JP2016102202A - 多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服 - Google Patents

多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服 Download PDF

Info

Publication number
JP2016102202A
JP2016102202A JP2015220937A JP2015220937A JP2016102202A JP 2016102202 A JP2016102202 A JP 2016102202A JP 2015220937 A JP2015220937 A JP 2015220937A JP 2015220937 A JP2015220937 A JP 2015220937A JP 2016102202 A JP2016102202 A JP 2016102202A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
porous film
film
temperature
mass
strength
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015220937A
Other languages
English (en)
Inventor
啓 生駒
Hiroshi Ikoma
啓 生駒
直哉 西村
Naoya Nishimura
直哉 西村
松井 良輔
Ryosuke Matsui
良輔 松井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Publication of JP2016102202A publication Critical patent/JP2016102202A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Professional, Industrial, Or Sporting Protective Garments (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】耐水圧および透湿性に優れ、2%伸長時の強度が高いことから不織布とのラミネート加工性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れた防護服の基材などに好適な多孔性フィルムおよびそれを用いた透湿防水シート、複合体および防護服を提供すること。【解決手段】透湿度(T)が300g/m2・時以上、耐水圧(P)が40kPa以上であり、P≧20,000/Tを満たす多孔性フィルムであって、長手方向および幅方向の2%伸長時の強度が共に20〜40MPaである多孔性フィルムとする。【選択図】なし

Description

本発明は、耐水圧に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性および加工適正に優れた防護服の基材などに好適な多孔性フィルムおよびそれを用いた透湿防水シート、複合体および防護服に関する。
従来、防水シート、防水服の生地としては、布帛に撥水性の樹脂をコーティングまたは貼り合わせた素材が耐水性と共に加工性にも優れることから多用されている。しかしながら、透湿性または透気性に劣るために、高温多湿の条件では内部に湿気が籠もり、防護服用に用いると蒸れが起こり不快感を生じたり、また防水シート用として用いると内部にカビなどが発生するという問題があった。これらの問題解決策として、繊維材料布帛に多孔質樹脂被膜がラミネートされたラミネート加工布がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、多孔質樹脂被膜が、ポリウレタン系樹脂に吸着剤としてシリカやゼオライトなどを10重量%以上添加した塗剤を塗工して乾燥したものであるが、被膜の2%伸長時の強度が低くラミネート加工適性が悪いという問題があった。また、透湿性フィルムと不織布からなる生地がある(例えば、特許文献2,3参照)。特許文献2や3では、炭酸カルシウム等の無機粒子や有機粒子を多量に添加混合したシートを延伸して多孔質化したフィルムを用いるため、耐水圧性が不十分であり、機械的伸度に異方性があり、また、粒子が起点となり、生地の伸びが出ずに衣服着用に破れやすいという問題があった。また、フィルムのこしが低いため、不織布と貼り合わせる加工での工程通過性が劣るという問題があった。
特開2001−38839号公報 特開平6−316022号公報 特開2003−145697号公報
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、耐水圧および透湿性に優れ、2%伸長時の強度が高いことから不織布とのラミネート加工性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れた防護服の基材などに好適な多孔性フィルムおよびそれを用いた透湿防水シート、複合体および防護服を提供することにある。さらには、不要となった際の焼却残渣もきわめて少ない透湿防水シート、防護服を提供することにある。
上記した課題は、透湿度(T)が300g/m・時以上、耐水圧(P)が40kPa以上であり、P≧20,000/Tを満たす多孔性フィルムであって、長手方向および幅方向の2%伸長時の強度が共に20〜40MPaである多孔性フィルムによって達成可能である。
本発明の多孔性フィルムは、耐水圧および透湿性に優れ、2%伸長時の強度が高いことから不織布とのラミネート加工性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れた防護服の基材などに好適な多孔性フィルムおよびそれを用いた透湿防水シート、複合体および防護服を提供することができる。
本発明の多孔性フィルムは、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する微細な貫通孔を多数有しているフィルムである。多孔性フィルムを構成する樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、フッ素系樹脂などいずれでも構わないが、耐熱性、成形性、生産コストの低減、耐薬品性、耐酸化・還元性などの観点からポリオレフィン樹脂が望ましい。
上記ポリオレフィン樹脂を構成する単量体成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、5−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられ、これらの単独重合体や上記単量体成分から選ばれる少なくとも2種以上の共重合体、およびこれら単独重合体や共重合体のブレンド物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記の単量体成分以外にも、例えば、ビニルアルコール、無水マレイン酸などを共重合、グラフト重合しても構わないが、これらに限定されるわけではない。透湿防水シートの基材としてはエチレンを単量体成分として用いたポリエチレンおよび/またはプロピレンを単量体成分として用いたポリプロピレンが好ましく、特に耐熱性、透気性、空孔率などの観点からプロピレンを単量体成分として用いたポリプロピレンが好ましく、主成分であることが好ましい。「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。
多孔性フィルム中に貫通孔を形成する方法としては、湿式法、乾式法どちらでも構わない。具体的には、湿式法とは、ポリオレフィン樹脂をマトリックス樹脂とし、シート化後に抽出する被抽出物を添加、混合し、被抽出物の良溶媒を用いて添加剤のみを抽出することで、マトリックス樹脂中に空隙を生成せしめる方法であり、種々の提案がなされている。一方、乾式法としては、たとえば、溶融押出時に低温押出、高ドラフト比を採用することにより、シート化した延伸前のフィルム中のラメラ構造を制御し、これを一軸延伸することでラメラ界面での開裂を発生させ、空隙を形成する方法(所謂、ラメラ延伸法)が提案されている。また、乾式法として、無機粒子またはマトリックス樹脂であるポリプロピレンなどに非相溶な樹脂を粒子として多量添加し、シートを形成して延伸することにより粒子とポリプロピレン樹脂界面で開裂を発生させ、空隙を形成する方法も提案されている。さらには、ポリプロピレンの結晶多形であるα型結晶(α晶)とβ型結晶(β晶)の結晶密度の差と結晶転移を利用してフィルム中に空隙を形成させる、所謂β晶法と呼ばれる方法の提案も数多くなされている。
β晶法を用いてフィルムに貫通孔を形成するためには、多孔性フィルムのβ晶形成能が40%以上であることが好ましい。β晶形成能が40%未満ではフィルム製造時にβ晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果、透過性の低いフィルムしか得られない場合がある。一方、β晶形成能の上限は特に限定されるものではないが、99.9%を超えるようにするのは、後述するβ晶核剤を多量に添加したり、使用するポリプロピレン樹脂の立体規則性を極めて高くしたりする必要があり、製膜安定性が低下するなど工業的な実用価値が低い。工業的にはβ晶形成能は65〜99.9%が好ましく、70〜95%が特に好ましい。
β晶形成能を40%以上に制御するためには、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用したり、β晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に形成させる結晶化核剤を添加剤として用いたりすることが好ましい。β晶核剤としては、たとえば、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、コハク酸マグネシウムなどのカルボン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドに代表されるアミド系化合物、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのテトラオキサスピロ化合物、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族スルホン酸化合物、イミドカルボン酸誘導体、フタロシアンニン系顔料、キナクリドン系顔料を好ましく挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報に開示されているアミド系化合物を好ましく用いることができる。β晶核剤の添加量としては、ポリプロピレン樹脂全体を基準とした場合に、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であればより好ましい。0.05質量%未満では、β晶の形成が不十分となり、多孔性フィルムの透気性が低下する場合がある。0.5質量%を超えると、粗大ボイドを形成し、有機溶媒塗布、乾燥時の物性変化が大きくなる場合がある。
本発明の多孔性フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、メルトフローレート(以下、MFRと表記する、測定条件は230℃、2.16kg)が4〜30g/10分の範囲であることが好ましく、さらにアイソタクチックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。MFRが4g/10分未満であると、樹脂の溶融粘度が高くなり高精度濾過が困難となり、フィルムの品位が低下する場合がある。MFRが30g/10分を超えると、分子量が低くなりすぎるため、延伸時のフィルム破れが起こりやすくなり、生産性が低下する場合がある。より好ましくは、MFRは4〜20g/10分である。なお、樹脂全体のMFRが上記好ましい範囲となるように、MFRの異なる複数のポリプロピレンを混合し、調整した混合樹脂を用いてもよい。
また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いる場合、アイソタクチックインデックスは90〜99.9%であることが好ましく、95〜99%がより好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満であると、樹脂の結晶性が低く、高い透気性を達成するのが困難な場合がある。
本発明でポリプロピレン樹脂を用いる場合、ホモポリプロピレン樹脂を用いることができるのはもちろんのこと、製膜工程での安定性や造膜性、物性の均一性の観点から、ポリプロピレンにエチレン成分やブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン成分を5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下の範囲で共重合した樹脂を用いることもできる。なお、ポリプロピレンへのコモノマー(共重合成分)の導入形態としては、ランダム共重合でもブロック共重合でもいずれでも構わない。
また、上記したポリプロピレン樹脂は、MFRが70g/10分以上、好ましくは100g/10分以上、さらに好ましくは500g/10分以上のポリプロピレン(高MFRのポリプロピレン)を添加することが透湿性向上の点で好ましい。通常、MFRが70g/10分以上の高MFRアイソタクチックポリプロピレンは延伸性が悪く、強度および伸度の低下を招くために、フィルムの分野では使用されてこなかった。しかしながら、ポリプロピレン樹脂全体を100質量%としたときに、高MFRポリプロピレンを0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜5質量%含有することで、少量添加した高MFRポリプロピレンが、結晶界面の分子鎖末端濃度を高め、縦延伸において結晶界面での孔形成を促進させる、すなわち開孔助剤として働くことから均一な開孔が起こり、耐水圧、伸度を有しながら、透湿性を有することができ、相反する特性の両立を図ることができる。上述した性質を持つ高MFRアイソタクチックポリプロピレンとしては、市販されているプライムポリマー社製ポリプロピレン樹脂S10AL、S10CLなどを挙げることができる。
また、上記したポリプロピレン樹脂は、MFRが2g/10分以下、好ましくは1g/10分以下のポリプロピレン(低MFRポリプロピレン)をさらに含有せしめることが耐水圧、2%伸長時の強度向上の観点から好ましい。通常、MFRが2g/10分以下の低MFRポリプロピレンを使用して多孔性フィルムを製膜する場合、開孔性が悪く、透湿性に劣るため、多孔性フィルムの分野には使用されてこなかった。しかしながら、ポリプロピレン樹脂全体を100質量%としたときに、低MFRポリプロピレンを0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜5質量%含有し、かつ上記高MFRポリプロピレンを添加することで、耐水圧、伸度を有しながら、透湿性を有することができ、相反する特性の両立を図ることができる。
本発明の多孔性フィルムを形成するポリプロピレン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、帯電防止剤や有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましいが、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して酸化防止剤添加量は2質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。ただし、充填剤は、脱落する場合、作業時に悪影響を及ぼす可能性があり、充填剤が起点となり、伸度が低下する場合があり、添加しないほうが好ましく、特に無機充填剤は焼却後の灰分として残存することから添加しないほうが好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、透湿度が300g/m・時以上である。透湿度が300g/m・時未満では、本発明の多孔性フィルムを防護服として着用した時、蒸れ感を強く感じ、着衣快適性が低い場合がある。透湿度は高いほうが好ましいが、耐水圧、および伸度との両立の観点から、上限は現実的には2,000g/m・時となる。着衣快適性の観点から、300〜2,000g/m・時が好ましく、350〜2,000g/m・時がより好ましく、400〜2,000g/m・時が更に好ましい。透湿度は、原料中のβ晶核剤の含有量、結晶化温度を調整すること、原料中の高MFRアイソタクチックポリプロピレンと低MFRポリプロピレンの含有量を調整すること、長手方向の延伸倍率と温度を調整することで制御することができる。例えば、原料中のβ晶核剤の含有量を0.05〜0.5質量%の範囲内でより増加させたり、結晶化温度を高くしたり、原料中に高MFRアイソタクチックポリプロピレンを0.1〜20質量%の範囲内で含有量をより増加したり、低MFRポリプロピレンを0.1〜20質量%の範囲内で含有量を減少したり、長手方向の延伸温度を90〜140℃の範囲内でより低温にすることで高めることができ、長手方向の延伸倍率を3〜7倍の範囲内でより高倍にすることで透湿度を増大せしめることができる。
本発明の多孔性フィルムは、耐水圧が40kPa以上である。耐水圧が40kPa未満では、防護服として用いたときに、強い雨風の時や肘、膝部をついた時や座り込んだ時に水が染みこむ場合があり、透湿防水シートとして用いたときに、水が染みこみ内部にカビなどが発生する場合がある。耐水圧の上限は透湿度の観点から250kPaである。加工性および現場での作業性の観点から、50〜250kPaが好ましく、60〜250kPaがより好ましい。耐水圧は、原料中の高MFRアイソタクチックポリプロピレンと低MFRポリプロピレンの含有量を調整すること、キャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度、横延伸速度と倍率、熱処理工程での温度と時間、およびリラックスゾーンでの弛緩率を調整することで制御することができる。例えば、原料中に高MFRアイソタクチックポリプロピレンを0.1〜20質量%の範囲内で含有量をより減少したり、低MFRポリプロピレンを0.1〜20質量%の範囲内で含有量を増加したり、長手方向の延伸温度を90〜140℃の範囲内でより高温にすることで高めることができ、長手方向の延伸倍率を3〜7倍の範囲内でより高倍にしたり、横延伸速度を500〜10,000%/分の範囲内でより早くしたり、横延伸倍率を4〜15倍の範囲内でより高倍にしたり、熱処理工程での温度を140〜170℃の範囲内でより高温にしたり、リラックスゾーンでの弛緩率を5〜35%の範囲内でより高くすることで耐水圧を高めることができる。
本発明の多孔性フィルムは、透湿度(T:単位g/m・時)と耐水圧(P:単位kPa)の関係が、P≧20,000/Tとなる。耐水圧(P)が20,000/透湿度(T)より低い場合、透湿度が低く、蒸れ感を強く感じ、着衣快適性が低い場合があるか、耐水圧が低く、防護服として用いたときに、強い雨風の時や肘、膝部をついた時や座り込んだ時に水が染みこむ場合があり、透湿防水シートとして用いたときに、水が染みこみ内部にカビなどが発生する場合がある。さらにはP×T≧22,000(kPa・g/m・時)を満足することが好ましく、P×T≧24,000(kPa・g/m・時)を満足すると特に好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、長手方向および幅方向の2%伸長時の強度が共に20〜40MPaである。フィルムの長手方向および幅方向の2%伸長時の強度が20MPa未満では、本発明の多孔性フィルムを防護服の基材とした防護服の場合、作業現場での作業時に生地または透湿防水シートが破膜し、耐水圧が低下し、水漏れが起こったり、本発明の多孔性フィルムを防護服の基材とした場合、不織布と貼り合わせる加工での工程通過性が劣る場合がある。フィルムの長手方向および幅方向の2%伸長時の強度が40MPaより大きい場合、加工工程において張力がかかる際にフィルムが伸びてしまうなどの加工での工程通過性が劣る場合がある。加工性および現場での作業性の観点から、25〜40MPaが好ましく、30〜40MPaがより好ましい。フィルムの長手方向および幅方向の2%伸長時の強度は、原料中の高MFRアイソタクチックポリプロピレンと低MFRポリプロピレンの含有量を調整すること、キャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度、横延伸速度と倍率、熱処理工程での温度と時間を調整することで制御でき、特に長手方向の再延伸温度と倍率により容易にコントロールすることができる。例えば、原料中に高MFRアイソタクチックポリプロピレンを0.1〜20質量%の範囲内で含有量をより減少したり、低MFRポリプロピレンを0.1〜20質量%の範囲内で含有量を増加したり、長手方向の延伸温度を90〜140℃の範囲内でより高温にすることで高めることができ、横延伸速度を500〜10,000%/分の範囲内でより早くしたり、熱処理工程での温度を140〜170℃の範囲内でより高温にすることで高めることができ、特に長手方向に再延伸を行い、再延伸温度を130℃以上でフィルムが溶融しない程度に高温にすることで高くすることができる。
本発明の多孔性フィルムは、温度850℃で測定した焼却後の残灰分(JIS L 1013(2010))が0.5質量%以下であることが好ましい。温度850℃で測定した焼却後の残灰分が0.5質量%より多い場合、使い捨て用途の場合焼却処分によって灰分が発生し、防護服の場合には、安全衛生上さらに残灰分の処理を行う場合がある。温度850℃で測定した焼却後の残灰分の下限は0%となる。温度850℃で測定した焼却後の残灰分は、例えば原料への無機粒子の添加を減少させて多孔化することによって達成することができる。
本発明の多孔性フィルムは、突刺強度が250N/mm以上であることが好ましい。突刺強度が250N/mm未満では、本発明の多孔性フィルムを防護服の基材とした場合、縫合の際に加工性が低下したり、本発明の多孔性フィルムを防護服の基材とした医療用防護服の場合、作業時に多孔性フィルムが破れて多孔性フィルムの耐水圧が低下する場合がある。突刺強度の上限は現実的には1,000N/mmとなる。加工性および現場での作業性の観点から、280〜1000N/mmが好ましい。突刺強度は、キャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度、横延伸速度と倍率、熱処理工程での温度と時間、およびリラックスゾーンでの弛緩率を調整することで制御することができる。つまり、長手方向の延伸温度を90〜140℃の範囲内で高温にすることで高くなり、長手方向の延伸倍率を3〜7倍の範囲内で高倍にすることで高くなり、横延伸速度を500〜10,000%/分の範囲内で早くすることで高くなり、横延伸倍率を4〜15倍の範囲内で高倍にすることで高くなり、熱処理工程での温度を140〜170℃の範囲内で高温にすることで高くなり、リラックスゾーンでの弛緩率を13〜35%の範囲内で高くすることで高くすることができる。
本発明においては、上記した多孔性フィルムを用いて透湿防水シートを構成することが好ましいが、この透湿防水シートと不職布との複合体を構成することもできる。この複合体の目付は50g/m以下であることが好ましく、45g/m以下であることがより好ましい。透湿防水シートと不職布との複合体の防護服の場合、50g/mより大きいと重量感があり、着心地が低下する場合がある。
本発明の多孔性フィルムは、フィルム厚みが5μm以上であることが好ましい。厚みが5μm未満では加工時または使用時にフィルムが破断する場合がある。フィルム厚みは10μm以上であればより好ましく、10〜50μmであればなお好ましい。
以下に本発明の多孔性フィルムの製造方法を具体的な一例をもとに説明する。なお、本発明の多孔性フィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
ポリプロピレン樹脂として、MFR8g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂89.5質量部、MFR1,000g/10分の市販の高MFRポリプロピレン樹脂5質量部、MFR0.5g/10分の市販の低MFRポリプロピレン樹脂5質量部、β晶核剤としてN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.3質量部、酸化防止剤0.2質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給して溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン原料(a)を準備する。この際、溶融温度は280〜310℃とすることが好ましい。
次に、原料(a)を単軸押出機に供給し、200〜230℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸の積層キャストシートを得る。キャストドラムは、表面温度が105〜130℃であることが、キャストシートのβ晶分率を高く制御する観点から好ましい。この際、特にシートの端部の成形が、後の延伸性に影響するので、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。また、シート全体のドラム上への密着状態から、必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付けてもよい。
次に、得られたキャストシートを二軸配向させ、フィルム中に空孔を形成する。二軸配向させる方法としては、フィルム長手方向に延伸後幅方向に延伸、あるいは幅方向に延伸後長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることができるが、透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧の観点で逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特に、長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
具体的な延伸条件としては、まず、キャストシートを長手方向に延伸する温度に制御するとよい。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の延伸温度としては、90〜140℃であることが好ましい。90℃未満では、フィルムが破断したり、2%伸長時の強度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。140℃を超えると、透湿性が低下する場合がある。長手方向の延伸温度は、より好ましくは110〜135℃、特に好ましくは125〜130℃である。延伸倍率としては、3〜7倍であることが好ましい。3倍未満では透湿性が低下する場合がある。延伸倍率を高くするほど透湿性は良化するが、7倍を超えて延伸すると、フィルムが破断したり、2%伸長時の強度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧の両立の観点から、延伸倍率はより好ましくは4〜7倍である。
次に、テンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。横延伸を行う前に予熱を行うことが2%伸長時の強度、耐水圧および生産性の観点から好ましく、予熱温度は後述する横延伸温度に対して高いほうが好ましく、透湿性の観点から横延伸温度に対して1〜10℃高いことがより好ましい。横延伸温度は、好ましくは130〜155℃である。130℃未満ではフィルムが破断したり、2%伸長時の強度が低下したり、耐水圧が低下する場合があり、155℃を超えると透湿性が低下する場合がある。透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧の両立の観点から、より好ましくは140〜155℃である。幅方向の延伸倍率は4〜15倍であることが好ましい。4倍未満であると、透湿性が低下する場合がある。耐水圧、2%伸長時の強度の観点から、延伸倍率は高倍が好ましいが、15倍を超えると、フィルムが破断し生産性が低下したり、透湿性が低下する場合がある。透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧の両立の観点から、延伸倍率はより好ましくは6〜12倍、更に好ましくは8〜11倍である。なお、このときの横延伸速度としては、500〜10,000%/分で行うことが好ましく、2,000〜7,000%/分であればより好ましい。
横延伸に続いて、テンター内で熱処理工程を行う。ここで熱処理工程は、横延伸後の幅のまま熱処理を行う熱固定ゾーン(以後、HS1ゾーンと記す)、テンターの幅を狭めてフィルムを弛緩させながら熱処理を行うリラックスゾーン(以後、Rxゾーンと記す)、リラックス後の幅のまま熱処理を行う熱固定ゾーン(以後、HS2ゾーンと記す)の3ゾーンに分かれていることが、透湿性、伸度、耐水圧の制御の観点から好ましい。
HS1ゾーンの温度は、140〜170℃であることが好ましい。140℃未満であると、2%伸長時の強度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。170℃を超えると、多孔性フィルム表面が溶融し透湿性が低下したり、さらに多孔性フィルムが幅方向に収縮し、HS1ゾーン内で破断してしまい、生産性が低下する場合がある。透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧の両立の観点から150〜168℃であればより好ましい。
HS1ゾーンでの熱処理時間は、2%伸長時の強度、耐水圧と生産性の両立の観点から0.1秒以上10秒以下であることが好ましく、3秒以上8秒以下であるとより好ましい。
本発明におけるRxゾーンでの弛緩率は5〜35%であることが好ましい。弛緩率が5%未満であると2%伸長時の強度が低下したり、耐水圧が低下したり、幅方向の幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。35%を超えると透湿性が低下したり物性ムラが大きくなる場合がある。透湿性、伸度、耐水圧の両立の観点から、5〜15%であるとより好ましい。
Rxゾーンの温度は、155〜170℃であることが好ましい。Rxゾーンの温度が155℃未満であると、弛緩の為の収縮応力が低くなり、上述した高い弛緩率を達成できなかったり、2%伸長時の強度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。170℃を超えると、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透湿性が低下する場合がある。透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧の観点から、Rxゾーンの温度は160〜168℃であるとより好ましく、2%伸長時の強度、耐水圧の観点から、162〜168℃がさらに好ましい。
Rxゾーンでの弛緩速度は、100〜1,000%/分であることが好ましい。弛緩速度が100%/分未満であると、製膜速度を遅くしたり、テンター長さを長くする必要があり、生産性に劣る場合がある。1,000%/分を超えると、テンターのレール幅が縮む速度よりフィルムが収縮する速度が遅くなり、テンター内でフィルムがばたついて破れたり、幅方向のムラが大きくなったり平面性低下を生じる場合がある。弛緩速度は、150〜500%/分であることがより好ましい。
HS2ゾーンの温度は、155〜170℃であることが好ましい。Rxゾーンの温度が155℃未満であると、弛緩の為の収縮応力が低くなり、上述した高い弛緩率を達成できなかったり、2%伸長時の強度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。170℃を超えると、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透湿性が低下する場合がある。透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧の観点から、HS2ゾーンの温度は160〜168℃であるとより好ましく、2%伸長時の強度、耐水圧の観点から、162〜168℃がさらに好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧に優れることから、透湿防水シートとして好適に用いることができ、防護服用途、カイロ用包材、おむつや生理用品、絆創膏、油吸着シート、土木建材用途、更には医療用途においても好適に用いることができる。また、本発明の多孔性フィルムは、加工での工程通過性に優れ、不織布との複合体とすることで、低目付および透湿性に優れることから着用した際の軽量感および蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れ、耐水圧に優れることから、防護服の基材や防護服として好適に用いることができる。本発明の防護服の基材や防護服は、化学防護服のみではなく、医療用途にも好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)β晶形成能
多孔性フィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から260℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、40℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出することで、その試料の状態でのβ晶分率を算出することができる。
(2)耐水圧
JIS L 1092:2009 7.1.1 B法に基づき測定した。試料から約150mm×150mmの試験片を5枚採取し、サンプル単体を耐水度試験装置の表側に水があたるよう取り付け、シリンダに水を入れ、ピストンハンドルを回して1分間に100kPaの割合で水圧を加えて、試験片の裏側に3か所から水が出たときの水圧(kPa)を測定し、5回の平均値を耐水圧とした。なお、評価時は裏打ち材は使用しなかった。
(3)焼却後の残灰分(JIS L 1013)
JIS L 1013:2010 8.25に基づき、多孔性フィルムの850℃で焼却後の残灰分を測定した。
(4)透湿度
JIS L 1099:2012 7.1 A−1法に基づき、多孔性フィルムの透湿度を測定し、単位:g/m・時で評価した。
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210:1995に準拠して測定した。試験温度および荷重については、JIS K 7210:1995の附属書AおよびBを参照した。
(6)2%伸長時の強度
多孔性ポリオレフィンフィルムを長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分で伸長した際の伸度2%に対する試料にかかる応力を測定し、試料の断面積( 幅×厚み)で割った値を2%伸長時の強度とした。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
(7)フィルム厚み
ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.06N)を用いて、5箇所を測定し、その平均値を厚みとした。
(8)目付
多孔性フィルム等の試料を長手方向100mm×幅方向100mmの正方形に切り出しサンプルとした。分析用電子天秤((株)AND製HR−202i)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて質量の測定を行った。測定を3回行い、平均値をそのフィルムの質量Wとし、目付は以下の式を用いて算出した。
目付(g/m)=W/(0.1×0.1)
(9)突刺強度
万能試験機(島津製作所製オートグラフAG−IS)を用いて、針進入速度を5mm/分とし、それ以外はJIS Z 1707:1997 7.4に準じて23℃で測定した。サンプルが破膜したときにフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の厚み(mm)で除した値を突刺強度(N/mm)とした。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
(10)着用性
不織布Aとしてポリプロピレン製スパンボンド不織布(目付40g/m、引張強力:57.6N/50mm、破裂強さ:500kPa、摩耗強さ:4.5級)を用い、実施例または比較例の多孔性フィルムと不織布Aを不織布A/多孔性フィルム/不織布Aの3層構成にて、ホットメルト接着剤‘モレスコメルト TN−608Z’を不織布Aの片面に1.7g/mとなるよう吹き付け、これに多孔性フィルムを貼り合せて、透湿・防水材料を作製した。作製した透湿・防水材料を、型紙に合わせて切り出した。切り出した透湿・防水材料の縫製部分をミシンまたは超音波にて縫製し、防護服を作製した。ミシン縫いした箇所には、2cm幅のシームテープを貼り付けた。
夏場の外気温を想定した35℃、50%Rhに設定した恒温恒湿室に、被験者がシャツ1枚、作業ズボン1枚の上から作製した防護服を着用し入室した。被験者は、胸の中心付近に熱電対をシャツの上から貼り付け、入室後の防護服内の温度を熱電対にて測定した。これを3人の被験者に対して実施した。3人の被験者の30分後の防護服内の湿度データをそれぞれ市販の旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ(株)製のタイベックソフトウェアIII型と比較した。
○:15%以上湿度が低い
△:10%以上15%未満湿度が低い
×:10%未満湿度が低いもしくはタイベックソフトウェアIII型の湿度と同等以上。
以下に実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を89.5質量部、MFR1,000g/10分のプライムポリマー(株)製ホモポリプロピレンS10CLを5質量部、MFR0.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンD101を5質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASFジャパン製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、樹脂温度298℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(あ)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、210℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて118℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、124℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.2倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、155℃で3秒間予熱後、150℃で8.5倍に、延伸速度3,000%/分で延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し(HS1ゾーン)、更に162℃で弛緩率12%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま162℃で5秒間熱処理を行った(HS2ゾーン)。続いて、テンタークリップで把持したフィルムの耳部をスリットして除去し、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例2)
実施例1の延伸工程において120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.4倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、152℃で3秒間予熱後、150℃で9.0倍に、延伸速度3,300%/分で延伸した以外は実施例1と同じ条件で厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を89.5質量部、MFR1,000g/10分のプライムポリマー(株)製ホモポリプロピレンS10CLを7質量部、MFR0.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンD101を3質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASFジャパン製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、樹脂温度298℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(い)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(い)を用いた以外は実施例1と同じ条件で厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例4)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を89.5質量部、MFR1,000g/10分のプライムポリマー(株)製ホモポリプロピレンS10CLを3質量部、MFR0.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンD101を7質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASFジャパン製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、樹脂温度298℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(う)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(う)を用いた以外は実施例1と同じ条件で厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例5)
実施例1の熱処理工程において、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し(HS1ゾーン)、更に165℃で弛緩率12%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま165℃で5秒間熱処理を行った(HS2ゾーン)以外は実施例1と同じ条件で厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例6)
実施例1の縦延伸工程において120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に6倍延伸を行い、実施例1の熱処理工程において、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し(HS1ゾーン)、更に165℃で弛緩率12%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま165℃で5秒間熱処理を行った(HS2ゾーン)以外は実施例1と同じ条件で厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例7)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を93.5質量部、MFR1,000g/10分のプライムポリマー(株)製ホモポリプロピレンS10CLを3質量部、MFR0.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンD101を3質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASFジャパン製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、樹脂温度298℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(え)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(え)を用いた以外は実施例1と同じ条件で厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(比較例1)
高密度ポリエチレン粉末(“ハイゼックス”340M、三井化学(株)製、)40質量部と、ポリエチレンワックス(“ハイワックス”110P、三井化学(株)製)30質量部と、炭酸カルシウム(商品名:“スターピゴット”15A、白石カルシウム(株)製、平均粒子径0.15μm)30質量部を混合した組成物を二軸押出機に供給して200℃で溶融混合した後、Tダイ口金内を通してシート状に押出成形し、表面温度30℃のキャストドラム上に密着させ、非ドラム面側より20℃の冷風を吹き付けて未延伸フィルムを作製した。次に、該未延伸フィルムを125℃に加熱保持されたオーブンに導いて予熱後、MD方向に3倍延伸し20℃のロールで冷却した。続いて、MD方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃に加熱した雰囲気中でTD方向に5倍延伸して、厚さ20μmの多孔性ポリエチレンフィルムを得た。
(比較例2)
特開2006−28495号公報の実施例1に準じて作製した。ポリプロピレンフィルムの樹脂組成として、融解温度が165℃のポリプロピレン(住友化学(株)製、WF836DG−3、MFR:7g/10分、II:96.5%、以下PPと略称する)50質量%と、β晶核剤含有PPのSUNOCO社製“Bepol”(タイプ:B022−SP)50質量%を添加混合し、二軸押出機に供給して300℃で溶融混合した後、ガット状に押出し、10℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。該β晶核剤添加PP(以下β晶PPと略称する)のβ晶比率は72%であった。次に、該β晶PPを300℃に加熱された押出機に供給して溶融し、Tダイ口金内を通してシート状に押出成形し、表面温度125℃に加熱されたキャストドラム上に密着させ、非ドラム面側より120℃の熱風を吹き付けて未延伸フィルムを作製した。次に、該未延伸フィルムを125℃に加熱保持されたオーブンに導いて予熱後、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向、以下MD方向と略称する)に5倍延伸し、120℃のロールで冷却した。続いて、MD方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、130℃に加熱した雰囲気中でMD方向に垂直な方向(横方向、以下TD方向と略称する)に10倍延伸後、引き続き多孔ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内にて155℃で横方向3%の弛緩熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却した。その後、テンタークリップで把持したフィルムの耳部をスリットして除去し、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。なお、本フィルムは2%伸長時の強度が低いため、(10)着用性評価の不織布との貼合せでフィルム伸びによるシワ、破れが発生し、防護服への加工ができなかった。
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.5質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASFジャパン製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、樹脂温度が301℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(お)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(お)を単軸の溶融押出機に供給し、215℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて121℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、117℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.2倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で3秒間予熱後、150℃で8.0倍に、延伸速度2,000%/分で延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し(HS1ゾーン)、更に160℃で弛緩率10%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま160℃で5秒間熱処理を行った(HS2ゾーン)。続いて、テンタークリップで把持したフィルムの耳部をスリットして除去し、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。なお、本フィルムは2%伸長時の強度が低いため、(10)着用性評価の不織布との貼合せでフィルム伸びによるシワ、破れが発生し、防護服への加工ができなかった。
Figure 2016102202
本発明の要件を満足する実施例では透湿性、耐水圧、2%伸長時の強度に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れる透湿防水シートおよび防護服として好適に用いることが可能である。一方、比較例では、透湿性、2%伸長時の強度、耐水圧の両立が不十分であったため、透湿防水シートおよび防護服として不十分であった。

Claims (8)

  1. 透湿度(T)が300g/m・時以上、耐水圧(P)が40kPa以上であり、P≧20,000/Tを満たす多孔性フィルムであって、長手方向および幅方向の2%伸長時の強度が共に20〜40MPaである多孔性フィルム。
  2. 温度850℃で測定した焼却後の残灰分(JIS L 1013)が0.5質量%以下である、請求項1に記載の多孔性フィルム。
  3. 突刺強度が250N/mm以上である、請求項1または2に記載の多孔性フィルム。
  4. ポリオレフィン樹脂を含む、請求項3に記載の多孔性フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いた透湿防水シート。
  6. 請求項5に記載の透湿防水シートと不職布との複合体。
  7. 目付が50g/m以下である、請求項6に記載の複合体。
  8. 請求項6または7に記載の複合体を用いた防護服。
JP2015220937A 2014-11-12 2015-11-11 多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服 Pending JP2016102202A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014229457 2014-11-12
JP2014229457 2014-11-12

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016102202A true JP2016102202A (ja) 2016-06-02

Family

ID=56088482

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015220937A Pending JP2016102202A (ja) 2014-11-12 2015-11-11 多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016102202A (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07309964A (ja) * 1994-03-26 1995-11-28 Hoechst Ag 非晶質重合体を含む延伸ポリオレフィンフィルム、その製造法およびその使用
JP2003210565A (ja) * 2002-01-22 2003-07-29 Sumitomo Chem Co Ltd 医療用多孔性フィルム
JP2013213193A (ja) * 2012-03-09 2013-10-17 Toray Ind Inc 蓄電デバイス用セパレータフィルム
WO2014007260A1 (ja) * 2012-07-04 2014-01-09 東レ株式会社 多孔性ポリプロピレンフィルム、蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス
WO2015115289A1 (ja) * 2014-01-28 2015-08-06 東レ株式会社 多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07309964A (ja) * 1994-03-26 1995-11-28 Hoechst Ag 非晶質重合体を含む延伸ポリオレフィンフィルム、その製造法およびその使用
JP2003210565A (ja) * 2002-01-22 2003-07-29 Sumitomo Chem Co Ltd 医療用多孔性フィルム
JP2013213193A (ja) * 2012-03-09 2013-10-17 Toray Ind Inc 蓄電デバイス用セパレータフィルム
WO2014007260A1 (ja) * 2012-07-04 2014-01-09 東レ株式会社 多孔性ポリプロピレンフィルム、蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス
WO2015115289A1 (ja) * 2014-01-28 2015-08-06 東レ株式会社 多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6090428B2 (ja) 防水・透湿材料およびそれを用いた医療用衣服ならびに防護服
JP6497082B2 (ja) 多孔性積層体
KR101249180B1 (ko) 다공성 폴리프로필렌 필름
JP6170181B2 (ja) 超高分子量ポリエチレン由来の多孔質物品の製造方法
JP5087906B2 (ja) 微多孔ポリプロピレンフィルムおよびその製造方法
JP6641953B2 (ja) 透湿性積層体
JPWO2017175878A1 (ja) 延伸多孔性フィルム及びその製造方法
JP2016160267A (ja) 微多孔性膜又は微多孔延伸フィルムの製造方法及び微多孔フィルム又は二軸微多孔延伸フィルム
JPWO2015115289A1 (ja) 多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服
JP2011162773A (ja) 多孔性フィルムおよび蓄電デバイス
JP4894794B2 (ja) ポリオレフィン樹脂多孔膜
JP6337422B2 (ja) 複合フィルム
JP2016089009A (ja) 透湿性フィルムおよび透湿性フィルム積層体
JP2016102203A (ja) 多孔性フィルム、および透湿防水シート
WO2014103713A1 (ja) 多孔性ポリオレフィンフィルムおよびその製造方法、ならびにそれを用いてなる蓄電デバイス用セパレータ
JP2016102201A (ja) 多孔性フィルム
JP2016102202A (ja) 多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服
JP5705605B2 (ja) ポリプロピレン系樹脂多孔シート及びポリプロピレン系樹脂多孔シートの製造方法
JP2015163464A (ja) 透湿防水シート
JP6413671B2 (ja) 透湿防水フィルムおよび透湿防水シート
JP2010215901A (ja) 多孔性ポリプロピレンフィルム
JP2006037095A (ja) 油吸収性微多孔質ポリプロピレンシート
JP2023151346A (ja) 樹脂シート及び樹脂シートの製造方法
JP2015163687A (ja) ポリプロピレン系多孔性フィルムおよび建築・土木用透湿防水シート
JP2023007997A (ja) 防護服

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181012

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190628

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190806

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200310

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200929