JP2009132719A - アルキルフェノール含有量の少ない硫化金属アルキルフェネート組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルキルフェノール含有量の少ない硫化金属アルキルフェネート組成物を提供する。
【解決手段】アルキルフェノール含量の少ない硫化金属アルキルフェネート組成物を提供する。本発明の硫化金属アルキルフェネート組成物は、(I)式のフェノール化合物をアルデヒドと反応させて(II)式のフェノール樹脂とし、次にフェノール樹脂を金属塩基および第一硫化剤と同時に反応させることにより製造することができる。開示の硫化金属アルキルフェネート組成物および過塩基性硫化金属アルキルフェネート組成物は、潤滑油組成物を配合するのに清浄剤として使用することができる。本発明の潤滑油組成物は、遊離フェノール化合物及びその塩の含有量が少ない。
【選択図】なし

Description

アルキルフェノール含有量の少ない硫化金属アルキルフェネート組成物、およびそのような硫化金属アルキルフェネート組成物の製造方法を提供する。本明細書に開示する硫化金属アルキルフェネート組成物は、潤滑油組成物を配合するための清浄剤として使用することができる。
潤滑油添加剤産業では一般に、硫化金属アルキルフェネートを含む清浄剤を製造するのに、アルキルフェノール類(例えば、テトラプロペニルフェノール:TPP)を使用している。硫化金属アルキルフェネート類は、船舶、自動車、鉄道及び空冷エンジン用の潤滑油の添加剤として40年以上も使用されている。一般に、硫化金属アルキルフェネート、並びに硫化金属アルキルフェネート類のうちの一種以上を含む潤滑油には、テトラプロペニルフェノール(TPP)のような未反応アルキルフェノール類が多少なりとも存在する。
米国化学工業協会の石油添加剤委員会が後援しているラット類の生殖毒性の最近の研究では、遊離又は未反応TPPがオス及びメス生殖器官に悪影響を生じうることを明らかにしている。さらに、TPPは皮膚を腐食したり、炎症を起こしうると思われる。
一般に、硫化金属アルキルフェネートは、(1)アルキルフェノール(例えば、TPP)を、グリコール促進剤の存在下で塩基(例えば、水酸化カルシウム)で中和して、金属アルキルフェネート(例えば、アルキルカルシウムフェネート)とする工程、(2)金属アルキルフェネートを硫黄で硫化し、金属アルキルフェネートの芳香環を架橋して、硫化金属アルキルフェネートとする工程、そして(3)架橋した硫化金属アルキルフェネートを二酸化炭素で過塩基化して、生成物の全塩基価(TBN)を高める工程からなる方法で製造することができる。しかし、そのような方法で製造された硫化金属アルキルフェネートによっては、未反応アルキルフェノール(例えば、TPP)を高レベルで含むことがある。
潜在的な消費者の健康リスクが如何なるものであれ、それを減らすためには、また潜在的な規制問題を避けるためには、硫化金属アルキルフェネート中の遊離アルキルフェノールの量を低減させる必要がある。また、遊離アルキルフェノール含有量の少ない新規な潤滑油清浄剤の要望もある。さらに、硫黄分の少ない新規な潤滑油清浄剤の要望もある。
本明細書で提供するのは、アルキルフェノール含有量の少ない硫化金属アルキルフェネート組成物の製造方法である。一つの態様では、下記の工程を含む硫化金属アルキルフェネート組成物の製造方法を提供する:
(a)(I)式のフェノール化合物を、
Figure 2009132719
(式中、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)
触媒の存在下で式:R2−CHOを有するアルデヒドと反応させて、(II)式のフェノール樹脂とする工程、そして、
Figure 2009132719
(b)フェノール樹脂を少なくとも一種の金属塩基および第一の硫化剤と同時に反応させて、硫化金属アルキルフェネートとする工程。
ただし、上記式において、mは、1〜50の整数であり、R1は、上に定義した通りであり、そしてR2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである。
態様によっては、本明細書に開示する方法は更に、工程(b)の生成物を二酸化炭素と反応させる工程を含む。別の態様では、二酸化炭素との反応をエチレングリコールの存在下で行なう。
態様によっては、R1はアルキルである。ある態様では、R1は、炭素原子数8〜100、又は炭素原子数8〜50、又は炭素原子数10〜30のアルキルである。更なる態様では、R1はフェノール環の4位にあるC1225又はドデシルである。別の態様では、R2はHである。
ある態様では、少なくとも一種の金属塩基は水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムである。態様によっては、第一の硫化剤は硫黄である。別の態様では、触媒は酸である。
態様によっては、本明細書に開示する硫化金属アルキルフェネート組成物は、下記(III)−(VI)式のうちの少なくとも一種類を含有している。
Figure 2009132719
上記式中、Ma 1+およびMc 1+の各々は独立に、一価金属イオンであり、Mb 2+およびMd 2+の各々は独立に、二価金属イオンであり、m、n、p、q、r、sおよびtの各々は独立に、1〜50の整数であり、xは、0〜2の整数であり、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルであり、そしてR2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである。
ある態様では、nは1〜10である。態様によっては、nは1〜3である。別の態様では、nは1である。更なる態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物は、(IV)式および(VI)式(ただし、Mb 2+およびMd 2+の各々は独立にアルカリ土類金属イオンである)のうちの少なくとも一種類を含有している。更なる態様では、アルカリ土類金属イオンはカルシウムイオンである。態様によっては、m、p、q、r、sおよびtの各々は独立に、約1〜約10、約1〜約5、又は約1〜約3である。別の態様では、(III)、(IV)、(V)又は(VI)式のxは0である。更なる態様では、(III)、(IV)、(V)又は(VI)式のxは1である。それ以上の態様では、(III)、(IV)、(V)又は(VI)式のxは1であり、そしてnは0である。
態様によっては、R1はフェノール環の4位にあるC1225アルキル基であり、そしてR2はHである。更なる態様では、r、sおよびtの各々は1である。態様によっては、m、pおよびqの各々は1である。
ある態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物は、(I)式の未反応フェノール化合物、その金属塩又はそれらの組合せを含み、かつ未反応フェノール化合物及びその金属塩の総量は、硫化金属アルキルフェネート組成物の全質量に基づき約5質量%未満である。
態様によっては、本明細書に開示する方法は更に、硫化金属アルキルフェネート組成物を第二の硫化剤と反応させて、(I)式の未反応フェノール化合物及びその金属塩の総量を、硫化金属アルキルフェネート組成物の全質量に基づき約2.0質量%未満に低減させる工程を含む。更なる態様では、第二の硫化剤は硫黄である。
ある態様では、本明細書に開示する方法は更に、硫化金属アルキルフェネート組成物を二酸化炭素と接触させる過塩基化工程を含んでいる。
別の態様として本発明で提供するのは、本明細書に開示する方法により製造された硫化金属アルキルフェネート組成物、もしくは過塩基性硫化金属アルキルフェネート組成物である。
別の態様として本発明で提供するのは、基油および本明細書に開示する硫化金属アルキルフェネート組成物を含む潤滑油組成物である。態様によっては、潤滑油組成物は更に、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、清浄剤、さび止め添加剤、抗乳化剤、摩擦緩和剤、多機能添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、金属不活性化剤、分散剤、腐食防止剤、潤滑性向上剤、熱安定性向上剤、防曇剤、氷結防止剤、染料、マーカー、静電放散剤、殺生剤およびそれらの組合せからなる群より選ばれた少なくとも一種の添加剤を含んでいる。更なる態様では、基油は主要量で存在する。
別の態様として、本発明で提供するのは、基油および本明細書に開示する過塩基性硫化金属アルキルフェネート組成物を含む潤滑油組成物である。態様によっては、潤滑油組成物は更に、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、清浄剤、さび止め添加剤、抗乳化剤、摩擦緩和剤、多機能添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、金属不活性化剤、分散剤、腐食防止剤、潤滑性向上剤、熱安定性向上剤、防曇剤、氷結防止剤、染料、マーカー、静電放散剤、殺生剤およびそれらの組合せからなる群より選ばれた少なくとも一種の添加剤を含んでいる。
アルキルフェノール含量の少ない硫化金属アルキルフェネート組成物、およびそのような硫化金属アルキルフェネート組成物の製造方法を提供する。本明細書に開示する硫化金属アルキルフェネート組成物は、潤滑油組成物を配合する清浄剤として使用することができる。本明細書に開示する潤滑油組成物は、モーター油(またはエンジン油またはクランクケース油)、変速機液、ギヤ油、パワー・ステアリング液、ショックアブソーバ液、ブレーキ液、油圧作動液および/またはグリースとして使用するのに適していると言うことができる。
[定義]
本明細書に開示する内容の理解を容易にするために、本明細書で使用する多数の用語、略語または他の省略表現について、以下に定義する。定義していない用語、略語または省略表現については如何なるものであれ、本出願の出願時における当該分野の熟練者が使用している通常の意味を有すると解釈されるべきである。
「主要量」の基油は、基油の量が潤滑油組成物のうちの少なくとも40質量%であることを意味する。ある態様では「主要量」の基油は、潤滑油組成物の50質量%より多い、60質量%より多い、70質量%より多い、80質量%より多い、又は90質量%より多い量の基油を意味する。
「硫酸灰分」は、潤滑油中の金属含有添加剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、モリブデン、亜鉛等)の量を意味し、一般にASTM D874によって測定でき、それも参照内容として本明細書の記載とする。
「アルデヒド」は、少なくとも1個の−CHO基を持つ有機化合物を意味する。アルデヒドの制限的でない例は、式:R−CHO(式中、RはH、炭化水素基(例えば、アルキル、アリールアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキニルまたはアルキルアリール)、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールである)を有する。アルデヒドの別の制限的でない例は、式:OHC−R’−CHO(式中、R’は結合、アルキレンまたはアリーレンである)を有するジアルデヒド類である。
化合物または化学部分を説明するために使用する「置換」は、その化合物または化学部分の少なくとも1個の水素原子が、第二の化学部分で置き換えられていることを意味する。第二の化学部分は、所望する化合物活性に悪い影響を及ぼさない所望の任意の置換基であってよい。置換基の例としては、本明細書に開示する例示化合物や態様に見い出されるもの、並びにハロゲン;アルキル;ヘテロアルキル;アルケニル;アルキニル;アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシル;アルコキシル;アミノ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナト;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;オキソ;ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル);炭素環シクロアルキル、単環でも縮合又は非縮合多環でもよい(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)、またはヘテロシクロアルキル、単環でも縮合又は非縮合多環でもよい(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルまたはチアジニル);炭素環又は複素環で単環又は縮合又は非縮合多環のアリール(例えば、フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニルまたはベンゾフラニル);アミノ(第一級、第二級または第三級);o−低級アルキル;o−アリール、アリール;アリール−低級アルキル;−CO2CH3;−CONH2;−OCH2CONH2;−NH2;−SO2NH2;−OCHF2;−CF3;−OCF3;−NH(アルキル);−N(アルキル)2;−NH(アリール);−N(アルキル)(アリール);−N(アリール)2;−CHO;−CO(アルキル);−CO(アリール);−CO2(アルキル);および−CO2(アリール)があり、そしてそのような部分は任意に、縮合環構造または橋、例えば−OCH2O−で置換されていてもよい。これらの置換基は任意に、更にそのような基から選ばれた置換基で置換されていてもよい。本明細書に開示する化学基は全て、特に断らない限り置換されていてよい。
以下の記述において開示する数値は全て、それに関連して「約」又は「およそ」が用いられているか否かにかかわらず、おおよその値である。数値は1パーセント、2パーセント、5パーセント、又はときには10乃至20パーセントも変わることがある。下限RLと上限RUで数値範囲を開示するときは常に、該範囲内の如何なる数値も明確に開示している。特に、下記の範囲内の数値を明確に開示している:R=RL+k*(RU−RL)、ただし、kは1パーセント乃至100パーセントの範囲で1パーセントずつ増加する変数である、すなわち、kは1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、・・・50パーセント、51パーセント、52パーセント、・・・95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、又は100パーセントである。さらに、上に定義したように二つの数値Rで定義した如何なる数値範囲も明示している。
本発明の態様は、アルキルフェノール含有量の少ない硫化金属アルキルフェネート組成物の製造方法を提供する。一つの態様では、下記の工程を含む硫化金属アルキルフェネート組成物の製造方法を提供する:
(a)(I)式のフェノール化合物を、
Figure 2009132719
(式中、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)
触媒の存在下で式:R2−CHOを有するアルデヒドと反応させて、(II)式のフェノール樹脂とする工程、そして、
Figure 2009132719
(b)フェノール樹脂を、少なくとも一種の金属塩基および第一の硫化剤と同時に反応させて、硫化金属アルキルフェネートとする工程。
ただし、上記の各式において、mは、1〜50の整数であり、R1は、上に定義した通りであり、そしてR2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである。ある態様では、R1はアルキルである。ある態様では、R1は、炭素原子数8〜100、又は炭素原子数8〜50、又は炭素原子数10〜30のアルキルである。更なる態様では、R1はフェノール環の4位にあるC1225又はドデシルである。別の態様では、R2はHである。
ある態様では、アルデヒドR2−CHOと(I)式のフェノール化合物とのモル比は、約1:1乃至約0.1:1、0.9:1未満乃至約0.1:1、0.89:1乃至約0.1:1、約0.85:1乃至約0.1:1、約0.7:1乃至約0.1:1、約0.7:1乃至約0.2:1、約0.1:1乃至約2:1、約0.2:1乃至約0.4:1、又は約0.5:1乃至約0.2:1である。
アルデヒドR2−CHOと(I)式のフェノール化合物とのモル比が、ホルムアルデヒドとフェノールそれぞれの当量モルで規定していることに充分留意されるべきである。当該分野の熟練者であれば、トリオキサン1モルはホルムアルデヒド3モルに等しいことが理解できる。従って、トリオキサンを用いるなら、開示したアルデヒドとフェノールのモル比を3の倍数で減じるべきである。
ある態様では、(I)式のフェノール化合物をアルデヒドR2−CHOの不足した状態で(すなわち、アルデヒドと(I)式のフェノール化合物のモル比は1未満である)、しばしば酸触媒を存在させて加熱することにより、(II)式のフェノール樹脂を製造することができる。そのような条件で得られたフェノール樹脂は一般に、追加のアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体(例えば、ヘキサメチレンテトラアミン)のような反応性物質を加えなければ、それだけで更に縮合することはない。あるいは、フェノール化合物をアルデヒドの不足した状態で、塩基性触媒を存在させて反応させることにより、(II)式のフェノール樹脂を製造することができる。
一般に、ここに開示するフェノール樹脂は架橋されていない。従って、製造過程で架橋および/またはゲル化を防ぐためには、フェノール化合物に対するアルデヒドのモル比は約1未満であることが望ましい。ある態様では、アルデヒドとフェノール化合物とのモル比は、1:1未満、0.9:1未満、0.85:1未満、0.8:1未満、0.75:1未満、0.7:1未満、0.65:1未満、0.6:1未満、0.65:1未満、0.6:1未満、0.55:1未満、0.5:1未満、0.45:1未満、0.4:1未満、0.35:1未満、0.3:1未満、0.25:1未満、又は0.2:1未満である。
ある態様では、ここに開示するフェノール樹脂の数平均分子量(Mn)は、約125乃約5000ダルトンの範囲にある。ある態様では、ここに開示するフェノール樹脂のガラス転移温度は、約45℃乃至約100℃の範囲を示す。別の態様におけるMnは、約125から約800ダルトンの間、または約800から約1500ダルトンの間にある。
ここに開示するフェノール樹脂の一態様について、下記図式Aで説明する、ただし、mは、1〜50の整数であり、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルであり、そしてR2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである。
Figure 2009132719
ある態様では、アルデヒドR2−CHOはホルムアルデヒドである、すなわちR2はHであるか、あるいはトリオキサンおよびパラホルムアルデヒドのようなホルムアルデヒド源である。ある態様では(I)式のフェノール化合物はテトラプロペニルフェノール、すなわちR1はC1225である。ある態様ではテトラプロペニルフェノールは、TPP異性体の混合物、例えばp−ドデシルフェノールとm−ドデシルフェノールとo−ドデシルフェノールの混合物からなる。更なる態様では、アルデヒドはHCHOまたはHCHO源であり、フェノール化合物はテトラプロペニルフェノールである。ここに開示するフェノール樹脂の一態様について、下記図式Bで説明する、ただし、mは、1〜50の整数である。
Figure 2009132719
ある態様では触媒は、酸触媒である。酸触媒は、無機酸でも、有機酸でも、あるいはそれらの組合せでもよい。好適な無機酸の制限的でない例としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、およびそれらの組合せが挙げられる。上記の酸は全て、アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)社などの供給者から商業的に得ることができる。
好適な有機酸の制限的でない例としては、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、4−ニトロ安息香酸、p−トルエンスルホン酸(PTSA)、4−(トリフルオロメチル)安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼン−1,3−ジスルホン酸、ベンゼン−1,4−ジスルホン酸、キシレンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、およびそれらの組合せを挙げることができる。ある態様では酸触媒は、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ベンゼン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼン−1,3−ジスルホン酸、ベンゼン−1,4−ジスルホン酸、C20−C40アルキルベンゼンスルホン酸およびトルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、キシレンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸およびそれらの組合せからなる群より選ばれる。別の態様では酸触媒は、アルキルベンゼンスルホン酸類のうちの一種類以上である。更なる態様では酸触媒は、C20−C40アルキルベンゼンスルホン酸である。
ある態様では酸触媒は、フェノール化合物とアルデヒドとの反応に触媒として作用する程度に充分に酸性である。ある態様では使用する好適な有機酸の量は、フェノール化合物の全質量に基づき約0.01モルパーセント乃至約1モルパーセント、約0.01モルパーセント乃至約0.5モルパーセント、約0.02モルパーセント乃至約0.1モルパーセント、又は約0.03モルパーセント乃至約0.05モルパーセントである。
ある態様では、ここに開示するフェノール樹脂は、反応後実質的に架橋されていない。「実質的に架橋されていない」とは、架橋度が10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約3%未満、又は更に好ましくは約1%未満であることを意味する。樹脂の架橋度は、樹脂中のゲル(すなわち、選んだ溶媒中での不溶部分)の質量パーセントを意味する。
ある態様では、ここに開示するフェノール樹脂製造のためのフェノール化合物として、これらに限定されるものではないが、ヒドロキシル基が少なくとも1個結合した芳香核を持つ単核フェノール化合物が挙げられる。好適な単核化合物の制限的でない例としては、フェノールの誘導体、例えばo−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3−エチルフェノール、3,5−ジエチルフェノール、p−ブチルフェノール、3,5−ジブチルフェノール、p−アミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、デシルフェノール、テトラプロペニルフェノール(TPP)、スチリルフェノール、3,5−ジシクロヘキシルフェノール、p−クロチルフェノール、およびそれらの組合せを挙げることができる。ある態様ではフェノールの誘導体として、C8−C100、C8−C50、C10−C30又はC12のアルキルフェノール化合物、例えばテトラプロペニルフェノール(TPP)が挙げられる。ある態様では、フェノールをC12分枝鎖プロピレン四量体でアルキル化して、テトラプロペニルフェノール(TPP)を製造する。別の態様では、好適な単核フェノール化合物として、分枝及び線状アルキルフェノール化合物の混合物が挙げられる。
ある態様では、少なくとも二種のフェノール化合物を、ここに開示するフェノール樹脂の製造に使用する。例えば、第一のフェノール化合物は置換フェノールであってよく、第二のフェノール化合物は異なる置換フェノールであってよい。別の例では第一及び第二フェノール化合物の各々は、二つのフェノール化合物が異なっている限り、TPPまたは置換フェノールであってよい。そのような組合せの制限的でない例としては、TPP/クレゾール、TPP/p−ブチルフェノール、TPP/p−オクチルフェノール、およびTPP/C20-28アルキルフェノール等が挙げられる。一態様では、C20-28アルキルフェノールは、フェノールとC20-24及びC26-28アルファオレフィンの混合物との反応から誘導される。
ある態様では、TPPとホルムアルデヒドとの間の反応は、大気条件、減圧または高圧で行なわれる。ある態様では、TPPとホルムアルデヒド間の反応は、p−トルエンスルホン酸(PTSA)などの有機酸の存在下で行なわれ、ホルムアルデヒドとTPPとのモル比は、約1:1から約0.1:1の間、0.9:1未満から約0.1:1の間、0.89:1から約0.1:1の間、約0.85:1から約0.1:1の間、約0.7:1から約0.1:1の間、約0.7:1から約0.2:1の間、約0.1:1から約2:1の間、約0.2:1から約0.4:1の間、又は約0.5:1から約0.2:1の間にある。更なる態様では、そのようなフェノール樹脂は、遊離又は未反応TPPをフェノール樹脂の全質量に基づき5質量%未満の量で含んでいる。
ある態様では、フェノール樹脂の製造に適したアルデヒドとして、フェノール化合物と反応することができる任意のアルデヒドが挙げられる。ある態様ではアルデヒドR2−CHOのR2は、H、炭素原子数1−20のアルキル、炭素原子数6−20のアリール、炭素原子数7−20のアリールアルキル、炭素原子数7−20のアルキルアリール、ヘテロアリール、アルケニル、またはアラルケニルである。更なる態様では、アルデヒドR2−CHOのR2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキルである。それ以上の態様では、R2は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、およびベンジル等である。本発明に適したアルデヒドの制限的でない例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソ−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フルフラール、フェニルアセトアルデヒド、クロラール、クロロアセトアルデヒド、ジクロロアセトアルデヒド、ラウリルアルデヒド、パルミチルアルデヒド、ステアリルアルデヒド、およびそれらの混合物を挙げることができる。
特に断らない限り、本発明のためのホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド溶液又はガスのみならず、室温でまたは加熱によりホルムアルデヒド(HCHO)を発生させることができる任意のホルムアルデヒド源、例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサンおよびテトラオキサンも挙げることができる。
アルデヒドが好ましいが、フェノール化合物と反応できる任意のケトンも使用することができる。好適なケトンの制限的でない例としては、アセトン、およびメチルエチルケトンが挙げられる。
ある態様では、少なくとも二種の異なるアルデヒドを同時に、または順次使用する。第一及び第二アルデヒドは、異なっている限り、上記のアルデヒド化合物のうちの何れであってもよい。第一アルデヒドは、ホルムアルデヒドであることが好ましい。第二アルデヒドは、分子当り少なくとも2個の炭素原子を持つアルデヒドであってよい。
フェノール樹脂を製造するために、フェノール化合物をホルムアルデヒドなど少なくとも一種のアルデヒドと反応させることができる。フェノール化合物とアルデヒドの縮合反応は、触媒が有っても無くても行なうことができる。ある態様では、従来の酸触媒の存在下にて反応が起こる。好適な酸触媒の例は前に示している。別の態様ではフェノール化合物−アルデヒド反応を、約50℃乃至約200℃、約65℃乃至約210℃、約85℃乃至175℃、又は約90℃乃至約130℃の温度で行なう。ある態様では、フェノール化合物−アルデヒド反応を、減圧、大気圧または高圧で行う。ある態様では、フェノール化合物−アルデヒド反応を、バッチ反応器または連続反応器で行なう。
ある態様では、フェノール化合物−アルデヒド反応の反応時間は、約10分乃至約12時間、約15分乃至約5時間、又は約30分乃至約1時間の範囲にある。
縮合反応に溶媒の使用は任意である。フェノール樹脂を溶解できる任意の溶媒を、本発明でも使用することができる。好適な溶媒の制限的でない例としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、開示の基油、アルコール、ケトン、エーテル、およびエーテルアルコール等が挙げられる。ある態様では、反応は溶媒無しで起こる。別の態様では、反応混合物の粘度が反応過程で過度に増加したときに溶媒を使用することができる。
別の態様では、TPPとホルムアルデヒドを、1モルのTPPに対し0.2乃至0.5モルの全アルデヒドのモル比で、約50℃乃至約100℃で反応させる。次に、TPP−ホルムアルデヒド反応生成物を大気圧で、約100℃乃至約140℃で脱水する。
ある態様では、上記のようにして生成したフェノール樹脂を蒸留して、更なる反応の前に未反応フェノール化合物を取り除く。
フェノール樹脂を、少なくとも一種の金属塩基および第一の硫化剤と同時に反応させることにより、硫化金属アルキルフェネート組成物を製造することができる。ある態様では、反応混合物をエチレングリコールと一緒に加熱して、オリゴマー硫化カルシウムフェネートとする。別の態様では硫化金属アルキルフェネート組成物は、下記(III)−(VI)式のうちの少なくとも一種類を含む。
Figure 2009132719
式中、Ma 1+およびMc 1+の各々は独立に、一価金属イオンであり、Mb 2+およびMd 2+の各々は独立に、二価金属イオンであり、m、n、p、q、r、sおよびtの各々は独立に、1〜50の整数であり、xは、0〜2の整数であり、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルであり、そしてR2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである。
ある態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物は更に、下記(VII)−(VIII)式のうちの少なくとも一種類を含む。
Figure 2009132719
式中、Mb 2+、Md 2+、n、r、s、t、x、R1およびR2は、前に定義した通りである。
ある態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物は更に、下記(IX)−(X)式のうちの少なくとも一種類を含む。
Figure 2009132719
式中、Mb 2+、Md 2+、n、r、s、t、xおよびR2は、前に定義した通りである。
ある態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物は更に、下記(XI)−(XII)式のうちの少なくとも一種類を含む。
Figure 2009132719
式中、m、n、p、q、x、R1およびR2は、前に定義した通りである。
ある態様では、前記(I)−(VIII)式の何れかのR1はアルキル基である。別の態様では、R1はC1225アルキル基である。別の態様では、R1はフェノール環の4位にあるC1225アルキル基である。ある態様では、前記(I)−(XII)式の何れかのR2はHである。更なる態様ではR1はフェノール環の4位にあるC1225アルキル基であり、そして前記(I)−(XII)式の何れかのR2はHである。それ以外の態様では、R1はフェノール環の4位にあるC1225アルキル基であり、R2はHであり、そしてm、n、p、q、r、sおよびtの各々は1である。ある態様では、前記(I)−(XII)式の何れかのxは0である。別の態様では、前記(I)−(XII)式の何れかのxは1である。更なる態様では前記(I)−(XII)式の何れかのxは1であり、そしてnは0である。
ある態様では、金属塩基はアルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基またはそれらの組合せであるか、あるいはそれを含む。好適なアルカリ金属塩基の制限的でない例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ルビジウム、水素化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ルビジウム、重炭酸セシウム、およびそれらの組合せを挙げることができる。好適なアルカリ土類金属塩基の制限的でない例としては、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水素化ベリリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、重炭酸ベリリウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸ストロンチウム、重炭酸バリウム、およびそれらの組合せを挙げることができる。好適な塩基の他の制限的でない例としては、アルミニウムおよび遷移金属の水素化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩が挙げられる。別の態様では、金属塩基は、アルカリ金属、アルカリ金属、アルミニウムまたは遷移金属のカルボン酸塩であるか、あるいはそれを含む。別の態様では、金属塩基は、Be、Mg、Ca、Sr、BaまたはRaなどのアルカリ金属、もしくはZn、Cu、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Ti、V、Sc、Ru、Pt、Pd、Au、Ag、Zr、Ru、Rh、CdまたはWなどの遷移金属の水素化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、カルボン酸塩であるか、あるいはそれを含む。別の態様では、金属塩基は、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムであるか、あるいはそれを含む。
反応混合物に添加する金属塩基の量は、硫化金属アルキルフェネート組成物において望まれる金属フェネート基の量によって変わる。ある態様では、金属塩基に対するフェノール化合物のモル比は、約0.1乃至約4.0、約0.25乃至約3.5、又は約0.5乃至約3.0である。ある態様では化学量論的に過剰な量のフェノール化合物を使用する。別の態様では化学量論的に過剰な量の金属塩基を使用する。ある態様では、フェノール化合物がモノフェノール化合物で、金属塩基がアルカリ塩基である場合に、金属塩基に対するフェノール化合物のモル比は、約0.5乃至約1.5、約0.75乃至約1.5、又は約0.9乃至約1.1である。別の態様では、フェノール化合物がビフェノール化合物で、金属塩基がアルカリ塩基である場合に、金属塩基に対するフェノール化合物のモル比は、約0.5乃至約1.5、約0.75乃至約1.5、又は約0.9乃至約1.1である。更なる態様では、フェノール化合物がモノフェノール化合物で、金属塩基がアルカリ塩基である場合に、金属塩基に対するフェノール化合物のモル比は、約1乃至約3、約1.5乃至約2.5、又は約1.75乃至約2.25である。
ある態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物は、前記(IV)式および(VI)式のうちの少なくとも一種類を含有する、ただし、Mb 2+およびMd 2+の各々は独立に、Be、Mg、Ca、Sr、BaまたはRaなどアルカリ金属のイオンである。更なる態様では、アルカリ金属はカルシウムである。
ある態様では、硫化剤は、元素硫黄、ハロゲン化硫黄(例えば、一塩化硫黄または二塩化硫黄)またはそれらの組合せであるか、あるいはそれを含んでいる。ハロゲン化硫黄を硫化剤として使用するなら、発生するハロゲン化水素を中和するために、過剰な量の金属塩基または第二の塩基を使用してもよい。別の態様では、実質的な反応を遂行するために、溶媒、例えば前述の溶媒を使用することができる。
ある態様では、硫化反応は、開示した塩基の存在下で起こる。別の態様では、硫化反応は、フェノール樹脂と金属塩基と硫化剤の混合物を、約50℃乃至約250℃、約75℃乃至約225℃、又は約100℃乃至約200℃の温度で加熱することにより遂行することができる。ある態様では、硫化剤は硫黄であり、そして反応温度は少なくとも約100℃、少なくとも約120℃、少なくとも約140℃、少なくとも約160℃、少なくとも約180℃、又は少なくとも約200℃である。ある態様では、nは0である。別の態様では、nは1である。更なる態様では、nは2である。
ある態様では、硫化剤に対するフェノール化合物のモル比は、約0.5乃至約2.5である。フェノール化合物がモノフェノール化合物であるならば、ハロゲン化硫黄1モルはフェノール等2モルと反応するから、ハロゲン化硫黄の当量はその分子量の半分であるとみなされる。逆に、フェノール化合物がビフェノール化合物であるならば、例えばメチレンジフェノールまたはビスフェノールAを使用するなら、開示したフェノール化合物に対する硫黄のモル比を2倍に増やすべきである、というのも当該分野の熟練者であれば、ビフェノール化合物1モルはフェノール2モルに等しいと理解できるからである。
ある態様では、硫化反応を容易にするために、少なくとも一種の促進剤を使用する。好適な促進剤の制限的でない例としては、C1−C12アルコールやイソデカノールなどのアルコール類、フェノール類、アミン類、カルボン酸類及びその塩及び無水物、脂肪族ニトロ化合物、および水等を挙げることができる。その他については多数の特許文献に記載されていて、当該分野の熟練者であれば容易に理解できるであろう。
ある態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物は、(I)式の未反応フェノール化合物、その金属塩又はそれらの組合せを含み、未反応フェノール化合物及びその金属塩の総量は、硫化金属アルキルフェネート組成物の全質量に基づき約10質量%未満、約7.5質量%未満、約5質量%未満、約4質量%未満、約3質量%未満、又は約2質量%未満である。
ある態様では、ここに開示する方法は更に、硫化金属アルキルフェネート組成物を第二の硫化剤と反応させて、(I)式の未反応フェノール化合物及びその金属塩の総量を、硫化金属アルキルフェネート組成物の全質量に基づき約2.0質量%未満に減らす工程を含む。更なる態様では第二の硫化剤は硫黄である。
ある態様では、ここに開示する方法は更に、硫化金属アルキルフェネート組成物を二酸化炭素と接触させる過塩基化工程を含む。この過塩基化又は炭酸化は、単に二酸化炭素を、約25℃乃至約200℃、約50℃乃至約175℃、又は約75℃乃至約150℃の温度の混合物に通すことにより行なうことができる。あるいは、硫化金属アルキルフェネート組成物を、過剰な金属塩基と一種以上の促進剤の存在下で二酸化炭素と反応させてもよい。
反応が(更なる硫化および/または炭酸化を行っても行わなくても)完了した後、硫化金属アルキルフェネート組成物中の揮発性化学物質を、前述したようにして反応混合物から取り除くことができる。揮発性化学物質の除去は、減圧下又そうでない条件での抽出または蒸留など、任意の従来除去技術により行なうことができる。
本発明の硫化金属アルキルフェネート組成物は、潤滑油組成物を配合または製造するために使用することができる。ある態様では、潤滑油組成物は、少なくとも一種の潤滑粘度の油および開示する硫化金属アルキルフェネート組成物を含有している。別の態様では、潤滑油組成物は更に、潤滑油の性状を改良または改善するのに有益であると知られている添加剤を含む。
A)潤滑粘度の油
開示する潤滑油組成物は一般に、少なくとも一種の潤滑粘度の油を含む。当該分野の熟練者に知られている任意の基油を、ここに開示する潤滑粘度の油として使用することができる。潤滑油組成物を製造するのに適した基油については、モーティア(Mortier)、外著、「潤滑剤の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants)」、第2版、ロンドン、スプリンガー(Springer)、第1章及び第2章(1996年)、およびA.シケリア、Jr.(A.Sequeria,Jr.)著、「潤滑油基油とろう処理(Lubricant Base Oil and Wax Processing)」、ニューヨーク、マーセル・デッカー(Marcel Decker)、第6章(1994年)、およびD.V.ブロック(D.V.Brock)著、ルブリケーション・エンジニアリング(Lubrication Engineering)、第43巻、p.184−5(1987年)に記載されていて、それらも全て参照内容として本明細書の記載とする。一般に潤滑油組成物中の基油の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約70乃至約99.5質量%であってよい。ある態様では、潤滑油組成物中の基油の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約75乃至約99質量%、約80乃至約98.5質量%、又は約80乃至約98質量%である。
ある態様では、基油は、任意の天然または合成の潤滑基油留分であるか、あるいはそれを含む。合成油の制限的でない例としては、エチレンなど少なくとも一種のアルファオレフィンの重合により、あるいはフィッシャー・トロプシュ法のような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いる炭化水素合成法により製造された、ポリアルファオレフィン類又はPAOなどの油を挙げることができる。ある態様では、基油は、一種以上の重質留分を基油の全質量に基づき約10質量%未満で含んでいる。重質留分は、粘度が100℃で少なくとも約20cStである潤滑油留分を意味する。ある態様では、重質留分の粘度は、100℃で少なくとも約25cSt又は少なくとも約30cStである。更なる態様では、基油中の一種以上の重質留分の量は、基油の全質量に基づき約10質量%未満、約5質量%未満、約2.5質量%未満、約1質量%未満、又は約0.1質量%未満である。それ以上の態様では、基油は重質留分を含まない。
ある態様では、潤滑油組成物は、潤滑粘度の基油を主要量で含む。態様によっては、基油の100℃での動粘度は、約2.5センチストークス(cSt)乃至約20cSt、約5センチストークス(cSt)乃至約20cSt、約7cSt乃至約16cSt、又は約9cSt乃至約15cStである。基油またはここに開示する潤滑油組成物の動粘度は、ASTM D445によって測定することができ、それも参照内容として本明細書の記載内容とする。
別の態様では、基油は、基材油または基材油のブレンドであるか、あるいはそれを含有している。更なる態様では、基材油は、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含むが、それらに限定されない各種の異なる方法を用いて製造される。ある態様では基材油は再精製基材油を含む。更なる態様では再精製基材油は、製造、汚染もしくは以前の使用によって混入した物質を実質的に含まない。
ある態様では、基油は、米国石油協会(API)公報1509、第14版、1996年12月(すなわち、客車用モーター油及びディーゼルエンジン油のためのAPI基油互換性ガイドライン)に規定されているI−V種のうちの一種以上の基材油を一種類以上含むので、それも参照内容として本明細書の記載内容とする。APIガイドラインは、基材油を各種の異なる方法を用いて製造することができる潤滑剤成分として規定している。I、II、III種基材油は鉱油であり、各々特定範囲の量の飽和度と硫黄分と粘度指数を有する。IV種基材油はポリアルファオレフィン(PAO)である。V種基材油には、I、II、III又はIV種に含まれないその他全ての基材油が含まれる。
下記第1表に、I、II及びIII種基材油の飽和度レベル、硫黄レベルおよび粘度指数を記載する。
第 1 表
────────────────────────────────────
種 飽和度(ASTM 硫黄(ASTM 粘度指数(ASTM D
D2007で決定) D2270で決定) 4294、ASTM D 4297又はASTM D3120で決定)
────────────────────────────────────
I 飽和度90%未満 硫黄0.03%以上 80以上、120未満
II 飽和度90%以上 硫黄0.03%以下 80以上、120未満
III 飽和度90%以上 硫黄0.03%以下 120以上
────────────────────────────────────
ある態様では、基油は、I、II、III、IV、V種又はそれらの組合せの基材油を一種類以上含む。別の態様では、基油は、II、III、IV種又はそれらの組合せの基材油を一種類以上含む。更なる態様では、基油は、II、III、IV種又はそれらの組合せの基材油を一種類以上含み、かつ基油の動粘度は100℃で、約5センチストークス(cSt)乃至約20cSt、約7cSt乃至約16cSt、又は約9cSt乃至約15cStである。
基油は、潤滑粘度の天然油、潤滑粘度の合成油およびそれらの混合物からなる群より選ぶことができる。ある態様では、基油として、合成ろうや粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに原油の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出よりはむしろ)水素化分解することにより生成した水素化分解基材油を挙げることができる。別の態様では、潤滑粘度の基油として、天然油、例えば動物油、植物油、鉱油、石炭または頁岩から誘導された油、およびそれらの組合せを挙げることができる。動物油の制限的でない例としては、骨油、ラノリン、魚油、ラード油、イルカ油、アザラシ油、サメ肝油、牛脂油、および鯨油が挙げられる。植物油の制限的でない例としては、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、べに花油、大麻油、アマニ油、キリ油、オイチシカ油、ホホバ油、およびメドウフォーム油が挙げられる。そのような油は部分的にまたは完全に水素化されていてもよい。鉱油の制限的でない例としては、I、II及びIII種基材油、液体石油、およびパラフィン型、ナフテン型又は混合パラフィン・ナフテン型の溶剤処理又は酸処理鉱油が挙げられる。ある態様では、鉱油はニート又は低粘度鉱油である。
ある態様では、潤滑粘度の合成油として、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン類、アルキルベンゼン類、ポリフェニル類、アルキル化ジフェニルエーテル類、アルキル化ジフェニルスルフィド類、並びにそれらの誘導体、類似物及び同族体等を挙げることができる。別の態様では、合成油として、アルキレンオキシド重合体、真の共重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基がエステル化やエーテル化等によって変性しうるそれらの誘導体を挙げることができる。更なる態様では、合成油として、ジカルボン酸と各種アルコールのエステル類が挙げられる。ある態様では、合成油として、C5−C12モノカルボン酸とポリオールとポリオールエーテルとから製造されたエステル類が挙げられる。更なる態様では、合成油として、トリ−アルキルリン酸エステル油、例えばトリ−n−ブチルホスフェートおよびトリ−イソ−ブチルホスフェートが挙げられる。
ある態様では、潤滑粘度の合成油として、ケイ素系の油(例えば、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ、ポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油)が挙げられる。別の態様では、合成油として、リン含有酸の液体エステル類、高分子量テトラヒドロフラン類、およびポリアルファオレフィン類等が挙げられる。
ろうの水素異性化から誘導された基油も、単独で、あるいは前記天然及び/又は合成基油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性化油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒を用いて水素異性化することにより生成する。
更なる態様では、基油は、ポリ−アルファ−オレフィン(PAO)を含有している。一般にポリ−アルファ−オレフィン類は、炭素原子数約2〜約30、約4〜約20、又は約6〜約16のアルファ−オレフィンから誘導することができる。好適なポリ−アルファ−オレフィン類の制限的でない例としては、オクテン、デセンおよびそれらの混合物等から誘導されたものが挙げられる。これらポリ−アルファ−オレフィン類の粘度は、100℃で約2乃至約15、約3乃至約12、又は約4乃至約8センチストークスであってよい。場合によっては、ポリ−アルファ−オレフィン類を鉱油など他の基油と一緒に使用することもできる。
更なる態様では、基油は、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体を含有していて、ポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシル基はエステル化やエーテル化、アセチル化等により変性していてもよい。好適なポリアルキレングリコール類の制限的でない例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプロピレングリコール、およびそれらの組合せが挙げられる。好適なポリアルキレングリコール誘導体の制限的でない例としては、ポリアルキレングリコールのエーテル類(例えば、ポリイソプロピレングリコールのメチルエーテル、ポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、ポリアルキレングリコールのモノ及びポリカルボン酸エステル類、およびそれらの組合せが挙げられる。場合によっては、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体を、ポリ−アルファ−オレフィン類や鉱油など他の基油と一緒に使用することもできる。
更なる態様では、基油は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、およびアルケニルマロン酸等)と、各種アルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、およびプロピレングリコール等)とのエステル類の何れかを含む。これらエステル類の制限的でない例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、およびリノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル等を挙げることができる。
更なる態様では、基油は、フィッシャー・トロプシュ法により製造された炭化水素を含んでいる。フィッシャー・トロプシュ法では、水素と一酸化炭素を含むガスからフィッシャー・トロプシュ触媒を用いて炭化水素が製造される。これらの炭化水素は、基油として使用できるためには更なる処理を要することがある。例えば、当該分野の熟練者に知られている方法を用いて炭化水素を脱ろう、水素異性化および/または水素化分解してもよい。
更なる態様では、基油は、未精製油、精製油、再精製油またはそれらの混合物を含んでいる。未精製油は、天然原料または合成原料からそれ以上の精製処理無しに直接得られたものである。未精製油の制限的でない例としては、レトルト操作により直接得られた頁岩油、一次蒸留により直接得られた石油、およびエステル化法により直接得られてそれ以上の処理無しに使用できるエステル油を挙げることができる。精製油は、一つ以上の性状を改善するために一以上の精製法で更に処理されていることを除いては、未精製油と同じものである。溶剤抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、ろ過およびパーコレートなど、多数のそのような精製法が当該分野の熟練者に知られている。再精製油は、精製油を得るために用いたのと同様の方法を精製油に適用することにより得られる。そのような再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、しばしば使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする方法により追加処理される。
B)潤滑油添加剤
任意に、潤滑油組成物は更に、所望の任意の潤滑油組成物特性を付与または改善することができる、少なくとも一種の添加剤または調整剤(以下、「添加剤」と呼ぶ)を含有していてもよい。当該分野の熟練者に知られている任意の添加剤を、ここに開示する潤滑油組成物に使用することができる。好適な添加剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック(Leslie R.Rudnick)著、「潤滑油添加剤:化学と用途(Lubricant Additives: Chemistry and Applications)」、ニューヨーク、マーセル・デッカー(Marcel Dekker)(2003年)に記載されていて、それら両方とも参照内容として本明細書の記載内容とする。ある態様では、添加剤は、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、清浄剤、さび止め添加剤、抗乳化剤、摩擦緩和剤、多機能添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、金属不活性化剤、分散剤、腐食防止剤、潤滑性向上剤、熱安定性向上剤、防曇剤、氷結防止剤、染料、マーカー、静電放散剤、殺生剤およびそれらの組合せからなる群より選ぶことができる。一般に、添加剤の各々を使用する場合に、潤滑油組成物中でのその濃度は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.001質量%乃至約10質量%、約0.01質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約2.5質量%である。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.001質量%乃至約20質量%、約0.01質量%乃至約10質量%、又は約0.1質量%乃至約5質量%である。
開示する潤滑油組成物は任意に、摩擦および過剰な摩耗を低減することができる耐摩耗性添加剤を含むことができる。当該分野の熟練者が知っている任意の耐摩耗性添加剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な耐摩耗性添加剤の制限的でない例としては、ジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸の金属(例えば、Pb、SbおよびMo等)塩、ジチオカルバメートの金属(例えば、Zn、Pb、SbおよびMo等)塩、脂肪酸の金属(例えば、Zn、PbおよびSb等)塩、ホウ素化合物、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、ジシクロペンタジエンとチオリン酸の反応生成物、およびそれらの組合せを挙げることができる。耐摩耗性添加剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%である。好適な耐摩耗性添加剤は、レスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第8章、p.223−258(2003年)に記載されていて、それも参照内容として本明細書の記載とする。
ある態様では、耐摩耗性添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物などの二炭化水素ジチオリン酸金属塩であるか、あるいはそれを含む。二炭化水素ジチオリン酸金属塩の金属は、アルカリ又はアルカリ土類金属であっても、あるいはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケルまたは銅であってもよい。ある態様では、金属は亜鉛である。別の態様では、二炭化水素ジチオリン酸金属塩のアルキル基は、炭素原子数約3〜約22、炭素原子数約3〜約18、炭素原子数約3〜約12、又は炭素原子数約3〜約8である。更なる態様では、アルキル基は線状であるかまたは分枝している。
ここに開示する潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛を含めた二炭化水素ジチオリン酸金属塩の量は、そのリン分で量られる。ある態様では、ここに開示する潤滑油組成物のリン分は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約0.12質量%、約0.1質量%乃至約0.10質量%、又は約0.2質量%乃至約0.8質量%である。
二炭化水素ジチオリン酸金属塩は、公知技術に従ってまず、通常は一種以上のアルコールおよびフェノール化合物をP25と反応させることで、二炭化水素ジチオリン酸(DDPA)を生成させ、次いで生成したDDPAを金属化合物、例えば金属の酸化物、水酸化物又は炭酸塩で中和することにより製造することができる。ある態様では、第一級及び第二級アルコールの混合物をP25と反応させることにより、DDPAを製造することができる。別の態様では、二種以上の二炭化水素ジチオリン酸を製造することができて、一種類のジチオリン酸の炭化水素基は全く第二級の性質であるが、残りのジチオリン酸の炭化水素基は全く第一級の性質である。亜鉛塩は、二炭化水素ジチオリン酸から亜鉛化合物と反応させることにより製造することができる。ある態様では塩基性又は中性の亜鉛化合物を使用する。別の態様では亜鉛の酸化物、水酸化物又は炭酸塩を使用する。
ある態様では、下記(II)式で表されるジアルキルジチオリン酸から、油溶性のジアルキルジチオリン酸亜鉛を生成させることができる。
Figure 2009132719
式中、R8およびR9の各々は独立に、線状又は分枝アルキル、または線状又は分枝置換アルキルである。ある態様ではアルキル基は、炭素原子数約3〜約30、又は炭素原子数約3〜約8である。
(II)式のジアルキルジチオリン酸は、アルコールR8OHとR9OH(ただし、R8およびR9は上に定義した通りである)を、P25と反応させることにより製造することができる。ある態様ではR8とR9は同じである。別の態様ではR8とR9は異なっている。更なる態様では、R8OHとR9OHを同時にP25と反応させる。それ以上の態様では、R8OHとR9OHを順次P25と反応させる。
ヒドロキシルアルキル化合物の混合物も使用することができる。これらヒドロキシルアルキル化合物は、モノヒドロキシアルキル化合物である必要はない。ある態様では、モノ、ジ、トリ、テトラ及び他のポリヒドロキシアルキル化合物または前者の二種以上の混合物から、ジアルキルジチオリン酸を製造する。別の態様では、第一級アルキルアルコールのみから誘導するジアルキルジチオリン酸亜鉛は、単一の第一級アルコールから誘導する。更なる態様ではその単一第一級アルコールは、2−エチルヘキサノールである。ある態様では、第二級アルキルアルコールのみからジアルキルジチオリン酸亜鉛を誘導する。更なる態様ではその第二級アルコールの混合物は、2−ブタノールと4−メチル−2−ペンタノールの混合物である。
ジアルキルジチオリン酸の生成工程で用いられる五硫化リン反応体は、P23、P43、P47又はP49のうちの一種類以上をある量にて含むことがある。組成物それ自体が少量の遊離硫黄を含むこともある。ある態様では、五硫化リン反応体は、P23、P43、P47及びP49の何れも実質的に含まない。ある態様では五硫化リン反応体は遊離硫黄を実質的に含まない。
本発明において全潤滑油組成物の硫酸灰分は、ASTM D874によって測定したときに、5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、又は1質量%未満である。
任意に、ここに開示する潤滑油組成物は更に追加の清浄剤を含有することができる。エンジン堆積物の付着を低減するまたは遅らすことができる任意の化合物又は化合物の混合物を、清浄剤として使用することができる。好適な清浄剤の制限的でない例としては、ポリオレフィン置換コハク酸イミド類またはポリアミンのコハク酸アミド類、例えばポリイソブチレンコハク酸イミド類またはポリイソブチレンアミンコハク酸アミド類、脂肪族アミン類、マンニッヒ塩基又はアミン類、およびポリオレフィン(例えば、ポリイソブチレン)マレイン酸無水物を挙げることができる。好適なコハク酸イミド清浄剤は、英国特許第960493号、欧州特許第0147240号、欧州特許第0482253号、欧州特許第0613938号、欧州特許第0557561号の各明細書及び国際公開第98/42808号パンフレットに記載されていて、それら全て参照内容として本明細書の記載内容とする。ある態様では、清浄剤は、ポリイソブチレンコハク酸イミドなどのポリオレフィン置換コハク酸イミドである。市販の清浄添加剤の制限的でない例としては、F7661及びF7685(インフィニウム(Infineum)社製、ニュージャージー州リンデン)、およびOMA4130D(オクテル・コーポレーション(Octel Corporation)製、英国マンチェスター)が挙げられる。
好適な金属清浄剤の制限的でない例としては、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート類、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート類、ホウ酸化スルホネート類、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩類、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート類、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート類、アルカノール酸の金属塩類、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩類、およびそれらの化学的及び物理的混合物を挙げることができる。好適な金属清浄剤の他の制限的でない例としては、金属スルホネート類、サリチレート類、ホスホネート類、チオホスホネート類、およびそれらの組合せが挙げられる。金属は、スルホネート、サリチレート又はホスホネート清浄剤を製造するのに適した任意の金属であってよい。好適な金属の制限的でない例としては、アルカリ金属、アルカリ金属および遷移金属が挙げられる。ある態様では金属は、Ca、Mg、Ba、K、NaまたはLi等である。
一般に清浄剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき10000ppm未満、1000ppm未満、100ppm未満、又は10ppm未満であってよい。ある態様では清浄剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき、約0.001質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%である。好適な清浄剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第3章、p.75−85(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第4章、p.113−136(2003年)に記載されていて、それら両方とも参照内容として本明細書の記載内容とする。
ある態様では、ここに開示する潤滑油組成物は、基油の酸化を低減または防止することができる酸化防止剤を含む。当該分野の熟練者が知っている任意の酸化防止剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な酸化防止剤の制限的でない例としては、アミン系酸化防止剤(例えば、アルキルジフェニルアミン類、フェニル−a−ナフチルアミン、アルキル又はアリールアルキル置換フェニル−a−ナフチルアミン、アルキル化p−フェニレンジアミン類、およびテトラメチル−ジアミノジフェニルアミン等)、フェノール系酸化防止剤(例えば、2−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、および4,4’−チオビス(6−ジ−tert−ブチル−o−クレゾール)等)、硫黄系酸化防止剤(例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、および硫化フェノール系酸化防止剤等)、リン系酸化防止剤(例えば、亜リン酸塩等)、ジチオリン酸亜鉛、油溶性銅化合物、およびそれらの組合せを挙げることができる。酸化防止剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。好適な酸化防止剤は、レスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第1章、p.1−28(2003年)に記載されていて、それも参照内容として本明細書の記載内容とする。
ある態様では、酸化防止剤は、ジアリールアミンであるか、あるいはそれを含有している。好適なジアリールアミン化合物の制限的でない例としては、ジフェニルアミン、フェニル−a−ナフチルアミン、アルキル化ジアリールアミン類、例えばアルキル化ジフェニルアミン類およびアルキル化フェニル−a−ナフチルアミン類を挙げることができる。ある態様ではジアリールアミン化合物は、アルキル化ジフェニルアミンである。ジアリールアミン化合物は、単独でも、あるいは他のジアリールアミン化合物を含む他の潤滑油添加剤と組み合わせても使用することができる。
一態様では、アルキル化ジフェニルアミンを(I)式で表すことができる。
Figure 2009132719
上記式中、R10およびR11の各々は独立に、水素、または炭素原子数約7〜約20、又は約7〜約10のアリールアルキル基、または炭素原子数約1〜約24の線状又は分枝アルキル基であり、そして少なくとも一方の芳香環がアリールアルキル基または線状又は分枝アルキル基を含む限り、xおよびyの各々は独立に、0、1、2又は3である。ある態様ではR10およびR11の各々は独立に、炭素原子約4〜約20個、約4〜16個、約4〜約12個、又は炭素原子約4〜約8個を含むアルキル基である。
ある態様では、アルキル化ジフェニルアミンとして、これらに限定されるものではないが、ビス−ノニル化ジフェニルアミン、ビス−オクチル化ジフェニルアミン、およびオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンが挙げられる。別の態様では、アルキル化ジフェニルアミンは、(I)式(ただし、R10およびR11の各々は独立にオクチルであり、そしてxおよびyの各々は1である)の第一の化合物からなる。更なる態様では、アルキル化ジフェニルアミンは、(I)式(ただし、R10およびR11の各々は独立にブチルであり、そしてxおよびyの各々は1である)の第二の化合物からなる。それ以外の態様では、アルキル化ジフェニルアミンは、(I)式(ただし、R10はオクチルであり、R11はブチルであり、そしてxおよびyの各々は1である)の第三の化合物からなる。それ以外の態様では、アルキル化ジフェニルアミンは、(I)式(ただし、R10はオクチルであり、xは2であり、そしてyは0である)の第四の化合物からなる。それ以外の態様ではアルキル化ジフェニルアミンは、(I)式(ただし、R10はブチルであり、xは2であり、そしてyは0である)の第五の化合物からなる。ある態様では、アルキル化ジフェニルアミンは、第一化合物、第二化合物、第三化合物、第四化合物、第五化合物またはそれらの組合せからなる。
ある態様では、ここに開示する潤滑油組成物中のアルキル化ジフェニルアミンなどジアリールアミン化合物の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき少なくとも約0.1質量%、少なくとも約0.2質量%、少なくとも約0.3質量%、少なくとも約0.4質量%、少なくとも約0.5質量%、少なくとも約1.0質量%、少なくとも約1.5質量%、少なくとも約2質量%、又は少なくとも約5質量%である。
ここに開示する潤滑油組成物は任意に、粒子をコロイド状態にけん濁しておくことでスラッジやワニス、他の堆積物を防ぐことができる分散剤を含むことができる。当該分野の熟練者が知っている任意の分散剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な分散剤の制限的でない例としては、アルケニルコハク酸イミド類、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド類、エチレンカーボネートまたはホウ酸による後処理で変性したアルケニルコハク酸イミド類、コハク酸アミド類、コハク酸エステル類、コハク酸エステル−アミド類、ペンタエリトリトール類、フェネート−サリチレート類及びそれらの後処理類似物、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属のホウ酸塩類、水和アルカリ金属ホウ酸塩の分散物、アルカリ土類金属ホウ酸塩の分散物、ポリアミド無灰分散剤、ベンジルアミン類、マンニッヒ型分散剤、リン含有分散剤、およびそれらの組合せを挙げることができる。分散剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約7質量%、又は約0.1質量%乃至約4質量%で変えることができる。好適な分散剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第3章、p.86−90(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第5章、p.137−170(2003年)に記載されていて、それら両方とも参照内容として本明細書の記載内容とする。
ここに開示する潤滑油組成物は任意に、可動部分間の摩擦を小さくすることができる摩擦緩和剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知っている任意の摩擦緩和剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な摩擦緩和剤の制限的でない例としては、脂肪カルボン酸類;脂肪カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル類、ホウ酸化エステル類、アミド類および金属塩類等);モノ、ジ又はトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸類;モノ、ジ又はトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸の誘導体(例えば、エステル類、アミド類および金属塩類等);モノ、ジ又はトリ−アルキル置換アミン類;モノ又はジ−アルキル置換アミド類;およびそれらの組合せを挙げることができる。ある態様では摩擦緩和剤は、脂肪族アミン類、エトキシル化脂肪族アミン類、脂肪族カルボン酸アミド類、エトキシル化脂肪族エーテルアミン類、脂肪族カルボン酸類、グリセロールエステル類、脂肪族カルボン酸エステル−アミド類、脂肪イミダゾリン類、脂肪第三級アミン類(ただし、脂肪族又は脂肪基は、化合物を好適に油溶性にするために炭素原子を約8個より多く含む)からなる群より選ばれる。別の態様では摩擦緩和剤は、脂肪族コハク酸又は無水物をアンモニアまたは第一級アミンと反応させることで生成した脂肪族置換コハク酸イミドからなる。摩擦緩和剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。好適な摩擦緩和剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.183−187(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第6章及び第7章、p.171−222(2003年)に記載されていて、それら両方とも参照内容として本明細書の記載内容とする。
ここに開示する潤滑油組成物は任意に、潤滑油組成物の流動点を下げることができる流動点降下剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知っている任意の流動点降下剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な流動点降下剤の制限的でない例としては、ポリメタクリレート類、アルキルアクリレート重合体、アルキルメタクリレート重合体、ジ(テトラ−パラフィンフェノール)フタレート、テトラ−パラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンの縮合物、およびそれらの組合せを挙げることができる。ある態様では、流動点降下剤は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、またはポリアルキルスチレン等からなる。流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。好適な流動点降下剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.187−189(1996年)、およびレスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第11章、p.329−354(2003年)に記載されていて、それら両方とも参照内容として本明細書の記載とする。
ここに開示する潤滑油組成物は任意に、水や蒸気にさらされる潤滑油組成物の油−水分離を促進することができる抗乳化剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知っている任意の抗乳化剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な抗乳化剤の制限的でない例としては、陰イオン界面活性剤(例えば、アルキルナフタレンスルホネート類、およびアルキルベンゼンスルホネート類等)、非イオン性アルコキシル化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドの重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体等)、油溶性酸のエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、およびそれらの組合せを挙げることができる。抗乳化剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。好適な抗乳化剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.190−193(1996年)に記載されていて、それも参照内容として本明細書の記載内容とする。
ここに開示する潤滑油組成物は任意に、油中の泡を破壊することができる抑泡剤又は消泡剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知っている任意の抑泡剤又は消泡剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な消泡剤の制限的でない例としては、シリコーン油又はポリジメチルシロキサン類、フルオロシリコーン類、アルコキシル化脂肪酸類、ポリエーテル類(例えば、ポリエチレングリコール類)、分枝ポリビニルエーテル類、アルキルアクリレート重合体、アルキルメタクリレート重合体、ポリアルコキシアミン類、およびそれらの組合せを挙げることができる。ある態様では、消泡剤は、グリセロールモノステアレート、ポリグリコールパルミテート、モノチオリン酸トリアルキル、スルホン化リシノール酸のエステル、ベンゾイルアセトン、メチルサリチレート、グリセロールモノオレエート、またはグリセロールジオレエートからなる。消泡剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%で変えることができる。好適な消泡剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.190−193(1996年)に記載されていて、それも参照内容として本明細書の記載とする。
ここに開示する潤滑油組成物は任意に、腐食を低減することができる腐食防止剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知っている任意の腐食防止剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適な腐食防止剤の制限的でない例としては、ドデシルコハク酸の半エステル又はアミド類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、アルキルイミダゾリン類、サルコシン類、およびそれらの組合せを挙げることができる。腐食防止剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%で変えることができる。好適な腐食防止剤は、モーティア、外著、「潤滑剤の化学と技術」、第2版、ロンドン、スプリンガー、第6章、p.193−196(1996年)に記載されていて、それも参照内容として本明細書の記載内容とする。
ここに開示する潤滑油組成物は任意に、滑り金属面が極圧条件下で焼付くのを防ぐことができる極圧(EP)剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知っている任意の極圧剤を、潤滑油組成物に使用することができる。一般に極圧剤は、金属と化学的に結合して表面膜を形成することができる化合物であり、その表面膜が金属面を高荷重で向き合わせた際に微小突起物の融着を防ぐ。好適な極圧剤の制限的でない例としては、動物又は植物硫化油脂、動物又は植物硫化脂肪酸エステル類、三価又は五価リン酸の完全又は部分エステル化エステル類、硫化オレフィン類、二炭化水素ポリスルフィド類、硫化ディールス・アルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステルと一不飽和オレフィンの硫化又は共硫化混合物、脂肪酸と脂肪酸エステルとアルファ−オレフィンの共硫化ブレンド、官能基置換二炭化水素ポリスルフィド類、チア−アルデヒド類、チア−ケトン類、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペンと非環状オレフィンの共硫化ブレンド、およびポリスルフィドオレフィン生成物、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩類、およびそれらの組合せを挙げることができる。極圧剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約5質量%、約0.05質量%乃至約3質量%、又は約0.1質量%乃至約1質量%で変えることができる。好適な極圧剤は、レスリー・R.ルドニック著、「潤滑油添加剤:化学と用途」、ニューヨーク、マーセル・デッカー、第8章、p.223−258(2003年)に記載されていて、それも参照内容として本明細書の記載内容とする。
ここに開示する潤滑油組成物は任意に、鉄金属面の腐食を防ぐことができるさび止め添加剤を含有することができる。当該分野の熟練者が知っている任意のさび止め添加剤を、潤滑油組成物に使用することができる。好適なさび止め添加剤の制限的でない例としては、油溶性のモノカルボン酸類(例えば、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸等)、油溶性のポリカルボン酸類(例えば、タル油脂肪酸、オレイン酸およびリノール酸等から生成したもの)、アルケニル基が炭素原子10個以上を含むアルケニルコハク酸類(例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、およびヘキサデセニルコハク酸等)、分子量が600乃至3000ダルトンの範囲にある長鎖アルファ、オメガ−ジカルボン酸類、およびそれらの組合せを挙げることができる。さび止め添加剤の量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.01質量%乃至約10質量%、約0.05質量%乃至約5質量%、又は約0.1質量%乃至約3質量%で変えることができる。
好適なさび止め添加剤の他の制限的でない例としては、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができる。好適なさび止め添加剤のそれ以上の制限的でない例としては、ステアリン酸及び他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸、脂肪酸アミン塩類、重質スルホン酸の金属塩類、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルが挙げられる。
ある態様では潤滑油組成物は、少なくとも一種の多機能添加剤を含有している。好適な多機能添加剤の制限的でない例としては、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物を挙げることができる。
ある態様では、潤滑油組成物は、少なくとも一種の粘度指数向上剤を含有している。好適な粘度指数向上剤の制限的でない例としては、ポリメタクリレート型重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤を挙げることができる。
ある態様では、潤滑油組成物は、少なくとも一種の金属不活性化剤を含有している。好適な金属不活性化剤の制限的でない例としては、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾール類を挙げることができる。
ここに開示する添加剤は、一種以上の添加剤を含む添加剤濃縮物の形であってもよい。添加剤濃縮物は、好適な希釈剤、例えば好適な粘度の炭化水素油を含んでいてもよい。そのような希釈剤は、天然油(例えば、鉱油)、合成油およびそれらの組合せからなる群より選ぶことができる。鉱油の制限的でない例としては、パラフィン系油、ナフテン系油、アスファルト系油、およびそれらの組合せが挙げられる。合成基油の制限的でない例としては、ポリオレフィン油(特には、水素化アルファ−オレフィンオリゴマー類)、アルキル化芳香族、ポリアルキレンオキシド類、芳香族エーテル類、およびカルボン酸エステル類(特には、ジエステル油)、およびそれらの組合せが挙げられる。ある態様では、希釈剤は、天然又は合成何れかの軽質炭化水素油である。一般に希釈油の粘度は、40℃で約13センチストークス乃至約35センチストークスであってよい。
D)潤滑油組成物の製造方法
ここに開示する潤滑油組成物は、当該分野の熟練者に知られている任意の潤滑油製造方法により製造することができる。ある態様では、基油を開示する硫化金属アルキルフェネート組成物とブレンドまたは混合することができる。任意に、金属アルキルフェネートに加えて他の一種以上の添加剤を添加することができる。硫化金属アルキルフェネート組成物と任意の添加剤は基油に別個に加えてもよいし、あるいは同時に加えてもよい。ある態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物と任意の添加剤を基油に別個に一回以上の添加で加えるが、添加は任意の順序であってよい。別の態様では、硫化金属アルキルフェネート組成物と添加剤を基油に同時に加えるが、任意に添加剤濃縮物の形であってもよい。ある態様では、混合物を約25℃乃至約200℃、約50℃乃至約150℃、又は約75℃乃至約125℃の温度に加熱することによって、硫化金属アルキルフェネート組成物でも如何なる固形添加剤でも基油に可溶化するのを助けることができる。
所望の成分をブレンド、混合または可溶化するのに、当該分野の熟練者に知られている任意の混合装置または分散装置を用いることができる。ブレンダ、撹拌器、分散機、ミキサ(例えば、遊星形ミキサおよび二段遊星形ミキサ)、ホモジナイザ(例えば、ガウリン・ホモジナイザおよびラニー・ホモジナイザ)、微粉砕機(例えば、コロイドミル、ボールミルおよびサンドミル)、もしくは当該分野で知られている他の任意の混合又は分散装置を用いて、ブレンド、混合または可溶化を行うことができる。
E)潤滑油組成物の用途
ここに開示する潤滑油組成物は、モーター油(またはエンジン油またはクランクケース油)、変速機液、ギヤ油、パワー・ステアリング液、ショック・アブソーバ液、ブレーキ液、油圧作動液および/またはグリースとして使用するのに適していると言える。
ある態様では、ここに開示する潤滑油組成物は、モーター又はエンジン油である。そのようなモーター油組成物は、任意の往復内燃機関、往復圧縮機およびクランクケース設計の蒸気機関の主要な可動部分全てを潤滑にするのに使用することができる。自動車用途では、モーター油組成物は、熱いエンジン部分を冷やしたり、エンジンにさびや堆積物が無いようにしておいたり、燃焼ガスの漏出に備えてリングや弁を封じるのに使用することもできる。モーター油組成物は、基油、開示する硫化金属アルキルフェネート組成物および任意の添加剤を含有することができる。ある態様ではモーター油組成物は更に、流動点降下剤、清浄剤、分散剤、耐摩耗性添加剤、酸化防止剤、摩擦緩和剤、さび止め添加剤またはそれらの組合せを含有している。
別の態様では、ここに開示する潤滑油組成物は、自動車又は工業用途のギヤ油である。ギヤ油組成物は、ギヤ、後車軸、自動車変速機、最終駆動軸、農業及び建設機械の付属品、ギヤ・ハウジングおよび密閉形チェーン・ドライブを潤滑にするのに使用することができる。ギヤ油組成物は、基油、ここに開示する硫化金属アルキルフェネート組成物および任意の添加剤を含有することができる。ある態様では、ギヤ油組成物は更に、耐摩耗性添加剤、極圧剤、さび止め添加剤またはそれらの組合せを含む。
更なる態様では、ここに開示する潤滑油組成物は、変速機液である。変速機液組成物は、変速損失を低減するために自動変速機にでも手動変速機にでも使用することができる。変速機液組成物は、基油、ここに開示する硫化金属アルキルフェネート組成物および任意の添加剤を含有することができる。ある態様では、変速機液組成物は更に、摩擦緩和剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、極圧剤、流動点降下剤、消泡剤、腐食防止剤またはそれらの組合せを含有している。
更なる態様では、ここに開示する潤滑油組成物は、様々な用途で長期間の潤滑が要求され、かつ油が滞留しえないような所に、例えば垂直シャフトに使用されるグリースである。グリース組成物は、基油、開示する硫化金属アルキルフェネート組成物、任意の添加剤および増稠剤を含有することができる。ある態様ではグリース組成物は更に、錯生成剤、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、極圧剤、消泡剤、腐食防止剤またはそれらの混合物を含有している。ある態様では増稠剤は、金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化亜鉛等)と、脂肪、脂肪酸またはエステルとを反応させることにより生成した石鹸である。一般に、用いられる石鹸の種類は所望するグリース性状に依存する。別の態様では増稠剤は、粘土、シリカゲル、カーボンブラック、種々の合成有機物質およびそれらの組合せからなる群より選ばれた非石鹸増稠剤であってもよい。更なる態様では増稠剤は、石鹸と非石鹸増稠剤の組合せからなる。
以下の実施例は、本発明の態様を例示するために提示するのであって、本発明を提示する特定の態様に限定しようとするものではない。特に指示しない限り、部およびパーセントは全て質量である。数値は全て、おおよそである。数値範囲が記されている場合に、記載された範囲外の態様であってもなお本発明の範囲内に含まれると解釈すべきである。各実施例に記載された特定の詳細を、本発明の必然的な特徴であると解釈すべきではない。
以下の実施例は、説明の目的でのみ提示しようとするものであって、決して本発明の範囲を限定するものではない。一部の実施例では、フェノール化合物としてテトラプロペニルフェノール(TPP)を、アルデヒドとしてパラホルムアルデヒド(PF)と、特定のPF/TPP比、すなわち充填モル比(CMR)で反応させることによって、フェノール樹脂を生成させた。一部の実施例では、フェノール樹脂を水酸化カルシウムおよび硫黄と反応させて、残留TPPのレベルが低い硫化カルシウム生成物とした。
[実施例1(比較例)] 従来の硫化カルシウムアルキルフェネートの製造
4リットル反応器に、テトラプロペニルフェノール(シェブロン・オロナイト・カンパニーLLC(Chevron Oronite Company LLC)製、カリフォルニア州サンラモン)719g(2.74モル)、100ニュートラル潤滑油(エクソン100N、エクソン・コーポレーション(Exxon Corporation)製)450g、水酸化カルシウム338g(4.57モル)、イソデカノール553g、および粉末硫黄130g(4.06モル)を充填した。反応混合物をかき混ぜながら150℃に加熱した。次いで、エチレングリコール134g、および低過塩基性アルキルベンゼンスルホネート(シェブロン・オロナイト・カンパニーLLC製、カリフォルニア州サンラモン)(TBN=17)72gを、30分かけて反応混合物に充填した。反応混合物を60分かけて175℃まで加熱し、そして175℃で更に60分間保持し、そののち反応混合物から試料(試料A)を取り出して試験した。次に、硫黄粉末8g(0.25モル)を残った反応混合物に添加し、それを177℃で更に60分間保持し、そののち反応混合物から別の試料(試料B)を取り出して試験した。残った反応混合物を減圧しながら210℃に加熱して溶媒を留去し、そののち反応混合物から更なる試料(試料C)を取り出して試験した。充填したアルキルフェノールの質量を最終生成物質量の39質量%とするために、この実施例および以下の追加の実施例の結果を規格化した。
[実施例2] テトラプロペニルフェノールとパラホルムアルデヒドのCMR0.5及び1.0での反応
2リットル反応器に、テトラプロペニルフェノール[TPP](シェブロン・オロナイト・カンパニーLLC製)1048g(4グラムモル)、およびパラホルムアルデヒド[PF]60g(2グラムモル)を充填した。反応混合物をかき混ぜながら110℃に加熱した。15分かけて、C20−C24オレフィンから誘導したC20−C24アルキルベンゼンスルホン酸66g(0.15モル)を添加して、試料Dとした。試料Dは、残留TPP含量が23.9質量%の粘性液体であった(PF/TPP CMR=0.5)。残った反応混合物は、パラホルムアルデヒド66g(2.2モル)の更なる添加で65℃まで冷やされたが、そののち110℃に加熱して、試料Eとした。試料Eは、固体状で残留TPP含量が0.2質量%であった(PF/TPP CMR=1.0)。
[実施例3] テトラプロペニルフェノールとパラホルムアルデヒドのCMR0.25、0.32及び0.40での反応
1リットル反応器に、テトラプロペニルフェノール(シェブロン・オロナイト・カンパニーLLC製、カリフォルニア州サンラモン)524g(2グラムモル)、およびパラホルムアルデヒド15g(0.5グラムモル)を充填した。反応混合物をかき混ぜながら110℃に加熱した。15分かけて、C20−C24a−オレフィンから誘導したアルキルベンゼンスルホン酸33g(0.08モル)を添加した。20分後に、反応混合物から試料(試料F)を取り出して試験した。試料Fは、残留TPP含量が51質量%であった。追加のパラホルムアルデヒド7.5g(0.25グラムモル)を残った反応混合物に添加した。30分後に、反応混合物から試料(試料G)を取り出して試験した。試料Gは、残留TPP含量が35.9質量%であった。次に、追加のパラホルムアルデヒド7.5g(0.25グラムモル)を残った反応混合物に添加した。60分後に、反応混合物から試料(試料H)を取り出して試験した。試料Hは、残留TPP含量が20.4質量%であった。
[実施例4] 過塩基性硫化アルキルフェノールホルムアルデヒドフェネートの製造
4リットル反応器に、テトラプロペニルフェノール(シェブロン・オロナイト・カンパニーLLC製、カリフォルニア州サンラモン)719g(2.74グラムモル)、100ニュートラル油(エクソン100N、エクソン・コーポレーション製)550g、およびパラホルムアルデヒド20.6g(0.687グラムモル)を充填した。反応混合物を110℃に加熱した。15分かけて、C20−C24オレフィンから誘導したC20−C24アルキルベンゼンスルホン酸45.3g(0.10モル)を添加した。その後、イソデカノール406g、水酸化カルシウム338g(4.57モル)、および硫黄粉末113g(3.53モル)を反応混合物に加えた。反応混合物を30分かけて150℃まで加熱した。反応混合物にエチレングリコール206gを更に30分かけて充填した。次に、反応混合物を60分かけて177℃まで加熱し、そののち二酸化炭素101.3g(2.30モル)を、180分かけて反応混合物中に拡散させた。反応混合物を減圧しながら205℃に加熱して溶媒を取り除き、そして珪藻土を用いてろ過して試料Iとした。試料Iは、次の分析データで特徴づけられる:TBN=283mgKOH/g、250TBNでの粘度=208cSt(100℃)、硫黄分=4.1質量%、Ca分=10.6質量%、および残留TPP含量=4.4質量%。
[実施例5] 過塩基性硫化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂と追加の硫黄との反応
1リットル反応器に、実施例4で製造した試料I(フェノール樹脂)250g、および粉末硫黄5g(0.156モル)を充填した。反応混合物を177℃に加熱して1時間保持した。次に、反応混合物を減圧しながら210℃に加熱し、そして210℃で20分間保持して、試料Jとした。試料Jは、次の分析データで特徴づけられる:硫黄分=5.0質量%、および残留TPP含量=1.7質量%。
試料A−JについてHPLCで分析して、残留TPP含量を試料の全質量に基づく質量%で求めた。アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂についても、樹脂の組成(モルパーセント)を決定するためにNMR分光法で分析した。残留TPP含量はNMR分光法でも求めることができて、これをHPLCで求めた残留TPP含量と比較した。第1表に、試料A−Jの試験結果を示す。
Figure 2009132719
Figure 2009132719
[実施例6] アルキルフェノール混合物を用いた過塩基性硫化アルキルフェノールホルムアルデヒドフェネートの製造
4リットル反応器に、テトラプロペニルフェノール(シェブロン・オロナイト・カンパニーLLC製、カリフォルニア州サンラモン)611g(2.33グラムモル)、フェノールをC20-24及びC26-28アルファオレフィンのブレンド(シェブロン・オロナイト・カンパニーLLC製、カリフォルニア州サンラモン)でアルキル化して製造したC20-28アルキルフェノール108g(0.29グラムモル)、100ニュートラル油(エクソン100N、エクソンモービル・コーポレーション(ExxonMobil Corporation)製)575g、およびパラホルムアルデヒド21.5g(0.73グラムモル)を充填した。反応混合物を110℃に加熱した。15分かけて、C20−C24オレフィンから誘導したC20−C24アルキルベンゼンスルホン酸45.3g(0.10モル)を添加した。その後、イソデカノール406g、水酸化カルシウム338g(4.57モル)、および硫黄粉末113g(3.53モル)を反応混合物に加えた。次いで、反応混合物を30分かけて150℃まで加熱した。反応混合物にエチレングリコール206gを更に30分かけて充填した。次に、反応混合物を60分かけて177℃まで加熱し、そののち二酸化炭素101.3g(2.30モル)を、180分かけて反応混合物中に拡散させた。反応混合物を減圧しながら224℃に加熱して溶媒を取り除き、そして珪藻土を用いてろ過して試料6とした。試料6は、次の分析データで特徴づけられる:TBN=265.2mgKOH/g、粘度=346.5cSt(100℃)、硫黄分=3.60質量%、Ca分=9.88質量%、および残留TPP含量=3.2質量%。第2表参照。
第 2 表
────────────────────────────────────
実施例 TPP TBN 100℃粘度 S Ca
(質量%)(mgKOH/g) (cSt) (質量%) (質量%)
────────────────────────────────────
6 3.2 265.2 346.5 3.60 9.88
7 2.3 281.9 376.5 3.26 9.76
8 2.1 279.9 224.6 2.97 9.92
9 2.6 286.4 231.9 3.62 9.78
10 3.5 279.5 302.7 3.50 9.97
11 1.9 262.2 244.6 3.39 9.79
12 2.5 279.3 333.9 3.43 10.13
13 2.8 277.8 199.3 3.42 9.89
────────────────────────────────────
実施例7−13は、テトラプロペニルフェノール、フェノールをC20-24及びC26-28アルファオレフィンのブレンドでアルキル化して製造したC20-28アルキルフェノール、硫黄およびパラホルムアルデヒドのCMRを変えたこと以外は、厳密に実施例6の方法のようにして実施した。第3表に、これをまとめて記す。第2表に、実施例7−13で合成した生成物の化学的及び物理的性状をまとめて記す。
第 3 表
────────────────────────────────────
実施例 テトラプロペニル C20-28アルキル 硫黄 パラホルム
フェノール フェノール アルデヒド
(グラム) (グラム) (グラム) (グラム)
────────────────────────────────────
6 108 611 113 21.5
7 108 611 113 27.4
8 180 539 96 27.4
9 180 539 113 21.5
10 108 611 96 21.5
11 180 539 113 27.4
12 108 611 96 27.4
13 180 539 96 21.5
────────────────────────────────────
結果は、テトラプロペニルフェノールを硫黄および水酸化カルシウムとだけ反応させると、生成物は残留TPPを、生成物の全質量に基づき6.5質量%乃至8.1質量%含んでいたことを示している。テトラプロペニルフェノールをまずホルムアルデヒドと反応させ、次に硫黄および水酸化カルシウムと同時に反応させると、生成物は残留TPPを、生成物の全質量に基づき1.7質量%乃至4.4質量%含んでいた。
本発明について限られた数の実施態様で記載したが、一つの実施態様の特定の特徴が本発明の他の実施態様にもあると考えるべきではない。単一の実施態様が本発明の全ての態様を代表しているわけではない。ある実施態様では、本明細書に記されていない多数の工程が方法に含まれていることがある。別の実施態様では、本明細書に挙げられていない工程は方法に含まれないか、あるいは実質的に含まれないことがある。記載した実施態様からの変形や変更が存在する。添付した特許請求の範囲は、本発明の範囲内に含まれるそのような変形や変更全てを包含することを意図している。
この明細書に記した全ての公報及び特許出願明細書は、各々個々の公報又は特許出願明細書を参照内容として記載すると明確かつ別個に示唆したのと同じ程度にまで、参照内容として本明細書の記載とする。上記の発明について理解を明瞭にするために説明と実施例によってある程度詳しく記載したが、添付した特許請求の範囲の真意又は範囲から逸脱することなく一定の変換や変更を本発明に成しうることは、当該分野の熟練者であれば本発明の教示に照して容易に明らかであろう。

Claims (40)

  1. 下記の工程を含む硫化金属アルキルフェネート組成物の製造方法:
    (a)下記(I)式のフェノール化合物:
    Figure 2009132719
    (式中、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)
    を触媒の存在下で下記式で表わされるアルデヒド:

    2−CHO

    (ただし、R2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)
    と反応させて、下記(II)式のフェノール樹脂:
    Figure 2009132719

    (ただし、mは、1〜50の整数であり、R1とR2は、上に定義した通りである)
    とする工程、そして
    (b)上記フェノール樹脂を、少なくとも一種の金属塩基および第一の硫化剤と同時に反応させて、硫化金属アルキルフェネートを生成させる工程。
  2. 1がアルキルである請求項1に記載の方法。
  3. 1がフェノール環の4位にあるドデシル基である請求項2に記載の方法。
  4. 2がHである請求項3に記載の方法。
  5. 少なくとも一種の金属塩基が、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムである請求項1に記載の方法。
  6. 第一の硫化剤が硫黄である請求項1に記載の方法。
  7. 触媒が酸である請求項1に記載の方法。
  8. 硫化金属アルキルフェネート組成物が、下記(III)−(VI)式のうちの少なくとも一種類を含む請求項1に記載の方法:
    Figure 2009132719
    (式中、Ma 1+およびMc 1+は、各々独立に、一価金属イオンであり、Mb 2+およびMd 2+は、各々独立に二価金属イオンであり、m、n、p、q、r、sおよびtは、各々独立に1〜50の整数であり、xは、0〜2の整数であり、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルであり、そしてR2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)。
  9. nが1である請求項8に記載の方法。
  10. 硫化金属アルキルフェネート組成物が、(IV)式及び(VI)式(但し、Mb 2+およびMd 2+は、各々独立にアルカリ土類金属イオンである)のうちの少なくとも一種類を含む請求項9に記載の方法。
  11. アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンである請求項10に記載の方法。
  12. 1がフェノール環の4位にあるC1225アルキル基であり、そしてR2がHである請求項11に記載の方法。
  13. r、sおよびtの各々が1である請求項12に記載の方法。
  14. 硫化金属アルキルフェネート組成物が、(I)式の未反応フェノール化合物、その金属塩又はそれらの組合せを含み、かつ未反応フェノール化合物及びその金属塩の総量が、硫化金属アルキルフェネート組成物の全質量に基づき約5質量%未満である請求項1に記載の方法。
  15. さらに、硫化金属アルキルフェネート組成物を第二の硫化剤と反応させて、(I)式の未反応フェノール化合物及びその金属塩の総量を、硫化金属アルキルフェネート組成物の全質量に基づき約2.0質量%未満に低減させる工程を含む請求項1に記載の方法。
  16. 第二の硫化剤が硫黄である請求項15に記載の方法。
  17. さらに、硫化金属アルキルフェネート組成物を二酸化炭素と接触させる工程を含む請求項1に記載の方法。
  18. 下記(III)−(VI)式のうちの少なくとも一種類を含む硫化金属アルキルフェネート組成物:
    Figure 2009132719

    (式中、Ma 1+およびMc 1+の各々は独立に、一価金属イオンであり、Mb 2+およびMd 2+の各々は独立に、二価金属イオンであり、m、n、p、q、r、sおよびtの各々は独立に、1〜50の整数であり、xは、0〜2の整数であり、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルであり、そしてR2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)、
    ただし、硫化金属アルキルフェネート組成物中の下記(I)式のフェノール化合物:
    Figure 2009132719


    (式中、R1とR2は、上に定義した通りである)
    及びその金属塩の総量は、硫化金属アルキルフェネート組成物の全質量に基づき約2.0質量%未満である。
  19. (IV)式および(VI)式(ただし、Mb 2+およびMd 2+の各々は独立にアルカリ土類金属イオンである)のうちの少なくとも一種類を含有している請求項18に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  20. アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンである請求項19に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  21. 1がフェノール環の4位にあるC1225アルキル基であり、そしてR2がHである請求項20に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  22. n、r、sおよびtの各々が1である請求項21に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  23. 下記の工程を含む方法により製造された硫化金属アルキルフェネート組成物:
    (a)下記(I)式のフェノール化合物:
    Figure 2009132719
    (式中、R1は、アルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)
    を触媒の存在下で下記式で表わされるアルデヒド:

    2−CHO

    (ただし、R2は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである)
    と反応させて、下記(II)式のフェノール樹脂:
    Figure 2009132719

    (ただし、mは、1〜50の整数であり、R1とR2は、上に定義した通りである)
    とする工程、そして
    (b)上記フェノール樹脂を、少なくとも一種の金属塩基および第一の硫化剤と同時に反応させて、硫化金属アルキルフェネートを生成させる工程。
  24. さらに、硫化金属アルキルフェネート組成物を第二の硫化剤と反応させて、硫化金属アルキルフェネート組成物中の未反応フェノール化合物及びその金属塩の総量を、硫化金属アルキルフェネート組成物の全質量に基づき約2.0質量%未満に低減する工程を含む請求項23に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  25. 第二の硫化剤が硫黄である請求項24に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  26. 第一の硫化剤が硫黄である請求項23に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  27. 少なくとも一種の金属塩基が、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムである請求項23に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  28. 触媒が酸である請求項23に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  29. 1がアルキルである請求項23に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  30. 1がフェノール環の4位にあるドデシル基である請求項25に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  31. 2がHである請求項26に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物。
  32. 潤滑粘度の基油および請求項18に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物を含む潤滑油組成物。
  33. 潤滑粘度の基油および請求項23に記載の硫化金属アルキルフェネート組成物を含む潤滑油組成物。
  34. さらに、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、清浄剤、さび止め添加剤、抗乳化剤、摩擦緩和剤、多機能添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、金属不活性化剤、分散剤、腐食防止剤、潤滑性向上剤、熱安定性向上剤、防曇剤、氷結防止剤、染料、マーカー、静電放散剤、殺生剤およびそれらの組合せからなる群より選ばれた少なくとも一種の添加剤を含む請求項32に記載の潤滑油組成物。
  35. さらに、工程(b)の生成物を二酸化炭素と反応させる工程を含む請求項1に記載の方法。
  36. 二酸化炭素との反応を、エチレングリコールの存在下で行なう請求項35に記載の方法。
  37. 請求項35に記載の方法により製造された過塩基性硫化金属アルキルフェネート組成物。
  38. 請求項36に記載の方法により製造された過塩基性硫化金属アルキルフェネート組成物。
  39. 主要量の潤滑粘度の基油および請求項37に記載の過塩基性硫化金属アルキルフェネート組成物を含む潤滑油組成物。
  40. 主要量の潤滑粘度の基油および請求項38に記載の過塩基性硫化金属アルキルフェネート組成物を含む潤滑油組成物。
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