上記のように、図9のトイレットペーパーホルダーは、片手でトイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から引き出して切断できるようにすることで、片手の操作でトイレットペーパー1aを使用することを可能にしたものであり、しかも構造が簡単で小型に形成することができると共に、コスト安価に製作することができるものである。
しかし図9のものでは、トイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から引き出すときには斜め上方へ引っ張り、またトイレットペーパー1aを切断するときには斜め下方へ引っ張るというように、トイレットペーパー1aの引っ張り方向を上や下に変えながら操作する必要があり、またスムーズにトイレットペーパー1aを引き出したり、確実にトイレットペーパー1aを切断したりするためには、斜め上方への引っ張り角度や斜め下方への引っ張り角度を調整するなどが必要であり、使いこなすにはそれなりに習熟が必要であって、子供や高齢者などには使い勝手が悪いという問題があった。
また上記のように、片手でトイレットペーパー1aの一端を掴んだ状態で、トイレットペーパーロール1から引き出して切断することはできるものの、片手ではトイレットペーパー1aを折り畳むことができないので、トイレットペーパー1aを折り畳まないそのままの状態で使用せざるを得ないものであり、トイレットペーパー1aを折り畳んで何重かに重ねた状態で使用することはできないものであった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、特に習熟するような必要なく片手の操作で容易にトイレットペーパーをトイレットペーパーロールから引き出して切断することができると共に、トイレットペーパーを何重かに重ねた状態で使用することができるトイレットペーパーホルダーを提供することを目的とするものである。
本発明に係るトイレットペーパーホルダーは、トイレットペーパーロール1を回転自在に被挿して保持する軸棒2を備えて形成されるものであって、軸棒2は一端部を自由端とする片持ち状態で、自由端が上になるように傾斜して配置されると共に、軸棒2にトイレットペーパーロール1を被挿して保持した状態で、トイレットペーパー1aの先端部を掴んだ手をトイレットペーパーロール1の外周部に沿って周回させることができる空間が形成されるように配置されるものであり、トイレットロール1から引き出したトイレットペーパー1aを切断する際に、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りで回転することを制動する制動手段3を有することを特徴とするものである。
一端部が自由端として形成される軸棒2にトイレットペーパーロール1の内周を被挿することによって、片手の操作でトイレットペーパーロール1をトイレットペーパーホルダーに簡単にセットすることができると共に、自由端が上になるように傾斜して配置される軸棒2からトイレットペーパーロール1は簡単に抜け落ちるようなことはないものである。そして、トイレットペーパー1aの先端部を片手で掴んだ状態で、トイレットペーパー1aがトイレットペーパーロール1に巻き付けられた方向と同方向にこの手をトイレットペーパーロール1の外周部の空間に沿って周回させると、トイレットペーパーロール1を軸棒2の周りに回転させながらトイレットペーパー1aがトイレットペーパーロール1から引き出されると同時に、手の周りにトイレットペーパー1aが巻き付けられるものであり、次いで制動手段3でトイレットペーパーロール1の回転を制動した状態でトイレットペーパー1aを引っ張ることによって、トイレットペーパー1aを切断してトイレットペーパーロール1から切り離すことができ、手に巻き付けることで何重かに重ねた状態でトイレットペーパー1aを使用に供することができるものである。
また本発明は、軸棒2の外周の上部の表面を、トイレットペーパーロール1の内周面との摩擦抵抗が軸棒2の外周の他の表面より高い軸摩擦面4として形成し、この軸摩擦面4により上記制動手段3が形成されるようにしたことを特徴するものである。
上記のようにトイレットペーパー1aの先端部を片手で掴んでトイレットペーパーロール1の外周部に沿って周回させることにより、手にトイレットペーパー1aを巻き付けた状態で、トイレットペーパー1aを強く下方へ引くと、トイレットペーパーロール1の内周の上部は軸棒2の外周上部の軸摩擦面4に強く接することになって、軸摩擦面4とトイレットペーパーロール1の内周面との間に摩擦力が大きく発生し、軸棒2の回りをトイレットペーパーロール1が回転する運動に対してこの摩擦力が制動力として作用するものであり、トイレットペーパー1aを強く下方へ引くこの操作で、回転が制動されているトイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切断することができるものである。また軸棒2の外周は上部を除いて摩擦抵抗を大きく形成する必要がないので、手にトイレットペーパー1aを巻き付けるためにトイレットペーパー1aの先端部を掴んだ手をトイレットペーパーロール1の外周部に沿って周回させる際には、トイレットペーパーロール1は軸棒2の周りをスムーズに回転するものであり、手にトイレットペーパー1aを巻き付ける操作に軸摩擦面4が影響を与えることはないものである。
また本発明は、軸棒2の自由端と反対側の端部に鍔5を設け、鍔5のトイレットペーパーロール1の側面と接する表面に、外周部から内周部へと順にトイレットペーパーロール1の側面との摩擦抵抗が大きくなる鍔摩擦面6を形成し、この鍔摩擦面6により上記制動手段3が形成されるようにしたことを特徴とするものである。
上記のようにトイレットペーパー1aの先端部を片手で掴んでトイレットペーパーロール1の外周部に沿って周回させることにより、手にトイレットペーパー1aを巻き付けた状態で、トイレットペーパー1aを強く下方へ引くと、トイレットペーパーロール1は傾斜している軸棒2のこの傾斜によって鍔5の表面に押し付けられ、トイレットペーパーロール1の側面が鍔摩擦面6に強く接することになって、鍔摩擦面6とトイレットペーパーロール1の側面との間に摩擦力が大きく発生し、軸棒2の回りをトイレットペーパーロール1が回転する運動に対してこの摩擦力が制動力として作用するものであり、トイレットペーパー1aを強く下方へ引くこの操作で、回転が制動されているトイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切断することができるものである。また、トイレットペーパーロール1の使い始めで径が大きい間は、トイレットペーパーロール1の質量も大きいために慣性モーメントが大きく、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切り離すために必要な制動力を得るための摩擦力は少なくて済むが、トイレットペーパーロール1の径が小さくなると、トイレットペーパーロール1の質量も小さくなるために慣性モーメントが小さくなり、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切り離すために必要な制動力を得るための摩擦力が大きく必要になるが、鍔摩擦面6は外周部から内周部へと順に摩擦抵抗が大きくなるように形成されているため、トイレットペーパー1aの使用が進んでトイレットペーパーロール1の径が小さくなっても鍔摩擦面6との摩擦力を高く得ることができるものであり、トイレットペーパーロール1の使い始めから使い終わりに至るまで、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切り離すために必要な制動力が作用するものである。
また本発明は、軸棒2に、トイレットペーパーロール1に圧接してトイレットペーパーロール1の回転を制動する状態とトイレットペーパーロール1から離れる状態との間で可動なストッパー7を設け、このストッパー7により上記制動手段3が形成されるようにしたことを特徴するものである。
上記のようにトイレットペーパー1aの先端部を片手で掴んでトイレットペーパーロール1の外周部に沿って周回させることにより、手にトイレットペーパー1aを巻き付けた状態で、この片手でストッパー7を操作し、トイレットペーパーロール1の回転を制動することにより、回転が制動されたトイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切断することができるものであり、上記のようにトイレットペーパー1aを切断するために強く引っ張るような必要がなく、子供や高齢者などであってもトイレットペーパー1aの切断操作を容易に行うことができるものである。
また本発明は、軸棒2を傾斜角度調整自在に支持すると共に調整した傾斜角度に軸棒2を保持する縦調整具8を備えたことを特徴とするものである。
縦調整具8で軸棒2の傾斜角度を調整することによって、使用者の座高などに応じて、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを引き出して切断し易い位置にトイレットペーパーロール1を配置することができるものである。
また本発明は、軸棒2を横方向の向きを調整自在に支持すると共に横方向の向きを調整した位置に軸棒2を保持する横調整具9を備えたことを特徴とするものである。
横調整具9で軸棒2の横方向での向きを調整することによって、右手を使う場合あるいは左手を使う場合などに応じて、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを引き出して切断し易い位置にトイレットペーパーロール1を配置することができるものである。
また本発明において、上記軸摩擦面4は、軸棒2の表面を粗面にすることによって形成されていることを特徴とするものである。
この発明にあっては、軸棒2の表面加工によって容易に軸摩擦面4を形成することができるものである。
また本発明において、上記軸摩擦面4は、軸棒2の表面に樹脂系塗材10を塗布することによって形成されていることを特徴とするものである。
この発明にあっては、樹脂系塗材10の種類の選択によって、軸摩擦面4を必要とする摩擦抵抗に容易に形成することができるものである。
また本発明は、断面円形に形成される軸棒2の外周の上部の表面に上記の樹脂系塗材10を塗布して軸摩擦面4を形成するにあたって、上端ほど樹脂系塗材10の塗膜の厚みを厚く形成したことを特徴とするものである。
このように樹脂系塗材10の塗膜の厚みを上端ほど厚くすると、樹脂系塗材10で形成される軸摩擦面4の外周面は、その上端を挟む左右の各面の曲率半径が軸棒2の半径よりも大きく形成されることになるものであり、トイレットペーパーロール1の内周の半径は軸棒2の半径よりも大きいものであるところ、軸摩擦面4の外周面の曲率半径はトイレットペーパーロール1の内周の半径に近くなり、軸摩擦面4の外周に対するトイレットペーパーロール1の内周の接触面積が増加することになり、軸摩擦面4とトイレットペーパーロール1の内周面との間の摩擦力を高く得ることができるものである。
また本発明において、トイレットペーパーロール1の側面と対面する上記の鍔5の表面に中心部ほど深くなる凹み部11を形成し、この凹み部11の表面に上記鍔摩擦面6が形成されていることを特徴するものである。
凹み部11は深くなる中心部ほど摩擦抵抗が大きくなるように形成されることになるところ、トイレットペーパーロール1の径が小さくなるにつれて、トイレットペーパーロール1は凹み部11に深く入り込んでその側面の外周部は摩擦抵抗が大きい面に当接することになるものであり、トイレットペーパー1aの使用が進んでトイレットペーパーロール1の径が小さくなるにつれて鍔摩擦面6との摩擦力を高めることができ、トイレットペーパーロール1の径が小さくなって質量が小さくなっても、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切り離すために必要な制動力を得ることができるものである。
また本発明において、上記凹み部11は、湾曲面状に中心部ほど深くなるように形成されていることを特徴するものである。
凹み部11が湾曲面状であることによって、トイレットペーパーロール1は径が変化しても常に側面の外周部が凹み部11の表面の鍔摩擦面6に接するものであり、鍔摩擦面6との摩擦力が安定して働き、安定した制動力を得ることができるものである。
また本発明において、上記凹み部11は、階段状に中心部ほど深くなるように形成されていることを特徴するものである。
凹み部11が階段状であることによって、トイレットペーパーロール1は径が小さくなると凹み部11の深い段にはまり込んで、深い段の鍔摩擦面6にトイレットペーパーロール1の外周部の側面が面で接するものであり、鍔摩擦面6との摩擦力が安定して働き、安定した制動力を得ることができるものである。
また本発明において、上記ストッパー7は、軸棒2の自由端側の端面に回動自在に設けられ、ストッパー7の先端部に屈曲して形成した差し込み片12が軸棒2の外周とトイレットペーパーロール1の内周との間に差し込まれることにより、差し込み片12でトイレットペーパーロール1の内周を圧接するようにしたものであることを特徴とするものである。
ストッパー7を操作して差し込み片12を軸棒2とトイレットペーパーロール1の間に差し込むことによって、トイレットペーパーロール1が回転しないように制動することができ、トイレットペーパーロール1が回転しない状態でトイレットペーパー1aを容易に切断することができるものである。
また本発明において、上記ストッパー7は、軸棒2の自由端側の端面に回動自在に設けられ、ストッパー7の端部の押え片13がトイレットペーパーロール1の側面に圧接するようにしたものであることを特徴とするものである。
ストッパー7を操作して押え片13でトイレットペーパーロール1の側面を圧接させることによって、トイレットペーパーロール1が回転しないように制動することができ、トイレットペーパーロール1が回転しない状態でトイレットペーパー1aを容易に切断することができるものである。
また本発明において、上記ストッパー7は、軸棒2にその外周面から突出自在に設けられ、ストッパー7が軸棒2から突出してトイレットペーパーロール1の内周に圧接するようにしたものであることを特徴とするものである。
ストッパー7を操作して軸棒2から突出させてトイレットペーパーロール1の内周に圧接させることによって、トイレットペーパーロール1が回転しないように制動することができ、トイレットペーパーロール1が回転しない状態でトイレットペーパー1aを容易に切断することができるものである。
本発明によれば、トイレットペーパーホルダーの軸棒2は一端部を自由端とする片持ち状態で、自由端が上になるように傾斜して配置されるので、軸棒2にトイレットペーパーロール1の内周を被挿することによって、片手の操作でトイレットペーパーロール1をトイレットペーパーホルダーに簡単にセットすることができると共に、軸棒2からトイレットペーパーロール1は簡単に抜け落ちるようなことはないものである。そして、トイレットペーパー1aの先端部を片手で掴んだ状態で、トイレットペーパー1aがトイレットペーパーロール1に巻き付けられた方向と同方向にこの手をトイレットペーパーロール1の外周部の空間に沿って周回させると、トイレットペーパーロール1を軸棒2の周りに回転させながらトイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から引き出すことができると同時に、手の周りにトイレットペーパー1aが巻き付けられることになり、次いで制動手段3でトイレットペーパーロール1の回転を制動した状態でトイレットペーパー1aを引っ張ることによって、トイレットペーパー1aを切断してトイレットペーパーロール1から切り離すことができるものである。従ってトイレットペーパー1aの先端部を掴んだ片手をトイレットペーパーロール1の回りを周回させて引っ張るというだけの簡単な操作で、特に習熟するような必要もなくトイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から引き出して切断することができると共に、手に巻き付けることで何重かに重ねた状態でトイレットペーパー1aを使用に供することができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものである。2は円柱形に形成される軸棒であり、円板形に形成される鍔5の片面の中央に軸棒2の一端が垂直に固定してある。本発明に係るトイレットペーパーホルダーはこの軸棒2と鍔5によって基本的な構成が形成されるものであり、軸棒2は一方の端部を自由端とする片持ち状態で鍔5によって保持されるものである。軸棒2や鍔5の材質は、木材、金属、樹脂など任意である。
軸棒2の直径はトイレットペーパーロール1の内径より小さく形成されるのはいうまでもないが、鍔5の直径は新品のトイレットペーパーロール1の外径と同じか若しくは小さく、且つトイレットペーパーロール1の内径よりも大きく形成されるものである。市販されているトイレットペーパーロール1にはJIS規格に適合したもの、JIS規格外品、内周に型紙の筒を設けたもの、このような筒を設けていないものなど種々あるので、一概にいうことはできないが、軸棒2の直径はトイレットペーパーロール1の内径の90〜60%程度に、鍔5の外径はトイレットペーパーロール1の外径の100〜60%程度に形成するのが好ましい。
図1の実施の形態では、軸棒2と鍔5を、縦調整具8と横調整具9を介して基体17に取り付けることによって、トイレットペーパーホルダーを形成するようにしてある。基体17はトイレの壁やドアなどに取り付けられる固定片18と、固定片18の下端に水平に設けられる受け片19とで断面L字形に形成されるものであり、固定片18にはビスや釘などの固着具を通すための取付孔20が穿設してある。
横調整具9は受け片19の上面に配置されるものであり、受け片19の上面に立設固定した横回動軸21に水平回動自在に取り付けてある。円板状に形成される横調整具9の固定片18側の後部には、横回動軸21を中心とする円の軌跡上に沿った複数個所に所定間隔で横回動調整孔22が上下に貫通して形成してある。受け片19の上面の一か所には固定穴23が凹設してあり、選択した一つの横回動調整孔22に上から固定ピン24を挿入して、固定ピン24の下端を固定穴23に差し込むことによって、横調整具9が回動しないように固定することができる。
また円板状の横調整具9の上面の回転中心部に一対の縦回動受け板25が平行に対面して立設してあり、縦回動杆26を縦回動受け板25間に配置すると共に縦回動杆26の一端部を縦回動受け板25間に設けた縦回動軸27に上下方向に回動自在に取り付けてある。各回動受け板25の前部には縦回動軸27を中心とする円の軌跡上に沿って所定間隔で縦回動調整孔28が穿設してあり、また縦回動杆26の一か所に固定孔29が穿設してあり、一方の回動受け板25の縦回動調整孔28に差し込んだ固定ピン30を縦回動杆26の固定孔29に通してさらに他方の回動受け板25の縦回動調整孔28に差し込むことによって、縦回動杆26が回動しないように固定することができる。この縦回動受け板25と縦回動杆26によって縦調整具8が形成されるものであり、縦回動杆26の縦回動受け板25間から突出する先端部に鍔5の背面の中央部が固定してあり、鍔5と軸棒2は縦回動杆26によって支持されるものである。
図1の実施の形態では、軸棒2に制動手段3を設けるようにしてある。すなわち、軸棒2の外周面のうち、上部の外周面に他の表面よりも摩擦抵抗が高い軸摩擦面4を形成し、この軸摩擦面4で制動手段3が形成されるようにしてある。軸棒2の外周の上部に軸摩擦面4を形成する範囲は、特に限定されるものではないが、軸棒2の外周の上端を中心として、外周の25〜75%程度の範囲が好ましく、40〜60%程度の範囲が特に好ましい。
そして軸摩擦面4は、例えば軸棒2の表面を荒らすなどして粗面にすることによって、軸棒2の素地の表面よりも摩擦抵抗を高くすることにより、形成することができる。また、軸棒2の表面に樹脂系塗材10を塗布することによっても、軸棒2の表面よりも摩擦抵抗が高い軸摩擦面4を形成することができる。摩擦抵抗が高い軸摩擦面4を形成するのに適した樹脂系塗材10としては、ウレタン樹脂塗布剤、シリコン樹脂塗布剤、ゴムラテックス塗布剤などを使用することができる。軸棒2の表面を粗面にして軸摩擦面4を形成する場合、高い摩擦抵抗を得るようにすることは難しいが、樹脂系塗材10はこのような粗面よりも高い摩擦抵抗を有する軸摩擦面4を形成することが可能である。また樹脂系塗材10の種類を選択することによって、必要とされる摩擦抵抗を有する軸摩擦面4を形成することができるものである。
上記のように形成される本発明のトイレットペーパーホルダーは、軸棒2を自由端が上になるように傾斜させ、さらに軸棒2の周囲に障害物のない空間が確保されるようにして、トイレ内などに取り付けて使用されるものである。軸棒2の傾斜角度は任意に設定することができるが、水平に対する仰角で15〜75°の範囲に傾斜させるのが一般的であり、特に30〜60°の範囲の傾斜角度であることが望ましい。また本発明においては、軸棒2にトイレットペーパーロール1をセットした状態で、トイレットペーパーロール1の周りで手を周回させることができるようにすることが必要であるので、軸棒2の周囲に軸棒2を中心として半径15cm以上の範囲で障害物のない空間が形成されるようにすることが必要であり、軸棒2の周りにこのような空間が形成されるように、トイレットペーパーホルダーを配置することが望ましい。
ここで、本発明のトイレットペーパーホルダーの軸棒2は一端部が自由端であるため、軸棒2に自由端側からトイレットペーパーロール1の中心部に形成されている中心孔を被挿することによって、片手の操作でトイレットペーパーロール1をトイレットペーパーホルダーに簡単にセットすることができるものである。しかも軸棒2は自由端が上になるように傾斜しているため、軸棒2からトイレットペーパーロール1が簡単に抜け落ちるようなこともないものである。
次に、用便などの後に、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを引き出して使用する方法について説明する。トイレットペーパーロール1に巻回されたトイレットペーパー1aの先端部は、トイレットペーパーロール1が未使用の他は、トイレットペーパーロール1から垂れ下がった状態にあるので、図2のaに示すようにトイレットペーパー1aのこの先端部を片手で掴む。使える片手が右手であれば、トイレットペーパーロール1の側面を正面に見て右側からトイレットペーパー1aが垂れ下がる状態になるように軸棒1にトイレットペーパーロール1をセットしておく。逆に使える片手が左手であれば、トイレットペーパーロール1の側面を正面に見て左手側からトイレットペーパー1aが垂れ下がる状態になるように軸棒1にトイレットペーパーロール1をセットし直す。
そして図2のaのようにトイレットペーパー1aの先端部を掴んだ片手を、トイレットペーパー1aがトイレットペーパーロール1に巻き付けられている方向と同方向に、図2のb→c→d→eのようにトイレットペーパーロール1の外周に沿って周回させる。すると、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りに回転してトイレットペーパー1aがトイレットペーパーロール1から引き出されると共に、この引き出されたトイレットペーパー1aは手の周りに巻き付けられる。トイレットペーパーロール1の外周を一周させると手には1回トイレットペーパー1aが巻き付けられることなるので、トイレットペーパーロール1の外周を2〜4周させると手には2〜4回トイレットペーパー1aが巻き付けられ、手のひらの側にはトイレットペーパー1aが2〜4重に重ねられた状態になる。
次にこのようにトイレットペーパー1aを巻き付けた手を鉛直下方へ素早く強く引き下ろす。トイレットペーパーロール1は軸棒2の外周を回転自在になっているが、軸棒2の外周面の上部はトイレットペーパーロール1の内周面との摩擦抵抗が高い軸摩擦面4であるので、手を下方へ強く素早く引き下ろすことによって、トイレットペーパーロール1の内周面の上部は軸摩擦面4に強く押し当てられることになり、トイレットペーパーロール1の内周面と軸摩擦面4との間に摩擦力が強く働き、トイレットペーパーロール1の内周面が軸摩擦面4に対して滑り難くなることで軸棒2の周りをトイレットペーパーロール1が回転する運動に対する制動力が作用する。このようにトイレットペーパーロール1が軸棒2の周りを回転することが制動された状態で、トイレットペーパー1aに下方へ引っ張る力が働くので、回転が制動されたトイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aが切断され、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切り離すことができる。トイレットペーパー1aにミシン目が入っている場合には、このミシン目で容易に切断される。
ここで、上記のように手にトイレットペーパー1aを巻き付けるために手をトイレットペーパーロール1の外周に沿って周回させるときには、手を強く引き下ろすようなことはないので、しかも周回させるときの手の動きは横方向あるいは上方向が多いので、トイレットペーパーロール1の内周面が軸摩擦面4に強く押し当てられることはなく、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りを回転することに対して制動力が作用するようなことはないものであり、トイレットペーパーロール1は軸棒2の周りをスムーズに回転するものである。
上記のようにトイレットペーパー1aを切断してトイレットペーパーロール1から切り離すと、手に巻き付けたトイレットペーパー1aは手のひらの側に何重かに重ねられているので、何重かに重ねた状態のトイレットペーパー1aをそのまま、用便後などの使用に供することができるものである。ここで、このように手にトイレットペーパー1aを巻き付けたまま使用する他に、手に巻き付けたトイレットペーパー1aを膝の上などに置いて、手をトイレットペーパー1aから引き抜くと、膝の上に残ったトイレットペーパー1aは、手のひらと手の甲に重ねられた枚数の合計の枚数で重ねられた状態になる。従ってトイレットペーパー1aから引き抜いた手でこのトイレットペーパー1aを持って使用に供すると、トイレットペーパー1aが多く重ねられた状態で使用することができるものであり、便などがトイレットペーパー1aを浸透して手に達することが少なくなって、用便後の処理を衛生的に行うことができるものである。
以上のように、トイレットペーパー1aの先端部を掴んだ片手をトイレットペーパーロール1の周りに沿って周回させ、次いで下方へ引っ張るというだけの簡単な操作で、トイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から引き出して切断することができるものであり、しかも手に巻き付けることで何重かに重ねた状態にすることができ、厚く重ねたトイレットペーパー1aを使用に供することができるものである。従って本発明のトイレットペーパーホルダーを用いることによって、特に習熟するような必要なく、子供や老人などであっても、片手の操作だけで容易にトイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から引き出して切断することができると共に、トイレットペーパー1aを何重かに重ねた状態で衛生的に使用することができるものである。
ここで軸棒2は、縦調整具8によって縦の傾斜角度を、また横調整具9によって横方向の向きを、それぞれ調整できるようになっている。すなわち、固定ピン30を抜くと縦調整具8の縦回動杆26を縦回動軸27を中心に図1(a)のa矢印のように上下に回動させることができるので、この上下回動によって軸棒2の傾斜角度を調整することができるものであり、使用する人の座高などに合わせて使い易い傾斜角度に調整することができるものである。そして調整した傾斜角度の位置で、固定ピン30を一方の回動受け板25の縦回動調整孔28に差し込むと共に、縦回動杆26の固定孔29に通してさらに他方の回動受け板25の縦回動調整孔28に差し込むことによって、縦回動杆26が回動しないように固定することができ、軸棒2を調整した傾斜角度に固定することができるものである。
また、固定ピン24を抜くと横調整具9を横回動軸21を中心に図1(a)のb矢印のように水平方向に回動させることができるので、この水平回動によって軸棒2の横方向への向きを調整することができるものであり、使用する人が右手で使うか左手を使うかなどに合わせて使い易い向きになるように調整することができるものである。そして軸棒2の向きを調整した位置で、固定ピン24を横回動調整孔22に挿入して、固定ピン24の下端を固定穴23に差し込むことによって、横調整具9が回動しないように固定することができ、軸棒2を調整した向きに固定することができるものである。
尚、図1の実施の形態では、縦調整具8と横調整具9を併用して、軸棒2を傾斜角度と横方向の向きのいずれも調整できるようにしたが、縦調整具8と横調整具9のいずれか一方だけを具備して、軸棒2を傾斜角度と横方向の向きのいずれか一方だけ調整できるようにしてもよい。また軸棒2の傾斜角度を調整する手段や、軸棒2の横方向の向きを調整する手段としては、図1に示すものに限定されないものであり、さらに軸棒2の傾斜角度と横方向の向きの両方の調整を同時に一つの手段で行うようにすることも可能である。例えばボールジョイントの機構を用いることによって、軸棒2を上下左右あらゆる方向に回動させることができるものであり、またフレキシブルチューブを用いることによって、軸棒2を上下左右あらゆる方向の向きにさせることができるものであり、軸棒2の傾斜角度と横方向の向きの両方の調整を同時に一つの手段で行うことができるものである。
さらに、図1の実施の形態では、鍔5の背面を縦回動杆26で支持するようにしたが、鍔5を支持する態様はこれに限定されるものではない。例えば鍔5の背面の中央部にねじ穴を設けておくことによって、このねじ穴を利用して各種の態様で鍔5を支持することが可能になるものである。
図3は、軸棒2の軸摩擦面4を樹脂系塗材10の塗布で形成するようにした実施の形態の一例を示すものであり、このものでは軸棒2の外周の上部の表面に樹脂系塗材10を塗布するにあたって、上端ほど樹脂系塗材10の塗膜の厚みが厚くなるように塗布することによって、軸摩擦面4を形成するようにしてある。断面円形に形成される軸棒2の上部に塗布する樹脂系塗材10の塗膜の厚みを上端ほど厚くすると、樹脂系塗材10で形成される軸摩擦面4の外周面は、その上端を挟む左右の各面において半径(曲率半径)r1が軸棒2の半径r2よりも大きくなる。
ここで、トイレットペーパーロール1の内周の半径は軸棒2の半径よりも大きいものであるが、トイレットペーパーロール1の内周の半径と軸棒2の半径が大きく異なると、トイレットペーパーロール1の内周面と軸棒2の外周面とは線接触に近くなって接触面積が小さなものになる。これに対して、上記のように樹脂系塗材10で形成される軸摩擦面4の外周面の半径が大きく形成されていると、トイレットペーパーロール1の内周の半径に近付くため、トイレットペーパーロール1の内周面と軸摩擦面4の外周面との接触面積が広くなる。しかもトイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から切り離すためにトイレットペーパー1aを図3(b)の矢印のように下方へ引くと、トイレットペーパーロール1は軸棒2に対して引かれる方向に傾くので、図3(b)に示すように、軸摩擦面4の上端を挟む一方の面にトイレットペーパーロール1の内周面が接することになり(図3(b)において鎖線はトイレットペーパーロール1の内周を示す)、トイレットペーパーロール1の内周面が軸摩擦面4の外周面に広い面積で接触することになる。従って、トイレットペーパーロール1と軸摩擦面4との間の摩擦力を高く得ることができるので、トイレットペーパーロール1が回転することを制動する力が強く作用し、トイレットペーパー1aの切断がより確実になるものである。樹脂系塗材10の塗膜の厚みは、樹脂系塗材10で形成される軸摩擦面4の上端を挟む左右の各面において半径(曲率半径)がトイレットペーパーロール1の内周面の半径とほぼ等しくなるように、調整するのが望ましい。
図3(c)は、軸棒2に樹脂系塗材10を塗布して軸摩擦面4を形成するにあたって、軸棒2の外周の上端に軸方向沿って紐や細い棒などの直線状の線材32を載置し、この状態で軸棒2の外周面の上部に樹脂系塗材10を塗布するようにしたものである。このものでは、線材32がスペーサーとなって、軸棒2の上部ほど膜厚が厚くなるように樹脂系塗材10を塗布する作業が容易になるものであり、また樹脂系塗材10の膜内に埋め込まれる線材32の位置で、軸棒2の上下の向きを知ることができ、軸棒2の取り付けの際に上下の向きを間違えるようなことがなくなるものである。
上記の各実施の形態では、軸摩擦面4を軸棒2の表面を粗面にしたり、軸棒2の表面に樹脂系塗材10を塗布したりして形成したが、これらに限定されるものではなく、例えば軸棒2の地の面よりも摩擦抵抗が高いシート材を軸棒2の表面に貼り付けて軸摩擦面4を形成するようにしてもよい。
また上記の実施の形態では、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りで回転することを制動する制動手段3を、軸棒2の外周に設けた軸摩擦面4で形成するようにしたが、鍔5に制動手段3を設けることもできる。図4はその一例を示すものであり、鍔5の軸棒2を設けた側の面に、外周部から軸棒2を設けた内周部へと順にトイレットペーパーロール1の側面との摩擦抵抗が大きくなる鍔摩擦面6を形成し、この鍔摩擦面6によって制動手段3が形成されるようにしてある。
鍔摩擦面6は、例えば鍔5の表面を荒らすなどして粗面にすることによって、鍔5の地の面よりも摩擦抵抗を高くすることによって形成することができるものであり、粗面の粗度を外周側から内周側へと順に高くなるよう変化させることによって、外周部から内周部へと順に摩擦抵抗が大きくなる鍔摩擦面6を形成することができる。また軸棒2の表面に、軸摩擦面4の形成に用いた樹脂系塗材を塗布することによっても鍔摩擦面6を形成することができるものであり、この場合、摩擦抵抗の異なる複数種の樹脂系塗材を用い、外周側から内周側へと順に、摩擦抵抗が高い樹脂系塗材を塗布することによって、外周部から内周部へと順に摩擦抵抗が大きくなる鍔摩擦面6を形成することができる。さらに、鍔5の地の面よりも摩擦抵抗が高いシート材を鍔5の表面に貼り付けて鍔摩擦面6を形成することもできる。この場合、摩擦抵抗の異なる複数種のシート材を用い、外周側から内周側へと順に、摩擦抵抗が高いシート材を貼り付けることによって、外周部から内周部へと順に摩擦抵抗が大きくなる鍔摩擦面6を形成することができる。
図4の実施の形態では、鍔5の表面に中心部ほど深くなる凹み部11を形成し、この凹み部11の表面に鍔摩擦面6を形成するようにしてある。軸棒2は凹み部11の中央の最も深い部分に取り付けられるものであり、また凹み部11は鍔5の外周端部を残して、その内側の範囲に形成されるものである。従って、鍔5の外周端部の表面には鍔摩擦面6は形成されず、凹み部11の表面にのみ鍔摩擦面6が形成されるものであり、鍔摩擦面6は外周部から内周部へと同心円で図4(b)に示す6a,6b,6cの順に摩擦抵抗が大きくなるように形成してある。また図4の実施の形態では、凹み部11は凹湾曲する湾曲面に形成してあり、凹み部11は外周側から内周側へと連続的に深くなるようにしてある。
鍔5の外径は未使用状態のトイレットペーパーロール1の外径と同じか若しくは小さいので、トイレットペーパーロール1を使用し始める段階では、図4(d)にKで示すように、トイレットペーパーロール1の側面は凹み部11より外側の鍔5の表面に接している。凹み部11より外側には鍔摩擦面6が形成されていないので、トイレットペーパーロール1と鍔5の表面との摩擦抵抗は小さいが、使い始めで径が大きいときはトイレットペーパーロール1は質量も大きいために慣性モーメントが大きく働くので、トイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切り離すために必要な制動力を得るための摩擦力は少なくてよく、制動手段3として鍔5の鍔摩擦面6の他に、上記の軸棒2の軸摩擦面4を併用しているときには、軸棒2の軸摩擦面4による制動力だけで十分である。むしろトイレットペーパーロール1の径が大きいときは、トイレットペーパー1aの先端部を掴んだ手をトイレットペーパーロール1の外周に沿って周回させ、手の周りにトイレットペーパーロール1aを巻き付ける際、軸棒2の周りにトイレットペーパーロール1をスムーズに回転させるために、鍔5からトイレットペーパーロール1に制動力があまり作用しないほうがよく、このためにも凹み部11より外側の鍔5の表面の摩擦抵抗は小さいほうが望ましい。
そしてトイレットペーパーロール1の使用が進んでトイレットペーパーロール1の径が小さくなると、トイレットペーパーロール1は軸棒2の傾斜に従って鍔5側へとスライドし、トイレットペーパーロール1bの側面部は凹み部11内に入り込む。するとトイレットペーパーロール1の側面の外周端縁が図4(d)のLのように凹み部11の表面の鍔摩擦面6に接することになる。トイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から切り離す時には、トイレットペーパー1aの先端部を掴んだ手をトイレットペーパーロール1の外周に沿って周回させて、手の周りにトイレットペーパーロール1aを巻き付けた状態で鉛直下方へ強く引く操作を行なうことになるが、トイレットペーパーロール1は傾斜している軸棒2の傾斜によって鍔5の側に押し付けられるため、トイレットペーパーロール1の側面の外周端縁が鍔摩擦面6に強く接することになり、鍔摩擦面6とトイレットペーパーロール1の側面との間に摩擦力が大きく発生する。このため、軸棒2の回りをトイレットペーパーロール1が回転する運動に対してこの摩擦力が制動力として作用し、トイレットペーパー1aを強く下方へ引く操作で、回転が制動されているトイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切断することができるものである。
トイレットペーパーロール1の使用がさらに進んでトイレットペーパーロール1の径がさらに小さくなると、図4(d)のMやNのように、鍔摩擦面6のうち、摩擦力が高くなっている面6b,6cにトイレットペーパーロール1の側面の外周端縁が接することになる。トイレットペーパーロール1の径が小さくなると、質量も小さくなるために慣性モーメントが小さくなるが、トイレットペーパーロール1の側面の外周端縁は鍔摩擦面6のうち摩擦力が高い内側の面に接しているために高い摩擦力を受け、慣性モーメントが小さくなることを摩擦力の増大で補って、トイレットペーパーロール1に対して同じような制動力を作用させることができるものである。従って、トイレットペーパーロール1の使用が進んでトイレットペーパーロール1の径が小さくなっても、トイレットペーパー1aを鉛直下方へ引っ張る操作で支障なくトイレットペーパー1aの切断を行なうことができるものである。
図5は他の実施の形態を示すものである。凹み部11を階段状に中心部ほど深くなるように形成してある。階段状の各段は軸棒2の周囲に同心円状に形成されるものであり、凹み部11に形成される鍔摩擦面6は、外側から内側へと各段6a,6b,6cの順に摩擦抵抗が大きくなるように形成してある。この実施の形態にあっても、鍔5の外径は未使用状態のトイレットペーパーロール1の外径と同じか若しくは小さいので、トイレットペーパーロール1を使用し始める段階では、図5(c)にKで示すように、トイレットペーパーロール1の側面は凹み部11より外側の鍔5の表面に接している。
そしてトイレットペーパーロール1の使用が進んでトイレットペーパーロール1の径が小さくなると、トイレットペーパーロール1は軸棒2の傾斜に従って鍔5側にスライドし、トイレットペーパーロール1の側面部は凹み部11内に入り込む。するとトイレットペーパーロール1の側面の外周部が図5(c)のLのように凹み部11の表面の鍔摩擦面6の段6aに接することになる。トイレットペーパー1aをトイレットペーパーロール1から切り離す時には、トイレットペーパー1aの先端部を掴んだ手をトイレットペーパーロール1の外周に沿って周回させて、手の周りにトイレットペーパーロール1aを巻き付けた状態で鉛直下方へ強く引く操作を行なうことになるが、トイレットペーパーロール1は傾斜している軸棒2の傾斜によって鍔5の側に押し付けられるため、トイレットペーパーロール1の側面の外周部が鍔摩擦面6に強く接することになり、鍔摩擦面6とトイレットペーパーロール1の側面との間に摩擦力が大きく発生する。このため、軸棒2の回りをトイレットペーパーロール1が回転する運動に対してこの摩擦力が制動力として作用し、トイレットペーパー1aを強く下方へ引く操作で、回転が制動されているトイレットペーパーロール1からトイレットペーパー1aを切断することができるものである。特に、凹み部11は階段状になっているために、トイレットペーパーロール1の側面の外周部は段面となった鍔摩擦面6に対して面接触することになり、トイレットペーパーロール1の側面の外周部と鍔摩擦面6との間に摩擦力が安定して働き、安定した制動力が作用するために、トイレットペーパー1aを切断する操作を安定して行なうことができるものである。
トイレットペーパーロール1の使用がさらに進んでトイレットペーパーロール1の径がさらに小さくなると、図5(c)のMやNのように、鍔摩擦面6のうち、摩擦力が高くなっている段6b,6cにトイレットペーパーロール1の側面の外周部が接することになる。トイレットペーパーロール1の径が小さくなると、質量も小さくなるために慣性モーメントが小さくなるが、トイレットペーパーロール1の側面の外周部は鍔摩擦面6のうち摩擦力が高い内周側の段6b,6cに接しているために高い摩擦力を受け、慣性モーメントが小さくなることを摩擦力の増大で補って、トイレットペーパーロール1に対して同じような制動力を作用させることができるものである。従って、トイレットペーパーロール1の使用が進んでトイレットペーパーロール1の径が小さくなっても、トイレットペーパー1aを鉛直下方へ引っ張る操作で支障なくトイレットペーパー1aの切断を行なうことができるものである。
トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りで回転することを制動する制動手段3としては、上記した軸棒2の軸摩擦面4と、鍔5の鍔摩擦面6のいずれか一方で形成するようにしてもよいが、制動手段3として軸棒2の軸摩擦面4と鍔5の鍔摩擦面6の両方を併用してもよい。このように軸棒2の軸摩擦面4と鍔5の鍔摩擦面6を併用することによって、トイレットペーパーロール1に対して高い制動力を作用させることができ、トイレットペーパー1aの切断がより容易になるものである。
図6は、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りで回転することを制動する制動手段3としてストッパー7を用いた実施の形態の一例を示すものである。ストッパー7は背面側の中央部に軸部34を設けてシーソー形状に形成されるものであり、一端部に先端ほど細くなる差し込み片12が背面側へ突出して設けてある。ストッパー7の背面は、軸部34を頂点とする三角形状に形成してあり、軸部34を挟んで差し込み片12側が制動保持面35、反対側が制動解除面36として形成してある。このストッパー7は軸棒2の先端に配置されるものであり、軸部34を通した軸ピン34aによって軸棒2の先端面に取り付けてある。従ってストッパー7は、制動解除面36が軸棒2の先端面に当接する状態と、制動保持面35が軸棒2の先端面に当接する状態の間で揺動回動されるものである。また制動保持面35と制動解除面36にはそれぞれ磁石37a,38aが埋め込んで設けてあり、軸棒2の先端面の磁石37a,38aと対向する箇所にもそれぞれ磁石37b,38bが埋め込んで設けてある。このため、ストッパー7を回動させて図6(a)のように制動解除面36を軸棒2の先端面に当接させると、磁石38a,38bが磁着してストッパー7をこのように回動させた状態に保持することができ、またストッパー7を回動して図6(b)のように制動保持面35を軸棒2の先端面に当接させると、磁石37a,37bが磁着してストッパー7をこのように回動させた状態に保持することができるものである。
ここで、制動解除面36が軸棒2の先端面に当接するようにストッパー7を回動させた図6(a)の状態では、ストッパー7の差し込み片12と反対側の端部は軸棒2の外周面より突出しないようにしてあり、また差し込み片12は軸棒2の外周よりも突出するが、軸棒2に被挿されるトイレットペーパーロール1の内径から軸棒2の外径を引いた寸法以上には突出しないように、ストッパー7の寸法を形成してある。従って、ストッパー7を回動させて図6(a)のように制動解除面36を軸棒2の先端面に当接させた状態で、軸棒2にトイレットペーパーロール1の内周を被挿することによって、軸棒2にトイレットペーパーロール1をセットすることができるものである。尚、図6(a)において、39はトイレットペーパーロール1の内周に設けられている厚紙の軸筒である。
そして上記と同様に、トイレットペーパー1aの先端部を片手で掴み、この手をトイレットペーパー1aがトイレットペーパーロール1に巻き付けられている方向と同方向にトイレットペーパーロール1の外周に沿って周回させると、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りに回転してトイレットペーパー1aがトイレットペーパーロール1から引き出されると共に、この引き出されたトイレットペーパー1aは手の周りに巻き付けられる。次に、トイレットペーパー1aを巻き付けたこの手で、例えばこの手の親指でストッパー7の差し込み片12の側の端部を押すと、ストッパー7は軸部34を中心に揺動して制動保持面35が軸棒2の先端面に当接する状態になる。すると図6(b)に示すようにストッパー7の差し込み片12が軸棒2の外周とトイレットペーパーロール1の内周との間に差し込まれ、差し込み片12がトイレットペーパーロール1の内周に食い込んで圧接されることになり、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りを回転することができないように制動力を作用させることができる。このようにトイレットペーパーロール1が回転できないように固定できるので、この状態でトイレットペーパー1aを引っ張ることによって、トイレットペーパー1aを破ってトイレットペーパーロール1から切り離して、使用に供することができるものである。
図7は、制動手段3としてストッパー7を用いた実施の形態の他の一例を示すものであり、このものでは、図6のストッパー7における差し込み片12に代えて押え片13を形成するようにしてあり、その他の構成は図6のものとほぼ同じである。この押え片13は、制動保持面35を延長して形成されるものである。ここで、制動解除面36が軸棒2の先端面に当接するようにストッパー7を回動させた状態では、ストッパー7の押え片13と反対側の端部は軸棒2の外周面より突出しないようにしてあり、また押え片13は軸棒2の外周よりも突出するが、軸棒2に被挿されるトイレットペーパーロール1の内径から軸棒2の外径を引いた寸法以上には突出しないように、ストッパー7の寸法を形成してある。従って、ストッパー7を回動させて図7(a)のように制動解除面36を軸棒2の先端面に当接させた状態で、軸棒2にトイレットペーパーロール1の内周を被挿することによって、軸棒2にトイレットペーパーロール1をセットすることができるものである。
そして上記と同様に、トイレットペーパー1aの先端部を掴んだ片手をトイレットペーパーロール1の外周に沿って周回させて、トイレットペーパー1aを手の周りに巻き付け、次にトイレットペーパー1aを巻き付けたこの手で、例えばこの手の親指でストッパー7の押え片13の側の端部を押すと、ストッパー7は軸部34を中心に揺動して制動保持面35が軸棒2の先端面に当接する状態になる。すると図7(b)に示すようにストッパー7の押え片13がトイレットペーパーロール1の側面に圧接することになり、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りを回転することができないように制動力を作用させることができる。このようにトイレットペーパーロール1が回転できないように固定した状態で、トイレットペーパー1aを引っ張ることによって、トイレットペーパー1aを破ってトイレットペーパーロール1から切り離して、使用に供することができるものである。この図7の実施の形態の場合、トイレットペーパーロール1のロール幅寸法よりも、軸棒2の軸方向の長さを若干短めに形成するのが望ましい。
図8は、制動手段3としてストッパー7を用いた実施の形態のさらに他の一例を示すものであり、ストッパー7を軸棒2の外周部に設けるようにしてある。軸棒2内は中空に形成してあり、軸棒2の外周下面に軸方向に長いスリット状の出入り口41が開口して設けてある。ストッパー7は細長い板状に形成してあり、この出入り口41に配置してある。ストッパー7の上面にはレール42が設けてあり、レール42に一対のスライダー43,43がスライド自在に取り付けてある。また軸棒2内の天井面には一対のレール44が取り付けてあり、各レール44にはそれぞれスライダー45,45が取り付けある。また軸棒2内には軸46でX字状に枢着した一対のリンク47,47が配置してあり、各リンクの47の上端は軸棒2内の天井面の各レール44のスライダー45に回動自在に枢支連結してあると共に、各リンク47の下端はストッパー7のレール42の一対のスライダー43にそれぞれ枢支連結してある。従ってストッパー7はこのリンク47によって軸棒2の天井面から吊り下げられた状態で、出入り口41から出入り自在に軸棒2に取り付けられるものであり、軸棒2の天井面とリンク47の軸46の間に取り付けたばね48で引き上げる方向に付勢してある。また、軸棒2内には、電源ユニット49とソレノイド50が設けてあり、軸棒2の先端面に電源ユニット49及びソレノイド50に電気的に接続されたタイマー付のスイッチ51が設けてある。そして軸棒2内に軸52によって回動自在に取り付けられたカム53の一端部がリンク47の軸46に枢支連結してあり、このカム53の他端部にソレノイド50に設けられたアクチュエータ54の先端が軸55で枢支連結してある。
通常の状態においては、ストッパー7は軸棒2の出入り口41の中に配置されており、軸棒2の外周から大きく突出しない状態に保持されている。この状態で軸棒2にトイレットペーパーロール1の内周を被挿することで、軸棒2にトイレットペーパーロール1をセットすることができる。そして上記と同様に、トイレットペーパー1aの先端部を掴んだ片手をトイレットペーパーロール1の外周に沿って周回させて、トイレットペーパー1aを手の周りに巻き付け、次にトイレットペーパー1aを巻き付けたこの手で、例えばこの手の親指で軸棒2の先端のスイッチ51を押すと、ソレノイド50が作動してアクチュエータ54がソレノイド50から突出し、アクチュエータ54のこの動き(矢印参照)でカム53が軸52を中心に下方へ回動する(矢印参照)。カム53がこのように回動すると、ばね48に抗してリンク47の軸46を押し下げる力が作用することになり、リンク47の各上端に枢着したスライダー45がレール44に沿ってスライドすると共に、リンク47の各下端に枢着したスライダー43がレール42に沿ってスライドすることで、一対のリンク47は下方へ延ばされるように回動し、これによってストッパー7は出入り口41から軸棒2の外方へ突出する(矢印参照)。このように突出するストッパー7がトイレットペーパーロール1の内周に食い込んで圧接することによって、トイレットペーパーロール1が軸棒2の周りを回転することができないように制動力を作用させることができるものであり、トイレットペーパーロール1が回転できないように固定した状態で、トイレットペーパー1aを引っ張ることによって、トイレットペーパー1aを破ってトイレットペーパーロール1から切り離して、使用に供することができるものである。スイッチ51にはタイマー内蔵されているので、所定時間が経過すると、ソレノイド50の作動は停止し、ばね48の弾発力でストッパー7は元の位置まで引き上げられる。
制動手段3として、軸棒2に軸摩擦面4を設けた実施の形態や、鍔5に鍔摩擦面6を設けた実施の形態では、摩擦力でトイレットペーパーロール1の回転を制動するため、トイレットペーパー1aを切断するためにはトイレットペーパー1aを鉛直下方へ素早く強く引引っ張ることが必要であり、体を自由に動かせない人には難しい場合がある。一方、ストッパー7を用いる実施の形態では、トイレットペーパーロール1はストッパー7で押え付けられていて回転できない状態にあるので、トイレットペーパー1aをゆっくり引いても破ることができるものであり、しかもトイレットペーパー1aを引っ張る方向が鉛直下方に制限されないものであり、体を自由に動かせない人であっても支障なく使用することができるものである。尚、制動手段3として、ストッパー7を単独で用いる他、軸棒2に軸摩擦面4を設けて形成した制動手段3や、鍔5に鍔摩擦面6を設けて形成した制動手段3を併用してもよい。