメータ(ADVANTEST Corporation製、商品名「R6871E」)を用いて測定することにより、実装後の初期導通を評価した。接続抵抗値が10.0〜13.5Ωの場合を接続性良好「A」とし、接続抵抗値が13.5〜20Ωの場合を接続性不良「B」とし、接続抵抗値が20Ωより大きい場合、接続抵抗値が10.0Ω未満の場合、及び接続不良に因るOpen(抵抗値が表示されない)場合を全て接続性不良「C」として、評価した。
<ボイド評価>
上記の方法で作製した半導体装置について、超音波映像診断装置(商品名「Insight−300」、インサイト製)により外観画像を撮り、スキャナGT−9300UF(セイコーエプソン株式会社製、商品名)でチップ上の接着材料層(接着剤組成物の硬化物からなる層)の画像を取り込み、画像処理ソフトAdobe Photoshopを用いて、色調補正、二階調化によりボイド部分を識別し、ヒストグラムによりボイド部分の占める割合を算出した。チップ上の接着材料部分の面積を100%として、ボイド発生率が10%以下の場合を「A」とし、10〜20%を「B」とし、20%より多い場合を「C」として評価した。
<はんだ濡れ性評価>
上記の方法で作製した半導体装置について、接続部の断面を観察し、Cu配線の上面に90%以上はんだが濡れている場合を「A」(良好)、はんだの濡れが90%より小さい場合を「B」(濡れ不足)、はんだがまったく接続していない場合を「C」として評価した。
<吸湿前の260℃における接着力の評価>
実施例又は比較例で作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(縦5mm×横5mm×厚さ0.045mm)に切り抜き、シリコンチップ(縦5mm×横5mm×厚さ0.725mm、酸化膜コーティング)上に70℃で貼付け、熱圧着試験機(日立化成テクノプラント株式会社製)を用いてソルダーレジスト(太陽インキ製造株式会社製、商品名「AUS308」)がコーティングされたガラスエポキシ基板(厚み0.02mm)に圧着した(圧着条件:圧着ヘッド温度250℃、圧着時間5秒、圧着圧力0.5MPa)。次に、クリーンオーブン(ESPEC製)中でアフターキュア(175℃、2h)して、試験サンプルとしての半導体装置を得た。
上記試験サンプルについて、260℃のホットプレート上で接着力測定装置(DAGE社製、万能型ボンドテスタDAGE4000型)を使い、基板からのツール高さ0.05mm、ツール速度0.05mm/sの条件で接着力を測定した。上記の方法で測定した接着力が3.5MPa以上の場合を「A」とし、3.5MPa未満の場合を「B」として評価した。
<吸湿前後の接着減少率の測定>
実施例又は比較例で作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(縦5mm×横5mm×厚さ0.045mm)に切り抜き、シリコンチップ(縦5mm×横5mm×厚さ0.725mm、酸化膜コーティング)上に70℃で貼付け、熱圧着試験機(日立化成テクノプラント株式会社製)を用いてソルダーレジスト(太陽インキ製造株式会社製、商品名「AUS308」)がコーティングされたガラスエポキシ基板(厚み0.02mm)に圧着した(圧着条件:圧着ヘッド温度250℃、圧着時間5秒、圧着圧力0.5MPa)。次に、クリーンオーブン(ESPEC製)中でアフターキュア(175℃、2h)して、試験サンプルとしての半導体装置を得た。その後、上記試験サンプルを、85℃、相対湿度60%の恒温恒湿器(ESPEC製、PR−2KP)に48時間放置し、取り出した後、260℃のホットプレート上で接着力測定装置(DAGE社製、万能型ボンドテスタDAGE4000型)を使い、基板からのツール高さ0.05mm、ツール速度0.05mm/sの条件で吸湿後の接着力を測定した。それぞれの試験サンプルに対して、上記<吸湿前の260℃における接着量の評価>で測定した接着力の値を100%として、吸湿後の接着力が80%以上の場合を「A」、70〜80%以上の場合を「B」、70%未満の場合を「C」として評価した。
<耐リフロー性の評価>
上記<初期接続性の評価>に記載した方法で作製した半導体装置を、封止材(日立化成株式会社製、商品名「CEL9750ZHF10」)を用いて、180℃、6.75MPa、90秒の条件でモールドし、クリーンオーブン(ESPEC製)にて175℃で5時間アフターキュアを行い、パッケージを得た。次に、このパッケージをJEDEC level 2条件で高温吸湿後、IRリフロー炉(FURUKAWA ELECTRIC製、商品名「SALAMANDER」)にパッケージを3回通過させた。リフロー後のパッケージの接続性について、上述の初期接続性の評価と同様の方法の方法で評価し、耐リフロー性の評価とした。剥離がなく接続良好な場合を「A」とし、剥離や接続不良が生じた場合を「B」とした。
Figure 2016139757
(成分(A)、(B)、(D)、(E)及び(F)の配合単位は「g」)
実施例1〜5の接着剤組成物は、吸湿前後の接着減少率が少なく、実施例1〜5の接着剤組成物を用いて作製された半導体装置では、ボイド発生が十分に抑制され、はんだ濡れ性と耐リフロー性が良好であったことから、接続性、及び信頼性が優れることが確認された。
それに対し、溶解度パラメータが13.1を超えるモノカルボン酸を使用した比較例1〜3は、接続性、はんだ濡れ性及び吸湿後の接着力に劣ること、また、ジカルボン酸やトリカルボン酸を使用した比較例4〜8は、接続性、はんだ濡れ性、吸湿後の接着力及び耐リフロー性に劣り、ボイドが発生することが確認された。
1…保護フィルム、2…接着剤層、2a…フィルム状接着剤、3…支持基材、3a…粘着剤層、3b…プラスチックフィルム、4…グラインダー、5…ダイシングテープ、6…ダイシングソウ、7…吸引コレット、8…半導体素子搭載用支持部材、10…回路部材接続用接着剤シート、11…回路部材接続用接着剤シート、12…フィルム状接着剤付半導体素子、20…回路電極、22…回路電極、30…半導体装置、A…半導体ウエハ、A’ …半導体素子。

Claims (16)

  1. (A)熱硬化性樹脂と、(B)硬化剤と、(C)モノカルボン酸と、を含む接着剤組成物であって、
    前記(C)モノカルボン酸の溶解度パラメータが13.1以下であり、
    半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の前記接続部の少なくとも一部を封止するために用いられる、接着剤組成物。
  2. 前記(C)成分の融点が150℃以下である請求項1に記載の接着剤組成物。
  3. 前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも1つの置換基を有する請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
  4. 前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも1つの電子供与基を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  5. 前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも1つの電子供与基を持ち、その電子供与基が2つ以上の炭素から構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  6. 前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも1つのアルキル基を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  7. 前記(C)成分のカルボキシル基のα位に少なくとも2つの置換基を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  8. 前記(C)成分のカルボキシル基のα位に3つの置換基を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  9. 前記(C)成分がヒドロキシル基を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  10. 前記(C)成分がヒドロキシルメチル基を有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  11. 前記(C)成分として、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の接着性組成物。
  12. 相対向しハンダ接合される回路電極を有する回路部材間に介在させ、前記回路部材同士を接着するために用いられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
  13. 支持基材と、該支持基材上に設けられ、請求項1〜12のいずれか一項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、回路部材接続用接着剤シート。
  14. 前記支持基材が、プラスチックフィルムと該プラスチックフィルム上に設けられた粘着剤層とを備え、前記接着剤層が前記粘着剤層上に設けられている、請求項13に記載の回路部材接続用接着剤シート。
  15. 相対向しハンダ接合される回路電極を有する回路部材間に介在させ、前記回路部材同士を接着するために用いられる、請求項14に記載の回路部材接続用接着剤シート。
  16. 主面の一方に複数の回路電極を有する半導体ウエハを準備し、該半導体ウエハの前記回路電極が設けられている側に、請求項1〜11のいずれか一項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層を設ける工程と、
    前記半導体ウエハの前記回路電極が設けられている側とは反対側を研削して前記半導体ウエハを薄化する工程と、
    前記薄化した半導体ウエハ及び前記接着剤層をダイシングしてフィルム状接着剤付半導体素子に個片化する工程と、
    前記フィルム状接着剤付半導体素子の前記回路電極を半導体素子搭載用支持部材の回路電極にハンダ接合する工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
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