JP2016115378A - 磁気記録媒体用ガラス基板、および磁気記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気記録媒体の読み書きを安定的に行う、磁気記録媒体用ガラス基板を提供する。【解決手段】磁性層が形成される主平面を有する、磁気記録媒体用ガラス基板であって、ガラス基板の主平面の表層における第13族元素の原子濃度の合計をC1(原子%)、表層におけるSi元素の原子濃度をC2(原子%)、ガラス基板の内部における第13族元素の合計をC3(原子%)、ガラス基板の内部におけるSi元素の原子濃度をC4(原子%)としたときに、下記の式(1)で表されるR1が0.30〜0.90である。【選択図】なし

Description

本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板、および磁気記録媒体に関する。
磁気記録媒体用ガラス基板は、さらなる記録密度の高密度化を図るために、表面粗さを小さくし、表面に存在する欠陥を少なくすることが求められている。例えば特許文献1には、添加剤を含む研磨液を用いてガラス基板の主平面を研磨すること、添加剤を含む洗浄液を用いて研磨したガラス基板を洗浄することにより、高記録密度磁気ディスク用の基板に好適な磁気ディスク用ガラス基板を製造することが記載されている。研磨後のガラス基板の主平面に磁性層などの膜を成膜することにより磁気記録媒体が得られる。
WO2010/038741A1
磁気記録媒体の高密度化により、磁気記録媒体の読み書きを行うヘッドの磁気記録媒体からの浮上高さ(以下、単に「ヘッドの浮上高さ」ともいう)の低減が要望されている。
磁気記録媒体の高密度化に伴い、ヘッドの浮上高さを低減し、磁気記録媒体の読み書きを安定的に行うことが困難となる問題が生じてきた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、磁気記録媒体の読み書きを安定的に行うことができる、磁気記録媒体用ガラス基板の提供を主な目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
磁性層が形成される主平面を有する、磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記ガラス基板の前記主平面の表層における第13族元素の原子濃度の合計をC1(原子%)、前記表層におけるSi元素の原子濃度をC2(原子%)、前記ガラス基板の内部における第13族元素の合計をC3(原子%)、前記ガラス基板の内部におけるSi元素の原子濃度をC4(原子%)としたときに、下記の式(1)で表されるR1が0.30〜0.90である、磁気記録媒体用ガラス基板が提供される。
Figure 2016115378
本発明の一態様によれば、磁気記録媒体の読み書きを安定的に行うことができる、磁気記録媒体用ガラス基板が提供される。
本発明の一実施形態による磁気記録媒体用ガラス基板を示す斜視図である。 本発明の一実施形態によるガラス基板を用いた磁気記録媒体を示す断面図である。 本発明の一実施形態によるガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態によるガラス基板における各元素の原子濃度の測定に用いるX線光電子分光装置を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。本明細書において、数値範囲を表す「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味する。
図1は、本発明の一実施形態による磁気記録媒体用ガラス基板を示す斜視図である。磁気記録媒体用ガラス基板10(以下、単に「ガラス基板10」ともいう)は、円盤状であって、中央部に円孔13を有する。ガラス基板10は、第1主平面11および第2主平面12を有する。
図2は、本発明の一実施形態によるガラス基板を用いた磁気記録媒体を示す断面図である。磁気記録媒体20は、ガラス基板10、磁性層21、保護層22、および潤滑層23などを有する。磁性層21、保護層22、および潤滑層23は、この順で、ガラス基板10の第1主平面11に形成されるが、ガラス基板10の第2主平面12に形成されてもよく、これらの両主平面(第1主平面11および第2主平面12)に形成されてもよい。
磁性層21は、垂直磁気記録用のものであってよく、この場合、記録面に対して垂直な磁化容易軸を有する。記録密度向上の観点から、記録方式は、エネルギーアシスト磁気記録方式が望ましい。
磁性層21は、垂直磁気記録用のものである場合、Co、Cr、Ptのうちの少なくとも1種類を含む材料で形成され、例えばCoCrPt系合金で形成される。磁性層21は、グラニューラ構造とするため、CoCrPt系合金などの磁性材料に対し、酸化物、半金属元素、または金属元素を添加したものであることが好ましい。酸化物としては、例えばSiO、Cr、CoO、Ta、またはTiOが用いられる。半金属元素としては、例えばBが用いられる。金属元素としては、例えばCr、Cu、Ta、またはZrが用いられる。
磁性層21は、非磁性層と交互に積層されてもよい。これにより、磁性層21を反強磁性交換結合させることができる。非磁性層は、例えばRuまたはRu合金で形成され、例えば0.6〜1.2nmの厚さを有する。
磁性層21とガラス基板10との間には、下地層がさらに形成されてもよい。磁性層21が垂直磁気記録用のものである場合、下地層は、Co、Fe、またはNiなどの軟磁性材料で形成され、ヘッドからの記録磁界を環流させる役割を果たす。軟磁性材料としては、FeCo系合金、FeNi系合金、FeAl系合金、FeCr系合金、FeTa系合金、FeMg系合金、FeZr系合金、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、またはFeB系合金などが用いられる。
ガラス基板10と下地層との間には、密着層がさらに形成されてもよい。密着層は、ガラス基板10の吸着ガスや吸着水分、ガラス基板10からの拡散成分などによる下地層の腐食を抑制する。密着層の材料としては、Cr、Cr合金、Ti、またはTi合金などが用いられる。密着層の厚さは例えば2〜40nmである。密着層の形成方法としては、例えばスパッタ法などが用いられる。
磁性層21と下地層との間には、配向制御層がさらに形成されてもよい。配向制御層は、磁性層の結晶粒を微細化し、記録再生特性を向上させる。配向制御層の材料としては、Ru、Ru合金、PtとAuとAgとの少なくとも1つを含む材料、CoCr系合金、Ti、またはTi合金が用いられる。配向制御層は、垂直磁気記録用の磁性層21のエピタキシャル成長を容易にする機能、および下地層と磁性層との磁気交換結合を断つ機能を有する。
配向制御層と下地層との間には、シード層がさらに形成されてもよい。シード層は、配向制御層の結晶粒径を制御する。シード層は、例えばNiW系合金で形成される。
保護層22は、磁性層21の腐食を防止し、且つ、ヘッドとの接触による磁性層21の傷の発生を防止する。保護層22の材料としては、C、ZrO、またはSiOなどが用いられる。保護層22の形成方法としては、例えばスパッタ法、またはCVD法などが用いられる。
潤滑層23は、ヘッドとの摩擦を低減する。潤滑層23の材料としては、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、またはフッ素化カルボン酸などが用いられる。潤滑層23の形成方法としては、例えばディップ法、またはスプレー法などが用いられる。
磁気記録媒体20の記録密度は、例えば660Gbit/in、750Gbit/in、1Tbit/inのいずれでもよく、1Tbit/inを超えてもよい。
図3は、本発明の一実施形態によるガラス基板の製造方法を示すフローチャートである。図3に示すように、ガラス基板の製造方法は、素板加工工程S11、第1ラップ工程S12、面取工程S13、端面研磨工程S14、第2ラップ工程S15、第1研磨工程S16、第1洗浄工程S17、第2研磨工程S18、および第2洗浄工程S19を有する。
素板加工工程S11は、ガラス素板を加工することにより、中央部に円孔を有する円盤状のガラス基板を得る。ガラス素板は、例えばフロート法、フュージョン法、プレス成形法、ダウンドロー法、リドロー法などで成形される。
第1ラップ工程S12では、ガラス基板の両主平面を研削する。ガラス基板の両主平面を同時に研削する両面研削装置が用いられる。この両面研削装置は、例えば酸化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、ホウ化炭素、ダイヤモンドなどの遊離砥粒を用いて、ガラス基板の両主平面を同時に研削する。尚、一部のラップ工程は、素板加工工程の前に実施されてもよい。
面取工程S13は、面取砥石でガラス基板の端面(内周端面および外周端面)を研削することにより、ガラス基板の端面に面取り部(例えば2つの傾斜部および垂直部)を形成する。各傾斜部はガラス基板の主平面に対して斜めとされ、垂直部はガラス基板の主平面に対して垂直とされ、2つの傾斜部を接続する。尚、各傾斜部は平面でなくてもよく、丸みを帯びた曲面でもよい。
端面研磨工程S14は、2つの傾斜部および垂直部を研磨することにより、2つの傾斜部および垂直部における加工変質層を除去する。端面研磨方法としては、ブラシ研磨、スポンジ研磨、粘性流体研磨、磁性流体研磨などが挙げられる。
尚、複数の端面研磨工程が順次行われてもよく、一部の端面研磨工程は第2ラップ工程S15の後、第1研磨工程S16の前に行われてもよい。複数の端面研磨工程の間には、洗浄工程や乾燥工程が行われてよい。
第2ラップ工程S15では、ガラス基板の両主平面を研削する。ガラス基板の両主平面を同時に研削する両面研削装置が用いられる。この両面研削装置は、例えばダイヤモンド砥粒などの固定砥粒を用いて、ガラス基板の両主平面を同時に研削する。
第1研磨工程S16では、ガラス基板の両主平面を研磨する。ガラス基板の両主平面を同時に研磨する両面研磨機が用いられてよい。両面研磨機は、例えば酸化セリウムなどの研磨砥粒を含む研磨液を用いて、ガラス基板の両主平面を同時に研磨する。
第1洗浄工程S17では、第1研磨工程S16の後、第2研磨工程S18の前に行われ、第1研磨工程S16においてガラス基板に付着した付着物(例えば研磨屑、研磨砥粒)などを洗い落とす。
第2研磨工程S18では、ガラス基板の両主平面を研磨する。ガラス基板の両主平面を同時に研磨する両面研磨機が用いられてよい。第2研磨工程S18の詳細については後述する。
第2洗浄工程S19は、第2研磨工程S18の後に行われ、第2研磨工程S18においてガラス基板に付着した付着物などを洗い落とす。第2洗浄工程S19の詳細については後述する。
尚、ガラス基板の製造方法は、図3に示すものに限定されない。例えば各工程の順序は、図3に示す順序に限定されない。また、図3に示す複数の工程のうちの一部の工程が実施されなくてもよい。また、図3に示す工程以外の工程(例えば化学強化工程)が実施されてもよい。
化学強化工程は、例えば第1研磨工程S16と第2研磨工程S18との間、または第2研磨工程S18の後に行われる。化学強化工程では、ガラス表面に含まれる小さなイオン半径のイオン(例えばLiイオンやNaイオン)を大きなイオン半径のイオン(例えばKイオン)に置換し、ガラス表面から所定の深さの強化層を形成する。強化層には圧縮応力が残留するため、傷が付きにくい。
次に、第2研磨工程S18について詳説する。第2研磨工程S18では、酸性の研磨液を用いる。ガラス表層に含まれるアルカリ金属や第2族元素、第13族元素などのイオンが溶出し、研磨速度が向上する。アルカリ金属としては、Li、Na、Kなどが挙げられる。第2族元素としては、Mg、Ca、Sr、Baなどが挙げられる。第13族元素としては、例えばB、Al、Gaなどが挙げられる。これらのイオンが溶出した層を表面改質層と呼ぶ。表面改質層の表面は研磨によって平坦とされる。
研磨液のpHは、例えば3〜5である。研磨液のpHが5以下の場合、イオンの溶出速度が速く、研磨速度が十分に向上する。研磨液のpHが3以上の場合、研磨後の表面改質層の厚さが薄いため、詳しくは後述するが第2洗浄工程S19において表面改質層の一部を除去した後の表面荒れが抑制できる。
研磨液に含まれる酸としては、例えばクエン酸、酢酸、グリコール酸(ヒドロキシ酢酸)、メトキシ酢酸、シアン酢酸、マロン酸、メチルマロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、フタル酸、コハク酸、アスパラギン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、グルタル酸、アジピン酸、グルタミン酸、およびイミノニ酢酸のうちの少なくとも1つが用いられる。これらのうち、特に、酸隔離定数の負の常用対数(pK)が3〜5であるクエン酸、酢酸、グリコール酸、メトキシ酢酸、マロン酸、リンゴ酸、フマル酸、アスコルビン酸が好ましい。
研磨液に分散させる研磨砥粒としては、例えばコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルセリア、およびコロイダル酸化アルミニウムの少なくとも1つが用いられる。これらの研磨砥粒の粒子径は、例えば10〜40nmである。研磨砥粒の粒子径が10nm以上の場合、研磨砥粒の表面活性が小さく、研磨砥粒のガラス基板への付着が抑制でき、研磨砥粒の除去が容易である。一方、研磨砥粒の粒子径が40nm以下の場合、研磨面の表面荒れが抑制できる。
次に、第2洗浄工程S19について説明する。第2洗浄工程S19では、pH12〜13.5、40〜60℃のアルカリ洗浄液(以下、「強アルカリ洗浄液」ともいう)を用いて1回以上ガラス基板を洗浄する。強アルカリ洗浄液による総洗浄時間は、例えば30秒〜5分である。表面改質層が強アルカリ洗浄液に溶けて薄くなり、表面改質層の一部が除去される。強アルカリ洗浄液を用いた洗浄は、超音波洗浄であることが好ましい。
強アルカリ洗浄液に含まれるアルカリとしては、例えばNaOH、またはKOHが好ましい。
強アルカリ洗浄液には、通常のアルカリ洗浄液(アルカリ性洗剤溶液)に含まれる界面活性剤やビルダーは含まれなくてもよい。
第2洗浄工程S19では、強アルカリ洗浄液による洗浄の後、通常のアルカリ洗浄液による洗浄を行ってもよい。また、第2洗浄工程S19では、純水による洗浄を行ってもよい。
第2洗浄工程S19の後、乾燥工程が行われてよい。乾燥工程では、例えばIPA乾燥を行ってよい。
図3に示す製造方法により、図1に示すガラス基板10が得られる。本実施形態によれば、酸性の研磨液によって表面改質層を形成し、表面改質層の一部を強アルカリ洗浄液によって除去する。これにより、ガラス基板の表層(例えば表面改質層の残部など)における元素組成とガラス基板の内部における元素組成との比が適正な範囲に調整できる。ガラス基板の表層や内部における元素組成は、市販のX線光電子分光装置を用いて測定できる。
図4は、本発明の一実施形態によるガラス基板における各元素の原子濃度の測定に用いるX線光電子分光装置を示す図である。X線光電子分光装置30は、X線源31と、検出器32とを有する。ガラス基板10の主平面の表層における各元素の原子濃度は、ガラス基板10の主平面に対する検出器32の角度θを15°として測定する。一方、ガラス基板10の内部における各元素の原子濃度は、X線光電子分光装置内でイオンスパッタリングを実施し表面改質層を完全に除去した後、上記角度θを75°として測定する。ガラス基板10の内部における各元素の原子濃度は、酸性の研磨液や強アルカリ洗浄液を用いる前のガラス基板の各元素の原子濃度と略同じである。イオンスパッタリングには、例えばC60イオンスパッタ銃を用いる。
本実施形態では、ガラス基板10の主平面の表層における第13族元素の原子濃度の合計をC1(原子%)、上記表層におけるSi元素の原子濃度をC2(原子%)、ガラス基板10の内部における第13族元素の合計をC3(原子%)、ガラス基板10の内部におけるSi元素の原子濃度をC4(原子%)としたときに、下記の式(1)で表されるR1が0.30〜0.90である。
Figure 2016115378
式(1)の右辺の分子(C1/C2)は、上記表層における第13族元素の原子濃度の合計C1を、上記表層におけるSi元素の原子濃度C2で規格化した値を表す。式(1)の右辺の分子は、酸性の研磨液を用いることで減少し、その後に強アルカリ洗浄液を用いることで元の値に近づく。
一方、式(1)の右辺の分母(C3/C4)は、上記内部における第13族元素の原子濃度の合計C3を、上記内部におけるSi元素の原子濃度C4で規格化した値を表す。式(1)の右辺の分母は、酸性の研磨液や強アルカリ洗浄液を用いることでほとんど変化しない。
R1が0.90以下である場合、第13族元素のイオンの溶出が多く、ガラス基板10の主平面に付くOH基が多い。ガラス基板10の主平面のOH基が多いため、磁性層21などの膜とガラス基板10との密着性が良い。磁性層21などの膜の剥離が抑制でき、磁気記録媒体20の読み書きを行うヘッドの磁気記録媒体20からの浮上高さが低減できる。
また、R1が0.30以上である場合、ガラス基板10の主平面に存在するOH基が多過ぎず、ゴミなどの有機物の付着が抑制できる。有機物が付着すると、磁性層21などの膜とガラス基板10との密着性が悪化する。
ガラス基板10の両主平面のうち少なくとも一方においてR1が0.30〜0.90であればよい。R1が0.30〜0.90である主平面に、磁性層21などの膜が形成される。
R1は、好ましくは0.35〜0.90、より好ましくは0.35〜0.80、さらに好ましくは0.35〜0.70である。
尚、ガラス基板10は、第13族元素として、AlおよびBの少なくとも一方を含めばよく、両方を含まなくてもよい。
本実施形態では、上記表層におけるアルカリ金属の原子濃度の合計をC5(原子%)、上記表層における第2族元素の原子濃度の合計をC6(原子%)、ガラス基板10の内部におけるアルカリ金属の原子濃度の合計をC7(原子%)、ガラス基板10の内部における第2族元素の原子濃度の合計をC8(原子%)としたときに、下記の式(2)で表されるR2が0.20〜0.90である。
Figure 2016115378
式(2)の右辺の分子((C5+C6)/C2)は、上記表層におけるアルカリ金属および第2族元素の原子濃度の合計(C5+C6)を、上記表層におけるSi元素の原子濃度C2で規格化した値を表す。式(2)の右辺の分子は、酸性の研磨液を用いることで減少し、その後に強アルカリ洗浄液を用いることで元の値に近づく。
一方、式(2)の右辺の分母((C7+C8)/C4)は、上記内部におけるアルカリ金属および第2族元素の原子濃度の合計(C7+C8)を、上記内部におけるSi元素の原子濃度C4で規格化した値を表す。式(2)の右辺の分母は、酸性の研磨液や強アルカリ洗浄液を用いることでほとんど変化しない。
R2が0.90以下である場合、ガラス基板10の主平面の表層におけるアルカリ金属および第2族元素が少なく、これらの元素と、硫酸ガスや炭酸ガスなどとの反応が抑制できる。この反応が生じると、硫酸塩や炭酸塩などの凸状欠陥がガラス基板10の主平面に形成される。本実施形態によれば、凸状欠陥の形成が抑制でき、ヘッドの浮上高さが低減できる。また、ヘッドと磁気記録媒体20との衝突が回避できる。
また、R2が0.20以上である場合、ガラス基板10の出荷後、磁性層21などの膜の成膜の直前に行われるアルカリ洗浄工程においてガラス基板10の主平面の表面粗さの変化が抑制できる。これは、R2が0.20以上の場合、第2洗浄工程S19によって表面改質層の厚さが十分に薄くなっており、予め表面改質層が十分に除去されているためである。
R2は、好ましくは0.40〜0.90、より好ましくは0.50〜0.90、さらに好ましくは0.55〜0.90、特に好ましくは0.55〜0.75である。
ガラス基板10は、例えば酸化物基準のモル%表示で、SiOを62〜74%、AlおよびBのいずれか1成分以上を5〜30%、MgO、CaO、SrOおよびBaOのいずれか1成分以上を合計で0〜10%含有し、LiO、NaOおよびKOのいずれか1成分以上を合計で0〜23%含む。
[例1〜4]
例1〜4では、異なる組成のガラスA〜Dを用意した以外、同じ条件で外径65mm、内径20mm、板厚0.6mmのガラス基板を製造した。また、例1〜4では、製造された各ガラス基板を用いて磁気記録媒体を製造した。磁気記録媒体の製造条件は同一とした。
ガラスAは、酸化物基準のモル%表示で、SiOを66%、Alを10%、MgOを3%、CaOを4%、LiOを7%、NaOを10%含む。
ガラスBは、酸化物基準のモル%表示で、SiOを65%、Alを9%、ZrOを3%、LiOを12%、NaOを11%含む。
ガラスCは、酸化物基準のモル%表示で、SiOを65%、Alを11%、ZrOを2%、LiOを13%、NaOを6%、KOを3%含む。
ガラスDは、酸化物基準のモル%表示で、SiOを66%、Alを11%、Bを8%、MgOを5%、CaOを5%、SrOを5%含む。
素板加工工程S11では、ガラスA〜ガラスDで形成されるガラス素板を加工することにより、中央部に円孔を有する円盤状のガラス基板を得た。
第1ラップ工程S12では、両面研削装置(浜井産業社製、製品名:16BF−4M5P)により各ガラス基板の両主平面を研削した。遊離砥粒としては、平均粒径が1.5μmの酸化アルミニウム砥粒を用いた。両主平面の板厚方向における総研削量は約300μmであった。
面取工程S13では、面取砥石で各ガラス基板の端面(内周端面および外周端面)を研削することにより、各ガラス基板の端面に2つの傾斜部および垂直部を形成した。各傾斜部の傾斜角は45°とした。
端面研磨工程S14では、2つの傾斜部および垂直部をブラシ研磨することにより、2つの傾斜部および垂直部における加工変質層を除去した。
第2ラップ工程S15では、両面研削装置(浜井産業社製、製品名:16BF−4M5P)により各ガラス基板の両主平面を研削した。固定砥粒としては、平均粒径が4μmのダイヤモンド砥粒を用いた。両主平面の板厚方向における総研削量は136μmであった。
第2ラップ工程S15の後、研削された各ガラス基板を、アルカリ性洗剤溶液に浸漬した状態で超音波洗浄した。
第1研磨工程S16では、両面研磨装置により各ガラス基板の両主平面を研磨した。研磨液としては、平均粒径0.8〜1μmの酸化セリウム砥粒を含むものを用いた。研磨パッドとしては、スエードパッドを用いた。両主平面の板厚方向における総研磨量は25μmであった
第1洗浄工程S17では、各ガラス基板を純水に浸漬した後、アルカリ性洗剤溶液に浸漬した状態で超音波洗浄した。次いで、純水によるリンスの後、硫酸71.4質量%、過酸化水素水7.7質量%の水溶液を80°に加温し、その水溶液に各ガラス基板を浸漬して洗浄を行った。その後、純水によるリンスを行った。
第2研磨工程S18では、両面研削装置(浜井産業社製、製品名:16BF−4M5P)により各ガラス基板の両主平面を研磨した。研磨砥粒としては一次粒子の平均粒径が15nmのコロイダルシリカを用い、このコロイダルにクエン酸を加えてpHを4.0に調整したものを研磨液として用いた。研磨パッドは、ショアA硬度が60°、密度が0.62g/cmのスエードパッドを使用した。研磨の後、純水で水洗した。
第2洗浄工程S19では、各ガラス基板をpH12、40℃のNaOH水溶液に浸漬した状態で2分間超音波洗浄を実施した。次いで、純水によるリンス後、pH10の洗剤にてスクラブ洗浄を行い、続いてpH12のアルカリ性洗剤溶液にて超音波洗浄を室温で3分実施した。その後、純水によるリンス、IPA乾燥を実施した。
製造した各ガラス基板の各元素の原子濃度は、X線光電子分光装置(アルバック ファイ社製、ESCA5500)により測定した。
はじめに、ガラス基板の表層における各元素の原子濃度を、下記(A)〜(B)の方法で求めた。(A)Pass Energyを117.4eV、Energy Stepを0.5eV/step、検出器のアパーチャーを直径800μmの円形、角度θを15°としてXPSスペクトルを取得する。(B)解析ソフト(ソフト名:マルチパック)を用い、XPSスペクトルの各元素のピークの積分強度から原子濃度を求める。このとき、ピークのバックグラウンド除去にはShirley法を適用する。
次に、ガラス基板の内部における各元素の原子濃度を、下記(C)〜(E)の方法で求めた。(C)C60イオンスパッタリングによる深さ方向組成分析を実施する。このとき、各原子の濃度が深さ方向で一定となる領域まで測定を行う。なお、C60イオンスパッタリングではガラス基板の正確な深さ方向分析が可能となる。(D)イオンスパッタリング実施面について、Pass Energyを117.4eV、Energy Stepを0.5eV/step、検出器のアパーチャーを直径800μmの円形、角度θを75°としてXPSスペクトルを取得する。(E)解析ソフト(ソフト名:マルチパック)を用い、XPSスペクトルの各元素のピークの積分強度から原子濃度を求める。このとき、ピークのバックグラウンド除去にはShirley法を適用する。
最後に、これらの測定結果を用いて、上記式(1)で表されるR1、および上記式(2)で表されるR2を算出する。
製造した各ガラス基板の主平面の表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(SII社製、SPA400)により測定した。測定エリアは一辺1μmの正方形、測定周波数は1Hz、測定点は1辺あたり256点として、全面で65536点とした。測定モードはタッピングモードとした。表面粗さRaは、原子間力顕微鏡に付属するソフトを用いて傾き補正(2次曲面補正)を行った後に算出した。ここで、表面粗さRaとは、日本工業規格(JIS B 0601)に記載の算術平均粗さである。
製造した各ガラス基板を用いて下記(F)〜(I)の工程を実施することにより、磁気記録媒体を製造した。
(F)各ガラス基板を、pH12、40℃のNaOH水溶液に浸漬した状態で10分間、40kHzの超音波洗浄を行った。その後、純水によるリンス、IPA乾燥を行った。その後、各ガラス基板の主平面の表面粗さを上記原子間力顕微鏡により測定し、(F)の工程の前後での表面粗さRaの変化ΔRaを求めた。ここで、(F)の工程の後の表面粗さRaをRa1、(F)の工程の前の表面粗さRa2とすると、ΔRaはΔRa=Ra1−Ra2の式から求められる。
(G)インライン型スパッタリング装置により、密着層としてのCr層(層厚10nm)、下地層としてのCo−Fe−Zr−Ta合金層(層厚30nm)、シード層としてのNiW合金層(層厚10nm)、配向制御層としてのRu層(層厚10nm)、磁性層としてのグラニュラ構造層(層厚10nm)、非磁性層としてのRu層(層厚0.6nm)、磁性層としてのグラニュラ構造層(層厚6nm)をこの順でガラス基板の主平面に成膜した。各グラニュラ構造層は、CoCrPt合金にSiOを添加したものである。
(H)CVD法により、保護層としてのカーボン膜(膜厚3nm)を成膜した。
(I)ディップ法により、パーフルオロポリエーテルの潤滑層(層厚2nm)を形成した。
製造した磁気記録媒体は、グライドハイトと、エキストラビットとで評価した。
グライドハイトは、磁気記録媒体上の凸状欠陥の高さを評価するものである。磁気記録媒体を回転させ、所定の高さにヘッドを浮上させる。ヘッドが凸状欠陥と衝突したときの衝撃を電気信号に変換することで、凸状欠陥の高さが評価できる。ヘッドとしては、DFH(Dynamic Flying Height)機能を有する磁気ヘッドを使用した。浮上高さ5nmの場合に衝撃がないものを「A」、浮上高さ10nmの場合には衝撃がないが浮上高さ5nmの場合には衝撃があるものを「B」、浮上高さ10nmの場合に衝撃があるものを「C」とする。
エキストラビットは、磁気記録媒体上のトラックに沿って記録された複数のデータをヘッドで読み、ヘッドからの出力信号が閾値を超えたデータの個数をカウントすることで、磁気記録媒体の品質を評価する。ヘッドとしては、DFH(Dynamic Flying Height)機能を有する磁気ヘッドを使用した。ヘッドの浮上高さは1nmに設定した。ヘッドからの出力信号が閾値を超えたデータの平均個数が0.4未満のものを「A」、0.4以上0.6未満のものを「B」、0.6以上のものを「C」とする。
[例5]
比較例1では、第2洗浄工程S19の代わりに下記の洗浄工程を行った以外、実施例2と同じ条件でガラス基板、および磁気記録媒体を製造し、評価した。
比較例1では、第2洗浄工程S19の代わりの洗浄工程として、純水で2分間超音波洗浄を実施した。次いで、純水によるリンスの後、pH10のアルカリ性洗剤溶液によるスクラブ洗浄を行い、その後、純水にて室温で2分間超音波洗浄を実施した。その後、純水によるリンス、IPA乾燥を実施した。
[例6]
比較例2では、第2洗浄工程S19の代わりに下記の洗浄工程を行った以外、実施例3と同じ条件でガラス基板、および磁気記録媒体を製造し、評価した。
比較例2では、第2洗浄工程S19の代わりの洗浄工程として、純水で2分間超音波洗浄を実施した。次いで、純水によるリンスの後、pH10のアルカリ性洗剤溶液によるスクラブ洗浄を行い、その後、純水にて室温で2分間超音波洗浄を実施した。その後、純水によるリンス、IPA乾燥を実施した。
[例7]
比較例3では、第2洗浄工程S19の代わりに下記の洗浄工程を行った以外、実施例3と同じ条件でガラス基板、および磁気記録媒体を製造し、評価した。
比較例3では、第2洗浄工程S19の代わりの洗浄工程として、純水で2分間超音波洗浄を実施した。次いで、純水によるリンスの後、pH5の溶液によるスクラブ洗浄を行い、その後、純水にて室温で2分間超音波洗浄を実施した。その後、純水によるリンス、IPA乾燥を実施した。
[評価結果]
例1〜7において用意したガラスの種類、および評価結果を表1に示す。
Figure 2016115378
表1から明らかなように例1〜4では、第2洗浄工程S19において強アルカリ洗浄液による洗浄を実施したため、R1およびR2を適切な範囲に収めることができた。よって、ΔRaが0.03以下と小さく、且つ、グライドハイトの評価およびエキストラビットの評価が良かった。一方、例5〜6では、R1およびR2が小さ過ぎ、ΔRaが0.05以上と大きかった。特に例6では、グライドハイトの評価およびエキストラビットの評価も悪かった。また、例7では、R1が大き過ぎ、エキストラビットの評価が悪かった。
以上、磁気記録媒体用ガラス基板、および磁気記録媒体の実施形態などを説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
10 磁気記録媒体用ガラス基板
11 第1主平面
12 第2主平面
20 磁気記録媒体
21 磁性層
22 保護層
23 潤滑層

Claims (4)

  1. 磁性層が形成される主平面を有する、磁気記録媒体用ガラス基板であって、
    前記ガラス基板の前記主平面の表層における第13族元素の原子濃度の合計をC1(原子%)、前記表層におけるSi元素の原子濃度をC2(原子%)、前記ガラス基板の内部における第13族元素の合計をC3(原子%)、前記ガラス基板の内部におけるSi元素の原子濃度をC4(原子%)としたときに、下記の式(1)で表されるR1が0.30〜0.90である、磁気記録媒体用ガラス基板。
    Figure 2016115378
  2. 前記表層におけるアルカリ金属の原子濃度の合計をC5(原子%)、前記表層における第2族元素の原子濃度の合計をC6(原子%)、前記ガラス基板の内部におけるアルカリ金属の原子濃度の合計をC7(原子%)、前記ガラス基板の内部における第2族元素の原子濃度の合計をC8(原子%)としたときに、下記の式(2)で表されるR2が0.20〜0.90である、請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
    Figure 2016115378
  3. 酸化物基準のモル%表示で、SiOを62〜74%、AlおよびBのいずれか1成分以上を5〜30%、MgO、CaO、SrOおよびBaOのいずれか1成分以上を合計で0〜10%含有し、LiO、NaOおよびKOのいずれか1成分以上を合計で0〜23%含む、請求項1または2に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板を用いた、磁気記録媒体。
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