JP2016103992A - 加工食品の品質改良剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】増粘多糖類及び/又はゼラチンを含む従来の食品において、当該増粘多糖類及び/又はゼラチンの代替品として使用、或いは増粘多糖類及び/又はゼラチン併用することにより、加工食品に優れた保形性や口溶け性を備えさせたり、離水を防止したりすることにより、加工食品の品質を改良できる品質改良剤を提供することを目的とする。【解決手段】酵素分解澱粉を、増粘多糖類及び/又はゼラチンの代替又は併用することにより、加工食品に優れた保形性や口溶け性を備えさせることができ、更には加工食品がゲル状食品の場合であれば優れた離水防止効果をも備えさせ得る。【選択図】なし

Description

本発明は、加工食品の品質改良剤に関する。より詳細には、本発明は、保形性や口溶け性を備えさせたり、離水を防止したりすることにより、加工食品の品質を改良できる品質改良剤に関する。
従来、たれ、ドレッシング、ゼリー、プリン、グミキャンディー、クッキー等の多くの加工食品において、ゲル化、増粘、保形性付与、分散安定等の目的で、ゲル化剤や増粘多糖類が配合されている。
例えば、ゲル特性を付与するには、ゼラチン等のゲル化剤を食品に添加することが知られている。しかしながら、ゼラチンは、価格変動が大きく、供給が不安定であるといった面で問題があり、この問題を解決するため、ゼラチンの代替品として、澱粉がゲル状食品に用いられるようになっている。例えば、特許文献1には、ゲル化剤であるゼラチンの代替として、分子中にモノ置換基と分子間架橋基とを共有する加工澱粉がグミやキャンディーに適用できることが開示されている。しかしながら、この手段では、弾力を上げるために加工澱粉の添加量が増加して糊状感がでてしまい、結果として、ジューシー感は、ゼラチンを使用した場合に比べて必ずしも良好とはいえない。また、特許文献2には、所定範囲の加工度のアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を食品に含有させることにより、糊状感や口溶け等が改善されることが開示されている。しかしながら、保形性の高いゲル化食品を設計する際に、本加工澱粉の添加量を増やさざるを得ず、それに伴い食品のフレーバーリリースや口当たりが悪くなるといった問題があった。
また、従来、ペースト状又はゾル状食品の製造では、増粘性の付与のために、キサンタンガム、グァーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)等の増粘剤が使用されている。しかしながら、これらの増粘剤は食品の風味のマスキングや異味の付与、加えてコスト、価格変動、供給不安定といった問題点があった。これらの問題を解決するために、供給が安定しており、比較的コストも安価で価格変動も安定な澱粉がペースト状又はゾル状食品にも用いられている。例えば、特許文献3では、コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ及び小麦由来の澱粉、もしくは、それらの加工澱粉と、小麦小粒子澱粉等の小粒子澱粉とを所定比率で混合することにより、糊状感がなく口溶け感の良い食品が開示されている。しかしながら、この方法では、小粒子画分の生成工程、大粒子画分との混合工程が必要になり、生産コストの増大を招くという欠点があり、更に、混合品を梱包した後、容器の中で比重により大粒子画分と小粒子画分が分離してしまい、使用時に留意しなければならないという不便さがあった。また、食感に関しても増粘剤を使用した時に比べて口溶けの点では必ずしも良好なものとは言えない。
また、保形性を改善するには、微結晶セルロースやカラギナン等を添加することが知られている。例えば、特許文献4には、微結晶セルロースをクッキー等の焼き菓子に添加することにより保形性が向上することが開示されている。しかしながら、この手法では、コスト面やセルロース粒子のざらつきが残ってしまうといった問題があった。この問題の解決手段として、特許文献5には、α化加工澱粉を用いて生地の油浸みを抑制した、口溶けの良い焼き菓子が開示されている。つまり、α化加工澱粉を用いることで油浸み抑制により生地の保形性を改善し、かつ、微結晶セルロースに見られるざらつき感も無くしている。しかしながら、α化澱粉を用いると焼成時の水の飛びが悪化し、ほろほろと口の中で崩れ溶けていく良好な食感は必ずしも得ることができない。このように、保形性や口溶けといった、食品の風味食感や組織の改善は現在も望まれている。
一方、ゲル状食品は、増粘多糖類やゼラチン等のゲル化剤と水分とを混合し、加熱し、冷却して得られる。ゲル状食品は、食品中に一定量の水分を含んでおり、この水分を食品中に保持しておくことが、食品の良好な風味食感を維持する上で重要である。しかしながら、従来のゲル状食品では、経時的に食品からの離水が起こり、その結果、加工食品本来の風味食感や、見た目外観を損なうという欠点がある。例えば、寒天やカラギナンをゲル化剤として用いたゼリー等の食品は、容器に充填、密封されたのち、殺菌されて市場へと流通されるが、流通過程や店頭陳列での冷蔵もしくは常温保存の間に経時的に食品からの離水が起こる。その結果、長期保存により、食品中に含まれる水分が減少して風味食感が損なわれたり、喫食時に消費者が容器を開けたり、シール、蓋をはがす際に離水した水がこぼれる等の問題があった。
ゲル状食品の離水を防止する方法として、幾つかの方法が知られている。例えば、特許文献6には、食品類の水分調節剤としてトレハロースを用い、これを食品に添加することにより、水分活性を低下させ、離水を防止する効果をもたらすことが報告されている。また、特許文献7には、こんにゃく粉、糖質及び澱粉を合わせて調製した乾燥こんにゃく加工品をゲル状食品用物性改良剤として使用することによって、ゲルの物性が改良され、離水の問題も解決できることが開示されている。更に、特許文献8には、こんにゃく粉、糖質及び澱粉を合わせて調製した乾燥こんにゃく加工品を加工食品用離水防止剤として使用できることも開示されている。また、特許文献9には、カラギーナン、ジェランガム、澱粉、ペクチン、カードラン、ゼラチン又はファーセレランをゲル化剤として用いたゲル組成物の離水抑制目的で、ネイティブジェランガムを使用できることが開示されている。特許文献10には、ペースト状食品に、架橋型ヒドロキシプロピルリン酸デンプン及び/又は酢酸デンプンを配合することによって、離水を防止できることも報告されている。
しかしながら、水分含量が多いゲル状食品の場合では、従来技術のいずれの離水防止方法においても、長期間の離水防止効果は充分でなかったり、粘りや弾力がでてしまい、本来の風味や食感が損なわれるという欠点がある。
特開平6−169696号公報 特開2001−92087号公報 特開2008−228661号公報 特開2013−188187号公報 特開2011−155854号公報 特許第3486266号 特開2004−166580号公報 特開2004−215646号公報 特許第3820653号 特公昭63−8741号公報
前述するように、増粘多糖類及び/又はゼラチンを含む従来の加工食品では、保形性、口溶け性、及び離水防止効果の点では十分に満足できるものではなく、更なる改善が求められている。
そこで、本発明は、増粘多糖類及び/又はゼラチンを含む従来の食品において、当該増粘多糖類及び/又はゼラチンの代替品として使用、或いは増粘多糖類及び/又はゼラチン併用することにより、食品に優れた保形性や口溶け性を備えさせたり、離水を防止したりすることにより、加工食品の品質を改良できる品質改良剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、酵素分解澱粉を、増粘多糖類及び/又はゼラチンの代替又は併用することにより、加工食品に優れた保形性や口溶け性を備えさせることができ、更には加工食品がゲル状食品の場合であれば優れた離水防止効果をも備えさせ得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 酵素処理澱粉を含むことを特徴とする、加工食品の品質改良剤。
項2. ゲル状食品の離水防止剤として使用される、項1に記載の品質改良剤。
項3. 水分含量が30重量%以上のゲル状食品に対して使用される、項2に記載の品質改良剤。
項4. 保形性付与剤及び/又は口溶け性付与剤として使用される、項1に記載の品質改良剤。
項5. 前記酵素処理澱粉が、澱粉加水分解酵素及び/又は糖転移酵素を用いて澱粉粒を処理したものである、項1〜4のいずれかに記載の品質改良剤。
項6. 前記澱粉粒の由来原料が、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、もち米、及びサゴヤシからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜5のいずれかに記載の品質改良剤。
項7. 前記澱粉粒の由来原料が、タピオカである、項1〜6のいずれかに記載の品質改良剤。
項8. 前記酵素処理澱粉が、澱粉加水分解酵素及び/又は糖転移酵素を用いて澱粉粒を処理した後に、化学修飾又は物理処理がなされたものである、項1〜7のいずれかに記載の品質改良剤。
項9. ゼラチン、及び/又は酵素処理澱粉以外の増粘多糖類を含む加工食品に対して使用される、項1〜8のいずれかに記載の品質改良剤。
項10. 項1〜9のいずれかに記載の品質改良剤を含む、加工食品。
項11. 項1〜9のいずれかに記載の品質改良剤と他の食品原料とを混合し、加熱及び冷却を行うことを特徴とする、加工食品の製造方法。
本発明の品質改良剤によれば、ゲル状食品に従来の澱粉では為し得なかった口溶け性と保形性を同時に付与することができる。また、本発明の品質改良剤は、ゲル化剤や増粘剤等増粘多糖類の添加量を減らすことができ、糊状感の軽減とフレーバーリリースの良好さを付与することもできる。また、食品分野で通常使われているゲル化剤と比較してもコストを抑えることがでる。更に、本発明の品質改良剤は、加熱状態時には適度な粘度を発現しているためゲル状食品内の具材を均一に分散させることもできる。更に、本発明の品質改良剤は、ゲル状食品の離水を防止することもできるので、長期保存しても、風味、食感、外観を安定に維持させることができる。
また、本発明の品質改良剤によれば、ペースト状又はゾル状食品に従来の澱粉ではなしえなかった口溶け性と保形性を同時に付与することができる。本発明の品質改良剤は、優れた口溶け性を付与できるので、摂取時に滑らかな食感を与えることが可能になる。また、本発明の品質改良剤は、優れた保形性を付与できるので、ゲル状食品の型崩れを抑制したり、ペースト状食品のダレを抑制し、食品の形状を保持させることも可能になる。また、本発明の品質改良剤によれば、同時にゲル化剤や増粘剤等の増粘多糖類の添加量を減らすことができ、糊状感の軽減とフレーバーリリースの良好さを付与することができる。更に、本発明の品質改良剤は、食品分野で通常使われている増粘多糖類と比較しても安価で、しかも独特のネチャつきが少なく、十分な粘性を付与できるので、ペースト状又はゾル状食品の液ダレ等を防止することもできる。また、特にタレ等の食品においては製造時の撹拌が緩やかであるため増粘多糖類がダマになってしまうことが多いが、本発明の品質改良剤は、従来の澱粉同様にダマになり難いという利点もある。
更に、本発明の品質改良剤によれば、低水分食品に対して、従来の澱粉ではなしえなかった口溶け性と保形性を同時に付与することができた。また、同時に従来使用されている澱粉の添加量を減らすことができ、糊状感の軽減とフレーバーリリースの良好さを付与することができる。更に、本発明の品質改良剤は、食品分野で通常使われている微結晶セルロース等の保形強化剤よりも安価で、ざらつき感を抑制しつつ、製品の割れ等を防止し、歩留まりを向上させることもできる。
A.品質改良剤
本発明の加工食品の品質改良剤は、酵素処理澱粉を含むことを特徴とする。以下、本発明の品質改良剤について詳述する。
酵素処理澱粉
本発明で使用される酵素処理澱粉は、澱粉粒を、澱粉加水分解酵素及び/又は糖転移酵素を用いて処理したものである。以下、本発明で使用される酵素処理澱粉について説明する
1.澱粉粒
酵素処理澱粉の製造原料として澱粉粒を使用する。本明細書において、「澱粉粒」とは、結晶状の澱粉分子を指す。酵素処理澱粉の原料として使用される澱粉粒、未処理の澱粉粒であってもよく、澱粉粒を化学修飾または物理処理することによって得られる加工澱粉粒又は物理処理澱粉であってもよい。食品として分類される酵素処理澱粉を使用することが好ましい場合には、使用される澱粉粒は、植物から得られた未処理の澱粉粒である。植物は、アミロプラスト内に澱粉分子を顆粒として(すなわち大きな結晶として)貯蔵する。この顆粒は澱粉粒と呼ばれる。澱粉粒内では、澱粉分子同士が水素結合等によって結合している。そのため、澱粉粒はそのままでは水に溶けにくく、消化もされにくい。澱粉粒を水とともに加熱すると膨潤し、分子がほぐれてコロイド状になる。この変化は「糊化」と呼ばれる。澱粉粒の大きさおよび形態は、その澱粉粒が得られた植物によって異なる。例えば、トウモロコシの澱粉粒(コーンスターチ)の平均粒径は約12μm〜約15μmであり、他の澱粉粒と比べて小さめで大きさは揃っている。コムギおよびオオムギの澱粉粒は、粒径約20μm〜約40μmの大型の澱粉粒と粒径数μmの小型の澱粉粒の2種の大きさに分かれる。コメではアミロプラスト内に直径数μmの角ばった澱粉小粒が多数蓄積される複粒構造となる。バレイショの澱粉粒は平均粒径約40μmであり、澱粉原料として一般に利用されているものの中では最も大きい。本発明においては、市販されている各種の澱粉粒を使用することが可能である。植物等から澱粉粒を精製する等の方法により澱粉粒を調製して本発明に使用してもよい。
酵素処理澱粉の原料として使用される澱粉粒の種類については、特に制限されず、地上澱粉であっても地下澱粉であってもよい。地下澱粉の例としては、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉等が挙げられる。地上澱粉の例としては、小麦澱粉、コーンスターチ(例えば、ハイアミロースコーンスターチ、通常のコーンスターチおよびワキシーコーンスターチ)、米澱粉(例えば、もち米澱粉および粳米澱粉)、豆類澱粉(例えば、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉、小豆澱粉およびソラマメ澱粉)、アマランサス澱粉等が挙げられる。これらの中でも、保形性、口溶け性、離水防止効果をより一層向上させるという観点からは、好ましくはタピオカ澱粉、小麦澱粉、更に好ましくはタピオカ澱粉が挙げられる。これらの澱粉粒は、酵素処理澱粉の原料として、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における好適な実施形態は、酵素処理澱粉の原料として使用される澱粉粒が未処理の澱粉粒である。このような未処理の澱粉粒を使用することにより、食品として扱うことが可能な酵素処理澱粉を好適に得ることができる。本明細書において、用語「未処理の澱粉粒」とは、天然で生成される澱粉粒であって、自然状態で共存している他の成分(例えば、タンパク質、脂質等)から澱粉粒を分離するために必要な処理以外の処理が施されていない澱粉を言う。したがって、植物等から不純物を除去して澱粉を精製する工程等の、澱粉粒を調製する方法における各工程は、本明細書においては、澱粉の処理には含まれない。未処理の澱粉粒としては、通常市販されている澱粉粒であればどのような澱粉粒でも使用され得る。
別の特定の実施形態では、酵素処理澱粉の原料として使用される澱粉粒は、未処理の澱粉粒に対して化学修飾を行うことによって処理された加工澱粉であってもよく、また物理処理が施された物理処理澱粉であってもよい。
化学修飾された澱粉の例としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、漂白澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉およびリン酸化モノエステル化リン酸架橋澱粉等が挙げられる。「アセチル化アジピン酸架橋澱粉」とは、澱粉を無水酢酸および無水アジピン酸でエステル化して得られたものをいう。「アセチル化酸化澱粉」とは、澱粉を次亜塩素酸ナトリウムで処理した後、無水酢酸でエステル化して得られたものをいう。「アセチル化リン酸架橋澱粉」とは、澱粉をトリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンおよび無水酢酸または酢酸ビニルでエステル化して得られたものをいう。「オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム」とは、澱粉を無水オクテニルコハク酸でエステル化して得られたものをいう。「酢酸澱粉」とは、澱粉を無水酢酸または酢酸ビニルでエステル化して得られたものをいう。「酸化澱粉」とは、澱粉を次亜塩素酸ナトリウムで処理して得られたものであって、厚生労働省告示485号記載の純度試験法に準じて試料澱粉中のカルボキシ基(カルボキシル基ともいう)の分析を行った場合にカルボキシ基が1.1%以下であるものをいう。ただし、カルボキシ基の量がこの範囲にあっても「漂白澱粉」は「酸化澱粉」の定義には含まれない。「漂白澱粉」とは、澱粉を次亜塩素酸ナトリウムで処理して得られたものであって、厚生労働省告示485号記載の純度試験法に準じて試料澱粉中のカルボキシ基の分析を行った場合にカルボキシ基が0.1%以下であるものであって、厚生労働省告示485号記載の酸化澱粉の「確認試験(3)」による試験結果が陰性でかつ粘度等の澱粉の性質に生じた変化が酸化によるものでないことを合理的に説明できるものをいう。カルボキシ基の量が0.1%以下であっても粘度等の澱粉の性質が天然澱粉から変化しているものは酸化澱粉に分類され、日本では食品としては取り扱われず、食品添加物として取り扱われる。「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉」とは、澱粉をトリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンでエステル化し、酸化プロピレンでエーテル化して得られたものをいう。「ヒドロキシプロピル澱粉」とは、澱粉を酸化プロピレンでエーテル化して得られたものをいう。「リン酸架橋澱粉」とは、澱粉をトリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンでエステル化して得られたものをいう。「リン酸化澱粉」とは、澱粉をオルトリン酸、そのカリウム塩もしくはナトリウム塩またはトリポリリン酸ナトリウムでエステル化して得られたものをいう。「リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉」とは、澱粉をオルトリン酸、そのカリウム塩もしくはナトリウム塩またはトリポリリン酸ナトリウムでエステル化し、トリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンでエステル化して得られたものをいう。
また、物理処理澱粉の例としては、例えば、湿熱処理澱粉、熱抑制処理澱粉、及びα化澱粉等が挙げられる。
「湿熱処理澱粉」とは、澱粉を糊化させない程度の低水分状態で、密閉容器内で相対湿度約100%の条件下で約95〜約125℃に加熱することにより得られる澱粉である。「澱粉を糊化させない程度の低水分状態」は、例えば水分含量約50%以下を示す。澱粉を糊化させない程度の低水分状態は、例えば水分含量約35%以下、約30%以下、約25%以下または約20%以下であってもよい。湿熱処理の加熱時間は、湿熱処理の方法によって変化し得る。例えば、特開平6−145203号公報に記載の方法に従って湿熱処理される場合、まず約0〜500トール(約0〜66.661kPa)に減圧し、その後加圧蒸気を導入して約100℃〜約150℃にて約2分〜約120分間保持することにより加熱処理される。湿熱処理は、種々の文献に記載されており、当該分野で公知の任意の湿熱処理方法に従って行われ得る。湿熱処理は例えば、特開平6−145203号公報、特開平4−130102号公報および月刊フードケミカル 2010−2(P.37−42)等に記載されている。湿熱処理の温度、時間等は目的とする澱粉およびその物性によって適切に設定され得る。
「熱抑制処理澱粉」とは、極めて低水分に乾燥した澱粉を、ドライ加熱処理することにより澱粉の結晶構造を強化した澱粉である。「極めて低水分に乾燥した澱粉」とは、水分含量が約1%未満の澱粉をいう。熱抑制処理される澱粉の水分含量は好ましくは約0%である。澱粉を極めて低水分に乾燥する方法は、例えば、特開2008−223032号公報に記載され、例えば、澱粉のpHを7.0以上のpHに調整してから、水分含量が約1%未満になるまで脱水する方法であり得る。この低水分に乾燥する場合のpHは好ましくはpH7以上であり、より好ましくはpH8より大きく、好ましくはpH7.5〜10.5であり、より好ましくはpH8〜9.5である。脱水は熱的脱水であってもよく、非熱的脱水であってもよい。ドライ加熱処理の際には、澱粉を抑制するのに充分な時間にわたって充分な温度で熱処理する。好ましくは、澱粉を非凝集性にするのに充分な時間にわたって充分な温度で熱処理する。熱抑制処理のための好ましい加熱温度は、約100℃よりも高い。熱処理温度は好ましくは約200℃以下である。熱抑制処理のための加熱温度は、より好ましくは約120℃〜約180℃であり、特に好ましくは約140℃〜約160℃であり、最も好ましくは約160℃である。抑制のレベルはpH、加熱温度および加熱時間に依存する。pHが高いほど、より高度に抑制された澱粉が得られる。熱処理温度が高いほど、より高度に抑制された澱粉が得られる。熱処理時間が長いほど、より高度に抑制された澱粉が得られる。熱抑制処理のための熱処理時間は、例えば約3時間以上であり、好ましくは約20時間以下である。熱抑制処理は、種々の文献に記載されており、当該分野で公知の任意の熱抑制処理方法に従って行われ得る。熱抑制処理は、例えば、米国特許第6,221,420号公報、国際公開第95/04082号パンフレットおよび特開2008−223032号公報に記載されている。熱抑制処理の温度、時間等は目的とする澱粉およびその物性によって適切に設定され得る。物理処理は当該分野で周知の方法に従って実施され得る。
「α化澱粉」とは、澱粉の懸濁液を加熱したり、アルカリ性にしたり、塩類を加えたりすることにより、デンプン分子の規則性が失われ、糊状(α状)になっている澱粉である。α化澱粉は、公知の方法に従って調製できる。
物理処理澱粉は市販されており、市販品の物理処理澱粉を酵素処理澱粉の原料として使用することもできる。湿熱処理澱粉の市販品の例としては、例えば、三和澱粉工業株式会社製の「デリカスター・シリーズ」、「ナチュラスター・シリーズ」、「アミロジェル」および日本食品化工株式会社製の「ロードスター」が挙げられる。熱抑制処理澱粉の市販品の例としては、例えば、ナショナルスターチ社製「ノベーション・シリーズ」が挙げられる。
本発明では、これらの澱粉粒の内、1種単独で酵素処理澱粉の原料として使用してもよく、2種以上を組み合わせて酵素処理澱粉の原料として使用してもよい。これらの澱粉粒の中でも、保形性、口溶け性、離水防止効果をより一層向上させるという観点からは、好ましくは未処理の澱粉粒、より好ましくは未処理のタピオカ澱粉、未処理の小麦澱粉、更に好ましくは未処理のタピオカ澱粉が挙げられる。
2.酵素
本発明において澱粉の酵素処理に使用される酵素は、澱粉加水分解酵素及び/又は糖転移酵素である。澱粉加水分解酵素は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ及びα−グルコシダーゼに大別される。しかし、同じ酵素(例えばα−アミラーゼ)に分類される酵素であっても、その生産菌が異なる場合、酵素の反応特異性や基質特異性等の特徴は異なると考えられている。これら澱粉加水分解酵素および糖転移酵素は、動物、微生物、植物に非常に広く分布しているので、澱粉加水分解酵素および糖転移酵素の種類は無限にあるといえる。
酵素処理澱粉の製造に使用可能な澱粉加水分解酵素としては、具体的には、アミログルコシダーゼ、イソアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、および澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼが挙げられる。本明細書中では、「澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼ」とは、下記に記載の判定方法で測定した場合に、酵素処理後の澱粉のヤング率または破断応力が、酵素処理前の澱粉のヤング率又は破断応力よりも10%以上高いα−アミラーゼである。本発明で使用される澱粉加水分解酵素は、好ましくは澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、イソアミラーゼ、又はα−グルコシダーゼに分類される酵素が挙げられる。澱粉加水分解酵素β−アミラーゼまたはプルラナーゼに分類される酵素は好ましくない。アミログルコシダーゼ、イソアミラーゼ、又は、α−グルコシダーゼに分類される酵素であれば、澱粉に作用させた場合に高粘度でかつゲル形成能を持つ酵素処理澱粉を生成できる。一方、α−アミラーゼに分類される酵素の場合、すべての酵素が好適に利用できるわけではなく、澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼを選択する必要があり、この活性を有さないα−アミラーゼを用いても、本発明における酵素処理澱粉を製造することはできない。
α−アミラーゼに分類される酵素が、澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼであるかどうかの判断は、以下の判定方法により判別することができる。
<澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼの判定方法>
澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼは、以下の方法により判別することができる。小麦澱粉400gにイオン交換水900gを加え懸濁し、ここに各酵素を添加する。反応により懸濁液中に遊離される還元糖量を測定して分解率を求め、分解率が15%に達したところで澱粉をろ過で回収し、水洗し、そして乾燥する。このようにして得られた酵素処理澱粉を用い、レオメータ分析にてヤング率及び破断応力を求める。酵素処理後の澱粉のヤング率または破断応力が、酵素処理前の澱粉のヤング率または破断応力よりも10%以上上昇している場合、当該酵素は澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼと判定される。
このように、多種類のα−アミラーゼについて澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するか否かを容易に決定することができる。なお、レオメータ分析の具体的方法は、後述する通りである。
<レオメータ分析の具体方法>
乾物換算で20重量%濃度となるように、澱粉糊液を作製し、折幅45mmのクレハロンケーシングに充填する。これを90℃まで1℃/minで昇温し、30分間90℃で保持する。その後、20℃の恒温水槽にて30分間放冷し、続いて冷蔵庫にて5℃まで冷却した。冷却後、5℃で16時間冷蔵保管し、その後室温(約25℃)で4時間放置して室温に戻した後に、レオテック社製レオメータ(RT−2010J−CW)で測定する。レオメータの測定条件は、試験項目として破断試験、試料の高さを25mmとし、粘性用球Φ5(直径5mm、面積19.635mm2)のアダプターを用い、試料の移動速度(破断速度)を6cm/minで測定する。この時、澱粉ゲルの硬さを破断応力(g)およびヤング率(dyn/cm2)で評価する。
酵素処理澱粉の製造に使用可能な糖転移酵素としては、例えば、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、4‐α‐グルカノトランスフェラーゼ(例えばアミロマルターゼ)等が挙げられる。
なお、前述した澱粉加水分解酵素及び/又は糖転移酵素は、市販のものであっても、当該分野で公知の方法により微生物、動物及び植物等から調製されたものであってもよく、または、これらの生物の当該酵素のアミノ酸配列もしくは塩基配列に基づいて遺伝子組み換え法により調製されたものであってもよい。
これらの酵素の市販品としては、例えば、ノボザイムからAMGとして市販されるAspergillus niger由来のアミログルコシダーゼ、GenencorからOPTIDEX L−400として市販されるAspergillus niger由来のアミログルコシダーゼ、DANISCOからDIAZYME X4NPとして市販されるAspergillus niger由来のアミログルコシダーゼ、天野エンザイムからグルコアミラーゼ「アマノ」SDとして市販されるAspergillus niger由来のアミログルコシダーゼ、天野エンザイムからグルクザイムAF6として市販されるRhizopus niveus由来のアミログルコシダーゼ、新日本化学工業からスミチームとして市販されるRhizopus oryzae由来のアミログルコシダーゼ、天野エンザイムからトランスグルコシダーゼ L『アマノ』として市販されるAspergillus niger由来のα−グルコシダーゼ、GenencorからTransglucosidase L−500として市販されるAspergillus niger由来のα−グルコシダーゼ、天野エンザイムからビオザイムAとして市販されるAspergillus oryzae由来のα−アミラーゼ、新日本化学工業からスミチームLとして市販されるAspergillus oryzae由来のα−アミラーゼ、ダニスコからAMYLEX A3として市販されるAspergillus niger由来のα−アミラーゼ、新日本化学工業からスミチームASとして市販されるAspergillus niger由来のα−アミラーゼ、Sigmaからイソアミラーゼとして市販されるPseudomonas amyloderamosa由来のイソアミラーゼ、ノボザイムからToruzymeとして市販されるBacillus licheniformis由来のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、および天野エンザイムからコンチザイムとして市販されるPaenibacillus macerans(Bacillus macerans)由来のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ等が挙げられる。
(本発明で使用される酵素の好適な例)
酵素処理澱粉を製造するための酵素として、保形性、口溶け性、及び離水防止効果をより一層向上させるという観点からは、好ましくはアミログルコシダーゼ、イソアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼ、及びサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ;より好ましくはアミログルコシダーゼ、澱粉のゲル形成能を向上させる特性を有するα−アミラーゼ;更に好ましくは、アミログルコシダーゼ、Aspergillus属由来のα−アミラーゼ;特に好ましくはアミログルコシダーゼ、Aspergillus niger由来のα−アミラーゼが挙げられる。
3.酵素処理
前記澱粉粒に酵素処理を行う方法については、特に制限されず、使用する酵素が作用可能な温度条件下で、前記澱粉粒に酵素を作用させればよい。具体的には、先ず、前記澱粉粒と、酵素とを、適当な溶媒に添加して反応液を調製し、次いで、当該反応液を酵素が作用可能な温度条件下でインキュベートすればよい。
反応液の調製に使用される溶媒としては、例えば、水、緩衝液が挙げられる。
反応溶液のpHは、使用する酵素が活性を発揮しうるpHであれば任意に設定されるが、使用する酵素の至適pH付近であることが好ましい。反応溶液のpHの代表例として、具体的には、約2以上、好ましくは約3以上、より好ましくは約4以上、更に好ましくは約5以上、特に好ましくは約6以上、最も好ましくは約7以上であり、また約13以下、好ましくは約11以下、より好ましくは約10以下、更に好ましくは約9以下、特に好ましくは約8以下が挙げられる。また、好適な反応溶液のpHとして、使用する酵素の至適pHの±3以内であり、好ましくは至適pHの±2以内であり、さらに好ましくは至適pHの±1以内であり、最も好ましくは至適pHの±0.5以内が挙げられる。
反応溶液中の澱粉の量は、酵素反応が可能な量である限り、任意に設定され得る。反応溶液中の澱粉の量は、好ましくは約5重量%以上であり、より好ましくは約10重量%以上であり、さらに好ましくは約20重量%以上であり、最も好ましくは約30重量%以上である。反応溶液中の澱粉の量は、好ましくは約60重量%以下であり、より好ましくは約50重量%以下であり、更に好ましくは約40重量%以下であり、最も好ましくは約35重量%以下である。
反応溶液中の酵素の量は、酵素反応が可能な量である限り、任意に設定され得る。酵素の量は、合理的な時間内に反応を行うに充分な量であることが好ましい。酵素量が多いほど反応に要する時間は短くなり、酵素量が少ないほど反応に要する時間は長くなる。酵素量が多すぎると、コストが非常に高くなり、さらに、酵素が凝集して沈澱物を形成する場合もあるので、適切に設定することが好ましい。
反応溶液中の酵素の量は、澱粉固形分に対して、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、更に好ましくは約0.1重量%以上である。反応溶液中の酵素の量は、澱粉固形分に対して、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下であり、更に好ましくは約1重量%以下である。反応溶液中の酵素の量は、酵素反応が進行するのに充分な量であればよいので、酵素の活性(ユニット数)について詳細に検討する必要はない。
反応液をインキュベートは、澱粉粒の酵素分解率が、例えば3〜70%程度、好ましくは5〜40%程度、更に好ましくは5〜30%程度となるように行えばよい。このような酵素分解率となるように澱粉粒を酵素処理することによって、保形性、口溶け性、及び離水防止効果を備えさせることが可能になる。本発明において、酵素分解率とは、酵素処理前の澱粉粒の重量に対して、酵素処理後によって遊離した還元糖の重量の割合(%)のことである。
反応液をインキュベートする際の温度については、使用する酵素が作用可能であることを限度として特に制限されないが、所定の反応時間後に反応液に含まれる酵素の活性の約50%以上、より好ましくは約80%以上の活性が残る温度であることが好ましい。具体的には、反応液をインキュベートする際の温度として、使用する酵素の至適温度±10℃、好ましくは至適温度±5、より好ましくは至適温度±1℃、更に好ましは至適pH±0.5℃が挙げられる。反応温度は、好ましくは約10℃以上であり、より好ましくは約10℃以上であり、更に好ましくは約15℃以上であり、更により好ましくは約20℃以上であり、特に好ましくは約30℃以上であり、そして最も好ましくは40℃以上である。反応温度は、好ましくは約70℃以下であり、より好ましくは約65℃以下であり、特に好ましくは約60℃以下であり、最も好ましくは55℃以下である。
反応時間は、目的とする酵素分解率、反応温度、澱粉に対する酵素量等を考慮して、任意に設定することができる。反応時間として、具体的には、約1時間以上、好ましくは約2時間以上、より好ましくは約3時間以上、約6時間以上、約12時間以上等が挙げられる。また、反応時間の上限については、特に制限されないが、例えば、約72時間以下、好ましくは約48時間以下、より好ましくは約36時間以下、更に好ましくは約24時間以下、特に好ましくは約20時間以下が挙げられる。
4.後処理
酵素処理によって得られた酵素処理澱粉は、そのまま使用してもよいが、酵素処理後に、洗浄、脱水等を行ってすることによって、使用した酵素および酵素分解により溶出した糖質を除去しておくことが好ましい。酵素処理された澱粉の洗浄及び脱水は、当該分野で公知の方法によって行うことができる。
また、酵素処理後、又は洗浄及び脱水後の酵素処理澱粉は、含水状態のまま使用してもよいが、乾燥処理に供して乾燥物にしておくことが好ましい。
また、本発明で使用される酵素処理澱粉は、酵素処理後、更に化学修飾又は物理処理が施されていてもよい。
酵素処理後の化学修飾は、酵素処理に供する原料として使用した澱粉粒が、未処理の澱粉粒又は物理処理した澱粉粒の場合だけでなく、加工澱粉粒を使用した場合にも、その加工澱粉粒に施された種類の化学修飾とは異なる種類の化学修飾を施すことができる。化学修飾としては、例えば、アセチル化、アジピン酸架橋、酸化、漂白、リン酸架橋、オクテニルコハク酸処理、ヒドロキシプロピル化、リン酸化及びリン酸モノエステル化が挙げられる。これらの化学修飾は、1種単独で施されていてもよく、また2種以上を組み合わせて施されていてもよい。また、これらの化学修飾の方法は当該分野で周知である。これらの化学修飾は、日本国の食品衛生法で許容される範囲内であれば任意の程度まで行われ得る。日本では、化学修飾された加工澱粉が食品添加物として認められるためには、厚生労働省告示485号記載の純度試験法に準じて試料澱粉中の各種化学物質の分析を行って、下記の基準を満たすことが必須である:
(a)アセチル化アジピン酸架橋デンプン:アジピン酸基が0.135%以下であってかつアセチル基が2.5%以下であること;
(b)アセチル化酸化デンプン:アセチル基が2.5%以下であってかつカルボキシ基が1.3%以下であること;
(c)アセチル化リン酸架橋デンプン:アセチル基が2.5%以下であってかつリンがPとして0.14%以下であること;
(d)オクテニルコハク酸デンプンナトリウム:オクテニルコハク酸基が3.0%以下であること;
(e)酢酸デンプン:アセチル基が2.5%以下であること;
(f)酸化デンプン:カルボキシ基が1.1%以下であること;
(g)ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉:ヒドロキシプロピル基が7.0%以下であってかつリンがPとして0.14%以下であること;
(h)ヒドロキシプロピルデンプン:ヒドロキシプロピル基が7.0%以下であること;
(i)リン酸架橋澱粉:リンがPとして0.5%以下であること;
(j)リン酸化デンプン:リンがPとして0.5%以下であること;
(k)リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン:リンがPとして0.5%以下であること;
(l)漂白デンプン;カルボキシ基が0.1%以下であり、厚生労働省告示485号記載の酸化澱粉の「確認試験(3)」による試験結果が陰性で、かつ、粘度等の澱粉の性質に生じた変化が酸化によるものでないことを合理的に説明できること。日本以外の国についてはその国で許容される範囲内であれば任意の程度の化学処理が行われ得る。化学修飾は何種類か組み合わせて使用することができる。
また、酵素処理後の物理処理は、酵素処理に供する原料として使用した澱粉粒が、酵素処理前の澱粉が未処理の澱粉または加工澱粉の場合だけでなく、何らかの物理処理をした澱粉を使用した場合にも、その物理処理とは異なる種類の物理処理を施すことができる。物理処理の例としては、湿熱処理、熱抑制処理、及びα化処理が挙げられる。これらの物理的処理の具体的条件等については、酵素処理に原料として供される澱粉粒に必要に応じて施される物理的処理の場合と同様である。
本発明で使用される酵素処理澱粉として、保形性、口溶け性、及び離水防止効果をより一層向上させるという観点からは、好ましくは未処理のタピオカ澱粉を酵素処理したもの(酵素処理タピオカ澱粉)、未処理のタピオカ澱粉を酵素処理した後に化学修飾を施したもの(化学修飾酵素処理タピオカ澱粉)、未処理の小麦澱粉を酵素処理したもの(酵素処理小麦澱粉)、未処理の小麦澱粉を酵素処理した後に化学修飾を施したもの(化学修飾酵素処理小麦澱粉);より好ましくは未処理のタピオカ澱粉を酵素処理した後にリン酸架橋を施したもの(リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉)、未処理のタピオカ澱粉を酵素処理した後にアセチル化とリン酸架橋を施したもの(アセチル化リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉)、未処理の小麦澱粉を酵素処理したもの(酵素処理小麦澱粉)、未処理の小麦澱粉を酵素処理した後にリン酸架橋を施したもの(リン酸架橋酵素処理小麦澱粉)、未処理の小麦澱粉を酵素処理した後にヒドロキシプロピル化とリン酸架橋を施したもの(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋酵素処理小麦澱粉)が挙げられる。とりわけ、格段に優れた離水防止効果を備えさせるという観点から、更に好ましくは未処理のタピオカ澱粉を酵素処理した後にリン酸架橋を施したもの(リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉)、未処理のタピオカ澱粉を酵素処理した後にアセチル化とリン酸架橋を施したもの(アセチル化リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉)が挙げられる。
品質改良剤の用途
本発明の品質改良剤は、加工食品に保形性及び/又は口溶け性を付与したり、ゲル状食品に離水防止効果を付与したりするための食品添加剤として使用される。即ち、本発明は、保形性付与剤、口溶け性付与剤、及び/又はゲル状食品の離水防止剤として使用される。
本発明の品質改良剤が添加される加工食品の種類については、保形性、口溶け性、及び離水防止効果の内、少なくとも1つが要求される食品であることを限度として、特に制限されないが、例えば、ゲル状食品、ペースト状又はゾル状食品、低水分含量食品が挙げられる。
本明細書において、「ゲル状食品」とは、その食品が全体としてゲルの形態をしているものである。例えば、本発明の品質改良剤の添加対象となるゲル状食品としては、具体的には、ういろう、餅、羊羹、かるかん、きんつば、プリン、ゼリー、ムース、ババロア、くず饅頭、マシュマロ、パンナコッタ、杏仁豆腐、ヨーグルト、ゴマ豆腐等の和洋菓子、蒲鉾等の水産練り製品、ハム、ソーセージ等の畜産練り製品、パスタ、中華麺等の麺類、その他卵焼き、茶碗蒸し、ゲル状調味料、ゼリータイプ飲料等が挙げられる。
発明の品質改良剤を添加して製造されるゲル状食品は、優れた保形性及び口溶け性に加えて、離水防止効果も有することができる。また、当該ゲル状食品では、糊状感がなくプリッとした弾力のある食感が得られる。また、当該ゲル状食品中のフレーバーリリースが改善されるという効果も得られ、更にはゲル状食品同士の付着が軽減されるといった効果も得られる。一般的なゲル状食品に使用される澱粉に比べて、本発明の品質改良剤はゲルが硬くなる傾向があるため、ゲル状食品を調製する際の添加量を減らすことも可能である。
当該ゲル状食品における水分含有量については、特制限されないが、例えば15〜98重量%が挙げられる。中でも、水分含有量が40重量%以上、特に50〜90重量%という高含水分量のゲル状食品では、従来技術では、長期間の保存によって離水が生じ易いという欠点があったが、発明の品質改良剤を添加して製造されたゲル状食品では、このような高含水分量のゲル状食品でも、離水を効果的に防止し、その食感や外観を安定に維持することができる。このような本発明の離水防止効果を鑑みれば、発明の品質改良剤を添加して製造されるゲル状食品の水分含量として、好ましくは40重量%以上、特に50〜90重量%が挙げられる。
本明細書において、「ペースト状又はゾル状食品」とは、ペースト状又はゾルで、その加工食品が液体状を呈し、流動性を持つ状態のものである。例えば、本発明の品質改良剤の添加対象となるペースト状又はゾル状食品としては、具体的には、ジャム、カスタードクリーム、フラワーペースト、フィリング、ホイップクリーム、アイスクリーム類(例えば、アイスミルク、ラクトアイス)等の和洋菓子、蒲焼のタレ、焼き肉のタレ、マヨネーズ風調味料、ドレッシング、クリームソース等のたれ、ソース類、ジュースやスープ類等の飲料、カレー、ベシャメルソース等の油脂含有ペースト等が挙げられる。
発明の品質改良剤を添加して製造されるペースト状又はゾル状食品は、優れた口溶け性を備えることができる。また、当該ペースト状又はゾル状食品は、糊状感がないボテッとした食感が得られる。また、当該ペースト状又はゾル状食品中のフレーバーリリースが改善されるという効果が得られる。更には、当該ペースト状又はゾル状食品では、容器への付着が軽減さるといった効果も得られる。一般的なペースト状又はゾル状食品に使用される澱粉に比べて、本発明の品質改良剤は粘性が高くなる傾向があるため、添加量を減らすことも可能である。また、その結果、タレ類がたれるのを防ぎ食品への乗りを良くすることができる。加えて、飲料においては、コク・とろみを付与し、不溶性固形分等の内容物の分散効果を効果的に発揮することもでき、また濃厚なのにスッキリとした飲み口となる。
本明細書において、「低水分含量食品」とは、可食部100gあたりの水分量が40g未満、好ましくは30g以下、更に好ましくは20g以下の食品のことである。本発明の品質改良剤の添加対象となる低水分含量食品としては、具体的には、食パン、ビスケット、クッキー、パイ生地、衛星ボーロ等のべーカリー類、スポンジケーキ、カステラ、洋菓子類、から揚げ、天ぷら等のフライ食品等が挙げられる。
発明の品質改良剤を添加して製造される低水分含量食品では、口溶けが良く保形性の高い食感が得られる。特に、ビスケット等の焼き菓子では、生地のつながりが良くなり割れや欠け等を防ぐことができ、歩留まり向上にも寄与できる。また、天ぷら等のフライ食品では、気泡が維持されてサクサク感が持続したり、食パン等のベーカリー食品では、焼成時のサクサク感が増加する。
本発明の品質改良剤は、ゲル化作用及び増粘作用を有しているので、ゲル化剤又は増粘剤としての役割も果たす。発明の品質改良剤が添加される加工食品には、ゲル化剤又は増粘剤として、本発明の品質改良剤を単独で含んでいてもよく、また本発明の品質改良剤と、他の増粘多糖類及び/又はゼラチンとが併用されていてもよい。即ち、発明の品質改良剤は、増粘多糖類及び/又はゼラチンを含む従来の加工食品において、当該増粘多糖類及び/又はゼラチンの代替品として、或いは当該増粘多糖類及び/又はゼラチンと併用して使用することができる。発明の品質改良剤を他の増粘多糖類及び/又はゼラチンと併用することによって、離水性が高い増粘多糖類及び/又はゼラチンの離水を抑制したり、増粘多糖類及び/又はゼラチンによる食感を改質したりすることが可能になる。
本発明の品質改良剤と併用可能な増粘多糖類としては、食品添加物として適用される公知のものであれば、特に限定されないが、例えば、ジェランガム、カラギナン、寒天、カードラン、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、グルコマンナン、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンド種子多糖類、タラガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、サイリウムシードガム、プルラン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、発酵セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、未加工澱粉、加工澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、物理処理澱粉等が挙げられる。これらの増粘多糖類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の品質改良剤と他の増粘多糖類及び/又はゼラチンとを併用する場合、これらの併用比率については、特に制限されないが、例えば、本発明の品質改良剤:他の増粘多糖類及び/又はゼラチンの重量比が0.01:99.9〜99.9:0.01、好ましくは1:99〜99:1となる比率が挙げられる。ゲル状食品において、離水防止効果をより一層向上させるという観点から、本発明の品質改良剤:他の増粘多糖類及び/又はゼラチンの重量比として、更に好ましくは5:5〜3:97が挙げられる。
本発明の品質改良剤の加工食品への添加量については、加工食品の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1〜10重量%が挙げられる。より具体的には、加工食品がゲル状食品の場合であれば、本発明の品質改良剤の添加量として、好ましくは0.5〜7重量%、更に好ましくは1〜3.5重量%が挙げられる。また、加工食品がペースト状又はゾル状食品の場合であれば、本発明の品質改良剤の添加量として、好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.5〜7重量%が挙げられる。また、加工食品が低水分含量食品の場合であれば、本発明の品質改良剤の添加量として、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.05〜3重量%が挙げられる。
また、本発明の品質改良剤が添加される加工食品には、前記酵素処理澱粉、並びに必要に応じて添加される増粘多糖類以外に、本発明の効果に影響を与えない範囲で、食品原料や食品添加物等が含まれていてもよい。このような食品原料及び食品添加物としては、例えば、小麦粉、米粉、大豆粉等の穀粉類、糖類、油脂、粉乳、水、牛乳や豆乳、ココナッツミルクをはじめ、練乳、生クリームやホイップクリーム等の乳製品;卵黄、卵白、メレンゲ等の卵加工品;酸味料、調味料、色素、香料、ピューレ、日持ち向上剤、保存料、膨張剤、酸化防止剤、エキス、乳化剤、pH調整剤、洋酒、その他ミネラル類等が挙げられる。更には、カゼインナトリウム等の乳由来タンパク質;牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉等の畜肉由来タンパク質;魚、貝類等の魚介類由来タンパク質等の動物性タンパク質や、これら動物性タンパク質から得られたペプチド、コラーゲン、アルブミン等も挙げられる。更には、トウモロコシ、小麦、米、大豆等の穀物タンパク質や、その画分である、グルテン、ゼイン、グルテニン、グリアジン等も挙げられる。
糖類としては、砂糖に加え、例えば、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜の他、トレハロース、パラチノース、D−キシロース等の糖類、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、パラチニット、ラクチトール等の糖アルコール類を挙げることができる。また、サッカリン、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、ステビア抽出物に含まれるステビオサイド等の高甘味度甘味料等を添加しても良い。更には、異性化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)等も挙げることができる。これら糖類の中から1種又は2種以上を併用して使用することができる。
油脂としては、バター、生クリーム等の乳脂肪分、植物油脂あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等の中から1種又は2種以上を併用することができる。植物油脂の例としては、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、パーム油、パーム核油及びヤシ油等を挙げることができる。
乳化剤としては、例えば、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、レシチン等等を挙げることができ、これら乳化剤の中から1種又は2種以上を併用して使用することができる。
3.加工食品の調製方法
本発明の品質改良剤を添加した加工食品は、加工食品の種類に応じた一般的な製造方法に従って製造することができる。本発明の品質改良剤を添加した加工食品の製造方法として、例えば、本発明の品質改良剤、他の食品原料と混合し、加熱及び冷却を行う方法が挙げられる。また、前記冷却の後に、必要に応じて均質化処理を行ってもよい。更に、製造する加工食品の種類に応じて、その他の調理工程を適宜加えてもよい。
以下、実施例および比較例により食品参考例に用いる澱粉の調製法を、食品参考例により該酵素処理澱粉を含有した食品の調製例を示す。なお、以下の実施例における澱粉の調製例における酵素分解率%は次の式で表される。
(式1)
澱粉の分解率(%)={(遊離した還元糖の量(g)×100)/{酵素反応前の澱粉総量(g))}
また、酵素分解率を除く実施例及び食品参考例における部及び%は質量(重量)部及び質量(重量)%である。また、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
1.品質改良剤の製造
リン酸架橋酵素処理タピオカデンプンの調製(調製例1−1)
未処理の天然のタピオカデンプン700gに、14g(2.0%対デンプン)塩酸ナトリウム、水1300gを加え、デンプン懸濁液を調製した。懸濁液のpHをpH11.0に調整した後、トリメタリン酸ナトリウム0.7g(0.1%対デンプン)を添加し、40℃で6時間撹拌することにより反応を行った。反応後の懸濁液をpH4.3に調整し、α―アミラーゼ(Aspergillus niger由来、DANISCO社製「AMYLEX A3」;至適pH4.3)を3.5ml(0.5%対デンプン)添加し、50℃で酵素分解率が10%になるように酵素反応を行った。反応終了後、遠心濾過、送風乾燥し、リン酸架橋酵素処理デンプン(調製例1−1)を回収した。
アセチル化リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉の調製(調製例1−2)
未処理の天然のタピオカデンプン700gに、硫酸ナトリウム14g(2.0%対デンプン)、水1300gを加え、デンプン懸濁液を調製した。次いで、懸濁液のpHをpH11.0に調整し、40℃の条件下でトリメタリン酸ナトリウム0.07g(0.1%対デンプン、比較例1−2)を添加し、反応を4時間行った。反応後、30℃まで冷却、pH9.0に調整後、酢酸ビニルモノマー21g(3%対デンプン)を添加し1時間反応を行った。反応後、pH4.3に調整し、α―アミラーゼ(Aspergillus niger由来、DANISCO社製「AMYLEX A3」;至適pH4.3)を3.5ml(0.5%対デンプン)添加し、50℃で酵素分解率が10%なるように酵素反応を行った。反応後、懸濁液を遠心濾過、送風乾燥し、アセチル化リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉(調製例1−2)を回収した。
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋酵素処理小麦澱粉の調製(調製例2−1)
未処理の天然の小麦デンプン700gに、硫酸ナトリウム35g(5.0%対デンプン)、水1300gを加え、デンプン懸濁液を調製した。懸濁液のpHをpH11.0に調整した後、オキシ塩化リン84μL(120ppm%対デンプン)、プロピレンオキサイド5.6g(8.0%対デンプン)を添加し、40℃で24時間撹拌することにより反応を行った。反応後の懸濁液をpH4.3に調整し、アミログルコシダーゼ(Aspergillus niger由来、GENENCOR製「OPTIDEX L−400」;至適pH4.3)を3.5ml(0.5%対デンプン)添加し、40℃で酵素分解率が20%(実施例2−1)になるように酵素反応を行った。反応終了後、遠心濾過、送風乾燥し、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋酵素処理小麦澱粉(調製例2−1)を回収した。
リン酸架橋酵素処理小麦澱粉の調製(調製例2−2)
未処理の天然の小麦デンプン700gに、硫酸ナトリウム35g(5.0%対デンプン)、水1300gを加え、デンプン懸濁液を調製した。懸濁液のpHをpH11.0に調整した後、オキシ塩化リン84μL(120ppm%対デンプン)を添加し、35℃で1時間撹拌することにより反応を行った。反応後の懸濁液をpH4.3に調整し、アミログルコシダーゼ(Aspergillus niger由来、GENENCOR製「OPTIDEX L−400」;至適pH4.3)を3.5ml(0.5%対デンプン)添加し、50℃で酵素分解率が20%になるように酵素反応を行った。反応終了後、遠心濾過、送風乾燥し、リン酸架橋酵素処理小麦澱粉(調製例2−2)を回収した。
酵素処理小麦澱粉(調製例2−3)
未処理の天然の小麦デンプン700gに、水1300gを加え、デンプン懸濁液を調製した。pH4.3に調整し、アミログルコシダーゼ(Aspergillus niger由来、GENENCOR製「OPTIDEX L−400」;至適pH4.3)を3.5ml(0.5%対デンプン)添加し、50℃で酵素分解率が20%になるように酵素反応を行った。反応終了後、遠心濾過、送風乾燥し、酵素処理小麦澱粉(調製例2−3)を回収した。
ゲル化剤A(比較調製例1)
カラギナンとローカストビーンガムを主剤とした一般的なゲル化剤をゲル化剤Aとして選択した。
ゲル化剤B(比較調製例2)
酵素処理澱粉ではない、一般的な加工でん粉のひとつであるアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉をゲル化剤Bとして選択した。
増粘剤A(比較調製例3)
キサンタンガムを主剤とした一般的な増粘剤を増粘剤Aとして選択した。
2.加工食品の調製及び評価
以下、本発明の品質改良剤を用いた加工食品について、試作例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
試作例1:ミルクプリンの調製
下記表1に掲げる処方の内、原材料を全て混合し、混合液を調製した。加熱撹拌しながら昇温させ90℃にて10分間保持した。その後、65℃にまで冷却し、水にて全量を補正し、均質化した。65℃にて20分間保持した。容器に充填し、冷却することでミルクプリンを調製した。
Figure 2016103992
得られたミルクプリンについて、酵素処理澱粉を添加した実施例では、いずれも、もちっとして、ぷるっとした良好な弾力を有しつつ、口溶けも良好で滑らかな食感を有する結果となった。これに対し、比較例1では、増粘多糖類特有の粘りのある弾力を有し、口溶け、滑らかさともに試作例に劣り悪い結果となった。
一方、実施例と比較例では、共に、スプーンですくっても崩れずその跡が残り、型を外してもゲルそのものがボロボロに崩れることなく、優れた保形性を備えていた。
また、得られたミルクプリンについて離水性の評価を行った。具体的には、原材料全てを加熱撹拌した液をカップに入れて蓋をして密封し、氷浴で2時間急冷した後に、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、カップの蓋を剥がし、ミルクプリンの約半分を切り出して、カップの底に溜まった液をスポイトで吸い取り、その液量を測定した。調製したミルクプリンの重量に対して、カップの底から回収された液の重量の割合を離水率(%)として算出した。その結果、実施例1−1では、離水率は0.3%であり、目視では殆ど離水は確認されなかった。一方、比較例1では、離水率は3.2%であり、目視でも明らかな離水が確認された。更に、実施例1−1及び1−2では、離水の抑制効果が顕著に優れており、離水抑制には酵素処理タピオカ澱粉が好適であることも確認された。
試作例2:抹茶プリンの調製
下記表2に掲げる処方の内、粉末原料を全て混合した。水及び牛乳を混ぜ合わせたところに、混合した粉末原料を加え溶解した。弱火で加熱撹拌しながら90℃まで加熱した。熱いうちに容器に充填しシールを行ない、90℃にて40分間殺菌を行なった後、冷却することにより抹茶プリンを調製した。
Figure 2016103992
得られた抹茶プリンについて、酵素処理澱粉を添加した実施例は、いずれも、もちっとして、ぷるっとした良好な弾力を有しつつ、口溶けも良好で滑らかな食感を有する結果となった。これに対し、比較例2では、一般的な加工でん粉特有の粘りのある弾力を有し、歯への付着が多く、口中でねちゃつきを感じる食感であり、実施例に劣り悪い結果となった。
また、実施例と比較例では、共に、スプーンですくっても崩れずその跡が残り、型を外してもゲルそのものがボロボロに崩れることなく、優れた保形性を備えていた。
更に、得られた抹茶プリンについて、前記試作例1と同条件で、離水性の評価を行ったところ、比較例2では、目視にて明らかな離水が認められたのに対して、実施例では、離水が十分に抑制できていた。とりわけ、酵素処理タピオカ澱粉を添加した実施例2−1及び2−2では、離水の抑制効果が顕著に優れており、目視では殆ど離水が認められなかった。
試作例3:カスタードクリームの調製
下記表3に掲げる処方の内、泡立て器でよくすり混ぜた卵黄に、グラニュー糖を加え、更に泡立て器で混ぜ合わせた。そこへ、予め混合した薄力粉及び澱粉の粉体試料を篩い入れ、混ぜ合わせた。更に温めた牛乳を加え混ぜ合わせた、鍋に濾し入れ、加熱した。粘度が出て滑らかな状態になるまで木べらで掻き混ぜた。最後に、バター、バニラエッセンスを加え、混ぜ合わせて、カスタードクリームを調製した。
Figure 2016103992
得られたカスタードクリームについて、酵素処理澱粉を添加した実施例はいずれも、適度なボディ感、保形性を有しつつ、且つ、口溶け良好で滑らかな食感を有する結果となった。これに対し、比較例3では、ゲル状の物性で、食感も重たく、加えて口溶けも悪く、なめらかさも無く、試作例に劣り悪い結果となった。これらの結果から、本発明の品質改良剤は、パンや菓子等の食品に塗布する(トッピング)、挟む、充填(フィリング)する、あるいは、そのままの形態で喫食するといった様々な方法で喫食する食品、具体的には、カスタードクリーム、フラワーペースト類、サワークリーム、生チョコレート、チョコレート類、カレーフィリング、惣菜フィリング、ファットスプレッド、チョコレートペースト、ピーナッツペースト、餡ペースト、ホワイトソース、チーズスプレッド、更には、フラワーペーストをシート状に伸展したフラワーシート等への応用も有効であることが明らかとなった。
また、実施例と比較例では、共に、ペーストがダレることなく、優れた保形性を備えていた。
更に、得られたカスタードクリームについて離水性の評価を行った。具体的には、調製したカスタードクリームを容器に入れて密封し、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、カスタードクリームの離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例3では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例では離水が十分に抑制できていた。特に、酵素処理タピオカ澱粉を使用した実施例3−1及び3−2では、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例4:チルド水羊羹の調製
下記表4に掲げる処方の内、鍋にこしあん以外の全ての原料を入れて火にかけた。沸騰したら弱火にして2分間加熱した。こしあんを加えてよく混ぜる。熱いうちに容器に流し入れ、上部にスペースを空けて充填し、すぐにシールする。冷蔵庫で冷却し、チルド水羊羹を調製した。
Figure 2016103992
得られたチルド水羊羹について、酵素処理澱粉を添加した実施例はいずれも、適度な弾力と噛み応えを有しつつサク味のある食感で、歯への付着が少ないさっぱりとした食感を有する結果となった。これに対し、比較例4は、増粘多糖類特有の粘りのある弾力を有し、歯への付着が多く、試作例に劣り悪い結果となった。
また、実施例と比較例では、共に、スプーンですくっても崩れずその跡が残り、型を外してもゲルそのものがボロボロに崩れることなく、優れた保形性を備えていた。
更に、得られたチルド水羊羹について離水性の評価を行った。具体的には、調製したチルド水羊羹を容器に密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、チルド水羊羹の離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例4では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例では離水が十分に抑制できていた。特に、酵素処理タピオカ澱粉を使用した実施例4−1及び4−2では、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例5:チョコ羊羹の調製
下記表5に掲げる処方の内、ボウルに粉末原料を入れ、次いで90℃の湯を一気に加えて撹拌した。生クリーム及びソルビトールを60℃程度にまで温めてから加え、撹拌後直ちに容器へ流し入れた。95℃〜98℃のスチームで1時間加熱した後、10℃以下にまで冷却、適当なサイズにカットしチョコ羊羹を調製した。
Figure 2016103992
得られたチョコ羊羹について、酵素処理澱粉を添加した試作例はいずれも、適度な硬さ、脆さを有し歯への付着も少なく、且つ、適度な粘弾性、もちっとした食感を有する結果となった。これに対し、比較例5は、一般的な加工でん粉特有の粘りのある弾力を有し、歯への付着が多く、口中でねちゃつきを感じる食感であり、試作例に劣り悪い結果となった。
また、実施例と比較例では、共に、スプーンですくっても崩れずその跡が残り、型を外してもゲルそのものがボロボロに崩れることなく、優れた保形性を備えていた。
更に、得られたチョコ水羊羹について離水性の評価を行った。具体的には、調製したチョコ水羊羹を容器に密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、チョコ水羊羹の離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例5では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例では離水が十分に抑制できていた。特に、酵素処理タピオカ澱粉を使用した実施例5−1及び5−2では、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例6:ごま豆腐の調製
下記表6に掲げる処方の内、全原料を鍋に入れ、弱火で加熱しながら撹拌した。粘度が出て糊状になれば加熱を止め、十分撹拌し均一なペーストにしてから容器に充填した。レトルト殺菌を行ない、ごま豆腐を調製した。
Figure 2016103992
得られたごま豆腐について、酵素処理澱粉を添加した実施例はいずれも、適度にもちっとした食感と適度なサクみを有し、口中での粘りや付着が少なく食べ易い食感となった。これに対し、比較例6は、軟らかくもちっとした食感が強く出ており、粘りも強い付着性の大きい食感となり、おいしさ、食べ易さにおいて試作例に劣り悪い結果となった。
また、実施例と比較例では、共に、スプーンですくっても崩れずその跡が残り、型を外してもゲルそのものがボロボロに崩れることなく、優れた保形性を備えていた。
更に、得られたごま豆腐について離水性の評価を行った。具体的には、調製したごま豆腐を容器に密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、ごま豆腐の離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例6では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例では離水が十分に抑制できていた。特に、酵素処理タピオカ澱粉を使用した実施例6−1及び6−2では、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例7:みたらし団子タレの調製
下記表7に掲げる処方の内、鍋に濃口醤油以外の原料を計量し、中火に掛けた。粘度が出て均一に透明になったら濃口醤油を混合した。90℃で加熱混合し、充填後直ぐに冷却(Brix 50に合わせる)し、みたらし団子タレを調製した。
Figure 2016103992
得られたみたらし団子タレについて、酵素処理澱粉を添加した試作例はいずれも、適度なボディ感、保形性を有しつつ、且つ、口溶け良好で滑らかな食感を有する結果となった。これに対し、比較例10は、ゲル状の物性で、食感も重たく、加えて口溶けも悪く、なめらかさも無く、試作例に劣り悪い結果となった。みたらし団子のタレに限定されず、焼肉のタレや蒲焼のタレ等広くタレ類への応用も考えられる。
また、得られたみたらし団子タレについて離水性の評価を行った。具体的には、調製したみたらし団子タレを容器に密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、みたらし団子タレの離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例7では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例では離水が十分に抑制できていた。特に、酵素処理タピオカ澱粉を使用した実施例7−1及び7−2では、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例8:ドレッシングの調製
下記表8に掲げる処方の内、でん粉原料及び増粘剤Aを予め上白糖と混合し、撹拌しながら水へ加えて撹拌溶解を行なった。十分溶解した後、醸造酢、食塩、レモン果汁、味の素を加えて十分に混和した。次いで、乳化機(T.K.ロボミックス/ホモミクサー)を用いて、回転数8000rpmで撹拌しながらサラダ油をゆっくりと滴下し乳化を行なった。サラダ油を全量滴下後、更に8000rpmで5分間乳化を行ないドレッシングを調製した。
Figure 2016103992
得られたドレッシングについて、酵素処理澱粉を添加した試作例はいずれも、適度なボディ感、保形性を有しつつ、且つ、口溶け良好で滑らかな食感を有する結果となった。これに対し、比較試作例11は、ボディ感はあるものの重たい食感で、加えて口溶けも悪く、なめらかさも無く、試作例に劣り悪い結果となった。これらの結果から、本発明の品質改良剤は、農林規格(JAS)で定義するところの、ドレッシング、ドレッシングタイプ調味料、半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、分離液状ドレッシング、サラダクリーミードレッシングを始め、マヨネーズ風調味料、ノンオイルドレッシング、タルタルソース、ディップソース、ピザソース等広くドレッシングやソースへの応用も考えられる。
また、得られたドレッシングについて離水性の評価を行った。具体的には、調製したドレッシングを容器に密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、ドレッシングの離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例8では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例では離水が十分に抑制できていた。特に、酵素処理タピオカ澱粉を使用した実施例8−1及び8−2では、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例9:ソーセージの調製
下記表15に掲げる処方の内、豚うで肉をサイレントカッターに入れ、高速でカッティングしながら、カゼインナトリウム、食塩、砂糖、調味料、総合塩漬剤、ポークパウダー、香辛料、ソルビン酸カリウム、pH調整剤を加え、よく混ぜ合わせた。ペースト状になれば、氷水及び豚脂を加え、カッティングを続けた。最後に、でん粉原料、ゲル化剤を加えてよく混ぜ合わせ、均一なペーストにした。ケーシングに充填し、80℃にて40分間殺菌を行なった。流水で冷却しソーセージを調製した。
Figure 2016103992
得られたソーセージについて、酵素処理澱粉を添加した試作例はいずれも、ソフトでしなやかな弾力のある良好な食感を有する結果となった。比較試作例15は、一般的な加工でん粉特有の粘りのある弾力を有し、歯への付着が多く、口中でねちゃつきを感じる食感であり、試作例に劣り悪い結果となった。
また、得られたソーセージについて離水性の評価を行った。具体的には、調製したソーセージをケーシングに密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、ケーシングを開封し、ソーセージの離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例9では、離水が確認されたのに対し、実施例では離水が十分に抑制できていた。特に、酵素処理タピオカ澱粉を使用した実施例9−1及び9−2では、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例10:オレンジゼリーの調製
下記表10に掲げる処方の内、水と果糖ブドウ糖液糖を混和し80℃にまで加熱した。加熱撹拌しながら、酵素処理澱粉および寒天と上白糖(全量)の混合物を添加した。80℃にて10分間撹拌溶解したのち、濃縮オレンジ果汁を添加した。水(好ましくは湯)を添加し全量を1000gに補正し、熱いうちに容器に充填し、シール(フタ)をして氷浴することでオレンジゼリーを調製した。
得られたそれぞれのオレンジゼリーについて、離水性を評価した。具体的には、調製したオレンジゼリーを、冷蔵庫内に1週間静置した後に、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、ドレッシングの離水状況を目視にて確認した。また、試作例1と同様の方法で、離水率についても測定した。
Figure 2016103992
表10に示すように、酵素処理澱粉を添加した試作例は、比較試作例に比べて格段に離水を防止できていた。また、酵素処理澱粉を添加した試作例では、風味食感や外観も良好であった。更に、実施例と比較例では、共に、スプーンですくっても崩れずその跡が残り、型を外してもゲルそのものがボロボロに崩れることなく、優れた保形性を備えていた。
試作例11:コーヒーゼリーの調製
下記表11に掲げる処方の内、水と果糖ブドウ糖液糖を混和し80℃にまで加熱した。加熱撹拌しながら、酵素処理澱粉および寒天と上白糖(全量)の混合物を添加した。80℃にて10分間撹拌溶解した後、コーヒー粉末を添加する。水(好ましくは湯)を添加し全量を1000gに補正し、熱いうちに容器に充填し、シール(フタ)をして氷浴することでコーヒーゼリーを調製した。
Figure 2016103992
得られたコーヒーゼリーについて、前記試作例17の場合と同様の方法で離水性を評価したところ、酵素処理澱粉を添加した試作例では、比較試作例に比べて有意に離水を防止できていた。また、酵素処理澱粉を添加した試作例では、風味食感や外観も良好であった。
また、得られたコーヒーゼリーについて、前記試作例1の場合と同条件で、離水性の評価を行ったところ、比較例11では、目視にて明らかな離水が認められたのに対して、実施例11では、目視では殆ど離水は確認されず、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例12:ミルクプリンの調製
下記表12に掲げる処方の内、原材料を全て混合し、混合液を調製した。加熱撹拌しながら昇温させ90℃にて10分間保持した。その後、65℃にまで冷却し、水にて全量を補正し、均質化する。65℃にて20分間保持した。容器に充填し、冷却することでミルクプリンを調製した。
Figure 2016103992
酵素処理澱粉を添加した実施例12では、風味食感や外観も良好であった。また、得られたミルクプリンについて、前記試作例1の場合と同条件で、離水性の評価を行ったところ、比較例12では、目視にて明らかな離水が認められたのに対して、実施例12は、目視では殆ど離水は確認されず、離水の抑制効果が顕著に優れていた。
試作例13:イチゴジャムの調製
下記表13に掲げる処方の内、水を80℃にまで加熱し、加熱撹拌しながら、酵素処理澱粉、ペクチン、上白糖(一部)の混合物を添加した。80℃にて10分間撹拌溶解したのち、砕いた冷凍イチゴ、クエン酸、上白糖(残り)を添加し、80℃にて続けて5分間撹拌溶解した。水(好ましくは湯)を添加し全量を1000gに補正し、熱いうちに容器に充填し、シール(フタ)をして氷浴することでイチゴジャムを調製した。
Figure 2016103992
酵素処理澱粉を添加した実施例13では、風味食感や外観も良好であった。
また、得られたイチゴジャムについて離水性の評価を行った。具体的には、調製したイチゴジャムを容器に密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、イチゴジャムの離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例13では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例13では離水が十分に抑制できていた。
試作例14:ヨーグルトの調製
下記表14に掲げる処方の内、水と牛乳を混和し、脱脂粉乳、上白糖、酵素処理澱粉、寒天の混合物を添加し、70℃にまで加熱した。70℃にて10分間撹拌溶解したのち、水(好ましくは湯)を添加し全量を1000gに補正し、高圧ホモジナイザー(150kg/cm2)にて均質化した。次いで、90℃にて10分間加熱撹拌したのち40℃にまで冷却し、スターター(市販のプレーンヨーグルト)を添加した。40℃下にてpH4.5付近になるまで発酵させた。発酵終了後、20℃にまで冷却し、容器に充填し、シール(フタ)をして冷蔵庫内で静置することによりヨーグルトを調製した。
Figure 2016103992
酵素処理澱粉を添加した実施例14では、風味食感や外観も良好であった。
また、得られたヨーグルトについて離水性の評価を行った。具体的には、調製したヨーグルトを容器に密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、ヨーグルトの離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例14では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例14では離水が十分に抑制できていた。
試作例15:海苔の佃煮の調製
下記表15に掲げる処方の内、水を80℃にまで加熱し、加熱撹拌しながら、酵素処理澱粉、グァーガム、上白糖(一部)の混合物を添加した。80℃にて10分間撹拌溶解したのち、得られた溶液を鍋に移し替え、そこへ醤油、果糖ブドウ糖液糖、海苔を添加し、へらでよくかき混ぜながら全量1000gになるまで煮詰めることで海苔の佃煮を調製した。
Figure 2016103992
また、得られた佃煮について離水性の評価を行った。具体的には、調製した佃煮を容器に密封した状態で、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、佃煮の離水状況を目視にて確認した。その結果、比較例15では、明らかな離水が確認されたのに対し、実施例15では離水が十分に抑制できていた。
参考例
下記表15に掲げる処方の含水ゲルを調製した。具体的には、果糖ブドウ糖液糖、上白糖、及び水を混合し、80℃にまで加熱した後に、寒天を添加し、80℃で10分間撹拌し、寒天を溶解させた。寒天を溶解させた液をカップに充填し、密封して氷浴で2時間急冷した後に、冷蔵庫(4℃)にて1日間保存した。次いで、冷蔵庫から取り出して室温(25℃)で3時間静置した後に、容器を開封し、前記試作例1の場合と同条件でゼリーの離水率を測定した。
離水率の測定結果を表16に示す。この結果、水分含量30重量%の含水ゲルよりも、水分含量が50重量%の含水ゲルの方が離水率が高くなっており、高含水量である程、含水ゲルの離水性も高まることが明らかとなった。
Figure 2016103992
本発明の品質改良剤によれば、ゲル状食品に従来の澱粉では為し得なかった口溶け性と保形性を同時に付与することができる。また、本発明の品質改良剤を使用することにより、他のゲル化剤や増粘多糖類の添加量を減らすことができ、糊状感の軽減とフレーバーリリースの良好さを付与することができる。また、本発明の品質改良剤は、通常使われているカラギナン等のゲル化剤と比較してもコストを抑えることができる。更に、本発明の品質改良剤は、ゲル状食品の離水を防止することもできるので、長期保存しても、風味、食感、外観を安定に維持させることができる。
更に、本発明の品質改良剤によれば、ペースト状又はゾル状食品に対して従来の澱粉ではなしえなかった口溶け性と保形性を同時に付与することができる。また、本発明の品質改良剤をペースト状又はゾル状食品に使用することにより、他のゲル化剤や増粘剤等増粘多糖類の添加量を減らすことができ、糊状感の軽減とフレーバーリリースの良好さを付与することができる。更に、本発明の食品品質改良剤は、食品分野で通常使われている増粘多糖類と比較しても安価で、しかも独特のネチャつきが少なく、十分な粘性を付与できるので、ペースト状・ゾル状の液ダレなどを防止することもできる。
加えて、本発明の品質改良剤によれば、クッキー等の低水分食品において、硬くてガリガリとした口溶けの悪い食感の要因となる一般的な加工でん粉の添加量を減らすことができ、従来の澱粉ではなしえなかった口どけ性とソフトな食感を同時に付与することができる。

Claims (11)

  1. 酵素処理澱粉を含むことを特徴とする、加工食品の品質改良剤。
  2. ゲル状食品の離水防止剤として使用される、請求項1に記載の品質改良剤。
  3. 水分含量が30重量%以上のゲル状食品に対して使用される、請求項2に記載の品質改良剤。
  4. 保形性付与剤及び/又は口溶け性付与剤として使用される、請求項1に記載の品質改良剤。
  5. 前記酵素処理澱粉が、澱粉加水分解酵素及び/又は糖転移酵素を用いて澱粉粒を処理したものである、請求項1〜4のいずれかに記載の品質改良剤。
  6. 前記澱粉粒の由来原料が、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、もち米、及びサゴヤシからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の品質改良剤。
  7. 前記澱粉粒の由来原料が、タピオカである、請求項1〜6のいずれかに記載の品質改良剤。
  8. 前記酵素処理澱粉が、澱粉加水分解酵素及び/又は糖転移酵素を用いて澱粉粒を処理した後に、化学修飾又は物理処理がなされたものである、請求項1〜7のいずれかに記載の品質改良剤。
  9. ゼラチン、及び/又は酵素処理澱粉以外の増粘多糖類を含む加工食品に対して使用される、請求項1〜8のいずれかに記載の品質改良剤。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の品質改良剤を含む、加工食品。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の品質改良剤と他の食品原料とを混合し、加熱及び冷却を行うことを特徴とする、加工食品の製造方法。
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