JPWO2015115289A1 - 多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服 - Google Patents

多孔性フィルム、透湿防水シート、複合体および防護服 Download PDF

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Abstract

耐水圧に優れ、着用した際の服内の蒸れを軽減し着衣快適性に優れた防護服の基材などに好適な多孔性フィルムおよびそれを用いた透湿防水シート、防護服を提供することを課題とする。透湿度が250g/m2・h以上であり、フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和が100〜500%であり、耐水圧が4,500mmH2O以上であり、かつ温度850℃で焼却後の灰分(JIS L 1013)が0.5質量%以下である多孔性フィルムによって達成される。【選択図】なし

Description

本発明は、耐水圧および透湿性に優れ、伸度が高く、さらに不織布とのラミネート加工性に優れた多孔性フィルムに関する。また、前記多孔性フィルムを用いることで、耐水圧および透湿性に優れ、伸度が高く、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れた透湿防水シート、複合体および防護服に関する。
従来、防水シート、防水服の生地としては、布帛に撥水性の樹脂をコーティングまたは貼り合わせた素材が耐水性と共に加工性にも優れることから多用されている。しかしながら、従来素材では、透湿性または透気性に劣るために、高温多湿の作業環境下では防護服の内部に湿気が籠もるため、不快感を生じたり、また防水シート用として用いると内部にカビなどが発生するという問題があった。
これらの問題解決策として、繊維材料布帛に多孔質樹脂被膜をラミネートしたラミネート加工布の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
また、透湿性フィルムと不織布からなる生地の提案もなされている(例えば、特許文献2,3,4参照)。
また、炭酸カルシウム等の無機粒子や有機粒子を使用しない透湿性フィルムの提案もなされている(例えば、特許文献5,6,7)。
特開2001−38839号公報 特開平6−316022号公報 特開2003−145697号公報 特開平8−53561号公報 特開2006−28495号公報 特開2001−342272号公報 特開平9−3226号公報
特許文献1にては、ラミネート加工布として、ポリウレタン系樹脂に吸着剤としてシリカやゼオライトなどを10重量%以上添加した塗剤を塗工して乾燥することで多孔質樹脂被膜を形成せしめた技術が提案されているが、被膜の伸度が低くラミネート加工時または衣服着用時に破れやすいという問題がある。
また、特許文献2,3および4にて提案されている技術においては、炭酸カルシウム等の無機粒子や有機粒子を多量に添加混合した樹脂シートを延伸して多孔質化したフィルムを用いるため、耐水圧性が不十分であり、機械的伸度に異方性があり、また、生地の破断伸度が低く、衣服着用時に粒子が起点となり破れやすいという問題がある。さらに、フィルムに腰がない(フィルムの剛性が十分ではない)ため、不織布と貼り合わせる加工での工程通過性が劣るという問題がある。
特許文献5,6および7にて提案されている技術においては、透湿性に劣るために、高温多湿の作業環境下では防護服の内部に湿気が籠もるため不快感を生じたり、また防水シート用として用いると内部にカビなどが発生するという問題、もしくは、機械的伸度に異方性があり、また、生地の破断伸度が低く、衣服着用時に破れやすいという問題がある。
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、耐水圧および透湿性に優れ、伸度が高く、さらに不織布とのラミネート加工性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れた防護服の基材などに好適な多孔性フィルムおよびそれを用いた透湿防水シート、複合体および防護服を提供することにある。さらには、不要となった際の焼却残渣もきわめて少ない透湿防水シート、防護服を提供することにある。
つまり、本発明の課題は、耐水圧および透湿性に優れ、伸度が高く、さらに不織布とのラミネート加工性に優れた、破れにくく、工程通過性に優れた多孔性フィルムを提供することである。また、耐水圧に優れ、伸度が高く、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れた前記多孔性フィルムを用いた透湿防水シート、複合体および防護服を提供することにある。さらには、不要となった際の焼却処分した際に残渣(灰分)がきわめて少ない透湿防水シート、防護服を提供することにある。
上記した課題は、透湿度が250g/m・h以上であり、フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和が100〜500%であり、耐水圧が4,500mmHO以上であり、かつ温度850℃で焼却後の灰分(JIS L 1013)が0.5質量%以下である多孔性フィルムによって達成可能である。
本発明の多孔性フィルムは、耐水圧に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れた防護服の基材などに好適な多孔性フィルムおよびそれを用いた透湿防水シート、複合体および防護服を提供することができる。
本発明は、耐水圧および透湿性に優れた多孔性フィルムを提供することができる。破断伸度が高いことから、不織布とのラミネート加工性(つまり、工程通過性)に優れた多孔性フィルムを提供することができる。また、前記多孔性フィルムを用いたことで、耐水圧に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し着衣快適性に優れた透湿防水シート、複合体および防護服を提供することができる。さらには、不要となった際の焼却後の灰分もきわめて少ない透湿防水シート、防護服を提供することができる。
本発明の多孔性フィルムとは、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する微細な貫通孔を多数有しているフィルムである。多孔性フィルムを構成する樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、フッ素系樹脂などいずれでも構わないが、耐熱性、成形性、生産コストの低減、耐薬品性、耐酸化・還元性などの観点からポリオレフィン樹脂が望ましい。したがって、本発明の多孔性フィルムはポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂を構成する単量体成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、5−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられ、これらの単独重合体や上記単量体成分から選ばれる少なくとも2種以上の共重合体、およびこれら単独重合体や共重合体のブレンド物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記の単量体成分以外にも、例えば、ビニルアルコール、無水マレイン酸などを共重合、グラフト重合しても構わないが、これらに限定されるわけではない。透湿防水シートの基材としてはエチレンを単量体成分として用いたポリエチレンおよび/またはプロピレンを単量体成分として用いたポリプロピレンが好ましく、特に耐熱性、透気性、空孔率などの観点からプロピレンを単量体成分として用いたポリプロピレンが好ましく、主成分であることが好ましい。したがって、本発明の多孔性フィルムはポリオレフィン樹脂を含み、かつ、当該ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンであることが特に好ましい、なお、「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上であることを意味する。なお、上限は特に限定されないが、100質量%が実質的な上限になる。
多孔性フィルム中に貫通孔を形成する方法としては、湿式法、乾式法どちらでも構わない。具体的には、湿式法とは、ポリオレフィン樹脂をマトリックス樹脂とし、シート化後に抽出する被抽出物を添加、混合した樹脂組成物をシート化し、その後、被抽出物の良溶媒を用いて添加剤のみを抽出することで、マトリックス樹脂中に空隙を生成せしめる方法である。
一方、乾式法とは、たとえば:
溶融押出時に低温押出、高ドラフト比を採用することにより、シート化した延伸前のフィルム中のラメラ構造を制御し、これを熱処理後に一軸延伸することでラメラ界面での開裂を発生させ、空隙を形成する方法(所謂、ラメラ延伸法);
無機粒子またはマトリックス樹脂であるポリプロピレンなどに非相溶な樹脂を粒子として多量添加し、シートを形成して延伸することにより粒子とポリプロピレン樹脂界面で開裂を発生させ、空隙を形成する方法(粒子法、相分離法);および
ポリプロピレンの結晶多形であるα型結晶(α晶)とβ型結晶(β晶)の結晶密度の差と結晶転移を利用してフィルム中に空隙を形成させる方法(所謂、β晶法)
など溶媒による抽出を行わない方法全般を意味する。これらの方法の中でも乾式法、特にβ晶法を採用するのが生産性の点で好ましい。
β晶法を用いてフィルムに貫通孔を形成するためには、多孔性フィルムのβ晶形成能が40%以上であることが好ましい。β晶形成能が40%未満ではフィルム製造時にβ晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果、透過性の低いフィルムしか得られない場合がある。一方、β晶形成能の上限は特に限定されるものではないが、99.9%を超えるようにするのは、後述するβ晶核剤を多量に添加したり、使用するポリプロピレン樹脂の立体規則性を極めて高くしたりする必要があり、製膜安定性が低下するなど工業的な実用価値が低い。工業的にはβ晶形成能は65〜99.9%が好ましく、70〜95%が特に好ましい。
β晶形成能を40%以上に制御するためには、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用したり、β晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に形成させる結晶化核剤を添加剤として用いたりすることが好ましい。β晶核剤としては、たとえば、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、コハク酸マグネシウムなどのカルボン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドに代表されるアミド系化合物、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのテトラオキサスピロ化合物、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族スルホン酸化合物、イミドカルボン酸誘導体、フタロシアンニン系顔料、キナクリドン系顔料を好ましく挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報に開示されているアミド系化合物を好ましく用いることができる。β晶核剤の添加量としては、ポリプロピレン組成物を基準とした場合に、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であればより好ましい。0.05質量%未満では、β晶の形成が不十分となり、多孔性フィルムの透気性が低下する場合がある。0.5質量%を超えると、粗大ボイドを形成し、有機溶媒塗布、乾燥時の物性変化が大きくなる場合がある。なお、本発明において、ポリプロピレン組成物とは、ポリプロピレン樹脂に加えて、β晶核剤、および酸化防止剤など多孔性フィルムを構成する全ての材料を含む組成物である。
本発明の多孔性フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、メルトフローレート(以下、MFRと表記する、測定条件は230℃、2.16kg)が2〜30g/10分の範囲であることが好ましく、さらにアイソタクチックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。MFRが2g/10分未満であると、樹脂の溶融粘度が高くなり高精度濾過が困難となり、フィルムの品位が低下する場合がある。MFRが30g/10分を超えると、分子量が低くなりすぎるため、延伸時のフィルム破れが起こりやすくなり、生産性が低下する場合がある。より好ましくは、MFRは3〜20g/10分である。
また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いる場合、アイソタクチックインデックスは90〜99.9%であることが好ましく、95〜99%がより好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満であると、樹脂の結晶性が低く、高い透気性を達成するのが困難な場合がある。
本発明でポリプロピレン樹脂を用いる場合、ホモポリプロピレン樹脂を用いることができるのはもちろんのこと、製膜工程での安定性や造膜性、物性の均一性の観点から、ポリプロピレンにエチレン成分やブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン成分を5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下の範囲で共重合した樹脂を用いることもできる。なお、ポリプロピレンへのコモノマー(共重合成分)の導入形態としては、ランダム共重合でもブロック共重合でもいずれでも構わない。
また、上記したポリプロピレン樹脂に、MFRが70g/10分以上、好ましくは100g/10分以上、さらに好ましくは500g/10分以上のポリプロピレン(高MFRポリプロピレン)を添加することが透湿性向上の点で好ましい。MFRの上限は5000g/10分以下が好ましい。MFRが5000g/10分を超える場合には、上述したアイソタクチックポリプロピレンと均一化することが困難となる可能性がある。通常、MFRが70g/10分以上の高MFRポリプロピレン(特に、アイソタクチックポリプロピレン)は延伸性が悪く、伸度の低下を招くために、フィルムの分野では使用されてこなかった。しかしながら、ポリプロピレン組成物を100質量%としたときに、高MFRポリプロピレンを0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは0.7〜5質量%含有することで、少量添加した高MFRポリプロピレンが、結晶界面の分子鎖末端濃度を高め、長手方向の延伸において結晶界面での孔形成を促進させる、すなわち開孔助剤として働くことから均一な開孔が起こり、耐水圧、伸度を有しながら、透湿性を有することができ、相反する特性の両立を図ることができる。
本発明の多孔性フィルムを形成するポリプロピレン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、帯電防止剤や有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましいが、ポリプロピレン組成物を100質量%としたときに、酸化防止剤添加量は2質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。一方、充填剤を含有させた場合、脱落する場合があり、作業時に悪影響を及ぼす可能性があり、また、充填剤が起点となり、伸度が低下する場合があり、添加しないほうが好ましい。特に、無機充填剤は、焼却後の灰分として残存することから添加しないほうが好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、透湿度が250g/m・h以上である。透湿度が250g/m・h未満では、本発明の多孔性フィルムを防護服として着用した時、蒸れ感を強く感じ、着衣快適性が低い場合がある。耐水圧、および伸度との両立の観点から、透湿度は高いほうが好ましいが、上限は現実的には2,000g/m・hとなる。着衣快適性の観点から、透湿度は、250〜2,000g/m・hが好ましく、300〜2,000g/m・hがより好ましく、350〜2,000g/m・hが更に好ましい。透湿度は、原料中のβ晶核剤の添加量、原料中に添加する高MFRポリプロピレンの添加量を調整すること、長手方向の延伸倍率と温度を調整すること、再延伸を行い、かつ再延伸温度と倍率を調整することで制御することができる。例えば、原料中のβ晶核剤の添加量を0.05〜0.5質量%の範囲内でより増加させたり、キャストドラムの温度を105〜130℃の範囲内でより高温にしたり、原料中に高MFRポリプロピレンを0.1〜20質量%の範囲内で添加量をより増加したり、長手方向の延伸温度を90〜140℃の範囲内でより低温にすることで透湿度を高めることができ、長手方向の延伸倍率を3〜7倍の範囲内でより高倍にすることで透湿度を高めることができる。また、長手方向および幅方向に延伸せしめたフィルムを長手方向に再延伸し、かつ、再延伸の延伸温度を130〜170℃の範囲内でより低温にしたり、再延伸の延伸倍率を1.02〜2.0倍の範囲内で高倍で延伸することで透湿度を高めることができる。
本発明の多孔性フィルムは、フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和が100〜500%である。フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和が100%未満では、本発明の多孔性フィルムを基材とした防護服の場合、作業時に多孔性フィルムが破膜し、耐水圧が低下し、水漏れが起こったり、本発明の多孔性フィルムを防護服の基材とする場合、不織布と貼り合わせる加工での工程通過性が劣る場合がある。フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和が500%より高い場合、加工工程において張力がかかる際にフィルムが伸びてしまうなどの加工での工程通過性が劣る場合がある。加工性および現場での作業性の観点および加工時に多孔性フィルムが伸びてしまい、耐水圧が低下することから、フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和は、100〜400%が好ましく、130〜400%がより好ましく、150〜400%が更に好ましい。フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和は、キャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度と延伸速度、幅方向の延伸速度と倍率、熱処理工程での温度と時間を調整することで制御でき、特に長手方向の再延伸温度と倍率により容易にコントロールすることができる。フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和は、例えば、キャストドラムの温度を105〜130℃の範囲内でより高温にしたり、長手方向の延伸温度を90〜140℃の範囲内でより高温にしたり、長手方向の延伸倍率は、3〜7倍の範囲内であって、透湿度の値が前述した好適な数値範囲を満足する程度に低倍にしたり、長手方向の延伸速度を200,000〜1,000,000%/分の範囲内でより速くすることでフィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和を高めることができる。また、幅方向の延伸倍率を4〜15倍の範囲内であって、耐水圧の値が後述する好適な数値範囲を満足する程度に低倍にしたり、幅方向の延伸速度を500〜10,000%/分の範囲内でより速くしたり、弛緩処理前の熱処理工程での熱処理温度や弛緩処理後の熱処理工程での熱処理温度を140〜170℃の範囲内でより高温にしたり、弛緩処理前の熱処理工程での熱処理時間や弛緩処理後の熱処理工程での熱処理時間を0.1秒〜10秒の範囲内でより長時間にしたり、再延伸の延伸倍率を1.02〜2.0倍の範囲内で低倍で延伸することでフィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和を高めることができる。特に、長手方向に再延伸を行い、再延伸温度を130℃以上でフィルムが溶融しない程度に高温にすることでフィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和を高くすることができる。
本発明の多孔性フィルムは、耐水圧が4,500mmHO以上である。耐水圧が4,500mmHO未満では、防護服として用いたときに、強い雨風の時や肘、膝部をついた時や座り込んだ時に水が染みこむ場合があり、透湿防水シートとして用いたときに、水が染みこみ内部にカビなどが発生する場合がある。耐水圧の上限は透湿度の観点から25,000mmHOが好ましい。加工性および現場での作業性の観点から、耐水圧は、5,000〜25,000mmHOが好ましく、8,000〜25,000mmHOがより好ましい。耐水圧は、キャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度と延伸速度、幅方向の延伸速度と倍率、熱処理工程での温度と時間、および弛緩処理工程での弛緩率を調整すること、再延伸を行い、かつ再延伸温度と倍率を調整すること、再延伸後の熱処理の温度を調整することで制御することができる。例えば、キャストドラムの温度を105〜130℃の範囲内でより高温にしたり、長手方向の延伸温度を90〜140℃の範囲内でより高温にすることで耐水圧を高めることができ、長手方向の延伸倍率を3〜7倍の範囲内でより高倍にしたり、長手方向の延伸速度を200,000〜1,000,000%/分の範囲内でより速くにしたり、幅方向の延伸速度を500〜10,000%/分の範囲内でより早くしたり、幅方向の延伸倍率を4〜15倍の範囲内でより高倍にしたり、弛緩処理前の熱処理工程での熱処理温度や弛緩処理後の熱処理工程での熱処理を140〜170℃の範囲内でより高温にしたり、弛緩処理前の熱処理工程での熱処理時間や弛緩処理後の熱処理工程での熱処理時間を0.1秒〜10秒の範囲内でより長時間にしたり、弛緩処理工程での弛緩率を5〜35%の範囲内でより高くすることで耐水圧を高めることができる。また、長手方向および/または幅方向の再延伸時の延伸温度を130〜170℃の範囲内でフィルムが溶融しない程度に高温にしたり、再延伸の延伸倍率を1.02〜2.0倍の範囲内で高倍で延伸したり、再延伸後の熱処理の温度を145〜175℃の範囲内でフィルムが溶融しない程度に高温にすることで耐水圧を高めることができる。
透湿度、耐水圧、フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和の特性バランスを両立させ、本発明の多孔性フィルムを得る方法としては、原料中のβ晶核剤の添加量を調整すること、原料中に添加される高MFRポリプロピレンの添加量を調整すること、キャストドラムの温度を調整すること、長手方向の延伸倍率と温度と延伸速度を調整すること、幅方向の延伸速度と倍率を調整すること、熱処理工程での温度と時間を調整すること、弛緩処理工程における弛緩率を調整すること、再延伸を行い、かつ再延伸温度と倍率を後述する範囲内とすること、および再延伸後の熱処理温度を後述範囲とすることにより制御することができる。
特に、本発明の多孔性フィルムを得るに際して、原料中のβ晶核剤の添加量を調整すること、キャストドラムの温度を調整すること、長手方向の延伸倍率と温度と延伸速度を調整すること、幅方向の倍率を調整すること、熱処理工程での温度と時間を調整すること、および弛緩処理工程での弛緩率を調整することといったプロセス条件のみを調整するだけでは特性バランスが不十分となる。
そこで、原料中に高MFRポリプロピレン(特に、高MFRアイソタクチックポリプロピレン)を特定量含有せしめ、幅方向の延伸速度を後述する範囲とし、再延伸を行い、かつ再延伸温度と倍率を後述する範囲内とするが重要であり、それによって初めて透湿度、耐水圧、フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和の特性バランスを両立させることができる。高MFRポリプロピレンの含有量は、前述のとおり、0.1〜20質量%が好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、温度850℃で焼却した後の灰分(JIS L 1013)が0.5質量%以下である。温度850℃で焼却した後の灰分が0.5質量%より多い場合、使い捨て用途の場合焼却処分によって灰分が発生し、防護服の場合には、安全衛生上さらに灰分の処理を行う場合がある。温度850℃で焼却後の灰分の下限は理想的には0%であるが、実質的には0.01%程度である。温度850℃で焼却後の灰分を0.5質量%以下にせしめるためには、原料に無機粒子を添加しない方法で多孔化することによって達成することができる。
本発明の多孔性フィルムは、フィルムの(長手方向/幅方向)の引張伸度比が0.6〜1.5であることが好ましい。ここで、「フィルムの(長手方向/幅方向)の引張伸度比」とは、フィルム幅方向の引張伸度に対する、フィルム長手方向の引張伸度の比(つまり、長手方向の引張伸度/幅方向の引張伸度)を意味する。すなわち、本発明の多孔性フィルムは、フィルムの幅方向の引張伸度に対する長手方向の引張伸度の比(長手方向の引張伸度/幅方向の引張伸度)が0.6〜1.5であることが好ましい。フィルムの幅方向の引張伸度に対する長手方向の引張伸度の比が0.6未満または1.5より大きい場合、多孔性フィルムを防護服の基材とした場合、多孔性フィルムに異方性があり、作業時、着脱時にある一方向で裂けやすくなったり、ある一方向の伸度が高いことによって、耐水圧が低下する場合がある。耐水圧の観点から、当該比は0.6〜1.4がより好ましく、0.7〜1.3がさらに好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、目付が5g/m以上が好ましい。目付が5g/m未満の場合、フィルムの伸度、たとえば、引張伸度が低くなり、本発明の多孔性フィルムを基材とした防護服の場合、作業時に多孔性フィルムが破膜し、耐水圧が低下し、水漏れが起こったり、本発明の多孔性フィルムを不織布と貼り合わせる加工での工程通過性が劣る場合がある。目付の上限は現実的には40g/mとなる。目付は、着心地と引張伸度の観点から、5〜30g/mが好ましく、5〜20g/mがより好ましく、8〜15g/mがさらに好ましい。
本発明においては、上記した多孔性フィルムを用いて透湿防水シートを構成することが好ましい。また、本発明においては、この透湿防水シートと不織布などの繊維層との複合体を構成することもできる。本発明において好ましい複合体は、前記透湿防水シートと不織布との複合体である。本発明の複合体の目付は100g/m以下が好ましく、50g/m以下であることがより好ましく、45g/m以下であることがさらに好ましい。透湿防水シートと繊維層(不織布)との複合体の防護服の場合、目付が50g/mより大きいと服が重くなり、着衣快適性が低下する場合がある。特に、目付が100g/mより大きいと、その傾向が一層顕著になる。目付の下限は複合体の強度の観点から25g/m以上が好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、フィルム厚みが5μm以上であることが好ましい。厚みが5μm未満では加工時または使用時にフィルムが破断する場合がある。フィルム厚みは10μm以上であればより好ましく、10〜50μmであればなお好ましい。
以下に本発明の多孔性フィルムの製造方法を具体的な一例をもとに説明する。なお、本発明の多孔性フィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
2以上のポリプロピレン樹脂を原料として用いる場合、樹脂原料の混合方法としては、ドライブレンド、メルトブレンドなどあるが、本発明では使用するポリプロピレン樹脂の粘度が大きく異なることがあるため、ドライブレンドで原料の混合を行うとシート化した際に粘度の異なる樹脂がシート中に不均一に分散してしまい、シートの特性が不十分になる場合がある。本発明では樹脂原料の混合方法としては、メルトブレンドを採用するのが好ましい。メルトブレンドにて使用する押出機は1軸押出機、2軸押出機いずれでも良いが、高せん断にて混合できることと、混合比率が一定に制御しやすく、原料の均一性、樹脂劣化抑制、生産性の観点から2軸押出機で行うことが好ましい。また、分散状態を制御するために、2軸押出機で複数回溶融混練を行っても良い。
ポリプロピレン樹脂として、MFR4g/10分のホモポリプロピレン樹脂96.5質量部、MFR1,000g/10分の高MFRポリプロピレン樹脂3質量部、β晶核剤としてN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.3質量部、酸化防止剤0.2質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給して溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン原料(プロピレン組成物)を準備する。この際、溶融温度は280〜310℃とすることが好ましい。
続いて、本発明の多孔性フィルムの製膜方法について説明するが、以下の製膜方法は、上述のポリプロピレン原料以外の原料を用いたときにも適用することができる。
ポリプロピレン原料を単軸押出機に供給し、200〜230℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸のキャストフィルムを得る。キャストドラムは、表面温度が105〜130℃であることが、キャストフィルムのβ晶分率を高く制御する観点から好ましい。この際、特にキャストフィルムの端部の成形が、後の延伸性に影響するので、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。また、キャストフィルム全体のドラム上への密着状態から、必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付けてもよい。
次に、得られたキャストフィルムを二軸配向させ、フィルム中に空孔を形成する。二軸配向させる方法としては、フィルム長手方向に延伸後幅方向に延伸、あるいは幅方向に延伸後長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることができるが、透湿性、伸度、耐水圧の観点で逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特に、長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
具体的な延伸条件としては、まず、キャストフィルムを長手方向に延伸する温度に制御するとよい。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の延伸温度としては、90〜140℃であることが好ましい。長手方向の延伸温度が90℃未満では、フィルムが破断したり、伸度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。長手方向の延伸温度が140℃を超えると、透湿性が低下する場合がある。長手方向の延伸温度は、より好ましくは110〜135℃、特に好ましくは125〜130℃である。長手方向の延伸倍率としては、3〜7倍であることが好ましい。長手方向の延伸倍率が、3倍未満では透湿性が低下する場合がある。長手方向の延伸倍率を高くするほど透湿性は良化するが、7倍を超えて延伸すると、フィルムが破断したり、伸度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。透湿性、伸度、耐水圧の両立の観点から、長手方向の延伸倍率はより好ましくは4〜7倍である。なお、このときの長手方向の延伸速度としては、200,000%/分以上であることが好ましく、250,000%/分以上であるとより好ましく、300,000%/分以上であるとさらに好ましい。延伸速度を速くすることで二軸延伸後の孔構造が3次元方向にネットワークを形成し、透湿性、耐水圧、伸度を両立させやすくなる。延伸速度の上限は、長手方向の延伸時におけるフィルム破れ(生産性)および透湿性の観点から、1,000,000%/分になる。
次に、テンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入し幅方向の延伸を行う。幅方向の延伸温度は、好ましくは130〜155℃である。幅方向の延伸温度が、130℃未満ではフィルムが破断したり、伸度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。幅方向の延伸温度が、155℃を超えると透湿性が低下する場合がある。幅方向の延伸温度は、透湿性、伸度、耐水圧の両立の観点から、より好ましくは140〜155℃である。幅方向の延伸倍率は4〜15倍であることが好ましい。幅方向の延伸倍率が、4倍未満であると、透湿性が低下する場合がある。耐水圧、伸度の観点から、幅方向の延伸倍率は高倍が好ましいが、15倍を超えると、フィルムが破断し生産性が低下したり、透湿性が低下する場合がある。透湿性、伸度、耐水圧の両立の観点から、幅方向の延伸倍率はより好ましくは4〜12倍、更に好ましくは6〜12倍、特に好ましくは8〜11倍である。なお、このときの幅方向の延伸速度としては、一般的には500〜10,000%/分で行うが、透湿度、耐水圧、伸度の両立の観点から、1,500〜7,000%/分が好ましく、2,000〜5,000%/分であればより好ましい。なお、長手方向および幅方向の延伸速度は以下の式で算出することができる。
延伸速度[%/分]=延伸倍率[%]/(延伸区間長[m]/延伸区間を通過する速度[m/分])
なお、長手方向の延伸区間を通過する速度は以下の式で算出することができる。
延伸区間を通過する速度=(延伸前のロール周速+延伸後のロール周速)/2
また、幅方向の延伸区間を通過する速度は幅方向の延伸区間を通過する際のテンター式延伸機の速度になる。
「長手方向の延伸倍率×幅方向の延伸倍率」(長手方向の延伸倍率に幅方向の延伸倍率を乗じた値。)としては、好ましくは20〜90倍、より好ましくは30〜90倍である。
透湿性、伸度、耐水圧の制御の観点から、幅方向の延伸に続いて、テンター内で弛緩処理前熱処理、弛緩処理、弛緩処理後熱処理を、この順で施すことが好ましい。ここで弛緩処理前熱処理とは、幅方向の延伸後の幅のまま熱処理を施すことを指す。弛緩処理とは、テンターの幅を狭めてフィルムを弛緩させながら熱処理を施すことを指す。弛緩処理後熱処理とは、弛緩処理後の幅のまま熱処理を行うことを指す。また、弛緩処理前熱処理工程、弛緩処理工程、および弛緩処理後熱処理工程を「熱処理工程」と総称することがある。
弛緩前の熱処理温度は、140〜170℃であることが好ましい。弛緩前の熱処理温度が、140℃未満であると、伸度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。弛緩前の熱処理温度が、170℃を超えると、多孔性フィルム表面が溶融し透湿性が低下したり、さらに多孔性フィルムが幅方向に収縮し、破断してしまい、生産性が低下する場合がある。弛緩前の熱処理温度は、透湿性、伸度、耐水圧の両立の観点から150〜168℃であればより好ましい。
弛緩前の熱処理時間は、伸度、耐水圧と生産性の両立の観点から0.1秒以上10秒以下であることが好ましく、3秒以上8秒以下であるとより好ましい。
弛緩処理工程における、弛緩率は5〜35%であることが好ましい。弛緩率が5%未満であると伸度が低下したり、耐水圧が低下したり、幅方向の幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。弛緩率が35%を超えると透湿性が低下したり物性ムラが大きくなる場合がある。透湿性、伸度、耐水圧の両立の観点から、5〜15%であるとより好ましい。なお、弛緩率は[(弛緩前の多孔性フィルムの幅−弛緩後の多孔性フィルムの幅)/(弛緩前の多孔性フィルムの幅)]で算出することができる。
弛緩処理工程における、弛緩温度(熱処理温度)は、155〜170℃であることが好ましい。弛緩温度が155℃未満であると、弛緩の為の収縮応力が低くなり、上述した高い弛緩率を達成できなかったり、伸度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。弛緩温度が、170℃を超えると、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透湿性が低下する場合がある。弛緩温度は、透湿性、伸度、耐水圧の観点から、160〜168℃であるとより好ましい。
弛緩速度は、100〜1,000%/分であることが好ましい。弛緩速度が100%/分未満であると、製膜速度を遅くしたり、テンター長さを長くする必要があり、生産性に劣る場合がある。弛緩速度が1,000%/分を超えると、テンターのレール幅が縮む速度よりフィルムが収縮する速度が遅くなり、テンター内でフィルムがばたついて破れたり、幅方向のムラが大きくなったり平面性低下を生じる場合がある。弛緩速度は、150〜500%/分であることがより好ましい。
弛緩後の熱処理温度は、155〜170℃であることが好ましい。弛緩後の熱処理温度が155℃未満であると、弛緩の為の収縮応力が低くなり、上述した高い弛緩率を達成できなかったり、伸度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。弛緩後の熱処理温度が170℃を超えると、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透湿性が低下する場合がある。弛緩後の熱処理温度は、透湿性、伸度、耐水圧の観点から、160〜168℃であるとより好ましい。
弛緩後の熱処理時間は、伸度、耐水圧と生産性の両立の観点から0.1秒以上10秒以下であることが好ましく、3秒以上8秒以下であるとより好ましい。
初期延伸後のフィルム(長手方向と幅方向にそれぞれ一回ずつ延伸された後のフィルム)は、続いて再び延伸(再延伸)を行ってもよい。再延伸は、熱処理工程前、熱処理工程後のどちらで行ってもよい。再延伸後に後述する熱処理を行う場合、再延伸前の熱処理工程を省略することができる。再延伸の方法としては、長手方向への再延伸、あるいは幅方向への再延伸を用いることができる。また、長手方向へ再延伸後、幅方向へさらに再延伸する方法、幅方向へ再延伸後、長手方向へさらに再延伸する方法などを用いることもできる。またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることもできる。
具体的な再延伸条件としては、まず初期延伸後のフィルム(長手方向と幅方向にそれぞれ一回ずつ延伸された後のフィルム)を長手方向に再延伸可能な温度に制御する。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の再延伸温度としてはフィルム特性とその均一性の観点から、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。長手方向の再延伸温度が130℃未満では、延伸応力が大きくなるため、フィルム破れの数が多くなる場合がある。長手方向の再延伸温度が高過ぎると、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透湿度が低くなる場合があるため、170℃が上限である。長手方向への再延伸倍率は1.02〜2.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.7倍であり、さらに好ましくは1.1〜1.4倍である。長手方向への再延伸倍率が1.02倍未満であると再延伸の効果が発現しない場合がある。長手方向への再延伸倍率が2.0倍を超えると、フィルムの長手方向の常温収縮量が大きくなり、多孔性フィルムをロールとして巻いた際に、巻き締まりが強くなり、平面性が低下する場合がある。
長手方向に再延伸を行った場合は、再延伸に続いて、フィルムをテンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入し、幅方向への再延伸を行ってもよいし、幅方向への再延伸をせずテンター式延伸機を通過させて熱処理を施してもよい。
幅方向の再延伸を行う場合は以下の条件が好ましい。幅方向の再延伸温度としてはフィルム特性とその均一性の観点から、130〜170℃が好ましく、140〜170℃がより好ましく、150〜165℃が更に好ましい。幅方向の再延伸温度が140℃未満では、延伸応力が大きくなるため、フィルム破れの数が多くなる場合がある。幅方向の再延伸温度が170℃より高くなると、孔周辺のポリマーが溶けて透湿度が低くなる場合がある。幅方向への再延伸倍率は1.02〜2.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.5倍であり、さらに好ましくは1.05〜1.3倍である。幅方向への再延伸倍率が1.0倍未満とは、幅方向に収縮させることであり、通常、延伸とは言わない。また、幅方向への再延伸倍率が2.0倍を超えると、フィルムの幅方向の常温収縮量が大きくなり、多孔性フィルムをロールとして巻いた際に、巻き締まりが強くなり、平面性が低下する場合がある。
幅方向の再延伸を行わず熱処理を行う場合、または長手方向や幅方向の再延伸後に熱処理を行う場合は以下の条件が好ましい。熱処理温度は145〜175℃であることが好ましい。熱処理温度が145℃未満であると、伸度が低下したり、耐水圧が低下する場合がある。熱処理温度が175℃を超えると、多孔性フィルム表面が溶融し透湿性が低下したり、さらに多孔性フィルムが幅方向に収縮し、破断してしまい、生産性が低下する場合がある。熱処理温度は、透湿性、伸度、耐水圧の両立の観点から155〜170℃であればより好ましい。熱処理時間は、0.1秒以上10秒以下であることが好ましい。
テンター式延伸機による再延伸および熱処理を行わない場合は再延伸、ロール熱処理後に、ワインダーにて巻き取り多孔性フィルムを得ることができる。
本発明の多孔性フィルムは、透湿性、伸度、耐水圧に優れることから、透湿防水シートとして好適に用いることができ、防護服用途、カイロ用包材、おむつや生理用品、絆創膏、油吸着シート、土木建材用途、更には医療用途においても好適に用いることができる。また、本発明の多孔性フィルムおよびそれを用いてなる透湿防水シートは、加工での工程通過性に優れる。加えて、本発明の透湿防水シートと不織布との複合体は、低目付および透湿性に優れることから、防護服の基材や防護服として好適に用いることができる。本発明の防護服の基材や防護服は、着用した際に重くなく、また服内の蒸れを軽減する着衣快適性に優れ、かつ耐水圧に優れる。そのため、本発明の防護服の基材や防護服は、化学防護服のみではなく、医療用途にも好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)β晶形成能
多孔性フィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から260℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、40℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出することで、その試料の状態でのβ晶分率を算出することができる。
(2)耐水圧
JIS L 1092:2009 7.1.1 B法に基づき測定した。多孔性フィルムまたは複合体から約150mm×150mmの試験片を採取し、耐水度試験装置の表側に水があたるよう取り付け、シリンダに水を入れ、ピストンハンドルを回して1分間に100kPaの割合で水圧を加えて、試験片の裏側に3か所から水が出たときの水圧(kPa)を測定した。測定は5回行い、5回の平均値を耐水圧とした。
なお、試験片1枚で10000mmHO未満で破膜する場合は、試験片を2枚重ねて測定した。ただし、試験片を2枚重ねて測定する場合であっても、測定値を2で除する必要は無く、得られた測定値をそのまま用いる。
(3)焼却後の灰分(JIS L 1013)
JIS L 1013:2010 8.25に基づき、多孔性フィルムまたは複合体の850℃で焼却後の灰分を測定した。
(4)透湿度
JIS L 1099:2012 7.1 A−1法に基づき、多孔性フィルムまたは複合体の透湿度を測定し、単位:g/m・hで評価した。
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210:1995に準拠して測定した。試験温度および荷重については、JIS K 7210:1995の附属書AおよびBを参照した。例えば、ポリプロピレン樹脂のMFRは、条件M(230℃、2.16kg)で測定する。
(6)引張伸度
(6−1)フィルムの長手方向の引張伸度
多孔性フィルムを長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。このとき、サンプルの長さ方向をフィルムの長手方向とした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分として、サンプルの長さ方向に引張試験を行った。サンプルが破断した時の伸度を測定した。なお、サンプルを5枚作成して、測定を5回行い、その平均値をフィルムの長手方向の引張伸度とした。
(6−2)フィルムの幅方向の引張伸度
サンプルの長さ方向をフィルムの幅方向とする以外は、「フィルムの長手方向の引張伸度」の測定と同様の方法で伸度を測定した。なお、サンプルを5枚作成して、測定を5回行い、その平均値をフィルムの幅方向の引張伸度とした。
(7)フィルム厚み
ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.06N)を用いて、多孔性フィルムの厚みを5箇所測定し、その平均値を当該フィルムの厚みとした。
(8)目付
多孔性フィルムまたは複合体を長手方向100mm×幅方向100mmの正方形に切り出しサンプルとした。分析用電子天秤((株)A&D製HR−202i)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて質量の測定を行った。測定を3回行い、平均値をそのフィルムまたは複合体の質量Wとし、目付は以下の式を用いて算出した。
目付(g/m)=W/(0.1×0.1)。
(9)多孔性フィルムの融点(℃)
多孔性フィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。窒素雰囲気下で室温から260℃まで10℃/分で昇温させたときの最大融解吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。測定は各サンプル2回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
(10)工程通過性
長さ50mの多孔性フィルムの両表面に目付20g/mのポリプロピレン製不織布が積層されるように熱ラミネートを行い、複合体を得た。熱ラミネートの条件は、接着面積20%、ロール温度:(多孔性フィルムの融点−20)℃、ライン速度:5m/分である。
得られた複合体について、以下の基準にて工程通過性を評価した。
Best:巻出しから熱ラミネートの搬送工程、熱ラミネート時、熱ラミネートから巻取りの搬送工程のいずれもしわが入らず、複合体にしわがない。
Better:巻出しから熱ラミネートの搬送工程、熱ラミネート時、熱ラミネートから巻取りの搬送工程のいずれかでしわが入るものの、複合体にしわがない。
Bad:巻出しから熱ラミネートの搬送工程、熱ラミネート時、熱ラミネートから巻取りの搬送工程のいずれかでしわが入り、複合体にしわがある。
(11)着衣快適性(着用性)
(10)で得た複合体をLLサイズの型紙に合わせて切り出し、切り出した複合体の縫製部分をミシンにて縫製し、服を得た。
夏場の外気温を想定した35℃、50%Rhに設定した恒温恒湿室に、被験者がシャツ1枚、作業ズボン1枚の上から作製した服を着用し入室した。被験者は、胸の中心付近に温湿度計をシャツの上から貼り付け、入室後の服内の湿度を測定した。これを3人の被験者に対して実施した。30分後の3人の平均値湿度が60%Rh以下の場合をGood、平均湿度差が60%Rhより高い場合をBadと評価した。
以下に実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を96.5質量部、MFR1,000g/10分のプライムポリマー(株)製ホモポリプロピレンS10CLを3質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASFジャパン製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、302℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(I)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(I)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて116℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストフィルムを得た。ついで、122℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍に、延伸温度122℃、延伸速度380,000%/分で延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で3秒間予熱後、150℃で9.0倍に、延伸速度3,300%/分で幅方向に延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離(フィルム幅方向におけるクリップ間距離)に保ったまま150℃で3秒間熱処理し、更に164℃で弛緩率10%で弛緩処理を行い、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で5秒間熱処理を行った。続いて、155℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行い、フィルム長手方向に1.2倍に、再延伸温度155℃で再延伸を行った後、150℃に加熱したセラミックロールを用いて5秒間熱処理を行い、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例2)
実施例1の延伸工程において125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍に、延伸温度125℃、延伸速度390,000%/分で延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で3秒間予熱後、150℃で9.0倍に、延伸速度4,000%/分で延伸した以外は実施例1と同じ条件で厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を94.5質量部、MFR1,000g/10分のプライムポリマー(株)製ホモポリプロピレンS10CLを5質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASFジャパン製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、302℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(II)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(II)を実施例1と同じ条件で厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例4)
実施例1で得た多孔性フィルムをテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、160℃で3秒間予熱後、160℃で幅方向に1.2倍延伸し、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み19μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例5)
実施例1で得た多孔性フィルムをテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、160℃で3秒間予熱後、160℃で幅方向に1.2倍延伸し、続いて、延伸後のクリップ間距離に保ったまま165℃で3秒間熱処理を行い、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み18μmの多孔性フィルムを得た。
(実施例6)
実施例1に記載の樹脂原料(ポリプロピレン組成物(I)を用い、実施例1に記載のキャスト条件にてキャストフィルムを得た。ついで、130℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に延伸温度130℃にて、4.5倍に、延伸速度360,000%/分で延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で3秒間予熱後、150℃で5.0倍に、延伸速度3,600%/分で延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し、更に164℃で弛緩率15%で弛緩処理を行い、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で5秒間熱処理を行った。続いて、155℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行い、フィルム長手方向に1.1倍に、再延伸温度155℃で再延伸を行った後、150℃に加熱したセラミックロールを用いて5秒間熱処理を行い、テンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、160℃で3秒間予熱後、160℃で1.1倍に延伸し、続いて、延伸後のクリップ間距離に保ったまま165℃で3秒間熱処理を行い、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(比較例1)
高密度ポリエチレン粉末(“ハイゼックス”340M、三井化学(株)製、)40質量部と、ポリエチレンワックス(“ハイワックス”110P、三井化学(株)製)30質量部と、炭酸カルシウム(商品名:“スターピゴット”15A、白石カルシウム(株)製、平均粒子径0.15μm)30質量部を混合した組成物を二軸押出機に供給して200℃で溶融混合した後、Tダイ口金内を通してシート状に押出成形し、表面温度30℃のキャストドラム上に密着させ、非ドラム面側より20℃の冷風を吹き付けてキャストフィルムを作製した。次に、該キャストフィルムを125℃に加熱保持されたオーブンに導いて予熱後、方向に延伸速度30,000%/分で3倍延伸し20℃のロールで冷却した。続いて、長手方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃に加熱した雰囲気中で幅方向に延伸速度500%/分で5倍延伸して、厚さ20μmの多孔性ポリエチレンフィルムを得た。
(比較例2)
特開2006−28495号公報の実施例1記載の条件に準じて作製した。ポリプロピレンフィルムの樹脂組成として、融解温度が165℃のポリプロピレン(住友化学(株)製、WF836 DG−3、MFR:7g/10分)50重量%と、β晶核剤含有ポリプロピレンのSUNOCO社製“Bepol”(タイプ:B022−SP)50重量%を添加混合し、二軸押出機に供給して300℃で溶融混合した後、ガット状に押出し、10℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。該β晶核剤添加ポリプロピレンのβ晶比率は72%であった。次に、該β晶核剤添加ポリプロピレンを300℃に加熱された押出機に供給して溶融し、Tダイ口金内を通してシート状に押出成形し、表面温度125℃に加熱されたキャストドラム上に密着させ、非ドラム面側より120℃の熱風を吹き付けてキャストフィルムを作製した。次に、該キャストフィルムを125℃に加熱保持されたオーブンに導いて予熱後、長手方向に5倍に、延伸速度100,000%/分で延伸し、120℃のロールで冷却した。続いて、長手方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、130℃に加熱した雰囲気中で幅方向に延伸速度1,000%/分で10倍延伸後(長手方向の延伸倍率×幅方向の延伸倍率=50倍)、引き続き微多孔ポリプロピレンフィルムの結晶配向を完了させて平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内にて155℃で幅方向3%の弛緩処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却した。その後、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.5質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるBASF製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、302℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン組成物(III)を得た。
得られたポリプロピレン組成物(III)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて116℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストフィルムを得た。ついで、122℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍に、延伸速度150,000%/分で延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、155℃で3秒間予熱後、150℃で9.0倍に、延伸速度3,300%/分で延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し、更に164℃で弛緩率15%で弛緩処理を行い、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で5秒間熱処理を行った。
その後、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(比較例4)
ポリプロピレン組成物(I)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて116℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストフィルムを得た。ついで、135℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4倍に、延伸速度450,000%/分延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、155℃で3秒間予熱後、155℃で9.0倍に、延伸速度3,300%/分で延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し、更に164℃で弛緩率20%で弛緩処理を行い、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で5秒間熱処理を行った。
その後、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
(比較例5)
ポリプロピレン組成物(I)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて116℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストフィルムを得た。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行い、フィルムの長手方向に5倍に、延伸温度125℃、延伸速度400,000%/分の条件にて、延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、155℃で3秒間予熱後、155℃で9.0倍に、延伸速度8,500%/分で延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で3秒間熱処理し、更に164℃で弛緩率10%で弛緩処理を行い、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で5秒間熱処理を行った。
その後、ワインダーで多孔性フィルムをコアに500m巻き取り、厚み20μmの多孔性フィルムを得た。
Figure 2015115289
本発明の要件を満足する実施例の多孔性フィルムは透湿度、耐水圧、伸度に優れた。また、実施例の多孔性フィルムは、着用した際の服内の蒸れを軽減し着衣快適性に優れ、焼却後の灰分の少ない透湿防水シートおよび防護服として好適に用いることが可能であった。一方、比較例の多孔性フィルムは、透湿性、伸度、耐水圧、焼却後の灰分の両立が不十分であった。そのため、透湿防水シートおよび防護服として不十分であった。
(参考例101)
表面をフッ素樹脂にてコーティングした柄癖が見えないように調整した網目柄の熱プレスロールと受けロールを用い、目付20g/mのポリプロピレン製不織布(スパンボンド1)、と実施例1の多孔性フィルムとを以下の順に接着加工した。
スパンボンド1/実施例1の多孔性フィルム/スパンボンド1の3層構成で、網目柄の熱プレスロール温度:(多孔性フィルムの融点−20)℃、受けロール温度:(多孔性フィルムの融点−20)℃、ロール圧2MPaで、接着加工を行い、接着面積が10%の複合体を得た。
なお、網目柄の熱プレスロールは、接着加工後も透湿性を発現するように接着部分以外はロール面が複合体を構成する多孔性フィルムおよびスパンボンドに触れない網目柄の凹凸高さ3mmのロールを用いた。
(参考例201)
多孔性フィルムとして、比較例1にて得られた多孔性フィルムを用いた以外は、参考例101と同様の方法にて、接着面積が10%の複合体を得た。
Figure 2015115289
本発明の要件を満足する実施例1の多孔性フィルムを用いた参考例101の複合体は透湿度、耐水圧に優れた。また、参考例101は、重くなく、焼却後の灰分が少なかった。一方、比較例1の多孔性フィルムを用いた参考例201の複合体は、透湿性、耐水圧が不十分であった。また、参考例201は、重く、焼却後の灰分が多く残った。

Claims (8)

  1. 透湿度が250g/m・h以上であり、フィルムの長手方向と幅方向の引張伸度の和が100〜500%であり、耐水圧が4,500mmHO以上であり、かつ温度850℃で焼却後の灰分(JIS L 1013)が0.5質量%以下である多孔性フィルム。
  2. フィルムの(長手方向/幅方向)の引張伸度比が0.6〜1.5である、請求項1に記載の多孔性フィルム。
  3. ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1または2に記載の多孔性フィルム。
  4. ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンである、請求項3に記載の多孔性フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いた透湿防水シート。
  6. 請求項5に記載の透湿防水シートと不織布との複合体。
  7. 目付が50g/m以下である、請求項6に記載の複合体。
  8. 請求項6または7に記載の複合体を用いた防護服。
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