JP2016097793A - 後輪転舵制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 車両の左右の後輪をそれぞれ独立して転舵する後輪転舵装置を制御する後輪転舵制御装置において、目的の後輪転舵量が、路面状態などの外力によってその駆動を阻害された場合に、車両の挙動が不安定に陥ることを未然に防止することができる後輪転舵制御装置を提供する。【解決手段】 後輪転舵制御装置13における電子制御装置130は、電子制御ユニット9から入力される後輪の転舵指令値と、回転角検出器33Lで検出される回転角または絶対位置検出器34Lで検出される絶対位置のいずれか一方または両方とを監視して所定の異常判定規則により異常な転舵状態を検知する異常検知部55aと、異常検知部55aが異常な転舵状態を検知したとき、後輪への転舵指令を解除する転舵指令解除手段55bとを有する。【選択図】 図4

Description

この発明は、自動車などの車両に適用する後輪転舵制御装置に関する。
従来から、車両の安定走行性能を図る目的で、前輪転舵に加え、後輪を転舵させる後輪転舵装置が知られている。後輪転舵装置の制御装置は、マイクロコンピュータを内蔵し、車両の状態を常に監視するための各種センサ群の値から的確な転舵角やトー角の制御量を決定し、転舵のためのアクチュエータを駆動している。転舵装置は車両の走行性能を左右する重要な機能であり、車両の状態や路面の状況に応じて最適な転舵角を推定し、車両安定化制御を実施する。
そのため、そのシステムに異常が発生した場合は、確実に異常を検知し、極力安全性能を維持することが望まれる。ここで言う異常とは、主にシステム側に起因する場合を想定しているが、例えば、車両が走行している路面状態の影響により、システムの性能限界を超える駆動力が必要になった場合など、外的要因によっても車両走行性能に悪影響を及ぼす可能性なども想定される。
左右の後輪を独立に転舵制御する制御装置に関わるシステムに起因する異常時の車両の挙動が不安定になることを回避する対策として、次の技術が提案されている。例えば、後輪操舵システムの異常時の車両走行安定性の低下を防止するために、車両挙動安定化制御システムを備えた後輪転舵車両において、後輪転舵制御の異常(トー角の変更不能、検出不能など)が発生し、特にトーアウト状態においては、その異常を検知し車両挙動安定化制御システムをオンにすることで車両挙動の安定化を図っている(特許文献1)。
他の従来技術として、車両の走行状態や搭載荷重などの変化によって、後輪トー角制御装置に搭載される転舵用アクチュエータに加わる軸力の変化により、トー角の応答性が左右輪で異なることを防止するため、アクチュエータの制御量を補正し、車両の走行フィールの向上を図っている(特許文献2)。
特許第5320286号公報 特許第5433023号公報
特許文献1では、システム側の異常発生に限定し、例えば、トーアウト状態で異常となった場合に、車両を安定化させるための制御を実行しており、不安定な挙動を回避することができる。
しかし、前述のように、車両が走行している路面状態の影響など、外部要因により、システムの性能限界を超える駆動力が必要になった場合なども、車両走行性能に悪影響を及ぼす可能性があり、その具体的対策については特に記載がない。
特許文献2では、制御可能な領域においては補正が可能だが、システムの性能限界を超える駆動力が必要になった場合なども、車両走行性能に悪影響を及ぼす可能性があり、特許文献1と同様にその具体的対策については特に記載がない。
この発明の目的は、車両の左右の後輪をそれぞれ独立して転舵する後輪転舵装置を制御する後輪転舵制御装置において、目的の後輪転舵量が、路面状態などの外力によってその駆動を阻害された場合に、車両の挙動が不安定に陥ることを未然に防止することができる後輪転舵制御装置を提供することである。
この発明の後輪転舵制御装置13は、車両の左右の後輪10,11をアクチュエータ14,15によりそれぞれ独立に転舵する後輪転舵装置12を制御する後輪転舵制御装置であって、
前記アクチュエータ14,15の回転角を検出する回転角検出器33または前記アクチュエータ14,15の絶対位置を検出する絶対位置検出器34と、
上位の制御手段9から入力される転舵指令値に従って前記アクチュエータ14,15を制御する電子制御装置130と、
を備え、
前記電子制御装置130は、
前記上位の制御手段9から入力される後輪10,11の転舵指令値と、前記回転角検出器33で検出される回転角または前記絶対位置検出器34で検出される絶対位置のいずれか一方または両方とを監視して所定の異常判定規則により異常な転舵状態を検知する異常検知部55aと、
この異常検知部55aが異常な転舵状態を検知したとき、後輪10,11への転舵指令を解除する転舵指令解除手段55bとを有することを特徴とする。
前記「異常な転舵状態」について、上位の制御手段9からの転舵指令があるが、例えば、回転角検出器33からの回転角信号が一定時間経過しても所望の値に到達せず、且つ、アクチュエータ14,15の駆動源27の電流値が定められた値を超えている場合、異常な転舵状態と判断する。この場合、対象となる後輪10,11に異常な外力が加えられている可能性がある。
前記一定時間、前記所望の値、前記定められた値、および前記所定の異常判定規則は、それぞれ試験やシミュレーション等の結果により定められる。
この構成によると、異常検知部55aは、前記転舵指令値、回転角または絶対位置より、異常な転舵状態が発生したか否かを判定する。異常検知部55aは、例えば、回転角検出器33から得られる回転角を監視する。上位の制御手段9からの転舵指令があるが、回転角検出器33からの回転角信号が所望の値を超えないまま定められた時間が経過し、且つ、アクチュエータ14,15の駆動源27の電流値が定められた値を超えている場合、異常検知部55aは、異常な転舵状態が発生したと判定する。この異常検知部55aが異常な転舵状態を検知したとき、転舵指令解除手段55bは、後輪10,11への転舵指令を解除する。このように異常な転舵状態を検知したとき、車両がより安定な状態を維持できるように後輪10,11の状態を一時的に制御することができる。また前記異常な転舵状態は、システムの異常ではないため、前記異常な転舵状態から車両が脱出した際には、正常な制御への復旧が可能である。
前記電子制御装置130は、前記上位の制御手段9から入力される転舵指令値に従って、前記左右の後輪10,11を共に転舵していない直進状態からトーイン側またはトーアウト側に転舵駆動するとき、前記異常検知部55aがいずれか一方の後輪10(11)または両方の後輪10,11につき異常な転舵状態を検知すると、前記転舵指令解除手段55bは、前記左右の後輪10,11への転舵指令を解除しても良い。
この場合、左右の後輪10,11が共に直進状態から、制御手段9からの指令に基づきアクチュエータ14,15を転舵駆動するとき、例えば、左右の後輪10,11の少なくともいずれか一方10(11)が路面の段差などにより物理的な駆動の障害が発生し、アクチュエータ14(15)の駆動源27の駆動性能限界を超えると、異常検知部55aは異常な転舵状態を検知する。このような異常な転舵状態を検知したとき、転舵指令解除手段55bは左右の後輪10,11への転舵指令を解除することで、前述のような物理的な駆動の障害を回避することが可能となる。
前記電子制御装置130は、前記上位の制御手段9から入力される転舵指令値に従って、前記左右の後輪10,11をトーイン状態から直進状態に戻すとき、前記異常検知部55aがいずれか一方の後輪10(11)または両方の後輪10,11につき異常な転舵状態を検知すると、前記転舵指令解除手段55bは、前記左右の後輪10,11をトーイン状態に維持しても良い。このように左右の後輪10,11につき、トーイン状態から直進状態への転舵指令を解除してトーイン状態に維持することで、前述のような物理的な駆動の障害を回避することが可能となる。
前記電子制御装置130は、前記上位の制御手段9から入力される転舵指令値に従って、前記左右の後輪10,11を同相または逆相に転舵している状態から直進状態に戻すとき、前記異常検知部55aがトーイン側またはトーアウト側に向いた一方の後輪10(11)につき異常な転舵状態を検知すると、前記転舵指令解除手段55bは、異常と検知されない他方の後輪11(10)を元の転舵状態から逆転舵状態または直進状態にしても良い。このように左右の後輪10,11につき、転舵している状態から直進状態に戻すとき、一方の後輪10(11)につき異常な転舵状態を検知すると、この一方の後輪10(11)に対する転舵指令を解除して元の転舵状態に維持すると共に、正常な他方の後輪11(10)のみを元の転舵状態から逆転舵状態または直進状態にすることで、前述のような物理的な駆動の障害を回避することが可能となる。
前記アクチュエータ14,15は、前記左右の後輪10,11をそれぞれ独立に転舵する一対のアクチュエータ14,15であり、前記電子制御装置130は、前記各アクチュエータ14,15をそれぞれ制御する一対の電子制御部130L、130Rを有し、前記一対の電子制御部130L、130Rのうち一方の電子制御部130L(130R)における前記異常検知部55aが異常な転舵状態を検知したとき、正常な他方の電子制御部130R(130L)へ前記一方の電子制御部130L(130R)における異常な転舵状態の情報を伝達する相互監視部58を、前記各電子制御部130L、130Rにそれぞれ設けても良い。この場合、一方の電子制御部130L(130R)における異常検知部55aが異常な転舵状態を検知したとき、その情報は、相互監視部58を経由して、他方の電子制御部130R(130L)に伝達される。これにより他方の電子制御部130R(130L)において、必要な制御が実行される。
この発明の後輪転舵制御装置は、車両の左右の後輪をアクチュエータによりそれぞれ独立に転舵する後輪転舵装置を制御する後輪転舵制御装置であって、前記アクチュエータの回転角を検出する回転角検出器または前記アクチュエータの絶対位置を検出する絶対位置検出器と、上位の制御手段から入力される転舵指令値に従って前記アクチュエータを制御する電子制御装置とを備える。前記電子制御装置は、前記上位の制御手段から入力される後輪の転舵指令値と、前記回転角検出器で検出される回転角または前記絶対位置検出器で検出される絶対位置のいずれか一方または両方とを監視して所定の異常判定規則により異常な転舵状態を検知する異常検知部と、この異常検知部が異常な転舵状態を検知したとき、後輪への転舵指令を解除する転舵指令解除手段とを有する。このため、目的の後輪転舵量が、路面状態などの外力によってその駆動を阻害された場合に、車両の挙動が不安定に陥ることを未然に防止することができる。
この発明の実施形態に係る後輪転舵制御装置を適用する後輪転舵装置を搭載した自動車の概略説明図である。 同後輪転舵装置の一例を示す破断正面図である。 図2の一部を拡大して示す断面図である。 同後輪転舵制御装置の概念構成を示すブロック図である。 同後輪転舵制御装置による転舵状態の推移を示す図である。 同後輪転舵制御装置による転舵状態の他の推移を示す図である。 同後輪転舵制御装置による転舵状態のその他の推移を示す図である。 同後輪転舵制御装置による転舵状態のその他の推移を示す図である。
この発明の実施形態を図1ないし図8と共に説明する。
図1は、この実施形態に係る後輪転舵制御装置を適用する後輪転舵装置を搭載した自動車の概略説明図である。自動車1の左右の前輪2,3は、ステアリングホイール4の操舵角を、例えばラックアンドピニオンからなる主転舵装置である前輪転舵装置5に伝達することで左右に転舵される。ステアリングホイール4の操舵軸に対して設けた舵角センサ6、車速センサ7、およびヨーレートセンサ8の出力は、電子制御ユニット9に入力される。この電子制御ユニット9は、自動車1の全体の協調制御、統括制御等の制御を行うメインの制御手段であり、ECUまたはVCUと略称される。
左右の後輪10、11は、シャシー(車体)に固定された後輪転舵装置12により、この後輪転舵装置12と連結された各タイロッドに対応するナックルアームNa,Nbを介して転舵される。後輪転舵装置12は、左右の後輪10、11を一対の転舵モータ27L,27Rによりそれぞれ独立に転舵可能である。後輪10、11の転舵角については、舵角センサ6、車速センサ7、ヨーレートセンサ8などの、自動車1の走行情報の入力に応じて電子制御ユニット9で決定された目標転舵角を、後輪転舵制御装置13が受信し、この後輪転舵制御装置13により左右の後輪10、11がそれぞれ独立して制御される。
図2は、この後輪転舵装置12の一例を示す破断正面図である。
図1および図2に示すように、後輪転舵装置12は、前輪転舵角に対して後輪10、11を同位相、逆位相に転舵する第1及び第2のアクチュエータ14,15を有する。第1のアクチュエータ14は左側の後輪10を転舵する駆動手段であり、第2のアクチュエータ15は右側の後輪11を転舵する駆動手段である。
図2に示すように、それぞれのアクチュエータ14、15は互いに同じ機械構成とされ、後輪転舵装置12の中央線X−Xに対してほぼ対称構造とされるため、これ以降、第1アクチュエータ14を用いて構造を説明する。なお、第1のアクチュエータ14の各構成部品の符号にL、第2のアクチュエータ15の各構成部品の符号にRを付けるが、区別する必要がない場合には、R、Lを省略する。
第1のアクチュエータ14は、台形ねじ18と、スラスト軸受機構19と、ラジアル軸受20と、減速機24と、モータ27とを有する。台形ねじ18は、ロッド16の内径部に形成された雌ねじ16aと、シャフト17の一端部に形成した雄ねじ17aとが螺合する。スラスト軸受機構19は、シャフト17をラジアル方向に回転支持する。
減速機24は、シャフト17のフランジ17bを遊星歯車機構のキャリアとし、その側面にピン21で回転可能に支持した遊星歯車22と、この遊星歯車22と噛み合う内歯車23とを有する。モータ27は、減速機24の太陽歯車25aをその先端に形成した中空モータシャフト25と、ステータ26とを有する。これら台形ねじ18と減速機24とモータ27は全てロッド16と同一軸上に配置される。中空モータシャフト25の一部分にはN、Sを交互に着磁した磁石28が固定される。中空モータシャフト25は軸受49でハウジング32に支持されている。シャフト17は滑り軸受48でロッド16に支持されている。
ロッド16は、その両端が滑り軸受47で支持されるとともに、回転防止機構29で回転を拘束され、軸方向の移動のみ可能とされる。回転防止機構29は、軸受30で支持された円柱状のストッパ31の先端31aを、ロッド16に形成した長穴16bに挿入した構成である。軸受30はハウジング32に固定される。ロッド16が軸方向に移動した際にはストッパ31の先端31aは、長穴16bに沿って相対移動し、ロッド16の回転防止と機械的リミットとして機能し、ロッド16の移動範囲を制限する。
モータ27には回転角を検出する回転角検出器33が固定される。回転角検出器33は、例えばレゾルバであり、ロータ33aとステータ33bとを有する。中空モータシャフト25の一端部にロータ33aが設けられ、このロータ33aに対峙するハウジング32にステータ33bが固定される。中空モータシャフト25の両端は軸受で回転支持され、この中空モータシャフト25の中空孔25bにはロッド16が挿入される。
第1のアクチュエータ14におけるモータ27Lを回転すると、第1のアクチュエータ14に対応するシャフト17の雄ねじ17aが減速機24で減速されて回転する。このシャフト17の回転量に応じて、ロッド16Lが軸方向つまり図2の左右方向に移動し、ロッド16Lの先端に固定された図示外のボールジョイントを介して、図1に示すナックルアームNaを動かして後輪10のトー角を調整する。
第2のアクチュエータ15についても、同様にモータ駆動により第2のアクチュエータ15に対応するシャフト17の雄ねじ17aが減速機24で減速されて回転する。このシャフト17の回転量に応じて、ロッド16Rが軸方向に移動し、同ロッド16Rの先端に固定された図示外のボールジョイントを介して、図1に示すナックルアームNbを動かして後輪11のトー角を調整する。
図1および図2に示すように、後輪10の転舵角は、ロッド16の絶対位置を絶対位置検出器34で検出することで把握する。この絶対位置検出器34で検出された検出情報は後輪転舵制御装置13に入力される。絶対位置検出器34は、例えば、アナログ出力のホールIC35と磁石36を用いた磁気検出器である。ロッド16に固定されたホルダ37内に磁石36を固定し、磁石36に対峙するハウジング32側にホールIC35を固定している。
この絶対位置検出器34は、ホールIC35に印加される磁束変化を位置出力に変換することでロッド16の絶対位置を検出する。ホールIC35としてプログラム可能なものを用いれば、予めロッド16の位置と磁束密度との関係をプログラムすることで絶対位置精度を向上し得る。
図3を用いて、スラスト軸受機構19について説明する。
シャフト17の端面に形成した内径部17cには、連結軸38L、スラスト軸受39、軌道輪40、およびスペーサ41がそれぞれ挿入される。連結軸38Lには、スラスト力を受けるフランジ38aが形成されている。スラスト軸受39は、保持器付でありフランジ38aの両側に設けられる。軌道輪40はスラスト軸受39の転走面となる。
内径部17cに隣接した側面17dには、リング板42と押え板43が配置される。この押え板43が、ボルト44によりシャフト17の側面17d側に押し付けられることで、スラスト軸受39に予圧が与えられる。シャフト17の内部にスラスト軸受機構19を配置することで軸方向の長さを短縮し得る。
第1のアクチュエータ14側の連結軸38Lの一端面に、雌ねじ38Lbが形成されている。第2のアクチュエータ15側の一端部に、雄ねじ38Raが形成されている。またハウジング45の中央壁45aに、孔45bが形成されている。雌ねじ38Lbと雄ねじ38Raとが孔45bを介して螺合され、それぞれの連結軸38L、38Rはハウジング45に固定される。なお、シャフト17のラジアル方向振れを抑えるため、ハウジング45とシャフト17の円筒外径部17eとの間にラジアル軸受46が挿入される。ラジアル軸受46としては、例えば、外輪付きの針状ころ軸受を用いる。
ハウジング32(L)、32(R)とハウジング45は連結されて1つのハウジングとされ、その中に第1および第2のアクチュエータ14,15が組み込まれる。
図1および図2に示すように、第1のアクチュエータ14のロッド16Lを左右に移動すると、ロッド16Lと連結される左の後輪10が転舵され、トー角が調整される。第2のアクチュエータ15のロッド16Rを移動すると、ロッド16Rと連結される右の後輪11が転舵され、トー角が調整される。後輪転舵装置12がシャシー(車体)に固定される方式でありながら、左右の後輪10、11を左右独立に転舵し得る。
図3に示すように、第1のアクチュエータ14の連結軸38Lと、第2のアクチュエータ15の連結軸38Rとがハウジング45の中央壁45aを介して螺合されている。このため、図2に示す第1のアクチュエータ14のシャフト16Lと第2のアクチュエータ15のシャフト16Rに加わる負荷が、図3に示すハウジング45の中央壁45aに均等に印加される。したがって、左右後輪10、11のバランスを確保できる。
なお、ここではハウジング32L、32R、45は3つに分割されているが、これらをねじ締結して一体化したものを1つのハウジングとして呼ぶ。
図4は、前記構成の後輪転舵装置12(図1)を制御する後輪転舵制御装置13の概念構成のブロック図である。
後輪転舵制御装置13は電子制御装置130を有し、この電子制御装置130は、一対の電子制御部130L、130Rを有する。これら電子制御部130L、130Rは、それぞれ左右の後輪10、11(図1)の転舵を行う第1,第2のアクチュエータ14、15を独立して制御する。これら電子制御部130L、130Rは互いに同じ制御構成となっている。また、第1のアクチュエータ14の構成部品であるモータ27L、回転角検出器33L、絶対位置検出器34Lは、第2のアクチュエータ15についても同一の構成部品を有する。
したがって、第1のアクチュエータ14およびその電子制御部130Lについて、それぞれ構成部品に符号を付して説明し、第2のアクチュエータ15およびその電子制御部130Rの各構成部品については、図示を省略する。これ以降、後輪転舵制御装置13の説明のために、原則、電子制御部130Lと第1のアクチュエータ14を用いる。
第1のアクチュエータ14の電子制御部130Lは、マイクロプロセッサ50、上位の制御手段である電子制御ユニット9から得られる指令側の入力信号の入力インターフェース部51、第1のアクチュエータ14から得られる検出側の入力信号の入力インターフェース部52、出力インターフェース部53、およびモータ駆動部54を有する。なお指令側および検出側の入力インターフェース部51、52は、互いに別の電子素子であっても、一つの電子素子の一部ずつであっても良い。
電子制御ユニット9で決定された後輪転舵角の目標値は、指令側の入力インターフェース部51を介してマイクロプロセッサ50に送信され、さらにマイクロプロセッサ50内で後述の異常処理部55を介してモータ制御目標値演算部56へ送信される。
マイクロプロセッサ50では、転舵モータ27Lの制御を実行するため、モータ制御目標値演算部56で演算された結果(この実施形態では、転舵角から算出されたモータ27Lの回転数)に基づくモータ駆動指令が、出力インターフェース部53を経由してモータ駆動部54へ送信される。
転舵モータ27Lとして、例えばブラシレスモータを使用した場合、制御の基本は、トルク(電流)、速度、位置の制御となり、本システムの制御対象は位置(舵角)であるため、マイクロプロセッサ50に実装される図示外の制御系は、電流制御系の上位に速度制御系と位置制御系を構成する複合制御系となる。よって、モータ駆動指令値は、電子制御ユニット9からの指令によって算出された演算結果の他、モータ電流検出値や回転角検出値などのフィードバック値に基づき目標舵角に到達するように制御される。
絶対位置検出器34Lは、第1のアクチュエータ14の絶対位置を監視する。絶対位置は、電源投入時、例えば、車両のイグニッション(図示せず)がオンの時点で検知され、その後の制御は、検出された絶対位置を基準に回転角検出器33Lから得られる回転角で位置制御を実施する。これらの制御系は例えばソフトウェアの演算によって制御を行うようにマイクロプロセッサ50に実装される。
ここで、本課題とその対策について説明する。
本課題は、上位制御手段である電子制御ユニット9から転舵指令が入力され、後輪を転舵させるアクチュエータの駆動源となるモータを駆動させようとする場合、次のような課題が発生し得る。例えば、路面にある段差などの影響で車両の転舵行動力に反する外力が作用した場合などでは、モータの制御性能の限界値を超える可能性があり、所定の時間内に転舵を実行できない、または、最悪の場合駆動自体を阻害してしまう可能性がある(以降、この状態を「異常な転舵状態」と記す)。
その結果、当初の目的とする車両性能を発揮できないうえに、制御を無理に続行させようとするために、その間無駄なエネルギー浪費に加え、車両が不安定な時間帯を無駄に費やす可能性がある。
次に、その対策について説明する。
マイクロプロセッサ50は、本課題の解決のため、異常処理部55および相互監視部58を備える。また、モータ駆動部54には、モータ電流検出部59を備える。以降、異常処理部55、相互監視部58それぞれの役割を説明する。
<異常処理部55について>
異常処理部55は、「異常な転舵状態」を即座に検知するため、異常な転舵状態の検知を行う異常検知部55aと、この異常な転舵状態の検知時の処理を実施する転舵指令解除手段55bとを有する。
異常検知部55aは、電子制御ユニット9からの転舵指令の有無、転舵(実測値)の有無、およびモータ27Lにかかる負荷によって、異常な転舵状態の有無を判定する。このため、異常検知部55aは、電子制御ユニット9からの転舵指令θinと、モータ電流検出部59から得られるモータ27Lの電流値と、転舵の駆動量を把握することができる回転角検出器33Lから得られる回転角情報R0または絶対位置検出器34Lから得られる絶対位置情報P0の少なくとも一方の信号とに基づき、異常な転舵状態が発生したか否かの診断を実施する。
「異常な転舵状態」を検出するために、異常検知部55aでは、例えば、回転角検出器33Lから得られる回転角信号R0を監視する。電子制御ユニット9からの転舵指令があるが、回転角信号R0が所望の値を超えないまま定められた時間が経過し、且つ、モータ電流検出部59から得られるモータ電流値が定められた値つまり制御限界を超えている場合、異常検知部55aは、対象となる後輪に「異常な転舵状態」が発生したと判定する。この場合、対象となる後輪側に異常な外力が加わっている可能性があると判断できる。
なお、「異常な転舵状態」を監視する信号は、絶対位置検出器34Lからの位置信号P0でも構わない。
転舵指令解除手段55bは、異常検知部55aが対象となる後輪につき異常な転舵状態を検知したとき、前記後輪への転舵指令を解除する。例えば、対象となる前記後輪への転舵指令前に、この後輪が転舵していない直進状態だった場合、転舵指令解除手段55bは、対象となる前記後輪への転舵指令をキャンセルして直進状態を維持する指令を、モータ制御目標値演算部56へ与える。モータ制御目標値演算部56において前記指令より演算された結果に基づくモータ駆動指令が、出力インターフェース部53を経由してモータ駆動部54へ送信される。これにより対象となる前記後輪の直進状態が維持される。
<相互監視部58について>
一対の電子制御部130L,130Rは、自己診断機能や、例えば、それぞれの制御目標を相互演算しその比較結果の一致/不一致でマイクロプロセッサ50の異常な状態やソフトウェアの暴走などを互いに監視し、いずれか一方の電子制御部130L(130R)で異常が発生した場合は、相互監視部58および通信手段60を経由して他方の電子制御部130R(130L)へ、その情報を送信する。
他方の電子制御部130R(130L)は、その異常な状態に応じて制御を中断したり、モータ駆動力を停止する等の処置を実施する。
また一対の電子制御部130L,130Rのいずれか一方130L(130R)において、異常処理部55の異常検知部55aで検知された「異常な転舵状態」も監視する。異常検知部55aで「異常な転舵状態」が検知された場合、その情報は、相互監視部58および通信手段60を経由して、正常な他方の電子制御部130R(130L)に通知される。
本実施形態に係る後輪転舵制御装置は、「異常な転舵状態」を検出後に、車両がより安定な状態を維持できるように後輪の状態を一時的に制御することを目的としている。
優先順位としては、左右の後輪がいずれも転舵していない直進状態、次に後輪がトーイン状態、最後に左右の後輪のうちの少なくとも一方の後輪が直進状態であることを前提とした処置をとっている。
言い換えれば、後輪が両輪とも同相で転舵した状態では、車両を直進させることが困難となる状態や、またはトーアウト状態では、車両の不安定な状態を発生させる危険性があり、最悪でもこれらの不安定な状態を回避するための処置となる。
また、「異常な転舵状態」は、システムの異常ではないため、「異常な転舵状態」から車両が脱出した際には、正常な制御への復旧が可能である。
次に、この後輪転舵制御装置による転舵状態の推移を図5〜図8と共に説明する。これら図5〜図8のいずれの場合においても、車両の不安定な状態を回避し得る。図1および図4も適宜参照しつつ説明する。
図5に示すように、左右の後輪10,11が共に転舵していない直進状態である場合に、電子制御ユニット9から転舵指令を受けた際、少なくとも後輪10,11の一方の後輪10(11)に対応する電子制御部130L(130R)における異常検知部55aが「異常な転舵状態」を検知した場合、この電子制御部130L(130R)における転舵指令解除手段55bが即座に転舵指令をキャンセルする。
この「異常な転舵状態」の情報は、相互監視部58および通信手段60を経由して他方の電子制御部130R(130L)へ通知され、この電子制御部130R(130L)に対応する後輪11(10)への転舵指令をキャンセルする。したがって、左右の後輪10,11の転舵制御の実行がキャンセルされる。
図6に示すように、左右の後輪10,11がトーイン状態で、電子制御ユニット9からの転舵指令に従って左右の後輪10,11を互いに直進状態に戻すとき、少なくとも後輪の一方10(11)に対応する電子制御部130L(130R)における異常検知部55aが「異常な転舵状態」を検知した場合、この電子制御部130L(130R)における転舵指令解除手段55bが即座に転舵指令をキャンセルし、トーイン状態を維持する。
前記「異常な転舵状態」の情報は、相互監視部58および通信手段60を経由して他方の電子制御部130R(130L)へ通知され、この電子制御部130R(130L)に対応する後輪11(10)への転舵指令をキャンセルする。したがって、左右の後輪10,11の転舵制御の実行がキャンセルされる。
図7に示すように、左右の後輪10,11が前輪2,3の転舵方向に対して、同相または逆相に転舵している状態から、電子制御ユニット9からの転舵指令に従って左右の後輪10,11を互いに直進状態に戻すとき、例えばトーイン側に向いた一方の後輪10(11)に対応する電子制御部130L(130R)における異常検知部55aが「異常な転舵状態」を検知した場合、この電子制御部130L(130R)における転舵指令解除手段55bが即座に転舵指令をキャンセルし、一方の後輪10(11)のトーイン状態を維持する。
前記「異常な転舵状態」の情報は、相互監視部58および通信手段60を経由して他方の電子制御部130R(130L)へ通知される。他方の電子制御部130R(130L)の異常処理部55は、対応するトーアウト側に向いた他方の後輪11(10)を、逆転舵状態であるトーイン状態または直進状態にする。
図8に示すように、左右の後輪10,11が前輪2,3の転舵方向に対して、同相または逆相に転舵している状態から、電子制御ユニット9からの転舵指令に従って左右の後輪10,11を互いに直進状態に戻すとき、例えばトーアウト側に向いた一方の後輪11(10)に対応する電子制御部130R(130L)における異常検知部55aが「異常な転舵状態」を検知した場合、この電子制御部130R(130L)における転舵指令解除手段55bが即座に転舵指令をキャンセルし、一方の後輪11(10)のトーアウト状態を維持する。
前記「異常な転舵状態」の情報は、相互監視部58および通信手段60を経由して他方の電子制御部130L(130R)へ通知される。他方の電子制御部130L(130R)の異常処理部55は、対応するトーイン側に向いた他方の後輪10(11)を、直進状態にする。
以上説明した後輪転舵制御装置によれば、電子制御ユニット9からの指令に基づきアクチュエータ14,15を転舵駆動するとき、例えば、左右の後輪10,11の少なくともいずれか一方10(11)が路面の段差などにより物理的な駆動の障害が発生し、アクチュエータ14(15)の転舵モータ27L(27R)の駆動性能限界を超えると、異常検知部55aは異常な転舵状態を検知する。このような異常な転舵状態を検知したとき、転舵指令解除手段55bは左右の後輪10,11への転舵指令を解除することで、物理的な駆動の障害を回避することが可能となる。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
9…電子制御ユニット(上位の制御手段)
10,11…後輪
12…後輪転舵装置
13…後輪転舵制御装置
14,15…アクチュエータ
33…回転角検出器
34…絶対位置検出器
55a…異常検知部
55b…転舵指令解除手段
58…相互監視部
130…電子制御装置
130L,130R…電子制御部

Claims (5)

  1. 車両の左右の後輪をアクチュエータによりそれぞれ独立に転舵する後輪転舵装置を制御する後輪転舵制御装置であって、
    前記アクチュエータの回転角を検出する回転角検出器または前記アクチュエータの絶対位置を検出する絶対位置検出器と、
    上位の制御手段から入力される転舵指令値に従って前記アクチュエータを制御する電子制御装置と、
    を備え、
    前記電子制御装置は、
    前記上位の制御手段から入力される後輪の転舵指令値と、前記回転角検出器で検出される回転角または前記絶対位置検出器で検出される絶対位置のいずれか一方または両方とを監視して所定の異常判定規則により異常な転舵状態を検知する異常検知部と、
    この異常検知部が異常な転舵状態を検知したとき、後輪への転舵指令を解除する転舵指令解除手段と、
    を有することを特徴とする後輪転舵制御装置。
  2. 請求項1に記載の後輪転舵制御装置において、前記電子制御装置は、前記上位の制御手段から入力される転舵指令値に従って、前記左右の後輪を共に転舵していない直進状態からトーイン側またはトーアウト側に転舵駆動するとき、前記異常検知部がいずれか一方の後輪または両方の後輪につき異常な転舵状態を検知すると、前記転舵指令解除手段は、前記左右の後輪への転舵指令を解除する後輪転舵制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の後輪転舵制御装置において、前記電子制御装置は、前記上位の制御手段から入力される転舵指令値に従って、前記左右の後輪をトーイン状態から直進状態に戻すとき、前記異常検知部がいずれか一方の後輪または両方の後輪につき異常な転舵状態を検知すると、前記転舵指令解除手段は、前記左右の後輪をトーイン状態に維持する後輪転舵制御装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の後輪転舵制御装置において、前記電子制御装置は、前記上位の制御手段から入力される転舵指令値に従って、前記左右の後輪を同相または逆相に転舵している状態から直進状態に戻すとき、前記異常検知部がトーイン側またはトーアウト側に向いた一方の後輪につき異常な転舵状態を検知すると、前記転舵指令解除手段は、異常と検知されない他方の後輪を元の転舵状態から逆転舵状態または直進状態にする後輪転舵制御装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の後輪転舵制御装置において、前記アクチュエータは、前記左右の後輪をそれぞれ独立に転舵する一対のアクチュエータであり、前記電子制御装置は、前記各アクチュエータをそれぞれ制御する一対の電子制御部を有し、前記一対の電子制御部のうち一方の電子制御部における前記異常検知部が異常な転舵状態を検知したとき、正常な他方の電子制御部へ前記一方の電子制御部における異常な転舵状態の情報を伝達する相互監視部を、前記各電子制御部にそれぞれ設けた後輪転舵制御装置。
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