JP2016108281A - エポキシ化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明が解決しようとする課題は、エポキシ化が困難なオレフィン化合物類であっても、目的とするエポキシ化合物を効率的且つ高収率で得ることができるエポキシ化合物の製造方法を提供することにある。【解決手段】本発明のエポキシ化合物の製造方法は、エポキシ化触媒存在下、炭素数3以上のオレフィン化合物と過酸化水素を減圧下で反応させることを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、種々のオレフィン化合物を反応効率よく、且つ高収率でエポキシ化合物にすることのできるエポキシ化合物の製造方法に関する。
エポキシ化合物は、樹脂、塗料、医薬、農薬、電子材料等の様々な分野の原料として利用されている。エポキシ化合物の製造にはいくつかの方法があり、その中で最も一般的に行われているのはエピクロルヒドリンとアルコール類を反応させる方法である。この方法は、大量生産に向いており、得られたエポキシ化合物は安価であることから、多くの分野で使用されているが、得られるエポキシ化合物中には原料由来のハロゲン含有不純物が数%含有し、これを全て取り除くことは非常に困難と言える。よって、ハロゲン原子を嫌う電子材料分野での使用制限や、廃棄物の処理に係るダイオキシン問題等からハロゲン含有不純物を含まないエポキシ化合物の開発が強く求められていた。
ハロゲン含有不純物を含まないエポキシ化合物を得る方法として、例えば特許文献1には、脂環式オレフィン類と過酸化水素水を水不溶性溶媒の存在下反応させて脂環式エポキシ化合物を製造する際に、予め触媒であるタングステン酸と燐酸化合物を過酸化水素水に溶解すること及びオニウム塩を水不溶性溶媒に溶解して使用することを特徴とする脂環式オレフィンのエポキシ化法が開示されている。また、特許文献2には、分子内に炭素原子を6〜30個有するα−オレフィン類をエポキシ化する際、酢酸、及び鉱酸の存在下、過酸化水素を添加して、反応系の中で過酢酸を生成せしめながらエポキシ化反応を行わせる方法(in−situ法)において、中性塩を、水相を形成する成分(過酸化水素、酢酸、鉱酸、水、及び塩)中の組成比率として、2〜30重量%の範囲で添加し、かつ水相のpHを0〜1の範囲を維持することを特徴とするα−オレフィンオキサイドの製造方法が開示されている。更に、特許文献3には、水に溶解したときに塩基性を示す過酸化物と酸無水物とを含有するエポキシ化用酸化剤組成物とオレフィン類とを反応させることを特徴とするオレフィン類のエポキシ化方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1のエポキシ化法は、脂環式オレフィン等の比較的エポキシ化が容易なオレフィン化合物をエポキシ化する方法としては有効であるが、α−オレフィン等のエポキシ化が困難なオレフィン化合物を、収率よくエポキシ化することは難しかった。また、特許文献2や特許文献3の方法は、多量の原料を使用するため、副生物が多量に発生する問題があり、廃棄等の問題から現実的な製造方法とはいえない。そのため、市場は、エポキシ化が困難なオレフィン化合物であっても、効率的且つ高収率で目的とするエポキシ化合物を得る製造方法の開発を求めていた。
従って、本発明が解決しようとする課題は、エポキシ化が困難なオレフィン化合物類であっても、目的とするエポキシ化合物を効率的且つ高収率で得ることができるエポキシ化合物の製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者等は、鋭意検討の結果、オレフィン化合物のエポキシ化反応に最適な反応条件を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、エポキシ化触媒存在下、炭素数3以上のオレフィン化合物と過酸化水素を減圧下で反応させることを特徴とするエポキシ化合物の製造方法である。
即ち、本発明は、エポキシ化触媒存在下、炭素数3以上のオレフィン化合物と過酸化水素を減圧下で反応させることを特徴とするエポキシ化合物の製造方法である。
本発明の効果は、エポキシ化が困難なオレフィン化合物類であっても、目的とするエポキシ化合物を効率的且つ高収率で得ることができるエポキシ化合物の製造方法を提供したことにある。
本発明は、エポキシ化が困難なオレフィン化合物類であっても、目的とするエポキシ化合物を効率的且つ高収率で得ることができるエポキシ化合物の製造方法である。具体的には、エポキシ化触媒存在下、炭素数3以上のオレフィン化合物と過酸化水素を減圧下で反応させることを特徴とするエポキシ化合物の製造方法であり、反応中、反応系内の水分を除去しながら反応を進める方法である。エポキシ化反応自体は常圧でも進行するが、その反応速度は非常に遅く、効率的且つ高収率でエポキシ化合物を得ることはできない。エポキシ化反応は、反応系中に、原料であるオレフィン化合物や生成したエポキシ化合物からなる油相と、過酸化水素水溶液に存在する水や過酸化水素の反応による生成水からなる水相が共存している。オレフィン化合物と反応する過酸化水素は、酸化反応によって消費され、反応系内の過酸化水素の絶対量は反応が進むに従って減少していき、更に、過酸化水素が反応することによって増加する水の影響で、反応系中の過酸化水素濃度は徐々に低下していく。本発明のエポキシ化合物の製造方法は、減圧状態にして水分を除去しながら反応を進めていくため、反応系中の過酸化水素の濃度が低下していくことを抑制でき、反応系内の過酸化水素とエポキシ化触媒の濃度を一定に保つことができることから、高い反応効率を維持しつつ、効率的に原料であるオレフィン化合物をエポキシ化合物に変換することができる。更に、減圧にすることで反応系内に泡が発生し、この泡が水相と油相を攪拌し、水相と油相の接触面積を大きくすることから、エポキシ化反応を効率的に進行させることができる。
反応時の圧力は特に規定されないが、反応時の温度と反応系内にある物質の種類や量を考慮し、反応系内の過酸化水素とエポキシ化触媒の濃度が一定になるように減圧することが好ましい。具体的には、2×104Pa〜6×104Paの反応時の圧力が好ましく、2.5×104Pa〜5×104Paがより好ましく、3×104Pa〜4.0×104Paが更により好ましい。反応時の圧力が高すぎると効率よく水を除去することができない場合があり、反応時の圧力が低すぎると溶媒や基質が突沸しやすく、反応の制御や温度管理が困難になる場合がある。尚、反応時の圧力を上記の圧力に設定する際、反応系を一気に減圧すると、上記の圧力の範囲内であっても溶媒や基質が突沸し、反応の制御や温度管理が困難となる場合がある。そのため、反応時の圧力を上記の圧力まで減圧する際は、徐々に減圧度を上げ、最適な圧力まで減圧することが好ましい。また、減圧での反応中に水と一緒に油層の化合物も共沸する場合がある。こうした場合は、共沸してきた水と油相の化合物とを油水分離管(ディーンスターク管等)を使って油水分離し、油相の化合物のみを反応系内に戻してやればよい。また、反応終了後は、蒸留や再結晶等により目的とするエポキシ化合物を回収すればよい。
本発明のエポキシ化合物の製造方法における反応時の温度は、特に制限されないが、通常30〜80℃であり、反応が効率的に進行することから、50〜60℃が好ましい。30℃未満の温度ではエポキシ化の反応性が低く、目的とするエポキシ化合物が高収率で得られない場合があり、80℃を超える温度では減圧した際、溶媒や基質が突沸しやすく、反応の制御が困難となる場合があり、副生成物の生成量が増加する場合がある。
本発明のエポキシ化合物の製造方法におけるpHは、特に制限されないが、通常pH1〜5であり、反応が効率的に進行することから、pH2〜4が好ましい。pH1未満では反応系中の酸性度が高くなり、エポキシ化合物加水分解した副生成物が多く得られてしまう場合があり、pH5超えると、反応の進行が緩やかになり、効率的にエポキシ化合物を得られない場合がある。
本発明のエポキシ化合物の製造方法における反応時間は、特に制限されないが、通常1〜30時間であり、目的とするエポキシ化合物を効率的且つ高収率で得られることから、3〜20時間が好ましい。1時間未満だと目的とするエポキシ化合物を高収率で得られない場合があり、20時間を超えるとその時間に見合った効果が得られない場合がある。
本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、溶媒を使用してもしなくてもよいが、オレフィン化合物の種類や量によっては、使用した方が、反応がスムーズ且つ安全に進行することから好ましく、各反応に応じて選択すればよい。本発明のエポキシ化合物の製造方法において使用可能な溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メトキシブタノール、エトキシブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル等の飽和非環式脂肪族化合物類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の飽和環式脂肪族化合物類;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族化合物類が挙げられる。中でも、本発明のエポキシ化合物の製造方法は、反応中、反応系内の水分を除去しながら反応を進めるため、水と共沸しやすい溶媒を選択することで、更にエポキシ化反応の効率を高めることができることから好ましい。上記溶媒の中でも、そのような溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。また、共沸してきた水と溶媒を分離し、溶媒のみを反応系内に戻すことができることから、これらの中でも水と混和しない溶媒が好ましく、具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
本発明において、エポキシ化反応の副生成物として考えられるものは、得られたエポキシ化合物が加水分解したジオール化合物や得られたエポキシ化合物が二量化した化合物等である。これら副生成物の生成は、目的とするエポキシ化合物の収率の低下や、エポキシ化反応の進行の妨げになることから、少なければ少ないほど好ましく、生成しないことがより好ましい。本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、これら副生成物の生成を、得られた生成物に対して10%以下となるよう製造することが可能であり、反応時の圧力、反応時の温度、pH、反応時間、原料やエポキシ化触媒の種類や量等の反応条件を最適化することでこれらの生成を効率よく抑制することができる。
本発明のエポキシ化合物の製造方法において、原料となるオレフィン化合物は、炭素数3以上のオレフィン化合物である。ここで、オレフィン化合物とは、分子内に少なくとも1つ以上の炭素−炭素二重結合を持つ化合物(不飽和結合を有する化合物)のことを指す。すなわち、炭素数3以上の、分子内に少なくとも1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物であれば、価数(1分子中の不飽和結合の数)や環状、鎖状、分岐鎖状、脂肪族、芳香族等の化合物の種類を問わず使用することができる。炭素数3以上のオレフィン化合物としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、3−オクテン、4−オクテン、1−ノネン、2−ノネン、3−ノネン、4−ノネン、1−デセン、2−デセン、3−デセン、4−デセン、5−デセン、1−ウンデセン、2−ウンデセン、3−ウンデセン、4−ウンデセン、5−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、7−ペンタデセン、1−ヘキサデセン等の鎖状の脂肪族オレフィン化合物;3−メチル−1−ブテン、ブタジエン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−2−ヘキセン、5−メチル−2−ヘキセン、5−メチル−3−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−2−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、3−エチル−3−メチル−1−ブテン、6−メチル−1−ヘプテン、6−メチル−3−ヘプテン、3−メチル−2−オクテン、4−メチル−2−オクテン、7−メチル−3−オクテン等の分岐鎖状の脂肪族オレフィン化合物;シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、シクロデセン、3−イソプロピル−6−メチルシクロヘキセン、ビシクロ[3.3.2]デカ−2−エン、シクロヘプテン、3−メチルシクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,3−ジメチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、4,4−ジメチルシクロペンテン、3−エチルシクロペンテン、4−エチルシクロペンテン、ビニルシクロペンタン、2−ノルボルネン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタ−2−エン、シクロオクテン、5−メチルシクロヘプテン、3,3−ジメチルシクロヘキセン、4,4−ジメチルシクロヘキセン、3,6−ジメチルシクロヘキセン、4,5−ジメチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン、ビシクロ[4.1.1]オクタ−3−エン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−2−エン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−3−エン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−7−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ベンゾシクロブテン、シクロオクタテトラエン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5,7−トリエン、シクロノネン、3,5,5−トリメチルシクロヘキセン、ビシクロ[4.2.1]ノナ−2−エン、4−ビニルシクロヘキサ−1−エン、4,4’−(プロパン−2−ジイル)ジシクロヘキサ−1−エン、1−ビニルアダマンタン、シクロドデセンの等の環状の脂肪族オレフィン化合物;スチレン、2−フェニルプロペン、3−フェニルプロペン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、アセナフチレン、4,4’−(プロパン−2,2’−ジイル)ビス((アリルオキシ)ベンゼン)等の芳香族オレフィン等が挙げられる。
尚、これらのオレフィン化合物は、本発明の製造方法において反応の進行に悪影響を与えなければ、如何なる置換基を有していてもよい。オレフィン化合物が特に置換基を有しない場合、本発明の製造方法において効率的且つ高収率でエポキシ化反応を行なえるオレフィン化合物としては炭素数5以上のオレフィン化合物であることが好ましい。一般に、二重結合を有する炭素に電子求引性のある置換基が多いほどエポキシ化反応は進みやすく、環状と鎖状を比較すると、環状オレフィン化合物の方がエポキシ化反応は進みやすいが、二重結合を有する炭素に電子求引性のある置換基がないオレフィン化合物であっても、鎖状オレフィン化合物であっても、本発明の製造方法であれば容易にエポキシ化を行うことができる。上記に挙げたオレフィン化合物の中でも、例えば、一般的な常圧でのエポキシ化合物の製造方法ではエポキシ化が非常に困難とされる、鎖状の脂肪族オレフィン化合物やBis−A型ジアリルエーテル等の芳香族オレフィン化合物であっても、本発明のエポキシ化合物の製造方法を用いればエポキシ化を効率的且つ高収率で行うことができる。
また、エポキシ化合物を混合物として得たい場合には、同じ反応系中に2種以上のオレフィン化合物を仕込み反応させることもできる。本発明の製造方法で使用するオレフィン化合物は、反応系中に一括で仕込み反応させてもよく、反応の進行に応じて分割して仕込み反応させてもよい。
本発明のエポキシ化合物の製造方法において、酸化剤として働く過酸化水素は、状態は特に規定されないが、通常水溶液の状態であり、入手が容易且つ使用しやすいことから、濃度が30〜70質量%水溶液のものを使用することが好ましく、50〜70質量%水溶液のものを使用することがより好ましい。また、過酸化水素は、反応系中に一括で仕込み反応させてもよく、反応の進行に応じて分割して仕込み反応させてもよい。過酸化水素は、1価(二重結合が1つ)のオレフィン化合物であれば、全てのオレフィン化合物を完全にエポキシ化するためには、理論上、オレフィン化合物1モルに対して過酸化水素1モルが必要である。
ここで、反応効率を高める方法として2種類の方法が挙げられる。第一の方法は、過酸化水素をオレフィン化合物に対して過剰に使用する方法であり、第二の方法は、過酸化水素をオレフィン化合物に対して同モル若しくは過少に使用する方法である。
第一の方法が、効率よくオレフィン化合物をエポキシ化合物に転換することができる理由は、オレフィン化合物基質に対して過酸化水素の量が過剰であれば、原料としてのオレフィン化合物が反応系中で過酸化水素と出会う確率が上がり、反応効率が下がることなく、高収率でエポキシ化合物を得ることができるからである。過酸化水素をオレフィン化合物に対して過剰に使用する当該方法を選択する場合、オレフィン化合物1モルに対して過酸化水素は1モルを超えて使用し、エポキシ化反応率がより良好となることから1.1〜10モル使用することが好ましく、1.2〜8モル使用することがより好ましく、1.5〜5.0モル使用することが更により好ましい。過酸化水素の使用量が10モルを超えると、添加量に見合った効果が得られない場合がある。尚、全てのオレフィン化合物を完全にエポキシ化するために必要な過酸化水素の量はオレフィン化合物の価数に応じた量となり、例えば、2価(二重結合が2つ)のオレフィン化合物であれば、通常過酸化水素は1価のオレフィン化合物の2倍量が必要となる。2価のオレフィン化合物のエポキシ化方法として、上記方法を選択するのであれば、エポキシ化反応効率をより向上させるために好ましい過酸化水素の使用量は、上記1価のオレフィン化合物である場合の好ましい使用量から算出され、2倍相当の使用量が好ましい使用量となる。
また、第二の方法が、効率よくオレフィン化合物をエポキシ化合物に転換することができる理由は、1モル以下の過酸化水素を用いた場合、過酸化水素に対して反応対象物であるオレフィン化合物基質が多く反応系中に存在することになるため、過酸化水素がオレフィン化合物と出会う確率が上がり、反応効率が向上するからである。理論上、1価のオレフィン化合物であれば、全てのオレフィン化合物を完全にエポキシ化するためには、オレフィン化合物1モルに対して過酸化水素1モルが必要であるが、1モル以下の過酸化水素を用いた場合であっても、未反応の原料であるオレフィン化合物は反応終了後回収し、再度原料として使用可能であるため何ら問題はなく、すなわち、残った原料を次の反応の原料として用い、繰り返し反応を行うことで、高収率で目的とするエポキシ化合物を得ることができる。過酸化水素をオレフィン化合物に対して同モル若しくは過少に使用する当該方法を選択する場合、オレフィン化合物1モルに対して過酸化水素は同モル若しくは過少に使用し、エポキシ化反応効率がより良好となることから、過酸化水素を0.3モル以上使用することが好ましく、0.4〜1.0モル使用することがより好ましく、0.6〜1.0モル使用することが更により好ましく、0.8〜1.0モル使用することが尚更に好ましい。過酸化水素の使用量が0.3モル未満であると、原料が残りすぎて、次の反応に用いる場合、回収が困難となる場合がある。
尚、2価のオレフィン化合物のエポキシ化方法として、上記方法を選択するのであれば、エポキシ化反応効率をより上げるために好ましい過酸化水素の使用量は、上記1価のオレフィン化合物である場合の好ましい使用量から算出され、2倍相当の使用量が好ましい使用量となる。但し、過酸化水素をオレフィン化合物に対して同モル若しくは過少に使用する当該方法は、減圧状態で反応系内の過酸化水素とエポキシ化触媒の濃度を一定に保ちつつ進めていく本発明の製造方法でのみ選択でき、常圧でのエポキシ化反応では選択できない。これは、常圧でのエポキシ化反応においては、反応の進行に伴って生じる過酸化水素の濃度の低下の影響により、過酸化水素の反応性が下がり、反応系中に過酸化水素が残っている状態であっても反応が進まない場合があるためである。本発明のエポキシ化合物の製造方法において、前述した二つの方法のうちどちらの方法を選択し製造してもよいが、第一の方法である過酸化水素をオレフィン化合物に対して過剰に使用する方法を選択した場合、エポキシ化反応の反応速度が速まり、短時間でエポキシ化合物を得ることができるが、目的とするエポキシ化合物以外の副生成物が多く生成する場合があり、また、過剰な原料を使用するため反応終了後の廃棄物処理が困難となる場合がある。また、第二の方法である過酸化水素をオレフィン化合物に対して同モル若しくは過少に使用する方法を選択した場合、目的とするエポキシ化合物以外の副生成物の生成は抑制できるが、エポキシ化反応の反応速度は、過酸化水素をオレフィン化合物に対して過剰に使用する方法と比較すると遅くなる場合がある。よって、用途や目的に応じてどちらかの方法を選択すればよいが、一般的に副生成物の生成が多い製造方法は、エポキシ化合物の精製が困難となる場合があり、用途によっては使用が困難である場合がある。反応速度に関しては、本発明の製造方法においては、減圧下にて反応を行うことで、反応系中の過酸化水素の濃度を一定に保ちながら製造することができることから、当該影響を最小限に抑制することができる。これら二点を考慮すると、本発明の製造方法においては、第二の方法で製造することが好ましい。
本発明の製造方法に使用可能なエポキシ化触媒は、公知のエポキシ化触媒であれば特に制限されないが、エポキシ化が困難なオレフィン化合物類であっても、目的とするエポキシ化合物に効率的且つ高収率で変換できることから、(A)成分としてタングステン酸化合物及びモリブデン酸化合物等の6属金属化合物、(B)成分としてアミン、アミン塩及び第4級アンモニウム塩等の窒素化合物、及び(C)成分として塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、五酸化リン、ポリリン酸及びスルホン酸化合物の群から選択される酸化合物を含有する組成物を本発明の製造方法の触媒として使用することが好ましく、目的とするエポキシ化合物をより効率的且つ高収率で得ることができることから、(A)成分としてタングステン酸化合物、(B)成分として3級アミン、及び(C)成分としてリン酸を含有する組成物を本発明の製造方法の触媒として使用することがより好ましい。
(A)成分であるタングステン酸化合物としては、例えば、タングステン酸;タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸アンモニウム等のタングステン酸塩;タングステン酸ナトリウム二水和物、タングステン酸カリウム二水和物、タングステン酸ナトリウム十水和物等の前記タングステン酸塩の水和物;12−タングストリン酸、18−タングストリン酸等のリンタングステン酸;前記リンタングステン酸の水和物;12−タングストケイ酸等のケイタングステン酸;前記ケイタングステン酸の水和物;12−タングストホウ酸等のホウタングステン酸;前記ホウタングステン酸の水和物;及び過タングステン酸等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易であることから、タングステン酸、タングステン酸塩、タングステン酸塩の水和物、リンタングステン酸、リンタングステン酸の水和物を使用することが好ましく、タングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウムの水和物、12−タングストリン酸、12−タングストリン酸の水和物を使用することがより好ましく、タングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウムの水和物を使用することが更により好ましい。
(B)成分である3級アミンとしては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン等のトリアルカノールアミン類;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン等のトリアルキルアミン;トリフェニルアミン、トリクレジルアミン、トリエチルフェニルアミン、トリプロピルフェニルアミン等のトリアリールアミンが挙げられる。これらの中でも、酸化の影響を受けにくいトリアルキルアミンを使用することが好ましく、エポキシ化反応がよりスムーズに進行することから炭素数3〜16のアルキル基を有するトリアルキルアミンを使用することがより好ましく、炭素数6〜12のアルキル基を有するトリアルキルアミンを使用することが更により好ましい。
(C)成分であるリン酸は、緩衝作用により反応溶液のpHが安定しやすいことから、エポキシ化反応が進行しやすく、副反応が起こりにくいため好ましい。本発明のエポキシ化合物の製造方法において(C)成分にリン酸を使用する場合、状態は特に規定されないが、通常水溶液の状態である。中でも、入手が容易且つ使用しやすいことから、濃度が50〜95質量%水溶液のものが好ましく、70〜90質量%水溶液のものがより好ましい。
本発明の製造方法において使用可能なエポキシ化触媒組成物は、前述の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するものであることが好ましく、それぞれの使用量は制限されないが、エポキシ化触媒としての機能を十分に発揮することができることから、各成分が特定の割合で配合されていることが好ましい。具体的には、(A)成分10モルに対して(B)成分が2〜25モル、(C)成分が5〜50モルの割合で配合されていることが好ましく、エポキシ化触媒としての機能をより効果的に発揮するために、(A)成分10モルに対して(B)成分が3〜15モル(C)成分が8〜40モルの割合で配合されていることがより好ましく、(A)成分10モルに対して(B)成分が4〜10モル(C)成分が9〜25モルの割合で配合されていることが更により好ましく、(A)成分10モルに対して(B)成分が5〜8モル(C)成分が11〜20モルの割合で配合されていることが尚更に好ましく、(A)成分10モルに対して(B)成分が6〜7モル(C)成分が14〜16モルの割合で配合されていることが最も好ましい。(A)成分10モルに対して(B)成分が2モル未満になると反応速度が著しく遅くなり、(B)成分が25モルを超えると生成するエポキシ化合物のゲル化する場合や、エポキシ化合物の収率が低下する場合がある。また、(A)成分10モルに対して(C)成分が5モル未満になると反応進行が著しく遅くなり、(C)成分が50モルを超えるとエポキシ化合物の収率が低下する場合がある。尚、上記各成分の配合量は、水和物又は水溶液などの形態の成分を使用する場合には、水分を除いた有効成分のモル数として考える。
本発明の製造方法に使用するエポキシ化触媒の使用量は特に規定されず、通常エポキシ化反応で使用する触媒量と同量を使用すれば問題ないが、本発明のエポキシ化合物の製造方法において、前述の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する組成物を使用する場合は、エポキシ化が困難なオレフィン化合物類であっても、効率的且つ高収率で目的とするエポキシ化合物を得ることができることから、使用する過酸化水素1モルに対して(A)成分が1〜10ミリモルになるように添加するのが好ましく、2〜8ミリモルがより好ましく、3〜6ミリモルが更により好ましい。(A)成分が1ミリモル未満になると反応が遅くなる場合があり、10ミリモルを超えると添加量に見合う効果が得られない場合や、副生成物の生成が多くなる場合がある。(B)成分や(C)成分の量は(A)成分の量に応じて決めればよい。尚、本発明のエポキシ化触媒組成物は3種の化合物を必須成分とするものであるが、本発明のエポキシ化方法による反応においては、当該触媒組成物を構成する成分を分割して反応系内に添加することができ、例えば、(A)成分を最初に添加した後(B)及び(C)成分を後から添加する方法や、(A)(B)及び(C)成分をそれぞれ別々に添加する方法、(A)(B)及び(C)成分を含有する組成物を何回かに分けて添加する方法等を採用することができる。
本発明のエポキシ化方法によって得られるエポキシ化合物は、従来エポキシ化合物を使用していた用途であればいずれの用途にも使用することができるが、当該エポキシ化合物はハロゲン含有不純物を含まないため、半導体用封止剤、アンダーフィル、ダイボンドペースト、接着剤等のハロゲン含有不純物を含むエポキシ化合物では使用が制限されていた電子材料分野等に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。尚、以下の実施例等において、「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
使用した原料は以下の通りである。
<オレフィン化合物>
I−1:1−オクテン
I−2:4,4’−(プロパン−2,2’−ジイル)ビス((アリルオキシ)ベンゼン)
<過酸化水素>
II−1:60質量%濃度の過酸化水素水溶液
<エポキシ化触媒>
A−1:タングステン酸ナトリウム二水和物
B−1:トリオクチルアミン
C−1:85質量%濃度のリン酸水溶液
使用した原料は以下の通りである。
<オレフィン化合物>
I−1:1−オクテン
I−2:4,4’−(プロパン−2,2’−ジイル)ビス((アリルオキシ)ベンゼン)
<過酸化水素>
II−1:60質量%濃度の過酸化水素水溶液
<エポキシ化触媒>
A−1:タングステン酸ナトリウム二水和物
B−1:トリオクチルアミン
C−1:85質量%濃度のリン酸水溶液
実施例1
分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン化合物のエポキシ化反応
1リットル邪魔板付4口ガラス製セパラブルフラスコに8cm×4枚プロペラ型撹拌羽、スリーワンモーター、ディーンスターク管、還流管、窒素吹込管、トラップ付減圧装置を設置し、セパラブルフラスコ内に、I−1を560g(5.00mol)、II−1を227g(過酸化水素として136.2g、4.00モル)、A−1を5.3g(タングステン酸ナトリウムとして4.72g、0.0161モル)、B−1を3.6g(0.0102モル)、C−1を2.8g(リン酸として2.38g、0.0243モル)、溶媒としてシクロヘキサン30mlを仕込んだ。撹拌しながら60℃に昇温し、反応時の圧力が345mmHg(4.6×104Pa)に達するまで徐々に減圧した。その後、60±5℃を保ちながら、反応時の圧力を徐々に245〜265mmHg(3.3×104〜3.5×104Pa)まで減圧し、当該温度と圧力を保ちながら、約8時間のエポキシ化反応を行った。時間ごとの反応の進行具合を確認するため、サンプリングを行い、原料として残っているI−1の量(%)、生成したエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を調査した。結果を表1に示す。これらの量は、ガスクロマトグラフィー
(Gas Chromatography, GC)を使用し、面積百分率法にて算出した値であり、測定条件は以下の通りである。
GC測定条件
GC装置:GC−2014(株式会社島津製作所社製)
カラム:50%フェニル−メチルポリシロキサン、内径0.25mm、長さ30m
検出器:水素炎イオン化検出器
流量: 1ml/分
サンプル濃度: 80 mg/mL(アセトン溶液)
注入量:1μl
カラム温度:80℃から毎分10℃で180℃まで昇温し、さらに毎分20℃で260℃まで昇温し8分間保持する。
標準サンプル:1,2−エポキシオクタン(東京化成工業株式会社製)
分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン化合物のエポキシ化反応
1リットル邪魔板付4口ガラス製セパラブルフラスコに8cm×4枚プロペラ型撹拌羽、スリーワンモーター、ディーンスターク管、還流管、窒素吹込管、トラップ付減圧装置を設置し、セパラブルフラスコ内に、I−1を560g(5.00mol)、II−1を227g(過酸化水素として136.2g、4.00モル)、A−1を5.3g(タングステン酸ナトリウムとして4.72g、0.0161モル)、B−1を3.6g(0.0102モル)、C−1を2.8g(リン酸として2.38g、0.0243モル)、溶媒としてシクロヘキサン30mlを仕込んだ。撹拌しながら60℃に昇温し、反応時の圧力が345mmHg(4.6×104Pa)に達するまで徐々に減圧した。その後、60±5℃を保ちながら、反応時の圧力を徐々に245〜265mmHg(3.3×104〜3.5×104Pa)まで減圧し、当該温度と圧力を保ちながら、約8時間のエポキシ化反応を行った。時間ごとの反応の進行具合を確認するため、サンプリングを行い、原料として残っているI−1の量(%)、生成したエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を調査した。結果を表1に示す。これらの量は、ガスクロマトグラフィー
(Gas Chromatography, GC)を使用し、面積百分率法にて算出した値であり、測定条件は以下の通りである。
GC測定条件
GC装置:GC−2014(株式会社島津製作所社製)
カラム:50%フェニル−メチルポリシロキサン、内径0.25mm、長さ30m
検出器:水素炎イオン化検出器
流量: 1ml/分
サンプル濃度: 80 mg/mL(アセトン溶液)
注入量:1μl
カラム温度:80℃から毎分10℃で180℃まで昇温し、さらに毎分20℃で260℃まで昇温し8分間保持する。
標準サンプル:1,2−エポキシオクタン(東京化成工業株式会社製)
結果、8時間の反応で、副生成物の生成量を3.3%に抑制し、目的のエポキシ化合物を46.7%の収率で得ることができた。尚、反応終了後に残ったI−1は、次の反応の原料として用いるため、蒸留により回収している。
実施例2〜8
実施例2〜8で用いた原料の使用量を配合例2〜8として表2に示した(実施例1での配合例1も共に示す)。実施例2〜8は、原料の使用量を配合例2〜8に変更したこと以外は全て実施例1と同様の製造手順でエポキシ化合物を製造した。反応時間4時間、反応時間8時間でサンプリングを行い、原料として残っているオレフィン類の量(%)、生成したエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を確認した。結果を表3に示す。これらの値もまた、実施例1と同様、ガスクロマトグラフィーを使用し、面積百分率法にて算出した値である。
実施例2〜8で用いた原料の使用量を配合例2〜8として表2に示した(実施例1での配合例1も共に示す)。実施例2〜8は、原料の使用量を配合例2〜8に変更したこと以外は全て実施例1と同様の製造手順でエポキシ化合物を製造した。反応時間4時間、反応時間8時間でサンプリングを行い、原料として残っているオレフィン類の量(%)、生成したエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を確認した。結果を表3に示す。これらの値もまた、実施例1と同様、ガスクロマトグラフィーを使用し、面積百分率法にて算出した値である。
結果、本発明の製造方法で実施した実施例2〜8においても、実施例1と同様、8時間の反応で、目的のエポキシ化合物を高収率(約45〜80%)で得ることができた。副生成物の生成量に関しては、過酸化水素をオレフィン化合物に対して過剰に使用した実施例3と実施例4に関しては、8時間の反応でそれぞれ5.2%、7.9%とやや高い数値が得られたが、その他の実施例に関しては全て5%以下に抑制することができた。尚、反応終了後に残ったオレフィン類は、次の反応の原料として用いるため、蒸留により回収している。
比較例1
1リットル邪魔板付4口ガラス製セパラブルフラスコに8cm×4枚プロペラ型撹拌羽、スリーワンモーター、ディーンスターク管、還流管、窒素吹込管、トラップ付減圧装置を設置し、セパラブルフラスコ内に、I−1を560g(5.00mol)、II−1を227g(過酸化水素として136.2g、4.00モル)、A−1を5.3g(タングステン酸ナトリウムとして4.72g、0.0161モル)、B−1を3.6g(0.0102モル)、C−1を2.8g(リン酸として2.38g、0.0243モル)、溶媒としてシクロヘキサン30mlを仕込んだ。撹拌しながら60℃に昇温し、60±5℃、常圧にて約24時間のエポキシ化反応を行った。時間ごとの反応の進行具合を確認するため、反応時間8時間、反応時間24時間でサンプリングを行い、原料として残っているI−1の量(%)、生成したエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を調査した。結果を表4に示す。これらの値もまた、実施例同様、ガスクロマトグラフィーを使用し、面積百分率法にて算出した値である。
1リットル邪魔板付4口ガラス製セパラブルフラスコに8cm×4枚プロペラ型撹拌羽、スリーワンモーター、ディーンスターク管、還流管、窒素吹込管、トラップ付減圧装置を設置し、セパラブルフラスコ内に、I−1を560g(5.00mol)、II−1を227g(過酸化水素として136.2g、4.00モル)、A−1を5.3g(タングステン酸ナトリウムとして4.72g、0.0161モル)、B−1を3.6g(0.0102モル)、C−1を2.8g(リン酸として2.38g、0.0243モル)、溶媒としてシクロヘキサン30mlを仕込んだ。撹拌しながら60℃に昇温し、60±5℃、常圧にて約24時間のエポキシ化反応を行った。時間ごとの反応の進行具合を確認するため、反応時間8時間、反応時間24時間でサンプリングを行い、原料として残っているI−1の量(%)、生成したエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を調査した。結果を表4に示す。これらの値もまた、実施例同様、ガスクロマトグラフィーを使用し、面積百分率法にて算出した値である。
結果、使用した触媒組成は実施例1と同じであったにもかかわらず、目的のエポキシ化合物を8時間の反応で28.5%、24時間の反応でも43.9%しか得ることができなかった。
比較例2〜8
比較例2〜8は、実施例2〜8でも用いた表2の配合例2〜8を使用したこと以外は全て比較例1と同様の製造手順でエポキシ化合物を製造した。反応時間8時間、反応時間24時間でサンプリングを行い、原料として残っているオレフィン類の量(%)、生成したエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を確認した。結果を表5に示す。これらの値もガスクロマトグラフィーを使用し、面積百分率法にて算出した値である。
比較例2〜8は、実施例2〜8でも用いた表2の配合例2〜8を使用したこと以外は全て比較例1と同様の製造手順でエポキシ化合物を製造した。反応時間8時間、反応時間24時間でサンプリングを行い、原料として残っているオレフィン類の量(%)、生成したエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を確認した。結果を表5に示す。これらの値もガスクロマトグラフィーを使用し、面積百分率法にて算出した値である。
結果、比較例2〜8においても比較例1と同様、使用した触媒組成は実施例2〜8と同じであったにもかかわらず、8時間の反応で目的のエポキシ化合物は低収率でしか得られなかった。
実施例9
分子内に2つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン化合物のエポキシ化反応
1リットル邪魔板付4口ガラス製セパラブルフラスコに8cm×4枚プロペラ型撹拌羽、スリーワンモーター、ディーンスターク管、還流管、窒素吹込管、トラップ付減圧装置を設置し、セパラブルフラスコ内に、I−2を308g(1.00mol)、II−1を227g(過酸化水素として136.2g、4.00モル)、A−1を5.3g(タングステン酸ナトリウムとして4.72g、0.0161モル)、B−1を3.6g(0.0102モル)、C−1を2.8g(リン酸として2.38g、0.0243モル)、溶媒としてシクロヘキサン300mlを仕込んだ。撹拌しながら60℃に昇温し、反応時の圧力が345mmHg(4.6×104Pa)に達するまで徐々に減圧した。その後、60±5℃を保ちながら、反応時の圧力を徐々に245〜265mmHg(3.3×104〜3.5×104Pa)まで減圧し、当該温度と圧力を保ちながら、約6時間のエポキシ化反応を行った。
分子内に2つの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン化合物のエポキシ化反応
1リットル邪魔板付4口ガラス製セパラブルフラスコに8cm×4枚プロペラ型撹拌羽、スリーワンモーター、ディーンスターク管、還流管、窒素吹込管、トラップ付減圧装置を設置し、セパラブルフラスコ内に、I−2を308g(1.00mol)、II−1を227g(過酸化水素として136.2g、4.00モル)、A−1を5.3g(タングステン酸ナトリウムとして4.72g、0.0161モル)、B−1を3.6g(0.0102モル)、C−1を2.8g(リン酸として2.38g、0.0243モル)、溶媒としてシクロヘキサン300mlを仕込んだ。撹拌しながら60℃に昇温し、反応時の圧力が345mmHg(4.6×104Pa)に達するまで徐々に減圧した。その後、60±5℃を保ちながら、反応時の圧力を徐々に245〜265mmHg(3.3×104〜3.5×104Pa)まで減圧し、当該温度と圧力を保ちながら、約6時間のエポキシ化反応を行った。
比較例9
1リットル邪魔板付4口ガラス製セパラブルフラスコに8cm×4枚プロペラ型撹拌羽、スリーワンモーター、ディーンスターク管、還流管、窒素吹込管、トラップ付減圧装置を設置し、セパラブルフラスコ内に、I−2を308g(1.00mol)、II−1を227g(過酸化水素として136.2g、4.00モル)、A−1を5.3g(タングステン酸ナトリウムとして4.72g、0.0161モル)、B−1を3.6g(0.0102モル)、C−1を2.8g(リン酸として2.38g、0.0243モル)、溶媒としてシクロヘキサン300mlを仕込んだ。撹拌しながら60℃に昇温し、60±5℃、常圧にて約18時間のエポキシ化反応を行った。
1リットル邪魔板付4口ガラス製セパラブルフラスコに8cm×4枚プロペラ型撹拌羽、スリーワンモーター、ディーンスターク管、還流管、窒素吹込管、トラップ付減圧装置を設置し、セパラブルフラスコ内に、I−2を308g(1.00mol)、II−1を227g(過酸化水素として136.2g、4.00モル)、A−1を5.3g(タングステン酸ナトリウムとして4.72g、0.0161モル)、B−1を3.6g(0.0102モル)、C−1を2.8g(リン酸として2.38g、0.0243モル)、溶媒としてシクロヘキサン300mlを仕込んだ。撹拌しながら60℃に昇温し、60±5℃、常圧にて約18時間のエポキシ化反応を行った。
ここで、実施例9及び比較例9に用いたオレフィン化合物は、分子内に2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物であるため、生成してくるエポキシ化合物は1ヶ所がエポキシ化されたモノエポキシ化合物と、2か所全てがエポキシ化されたジエポキシ化合物の2種類が得られる。従って、施例9及び比較例9の時間ごとの反応の進行具合を確認するため、サンプリングを行い、原料として残っているI−2の量(%)、生成したモノエポキシ化合物の量(%)、生成したジエポキシ化合物の量(%)、生成した副生成物の量(%)を調査した。尚、実施例9では反応時間3時間、反応時間6時間でサンプリングを行い、比較例9では反応時間6時間、反応時間18時間でサンプリングを行っている。結果を表6に示す。これらの値もまた、これまでの実施例1〜8及び比較例1〜8と同様、ガスクロマトグラフィーを使用し、面積百分率法にて算出した値である。
実施例9及び比較例9に用いたオレフィンI−2は、オレフィン類の中でもエポキシ化が困難とされている基質であり、比較例9の結果では、18時間の反応後でも、モノエポキシ化合物が22.2%、ジエポキシ化合物が6.0%しか得られていない。それに比べ、本発明の製造方法である実施例9においては、6時間の反応で中でもモノエポキシ化合物が42.0%、ジエポキシ化合物が20.0%も得られた。
エポキシ化合物は、樹脂や塗料、医薬、農薬、電子材料等の様々な分野の原料として利用されており、本発明の製造方法によって得られるハロゲン含有不純物を含まないエポキシ化合物は、電子材料等のこれまで利用が制限されていた用途に積極的に利用することができる。また、本発明のエポキシ化合物の製造方法は、従来のエポキシ化の方法と比較し、反応効率を高めた製造方法であるため、反応時間の短縮や高収率を実現する非常に有用な製造方法と言える。
Claims (6)
- エポキシ化触媒存在下、炭素数3以上のオレフィン化合物と過酸化水素を減圧下で反応させることを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
- 反応時の圧力が、2×104Pa〜6×104Paであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
- 反応時の温度が、30〜80℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ化合物の製造方法。
- 反応時のpHが、1〜5であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
- エポキシ化触媒が、(A)成分としてタングステン酸化合物、(B)成分として3級アミン及び(C)成分としてリン酸を含有する組成物であって、(A)成分10モルに対して(B)成分が2〜25モル、(C)成分が5〜50モルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
- (B)成分である3級アミンがトリアルキルアミンであることを特徴とする請求項5に記載のエポキシ化合物の製造方法。
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- 2014-12-08 JP JP2014247916A patent/JP2016108281A/ja active Pending
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