以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.紙幣出金機及び装填機構の構成]
図1に模式的な側面図を示すように、第1の実施の形態による紙幣出金機1は、いわゆるキャッシュディスペンサとなっており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、利用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)の操作に応じて紙幣を出金するようになっている。この紙幣出金機1は、大きく分けて下側の下部ユニット2及び上側の上部ユニット3により構成されており、さらに全体を制御する制御部4が組み込まれている。
制御部4は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、出金処理等の処理を行う。また制御部4は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
以下では、紙幣出金機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
下部ユニット2は、直方体状の下部筐体8内に、紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この下部筐体8内には、4個の紙幣収納庫11A、11B、11C及び11D(以下まとめて紙幣収納庫11と呼ぶ)、搬送部13、鑑別部14、切替部15、集積部16及びリジェクト収納庫17が設けられている。
各紙幣収納庫11は、下部筐体8の前側における上下方向の中央から下側にかけて、互いに積み重なるように取り付けられ、それぞれに対して予め定められた金種の紙幣を収納する。また紙幣収納庫11の内部における前下側には、収納されている紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す繰出部12が設けられている。
収納基体及び第2基体としての各紙幣収納庫11は、図2(A)に示すように、直方体状に構成されており、後面に取手11Hが設けられている。また各紙幣収納庫11は、図2(B)及び(C)に示すように、下部筐体8に取り付けられる装填筐体10の内部に装填される。この装填筐体10は、それぞれ薄板状に形成された下側板10B、左側板10L及び右側板10Rを紙幣収納庫11の下側、左側及び右側にそれぞれ位置させている。説明の都合上、以下では、装填筐体10及び紙幣収納庫11をまとめて装填機構9とも呼ぶ。
装填機構9は、装填基体及び第1基体としての装填筐体10に対し、収納基体としての紙幣収納庫11をいわゆる引出のように装填又は離脱させ得るようになっている。具体的に紙幣収納庫11は、装填筐体10に対し、後側に位置した状態から後方へ押し込まれることによりその内部に装填され(図1)、また装填された状態から後方へ引き出されることにより離脱される。
また下部筐体8内における装填筐体10の前側には、モータ(図示せず)から駆動力が伝達される歯車(図示せず)及びコネクタ(図示せず)が設けられている。これと対応するように紙幣収納庫11は、その前側に歯車11G及びコネクタ11N(図2(A))を設け、これらを前側面から露出させている。
紙幣収納庫11は、装填筐体10における適切な装填位置に装填されると、下部筐体8側の歯車(図示せず)と歯車11Gとを噛み合わせることにより、繰出部12等に駆動力を伝達し、また下部筐体8側のコネクタ(図示せず)とコネクタ11Nとを嵌合させることにより、電力の供給を受けると共に、種々の電気信号を相互に送受信する。さらに装填筐体10の右側板10Rにおける後端近傍には、図2(B)及び(C)に示すように、紙幣収納庫11を装填位置に固定するための固定部30が設けられている(詳しくは後述する)。
搬送部13(図1)は、図示しないローラやベルト、或いはこれらを駆動するモータ等により、紙幣を搬送する経路である搬送路を構成している。この搬送路は、図中に実線で示すように、各紙幣収納庫11の繰出部と接続され、各紙幣収納庫11の後側を上下方向に沿って進行し、さらに最も上方に位置する紙幣収納庫11の上側における前後方向の中央付近まで到達するように配設されている。搬送部13は、各紙幣収納庫11の繰出部12から繰り出された紙幣を概ね上方向へ進行させる。
鑑別部14は、最も上側に位置する紙幣収納庫11の後側に、搬送部13の搬送路に沿って設けられている。この鑑別部14は、内部に厚みセンサやイメージセンサといった複数種類のセンサが組み込まれており、各センサから得られた情報を基に、搬送される紙幣の金種や走行状態等を鑑別し、その鑑別結果を制御部4へ供給する。制御部4は、得られた鑑別結果を基に、各紙幣の搬送先を決定する。具体的に制御部4は、出金すべき正常な紙幣の搬送先を集積部16に、出金すべきで無い紙幣(以下これをリジェクト紙幣と呼ぶ)の搬送先をリジェクト収納庫17に、それぞれ決定する。
切替部15は、最も上側に位置する紙幣収納庫11の上側における前後方向のほぼ中央に配置されており、制御部4の制御に基づき、紙幣に当接して進行方向を変化させるブレード(図中三角形で示す)の傾斜角度を変更することにより、紙幣の進行方向を切り替える。また切替部15は、搬送部13により、下側の鑑別部14、後側の集積部16及び前側のリジェクト収納庫17とそれぞれ接続されている。この切替部15は、下方から搬送されてきた紙幣それぞれの進行方向を、制御部4において決定された搬送先に応じて切り替え、後側の集積部16又は前側のリジェクト収納庫17へ進行させる。
集積部16は、下部筐体8内における最も上側の後側に位置しており、内部に紙幣を集積する集積空間16Sを形成している。この集積部16は、集積空間16S内に、上面に紙幣を集積するためのステージ16Tを有している。また集積部16における前側上寄りには、切替部15から搬送されてきた紙幣を集積空間16S内へ放出する放出部16Rが設けられている。このため集積部16は、切替部15から搬送され放出部16Rにより集積空間16S内へ放出された紙幣を、ステージ16T上に集積させ、束状に積み重ねることができる。以下、このように積み重ねられた紙幣を紙幣束とも呼ぶ。
さらにステージ16Tは、図示しないステージ移動機構により、上下方向へ移動することができる。また集積部16の上面には、集積空間16Sに相当する範囲に渡り、上下方向に貫通する集積孔16Hが穿設されている。この集積孔16Hは、下部筐体8の上面も貫通しており、集積空間16Sと下部筐体8よりも上側の空間とを連通させている。このため集積部16は、ステージ16Tに紙幣を集積して当該ステージ16Tを上方へ移動させることにより、当該ステージ16T及び集積した束状の紙幣(紙幣束)を下部筐体8の上面よりも上側、すなわち上部ユニット3の内部まで持ち上げることができる。
リジェクト収納庫17は、下部筐体8内における最も上側の前側に位置しており、内部に紙幣を収納する収納空間17Sを形成している。またリジェクト収納庫17における後側上寄りには、切替部15から搬送されてきた紙幣を収納空間17S内へ放出する放出部17Rが設けられている。このためリジェクト収納庫17は、切替部15から搬送され放出部17Rにより収納空間17S内へ放出された紙幣(すなわちリジェクト紙幣)を収納することができる。
またリジェクト収納庫17の上面には、収納空間17Sに相当する範囲に渡り、上下方向に貫通する取込孔17Hが穿設されている。さらに取込孔17Hは、下部筐体8の上面も貫通しており、収納空間17Sと下部筐体8よりも上側の空間とを連通させている。このためリジェクト収納庫17は、上方に位置する上部ユニット3から紙幣が落下してきた場合、この紙幣を収納空間17S内に収納することができる。
さらにリジェクト収納庫17は、紙幣収納庫11と同様、下部筐体8に対し後方向へ引き抜かれることにより、当該下部筐体8から取り外すことができ、また当該下部筐体8に対し位置を合わせて後方向へ押し込まれることにより、当該下部筐体8に装着することができる。
上部ユニット3は、全体として、上下方向に短く前後方向に長い、扁平な直方体状に形成されており、その前後方向の長さが下部ユニット2よりも長くなっている。上部ユニット3は、直方体状の束搬送筐体20内に、前後方向に沿って紙幣束を搬送する束搬送部21が形成されている。
束搬送部21は、上側の上搬送ベルト22と、下側の移動搬送ガイド23及び下搬送ベルト24により、紙幣束を搬送する束搬送路3Yを形成している。上搬送ベルト22は、後端近傍及び前端近傍にそれぞれ配置されたローラの周囲に掛け回されており、制御部4の制御に基づき所定のモータ(図示せず)によってローラが回転されると、その下面を前後方向に沿って走行させる。
移動搬送ガイド23は、上下方向に薄い扁平な直方体状ないし板状に形成されており、図示しない移動機構により、束搬送筐体20に対し前後方向へ移動する。この移動搬送ガイド23は、前方へ移動した場合、図1に示したように、集積部16の集積孔16Hを開放して集積空間16Sと束搬送路3Yとを連通させる。また移動搬送ガイド23は、後方へ移動した場合、リジェクト収納庫17の取込孔17Hを開放して集積空間16Sと束搬送路3Yとを連通させる。下搬送ベルト24は、上搬送ベルト22を前後方向に短縮したような構成となっている。さらに束搬送筐体20の前端には、紙幣束を利用者に引き渡す出金口26が形成されている。
また束搬送部21には、ラッセル部28が設けられている。ラッセル部28は、図示しないベルト機構により前後方向へ駆動され、紙幣束を押しながら移動することにより、当該紙幣束を束搬送路3Yに沿って搬送する。
このように構成された紙幣出金機1は、出金動作を行う場合、まず操作部(図示せず)を介して利用者から出金の指示及び出金額を受け付ける。これに応じて各紙幣収納庫11は、この出金額に応じた金種及び枚数の紙幣を、繰出部12により1枚ずつ繰り出し、搬送部13に引き渡す。搬送部13は、各紙幣を上方へ搬送し、鑑別部14により鑑別させる。鑑別部14において正常と判断された紙幣は、切替部15により集積部16へ搬送され、ステージ16T上に集積される。また鑑別部14において出金すべきで無いと判断されたリジェクト紙幣は、切替部15によりリジェクト収納庫17へ搬送され、収納空間17S内に収納される。
続いて紙幣出金機1は、出金額に相当する金種及び枚数の紙幣、すなわち紙幣束をステージ16T上に集積すると、当該ステージ16Tを上昇させ、当該紙幣束を束搬送路3Y内に位置させる。続いて紙幣出金機1は、束搬送部21により紙幣束を前方の出金口26へ搬送し、利用者に取り出させる。
[1−2.固定部の構成]
固定部30は、図2(B)におけるA1−A2断面を図3に示すと共に、分解斜視図を図4に示すように、レバー体31、爪体32、レバー回動軸33、レバースプリング34、爪回動軸35及び爪スプリング36により構成されている。説明の都合上、以下ではレバー体31、レバー回動軸33及びレバースプリング34を第1解除部とも呼び、また爪体32、爪回動軸35及び爪スプリングを第2解除部とも呼ぶ。
レバー体31は、全体として前後方向に沿った中空の四角柱状に形成されており、主に右側板31A、上側板31B、左側板31C及び下側板31Dにより構成されている。右側板31Aの後端近傍には、クランク状に屈曲されてなる操作部31Mが延設されている。
上側板31B及び下側板31Dには、後端近傍の箇所において上下方向に貫通する丸孔でなるレバー軸孔31H1と、前後の中程の箇所において上下方向に貫通する丸孔でなる爪軸孔31H2とがそれぞれ穿設されている。また左側板31Cには、後側の概ね半分の領域が切り欠かれた切欠部31Jが形成されている。
爪体32は、全体として左右方向に沿った四角柱から後側面を省略したような形状、すなわち左方向から見て英文字の「U」を左側へ倒したような形状となっており、主に前側板32A、上側板32B及び下側板32Cにより構成されている。上側板32B及び下側板32Cの左辺は、後端よりも前端の方が左側に位置するように傾斜している。また上側板32B及び下側板32Cの中央よりもやや右寄りの箇所には、上下方向に貫通する丸孔でなる爪軸孔32Hがそれぞれ穿設されている。また前側板32Aの前面は、第1係合子としての係合面32Eとなっている。
一方、図4に示したように、装填筐体10の右側板10Rにおける後端近傍には、孔部10Hが穿設されている。この孔部10Hは、後側に形成された長方形状の孔部と、その前側に形成された上下方向に短い長方形状の孔部とが連結された形状となっている。孔部10Hの前半部分における上下の両辺には、右方向、すなわち紙幣収納庫11から離れる方向へ向けて、レバー支持板10Sがそれぞれ立設されている。各レバー支持板10Sは、上下方向に薄く左右方向に短い、比較的小さな板状に形成されている。上下のレバー支持板10S同士の間隔は、レバー体31における上下方向の長さよりも僅かに長く(広く)なっている。また各レバー支持板10Sには、上下方向に貫通する丸孔でなるレバー軸孔10SHがそれぞれ穿設されている。
レバー回動軸33は、中心軸を上下方向に沿わせた円柱状に形成されている。このレバー回動軸33は、装填筐体10におけるレバー支持板10S同士の間にレバー体31の後端近傍が挟まれた状態で、上下のレバー軸孔10SH及び上下のレバー軸孔31H1を全て通過するように挿通される。因みにレバー回動軸33は、図示しない抜止部材により、レバー支持板10S等からの脱落が防止される。これによりレバー体31は、装填筐体10に対し、レバー回動軸33を回動中心として、図3の矢印R1方向又は矢印R2方向へ回動することができる。
レバースプリング34は、ばね定数が比較的小さいトーションばねでなり、比較的弱い力により弾性変形する。このレバースプリング34は、巻回部分がレバー体31の下側板31D及び下側のレバー支持板10Sの間においてレバー回動軸33に挿通される。またレバースプリング34は、巻回部分から外方へ突出した両端部分のうち、一端側がレバー支持板10Sに係合され、他端側がレバー体31に係合される。
このためレバー体31は、レバースプリング34の弾性作用により、図3における反時計回りである矢印R1方向へ付勢される。ただしレバー体31は、所定箇所を装填筐体10の右側板10Rに当接させることにより、矢印R1方向への回動範囲が規制され、図3に示したように、前側板32A及び係合面32Eを前方向に向けた姿勢となる。以下、このときのレバー体31の姿勢を係合姿勢と呼び、またこのときの操作部31Mの位置を係合位置P1と呼ぶ。
爪回動軸35(図4)は、レバー回動軸33と同様、中心軸を上下方向に沿わせた円柱状に形成されている。この爪回動軸35は、レバー体31における上側板31B及び下側板31Dの間に爪体32の右側部分を挟み込ませた状態で、上下の爪軸孔31H2及び上下の爪軸孔32Hを全て通過するように挿通される。因みに爪回動軸35は、レバー回動軸33と同様、図示しない抜止部材により、レバー体31等からの脱落が防止される。これにより爪体32は、レバー体31に対し、爪回動軸35を回動中心として、図3の矢印R3方向又は矢印R4方向へ回動することができる。
爪スプリング36(図4)は、ばね定数が比較的大きいトーションばねでなり、比較的強い力により弾性変形する。この爪スプリング36は、巻回部分が爪体32の下側板32C及びレバー体31の下側板31Dの間において爪回動軸35に挿通される。また爪スプリング36は、巻回部分から外方へ突出した両端部分のうち、一端側がレバー体31に係合され、他端側が爪体32に係合される。
このため爪体32は、爪スプリング36の弾性作用により、図3における反時計回りである矢印R3方向へ付勢される。ただし爪体32は、所定箇所をレバー体31に当接させることにより、矢印R3方向への回動範囲が規制され、図3に示したように、レバー体31の右側板31A及び左側板31Cに対し係合面32Eをほぼ直交させた姿勢となる。以下、このときの爪体32の姿勢を爪立姿勢と呼ぶ。爪体32は、爪立姿勢及びその近傍において、爪スプリング36により、紙幣収納庫11が引き出される方向である後方向と反対の前方向へ付勢されることになる。
一方、紙幣収納庫11(図2)の右側面11Rには、被固定部40が形成されている。被固定部40は、図3に断面図として示したように、周囲よりも左側へ窪んだ溝状に形成され、前側面41及び後側面42を有している。第2係合子としての前側面41は、右側面11Rに対しほぼ垂直となっている。後側面42は、右側面11Rに対し、約45度の角度をなすように傾斜している。
このように固定部30は、装填筐体10の右側板10Rに対しレバー回動軸33を回動中心としてレバー体31を回動させ、さらに当該レバー体31に対し爪回動軸35を回動中心として爪体32を回動させ得るようになっている。因みにレバー体31、爪体32、レバー回動軸33及び爪回動軸35は、何れも金属材料により構成され、比較的高い剛性を有しており、外力が加えられたとしても容易に変形することは無い。
[1−3.固定部の動作]
次に、装填機構9における、固定部30による装填筐体10に対する紙幣収納庫11の固定動作について説明する。図3に示したように、紙幣収納庫11が装填筐体10に装填され、且つ装填位置にある場合、固定部30は、レバースプリング34の作用によりレバー体31が係合姿勢となり、且つ爪体32が爪スプリング36の作用により爪立姿勢となっている。またこのとき爪体32は、係合面32Eを紙幣収納庫11の被固定部40における前側面41に当接させている。以下、固定部30によるこのような状態を、固定状態とも呼ぶ。
これにより固定部30は、装填筐体10に対し紙幣収納庫11を装填位置に固定することができ、歯車11G(図2)を下部筐体8側の歯車と噛み合わせ、且つコネクタ11N(図2)を下部筐体8側のコネクタ(図示せず)と嵌合させることができる。すなわち紙幣収納庫11は、正常に出金動作を行うことができる。
また装填機構9では、保守作業者により紙幣収納庫11に対する紙幣の装填作業等が行われる場合などに、固定部30による装填筐体10に対する紙幣収納庫11の固定が解除されてから、当該紙幣収納庫11が引き出される。
具体的に装填機構9は、保守作業者により、まず固定部30のレバー体31における操作部31Mに対し、紙幣収納庫11から離れる方向、すなわち右方向へ向かう力が加えられる。以下、これを解除操作と呼ぶ。これにより固定部30は、図5(A)に示すように、レバー体31がレバー回動軸33を中心として矢印R2方向へ回動し、全体的に紙幣収納庫11から引き離されていく。因みに固定部30は、例えば2〜3kg程度の比較的小さい力が操作部31Mに加えられた段階で回動するよう、レバースプリング34のばね定数が調整されている。
このとき爪体32は、当該レバー体31と共にレバー回動軸33を中心として回動することにより、係合面32Eを紙幣収納庫11の被固定部40における前側面41から引き離し、且つ全体的に当該紙幣収納庫11の右側面11Rよりも右側に退避する。かくして固定部30は、装填筐体10に対する紙幣収納庫11の固定を解除した状態となる。以下、このような状態を解除状態とも呼ぶ。
次に装填機構9は、保守作業者により固定部30が解除状態に保たれたまま、紙幣収納庫11の取手11H(図2)に対し後方へ向かう力が加えられることにより、当該紙幣収納庫11が装填筐体10の後方へ引き出される。これにより紙幣収納庫11は、装填筐体10から取り外すことが可能となる。
因みに装填機構9は、紙幣収納庫11が装填筐体10の後方から装填される場合、固定部30の爪体32に傾斜辺が形成されているため、紙幣収納庫11の後面における右端部分等をこの傾斜辺に摺動させることにより、レバー体31を回動させて固定部30を解除状態にする。続いて装填機構9は、紙幣収納庫11が引き続き装填筐体10内へ挿入されて装填位置に到達すると、レバースプリング34の作用によりレバー体31を回動させ、爪体32を被固定部40に係合させて固定状態となり、当該紙幣収納庫11を装填位置に固定する。
今度は、装填機構9において、保守作業者等により固定部30に対する解除操作が行われずに、紙幣収納庫11に対し後方へ向かう強い力が加えられた場合、すなわち保守作業者等により当該紙幣収納庫11に対し無理に引き出そうとする力が加えられた場合を想定する。
まず紙幣収納庫11は、被固定部40と共に、装填筐体10に対し僅かに後方へ移動する。これにより固定部30の爪体32は、被固定部40の前側面41から後方向へ向かう力が加えられ、図5(B)に示すように、爪回動軸35を回動中心として矢印R4方向へ回動する。因みに固定部30は、例えば20〜30kg程度の比較的大きい力が紙幣収納庫11に加えられた段階で回動するよう、爪スプリング36のばね定数が調整されている。この大きい力は、紙幣収納庫11の歯車11G(図2)と下部筐体8側の歯車とが噛み合った状態で回転することにより生じる、互いに前後方向へ離れようとする力よりも十分に大きくなっている。
そうすると固定部30は、爪体32の係合面32Eを被固定部40の前頂部41Vに当接させ、当該前頂部41Vから右斜め後方へ向かう反力を受ける。ここで固定部30では、上述したように、爪スプリング36よりもレバースプリング34の方が、ばね定数が小さい。
このため固定部30は、爪スプリング36の復元力により爪回動軸35を中心に爪体32を矢印R3方向へ回動させて爪立姿勢に戻しながら、レバースプリング34を弾性変形させることにより、レバー体31を矢印R2方向へ回動させていく。すなわち固定部30は、爪スプリング36の強力な復元力により、爪体32の係合面32Eを前頂部41Vに摺動させながら、当該爪体32を被固定部40から抜き出しつつ、レバー体31を係合姿勢から回動させ、解除状態に近づけていく。
やがて固定部30は、紙幣収納庫11が引き続き後方へ引き出されることにより、図5(C)に示すように、爪体32が被固定部40から完全に抜け出ると共に爪立姿勢に復帰した状態となり、固定部30全体として解除状態となる。その後固定部30は、紙幣収納庫11が引き出される間、爪体32の左端を当該紙幣収納庫11の右側面11Rに摺動させ、解除状態を維持する。
かくして装填機構9は、固定部30に対し解除操作がなされなかったとしても、当該固定部30及び紙幣収納庫11の何れも損傷させること無く、当該紙幣収納庫11を装填筐体10から引き出させることができる。
[1−4.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による装填機構9は、固定部30においてレバー体31に対し爪体32を回動可能に構成し、さらにレバースプリング34よりもばね定数が大きい爪スプリング36により、当該爪体32を弾性支持するようにした。
このため固定部30は、紙幣収納庫11が装填筐体10内の装填位置に装填されており、特に外力が加えられなければ、固定状態(図3)となり、当該紙幣収納庫11を装填位置に保持することができる。これにより装填機構9は、歯車11G(図2)を下部筐体8側の歯車と噛み合わせ、且つコネクタ11N(図2)を下部筐体8側の歯車及びコネクタと嵌合させて、紙幣の繰出等を正常に行うことができる。
また固定部30は、保守作業者等によりレバー体31の操作部31Mに対し解除操作がなされた場合、レバー回動軸33を回動中心として回動することにより、解除状態に遷移する。このため装填機構9は、従来と同様、固定部30により妨げること無く、紙幣収納庫11を装填筐体10内から引き出させることができる。
さらにレバー体31の操作部31Mは、固定部30が固定状態であれば、回動可能な範囲のうち最も左側であり、紙幣収納庫11に近い位置である係合位置P1にある(図3)。一方、操作部31Mは、固定部30が解除状態であれば、係合位置P1から大きく右側に移動する(図5(A))。このため装填機構9は、操作部31Mの位置により、保守作業者等に対し、紙幣収納庫11が装填位置に正しく装填されているか否かを明確に視認させることができる。
これに加えて固定部30は、保守作業者等により解除操作がなされずに紙幣収納庫11が後方へ引き出された場合、爪体32を爪立姿勢から一時的に回動させることにより、当該紙幣収納庫11の引出を許容する(図5(B))。これにより装填機構9は、固定部30及び紙幣収納庫11の何れをも損傷させること無く、当該紙幣収納庫11を装填位置から引き出させることができる。
このとき固定部30は、レバースプリング34よりも爪スプリング36の方がばね定数が大きいために、爪体32を爪立姿勢に戻そうとして、前側板32Aを被固定部40の前頂部41Vと摺動させながら、レバー体31を係合姿勢から矢印R2方向へ回動させる(図5(C))。これにより装填機構9は、固定部30の操作部31Mを係合位置P1よりも右側の、紙幣収納庫11から離れた箇所に位置させることができ、紙幣収納庫11が装填位置から外れていることを視認させることができる。
また装填機構9は、爪立姿勢にある爪体32の前側板32A及び被固定部40の前側面41の双方を、紙幣収納庫11の移動方向である前後方向とほぼ直交する平面としており、且つレバースプリング34よりも爪スプリング36のばね定数を高めている。このため固定部30は、紙幣収納庫11が装填位置から僅かでも後方へ引き出された場合、最初に爪体32を爪立姿勢から回動させることができ、さらに当該爪体32を爪立姿勢に戻すべく、レバー体31を回動させることができる(図5(B)及び(C))。これにより装填機構9は、解除操作の有無に拘わらず、紙幣収納庫11が装填位置から僅かでも後方へ引き出されていれば、係合位置P1よりも右側へ移動した操作部31Mにより、当該紙幣収納庫11が装填位置から外れていることを、明確に視認させることができる。
さらに装填機構9は、紙幣収納庫11の被固定部40を、周囲の右側面11Rよりも左方向へ窪んだ溝状に形成し、その前側面41に爪体32の係合面32Eを当接させたときに係合状態とするようにした(図3)。このため固定部30は、例えば紙幣収納庫11の装填作業中に、当該紙幣収納庫11が装填位置に到達する僅かでも前に停止された場合、爪体32の右端を右側面11Rに当接させたまま解除状態を維持するため(図5(C))、固定状態に遷移することがない。
したがって紙幣出金機1では、例えば紙幣収納庫11が装填位置から僅かに外れており、当該紙幣収納庫11と下部筐体8との位置関係を目視したのみでは装填位置にあると誤認されるような場合であっても、操作部31Mの位置により、装填位置から外れていることを通知できる。この結果、紙幣出金機1では、紙幣収納庫11が装填位置から外れることに気付かずに、当該紙幣収納庫11の歯車11G(図2)へ十分な駆動力を伝達できない、或いはコネクタ11N(図2)へ電力や信号を正常に供給できない、といった問題の発生を未然に回避できる。
他の観点から見れば、固定部30は、2種類のスプリングを設け、レバースプリング34のばね定数を小さく、爪スプリング36のばね定数を大きくした。これにより固定部30は、固定状態から解除状態へ遷移させるときに操作部31Mに加えさせる力を小さく抑えることと、爪体32に比較的強い力を作用させて紙幣収納庫11を装填位置に確実に固定することとを、両立させることができる。
ところで、従来の装填機構においては、装填筐体10のような装填基体に対し紙幣収納庫11のような収納基体を着脱可能に構成し、且つ装着時に当該収納基体を装填位置に固定するための構成として、アクチュエータを用いたロック機構や、ローラーキャッチと呼ばれる機構が知られている。しかしながらアクチュエータを用いたロック機構は、手動で
ロックを解除する従来の機構と同様、誤操作による破損の可能性があった。またローラーキャッチを用いたロック機構では、破損の可能性は無いものの、位置精度が低く、歯車による駆動力の伝達やコネクタによる電力供給等を正常に行えない恐れがあった。
これらの点に関し、第1の実施の形態による装填機構9は、紙幣収納庫11が強制的に引き出された場合に爪体32を回動させて破損を回避でき、且つ爪体32の係合面32Eと被固定部40の前側面41との係合により高い位置精度を確保できる。
さらに装填機構9は、下部筐体8に固定される装填筐体10側に、比較的複雑な構造を有する固定部30を設け、当該装填筐体10内から引き出されて移動される紙幣収納庫11側に、比較的単純な構造でなる被固定部40を形成した。このため装填機構9は、紙幣収納庫11が移動中に他の物品と衝突し、また床面に落下される等して衝撃が加えられたとしても、装填位置への固定に必要な構造を破損する恐れを極めて低く抑えることができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による紙幣出金機1の装填機構9は、固定部30のレバー体31に対し爪体32を回動可能に構成すると共に、当該レバー体31を係合姿勢に付勢するレバースプリング34よりもばね定数の大きい爪スプリング36により、当該爪体32を爪立姿勢に付勢するようにした。このため装填機構9は、固定部30が固定状態であれば、紙幣収納庫11を装填筐体10内の装填位置に固定でき、解除操作がなされた場合には固定部30を容易に解除状態へ遷移できる。さらに装填機構9は、解除操作がなされずに紙幣収納庫11が強制的に引き抜かれた場合には、爪体32を回動させることにより、紙幣収納庫11及び固定部30双方の破損を回避できる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態においては、装填機構9に代わる装填機構109が用いられる。装填機構109は、図2と対応する図6に示すように、装填筐体10の右側板10Rに対し、固定部30に代わる固定部130が設けられている。
[2−1.固定部の構成]
固定部130は、第1の実施の形態による固定部30と異なり、樹脂材料等による一体の成型部品として構成されている。具体的に固定部130は、図3と対応する図7に示すように、全体として前後方向に長く左右方向に薄い板状ないし棒状に形成されており、取付部131、湾曲部132、当接部133、腕部134及び操作部135により構成されている。
取付部131は、図示しない固定部材により、装填筐体10の右側板10Rに固定されている。湾曲部132は、取付部131の後端から右斜め後方へ進行した後、左側へ湾曲している。すなわち湾曲部132は、取付部131の後端から後方へ進むに連れて、装填位置にある紙幣収納庫11から一度離れた後、被固定部40の前側面41に向かうようにして当該紙幣収納庫11へ再び近接している。
また湾曲部132は、比較的左右方向に薄く形成されており、後端近傍に対し右方向、すなわち紙幣収納庫11から離れる方向へ向けて外力が加えられた場合に、主に後半部分を湾曲させることにより、後端部分を右方向へ変位させることができる。湾曲部132の後端には、当接部133が接続されている。当接部133は、その前面133Fがほぼ前方を向いた平面状に形成されている。当接部133の後側には、腕部134が接続されている。
腕部134は、当接部133との接続箇所から後方へ進行した後、被固定部40の後側面42との干渉を避けるように右斜め後方へ進行し、装填位置にある紙幣収納庫11の後面よりも後方まで到達する。腕部134の後端には、操作部135が接続されている。操作部135は、第1の実施の形態における操作部31Mと対応しており、保守作業者等により右方向へ力が加えられることが想定されている。
因みに固定部130における湾曲部132以外の各部分、すなわち取付部131、当接部133、腕部134及び操作部135は、左右方向の長さ(すなわち厚さ)が比較的大きくなっており、外力が加えられた場合に容易に変形せず、その形状を維持することができる。
[2−2.固定部の動作]
装填機構109は、紙幣収納庫11が装填筐体10内の装填位置に装填されている場合、図7に示したように、固定部130における当接部133の前面133Fを紙幣収納庫11における被固定部40の前側面41に当接させる。これにより装填機構109は、紙幣収納庫11を装填筐体10内の装填位置に固定することができる。以下、このような固定部130の状態を、この実施の形態における固定状態と呼ぶ。
また装填機構109は、紙幣収納庫11に対する紙幣の補充作業等が行われる場合に、当該紙幣収納庫11が装填筐体10内の装填位置に装填された状態において、保守作業者等により、固定部130の操作部135に対し右方向へ向かう力が加えられる。このとき固定部130は、加えられた力を湾曲部132へ伝達し、図8(A)に示すように、当該湾曲部132の後端部分を右方向へ変位させるように撓ませる。以下、この操作をこの実施の形態における解除操作と呼ぶ。
このとき固定部130は、当接部133を被固定部40の外側、すなわち紙幣収納庫11の右側面11Rよりも右側へ到達させ、当該紙幣収納庫11の固定を解除する。これにより装填機構109は、固定部130を紙幣収納庫11から引き離し、装填筐体10から当該紙幣収納庫11を自在に引き出させることができる。以下、このような固定部130の状態を、この実施の形態における解除状態と呼ぶ。因みに固定部130は、第1の実施の形態と同様、例えば2〜3kg程度の比較的弱い力が操作部135に加えられることにより解除状態へ遷移するよう、湾曲部132の強度等が適切に調整されている。
さらに装填機構109は、紙幣収納庫11が装填筐体10の後方から装填される場合、腕部134の後半部分が前後方向に対して傾斜しているため、紙幣収納庫11の後面における右端部分等をこの傾斜部分に摺動させることにより、固定部130を解除状態(図8(A))に近い形状に変形させる。続いて装填機構109は、紙幣収納庫11が引き続き装填筐体10内へ挿入されると、当接部133を当該紙幣収納庫11の右側面11Rに摺動させる。やがて装填機構109は、紙幣収納庫11が装填位置に到達すると、湾曲部132の復元力により当接部133を被固定部40に入り込ませ、固定部130を固定状態に遷移させて、当該紙幣収納庫11を装填位置に維持する。
今度は、装填機構109において、保守作業者等により操作部135に対し解除操作がなされることなく、紙幣収納庫11に対し後方へ向けて比較的強い力が加えられる場合を想定する。この場合、固定部130は、紙幣収納庫11における被固定部40の前側面41から当接部133の前面133Fに対し、前方向へ向かう力が加えられる。
このとき固定部130は、図8(B)に示すように、当接部133に加えられた力により、湾曲部132の後端を前方へ変位させるように変形し、これに伴い当接部133の前面133Fを左斜め前方へ向けるように傾斜させる。またこのとき固定部130は、当接部133を中心として回動するように、腕部134及び操作部135を右方向へ傾斜させながら変位させる。因みに固定部130は、例えば20〜30kg程度の比較的強い力が紙幣収納庫11に加えられることにより湾曲部132を変形させるよう、当該湾曲部132の強度等が適切に調整されている。
固定部130は、引き続き紙幣収納庫11が後方へ引き出されると、当接部133の前面133Fを被固定部40の前頂部41Vに摺動させながら右方向へ変位させていき、やがて図8(C)に示すように、当該当接部133を被固定部40の外部に到達させる。このとき固定部130は、解除状態(図8(A))に近似した形状となる。その後固定部130は、紙幣収納庫11が引き出される間、当接部133を当該紙幣収納庫11の右側面11Rに摺動させることにより、解除状態に近似した形状を維持する。その後固定部130は、紙幣収納庫11が装填筐体10から完全に引き抜かれると、湾曲部132の復元力により、元の形状(すなわち固定状態と同様の形状)に戻る。
[2−3.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態による装填機構109は、固定部130に湾曲部132及び当接部133を設け、外力により当該湾曲部132を弾性変形させるようにした。
このため固定部130は、紙幣収納庫11が装填筐体10内の装填位置に装填されており、特に外力が加えられなければ、固定状態(図7)となり、当該紙幣収納庫11を装填位置に保持することができる。これにより装填機構109は、第1の実施の形態と同様、歯車11G(図2)を下部筐体8側の歯車と噛み合わせ、且つコネクタ11N(図2)を下部筐体8側のコネクタと嵌合させて、紙幣の繰出等を正常に行うことができる。
また固定部130は、保守作業者等により操作部135に対し解除操作がなされた場合、後端側を右方向へ変位させるようにして湾曲部132を弾性変形させることにより、解除状態に遷移する。このため装填機構109は、従来や第1の実施の形態と同様、固定部130により妨げること無く、紙幣収納庫11を装填筐体10内から引き出させることができる。
さらに操作部135は、固定部130が固定状態であれば、回動可能な範囲のうち最も左側であり、紙幣収納庫11に近い位置である係合位置P1にある(図7)。一方、操作部135は、固定部130が解除状態であれば、係合位置P1から大きく右側に移動する(図8(A)及び(C))。このため装填機構109は、第1の実施の形態と同様、操作部135の位置により、保守作業者等に対し、紙幣収納庫11が装填位置に正しく装填されているか否かを明確に視認させることができる。
これに加えて固定部130は、保守作業者等により解除操作がなされずに紙幣収納庫11が後方へ引き出された場合、湾曲部132を弾性変形させることにより、当該紙幣収納庫11の引出を許容する(図8(B))。これにより装填機構109は、第1の実施の形態と同様、固定部130及び紙幣収納庫11の何れをも損傷させること無く、当該紙幣収納庫11を装填位置から引き出させることができる。
このとき固定部130は、湾曲部132の形状により、当接部133に対し右方向又は後方向の何れに向けて力が加えられた場合にも、腕部134及び操作部135を右方向へ変位させ、当該操作部135の位置により、紙幣収納庫11が装填位置から外れていることを視認させることができる。
他の観点から見れば、固定部130は、湾曲部132の後端部分及び当接部133に対し、右方向に対しては比較的小さい力により変形し、後方向に対しては比較的大きい力により変形するようにした。これにより固定部130は、第1の実施の形態と同様、固定状態から解除状態へ遷移させるときに操作部135に加えさせる力を小さく抑えることと、当接部133に比較的強い力を作用させて紙幣収納庫11を装填位置に確実に固定することとを、高い次元で両立させることができる。
また固定部130は、樹脂等により一体の成型部品として製造することができるので、複数の部品を組み合わせて製造する必要がある第1の実施の形態と比較して、製造コストの低廉化を図ることができる。
その他の点においても、第2の実施の形態による装填機構109は、第1の実施の形態による装填機構9と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による装填機構109は、固定部130の湾曲部132を弾性変形可能に構成し、その当接部133と接続される後端部分において、右方向に対しては比較的小さい力により弾性変形し、後方向に対しては比較的大きい力により変形するようにした。このため装填機構109は、固定部130が固定状態であれば、紙幣収納庫11を装填筐体10内の装填位置に固定でき、解除操作がなされた場合には固定部130を容易に解除状態へ遷移できる。さらに装填機構109は、解除操作がなされずに紙幣収納庫11が強制的に引き抜かれた場合には、湾曲部132を弾性変形させることにより、紙幣収納庫11及び固定部130双方の破損を回避できる。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、装填基体である装填筐体10を第1基体として当該装填筐体10側に固定部30を設け、収納基体である紙幣収納庫11を第2基体として当該紙幣収納庫11に被固定部40を設ける場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図9に示す装填機構209のように、収納基体としての紙幣収納庫211を第1基体として固定部230を設け、装填基体としての装填筐体210を第2基体として被固定部240を設けるようにしても良い。この場合、固定部230及び被固定部240は、固定部30及び被固定部40とそれぞれ左右対称に構成すれば良い。ただし、爪スプリング236により爪体232を付勢する方向及び被固定部240の形状については、第1の実施の形態による装填機構9の場合とそれぞれ前後反対にすれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、装填基体及び第1基体である装填筐体10側に固定部30を設け、当該固定部30に第2解除部としての爪体32、爪回動軸35及び爪スプリング36を設ける場合について述べた。この場合、固定部30は、爪スプリング36により当該爪体32を爪立姿勢において後方向へ付勢し、解除操作がなされずに紙幣収納庫11が強制的に引き出された場合に、爪体32を回動させるようにした。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図10に示す装填機構309のように、収納基体及び第2基体である紙幣収納庫311側、すなわち固定部330が設けられていない側に、第2解除部としての被固定部340を設けても良い。この場合、装填筐体310側に設けられた固定部330では爪体332をレバー体331に固定する一方、被固定部340では、回動軸345を中心に被係合体342を回動可能とし、当該被係合体342を被係合スプリング346により付勢する。この装填機構309は、固定部330の解除操作がなされずに紙幣収納庫311が強制的に引き出された場合に、被係合スプリング346を弾性変形させながら被係合体342を回動させることにより、固定部330との係合を解除することができる。因みに紙幣収納庫311は、右側面311Rにおける被固定部340よりも前側を右方向へ隆起させるように段差を形成した。このため装填機構309は、紙幣収納庫311が装填位置よりも後方へ引き出された場合、隆起した部分により固定部330を回動させて解除状態に近づけ、紙幣収納庫311が装填位置から外れていることを操作部331Mの位置により通知できる。第2の実施の形態についても同様である。
このように本発明において、固定部30等の固定部が設けられる第1基体は、装填筐体10等の装填基体又は紙幣収納庫11等の収納基体の何れであっても良い。また爪体32、爪回動軸35及び爪スプリング36等でなる第2解除部は、固定部が設けられた第1基体側又は第2基体側の何れに設けられても良い。これらの場合、爪立姿勢にある爪体32を爪スプリング36等により付勢する方向については、収納基体が装填位置から引き出される場合に被係合子(被固定部40等)が相対的に移動する方向(例えば後方向)と反対の方向(例えば前方向)とすれば良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、レバー体31に対し爪体32を回動させることにより、爪立姿勢から一時的に他の姿勢に変化し、固定部30による紙幣収納庫11の装填位置への固定を解除する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図11に示す装填機構409のように、レバー体431に対し爪体432を斜め方向へ平行移動(スライド)し得るように構成し、コイルばねでなる爪スプリング436により爪体432を付勢する等、種々の動作により爪体432の姿勢を爪立姿勢から変化させるようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、爪体32が爪立姿勢であるときの係合面32E及び被係合部40の前側面41を、何れも紙幣収納庫11の移動方向である前後方向とほぼ直交する平面状に形成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、係合面32E及び前側面41を、他の種々の方向を向いた平面としても良く、或いは平面以外の種々の形状としても良い。この場合、紙幣収納庫11が装填位置から僅かでも後方に位置する場合に、固定部30を固定状態(図3)から回動させることにより、操作部31Mの位置によって当該紙幣収納庫11が装填位置から外れていることを通知できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、爪スプリング36のばね定数をレバースプリング34のばね定数よりも十分に大きくすることにより、紙幣収納庫11が装填位置から僅かでも後方に引き出された場合に、爪体32を一時的に爪立姿勢から回動させた後、直ちに復帰すると共にレバー体31を回動させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば爪スプリング36のばね定数をレバースプリング34のばね定数と同等以下とすることにより、紙幣収納庫11が装填位置から僅かでも後方へ引き出された場合に、レバー体31を回動させること無く、爪体32を爪立姿勢から回動させて紙幣収納庫11を引き出させるようにしても良い。要は、紙幣収納庫11が装填位置から強制的に後方へ引き出された場合に、各スプリングを弾性変形させる等して各部分を適宜回動又は移動させることにより、固定部30及び被固定部40の破損を防止できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、操作部31Mが係合位置P1にあるか否かに応じて、紙幣収納庫11が装填位置にあるか否かを通知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば操作部31Mをレバー体31から分離した構成とする等して、紙幣収納庫11が装填位置にあるか否かに拘わらず、操作部31Mを常に係合位置P1に位置させるように、すなわち操作部31Mの位置では紙幣収納庫11が装填位置にあるか否かを通知しないようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、レバースプリング34及び爪スプリング36を、何れも金属材料によるトーションばねとして構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば樹脂材料やゴム材料等、種々の材料により、コイルスプリングや板ばね等、種々の形状としても良い。要は、レバー体31及び爪体32等に対し弾性力を作用させることができれば良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、固定部30を構成する各部品を金属材料により構成し、比較的高い剛性を持たせる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その一部又は全部を樹脂材料等の他の材料により構成しても良い。また第2の実施の形態についても、固定部130を樹脂材料により構成する場合に限らず、例えば金属材料により構成しても良い。この場合、湾曲部132に適切な可撓性を持たせることができれば良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣収納庫11の前側に歯車11Gを設け下部筐体8側の歯車と噛み合わせて駆動力を伝達させ、またコネクタ11Nを設け下部筐体8側コネクタと嵌合させて電力の伝達及び電気信号の送受信を行う場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば歯車11G及びコネクタ11Nの少なくとも一方を省略しても良い。この場合、例えば紙幣収納庫11の内部にモータを内蔵しても良く、また電気信号を無線化して相互に送受信しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、装填筐体10に対し紙幣収納庫11を後方へ引き出す場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば装填筐体10に対し紙幣収納庫11を前方向等、種々の方向へ引き出すようにしても良い。この場合、固定部30及び被固定部40を、この引き出す方向に合わせて設ければ良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、装填筐体10に対し紙幣収納庫11を装填する装填機構9に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば装填筐体10に対しリジェクト収納庫17を装填する装填機構等、種々の箇所に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納基体としての紙幣収納庫11と、装填基体としての装填筐体10と、固定部としての固定部30と、第1解除部としてのレバー体31、レバー回動軸33及びレバースプリング34と、第2解除部としての爪体32、爪回動軸35及び爪スプリング36とによって装填位置固定装置としての装填機構9を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる収納基体と、装填基体と、固定部と、第1解除部と、第2解除部とによって装填位置固定装置を構成しても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納基体としての紙幣収納庫11と、装填基体としての装填筐体10と、固定部としての固定部30と、第1解除部としてのレバー体31、レバー回動軸33及びレバースプリング34と、第2解除部としての爪体32、爪回動軸35及び爪スプリング36と、搬送部としての搬送部13及び束搬送部21とによって媒体処理装置としての紙幣出金機1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる収納基体と、装填基体と、固定部と、第1解除部と、第2解除部と、搬送部とによって媒体処理装置を構成しても良い。