JP2016125316A - 螺旋翼付鋼管杭、杭施工方法及び建築物 - Google Patents

螺旋翼付鋼管杭、杭施工方法及び建築物 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼管先端の外周面に設けられた螺旋翼から鋼管先端に作用する曲げモーメントに対して、下部補強板と上部補強板とが相俟って補強効果を発揮することのできる螺旋翼付鋼管杭を提供する。
【解決手段】略螺旋状に連続する螺旋翼5が鋼管先端2の外周面2aに設けられた螺旋翼付鋼管杭1に関する。本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、鋼管先端2の内部20で管軸方向Yの下側に設けられた下部補強板3と、鋼管先端2の内部20で管軸方向Yの上側に設けられた上部補強板4とを備える。下部補強板3は、螺旋翼5の下端先端部5aより下方の鋼管断面Aに配置されて、また、上部補強板4は、螺旋翼5の下端先端部5aから鋼管先端の外周面でひと巻きした位置Puより上方の鋼管断面Aに配置される。
【選択図】図4

Description

本発明は、地盤内に貫入させて建築物等が支持される鋼管杭に関するものであって、特に、略螺旋状に連続する螺旋翼が鋼管先端の外周面に設けられた螺旋翼付鋼管杭に関する。
従来から、鋼管杭の先端部分に螺旋翼が設けられた鋼管杭は、鋼管杭の外径よりも螺旋翼の外径が大きく形成されて、地盤内で大きな押込支持力や引抜抵抗力を発揮させるものとなり、例えば、特許文献1〜5に開示される螺旋翼付鋼管杭が提案されている。
特許文献1に開示された螺旋翼付鋼管杭は、掘削刃と羽根付鋼管からなる拡径せる先端部分、及び、継ぎ足し鋼管の補足部分に二分割して、拡径せる先端部分と補足部分とを適宜な手段で接続させるものであり、拡径せる先端部分に異径鋼管を使用するものである。
特許文献2に開示された螺旋翼付鋼管杭は、円筒状をなした杭本体の外周で巻き上がるように外周をほぼ一周する螺旋翼を固定して、螺旋翼の固定箇所にほぼ対応する杭本体の内周壁で、螺旋翼とほぼ同ピッチの螺旋状突条を巻き上がるように固定するものである。
特許文献3、4に開示された螺旋翼付鋼管杭は、1つの螺旋翼が先端付近の外周に螺旋状に突設された鋼管製の軸管と、軸管の内径よりも外径が少し小さい鋼管製で、先端に固着された底板が軸管の先端側に配置されるように軸管内に挿入される内管とを備えるものである。
特許文献5に開示された螺旋翼付鋼管杭は、短管状の先端金具に螺旋翼を突設させたものであり、短管状の先端金具のほぼ中程に中仕切板を設けて、又は、鋼管杭本体の先端等に底板を設けて、短管状の先端金具の上端部を鋼管杭の先端に溶接により連結させるものである。
特開2004−316411号公報 特開2006−9446号公報 特許2003−176536号公報 特許2003−176534号公報 特許平11−181760号公報
しかし、螺旋翼が設けられた鋼管杭の先端部分には、地盤内で螺旋翼が負担する大きな押込支持力に応じて、大きな曲げモーメントが作用するものとなる。このとき、特許文献1、2に開示された螺旋翼付鋼管杭は、拡径せる先端部分や、杭本体の内周壁の螺旋状突条によって、鋼管杭の先端部分に作用する大きな曲げモーメントに抵抗するものとなるが、異径鋼管を使用すること、又は、杭本体の内周壁に螺旋状突条を溶接することが必要となるため、特殊な材料や加工が必要となって、材料コストや加工コストが増大するという問題点があった。
これに対して、特許文献3〜5に開示された螺旋翼付鋼管杭は、中仕切板等に特殊な材料を用いることを必要とせず、軸管内に挿入される内管の先端や鋼管杭本体の先端等に略平板状の底板を設けて、又は、短管状の先端金具のほぼ中程に略平板状の中仕切板を設けて、中仕切板等を設けるために特殊な加工をすることも必要としないものとなる。しかし、特許文献3〜5に開示された螺旋翼付鋼管杭は、鋼管杭本体の先端等で中仕切板等が単独で設けられるものであり、鋼管杭の先端部分に作用する曲げモーメントに対して何ら考慮がなされていない。なお、特許文献3及び4に開示された螺旋翼付鋼管杭は、先端部を外管及び内管の2重構造として補強効果があるように見えるが、曲げモーメントに対する考慮よりも施工における改善を目的とするものであり、構造的な補強に対して何ら考慮がなされていない。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、鋼管先端の外周面に設けられた螺旋翼から鋼管先端に作用する曲げモーメントに対して、下部補強板と上部補強板とが相俟って補強効果を発揮することのできる螺旋翼付鋼管杭、杭施工方法及び建築物を提供することにある。
第1発明に係る螺旋翼付鋼管杭は、略螺旋状に連続する螺旋翼が鋼管先端の外周面に設けられた螺旋翼付鋼管杭であって、鋼管先端の内部で管軸方向の下側に設けられた下部補強板と、鋼管先端の内部で管軸方向の上側に設けられた上部補強板とを備えることを特徴とする。
第2発明に係る螺旋翼付鋼管杭は、第1発明において、前記下部補強板は、螺旋翼の下端先端部より下方の鋼管断面に配置されることを特徴とする。
第3発明に係る螺旋翼付鋼管杭は、第1発明又は第2発明において、前記上部補強板は、螺旋翼の下端先端部から鋼管先端の外周面でひと巻きした位置より上方の鋼管断面に配置されることを特徴とする。
第4発明に係る螺旋翼付鋼管杭は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記上部補強板及び前記下部補強板の何れか一方又は両方は、鋼管先端の内部で鋼管断面を閉塞させた閉塞板が用いられることを特徴とする。
第5発明に係る螺旋翼付鋼管杭は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記上部補強板及び前記下部補強板の何れか一方又は両方は、鋼管先端の内部で鋼管断面を部分的に開口させた開口板が用いられることを特徴とする。
第6発明に係る螺旋翼付鋼管杭は、第1発明〜第3発明の何れかにおいて、前記下部補強板は、複数に分割された分割板が用いられて、複数の前記分割板が鋼管先端の下端面から傾斜する方向を互いに異ならせて配置されることを特徴とする。
第7発明に係る杭施工方法は、第1発明〜第6発明の何れかの螺旋翼付鋼管杭を用いることを特徴とする。
第8発明に係る建築物は、第1発明〜第6発明の何れかの螺旋翼付鋼管杭を地盤内に貫入させることにより支持補強されることを特徴とする。
第1発明〜第6発明によれば、所定の螺旋ピッチを有する螺旋翼が設けられるものであるが、螺旋翼を挟み込んで下部補強板及び上部補強板を設けることで、螺旋翼のひと巻きされた範囲の全長に亘って、下部補強板と上部補強板とが一体となって鋼管先端を補強することが可能となる。また、第1発明〜第6発明によれば、異径鋼管等の特殊な材料を鋼管先端に使用することを必要としないで、又は、鋼管先端の内周面に螺旋状突条を溶接する等の特殊な加工を必要としないで、螺旋翼を挟み込んだ下部補強板及び上部補強板により、螺旋翼のひと巻きされた範囲の全長に亘って、鋼管先端が補強されるものとなるため、材料コストや加工コストを低減させることが可能となる。
第1発明〜第6発明によれば、鋼管本体の鋼管外径よりも螺旋翼の翼外径を大きくして、地盤内で鋼管本体に大きな押込支持力を発揮させるものとしながら、螺旋翼のひと巻きされた範囲の全長に亘って鋼管先端を補強して、鋼管先端に発生する最大応力を低減させることができるものとなり、また、螺旋翼から鋼管先端に作用する曲げモーメントに対して、螺旋翼が鋼管先端の外周面に設けられることによる鋼管先端の変形を防止するものとなって、下部補強板と上部補強板とが相俟って、鋼管先端の補強効果を発揮することが可能となる。
第4発明によれば、特に、下部補強板に閉塞板が用いられることで、鋼管本体を地盤内に貫入させるときに、地盤内の土砂が閉塞板で遮断されるものとなり、鋼管先端の内部への土砂の流入を防止することができるため、鋼管板厚を設計で決定するときに、鋼管先端の外周面での土砂による側壁の腐食代のみを考慮することで足り、鋼管先端の内周面での土砂による側壁の腐食代を考慮することを必要としないものとなって、鋼管板厚を過大なものとすることを必要としないものとして、鋼管板厚を薄くして材料コストを低減させることが可能となる。
第5発明によれば、特に、下部補強板に開口板が用いられることで、鋼管本体を地盤内に貫入させるときに、地盤内の土砂を鋼管先端の内部に流入させることができるものとなり、螺旋翼より下方に下部補強板が配置されるものとなるものの、開口部から鋼管先端の内部への土砂の流入が許容されるものとなり、鋼管本体が地盤内で回転を開始するまでに、下部補強板が土砂から大きな抵抗を受けることを回避して、螺旋翼による鋼管本体の推進力を大きなものとすることが可能となる。
第6発明によれば、特に、複数に分割された分割板が下部補強板に用いられて、鋼管先端の下端面からの螺旋翼の傾斜角度と分割板の傾斜角度とを略同一として、複数の分割板の各々が、鋼管先端の下端面から傾斜する方向を互いに異ならせて配置されるため、鋼管本体が地盤内で回転するときの螺旋翼の推進角度と分割板の推進角度とが略一致するものとなり、螺旋翼と分割板とが相俟って鋼管本体の推進力を大きなものとすることが可能となる。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭を示す斜視図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭を示す正面図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭の鋼管先端を示す斜視図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭の螺旋翼で下端先端部からひと巻きした位置より上方に配置された上部補強板を示す正面図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で下端先端部からひと巻き以上された螺旋翼を示す正面図である。 (a)は、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭を示す平面図であり、(b)は、その底面図である。 (a)は、略真円形状の開口部が形成された開口板を示す底面図であり、(b)は、略長円形状の開口部が形成された開口板を示す底面図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で複数に分割された分割板を用いた下部補強板を示す正面図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で管軸直交方向の一端が互いに連結された複数の分割板を示す斜視図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で管軸直交方向の中央が互いに連結された複数の分割板を示す斜視図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で鋼管先端に発生する圧縮応力及び引張応力を説明する拡大正面図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で鋼管先端に発生する圧縮応力を低減させた状態を説明する拡大正面図である。 (a)は、従来の螺旋翼付鋼管杭の鋼管先端を示す正面図であり、(b)は、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭の鋼管先端を示す正面図である。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で鋼管先端に作用する曲げモーメント分布の解析結果を示すグラフである。 本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で鋼管先端に発生する応力分布の解析結果を示すグラフである。 本発明を適用した建築物と杭施工方法の説明とを示す斜視図である。 (a)は、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭で閉塞板が用いられた下部補強板を示す正面図であり、(b)は、開口板が用いられた下部補強板を示す正面図である。
以下、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、図1に示すように、建築物等を支持するために鋼管本体6を地盤内8に貫入させて設けられるものであり、鋼管本体6の先端側に設けられた鋼管先端2から先行させて、鋼管本体6を回転させながら地盤内8に貫入させるものとなる。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、略螺旋状に連続する1枚の螺旋翼5が鋼管先端2の外周面2aに設けられて、鋼管先端2の内部20で管軸方向Yの下側に設けられた下部補強板3と、鋼管先端2の内部20で管軸方向Yの上側に設けられた上部補強板4とを備える。
鋼管本体6は、図2に示すように、略円筒状に形成された鋼管等が用いられるものであり、例えば、管軸直交方向Xの鋼管外径Dが100mm〜300mm程度、管軸方向Yの鋼管延長Lが5m〜20m程度、鋼管板厚tが3mm〜9mm程度となる。
鋼管本体6は、管軸方向Yの基端側が地盤内8の浅い部分に設けられて、また、管軸方向Yの先端側が地盤内8の深い部分に設けられる。鋼管本体6は、管軸方向Yの先端側で鋼管先端2の外周面2a及び内周面2bが、管軸直交方向Xで断面略円形状となることで、鋼管先端2の内部20が略中空状に形成されるものとなる。
螺旋翼5は、例えば、1枚の略円形状の鋼板等を加工することで、略螺旋状に連続するように形成されるものであり、管軸直交方向Xの翼外径Dwが鋼管外径Dの1.5倍〜3倍程度で、翼板厚twが3mm〜9mm程度となる。
螺旋翼5は、図3に示すように、鋼管本体6の管軸方向Yの先端側で、鋼管先端2の外周面2aから管軸直交方向Xの外側に向けて延びて突出して設けられる。螺旋翼5は、管軸方向Yの下端先端部5aから上端部5bまで、鋼管本体6の管周方向Wで略螺旋状に一回転させて、鋼管先端2の側壁21への取付位置Bで、鋼管先端2の外周面2aに溶接等により固定される。
螺旋翼5は、図4に示すように、管軸方向Yの螺旋ピッチNが鋼管外径Dの0.5倍〜3.5倍程度となる。螺旋翼5は、鋼管本体6を回転させながら地盤内8に貫入するときに、鋼管本体6を地盤内8で一回転させることで、螺旋ピッチNと略同一の長さだけ鋼管本体6を管軸方向Yに貫入させることができるものとなる。
螺旋翼5は、鋼管先端2の下端面2cから離間距離Lwで離間させるものであり、鋼管先端2の下端面2cから螺旋翼5の下端先端部5aまでの離間距離Lw2が、鋼管外径Dの0.1倍〜0.4倍程度、鋼管先端2の下端面2cから螺旋翼5の上端部5bまでの離間距離Lw1が、鋼管外径Dの0.6倍〜3.9倍程度となる。
螺旋翼5は、鋼管本体6を回転させながら地盤内8に貫入するときに土砂から受ける抵抗を、略螺旋状に連続する螺旋翼5で低減させるとともに、鋼管本体6の鋼管外径Dよりも螺旋翼5の翼外径Dwが大きくなることで、地盤内8で鋼管本体6に大きな押込支持力や引抜抵抗力を発揮させるものとなる。
螺旋翼5は、鋼管本体6の管周方向Wで略螺旋状に一回転させてひと巻きで設けられる場合に、管軸方向Yの上端部5bが、下端先端部5aから鋼管先端2の外周面2aでひと巻きした位置Puとなる。螺旋翼5は、これに限らず、図5に示すように、鋼管本体6の管周方向Wで略螺旋状に一回転以上のひと巻き以上で設けられてもよい。このとき、螺旋翼5は、下端先端部5aから鋼管先端2の外周面2aでひと巻きした位置Puより上方に、ひと巻き以上で設けられた管軸方向Yの上端部5bが配置されるものとなる。ここでは、下端先端部5aから鋼管先端2の外周面2aでひと巻きした位置Puより上方において、主として螺旋翼5が地盤からの抵抗を受け持つため、限定された反力のみが鋼管先端2の側壁21に伝達されるものとなり、下端先端部5aから鋼管先端2の外周面2aでひと巻きした位置Puより下方においてのみ、鋼管先端2の側壁21に伝達される反力の影響が大きいものとなる。
下部補強板3及び上部補強板4は、螺旋翼5の下端先端部5aより下方の鋼管断面Aに下部補強板3が配置されて、また、螺旋翼5の下端先端部5aから鋼管先端2の外周面2aでひと巻きした位置Puより上方の鋼管断面Aに上部補強板4が配置されることで、管軸方向Yに所定の螺旋ピッチNを有する螺旋翼5のひと巻きされた範囲が、下部補強板3及び上部補強板4に管軸方向Yで挟み込まれるものとなる。
下部補強板3及び上部補強板4は、所定の板厚tpを有する略円形状の鋼板等が用いられて、下部補強板3及び上部補強板4の各々の外縁が、鋼管先端2の内周面2bに沿った取付位置C1及び取付位置C2の各々で、溶接等により固定される。下部補強板3及び上部補強板4の何れか一方又は両方は、図6に示すように、鋼管断面Aを開口させないものとして、鋼管先端2の内部20で鋼管断面Aを閉塞させる閉塞板11が用いられる。
下部補強板3及び上部補強板4の何れか一方又は両方は、これに限らず、図7(a)に示すように、略真円形状の開口部12aや、図7(b)に示すように、略長円形状の開口部12aが、略円形状の鋼板等を貫通させることにより形成されて、鋼管先端2の内部20で鋼管断面Aを部分的に開口させる開口板12が用いられてもよい。
下部補強板3は、図8〜図10に示すように、1枚の略円形状の鋼板等を切断等することで、2枚以上の複数に分割された分割板13が用いられてもよい。下部補強板3は、複数の分割板13の各々が、鋼管先端2の下端面2cから傾斜する方向を互いに異ならせて配置されるものとなる。複数の分割板13の各々は、例えば、鋼管先端2の下端面2cとの傾斜角度θpが、鋼管先端2の下端面2cとの螺旋翼5の傾斜角度θwと略同一となるように設定される。
複数の分割板13の各々は、図8(a)、図9に示すように、管軸直交方向Xの一端に形成される連結部13aで互いに連結させたものとなるように、1枚の鋼板等を完全に切断することなく互いに分離させないものとなる。複数の分割板13の各々は、管軸直交方向Xの一端で、互いの外縁13bが管周方向Wに連続することで、鋼管先端2の内周面2bに沿って複数の分割板13を連続して溶接することができるものとなる。
複数の分割板13の各々は、図8(b)、図10に示すように、管軸直交方向Xの中央に形成される連結部13aで互いに連結させたものとなるように、1枚の鋼板等を完全に切断することなく互いに分離させないものとされてもよい。複数の分割板13の各々は、これに限らず、管軸直交方向Xの一端又は中央に連結部13aを形成させることなく、1枚の鋼板等を完全に切断して互いに分離させるものとされてもよい。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、図11、図12に示すように、地盤内8で大きな押込支持力を発揮するときに、鋼管先端2の外周面2aから突出した螺旋翼5の下面5cが、地盤内8で大きな押込反力Rを受けるものとなり、また、鋼管先端2の内部20で下側に設けられた下部補強板3の下面3aも、地盤内8で大きな押込反力Rを受けるものとなる。
螺旋翼5は、図11に示すように、地盤内8で大きな押込反力Rを下面5cで受けるため、管軸直交方向Xの外側で、管軸方向Yの上方に向けて傾斜しようとするものとなり、仮想変形曲線S1に示すように、螺旋翼5の取付位置Bより下方で、鋼管先端2の側壁21が管軸直交方向Xの外側に向けて湾曲変形しようとするものとなるとともに、螺旋翼5の取付位置Bより上方で、鋼管先端2の側壁21が管軸直交方向Xの内側に向けて湾曲変形しようとするものとなる。
このとき、鋼管先端2の側壁21は、上部補強板4の取付位置C2が支点となり、螺旋翼5の取付位置Bより上方で、鋼管先端2の側壁21の管軸直交方向Xの内側に向けた湾曲変形を抑制する効果を発揮する。
また、鋼管先端2の側壁21は、螺旋翼5の取付位置Bより下方で、管軸直交方向Xの外側に向けて湾曲変形しようとするため、管軸方向Yに大きな曲げモーメントが作用して、鋼管外側で引張応力σtが発生するとともに、鋼管内側で圧縮応力σpが発生する。また、鋼管先端2の側壁21は、螺旋翼5の取付位置Bより上方で、管軸直交方向Xの内側に向けて湾曲変形しようとするため、管軸方向Yに先とは逆向きの大きな曲げモーメントが作用して、鋼管外側で圧縮応力σpが発生するとともに、鋼管内側で引張応力σtが発生する。
さらに、鋼管先端2の側壁21は、螺旋翼5の取付位置Bより上方で、螺旋翼5に作用する大きな押込反力Rが軸圧縮力として伝達されるため、鋼管外側で別途の圧縮応力σp´が発生するものとなり、螺旋翼5により湾曲変形しようとする曲げモーメントからの圧縮応力σpと合算されて、発生応力が過大となる可能性がある。
このとき、鋼管先端2の側壁21は、図12に示すように、下部補強板3が地盤内8で大きな押込反力Rを下面3aで受けるため、仮想変形曲線S2に示すように、下部補強板3と上部補強板4との間で、上部補強板4の取付位置C2を支点として、管軸直交方向Xの外側に向けて湾曲変形しようとして、管軸方向Yに曲げモーメントが作用することで、鋼管外側に引張応力σtが発生するとともに、鋼管内側に圧縮応力σpが発生する。
鋼管先端2の側壁21は、下部補強板3に作用する押込反力Rからの曲げモーメントにより、螺旋翼5の取付位置Bより上方で、螺旋翼5に作用する押込反力Rからの曲げモーメントによる圧縮応力σpが緩和されることで、鋼管先端2の側壁21に発生する大きな圧縮応力σpを低減させることが可能となる。
つまり、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、螺旋翼5に作用する押込反力Rによる鋼管先端2の湾曲変形を、下部補強板3に作用する押込反力Rによる鋼管先端2の湾曲変形で打ち消すものとなる位置V1で、螺旋翼5より下方に下部補強板3が配置されるものとなり、鋼管先端2に作用する左回りの曲げモーメントM1と右回りの曲げモーメントM2とが互いに打ち消し合うものとなる。
また、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、螺旋翼5の取付位置Bより上方の鋼管先端2の側壁21が、管軸直交方向Xの内側に向けて湾曲変形しようとするものとなるが、仮想変形曲線S1に示すように、例えば、螺旋翼5の取付位置Bより上方での鋼管先端2の側壁21の湾曲変形による変位が最大となる位置V2で、螺旋翼5より上方に上部補強板4が配置されるものとなる。
従来の螺旋翼付鋼管杭9は、図13(a)に示すように、鋼管先端2の内部20で螺旋翼5の上方に設けられた補強板90のみを備える。これに対して、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、図13(b)に示すように、管軸方向Yに所定の螺旋ピッチNを有する螺旋翼5が、下部補強板3及び上部補強板4に管軸方向Yの上方及び下方から挟み込まれる。
図14は、従来の螺旋翼付鋼管杭9と本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1とで、鋼管先端2に作用するモーメント分布を比較するものであり、内部摩擦角φ=25°、地盤の変形係数E=50MPaとした地盤条件で、鋼管外径D=114.3mm、翼外径Dw=250.0mm、鋼管延長L=5m、鋼管先端2の下端面2cから下部補強板3までの離間距離Lp1=19.0mm、鋼管先端2の下端面2cから上部補強板4又は補強板90までの離間距離Lp2=97.0mm、鋼管先端2の下端面2cから螺旋翼5までの離間距離Lw=60.0mmとして、鋼管先端2の下端面2cから管軸方向Yに200mmまでの範囲で鋼管先端2に作用する曲げモーメント分布の解析結果を示すものである。
従来の螺旋翼付鋼管杭9は、螺旋翼5の上方に設けられた補強板90のみを備えるため、図14に示すように、螺旋翼5までの範囲(鋼管先端2の下端面2cから0mm〜60mm)で、正の曲げモーメントが作用して、螺旋翼5を境界とした補強板90までの範囲(鋼管先端2の下端面2cから60mm〜97mm)で、過大な負の曲げモーメントが作用する。
これに対して、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、螺旋翼5を挟み込んで下部補強板3及び上部補強板4が設けられるため、下部補強板3までの範囲(鋼管先端2の下端面2cから0mm〜19mm)で、非常に小さい負の曲げモーメントが作用する。さらに、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、従来の螺旋翼付鋼管杭9の過大な負の曲げモーメントの絶対値との比較において、螺旋翼5までの範囲(鋼管先端2の下端面2cから19mm〜60mm)で、比較的小さな正の曲げモーメントが作用して、上部補強板4までの範囲(鋼管先端2の下端面2cから60mm〜97mm)で、比較的小さな負の曲げモーメントが作用する。
図15は、図14に示す曲げモーメント分布の解析結果に基づき、鋼管板厚t=4.5mmとして、鋼管先端2に発生する応力分布の解析結果を示すものである。従来の螺旋翼付鋼管杭9は、図15に示すように、螺旋翼5を境界とした補強板90までの範囲(鋼管先端2の下端面2cから60mm〜97mm)で、鋼管先端2に大きな応力が発生するものとなり、特に、螺旋翼5の取付位置B(鋼管先端2の下端面2cから60mm)で、最大応力σmax1=343.3MPaとなって、鋼管先端2に過大な応力が発生することがわかる。
これに対して、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、螺旋翼5を境界として、下部補強板3までの範囲(鋼管先端2の下端面2cから19mm〜60mm)、及び、上部補強板4までの範囲(鋼管先端2の下端面2cから60mm〜97mm)で、鋼管先端2に一応の大きさの応力が発生するものとなるものの、例えば、螺旋翼5の取付位置B(鋼管先端2の下端面2cから60mm)で、最大応力σmax2=237.2MPa程度となるものであり、鋼管先端2に発生する応力を分散させるものとなることがわかる。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、鋼管先端2に発生する最大応力が、最大応力σmax2=237.2MPaとなるものであり、従来の螺旋翼付鋼管杭9の最大応力σmax1=343.3MPaと比較すると、最大応力を約69%程度まで低減させることができるものとなる。
従来の螺旋翼付鋼管杭9は、図13(a)に示すように、螺旋翼5の上方に設けられた補強板90のみを備えるため、鋼管先端2の一部分のみを補強するにとどまるものであり、所定の螺旋ピッチNを有する螺旋翼5が設けられる範囲の全長に亘って、鋼管先端2を補強板90で補強することができないものとなる。
これに対して、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、図13(b)に示すように、所定の螺旋ピッチNを有する螺旋翼5が設けられるものであるが、螺旋翼5を挟み込んで下部補強板3及び上部補強板4を設けることで、螺旋翼5のひと巻きされた範囲の全長に亘って、下部補強板3と上部補強板4とが一体となって鋼管先端2を補強することが可能となる。
また、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、異径鋼管等の特殊な材料を鋼管先端2に使用することを必要としないで、又は、鋼管先端2の内周面2bに螺旋状突条を溶接する等の特殊な加工を必要としないで、螺旋翼5を挟み込んだ下部補強板3及び上部補強板4により、螺旋翼5のひと巻きされた範囲の全長に亘って、鋼管先端2が補強されるものとなるため、材料コストや加工コストを低減させることが可能となる。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、図4に示すように、鋼管本体6の鋼管外径Dよりも螺旋翼5の翼外径Dwを大きくして、地盤内8で鋼管本体6に大きな押込支持力を発揮させるものとしながら、螺旋翼5のひと巻きされた範囲の全長に亘って鋼管先端2を補強して、鋼管先端2に発生する最大応力を低減させることができるものとなる。本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、螺旋翼5から鋼管先端2に作用する曲げモーメントに対して、螺旋翼5が鋼管先端2の外周面2aに設けられることによる鋼管先端2の変形を防止するものとなり、下部補強板3と上部補強板4とが相俟って、鋼管先端2の補強効果を発揮することが可能となる。
本発明を適用した杭施工方法は、図16に示すように、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1を用いて、鋼管本体6を回転させながら地盤内8に貫入させるものである。本発明を適用した杭施工方法は、鋼管先端2の外周面2aに設けられる螺旋翼5が、上端部5bから下端先端部5aまで右回りの略螺旋状となる場合に、鋼管本体6を右回転させて、また、上端部5bから下端先端部5aまで左回りの略螺旋状となる場合に、鋼管本体6を左回転させて、地盤内8に貫入させるものとなる。また、本発明を適用した建築物7は、螺旋翼付鋼管杭1の上方の地上等に建築されるものであり、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1を地盤内8に貫入させることで、鋼管本体6が発揮する押込支持力や引抜抵抗力等により、沈下又は倒壊等することのないように支持補強されるものとなる。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、特に、図17(a)に示すように、下部補強板3に閉塞板11が用いられることで、鋼管本体6を地盤内8に貫入させるときに、地盤内8の土砂が閉塞板11で遮断されるものとなり、鋼管先端2の内部20への土砂の流入を防止することができる。これにより、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、鋼管板厚tを設計で決定するときに、鋼管先端2の外周面2aでの土砂による側壁21の腐食代δのみを考慮することで足り、鋼管先端2の内周面2bでの土砂による側壁21の腐食代δを考慮することを必要としないものとなるため、鋼管板厚tを過大なものとすることを必要としないものとして、鋼管板厚tを薄くして材料コストを低減させることが可能となる。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、特に、図17(b)に示すように、下部補強板3に開口板12が用いられることで、鋼管本体6を地盤内8に貫入させるときに、地盤内8の土砂を鋼管先端2の内部20に流入させることができる。これにより、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、螺旋翼5より下方に下部補強板3が配置されるものとなるものの、開口部12aから鋼管先端2の内部20への土砂の流入が許容されるものとなり、鋼管本体6が地盤内8で回転を開始するまでに、下部補強板3が土砂から大きな抵抗を受けることを回避して、螺旋翼5による鋼管本体6の推進力を大きなものとすることが可能となる。
なお、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、図7(b)に示すように、開口部12aを略長円形状に形成した開口板12が下部補強板3に用いられることで、鋼管先端2の内周面2bに開口板12を溶接等するときに、開口部12aの長手方向からL型の治具を挿入するとともに略90°回転させて、開口部12aの短手方向にL型の治具を係止させることができるものとなり、L型の治具による開口板12の位置決めを容易にすることが可能となる。
本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、図8に示すように、複数に分割された分割板13が下部補強板3に用いられて、鋼管先端2の下端面2cからの螺旋翼5の傾斜角度θwと分割板13の傾斜角度θpとを略同一として、複数の分割板13の各々が、鋼管先端2の下端面2cから傾斜する方向を互いに異ならせて配置されるため、鋼管本体6が地盤内8で回転するときの螺旋翼5の推進角度と分割板13の推進角度とが略一致するものとなり、螺旋翼5と分割板13とが相俟って鋼管本体6の推進力を大きなものとすることが可能となる。
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
例えば、本発明を適用した螺旋翼付鋼管杭1は、鋼管先端2の外周面2aに複数段に亘って略螺旋状の螺旋翼5が設けられて、最下段の螺旋翼5の下端先端部5aより下方に下部補強板3が配置されるとともに、最上段の螺旋翼5の上端部5bより上方に上部補強板4が配置されてもよい。
1 :螺旋翼付鋼管杭
11 :閉塞板
12 :開口板
12a :開口部
13 :分割板
13a :連結部
13b :外縁
2 :鋼管先端
2a :外周面
2b :内周面
2c :下端面
20 :内部
21 :側壁
3 :下部補強板
3a :下面(下部補強板)
4 :上部補強板
5 :螺旋翼
5a :下端先端部
5b :上端部
5c :下面(螺旋翼)
6 :鋼管本体
7 :建築物
8 :地盤内
W :管周方向
X :管軸直交方向
Y :管軸方向

Claims (8)

  1. 略螺旋状に連続する螺旋翼が鋼管先端の外周面に設けられた螺旋翼付鋼管杭であって、
    鋼管先端の内部で管軸方向の下側に設けられた下部補強板と、鋼管先端の内部で管軸方向の上側に設けられた上部補強板とを備えること
    を特徴とする螺旋翼付鋼管杭。
  2. 前記下部補強板は、螺旋翼の下端先端部より下方の鋼管断面に配置されること
    を特徴とする請求項1記載の螺旋翼付鋼管杭。
  3. 前記上部補強板は、螺旋翼の下端先端部から鋼管先端の外周面でひと巻きした位置より上方の鋼管断面に配置されること
    を特徴とする請求項1又は2記載の螺旋翼付鋼管杭。
  4. 前記上部補強板及び前記下部補強板の何れか一方又は両方は、鋼管先端の内部で鋼管断面を閉塞させた閉塞板が用いられること
    を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の螺旋翼付鋼管杭。
  5. 前記上部補強板及び前記下部補強板の何れか一方又は両方は、鋼管先端の内部で鋼管断面を部分的に開口させた開口板が用いられること
    を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の螺旋翼付鋼管杭。
  6. 前記下部補強板は、複数に分割された分割板が用いられて、複数の前記分割板が鋼管先端の下端面から傾斜する方向を互いに異ならせて配置されること
    を特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の螺旋翼付鋼管杭。
  7. 請求項1〜6の何れか1項記載の螺旋翼付鋼管杭を用いること
    を特徴とする杭施工方法。
  8. 請求項1〜6の何れか1項記載の螺旋翼付鋼管杭を地盤内に貫入させることにより支持補強されること
    を特徴とする建築物。
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