JP2016094650A - 複極式アルカリ水電解セル、及び電解槽 - Google Patents
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Abstract
Description
アルカリ水電解システム300は、アルカリ水溶液を電気分解することによって酸素及び水素を製造する複極式電解槽310と、複極式電解槽310に電圧を印加する電源315と、複極式電解槽310から排出される酸素及び水を分離する陽極タンク(気液分離タンク)320と、陽極タンク320で気液分離された酸素を導出する酸素排出ライン321と、排出される酸素の圧力を調整する水封器330と、酸素を外部に導出する酸素導出ライン331を備える。
また、アルカリ水電解システム300は、複極式電解槽310から排出される水素及び水を分離する陰極タンク(気液分離タンク)340と、陰極タンク340で気液分離された水素を導出する水素排出ライン341と、排出される水素の圧力を調整する水封器350と、水素を外部に導出する水素導出ライン351を備える。陰極タンク340には、純水供給配管360及び純水供給ポンプ361が連結される。
さらに、陽極タンク320及び陰極タンク340の底部には分離したアルカリ液を循環する、循環ライン324及び344が接続されており、循環ライン324及び344は、ポンプ371及び電解槽入ライン370を介して複極式電解槽310に連通する。
複極式電解槽310の水素連通孔313には、水素ライン314の一端が接続され、この水素ライン314の他端が陰極タンク340に接続される。陰極タンク340は気液分離タンクであり、陰極タンク340で水と分離された水素は、水素排出ライン341、水封器350及び水素導出ライン351を経て導出される。
電解ユニットを構成する隔壁、外枠は、陽極又は陰極を支えるだけでなく、電流を隔壁から陽極又は陰極へ伝える役割がある。そのため、隔壁及び外枠には一般的に導電性の金属、例えば、ニッケルメッキを施した軟鋼、ステンレススチール、ニッケル等が利用されている。
泡が小さいと、気液分離タンクにおいても破泡できず、気体の流路(気相ライン)に泡が浸入してしまい、気液分離が良好になされないという問題があった。
アルカリ水からなる電解液を電解して酸素及び水素を得る電解槽を構成する複極式アルカリ水電解セルであって、
前記複極式アルカリ水電解セルは、
酸素発生用の多孔質体からなる陽極と、
水素発生用の陰極と、
前記陽極と前記陰極とを区画する導電性隔壁と、
前記導電性隔壁の外縁を取り囲む外枠と、
前記導電性隔壁の上部及び下部において該導電性隔壁を覆うカバープレートと、を備え、
前記導電性隔壁及び/又は前記外枠の上部には、ガス及び電解液が通過する第1の通過部が設けられており、
前記導電性隔壁及び/又は前記外枠の下部には、電解液が通過する第2の通過部が設けられており、
前記導電性隔壁の上部と前記外枠の上部と前記カバープレートとで囲まれた上部空間の内壁面が、疎水性樹脂からなるライニング層で被覆されていることを特徴とする複極式アルカリ水電解セル。
[2]
前記第1の通過部の内壁面が、疎水性樹脂からなるライニング層で被覆されている、[1]に記載の複極式アルカリ水電解セル。
[3]
前記カバープレートの外表面において前記第1の通過部の周囲が、疎水性樹脂からなるライニング層で被覆されていることを特徴とする[1]又は[2]に記載の複極式アルカリ水電解セル。
[4]
前記疎水性樹脂は、フッ素系樹脂である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の複極式アルカリ水電解セル。
[5]
前記導電性隔壁及び/又は外枠の上部に設けられたガス及び電解液の通過部は、陽極液及びガス通過パイプと陰極液及びガス通過パイプとであり、前記導電性隔壁及び/又は外枠の下部に設けられた電解液の通過部は、陽極液通過パイプと陰極液通過パイプとである[1]〜[4]のいずれか一項に記載の複極式アルカリ水電解セル。
[6]
アルカリ水からなる電解液を電解して酸素、及び水素を得るための電解槽であって、
[1]〜[5]のいずれか一項に記載の複数の複極式アルカリ水電解セルと、
陽極用給電端子及び陽極が設けられた陽極ターミナルエレメントと、
陰極用給電端子及び陰極が設けられた陰極ターミナルエレメントと、
複数のイオン透過性隔膜と、を備え、
前記複極式アルカリ水電解ユニットは、前記陽極ターミナルエレメントと前記陰極ターミナルエレメントとの間に配置され、
前記イオン透過性隔膜は、前記陽極ターミナルエレメントと前記複極式アルカリ水電解ユニットとの間、隣接して並ぶ複極式アルカリ水電解ユニット同士の間、及び前記複極式アルカリ水電解ユニットと前記陰極ターミナルエレメントとの間に配置されることを特徴とする電解槽。
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る電解槽100は、アルカリ水からなる電解液を電解して酸素、及び水素を得るための装置であり、電解槽100は複極式アルカリ水電解セル200を含む各部材によって構成される複極式電解槽101を備え、複極式電解槽101は、タイロッド15(図2参照)で締め付けられることで各部材が一体化されている。
<電解セル>
特に、本実施形態の複極式アルカリ水電解セル200では、隔壁206の上部と外枠フレーム208の上部と、カバープレート(陽極上部カバープレート216A及び陰極上部カバープレート216B)で囲まれた上部空間(陽極気液分離室219A及び陰極気液分離室219B)の内壁面が、疎水性樹脂からなるライニング層250aで被覆されていることを特徴とする。
図6に示すように、陽極気液分離室219A及び陰極気液分離室219Bの内壁面が、樹脂によりライニングされていると、このライニング層250aの表面は疎水性を有するため、ユニット内で発生した水素や酸素の気泡が陽極気液分離室219A及び陰極気液分離室219Bの内壁面に付着する。そして、小さな泡が会合して大きな泡B1となって上がり、上部に溜まる。大きな泡B1は自然に破泡し消滅することができる。泡がラインを通じて気液分離タンク(図7における陽極タンク320及び陰極タンク340)に流入しても、気液分離タンクにおいて破泡することができ、気体の導出流路に泡が浸入することが防止される。その結果、気液分離性を向上することができる。
このような材料としては、例えばゴム、ポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂が挙げられ、好ましくはフッ素系樹脂であり、例えばPTFE,PFA,ETFEである。
ライニング層250aの厚みとしては特に限定されるものではないが、例えば10μm以上程度とすることが好ましく、50μm以上程度にすることが特に好ましい。10μm以上であればライニング層250aの表面に泡を付着させ、破泡性の優れる泡に会合させられる為、気液分離性を向上させることができる。50μm以上であれば、ライニング層の耐性が上がる為、長期で気液分離性を上げることができる。
また、ライニング層250aを形成する範囲は、導電性隔壁206の上部と外枠フレーム208の上部とカバープレートとで囲まれた上部空間の内壁面のうち60%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。60%であればライニング層表面に泡を付着させ、破泡性の優れる泡に会合させられる為、気液分離性を向上させることができる。80%以上であれば、循環液量の乱れが起きた際も安定して気液分離性を向上させることができる。
ライニング層250aの形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂微粒子を含むパウダーを吹き付ける方法、樹脂微粒子を含む懸濁溶液を用いたコーティング等の方法が挙げられる。
陽極液及びガス通過パイプ240、陰極液及びガス通過パイプ244の内壁面がライニング層250bで被覆されていることにより、ユニット内で発生した水素や酸素の小さな気泡を付着、会合させて大きな泡として破泡することができ、気体の導出流路に泡が浸入することがより確実に防止される。
図1に示すように電解セル200を用いて電解槽100を構成する場合、隣接するガスケット(陽極ガスケット9、陰極ガスケット11)との接合部位も、陽極液、陰極液及びガスの流路の一部を構成する。陽極液及びガス通過パイプ240、陰極液及びガス通過パイプ244の周囲がライニング層250cで被覆されていることにより、ユニット内で発生した水素や酸素の小さな気泡を付着、会合させて大きな泡として破泡することができ、気体の導出流路に泡が浸入することがより確実に防止される。
ライニング層250b及び250cはいずれも、上述したライニング層250aと同様のものを用いることができる。
なお、上述した説明では、電解セルを初めとして、電解槽を構成する各部材の外観形状が、長方形状を有する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電解セル及び各部材の外観形状は、円形、正方形、その他多角形でも良い。
(実施例)
図3〜図5に示したような電解セルにおいて、上部空間の内壁面(隔壁の上部、外枠フレームの上部、カバープレートで囲まれた上部空間、陽極液及びガス通過パイプ、陰極液及びガス通過パイプの内壁面及び/又は周囲)に、フッ素系樹脂としてテフロン(登録商標)からなるライニング層を200μmの厚みに形成した。なお、ライニング層の形成は、つぎのようにして行った。
1)ライニング層を形成する基材の汚れや、油分をエタノールで洗浄した。
2)基材を炉中で450℃に加熱し、油脂や汚れを焼却した。
3)モランダム(200メッシュ)の砥粒と空気によりブラストし、錆や汚れ等を除去し
、3〜6ミクロン程度に粗面化した。
4)基材にフッ素樹脂と接着樹脂の混合物(株式会社吉田SKT REO−033−T)
を塗布し、200℃で1時間、焼き付けを炉で行った。
5)ライニング層の厚みが200μmになる様に、4)を繰り返し、ライニング層を形成
した。
ライニング層を形成した電解セルを用いて、図1に示すような電解槽及び図8に示すような電解システムを構成した。
構成した電解槽及び電解システムにより、次の電解条件で電解を行った。電解の条件は、電解液:KOH32.1%、電解液温度:69℃、電流密度:6kA/m2で行った。
気液分離能の評価はつぎのようにして行った。すなわち、全長30cmの陰極気液分離タンクにおいて、気液分離タンク底辺から泡がどの高さまで蓄積しているかを、陰極気液分離タンクに備え付けられている、アクリル製の透明窓から目視で測定を行った。電解液の高さは、電解を行う前の状態で、気液分離タンク底辺から15cmになるように設定した。
結果、本実験では底辺から蓄積した泡上部までの高さが19cmとなり、良好に気液分離が行えた。
図3〜図5に示したような電解セルにおいて、上部空間の内壁面にライニング層を形成しなかったものを用意した。
構成した電解槽及び電解システムにより、次の電解条件で電解を行った。電解の条件は、電解液:KOH29.7%、電解液温度:59℃、電流密度:6kA/m2で行った。
気液分離能の評価はつぎのようにして行った。すなわち、全長30cmの陰極気液分離タンクにおいて、底辺から泡がどの高さまで蓄積しているかを、陰極気液分離タンクに備え付けられている、アクリル製の透明窓から目視で測定を行った。電解液の高さは、電解を行う前の状態で、気液分離タンク底辺から15cmになるように設定した。
結果、本実験では底辺から蓄積した泡上部までの高さが27cmとなり、気液分離能は良好でないことが明らかとなった。
2 陰極液入口ノズル
3 ガス出口ノズル
4 ガス出口ノズル
5 プレスフランジ
6 プレスフランジガスケット
8 陽極ターミナルエレメント
9 陽極ガスケット
10 イオン透過性隔膜
11 陰極ガスケット
12 電解セル
13 陰極ターミナルエレメント
14 エンドプレスフランジ
15 タイロッド
100 電解槽
101 複極式電解槽
200 複極式アルカリ水電解セル
202 陽極
204 陰極
206 隔壁
208 外枠フレーム
216A 陽極上部カバープレート
216B 陰極上部カバープレート
219A 陽極気液分離室
219B 陰極気液分離室
220 陽極室
222 陰極室
224A 陽極下部カバープレート
224B 陰極下部カバープレート
228A 陽極室入口空間部
228B 陰極室入口空間部
230 陽極液導入孔
232 陽極液通過パイプ
234 陰極液導入孔
236 陰極液通過パイプ
246 陽極リブ
248 陰極リブ
250a〜250c ライニング層
300 アルカリ水電解システム
Claims (6)
- アルカリ水からなる電解液を電解して酸素及び水素を得る電解槽を構成する複極式アルカリ水電解セルであって、
前記複極式アルカリ水電解セルは、
酸素発生用の多孔質体からなる陽極と、
水素発生用の陰極と、
前記陽極と前記陰極とを区画する導電性隔壁と、
前記導電性隔壁の外縁を取り囲む外枠と、
前記導電性隔壁の上部及び下部において該導電性隔壁を覆うカバープレートと、を備え、
前記導電性隔壁及び/又は前記外枠の上部には、ガス及び電解液が通過する第1の通過部が設けられており、
前記導電性隔壁及び/又は前記外枠の下部には、電解液が通過する第2の通過部が設けられており、
前記導電性隔壁の上部と前記外枠の上部と前記カバープレートとで囲まれた上部空間の内壁面が、疎水性樹脂からなるライニング層で被覆されていることを特徴とする複極式アルカリ水電解セル。 - 前記第1の通過部の内壁面が、疎水性樹脂からなるライニング層で被覆されている、請求項1に記載の複極式アルカリ水電解セル。
- 前記カバープレートの外表面において前記第1の通過部の周囲が、疎水性樹脂からなるライニング層で被覆されている、請求項1又は2に記載の複極式アルカリ水電解セル。
- 前記疎水性樹脂は、フッ素系樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複極式アルカリ水電解セル。
- 前記導電性隔壁及び/又は外枠の上部に設けられたガス及び電解液の通過部は、陽極液及びガス通過パイプと陰極液及びガス通過パイプとであり、前記導電性隔壁及び/又は外枠の下部に設けられた電解液の通過部は、陽極液通過パイプと陰極液通過パイプとである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複極式アルカリ水電解セル。
- アルカリ水からなる電解液を電解して酸素、及び水素を得るための電解槽であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の複数の複極式アルカリ水電解セルと、
陽極用給電端子及び陽極が設けられた陽極ターミナルエレメントと、
陰極用給電端子及び陰極が設けられた陰極ターミナルエレメントと、
複数のイオン透過性隔膜と、を備え、
前記複極式アルカリ水電解ユニットは、前記陽極ターミナルエレメントと前記陰極ターミナルエレメントとの間に配置され、
前記イオン透過性隔膜は、前記陽極ターミナルエレメントと前記複極式アルカリ水電解ユニットとの間、隣接して並ぶ複極式アルカリ水電解ユニット同士の間、及び前記複極式アルカリ水電解ユニットと前記陰極ターミナルエレメントとの間に配置されることを特徴とする電解槽。
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