本発明を更に詳細に論述するに先立ち、下記の用語を定義する。
定義
本明細書で使用されるとき、下記の用語は、特に逆の記載がない限り下記の意味を有する。
本明細書で使用される「石灰」という用語は、消石灰又は水和石灰としても知られている水酸化カルシウムをいう。
本明細書で使用される「全塩基価(Total Base Number)」又は「TBN」という用語は、試料1グラム中のKOHのミリグラムに等価な塩基の量をいう。したがって、より高いTBN値はよりアルカリ性の生成物、したがって、より大きな予備アルカリ度を表す。試料のTBNは、2011年5月15日に発行されたASTM試験番号D2896−11又は他の任意の均等な手法により決定することができる。
「フェネート」という用語は、フェノールの金属塩を意味する。
「アルキルフェネート」という用語は、アルキルフェノールの金属塩を意味する。
「アルキルフェノール」という用語は、一以上のアルキル置換基を有するフェノールであって、その一以上のアルキル置換基がそのフェノールに油溶性を付与するのに十分な数の炭素原子を有するものを意味する。
「石灰」という用語は、消石灰又は水和石灰としても知られている水酸化カルシウムをいう。
「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの混合物を意味する。
「アルカリ土類金属」という用語は、カルシウム、バリウム、マグネシウム及びストロンチウムをいう。
「アルカリ金属」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムをいう。
「金属塩基」という用語は、金属がアルカリ土類金属又はアルカリ金属である、金属水酸化物、金属酸化物、金属アルコキシド等及びそれらの混合物をいう。
「過塩基性」という用語は、金属塩又は金属錯体の一種をいう。これらの材料は、「塩基性」、「超塩基性」、「極超塩基性」、「錯体」、「金属錯体」、「高金属含有塩」等とも呼ばれてきた。過塩基性生成物は、金属及び金属と反応する特定の酸性有機化合物、例えばカルボン酸、の化学量論に従って存在するであろう金属含量より過剰な金属含量によって特徴づけられる金属塩又は金属錯体である。適切な過塩基化性金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム及びストロンチウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。適切な過塩基化性金属は、対応する金属水酸化物から得ることができ、例えば、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムは、それぞれアルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウムの供給源をもたらす。更なる過塩基化は、酸性の過塩基化性化合物、例えば二酸化炭素及びホウ酸の添加により達成することができる。
「硫酸化灰分含量」という用語は、潤滑油組成物中での金属含有添加剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、モリブデン、亜鉛等)の量を指し、典型的には、参照により本明細書の内容の一部とするASTM D874に従って測定される。
本発明は、(a)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9〜C18オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩、(b)アルデヒドの供給源、並びに(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の反応生成物である、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を対象としている。
別の実施形態において、本発明は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約70%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を更に対象としている。
一般に、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩は、(a)未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩を含有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩であって、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9〜C18オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を得ること、並びに、(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物とを、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約70%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で、反応させることにより得られる。
ステップ(a)において、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩を含有する、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩が得られる。一般に、本組成物は、(i)プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9〜C18オリゴマーを含む一以上のオレフィンによってヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化して、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を得ること、(ii)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を任意の順序で硫化及び中和して、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を得ること、並びに(iii)任意選択的に、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を過塩基化することにより得られる。一実施形態において、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、テトラプロペニルフェノールである。特定の実施形態において、テトラプロペニルフェノールは、p−ドデシルフェノール、m−ドデシルフェノール及びo−ドデシルフェノールの混合物のような、テトラプロペニルフェノールの異性体の混合物を含む。
本発明において用いられるアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、当該技術分野において周知の方法により調製される。アルキル化することができる有用なヒドロキシ芳香族化合物には、1個から4個までの、好ましくは1個から3個までのヒドロキシル基を有する、単核モノヒドロキシ芳香族炭化水素及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素が挙げられる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール等及びそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、ヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
ヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化するために用いられるアルキル化剤には、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9〜C18オリゴマーを含む一以上のオレフィンが挙げられる。一般に、一以上のオレフィンは、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9〜C18オリゴマーを混合物中最大量で含有する。このようなオレフィンの例としては、プロピレンテトラマー、ブチレントリマー等が挙げられる。当業者ならば容易に理解するように、他のオレフィンが存在していてもよい。例えば、C9〜C18オリゴマーに加えて使用することができる他のオレフィンとしては、ブチレンオリゴマー又はイソブチレンオリゴマー等のプロピレンオリゴマー以外の鎖状オレフィン、環状オレフィン、分岐状オレフィン、アリールアルキレン等及びそれらの混合物が挙げられる。適切な鎖状オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等及びそれらの混合物が挙げられる。特に適切な鎖状オレフィンは、C16〜C30ノルマルα−オレフィン等の高分子量ノルマルα−オレフィンであり、エチレンオリゴマー化又はワックスクラッキング等の方法から得ることができる。適切な環状オレフィンには、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロオクテン等及びそれらの混合物が挙げられる。適切な分岐状オレフィンには、ブチレンダイマー若しくはトリマー又はより高分子量のイソブチレンオリゴマー、等及びそれらの混合物が挙げられる。適切なアリールアルキレンには、スチレン、メチルスチレン、3−フェニルプロペン、2−フェニル−2−ブテン等及びそれらの混合物が挙げられる。
プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9〜C18オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化は、一般に、アルキル化触媒の存在下で実施される。有用なアルキル化触媒には、ルイス酸触媒、固体酸触媒、トリフルオロメタンスルホン酸及び酸性モレキュラーシーヴ触媒が挙げられる。適切なルイス酸触媒には、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素等が挙げられる。
適切な固体酸触媒には、ゼオライト、酸性白土、及び/又は シリカ−アルミナが挙げられる。触媒はモレキュラーシーヴとすることができる。適格なモレキュラーシーヴは、シリカ−アルミノホスファートモレキュラーシーヴ又は金属シリカ−アルミノホスファートモレキュラーシーヴであり、ここで、金属は例えば鉄、コバルト又はニッケルとすることができる。一実施形態において、固体触媒は、その酸形態におけるカチオン交換樹脂、例えば架橋スルホン酸触媒である。スルホン化された適切な酸性イオン交換樹脂型触媒には、Rohm and Hass(Philadelphia、Pa.)から入手可能なAmberlyst 36(登録商標)が挙げられる。酸触媒は、バッチ法又は連続法に使用された場合、リサイクル又は再生することができる。
アルキル化用の反応条件は使用される触媒のタイプに依存しており、アルキルヒドロキシ芳香族生成物への高い転換をもたらす任意の適切な一組の反応条件を用いることができる。典型的には、アルキル化反応用の反応温度は、約25℃から約200℃までの、好ましくは約85℃から約135℃までの範囲である。反応圧力は一般に大気圧であるが、より高い又はより低い圧力を用いてもよい。アルキル化法は、バッチ式、連続式又は半連続式で実施することができる。ヒドロキシ芳香族化合物と一以上のオレフィンとのモル比は通常、約10:1から約0.5:1までの範囲であり、好ましくは約5:1から約3:1までの範囲である。
アルキル化反応は、溶媒なしで実施してもよいし、又はヒドロキシ芳香族化合物とオレフィン混合物の反応に不活性な溶媒の存在下で実施してもよい。使うのであれば、典型的な溶媒はヘキサンである。
反応の完了時、所望のアルキルヒドロキシ芳香族化合物は、従来の技術を用いて単離することができる。典型的には、過剰なヒドロキシ芳香族化合物は、反応生成物から蒸留される。
アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基は、典型的には、ヒドロキシル基に対して、主としてオルト位及びパラ位においてヒドロキシ芳香族化合物に結合している。
続いて、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を任意の順序で硫化及び中和して、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を得る。硫化ステップ及び中和ステップは、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩が得られるように、任意の順序で実施することができる。代替的には、中和ステップ及び硫化ステップは、同時に実施することができる。
一般に、硫化は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物と、塩基の存在下でアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物間にSx架橋基(式中、xは1から7までである)を導入する硫黄源とを接触させることにより実施される。任意の適切な硫黄源を使用することができ、例えば、硫黄元素又はそのハロゲン化物、例としては一塩化硫黄又は二塩化硫黄、硫化水素、二酸化硫黄及び硫化ナトリウム水和物等が使用できる。硫黄は、溶融した硫黄として用いてもよいし、又は固体(例えば、粉末若しくは粒子)として用いてもよいし、又は相溶性の炭化水素液体中の固体懸濁液として用いてもよい。
塩基は反応を触媒して、アルキルヒドロキシ芳香族化合物に硫黄を取り付ける。適切な塩基には、以下に限定されないが、NaOH、KOH、Ca(OH)2等及びそれらの混合物が挙げられる。
塩基は、一般に、反応系中のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物に対して約0.01モルパーセントから約1モルパーセントまでで用いられる。一実施形態において、塩基は、反応系中のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物に対して約0.01モルパーセントから約0.1モルパーセントまでで用いられる。塩基は、反応混合物に固体又は液体として加えることができる。好ましい一実施形態において、塩基は水溶液として加えられる。
硫黄は、一般に、反応系中のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約0.5モルから約4モルまでで用いられる。一実施形態において、硫黄は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約0.8モルから2モルまでで用いられる。一実施形態において、硫黄は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約1モルから1.5モルまでで用いられる。
硫化反応が実施される温度範囲は、一般に、約150℃から約200℃までである。一実施形態において、温度範囲は、約160℃から約180℃までである。反応は、周囲圧力下で(又は若干より低くして)実施してもよいし、又は高圧において実施してもよい。硫化中、かなりの量の副生成物硫化水素ガスが発生する。一実施形態において、反応は、H2S除去を容易化するために真空下で実施される。反応中に発現する正確な圧力は、システムの設計及び動作、反応温度、並びに、反応物質及び生成物の蒸気圧等の因子に依存しており、反応の途中で変化させてもよい。一実施形態において、プロセス圧力は、大気圧から約20mmHgまでである。
硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の中和は、当業者に公知な任意の方法により連続法又はバッチ法で実施することができる。硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を中和するため、及び塩基の供給源の配合により塩基性フェナートを生成するための、数多くの方法が当該技術分野において公知である。一般に、中和は、反応性条件下、好ましくは不活性で相溶性な液体状炭化水素希釈剤中で硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物と金属塩基とを接触させることにより実施することができる。所望ならば、反応は不活性ガス下、典型的には窒素下で実施してもよい。金属塩基は、反応中の中間点において、単回の添加又は複数回の添加により加えることができる。
適切な金属塩基性化合物には、(1)アルカリヒドロキシド、アルカリオキシド若しくはアルカリアルコキシドから選択される金属塩基に由来するものである、アルカリ金属塩、又は(2)アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類酸化物若しくはアルカリ土類アルコキシドから選択される金属塩基に由来するものである、アルカリ土類金属塩等の、金属の水酸化物、酸化物又はアルコキシドが挙げられる。ヒドロキシド官能基を有する金属塩基性化合物の代表例としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。オキシド官能基を有する金属塩基性化合物の代表例としては、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム等が挙げられる。一実施形態において、アルカリ土類金属塩基は、その取扱い勝手の好さや、例えば酸化カルシウムに対比してのコストのゆえ、消石灰(水酸化カルシウム)である。
中和は、典型的には、トルエン、キシレン等の適切な溶媒又は希釈油中で、一般的にはアルコール、例えばメタノール、デシルアルコール若しくは2−エチルヘキサノール等のC1〜C16アルコール、例えばエチレングリコール等のジオールC2〜C4アルキレングリコール、及び/又はカルボン酸等の促進剤を用いて実施される。適切な希釈油としては、ナフテン系オイル及び混合油、例えば100中性油等のパラフィン系オイルが挙げられる。使用される溶媒又は希釈油の量は、最終的生成物中での溶媒又はオイルの量が最終的生成物の約25重量%から約65重量%まで、好ましくは約30%から約50%までを占めるような量である。例えば、アルカリ土類金属の供給源をスラリーとして(すなわち、アルカリ土類金属石灰、溶媒又は希釈油の供給源の予備混合物として)過剰に加え、次いで硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物と反応させる。
金属塩基と硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の間での中和反応は、典型的には、室温(20℃)より高い温度で実施される。一般に、中和は、約20℃から約150℃の間の温度で実施することができる。しかしながら、低温で中和を実施することが好ましい。一実施形態において、中和は、約25℃から約30℃の間の温度で実施することができる。中和反応自体は、約5分から約60分までの時間行うべきである。所望ならば、中和反応は、エチレングリコール、ギ酸、酢酸等及びそれらの混合物等の促進剤の存在下で実施される。
アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の硫化及び中和の完了時、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性塩が得られる。所望ならば、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性塩を過塩基化して、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を得ることもできる。過塩基化は、硫化ステップ及び中和ステップのどちらかの間又はその後のいずれかで当業者に公知な任意の方法により実施することができる。代替的には、硫化、中和及び過塩基化は、同時に実施することができる。一般に、過塩基化は、例えば二酸化炭素又はホウ酸等の酸性過塩基性の化合物との反応により実施される。一実施形態において、過塩基化法は、炭酸化、すなわち二酸化炭素との反応による。このような炭酸化は、芳香族溶媒、アルコール又はポリオール等の溶媒、典型的にはアルキレンジオール、例えばエチレングリコールの添加により好都合に実施することができる。好都合なことに、反応は、反応混合物の中を通して気体状二酸化炭素をバブリングするという簡単な便法により実施される。過剰な溶媒及び過塩基化反応中に形成されたあらゆる水は、反応の間又は後のいずれかで蒸留により好都合に除去することができる。
一実施形態において、過塩基化反応は、二酸化炭素の存在下且つ芳香族溶媒(例えば、キシレン)及びメタノール等のヒドロカルビルアルコールの存在下、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の塩と、石灰(すなわち、アルカリ土類金属水酸化物)等のアルカリ土類金属の供給源とを反応させることにより反応器中で実施される。好都合なことに、反応は、反応混合物の中を通して気体状二酸化炭素をバブリングするという簡単な便法により実施される。二酸化炭素は、約30℃から約60℃までの範囲の温度において、約1時間から約3時間までの時間をかけて導入される。過塩基化の程度は、反応混合物に加えられるアルカリ土類金属、二酸化炭素及び反応物質の供給源の量、並びに炭酸化法中に用いられる反応条件により制御することができる。
本発明の別の実施形態において、過塩基化反応は、ポリオール、典型的には、エチレングリコール等のアルキレンジオール、及び/又はデシルアルコール、2−エチルヘキサノール等のC6〜C16アルカノールといったアルカノールの存在下、約140℃から約180℃の間で実施することができる。過剰な溶媒及び過塩基化反応中に形成されたあらゆる水は、反応の間又は後のいずれかで蒸留により好都合に除去することができる。
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩は、約50から約500までのTBNを有し得る。
一般に、得られた硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩には、顧客へのあらゆる潜在的な健康リスクを最小化するため及び潜在的な規制違反を回避するために更に低減される必要がある、合算質量で一定量の未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩が含まれている。一実施形態において、得られた後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩は通常、合算質量で約2重量%から約10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩を含有する。
当業者ならば理解できるが、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩は、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩に加えてその他の成分を含有し得る。
ステップ(b)において、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約70%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で、有効量のアルデヒド及び少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物と反応する。
適切なアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、下記式を有するアルデヒドが挙げられ、
式中、R’は、分岐状又は鎖状のC1〜C10アルキル基、C3〜C10シクロアルキル基、C6〜C10アリール基、C7〜C20アルカリール基又はC7〜C20アラルキル基、等及びそれらの混合物である。一実施形態において、アルデヒドは、エノール化ができないアルデヒドである。
本発明における使用のための脂肪族アルデヒドの代表例としては、以下に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロアルデヒド、ヘプタアルデヒド等が挙げられる。
本発明における使用のための芳香族アルデヒドの代表例としては、以下に限定されないが、ベンズアルデヒド、パラ−トルアルデヒド等のアルキルベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
ホルムアルデヒドを生成する試薬、例としては、ホルマリン溶液等のホルムアルデヒド水溶液、ホルムアルデヒドオリゴマー、例えばトリオキサン、又は、パラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒドのポリマーも、同様に有用である。好ましい一実施形態において、アルデヒドは、使用済みパラホルムアルデヒドである。
一般に、ステップ(b)において存在するアルデヒドの有効量は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の1モル当量当たり、約1モル当量から約15モル当量までの範囲である。一実施形態において、ステップ(b)において存在するアルデヒドの量は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の1当量当たり、約1から約10モル当量までである。
適切なアミン化合物は、少なくとも一の活性水素を有する第一級又は第二級モノアミンである。一実施形態において、本発明における使用に適した第一級モノアミン化合物は、式HNRR1により表され、式中、基R又はR1の一は水素であり、他の基はC1〜C30ヒドロカルビル基である。このようなC1〜C30ヒドロカルビル基の例としては、以下に限定されないが、直鎖状又は分岐状の置換又は無置換C1〜C30アルキル基、置換又は無置換C3〜C30シクロアルキル基、置換又は無置換C3〜C30シクロアルキルアルキル基、置換又は無置換C3〜C30シクロアルケニル基、置換又は無置換C5〜C30アリール基及び置換又は無置換C5〜C30アリールアルキル基、置換又は無置換C1〜C20アルコール基、置換又は無置換C1〜C20アルコキシ基等が挙げられる。
本発明における使用のためのアルキル基の代表例としては、例として、炭素原子数1から約30までの、好ましくは炭素原子1から約6までの、例えばメチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル等の、分子の残り部分には不飽和がある又は不飽和がない、炭素原子及び水素原子を含有する直鎖状又は分岐状アルキル鎖基が挙げられる。
本発明における使用のためのシクロアルキル基の代表例としては、例として、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ペルヒドロナフチル基、アダマンチル基及びノルボルニル基、架橋環状基又はスピロ二環状基、例えばspiro−(4,4)−ノナ−2−イル等、約3個から約30個までの炭素原子の置換又は無置換非芳香族単環式又は多環式環系が挙げられる。
本発明における使用のためのシクロアルキルアルキル基の代表例としては、例として、アルキル基(後で任意の炭素においてモノマーの主要構造に結合し、安定構造の生成を起こすアルキル基)に直接結合した約3個から約30個までの炭素原子を含有する、置換又は無置換環状環含有基、例えばシクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル等が挙げられる。
本発明における使用のためのシクロアルケニル基の代表例としては、例として、少なくとも一の炭素−炭素二重結合を有する約3個から約30個までの炭素原子を含有する、置換又は無置換環状環含有基、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル等が挙げられる。
本発明における使用のためのアリール基の代表例としては、例として、約5個から約30個までの炭素原子を含有する、置換又は無置換単環芳香族又は多環芳香族基、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、ビフェニル等が挙げられる。
本発明における使用のためのアリールアルキル基の代表例としては、例として、本明細書において規定されたアルキル基に直接結合した、本明細書において規定された置換又は無置換アリール基、例えば、−CH2C6H5、−C2H5C6H5等が挙げられる。
本発明における使用のためのアルコール基の代表例としては、例として、炭素結合を介して分子の残り部分に結合した−OH基、すなわち一般式−R2OHの−OH基が挙げられ、式中、R2は、本明細書において規定されたアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アリール又はアリールアルキルであり、OH基は、任意の炭素原子に結合している。
本発明における使用のためのアルコキシ基の代表例としては、例として、酸素結合を介して分子の残り部分に結合した、本明細書において規定されたアルキル基、すなわち一般式−OR3のアルキル基、例えば、−OCH3、−OC2H5又は−OC6H5等が挙げられ、式中、R3は、本明細書において規定されたアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アリール又はアリールアルキルである。
「置換アルキル」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルキルアルキル」、「置換シクロアルケニル」、「置換アリール」、「置換アリールアルキル」、「置換アルコール」及び「置換アルコキシ」における置換基は同一であってもよいし、又は異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、オキソ(=O)、チオ(=S)、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換アルコキシ等、一以上の置換基が挙げられる。
適切な式HNRR1の第一級モノアミン化合物には、以下に限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサドデシルアミン、ステアリルアミン、オクタデシルアミン、エイコシルアミン等のアルキルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン、アニリン、ベンジルアミン、2−アミノトルエン、3−アミノトルエン、4−アミノトルエン等のアリールアミン、メタノールアミン、エタノールアミン等のアルカノールアミン、2,4−ジメチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、3,4−ジメチルアニリン、3,5−ジメチルアニリン、2,4,5−トリメチルアニリン、2,4,6−トリメチルアニリン、3,4,5,6−テトラメチルアニリン、2,4,5,6−テトラメチルアニリン、2,3,5,6−テトラメチルアニリン、2−エチル−3−ヘキシルアニリン、2−エチル−4−ヘキシルアニリン、2−エチル−5−ヘキシルアニリン、2−エチル−6−ヘキシルアニリン、3−エチル−4−ヘキシルアニリン、3−エチル−5−ヘキシルアニリン、3−エチル−2−ヘキシルアニリン、4−エチル−2−ヘキシルアニリン、5−エチル−2−ヘキシルアニリン、6−エチル−2−ヘキシルアニリン、4−エチル−3−ヘキシルアニリン、5−エチル−3−ヘキシルアニリン、3,4,6−トリエチルトルエン、2−メトキシアニリン、3−メトキシアニリン、4−メトキシアニリン、2−メトキシ−3−メチルアニリン、2−メトキシ−4−メチルアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリン、2−メトキシ−6−メチルアニリン、3−メトキシ−2−メチルアニリン、3−メトキシ−4−メチルアニリン、3−メトキシ−5−メチルアニリン、3−メトキシ−6−メチルアニリン、4−メトキシ−2−メチルアニリン、4−メトキシ−3−メチルアニリン、2−エトキシアニリン、3−エトキシアニリン、4−エトキシアニリン、4−メトキシ−5−メチルアニリン、4−メトキシ−6−メチルアニリン、2−メトキシ−3−エチルアニリン、2−メトキシ−4−エチルアニリン、2−メトキシ−5−エチルアニリン、2−メトキシ−6−エチルアニリン、3−メトキシ−2−エチルアニリン、3−メトキシ−4−エチルアニリン、3−メトキシ−5−エチルアニリン、3−メトキシ−6−エチルアニリン、4−メトキシ−2−エチルアニリン、4−メトキシ−3−エチルアニリン、2−メトキシ−2,3,4−トリメチルアニリン、3−メトキシ−2,4,5−トリメチルアニリン、4−メトキシ−2,3,5−トリメチルアニリン等のアルコキシアミン等、並びにこれらの混合物が挙げられる。
別の実施形態において、本発明における使用に適した第二級モノアミン化合物は、式HNRR1により表され、式中、R及びR1は同一であり又は異なり、C1〜C30ヒドロカルビル基である。第二級モノアミン化合物のR及びR1に関するこのようなヒドロカルビル基の例は、第一級モノアミン化合物に関して上述したヒドロカルビル基のいずれであってもよい。適切な式HNRR1の第二級モノアミン化合物には、以下に限定されないが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン等のジアルキルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジシクロアミン、ジフェニルアミン等のジアリールアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等のN−アルキルアルカノールアミン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
一般に、ステップ(b)において存在するモノアミン化合物の有効量は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の1当量当たり、約1モル当量から約15当量までの範囲である。一実施形態において、ステップ(b)において存在するモノアミン化合物の量は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の1当量当たり、約1モル当量から約10当量までである。
一実施形態において、ステップ(b)において存在するアルデヒド及びモノアミン化合物の有効量は、約1:1から約5:1までの範囲に及ぶ、アルデヒドとモノアミン化合物とのモル比である。
一実施形態において、反応は、約1:1:1から約1:10:10までの範囲に及ぶ、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩とアルデヒドとモノアミン化合物とのモル比を用いて実施される。
当業者ならば容易に理解するように、反応条件は、用いられる反応物質及びそれらのそれぞれの有効量に必ず依存する。一実施形態において、適切な反応条件としては、約70℃から約180℃までの範囲の温度、及び約30分から約14時間までの範囲の反応時間が挙げられる。
所望ならば、ステップ(b)は、反応生成物から回収できる適切な溶媒の存在下で実施してもよい。適切な溶媒には、例えば、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、デシルアルコール、2−エチルヘキサノール等のアルコール溶媒、並びにこれらの混合物といった有機溶媒が挙げられる。所望ならば、反応は、鉱物性潤滑油中で実施してもよく、得られた生成物は、潤滑油濃縮物として回収される。
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物との反応は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約70%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で実施される。一実施形態において、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物との反応は、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約75%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で実施される。
一実施形態において、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物との反応は、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約80%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で実施される。一実施形態において、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物との反応は、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約85%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で実施される。
一実施形態において、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物との反応は、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約90%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で実施される。一実施形態において、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物との反応は、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約95%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で実施される。一実施形態において、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の中性又は過塩基性塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物との反応は、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で100%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で実施される。
潤滑油組成物
本発明の別の実施形態は、(a)潤滑油組成物中最大量の潤滑粘度のオイル、並びに(b)(i)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9〜C18オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩、(ii)アルデヒドの供給源、並びに(iii)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の反応生成物である、少なくとも一の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を少なくとも含有する、潤滑油組成物を対象としている。
本発明の別の実施形態は、(a)潤滑油組成物中最大量の潤滑粘度のオイル、並びに(b)合算質量による未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が低減された、少なくとも一の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩であって、
(i)未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩を含有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩であって、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9〜C18オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を得ること、並びに、
(ii)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物とを、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約70%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で、反応させること
を含む方法により生成された、前記硫化アルキルヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を少なくとも含有する、潤滑油組成物を対象としている。
一般に、本発明の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて約0.01重量%から約10重量%までの概算量という量で、潤滑油組成物中に存在する。一実施形態において、本発明の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて約0.01重量%から約3重量%までの量で、潤滑油組成物中に存在する。
本発明の潤滑油組成物中への使用のための潤滑粘度のオイルは、ベースオイルとも呼ばれ、典型的には潤滑油組成物中最大量で存在し、例えば、組成物の合計重量に基づいて50重量%超の、又は約70重量%超の、又は約80重量%から約99.5重量%までの、又は約85重量%から約98重量%までの量で存在する。本明細書で使用される「ベースオイル」という表現は、(供給源又は製造者の所在地に関わらず)同じ仕様になるよう単一の製造者により生成される潤滑剤成分であり、同じ製造者の仕様を満たしており、ただ一つの処方、製品識別番号又はこれらの両方により識別される、ベースストック又はベースストックのブレンドを意味すると理解すべきである。本発明における使用のためのベースオイルは、このような用途のいずれかのため及びすべてのために潤滑油組成物を配合するのに使用される潤滑粘度の、現在知られている又は後に発見されるあらゆるオイルであってよく、例えばエンジンオイル、船舶用シリンダーオイル、作動液、ギアオイル、トランスミッション流体等といった機能性流体とすることができる。更に、本発明における使用のためのベースオイルは、任意選択的に、粘度指数向上剤、例えばポリメリックアルキルメタクリラート、オレフィンコポリマー、例えばエチレン−プロピレンコポリマー又はスチレン−ブタジエンコポリマー、等及びそれらの混合物を含有し得る。
当業者ならば容易に理解するように、ベースオイルの粘度は用途に依存する。したがって、本発明における使用のためのベースオイルの粘度は通常、摂氏100度(℃)において約2センチストーク(cSt)から約2000センチストークまでの範囲である。一般に、エンジンオイルとして使用されるベースオイルは個別に、100℃において約2cStから約30cStまでの、又は約3cStから約16cStまでの、又は約4cStから約12cStまでの動粘度範囲を有し、所望の最終的な使用と仕上げ済みオイル中の添加剤とに依存して選択又はブレンドされて、所望のグレードのエンジンオイル、例えば0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30又は15W−40のSAE粘度グレードを有する潤滑油組成物を与える。ギアオイルとして使用されるオイルは、100℃において約2cStから約2000cStまでの範囲の粘度を有し得る。本明細書中で開示されたベースオイル又は潤滑油組成物の動粘度は、参照により本明細書の内容の一部とするASTM D445に従って測定することができる。
ベースストックは、種々の相異なる方法を用いて製造することができ、以下に限定されないが、蒸留、溶媒精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化及び再精製が挙げられる。再精製されたストックは、製造、汚染又は以前の使用を通じて導入された材料を実質的に含んでいないものとする。本発明の潤滑油組成物のベースオイルは、任意の天然又は合成の潤滑性ベースオイルとすることができる。適切な炭化水素合成油としては、以下に限定されないが、ポリαオレフィン又はPAOオイル等のポリマーを得るためのエチレンの重合又は1−オレフィンの重合から調製されたオイル、又はフィッシャートロプシュ法におけるような一酸化炭素及び水素ガスを用いた炭化水素合成工程から調製されたオイルが挙げられる。例えば、適切なベースオイルは、あったとしても重質留分をほとんど含まない、例えば、あったとしても100℃において20cSt以上の粘度の潤滑油留分をほとんど含まないベースオイルである。
ベースオイルは、天然潤滑油、合成潤滑油又はこれらの混合物に由来し得る。適切なベースオイルには、合成ワックス及びスラックワックスの異性化により得られたベースストック、並びに、粗製物の芳香族極性成分を(溶媒抽出ではなく)水素化分解することにより生成された水素化分解ベースストックが挙げられる。適切なベースオイルとしては、API公報1509、第14版、Addendum I、1998年12月において規定されたすべてのAPIカテゴリーI、II、III、IV及びV内のベースオイルが挙げられる。グループIVベースオイルは、ポリαオレフィン(PAO)である。グループVベースオイルには、グループI、II、III又はIV内に含まれない、他のすべてのベースオイルが含まれる。グループII、III及びIVベースオイルが本発明における使用のために好ましいが、これらのベースオイルは、グループI、II、III、IV及びVベースストック又はベースオイルの一以上を組み合わせることにより調製してもよい。
有用な天然油としては、例えば、液体石油オイル、溶媒処理された又は酸処理されたパラフィン系、ナフテン系又はパラフィン−ナフテン混合系の鉱油系潤滑油、石炭又は頁岩に由来するオイル等の鉱油系潤滑油、動物油、植物油(例えば、菜種油、ヒマシ油及びラード油)が挙げられる。
有用な合成潤滑油としては、以下に限定されないが、例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等及びそれらの混合物のような、重合オレフィン及び共重合オレフィン等の炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン等のアルキルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル等のポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにこれらの誘導体、類縁体及び同族体等が挙げられる。
他の有用な合成潤滑油としては、以下に限定されないが、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、ペンテン及びこれらの混合物等の炭素原子数5個未満のオレフィンを重合することにより作製されたオイルが挙げられる。このようなポリマーオイルを調製する方法は、当業者に周知である。
更なる有用な合成炭化水素油としては、適当な粘度を有するαオレフィンの液体ポリマーが挙げられる。特に有用な合成炭化水素油は、例えば1−デセントリマー等のC6〜C12αオレフィンの水素化液体オリゴマーである。
別の種類の有用な合成潤滑油としては、以下に限定されないが、末端ヒドロキシル基が例えばエステル化又はエーテル化により改質されたアルキレンオキシドポリマー、すなわちホモポリマー、インターポリマー及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのオイルは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合を通じて調製されたオイル、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテル及びフェニルエーテル(例えば、1,000の平均分子量を有するメチルポリプロピレングリコールエーテル、500〜1000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、1,000〜1,500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、又は、これらのモノ−及びポリカルボン酸エステル、例えば酢酸エステル、混合C3〜C8脂肪酸エステル若しくはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステル等により例示される。
更に別の種類の有用な合成潤滑油としては、以下に限定されないが、例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等といったジカルボン酸と、例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等といった種々のアルコールとのエステルが挙げられる。これらのエステルの具体例としては、ジブチルアジパート、ジ(2−エチルヘキシル)セバカート、ジ−n−ヘキシルフマラート、ジオクチルセバカート、ジイソオクチルアゼラート、ジイソデシルアゼラート、ジオクチルフタラート、ジデシルフタラート、ジエイコシルセバカート、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させることにより形成された複合エステル等が挙げられる。
合成油として有用なエステルとしてはまた、以下に限定されないが、約5個から約12個までの炭素原子を有するカルボン酸と、アルコール、例えば、メタノール、エタノール等、ポリオール及びポリオールエーテルとから作製されるエステル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール等も挙げられる。
例えばポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−又はポリアリールオキシ−シロキサンオイル及びシリカートオイル等のケイ素系オイルは、別の有用な種類の合成潤滑油を構成する。これらの具体例としては、以下に限定されないが、テトラエチルシリカート、テトラ−イソプロピルシリカート、テトラ−(2−エチルヘキシル)シリカート、テトラ−(4−メチル−ヘキシル)シリカート、テトラ−(p−tert−ブチルフェニル)シリカート、ヘキシル−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、ポリ(メチルフェニル)シロキサン等が挙げられる。更なる他の有用な合成潤滑油としては、以下に限定されないが、リン含有酸の液体エステル、例えば、トリクレシルホスファート、トリオクチルホスファート、デカンホスフィオン酸のジエチルエステル等、ポリマー化テトラヒドロフラン等が挙げられる。
潤滑油は、未精製油、精製油及び再精製油に由来し得、天然、合成、又は、上に開示したタイプの潤滑油のいずれか2種以上の混合物とすることができる。未精製油は、更なる精製又は処理を経ることなく天然又は合成の原料(例えば、石炭、頁岩又はタールサンドビチューメン)から直接得られたものである。未精製油の例としては、以下に限定されないが、乾留操作から直接得られたシェールオイル、蒸留から直接得られた石油系油、又はエステル化法から直接得られたエステル油が挙げられ、これらのそれぞれはその後、更なる処理を経ずに用いられる。精製油は、一以上の特性を改善するために一以上の精製ステップにより更に処理されている点を除けば、未精製油と同様である。これらの精製技法は当業者には公知であり、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、パーコレーション、水素化精製、脱蝋等が挙げられる。再精製油は、精製油を得るために用いられる方法と同様の方法による使用済みオイルの処理により得られる。このような再精製油は、再生油又は再処理油としても公知であり、しばしば、効力を失った添加剤及び油分解生成物の除去を対象とした技法により更に処理される。
ワックスの水素化異性化に由来する潤滑油ベースストックはまた、単独で使用してもよいし、又は前述した天然及び/又は合成ベースストックと組み合わせて使用してもよい。このようなワックス異性化油は、水素化異性化触媒を用いた天然又は合成のワックスの水素化異性化又はこれらの混合物により生成される。
天然ワックスは、典型的には、鉱物油の溶媒脱蝋により回収されたスラックワックスであり、合成ワックスは、典型的には、フィッシャートロプシュ法により生成されたワックスである。
本発明の潤滑油組成物はまた、それらの添加剤が分散又は溶解された潤滑油組成物に関する望ましい任意の特性を付与又は改善し得る、その他の従来の添加剤も含有し得る。当業者に公知な任意の添加剤が、本明細書中で開示された潤滑油組成物中に使用することができる。幾つかの適切な添加剤が、Mortierら、「Chemistry and Technology of Lubricants」、第2版、London、Springer、(1996年)、及びLeslie R.Rudnick、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、New York、Marcel Dekker(2003年)において説明されており、これらの両方は参照により本明細書の記載の一部とする。例えば、潤滑油組成物は、抗酸化剤、摩耗防止剤、金属洗剤等の洗剤、錆止め剤、曇り除去剤(dehazing agent)、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ相溶化剤(package compatibiliser)、腐食防止剤、無灰分散剤、染料、極圧剤等及びそれらの混合物とブレンドすることができる。種々の添加剤が公知であり、市販されている。これらの添加剤又はそれらの類似化合物は、通常のブレンド手法による本発明の潤滑油組成物の調製のために用いることができる。
一般に、使用されるときの潤滑油組成物中での添加剤のそれぞれの濃度は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.001重量%から約10重量%までの、約0.01重量%から約5重量%までの、又は約0.1重量%から約2.5重量%までの範囲とすることができる。更に、潤滑油組成物中での添加剤の合計量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.001重量%から約20重量%までの、約0.01重量%から約10重量%までの、又は約0.1重量%から約5重量%までの範囲とすることができる。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、ベースオイルの酸化を低減又は阻止できる、一以上の抗酸化剤を含有し得る。当業者に公知な任意の抗酸化剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。適切な抗酸化剤の非限定的な例としては、アミン系抗酸化剤(例えば、ビス−ノニル化ジフェニルアミン、ビス−オクチル化ジフェニルアミン及びオクチル化/ブチル化ジフェニルアミン等のアルキルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル置換又はアリールアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化p−フェニレンジアミン、テトラメチル−ジアミノジフェニルアミン等)、フェノール系抗酸化剤(例えば、2−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−ジ−tert−ブチル−o−クレゾール)等)、硫黄系抗酸化剤(例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、硫化フェノール系抗酸化剤等)、リン系抗酸化剤(例えば、ホスファイト等)、ジチオリン酸亜鉛、油溶性銅化合物及びこれらの組合せが挙げられる。抗酸化剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%まで、約0.05重量%から約5重量%まで、又は約0.1重量%から約3重量%までとすることができる。幾つかの適切な抗酸化剤が、参照により本明細書の記載の一部とするLeslie R.Rudnick、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、New York、Marcel Dekker、第1章、1〜28ページ(2003年)において説明されている。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、使用中の酸化によって生じた不溶性物質を懸濁液中に維持し、その結果、金属部品上にスラッジのフロキュレーション及び沈殿又は析出を阻止するべく、一以上の無灰分散剤化合物を含有し得る。分散剤はまた、潤滑剤中の大型の汚染物質粒子の増殖を阻止することによる潤滑油粘度の変化を抑制するようにも機能し得る。当業者に公知な任意の分散剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。無灰分散剤は一般に、分散させようとする粒子と会合することができる官能基を有する、油溶性のポリマー状炭化水素骨格を含む。
一実施形態において、無灰分散剤は、一以上の塩基性窒素含有無灰分散剤である。窒素含有塩基性無灰(金属無含有)分散剤は、硫酸化された追加の灰分を導入しなくとも、それらを加えられた潤滑油組成物の塩基価又はBN(ASTM D 2896−11により測定できる)に寄与する。本発明に有用な塩基性窒素含有無灰分散剤としては、ヒドロカルビルスクシンイミド、ヒドロカルビルスクシンアミド、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤をアルコール及びアミンと段階的に反応させること若しくはアルコールとアミンとの混合物と反応させること及び/又はアミノアルコールと反応させることにより形成されたヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物、並びに、高分子量脂肪族又は脂環式ハロゲン化物とポリアルキレンポリアミン等のアミンとを反応させることにより形成されたアミン分散剤が挙げられる。このような分散剤の混合物もまた使用することができる。
無灰分散剤の代表例としては、以下に限定されないが、アミン、アルコール、アミド、又は架橋基を介してポリマー主鎖に結合したエステル極性部分が挙げられる。無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミド及びオキサゾリン、長鎖炭化水素のチオカルボキシラート誘導体、ポリアミンが直接結合している長鎖炭化水素、並びに、長鎖置換フェノールとホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンとを縮合することにより形成されたマンニッヒ縮合生成物から選択することができる。
カルボン酸系分散剤は、少なくとも約34個、好ましくは少なくとも約54個の炭素原子を含むカルボン酸系アシル化剤(酸、無水物、エステル等)と、窒素含有化合物(アミン等)、有機ヒドロキシ化合物(一価アルコール及び多価アルコールを含む脂肪族化合物、又はフェノール及びナフトールを含む芳香族化合物等)、及び/又は塩基性無機材料との反応生成物である。これらの反応生成物は、イミド、アミド及びエステルを含む。
スクシンイミド分散剤は、カルボン酸系分散剤の一種である。スクシンイミド分散剤は、ヒドロカルビル置換コハク酸系アシル化剤を有機ヒドロキシ化合物と反応させること、又は窒素原子に結合した少なくとも一の水素原子を含むアミンと反応させること、又はヒドロキシ化合物とアミンの混合物と反応させることにより生成される。「コハク酸系アシル化剤」という用語は、炭化水素置換コハク酸又はコハク酸生成化合物をいい、後者は酸自体を包含する。このような材料としては、典型的には、ヒドロカルビル置換コハク酸、無水物、エステル(半エステルを含む)及びハロゲン化物が挙げられる。
コハク酸系分散剤は、多種多様な化学構造を有する。コハク酸系分散剤の一種は、下記式により表すことができ、
式中、各R1は独立にポリオレフィン由来基等のヒドロカルビル基である。典型的には、ヒドロカルビル基は、ポリイソブチル基等のアルキル基である。代替的に表すと、R1基は、約40個から約500個までの炭素原子を含み得、これらの原子は、脂肪族形態で存在し得る。R2はアルキレン基であり、一般的にはエチレン(C2H4)基である。スクシンイミド分散剤の例としては、例えば米国特許第3,172,892号、米国特許第4,234,435号及び米国特許第6,165,235号において説明されたスクシンイミド分散剤が挙げられる。
置換基が由来するポリアルケンは、典型的には、2個から約16個までの炭素原子、通常2個から6個までの炭素原子の重合性オレフィンモノマーのホモポリマー及びインターポリマーである。コハク酸系アシル化剤と反応してカルボン酸系分散剤組成物を形成するアミンは、モノアミン又はポリアミンとすることができる。
スクシンイミド分散剤がこのように呼ばれているのは、主としてイミド官能基の形態の窒素を通常含むためであるが、アミド官能基は、アミン塩、アミド、イミダゾリン並びにこれらの混合物の形態であってもよい。スクシンイミド分散剤を調製するためには、一以上のコハク酸生成化合物及び一以上のアミンを加熱し、典型的には、任意選択的に実質的に不活性な有機液体溶媒/希釈剤の存在下、水を除去する。反応温度は、約80℃から混合物又は生成物の分解温度に至るまでの範囲とすることができ、典型的には、約100℃から約300℃の間に収まる。本発明のスクシンイミド分散剤を調製するための手法に関する追加の詳細及び例としては、例えば米国特許第3,172,892号、米国特許第3,219,666号、米国特許第3,272,746号、米国特許第4,234,435号、米国特許第6,165,235号及び米国特許第6,440,905号において説明されたものが挙げられる。
適切な無灰分散剤には、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物及びアミン、好ましくはポリアルキレンポリアミンの反応生成物である、アミン分散剤を挙げることもできる。このようなアミン分散剤の例としては、例えば米国特許第3,275,554号、米国特許第3,438,757号、米国特許第3,454,555号及び米国特許第3,565,804号において説明されたものが挙げられる。
適切な無灰分散剤には、アルキル基が少なくとも約30個の炭素原子を含むアルキルフェノールと、アルデヒド(特にホルムアルデヒド)及びアミン(特にポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である、「マンニッヒ分散剤」を更に挙げることができる。このような分散剤の例としては、例えば米国特許第3,036,003号、米国特許第3,586,629号、米国特許第3,591,598号及び米国特許第3,980,569号において説明されたものが挙げられる。
適切な無灰分散剤はまた、例としては、例えば米国特許第4,612,132号及び米国特許第4,746,446号において開示されたボラート又はエチレンカルボナートが関与する後処理方法等、並びにその他の後処理方法により、後処理されたスクシンイミドのような後処理された無灰分散剤とすることができる。カルボナート処理されたアルケニルスクシンイミドは、約450から約3000までの、好ましくは約900から約2500までの、より好ましくは約1300から約2400までの、最も好ましくは約2000から約2400までの分子量、並びにこれらの分子量の混合物を有するポリブテンに由来するものである、ポリブテンスクシンイミドである。好ましくは、カルボナート処理されたアルケニルスクシンイミドは、参照により本明細書の内容の一部とする米国特許第5,716,912号において開示されたように、反応性条件下でポリブテンコハク酸誘導体、不飽和酸性試薬とオレフィンの不飽和酸性試薬コポリマー、及びポリアミンの混合物を反応させることにより調製される。
適切な無灰分散剤はまた、ポリマー系とすることもでき、デシルメタクリラート、ビニルデシルエーテル及び高分子量オレフィン等のオイル可溶化性モノマーと、極性置換基を含むモノマーとのインターポリマーである。ポリマー系分散剤の例としては、例えば米国特許第3,329,658号、米国特許第3,449,250号及び米国特許第3,666,730号において説明されたものが挙げられる。
本発明の好ましい一実施形態において、潤滑油組成物中への使用のための無灰分散剤は、約700から約2300までの数平均分子量を有するポリイソブテニル基に由来するものである、ビス−スクシンイミドである。本発明の潤滑油組成物中への使用のための分散剤(単数又は複数)は、好ましくは、非ポリマー系である(例えば、モノ−又はビス−スクシンイミドである)。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、更なる洗剤を含有し得る。エンジン堆積物の蓄積を低減又は遅延し得る任意の化合物又は化合物の混合物が、洗剤として使用することができる。適切な金属洗剤の非限定的な例としては、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート、ホウ酸化スルホネート、多重ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート、アルカン酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多重酸(multiacid)の金属塩、並びにこれらの化学的及び物理的な混合物が挙げられる。適切な金属洗剤のその他の非限定的な例としては、金属スルホネート、サリチレート、ホスホネート、チオホスホネート及びこれらの組合せが挙げられる。金属は、スルホネート洗剤、サリチレート洗剤又はホスホネート洗剤を製造するのに適した任意の金属とすることができる。適切な金属の非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ性金属及び遷移金属が挙げられる。幾つかの実施形態において、金属は、Ca、Mg、Ba、K、Na、Li等である。
一般に、洗剤添加剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、10,000ppm未満、1000ppm未満、100ppm未満又は10ppm未満とすることができる。幾つかの実施形態において、洗剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.001重量%から約5重量%までであり、約0.05重量%から約3重量%までであり、又は約0.1重量%から約1重量%までである。幾つかの適切な洗剤が、Mortierら、「Chemistry and Technology of Lubricants」、第2版、London、Springer、第3章、75〜85ページ(1996年)、及びLeslie R.Rudnick、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、New York、Marcel Dekker、第4章、113〜136ページ(2003年)において説明されており、これらの両方を参照により本明細書の記載の一部とする。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、可動部間の摩擦を低減できる、一以上の摩擦調整剤を含有し得る。当業者に公知な任意の摩擦調整剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。適切な摩擦調整剤の非限定的な例としては、脂肪カルボン酸、脂肪カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル、ホウ酸化エステル、アミド、金属塩等)、モノ−、ジ−又はトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸、モノ−、ジ−又はトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸の誘導体(例えば、エステル、アミド、金属塩等)、モノ−、ジ−又はトリ−アルキル置換アミン、モノ−又はジ−アルキル置換アミド、並びにこれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態において、摩擦調整剤の例としては、以下に限定されないが、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸化脂肪エポキシド、脂肪ホスファイト、脂肪エポキシド、脂肪アミン、ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ酸化グリセロールエステル、並びに参照により本明細書の内容の一部とする米国特許第6,372,696号で開示された脂肪イミダゾリン、C4〜C75の、又はC6〜C24の、又はC6〜C20の脂肪酸エステルとアンモニア及びアルカノールアミンからなる群より選択される窒素含有化合物との反応生成物から得られた摩擦調整剤等及びそれらの混合物が挙げられる。摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%までの、約0.05重量%から約5重量%まで、又は約0.1重量%から約3重量%までとすることができる。幾つかの適切な摩擦調整剤が、Mortierら、「Chemistry and Technology of Lubricants」、第2版、London、Springer、第6章、183〜187ページ(1996年)、及びLeslie R.Rudnick、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、New York、Marcel Dekker、第6章及び第7章、171〜222ページ(2003年)において説明されており、これらの両方を参照により本明細書の記載の一部とする。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、摩擦及び過剰な摩耗を低減できる、一以上の摩耗防止剤を含有し得る。当業者に公知な任意の摩耗防止剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。適切な摩耗防止剤の非限定的な例としては、ジチオリン酸亜鉛、ジチオホスフェートの金属(例えば、Pb、Sb、Mo等)塩、ジチオカルバメートの金属(例えば、Zn、Pb、Sb、Mo等)塩、脂肪酸の金属(例えば、Zn、Pb、Sb等)塩、ホウ素化合物、リン酸エステル、ホスファイトエステル、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、ジシクロペンタジエンとチオリン酸との反応生成物、並びにこれらの組合せが挙げられる。摩耗防止剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約5重量%まで、約0.05重量%から約3重量%まで、又は約0.1重量%から約1重量%までとすることができる。幾つかの適切な摩耗防止剤が、参照により本明細書の記載の一部とするLeslie R.Rudnick、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、New York、Marcel Dekker、第8章、223〜258ページ(2003年)において説明されている。
特定の実施形態において、摩耗防止剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート化合物等のジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩であり、又はこれを含む。ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩の金属は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル又は銅とすることができる。幾つかの実施形態において、金属は亜鉛である。他の実施形態において、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩のアルキル基は、約3個から約22個までの炭素原子、約3個から約18個までの炭素原子、約3個から約12個までの炭素原子、又は約3個から約8個までの炭素原子を有する。更なる実施形態において、アルキル基は鎖状又は分岐状である。
本明細書中で開示された潤滑油組成物中での、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート塩を含めるジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩の量は、そのリン含量により測定される。幾つかの実施形態において、本明細書中で開示された潤滑油組成物のリン含量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約0.12重量%までであり、約0.1重量%から約0.10重量%までであり、又は約0.2重量%から約0.8重量%までである。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、オイル中の泡を崩壊させることができる、一以上の発泡防止剤又は消泡防止剤を含有し得る。当業者に公知な任意の発泡防止剤又は消泡剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。適切な発泡防止剤又は消泡防止剤の非限定的な例としては、シリコーン油又はポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、アルコキシ化脂肪族酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、分岐状ポリビニルエーテル、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ポリアルコキシアミン及びこれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態において、発泡防止剤又は消泡防止剤は、グリセロールモノステアレート、ポリグリコールパルミテート、トリアルキルモノチオホスフェート、スルホン化リシノール酸のエステル、ベンゾイルアセトン、メチルサリチレート、グリセロールモノオレエート又はグリセロールジオレエートを含む。発泡防止剤又は消泡防止剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約5重量%まで、約0.05重量%から約3重量%まで、又は約0.1重量%から約1重量%までとすることができる。幾つかの適切な発泡防止剤又は消泡防止剤が、参照により本明細書の記載の一部とするMortierら、「Chemistry and Technology of Lubricants」、第2版、London、Springer、第6章、190〜193ページ(1996年)において説明されている。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、潤滑油組成物の流動点を低下させることができる、一以上の流動点降下剤を含有し得る。当業者に公知な任意の流動点降下剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。適切な流動点降下剤の非限定的な例としては、ポリメタクリラート、アルキルアクリラートポリマー、アルキルメタクリラートポリマー、ジ(テトラ−パラフィンフェノール)フタラート、テトラ−パラフィンフェノールの縮合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合体及びこれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態において、流動点降下剤は、エチレン−ビニルアセタートコポリマー、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合体、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%まで、約0.05重量%から約5重量%まで、又は約0.1重量%から約3重量%までとすることができる。幾つかの適切な流動点降下剤が、Mortierら、「Chemistry and Technology of Lubricants」、第2版、London、Springer、第6章、187〜189ページ(1996年)、及びLeslie R.Rudnick、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、New York、Marcel Dekker、第11章、329〜354ページ(2003年)において説明されており、これらの両方を参照により本明細書の記載の一部とする。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、水又は蒸気に晒されている潤滑油組成物中での油−水分離を促進できる、一以上の解乳化剤を含有し得る。当業者に公知な任意の解乳化剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。適切な解乳化剤の非限定的な例としては、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキル−ナフタレンスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート等)、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドのポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドのブロックコポリマー、プロピレンオキシド等)、油溶性酸のエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、並びにこれらの組合せが挙げられる。解乳化剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%まで、約0.05重量%から約5重量%まで、又は約0.1重量%から約3重量%までとすることができる。幾つかの適切な解乳化剤が、参照により本明細書の記載の一部とするMortierら、「Chemistry and Technology of Lubricants」、第2版、London、Springer、第6章、190〜193ページ(1996年)において説明されている。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、腐食を低減できる、一以上の腐食防止剤を含有し得る。当業者に公知な任意の腐食防止剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。適切な腐食防止剤の非限定的な例としては、ドデシルコハク酸の半エステル又はアミド、リン酸エステル、チオホスフェート、アルキルイミダゾリン、サルコシン及びこれらの組合せが挙げられる。腐食防止剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約5重量%まで、約0.05重量%から約3重量%まで、又は約0.1重量%から約1重量%までとすることができる。幾つかの適切な腐食防止剤が、参照により本明細書の記載の一部とするMortierら、「Chemistry and Technology of Lubricants」、第2版、London、Springer、第6章、193〜196ページ(1996年)において説明されている。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、極圧の条件下で滑り合う金属表面の焼付きを阻止できる、一以上の極圧(EP)剤を含有し得る。当業者に公知な任意の極圧剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。一般に、極圧剤は、金属と化学的に結合して、高荷重下における向き合う金属表面の凹凸部の溶着を阻止する表面フィルムを形成することができる化合物である。適切な極圧剤の非限定的な例としては、硫化された動物性又は植物性の油脂、硫化された動物性又は植物性の脂肪酸エステル、完全に又は部分的にエステル化されたリンの三価酸又は五価酸のエステル、硫化されたオレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化されたディールスアルダー付加体、硫化されたジシクロペンタジエン、硫化された又は共硫化された脂肪酸エステルと一不飽和オレフィンとの混合物、共硫化された脂肪酸のブレンド、脂肪酸エステル及びα−オレフィン、官能基置換されたジヒドロカルビルポリスルフィド、チア−アルデヒド、チア−ケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、共硫化されたテルペンと非環状オレフィンとのブレンド、及びポリスルフィドオレフィン生成物、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、並びにこれらの組合せが挙げられる。極圧剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約5重量%まで、約0.05重量%から約3重量%まで、又は約0.1重量%から約1重量%までとすることができる。幾つかの適切な極圧剤が、参照により本明細書の記載の一部とするLeslie R.Rudnick、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、New York、Marcel Dekker、第8章、223〜258ページ(2003年)において説明されている。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、鉄含有金属表面の腐食を阻止することができる、一以上の錆止め剤を含有し得る。当業者に公知な任意の錆止め剤が、潤滑油組成物中に使用することができる。適切な錆止め剤の非限定的な例としては、非イオン性ポリオキシアルキレン作用剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート及びポリエチレングリコールモノオレエート、ステアリン酸及びその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石けん、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、リン酸エステル、(短鎖)アルケニルコハク酸、これらの部分エステル及びこれらの窒素含有誘導体、合成アルカリールスルホネート、例えば金属ジノニルナフタレンスルホネート、等及びそれらの混合物が挙げられる。錆止め剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%まで、約0.05重量%から約5重量%まで、又は約0.1重量%から約3重量%までの範囲で変動し得る。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、一以上の多機能性添加剤を含有し得る。適切な多機能性添加剤の非限定的な例としては、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデン有機ホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯体化合物及び硫黄含有モリブデン錯体化合物が挙げられる。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、一以上の粘度指数向上剤を含有し得る。適切な粘度指数向上剤の非限定的な例としては、ポリメタクリレート系ポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、水和したスチレン−イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン及び分散剤型粘度指数向上剤が挙げられる。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、一以上の金属不活性化剤を含有し得る。適切な金属不活性化剤の非限定的な例としては、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体及びメルカプトベンゾイミダゾールが挙げられる。
所望ならば、潤滑剤用添加剤は、例えば鉱物油、ナフサ、ベンゼン、トルエン又はキシレン等の実質的に不活性で通常液体状の有機希釈剤中に添加剤が配合されていて添加剤濃縮物を形成している、添加剤パッケージ又は濃縮物として提供することもできる。これらの濃縮物は通常、約20重量%から約80重量%までのこのような希釈剤を含有する。典型的には、100℃において約4cStから約8.5cStまでの、好ましくは100℃において約4cStから約6cStまでの粘度を有する中性油が希釈剤として使用されるが、合成油も、添加剤及び仕上げ済み潤滑油に相溶性の他の有機液体も、同様に使用することができる。添加剤パッケージには、典型的には、上記で言及した一以上の様々な添加剤を所望の量及び比で含有せしめ、潤滑粘度の必要量のオイルと直接組み合わせるのを容易にする。
本発明において、合計潤滑油組成物の硫酸化灰分含量は、ASTM D874−07に従って測定して、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満又は1重量%未満である。
本明細書中で開示された潤滑油組成物は、モーターオイル(又はエンジンオイル又はクランクケースオイル)、トランクピストンエンジンオイル、船舶用オイル、トランスミッションフルード、ギアオイル、パワーステアリングフルード、衝撃吸収液、ブレーキフルード、作動液及び/又はグリースとしての使用に適し得る。
一実施形態において、本明細書中で開示された潤滑油組成物は、モーターオイル又はエンジンオイルである。このようなモーターオイル組成物は、任意のレシプロ型内燃機関、レシプロ型圧縮機、及びクランクケース設計の蒸気機関におけるすべての主要な可動部を潤滑するために使用することができる。自動車用途において、モーターオイル組成物はまた、熱くなっているエンジン部品を冷却するため、錆及び堆積物が無い状態にエンジンを保つため、並びにリング及びバルブを封止して燃焼ガスの漏出を防ぐために使用することもできる。モーターオイル組成物は、ベースオイル、本明細書中で開示された硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩、及び一以上の任意選択による添加剤を含み得る。
一実施形態において、本明細書中で開示された潤滑油組成物は、自動車用途又は工業用途のいずれかのためのギアオイルである。ギアオイル組成物は、ギア、リアアクスル、自動車用変速機、ファイナルドライブアクスル、農業用及び建築用の機器内の付属機器、ギアハウジング及び密閉型チェーンドライブを潤滑するために使用することができる。ギアオイル組成物は、ベースオイル、本明細書中で開示された硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩、及び一以上の任意選択による添加剤を含み得る。
一実施形態において、本明細書中で開示された潤滑油組成物は、トランスミッションフルードである。トランスミッションフルード組成物は、伝達損失を低減するために、自動車用変速機又は手動変速機のいずれかの中に使用することができる。トランスミッションフルード組成物は、ベースオイル、本明細書中で開示された硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩、及び一以上の任意選択による添加剤を含み得る。
一実施形態において、本明細書中で開示された潤滑油組成物は、長期的な潤滑が必要とされ、かつ、オイルが例えば縦シャフトに保持されないような様々な用途に使用されるグリースである。グリース組成物は、ベースオイル、本明細書中で開示された硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩、一以上の任意選択による添加剤及び増粘剤を含み得る。
下記の非限定的な例は、本発明を説明するためのものである。
本明細書において開示されており以下に例示する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩、並びに硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を含有する潤滑剤及びオイル添加剤中における、遊離した未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の濃度を、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により求める。HPLC法においては、80mgから120mgまでの試料を10mlメスフラスコ中に正確に量り取り、塩化メチレンによってレベルマークまで希釈し、試料が完全に溶解されるまで混合することにより、試料を分析用に調製した。
HPLC法に使用したHPLCシステムは、HPLCポンプ、サーモスタット付きHPLCカラムコンパートメント、HPLC蛍光検出器及びPCベース型クロマトグラフィーデータ取得システムを備えていた。説明する具体的なシステムは、ChemStationソフトウェア付きのAgilent 1200 HPLCに基づくものである。HPLCカラムは、Phenomenex Luna C8(2)150×4.6mm 5μm 100Å、P/N 00F4249E0だった。
下記のシステム設定が、分析を実施するのに用いられた。
ポンプ流量=1.0ml/分
最大圧力=200バール
蛍光波長:225励起 313発光:ゲイン=9
カラムサーモスタット温度=25℃
注入サイズ=1μLの希釈済み試料
溶離方式:グラジエント、逆相
グラジエント:0〜7分 85/15メタノール/水から100%メタノールに切り替わっていく直線的グラジエント。
運転時間:17分
得られるクロマトグラフには幾つかのピークが含まれるのが典型的である。これらの条件下では遊離した未硫化ヒドロキシ芳香族化合物に転化する、遊離した未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩によるピークは、早い保持時間で一緒に溶出するが、アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の硫化塩によるピークは、典型的には、より長い保持時間で溶出する。定量のためには、遊離した未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩に関する単一の最大のピークの面積を測定した後、この面積を、遊離した未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物種及びその未硫化金属塩種の合計濃度を決定するために使用した。前提は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のスペシエーション(speciation)は変化しないことであるが、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物のスペシエーションを変化させる何かがあるとすれば、再較正が必要である。
選択したピークの面積を較正曲線と比較して、遊離したアルキルフェノール及び遊離したアルキルフェノールの未硫化塩の重量%を得る。較正曲線は、フェナート生成物を作製するために用いられた遊離した未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物に関して得られたクロマトグラフ中の同じピークを用いて製作した。
(例1)
マンニッヒ後処理された硫化カルシウムフェネート組成物の調製。
約8重量%のTPP含量を有する10gの過塩基性硫化カルシウムフェネート組成物(Chevron Oronite Company LLCから市販)を約80℃に加熱し、100ml二ツ口丸底フラスコに移した。フラスコ中の温度を約80℃に維持しつつ、5mlのトルエン溶媒(おおよそ50重量%当量のフェネート装入量)を組成物に加えた。溶媒を加えた直後に、(残存のTPPのモル当量に基づいて)5モル当量のパラホルムアルデヒドを加え、次いで混合物を10分間80℃に保持した。次に、(残存のTPPのモル当量に基づいて)5モル当量のジエチルアミンを次いでゆっくりと加え、反応条件を80℃の温度において4時間の反応時間の間維持した。反応時間の終了時に、溶媒を真空下で蒸留した。蒸留した生成物は、0.53重量%の残存合計TPP含量を有しており、93.38%の低下をもたらした。
(例2〜14並びに比較例A及びB)
以下の表1に記載された反応物質及び反応条件を用いた例1と実質的に同じ方法により、下記の例を繰り返した。例5においては、最初に過塩基性硫化カルシウムフェネート組成物を1モル当量の酢酸によってクエンチした後、マンニッヒ試薬を加えた。下記の例に関しては、ホルムアルデヒドの供給源はパラホルムアルデヒドであり、原料硫化カルシウムフェネート組成物は、約8.0重量%のTPP含量を有する過塩基性硫化カルシウムフェネート組成物だった。
(例15〜25及び比較例C〜E)
以下の表2に記載された反応物質及び反応条件を用いた以外は例1と実質的に同じ方法により下記の例を繰り返した。下記の例に関しては、ホルムアルデヒドの供給源はパラホルムアルデヒド(PF)又はホルマリン(F)のいずれかであり、原料硫化カルシウムフェネート組成物は約5.5重量%のTPP含量を有する過塩基性硫化カルシウムフェネート組成物だった。
(例26〜29)
表3に記載された反応物質及び反応条件を用いた以外は例1と実質的に同じ方法により下記の例を繰り返した。各例に関しては、ホルムアルデヒドの供給源はパラホルムアルデヒドであり、原料硫化カルシウムフェネート組成物は過塩基性ではなく、約2.8重量%のTPP含量を有していた。
(例30)
マンニッヒ後処理されたテトラプロペニルアルキルフェノールの調製
マグネチックスターラー、凝縮器及び窒素導入口を取り付けた1リットル三ツ口丸底フラスコ中の150gのテトラプロペニルフェノール(TPP)に、500mlの無水ベンゼンを加えた。溶液を窒素雰囲気下で周囲温度において激しく撹拌し、パラホルムアルデヒド(19.55g、1.2等量)を加えた後、5分間かけてジエチルアミン(67.9ml、1.2等量)を添加した。反応混合物を4時間かけて80℃に加熱し、次いで周囲温度に冷却した。次いで酢酸エチル(500ml)を加え、反応混合物を3×200mlの1N HClで洗浄し、MgSO4によって脱水し、溶媒を減圧下で除去した。
粗生成物は、フラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製した:1H NMR δ0.2−1.9(m、31.9H、CH3、CH2)、δ2.51(t、4.0H、CH2)、δ3.7(s、2.0H、CH2−N)、δ6.5−7.3(m、3.0H、芳香族CH)。
試験
この検討の目的は、例30のマンニッヒ後処理されたテトラプロペニルアルキルフェノールの、天然エストロゲンのアゴニズムと矛盾しない生物活性を発揮又は模倣する能力を評価することであった。
手順
OECDガイドライン第440番、GLPに関するOECD原則、及び米国EPA GLP基準(40CFR、第160部及び第792部)に従って、例30のマンニッヒ後処理されたテトラプロペニルアルキルフェノールを、卵巣切除した6匹の雌Crl:CD(SD)ラットの試験群に対して、3連続日にわたって1日1回、75mg/kg/day、250mg/kg/day、500mg/kg/day及び1000mg/kg/dayで、強制栄養により経口投与した。陽性対照群(0.2mg/kg/dayの17α−エチニルエストラジオール)及びビヒクル対照群(コーン油)も試験した。動物は、最後の用量の投与からおおよそ24時間後に二酸化炭素吸入により安楽死させ、子宮の肉眼検査を実施し、子宮重量(湿潤及び吸着後)を記録した。
結果:
体重
処置期間にわたってのビヒクル対照動物における平均体重増加に比較して顕著な(p<0.05又はp<0.1)平均体重減少が、例30のマンニッヒ後処理されたテトラプロペニルアルキルフェノールによって処置した動物(250mg/kg/day処置群、500mg/kg/day処置群及び1000mg/kg/day処置群)及び陽性対照動物(0.2mg/kg/dayエストラジオール)において認められた。
子宮重量
図1に示したように、ビヒクル対照群に比較した4つの処置群(75mg/kg/day、250mg/kg/day、500mg/kg/day及び1000mg/kg/day)のいずれにおける平均の吸着後子宮重量又は湿潤子宮重量にも、顕著な差異がなかった。陽性対照群における平均の吸着後子宮重量と湿潤子宮重量は両方とも、ビヒクル対照群に比較して顕著に増大した(p<0.01)。TPPは、典型的には、用量に応じた子宮重量の増大(75mg/kg/day、125mg/kg/day、250mg/kg/day及び500mg/kg/dayにおいてそれぞれ1倍、2倍、3倍及び7倍)を起こすと考えられている。
結論
OECDガイドライン第440番(子宮栄養アッセイ)は、ビヒクル対照と比較したときに子宮重量の統計的増大(p<0.05)があるならば、試験を陽性とみなすべきだと指摘している。このガイダンスに基づくと、データは、例30のマンニッヒ後処理されたテトラプロペニルアルキルフェノールが、子宮栄養アッセイにおける天然エストロゲンのアゴニストと矛盾しない生物活性を発揮又は模倣するようには見えないことを示唆している。
(例31)
マンニッヒ後処理された硫化カルシウムフェネート組成物の調製。
5.5重量%の合計TPP含量を有する418.6グラムの過塩基性硫化カルシウムフェネート組成物(Chevron Oronite Company LLCから市販)を含む反応器を100℃の反応温度に加熱し、12.6グラムの固体パラ−ホルムアルデヒドを加えた。この混合物を5分間撹拌し、次いで30.5グラムのジ−エチルアミンを3分かけて加えた。この反応混合物を5時間100℃に保持した。反応物を真空(250mmHg)下に置いてストリップし、130℃に加熱して30分間そこに保持した。真空を窒素によって解除し、反応物をおおよそ100℃まで冷却し、反応器の内容物を単離して、431.6グラムの粗生成物を得た。粗生成物の一部(214.9グラム)を、濾過助剤(セライト)を用いて濾過して、次の特性を有する187.7グラムの最終生成物を得た:TBN=260、重量%合計TPP=0.3、重量%Ca=9.2、重量%硫黄=3.2、重量%CO2=4.78、体積%沈降物=0.01、重量%窒素=0.35、ASTM D445−88により測定した粘度=504cSt(100℃)。
反応温度を80℃から130℃の間で変化させ、保持時間を3.5時間から6時間の間で変化させ、ストリッピング温度を110℃から130℃の間で変化させ、且つストリッピング真空を250mmHgから350Hgの間で変化させた以外は前記の反応を繰り返し、389cSt(110℃)から538cSt(100℃)までの範囲の粘度を有する濾過後最終生成物を得た。
様々な変更が本明細書中で開示された実施形態になされ得ることは理解されよう。したがって、上記の説明は、限定を加えるものと解釈すべきではなく、単に好ましい実施形態の例証と解釈すべきである。例えば、上に記載され、本発明を運用するための最良の形態として実施された作用は、説明目的のためのものにすぎない。他の構成及び方法は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者により実施できる。更に、当業者ならば、本明細書に添付された請求項の範囲及び趣旨の中の他の変更を想到する。
様々な変更が本明細書中で開示された実施形態になされ得ることは理解されよう。したがって、上記の説明は、限定を加えるものと解釈すべきではなく、単に好ましい実施形態の例証と解釈すべきである。例えば、上に記載され、本発明を運用するための最良の形態として実施された作用は、説明目的のためのものにすぎない。他の構成及び方法は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者により実施できる。更に、当業者ならば、本明細書に添付された請求項の範囲及び趣旨の中の他の変更を想到する。
本発明に包含されうる諸態様は、以下のとおりである。
[1].
(a)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC 9 〜C 18 オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩、(b)アルデヒドの供給源、並びに(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の反応生成物である、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩。
[2].
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩が、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩である、上記[1]項に記載の硫化アルキルヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩。
[3].
a)未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩を含有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩であって、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC 9 〜C 18 オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を得ること、並びに、
(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物とを、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約70%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で、反応させること
を含む方法により調製された、上記[1]又は[2]項に記載の硫化アルキルヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩。
[4].
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、合算質量で少なくとも約80%未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が低減された、上記[1]乃至[3]項のいずれか一項に記載の硫化アルキルヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩。
[5].
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約90%低減された、上記[1]乃至[3]項のいずれか一項に記載の硫化アルキルヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩。
[6].
未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を調製するための方法であって、
(a)未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩を含有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩であって、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC 9 〜C 18 オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を得るステップ、並びに、
(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩と、有効量のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物とを、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約70%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を得るのに十分な反応条件下で反応させるステップ
を含む方法。
[7].
ステップ(a)において得られた硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩が、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩である上記[6]項に記載の方法。
[8].
アルデヒドの有効量が、ステップ(a)において得られた硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の当量当たり約1モル当量から約10モル当量までであり、モノアミン化合物の有効量が、ステップ(a)において得られた硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の当量当たり約1モル当量から約10モル当量までである、上記[6]又は[7]項に記載の方法。
[9].
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩が、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約80%低減された、上記[6]乃至[8]項のいずれか一項に記載の方法。
[10].
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩が、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも約90%低減された、上記[6]乃至[8]項のいずれか一項に記載の方法。
[11].
(a)潤滑油組成物中最大量の潤滑粘度のオイル、及び(b)上記[1]乃至[5]項のいずれか一項に記載の少なくとも一の硫化アルキルヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を含む、潤滑油組成物。
[12].
少なくとも一の硫化アルキルヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩が、潤滑油組成物の合計重量に基づいて約0.01重量%から約10重量%までの量で存在する、上記[11]項に記載の潤滑油組成物。
[13].
抗酸化剤、摩耗防止剤、洗剤、錆止め剤、曇り除去剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ相溶化剤、腐食防止剤、無灰分散剤、染料、極圧剤及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一の添加剤を更に含む、上記[11]又は[12]項に記載の潤滑油組成物。
[14].
上記[11]乃至[13]項のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を用いてエンジンを稼働させることを含む、エンジンを潤滑するための方法。
[15].
上記[1]乃至[5]項のいずれか一項に記載の少なくとも一の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩を、潤滑油組成物中最大量の潤滑粘度のオイルを含む潤滑油組成物に加えることを含む、哺乳類への曝露の際の潤滑油組成物の内分泌撹乱特性を低減するための方法。