JP6891023B2 - ロール成形軽量形鋼 - Google Patents
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Description
溝形鋼のフランジ、あるいはリップ溝形鋼のリップ部を折り返すことで、所望の性能や用途に対応可能な断面形状とした軽量形鋼がある(特許文献1、特許文献2)。
フランジを折り返す態様として、フランジの外側に2枚重ねに折り返す形状(引用文献1の第1図、第3図、第4図、第5図)、内側に2枚重ねに折り返す形状(同第3図)、3枚重ねに折り返す形状(同第6図)等が示されているが、さらに、リップ部を持つ態様すなわちリップ溝形鋼の態様に折り返す場合も示されている(同第7図)。これは、フランジを折り返して2枚重ねにするだけでなく、その2枚重ねフランジの先端側部分を内側に直角に折り返してリップ部を形成するというものである。
特許文献1の趣旨は、軽量形鋼の用途上の制約からフランジの幅とウェブの高さは一定であり、したがって、断面二次モーメントの大なるものが要求された場合は、一般に、肉厚の大なるものを用いてそれに応じているが、肉厚を増そうとすると、断面二次モーメント増加の上で最も有効なフランジのみならずウェブの肉厚も同じように増すことになり、無駄を生じてしまうので、その無駄を避けるために、ウェブの両側のフランジを折り返して2枚重ねや3枚重ね等の多重フランジにしたものである。
これにより、ウェブに関わりなくフランジの断面積を増減する事ができ、強度及び剛性上有効に利用される断面積を有するもとすることができるとしている。
これにより、ボルト止め、リベットのカシメ、溶接、孔空けなどの、部材に対する物理的なキズを負わせる加工を必要とせずに構造体を構成することが可能となるとされる。
また、複数の部材をパイプ状に接合した場合には、密接した接合部により密閉空間を形成することができ、流体を扱うパイプやダクトに使用できるとされる。
リップ溝形断面形状におけるウェブとフランジとリップ部とを有し、かつ、前記リップ部の端部からフランジ内面側に10°〜60°の範囲内で折り曲げられた鋭角傾斜部を有し、その端部で、前記フランジの内面に接触してフランジと2枚重ねとなるようにさらに折り曲げられてウェブ側に向けて延出するウェブ向き延出部を有することを特徴とする。
ここで、リップ溝形断面形状とは、JISに規定される、ウェブとフランジとリップとを有するリップ溝形鋼に相当する断面形状をいう。
そして、本発明の軽量形鋼によれば、鋭角傾斜部及びウェブ向き延出部が存在することで、従来の一般的な断面形状の同板厚のリップ溝形鋼と比較して、その弱軸方向(フランジ幅方向)の断面二次モーメントはあまり変えずに、必要とする強軸方向(ウェブ幅方向)の断面二次モーメントを大きく向上させることができる。
しかし、本発明によれば、鋭角傾斜部及びウェブ向き延出部が存在することで、板厚を変えずに特に強軸方向の断面二次モーメント(曲げ剛性)を向上させることができるので、使用材料を過大にせずに必要部材性能を満たすことが可能となり、断面効率が向上する。
胴縁やパネル枠材(例えばプレハブパネルの枠材)は、その弱軸方向の曲げ抵抗は当該胴縁やパネル枠材に面材又は補剛材がとりつくことによって補強されるので、弱軸方向の断面二次モーメントはあまり変えずに強軸方向の断面二次モーメントを向上させることができて、断面効率の良好な本発明の軽量形鋼は、胴縁やパネル枠材等として用いる軽量形鋼として優れている。
また、リップ部と鋭角傾斜部とウェブ向き延出部とを含めた内向き突出部の形状は安定しており、リップ部のウェブと平行な面がウェブ側に傾くような変形が生じる恐れは少ない。
また、後述する比較例1として図7(イ)に、JIS G3350に規定されているリップ溝形鋼C−100×50×20×2.3(板厚2.3mm)の断面形状を示し、比較例2として図7(ロ)に、同じJIS規定のリップ溝形鋼C−100×50×20×3.2(板厚3.2mm)の断面形状を示す。
この実施例の軽量形鋼1のウェブH×フランジA×リップ部C×板厚tの寸法は、JIS G3350に規定されているリップ溝形鋼C−100×50×20×2.3(図7(イ))のウェブ、フランジ、リップ、板厚と同じであり、鋭角傾斜部15の角度(折り曲げ角度)は35°、2枚重ねとなっているウェブ向き延出部6の長さは10mmである。
比較例1の軽量形鋼(図7(イ))は、表1(ロ)にも示す通り、断面積S1=517mm2、強軸方向の断面二次モーメントIx=806,920mm4、弱軸方向の断面二次モーメントIy=190,014mm4、ゆがみ座屈応力度σcr=1,260N/mm2である。
比較例2の軽量形鋼(図7(ロ))は、表1(ハ)に示す通り、断面積S1=701mm2、強軸方向の断面二次モーメントIx=1,065,314mm4、弱軸方向の断面二次モーメントIy=245,411mm4、ゆがみ座屈応力度σcr=1,892N/mm2である。
従来であれば、板厚3.2mmのリップ溝形鋼(C-100×50×20×3.2)(図7(ロ))を使用することになるが、その場合、強軸方向の断面二次モーメント(曲げ剛性)は満たすが、弱軸方向の断面二次モーメントが過大になり、結果として断面積が過大となり、必要部材性能に対して使用材料が過大になり断面効率が悪くなる。
しかし、上記実施例の軽量形鋼1を用いると、強軸方向の断面二次モーメントIxが1,063,315mm4であり、1,000,000mm4を超えるので、必要部材性能を満たす。そして、断面積Aは667mm2であり、比較例2の断面積A=701mm2に対して小さく済む(第2実施例の断面積は比較例2の4.8%減(667/701)。このように、鋭角傾斜部5及びウェブ向き延出部6が存在することで、板厚を変えずに特に強軸方向の断面二次モーメントを向上させることができるので、使用材料を過大にせずに必要部材性能を満たすことが可能となり、断面効率が向上する。
なお、実施例の強軸方向の断面二次モーメントIxは比較例2と同等(1,063,345/1,065,314で0.2%減)であるが、弱軸方向の断面二次モーメントはIyは第1実施例は比較例2の8%減(225,987/245.411)であり、比較例2における板厚増大分は弱軸方向の断面二次モーメントの増大に無駄に使われている。
この断面形状の場合、実施例の軽量形鋼1と比較して、強軸方向の断面二次モーメントIxが実施例の軽量形鋼1より6.8%(1.41/1.32=1.068)ほど高く、かつ断面積も3.0%減(647/667=0.97)であり、その観点だけでは好ましいのであるが、この断面形状の場合、ゆがみ座屈応力度が著しく低い(322/1204=0.27)ので、胴縁等として使用することが主に想定される軽量形鋼として、不適切である。
本発明では、弱軸方向の断面二次モーメントはあまり変えずに必要とする強軸方向の断面二次モーメントを向上させることを目的としているが、例えば壁板を胴縁に固定する場合にはドリルねじを打ち込んで固定する場合を想定しているので、ドリルねじ打ち込みの際の支圧でフランジ部が撓んで面材や補剛材との間に隙間が生じてしまうことがないことも重要である。したがって、フランジ部の撓みの程度に関与するゆがみ座屈応力度がJIS規定の比較例1とほぼ同等(1204/1260=0.96)なので、強軸方向の断面二次モーメントの向上が実現されたことの有効性を失わない。
図4は軽量形鋼1を横胴縁として用いる場合の一般的な具体例を示し、図5は軽量形鋼1を縦胴縁1として用いる場合の一般的な具体例を示す。
そして、この軽量形鋼1によれば、鋭角傾斜部5及びウェブ向き延出部6が存在することで、従来の一般的な断面形状の同板厚のリップ溝形鋼(図7(イ)と比較して、その弱軸方向(フランジ幅方向)の断面二次モーメントはあまり変えずに、必要とする強軸方向(ウェブ高さ方向)の断面二次モーメントを大きく向上させることが可能となっている。
しかし、上記実施例の軽量形鋼1によれば、鋭角傾斜部5及びウェブ向き延出部6が存在することで、板厚を変えずに特に強軸方向の断面二次モーメント(曲げ剛性)を向上させることができるので、使用材料を過大にせずに必要部材性能を満たすことが可能となり、断面効率が向上する。
建築構造物における胴縁やパネル枠材等は、弱軸方向の曲げ抵抗は面材又は補剛材がとりつくことによって補強されるので、弱軸方向の断面二次モーメントはあまり変えずに強軸方向の断面二次モーメントを向上させることができ、断面効率の良好な上記軽量形鋼1は、胴縁やパネル枠材等として用いる軽量形鋼として優れている。
また、リップ部と鋭角傾斜部とウェブ向き延出部とを含めた内向き突出部の形状は安定しており、リップ部のウェブと平行な面がウェブ側に傾くような変形が生じる恐れは少ない。
この実施例では、フランジと二枚重ねになるウェブ向き延出部6の長さが10mmであるが、鋭角傾斜部5の角度αに応じて異なり、フランジ寸法Aに対して、1/10から9/10の比の長さとすることができ、Aに対して、1/10から2/5の比の長さとすることが好適である。
この軽量形鋼11は、リップ溝形断面形状におけるウェブ2とフランジ3とリップ部4とを有し、かつ、前記リップ部4の端部からフランジ内面側に折り曲げられた鋭角傾斜部5’を有し、その端部でさらに折り曲げられてウェブ側に向けて延出するウェブ向き延出部6’を有する断面形状であるという点では図1の軽量形鋼1と同様であるが、この軽量形鋼11では、鋭角傾斜部5’の角度αが小さく20°であり、また、ウェブ向き延出部6’はフランジ内面と接触せずに、折り曲げ位置からフランジ内面に接近する向きの傾きで折り曲げられている。なお、この場合の鋭角傾斜部5’の角度αも、α=10°〜60°の範囲とすることができ、α=10°〜45°が好適である。
この実施例の軽量形鋼11のウェブH×フランジA×リップ部C×板厚tの寸法も、JISのG3350に規定されているリップ溝形鋼C−100×50×20×2.3mmのウェブ、フランジ、リップ、板厚と同じである。
この軽量形鋼11の断面性能の数値的な詳細は省略するが、図1に示した軽量形鋼1と概ね同様な断面性能を備えている。
C−60×30×10、C−70×40×25、C−75×35×15、C−75×45×15、C−90×45×20、C−100×50×20、C−120×40×20、C−120×60×20、C−120×60×25、C−125×50×20、C−120×60×25。
2 ウェブ
3 フランジ
4 リップ部
5、5’ 鋭角傾斜部
6、6’ ウェブ向き延出部
8 パネル(プレハブパネル等)
8a、8b パネル枠材(=軽量形鋼1)
8c パネル板材
9 胴縁(=軽量形鋼1)
21 ドリルねじ
22 柱
23 壁板
Claims (1)
- 弱軸方向の曲げ抵抗が面材又は補剛材がとりつくことによって補強され、強軸方向に弱軸方向よりも大きな曲げ力を受ける態様で用いられるロール成形軽量形鋼であって、
リップ溝形断面形状におけるウェブとフランジとリップ部とを有し、かつ、前記リップ部の端部からフランジ内面側に10°〜60°の範囲内で折り曲げられた鋭角傾斜部を有し、その端部で、前記フランジの内面に接触してフランジと2枚重ねとなるようにさらに折り曲げられてウェブ側に向けて延出するウェブ向き延出部を有することを特徴とするロール成形軽量形鋼。
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