JP6858841B2 - 外部ヘッダー型複極式エレメント、外部ヘッダー型複極式電解槽、及び水素製造方法 - Google Patents
外部ヘッダー型複極式エレメント、外部ヘッダー型複極式電解槽、及び水素製造方法 Download PDFInfo
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Description
[1]
陽極と陰極とを含む電極と、前記陰極と前記陽極とを隔離する隔壁と、前記電極で発生したガスを含む電解液を排出する吐出口とを備え、
前記陽極又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域において、前記吐出口を複数個有する、外部ヘッダー型複極式エレメントを含み、
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記電解液集液管が、前記吐出口より鉛直方向下側に設けられ、
前記領域において、複数の前記吐出口が、鉛直方向に異なる位置に設けられ、
前記吐出口の傾きが、鉛直方向に最も高い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に0°以上90°以下であり、鉛直方向に最も低い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に−90°以上−10°以下である、
ことを特徴とする、外部ヘッダー型複極式電解槽。
陽極と陰極とを含む電極と、前記陰極と前記陽極とを隔離する隔壁と、前記電極で発生したガスを含む電解液を排出する吐出口とを備え、
前記陽極又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域において、前記吐出口を複数個有する、アルカリ水電解用外部ヘッダー型複極式エレメントを含み、
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記電解液集液管が、前記吐出口より鉛直方向下側に設けられ、
前記領域において、複数の前記吐出口が、鉛直方向に異なる位置に設けられ、
前記吐出口の傾きが、鉛直方向に最も高い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に0°以上90°以下であり、鉛直方向に最も低い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に−90°以上−10°以下である、
ことを特徴とする、外部ヘッダー型複極式電解槽。
前記領域において、複数の前記吐出口が、鉛直方向に異なる位置に設けられている、[1]又は[2]に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
前記陽極と前記隔壁とで挟まれた領域A、及び前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域B、のそれぞれにおいて、前記吐出口が2個設けられている、[1]から[3]のいずれかに記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
前記陽極と前記隔壁とで挟まれた領域A、及び/又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域Bにおいて、複数個の前記吐出口が鉛直方向に異なる位置に設けられ、
鉛直方向に最も高い位置の吐出口が、鉛直方向に最も低い位置の吐出口から排出するガス量よりも多くのガスを排出する吐出口である、[1]から[4]のいずれかに記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
前記領域において、前記吐出口の数が2個であり、
前記ガスが鉛直方向に高い位置の吐出口から排出される、[3]に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
前記複極式エレメントの厚みが15mm以上40mm以下である、[1]から[6]のいずれかに記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
前記吐出口の断面積が、1.25×10−5m2以上である、[1]から[7]のいずれかに記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
前記吐出口の内径D(mm)と前記複極式エレメントの厚みT(mm)とが、0.1≦D/T≦0.9の関係を満たす、[1]から[8]のいずれかに記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記吐出口における前記ホースの傾きが、鉛直方向に最も高い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に0°以上90°未満であり、鉛直方向に最も低い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に−90°超−10°以下である、[1]から[9]のいずれかに記載の複極式電解槽。
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
鉛直方向に最も高い位置の吐出口から延びるホースが前記電解液集液管の断面中心より鉛直方向上側で前記電解液集液管に接続され、
鉛直方向に最も低い位置の吐出口から延びるホースが前記電解液集液管の断面中心より鉛直方向下側で前記電解液集液管に接続される、[1]から[10]のいずれかに記載の複極式電解槽。
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記ホースが、前記電解液の流れが停止した後に、前記ホース内にガス層が形成される機構を備える、[1]から[11]のいずれかに記載の複極式電解槽。
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記ホースの電気抵抗率が1MΩ・cm以上である、[1]から[12]のいずれかに記載の複極式電解槽。
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記ホースが、外部からホース内部を視認可能なホースである、[1]から[13]のいずれかに記載の複極式電解槽。
アルカリを含有する水を、電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法において、
前記電解槽は少なくとも複極式エレメントを有し、
前記複極式エレメントは、陽極と陰極とを含む電極と、前記陰極と前記陽極とを隔離する隔壁と、前記電極で発生したガスを含む電解液を排出する吐出口とを備え、前記陽極又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域において、前記吐出口を複数個有する、外部ヘッダー型複極式エレメントであり、
前記電解槽が、[1]から[14]のいずれかに記載の複極式電解槽である、
ことを特徴とする水素製造方法。
図3に、本実施形態のアルカリ水電解用外部ヘッダー型複極式電解槽の一例の一部の、複極式エレメント、ヘッダー(ホース)、導管についての斜視図を示す。
図4に、本実施形態のアルカリ水電解用外部ヘッダー型複極式電解槽の一例の一部における電解液の流れについての斜視図を示す。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50は、図1に示すとおり、陽極2aと、陰極2cと、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1と、隔壁1を縁取る外枠3とを備える複数の複極式エレメント60が隔膜4を挟んで重ね合わせられている複極式電解槽50であってよい。
複極式とは、多数の複極式エレメントを電源に接続する方法の1つであり、片面が陽極2a、片面が陰極2cとなる複数の複極式エレメント60を同じ向きに並べて直列に接続し、両端のみを電源に接続する方法である。
複極式電解槽50は、電源の電流を小さくできるという特徴を持ち、電解によりガスや所定の物質等を短時間で大量に製造することができる。電源設備は出力が同じであれば、定電流、高電圧の方が安価でコンパクトになるため、工業的には単極式よりも複極式の方が好ましい。
一例のアルカリ水電解用複極式電解槽50に用いられる複極式エレメント60は、図6に示すように、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1を備え、隔壁1を縁取る外枠3を備えている。より具体的には、隔壁1は導電性を有し、外枠3は隔壁1の外縁に沿って隔壁1を取り囲むように設けられている。
上記領域としては、上記陽極と上記隔壁とで挟まれた領域60a(本明細書において「領域A」と称する場合がある)と、上記陰極と上記隔壁とで挟まれた領域60b(本明細書において「領域B」と称する場合がある)とが挙げられる(図6)。
本実施形態の複極式エレメントによれば、領域A及び領域Bに吐出口が複数設けられているため、吐出口近傍にガスが溜まりにくくなり、複数の吐出口でガスと電解液とを分離して、効率よく電解液を循環させることができる。さらに、長期連続運転をした場合でも隔膜の温度が高くなりにくい。特に、複極式エレメントを薄くした場合に、この効果が一層顕著となる。
上記領域Aと上記領域Bとで、複数の各吐出口が設けられている位置は、鉛直方向に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
吐出口の数は、上記領域Aと上記領域Bとで、異なっていてもよいし同じであってもよいが、複極式エレメントの製作のしやすさの観点から、上記領域A及び上記領域Bともに、2個以上の同じ数の吐出口が設けられていることが好ましく、2個の吐出口が設けられていることがより好ましい。
中でも、電極で発生した上記ガスは、鉛直方向に最も高い位置の吐出口のみから排出され、鉛直方向に最も低い位置の吐出口からは電解液のみが排出されることが好ましい。例えば、上記領域に吐出口が2個設けられている場合、鉛直方向に上側に位置する吐出口からは上記ガスのみが排出され、鉛直方向に下側に位置する吐出口からは上記電解液のみが排出されることが好ましい。
各領域における複数の上記吐出口は、断面積が同じであってもよいし異なっていてもよい。中でも、製造が容易である観点から、全ての吐出口の断面積が同じであることが好ましい。また、少なくとも1個の吐出口が上記を満たすことが好ましく、全ての吐出口が上記を満たすことがより好ましい。
吐出口の形状及び/又は内径は、全ての吐出口において同じであってもよいし異なっていてもよい。また、少なくとも1個の吐出口が上記を満たすことが好ましく、全ての吐出口が上記を満たすことがより好ましい。
なお、複極式エレメントの厚さとは、隔壁を挟んで設けられた陽極と陰極との距離(陽極外端から陰極外端までの距離)をいう。
ここで、吐出口の内径とは、吐出口の内側の二点の距離のうち最も長い距離をいう。
例えば、上記領域Aにおいて、1個の陽極電解液入口5aiと、複数の陽極電解液出口5aoとが設けられ、上記領域Bにおいて、1個の陰極電解液入口5ciと複数の陰極電解液出口5coとが設けられることが好ましい。
また、本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)において、鉛直方向に最も低い位置の吐出口の傾きθ2は、該吐出口における気液分離性が一層向上する観点から、水平方向に対して鉛直方向に−90°以上−10°以下であり、より好ましくは−75°以上−15°以下であり、−90°以上0°以下であってもよい。
ここで、吐出口の傾きとは、複極式エレメントの鉛直方向断面(隔壁に平行方向の面)において、吐出口の二外端を結ぶ線分であって最も長い線分を形成する二外端を結ぶ直線と、水平方向とがなす角度をいう(図9)。ここで、本明細書において、水平方向に対して鉛直方向上向きを正の角度とし、鉛直方向下向き(重力方向、地球の中心に向かう方向)を負の角度とする。また、本明細書において、水平方向とは、鉛直方向に対して垂直な面の方向をいう。
吐出口を設ける位置は、領域Aと領域Bとで異なっていてもよいし同じであってもよい。また、少なくとも1個の吐出口が上記を満たすことが好ましく、全ての吐出口が上記を満たすことがより好ましい。
本実施形態では、図1に示すとおり、複極式電解槽50は複極式エレメント60を必要数積層することで構成されている。
図1に示す一例では、複極式電解槽50は、一端からファストヘッド51g、絶縁板51i、陽極ターミナルエレメント51aが順番に並べられ、更に、陽極側ガスケット部分7、隔膜4、陰極側ガスケット部分7、複極式エレメント60が、この順番で並べて配置される。このとき、複極式エレメント60は陽極ターミナルエレメント51a側に陰極2cを向けるよう配置する。陽極側ガスケット部分7から複極式エレメント60までは、設計生産量に必要な数だけ繰り返し配置される。陽極側ガスケット部分7から複極式エレメント60までを必要数だけ繰り返し配置した後、再度、陽極側ガスケット部分7、隔膜4、陰極側ガスケット部分7を並べて配置し、最後に陰極ターミナルエレメント51c、絶縁板51i、ルーズヘッド51gをこの順番で配置される。複極式電解槽50は、全体をタイロッド方式51r(図1参照)や油圧シリンダー方式等の締め付け機構により締め付けることによりー体化され、複極式電解槽50となる。
複極式電解槽50を構成する配置は、陽極2a側からでも陰極2c側からでも任意に選択でき、上述の順序に限定されるものではない。
一例では、隔壁1の端縁にある外枠3の下方に、領域A(陽極室5aの一部)に電解液を入れる陽極入口ヘッダー10Oaiと、領域B(陰極室5cの一部)に電解液を入れる陰極入口ヘッダー10Ociとを備えており、また、同様に、隔壁1の端縁にある外枠3の上側方に、領域Aから電極液及びガスを排出する陽極出口ヘッダー10Oao、10Oagoと、領域Bから電解液及びガスを排出する陰極出口ヘッダー10Oco、10Ocgoとを備えている。本実施形態の複極式エレメントは、吐出口(電解液出口)を複数有するため、複数の出口ヘッダーと接続される。
また、一例では、領域A(陽極室5aの一部)及び領域B(陰極室5cの一部)において、入口ヘッダーと出口ヘッダーとが、各領域の中央部(電極室5の中央部)を挟んで向かい合うように設けられている。
図4に、本実施形態のアルカリ水電解用外部ヘッダー型複極式電解槽の一例を示す。
一例では、外枠3のうちの下方に、陽極入口ヘッダー10Oaiに連通する陽極用配液管20Oaiと、陰極入口ヘッダー10Ociに連通する陰極用配液管20Ociとを備えており、また、同様に、外枠3のうちの側方に、陽極出口ヘッダー10Oao、10Oagoに連通する陽極用集液管20Oaoと、陰極出口ヘッダー10Oco、10Ocgoに連通する陰極用集液管20Ocoとを備えている。
ここで、吐出口(電解液出口)が複数設けられている場合、陽極電解液出口5aoのうち鉛直方向に最も高い位置の吐出口を5ago、陰極電解液出口5coのうち鉛直方向に最も高い位置の吐出口を5cgoとする場合がある。また、電解液出口5ao、5coから延びる出口側ホース(出口ヘッダー)10Oao、10Ocoのうち、鉛直方向に最も高い位置の吐出口5ago、5cgoから延びる出口側ホース(出口ヘッダー)を10Oago、10Ocgoとする場合がある。
上記鉛直方向に最も高い位置の吐出口5ago、5cgoが、鉛直方向に最も低い位置の吐出口から排出するガス量よりも多くのガスを排出する吐出口であることが好ましい。また、上記鉛直方向に最も高い位置の吐出口5ago、5cgoが、鉛直方向に最も低い位置の吐出口から排出する電解液量よりも少ない電解液を排出する吐出口であることが好ましい。そうすることで、集液管内での気液分離状態が向上し、気液分離タンク内での気液分離効率を向上させることができる。中でも、最も高い位置の吐出口から排出されるガス量が、最も低い位置の吐出口から排出されるガス量の10倍以上であることが好ましい。また、最も高い位置の吐出口から排出される電解液量が、最も低い位置の吐出口から排出される電解液量の1/10以下であることが好ましい。ここで、上記ガス量、及び上記電解液量とは、単位時間当たりに流れるガスの総量及び電解液の総量をいうものとする。
上記鉛直方向に最も高い位置の吐出口5ago、5cgoから延びる出口側ホース(出口ヘッダー)10Oago、10Ocgoからは、ガスのみが排出されることが好ましい。
本実施形態(例えば、上記[1]〜[18]の形態等)において、鉛直方向に最も高い位置の吐出口における上記ホースの傾きθ3は、該吐出口における気液分離性が一層向上する観点から、水平方向に対して鉛直方向に0°以上90°以下であってよく、10°以上90°未満であることが好ましく、より好ましくは15°以上75°以下である。また、鉛直方向に最も低い位置の吐出口における上記ホースの傾きθ4は、該吐出口における気液分離性が一層向上する観点から、水平方向に対して鉛直方向に−90°以上0°以下であってよく、−90°超−10°以下であることが好ましく、より好ましくは−75°以上−15°以下である。
ここで、ホースの傾きとは、複極式エレメントの鉛直方向断面(隔壁に平行方向の面)において、吐出口とホースとの接続箇所における、ホースの向きと水平方向とがなす角度をいう(図9)。具体的には、ホースの電解液が流れる方向に対して垂直なホース断面の中心を結んだ線分(例えば、上記接続個所から長さ1mmの線分、接続個所と接続個所から1mmの位置の上記ホース断面中心とを結んだ線分)と水平方向とがなす角度をいう。
具体的には、鉛直方向に最も低い位置の吐出口の鉛直方向中心と、電解液集液管の鉛直方向断面の鉛直方向中心との距離hが、100mm以上であることが好ましく、より好ましくは200〜1400mm、さらに好ましくは600〜1200mmである。
また、以下では、本発明の効果を高めるための好適形態についても詳述する。
本実施形態における隔壁1の形状は、所定の厚みを有する板状の形状としてよいが、特に限定されない。
本実施形態のアルカリ水電解による水素製造において、エネルギー消費量の削減、具体的には電解電圧の低減は、大きな課題である。この電解電圧は電極2に大きく依存するため、両電極2の性能は重要である。
本実施形態における外枠3の形状は、隔壁1を縁取ることができる限り特に限定されないが、隔壁1の平面に対して垂直な方向に沿う内面を隔壁1の外延に亘って備える形状としてよい。
外枠3の形状としては、特に限定されることなく、隔壁1の平面視形状に合わせて適宜定められてよい。
本実施形態の複極式電解槽50において用いられる隔膜4としては、イオンを導通しつつ、発生する水素ガスと酸素ガスを隔離するために、イオン透過性の隔膜4が使用される。このイオン透過性の隔膜4は、イオン交換能を有するイオン交換膜と、電解液を浸透することができる多孔膜が使用できる。このイオン透過性の隔膜4は、ガス透過性が低く、イオン伝導率が高く、電子電導度が小さく、強度が強いものが好ましい。
多孔膜は、複数の微細な貫通孔を有し、隔膜4を電解液が透過できる構造を有する。電解液が多孔膜中に浸透することにより、イオン伝導を発現するため、孔径や気孔率、親水性といった多孔構造の制御が非常に重要となる。一方、電解液だけでなく、発生ガスを通過させないこと、すなわちガスの遮断性を有することが求められる。この観点でも多孔構造の制御が重要となる。
イオン交換膜としては、カチオンを選択的に透過させるカチオン交換膜とアニオンを選択的に透過させるアニオン交換膜があり、いずれの交換膜でも使用することができる。
イオン交換膜の材質としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、含フッ素系樹脂やポリスチレン・ジビニルベンゼン共重合体の変性樹脂が好適に使用できる。特に耐熱性及び耐薬品性等に優れる点で、含フッ素系イオン交換膜が好ましい。
ゼロギャップ型セルにおける複極式エレメント60では、極間距離を小さくする手段として、電極2と隔壁1との間に弾性体であるバネを配置し、このバネで電極2を支持する形態をとることが好ましい。例えば、第1の例では、隔壁1に導電性の材料で製作されたバネを取り付け、このバネに電極2を取り付けてよい。また、第2の例では、隔壁1に取り付けた電極リブ6にバネを取り付け、そのバネに電極2を取り付けてよい。なお、このような弾性体を用いた形態を採用する場合には、電極2が隔膜4に接する圧力が不均一にならないように、バネの強度、バネの数、形状等必要に応じて適宜調節する必要がある。
集電体2rは、その上に積層される導電性弾性体2eや電極2へ電気を伝えるとともに、それらから受ける荷重を支え、電極2から発生するガスを隔壁1側に支障なく通過させる役割がある。従って、この集電体2rの形状は、エキスパンドメタルや打ち抜き多孔板等が好ましい。この場合の集電体2rの開口率は、電極2から発生した水素ガスを支障なく隔壁1側に抜き出せる範囲であることが好ましい。しかし、あまり開口率が大きいと強度が低下する、或いは導電性弾性体2eへの導電性が低下する等の問題が生ずる場合があり、小さすぎるとガス抜けが悪くなる場合がある。
導電性弾性体2eは、集電体2rと電極2の間にあって集電体2r及び電極2と接しており、電気を電極2に伝えること、電極2から発生したガスの拡散を阻害しないことが必須要件である。ガスの拡散が阻害されることにより、電気的抵抗が増加し、また電解に使用される電極2面積が低下することで、電解効率が低下するためである。そして最も重要な役割は、隔膜4を損傷させない程度の適切な圧力を電極2に均等に加えることで、隔膜4と電極2とを密着させることである。
材質は限定されるものではないが、導電性、耐アルカリ性の面からニッケル、ニッケル合金又はステンレススチール又は軟鋼にニッケルメッキを施したものが好ましい。
またこのような導電性弾性体2eの厚みは、通常1mm〜20mm程度のものが使用できる。
本実施形態における電解セル65では、図2に示すとおり、隔壁1と外枠3と隔膜4とにより、電解液が通過する電極室5が画成されている。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、隔壁1に整流板6(陽極整流板6a、陰極整流板6c)が取り付けられ、整流板6(リブ)が電極2と物理的に接続されていることが好ましい。かかる構成によれば、整流板6が電極2の支持体となり、ゼロギャップ構造Zを維持しやすい。
ここで、整流板6に、電極2が設けられていてもよく、整流板6に、集電体2r、導電性弾性体2e、電極2がこの順に設けられていてもよい。
前述の一例のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、陰極室5cにおいて、整流板6−集電体2r−導電性弾性体2e−電極2の順に重ね合わせられた構造が採用され、陽極室5aにおいて、整流板6−電極2の順に重ね合わせられた構造が採用されている。
整流板6の高さは、隔壁1から各フランジ部までの距離、ガスケット7の厚さ、電極2(陽極2a、陰極2c)の厚さ、陽極2aと陰極2cとの間の距離等に応じて、適宜に定められてよい。
また、整流板6の厚みは、コストや製作性、強度等も考慮して、0.5mm〜5mmとしてよく、1mm〜2mmのものが用いやすいが、特に限定されない。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、隔壁1を縁取る外枠3同士の間に隔膜4を有するガスケット7が挟持されることが好ましい。
ガスケット7は、複極式エレメント60と隔膜4の間、複極式エレメント60間を電解液と発生ガスに対してシールするために使用され、電解液や発生ガスの電解槽外への漏れや両極室間におけるガス混合を防ぐことができる。
ゴム材料や樹脂材料としては、具体的には、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン−プロピレンゴム(EPT)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン−イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等のフッ素樹脂材料や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアセタール等の樹脂材料を用いることができる。これらの中でも、弾性率や耐アルカリ性の観点でエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)が特に好適である。
なお、引張応力は、JIS K6251に準拠して、測定することができる。例えば、島津製作所社製のオートグラフAGを用いてよい。
アルカリ水電解用複極式電解槽50は、電解セル65毎に、陰極室5c、陽極室5aを有する。電解槽50で、電気分解反応を連続的に行うためには、各電解セル65の陰極室5cと陽極室5aとに電気分解によって消費される原料を十分に含んだ電解液を供給し続ける必要がある。
外部ヘッダー10O型とは、複極式電解槽50とヘッダー10(電解液を配液又は集液する管)とが独立している形式をいう。
外部ヘッダー10O型の例では、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの下方に位置する部分に設けられたヘッダー10用貫通孔に、管腔状部材が設置され、管腔状部材が、陽極入口ヘッダー10Oai及び陰極入口ヘッダー10Ociに接続されており、また、同様に、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの上方に位置する部分に設けられたヘッダー10用貫通孔に、管腔状部材(例えば、ホースやチューブ等)が設置され、かかる管腔状部材が、陽極出口ヘッダー10Oao及び陰極出口ヘッダー10Ocoに接続されている。
図8に、本実施形態のアルカリ水電解用電解装置の概要を示す。
本実施形態のアルカリ水電解用電解装置70は、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50と、電解液を循環させるための送液ポンプ71と、電解液と水素及び/又は酸素とを分離する気液分離タンク72と、電解により消費した水を補給するための水補給器73とを有する。
すなわち、本実施形態によれば、再生可能エネルギー等の変動電源での運転時に、電極2の逆電吸収体の機能により、大電力の長期間貯蔵及び長距離輸送を実現することが可能となり、電力供給を停止した際に生じる自己放電を低減して、電気制御システムの安定化が可能となる。本実施形態によれば、さらには、高効率での電力の貯蔵、具体的には、ポンプ動力の低減やリーク電流の低減を実現することが可能となる。
本実施形態において用いられる送液ポンプ71としては、特に限定されず、適宜定められてよい。
本実施形態において用いられる気液分離タンク72は、電解液と水素ガスとを分離する水素分離タンク72hと、電解液と酸素ガスとを分離する酸素分離タンク72oとを含む。
水素分離タンク72hは陰極室5cに接続され、酸素分離タンク72oは陽極室5aに接続されて用いられる。
循環停止時の電解槽中の液面の低下を防ぐ目的で、気液分離タンク72内の電解液面を電解槽上面よりも高いことが好ましいが、これに限定されるものではない。
電解セル65と気液分離タンク72との間に遮断弁を付けることが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、タンク高さも同様に、高さが低い場合は、上記変動の影響を受けやすいため、高くすることが好ましい。
本実施形態において用いられる水補給器73としては、特に限定されず、適宜定められてよい。
水としては、一般上水を使用してもよいが、長期間に渡る運転を考慮した場合、イオン交換水、RO水、超純水等を使用することが好ましい。
本実施形態のアルカリ水電解用電解装置70は、複極式電解槽50、気液分離タンク72、水補給器73以外にも、整流器74、酸素濃度計75、水素濃度計76、流量計77、圧力計78、熱交換器79、圧力制御弁80、温度計81、82等を備えてよい。
本実施形態のアルカリ水電解方法は、本実施形態のアルカリ水電解用電解装置70を用いて、実施することができる。本実施形態のアルカリ水電解方法によれば、水素、酸素等のガスを製造することができる。
本実施形態の水素の製造方法は、アルカリを含有する水を、電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法において、前記電解槽は少なくとも複極式エレメントを有し、前記複極式エレメントは、陽極と陰極とを含む電極と、前記陰極と前記陽極とを隔離する隔壁と、前記電極で発生したガスを含む電解液を排出する吐出口とを備え、前記陽極又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域において、前記吐出口を複数個有する、外部ヘッダー型複極式エレメントである。
方法の好適な条件を以下に記載する。
アルカリ塩の濃度としては、20質量%〜50質量%が好ましく、25質量%〜40質量%がより好ましい。
本実施形態では、イオン導電率、動粘度、冷温化での凍結の観点から、25質量%〜40質量%のKOH水溶液が特に好ましい。
上記温度範囲とすれば、高い電解効率を維持しながら、ガスケット7、隔膜4等の電解装置70の部材が熱により劣化することを効果的に抑制することができる。
電解液の温度は、85℃〜125℃であることがさらに好ましく、90℃〜115℃であることが特に好ましい。
特に、変動電源を使用する場合には、電流密度の上限を上記範囲にすることが好ましい。
本実施形態の複極式電解槽は、電解液の流れが停止した後に、ホース内にガス層が形成される機構を備えることが好ましい。上記機構としては、例えば、気液分離タンク液面を吐出口よりも低い位置に有する構造、吐出口と電解液集液管との間のホースが、鉛直方向上向きから鉛直方向下向きに変わる点を有する構造、鉛直方向下向きから鉛直方向上向きに変わる点を有する構造、電解液の流れの停止と連動してホースを閉じる弁が設けられた構造等が挙げられる。
上記ホースは絶縁性の材料からなることが重要であり、上記ホースが1MΩ・cm以上の電気抵抗率を有することがより好ましい。電気抵抗率は、絶縁抵抗計により測定することができ、既存のMΩテスターを使用することができる。
さらに、上記ホースは、外部からホース内部を視認可能なホースであることが好ましい。視認可能なホースとしては、光透過性を有するホース等が挙げられる。ホース内の気液状況が確認できることで、電解中の運転状態が安定状態にあるか確認することが可能となる。例えば、電解液の循環量が多すぎる場合、気液分離性が悪化し、気体用ホース側に電解液が流出することが確認できる。また、電解電密が大きすぎる場合は、気液分離性が悪化し、液体用ホース側に発生ガスが定常、または間欠的に発生するため、これも確認することが可能となる。そのため、透明性はできるだけ高い方が好ましい。
このようなホースの材質は、アルカリ、高温、および耐圧力性があるものであり、例えば、フッ素系が好ましく、PTFEやPFA製のホースなどがある。
上記光透過性としては、JIS K7361−1に準拠して測定した光透過率から判定することができる。視認可能な上記ホースは、上記光透過率が10%以上であるホースであることが好ましい。
複極式エレメントとして、陽極と陰極とを区画する隔壁と、隔壁を取り囲む外枠3と、を備えたものを用いた。隔壁及び複極式エレメントのフレーム等の電解液に接液する部材の材料は、全てニッケルとした。
陽極としては、あらかじめブラスト処理を施したニッケルエキスパンド基材を用い、酸化ニッケルの造粒物をプラズマ溶射法によって導電性基材の両面に吹き付けて製作した。この電極を、切断加工により、寸法を、縦1155mm×横2354mmに調整した陽極とした。
導電性基材として、直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材上に白金を担持したものを用いた。
陰極のサイズは、平面視でのサイズは1155mm×2354mmとした。
複極式エレメントを隔膜を保持したガスケットを介してスタックさせ、複極式電解槽を組み立てることによって、陰極サンプルと陽極サンプルとを隔膜の両側から押し付けて接触させ、ゼロギャップ構造を形成した。
陽極側では陽極サンプルのみを用い、陰極側は「陰極−導電性弾性体−集電体」の組み合わせからなる陰極サンプルを用いた。
陽極サンプルとしては、前述のものを用いた。集電体として、あらかじめブラスト処理を施したニッケルエキスパンド基材を用いた。基材の厚みは1mmであり、開口率は54%であった。導電性弾性体として、線径0.15mmのニッケル製ワイヤー4本を用いて織物として更に波高さ5mmになるように波付け加工したものを使用した。厚みは5mmであり、50%圧縮変形時の反発力は150g/cm2、目開きは5メッシュ程度であった。導電性弾性体を集電体上にスポット溶接して固定した。陰極サンプルとしては、前述のものを用いた。
酸化ジルコニウム(商品名「EP酸化ジルコニウム」、第一稀元素化学工業社製)、N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業社製)、ポリスルホン(「ユーデル」(登録商標)、ソルベイアドバンストポリマーズ社製)、及びポリビニルピロリドン(重量平均分子量(Mw)900000、和光純薬工業社製)を用いて、以下の成分組成の塗工液を得た。
ポリスルホン:15質量部
ポリビニルピロリドン:6質量部
N−メチル−2−ピロリドン:70質量部
酸化ジルコニウム:45質量部
上記塗工液を、基材であるポリフェニレンサルファイドメッシュ(くればぁ社製、膜厚280μm、目開き358μm、繊維径150μm)の両表面に対して塗工した。塗工後直ちに、塗工液を塗工した基材を蒸気下へ晒し、その後、凝固浴中へ浸漬して、基材表面に塗膜を形成させた。その後、純水で塗膜を十分洗浄して多孔膜を得た。隔膜を、切断加工により、縦1172mm×幅2369mmに調整し、隔膜サンプルとした。
複極式エレメントを4個使用し、図1に示すように、一方の端側で、ファストヘッド、絶縁板、陽極ターミナルユニットを配置し、さらに、陽極側ガスケット部分、隔膜、陰極側ガスケット部分、複極式エレメントをこの順に並べたものを4組配置し、さらに、陽極側ガスケット部分、隔膜、電陰極側ガスケット部分を配置し、もう一方の端側で、陰極ターミナルユニット、絶縁板、ルーズヘッドを配列し、その後、これらをファストヘッド及びルーズヘッドの両側からガスケットのシール面圧で2450kN/m2で締め付けることでスタックし、複極式電解槽を組み立てた。
この実施例においては、陰極室及び陽極室が、それぞれ5室ある5対の直列接続構造を有していた。
ガスケットは、厚み4.0mm、幅18mmの内寸1155mm×2354mmの四角形状のもので、内側に平面視で電極室と同じ寸法の開口部を有し、隔膜を挿入することで保持するためのスリット構造を有するものを使用した。
−複極式エレメント−
陽極室、陰極室のリブ高さがそれぞれ7mmであり、複極式エレメントの厚みが21mmとなる複極式エレメントを用いた。
外部ヘッダー型の複極式エレメントを採用した。
図3、4に示すように、この実施例の複極式電解槽50では、電解槽50の筐体の外方に、電解液を配液及び集液するための導管20(陽極用配液管20Oai、陰極用配液管20Oci、陽極用集液管20Oao、陰極用集液管20Oco)を設けた。更に、この電解槽50では、これらの配液管20i(入側導管)から電極室5に電解液を通過させる入側ヘッダー10iとしてのホース(陽極入口ヘッダー10Oai、陰極入口ヘッダー10Oci)を外部から取りつけ、電極室5から集液管20o(出側導管)に電解液及び/又はガスを通過させる出側ヘッダー10o(陽極出口ヘッダー10Oao、10Oago、陰極出口ヘッダー10Oco、10Ocgo)を、外部から取り付けた。出側ヘッダーのうち、鉛直方向に高い位置の吐出口に接続されるヘッダー10Oago、10Ocgoと、鉛直方向に低い位置の吐出口に接続されるヘッダー10Oao、10Ocoとを設けた。
ここで、図3、4に示すように、入口ヘッダー(陽極入口ヘッダー10Oai、陰極入口ヘッダー10Oci)は複極式エレメント60の鉛直方向下端側から外方に、出口ヘッダー(陽極出口ヘッダー10Oao、10Oago、陰極出口ヘッダー10Oco、10cgo)は、複極式エレメント60の隔壁1の側方から外方に延びるように、配置した。また、図3、4に示すように、導管20(陽極用配液管20Oai、陰極用配液管20Oci、陽極用集液管20Oao、陰極用集液管20Oco)のいずれもが、複極式エレメント60の隔壁1に垂直な方向に延びるように、配置した。
また、下方に位置する電解液出口(吐出口)5co、5aoの傾きθ2は−45°に設置され、電解液出側ヘッダー10Oao、10Ocoの傾きθ4は、−45°に接続されている。一方、鉛直方向上方に位置する電解液出口(吐出口)5cgo、5agoの傾きθ1は45°に設置され、電解ガス出側ヘッダー10Oago、10Ocgoの傾きθ3は、45°に接続されている。
図3、4に示すように、鉛直方向上方に位置する吐出口の吐出口を設ける位置は、吐出口の鉛直方向上端が複極式エレメントの鉛直方向上端から28mmの位置に、鉛直方向下方に位置する吐出口の吐出口を設ける位置は、吐出口の鉛直方向上端が複極式エレメントの鉛直方向上端から135mmの位置になるように設けた。
さらに、電解液入側導管20i(陽極用配液管20Oai、陰極用配液管20Oci)には、入側電解液の温度を測定する入口側温度計81を取り付け、電解液出側導管20o(陽極用集液管20Oao、陰極用集液管20Oco)には、出側電解液の温度を測定する出口側温度計82をそれぞれ取り付けた(図8)。
陰極入口ヘッダー10Ociを介して陰極室5cへ、陰極室5cから陰極出口ヘッダー10Oco、10cgoを介して、電解液を流した。また、陽極入口ヘッダー10Oaiを介して陽極室5aへ、陽極室5aから陽極出口ヘッダー10Oao、10Oagoを介して、電解液を流した。
図3、4に示すように、入口ホースは側面視で長方形の外枠3の下辺の一方端側に、出口ホースは側面視で長方形の外枠3の下辺の他方端側に繋がる側辺の上側に、それぞれ接続されている。ここでは、入口ホースと出口ホースとを、側面視で長方形の電極室5において電極室5の中央部を挟んで向かい合うように、設けた。電解液は、鉛直方向に対して傾斜しながら下方から上方へ流れ、電極面に沿って上昇した(図4)。
この実施例の複極式電解槽50では、陽極室5aや陰極室5cの入口ホースから、陽極室5aや陰極室5cに、電解液が流入し、陽極室5aや陰極室5cの出口ホースから、電解液と生成ガスとが、電解槽50外へ流出する構造とした。
尚、上記ホースは全て、PFA製で半透明(白色光の透過率が約50%)であり、ホース内の気液状況を目視することができる。また、ホースの電気抵抗率は1MΩ・cm以上である。
陰極を複極式フレームの陰極面に取付け、陽極を複極式エレメントのフレームの陽極面に取付けたものを、複極式エレメントとした。また、陰極を陰極ターミナルエレメントのフレームに取付けたものを、陰極ターミナルエレメントとした。陽極を陽極ターミナルエレメントのフレームに取付けたものを、陽極ターミナルエレメントとした。
外枠の側方に設けられた、ヘッダー(陽極入口ヘッダー、陽極出口ヘッダー、陰極入口ヘッダー、陰極出口ヘッダー)において、吐出口内径はφ6mmとし、吐出口断面積は、2.83×10−5m2に調整した。
鉛直方向下側の吐出口の鉛直方向中心と、電解液集液管の鉛直方向断面の鉛直方向中心との距離hは600mmとした。
また、複極式エレメントの厚みTは、21mmに調整した。
送液ポンプにより、陽極室、酸素分離タンク(陽極用気液分離タンク)、陽極室の循環を、また、陰極室、水素分離タンク(陰極用気液分離タンク)、陰極室の循環を行った。
電解液の温度は入側温度計81の温度を80℃に調整した。
気液分離タンクの液量は、それぞれ設計容積の50%程度とした。
電流密度10kA/m2で8時間連続通電し、水電解を行った。電解槽のセル電圧Vを測定し、電解セルの相加平均値(V)を計算により求めた。
10kA/m2の高電密においても、陽極、陰極共に、気液分離性が良好で、鉛直方向上側に設けた吐出ヘッダーからガスが、鉛直方向下側に設けた吐出ヘッダーから電解液が排出された。また、出口側温度計82により測定される出側電解液の温度は90℃であり、隔膜の耐熱温度以下であった。
陽極室、陰極室のリブ高さがそれぞれ14mmであり、複極式エレメントの厚みが35mmとなる複極式エレメントを用いた以外は、実施例1と同様に作製した。セル内線速は0.007m/secになるように周波数を調整した。
10kA/m2の高電密においても、陽極、陰極共に、気液分離性が良好で、鉛直方向上側に設けた吐出ヘッダーからガスが、鉛直方向下側に設けた吐出ヘッダーから電解液が排出された。
出側電解液の温度は90℃であり、隔膜の耐熱温度以下であった。
鉛直方向下側の吐出口の鉛直方向中心と、電解液集液管の鉛直方向断面の鉛直方向中心との距離hを300mmとした以外は実施例1と同様に作製した。セル内線速が0.015m/secになるように周波数を調整した。
10kA/m2の高電密においても、陽極、陰極共に、気液分離性が良好で、鉛直方向上側に設けた吐出ヘッダーからガスが、鉛直方向下側に設けた吐出ヘッダーから電解液が吐出された。
出側電解液の温度は90℃であり、隔膜の耐熱温度以下であった。
鉛直方向下側の吐出口の鉛直方向中心と、電解液集液管の鉛直方向断面の鉛直方向中心との距離hを1200mmとした以外は実施例1と同様に作製した。セル内線速が0.015m/secになるように周波数を調整した。
10kA/m2の高電密においても、陽極、陰極共に、気液分離性が良好で、鉛直方向上側に設けた吐出ヘッダーからガスが、鉛直方向下側に設けた吐出ヘッダーから電解液が吐出された。
出側電解液の温度は90℃であり、隔膜の耐熱温度以下であった。
外枠の側方に設けられた、ヘッダー(陽極入口ヘッダー、陽極出口ヘッダー、陰極入口ヘッダー、陰極出口ヘッダー)において、吐出口内径はφ4mmとし、吐出口断面積は、1.26×10−5m2に調整した以外は実施例1と同様に作製した。セル内線速が0.015m/secになるように周波数を調整した。
10kA/m2の高電密においても、陽極、陰極共に、気液分離性が良好で、鉛直方向上側に設けた吐出ヘッダーからガスが、鉛直方向下側に設けた吐出ヘッダーから電解液が吐出された。
出側電解液の温度は90℃であり、隔膜の耐熱温度以下であった。
鉛直方向下側の吐出口の鉛直方向中心と、電解液集液管の鉛直方向断面の鉛直方向中心との距離hを100mmとした以外は実施例1と同様に作製した。セル内線速が0.015m/secになるように周波数を調整した。
10kA/m2の高電密においても、陽極、陰極共に、気液分離性が良好であった。鉛直方向上側に設けた吐出ヘッダーからガスが、鉛直方向下側に設けた吐出ヘッダーからごく少量のガスが混ざったが、主に電解液が吐出された。脈動は見られなかった。
出側電解液の温度は90℃であり、隔膜の耐熱温度以下であった。
電解液出側吐出口5co、5aoの傾きθ2が−90°、電解液出側ヘッダー10Oao、10Ocoの傾きθ4が0°の角度で接続され、電解ガス出側吐出口5cgo、5agoの傾きθ1が90°、電解ガス出側ヘッダー10Oago、10Ocgoの傾きθ3が0°の角度に接続されている以外は実施例2と同様に作製した。セル内線速が0.007m/secになるように周波数を調整した。
実施例2と比較して、わずかに気液分離性が悪化し、上側に設けたガス吐出口に電解液が流れこんだが電解液流れに脈動が発生することは無かった。
鉛直方向上側の吐出口は設けなかったこと以外は実施例1と同様に作製した。セル内線速が0.015m/secになるように周波数を調整した。
吐出口における気液分離性が悪化し、出口側ホース内に、電解液と電解ガスの混相流による脈動が激しく発生した。
鉛直方向上側の吐出口は設けなかった以外は実施例2と同様に作製した。セル内線速が0.007m/secになるように周波数を調整した。
2 電極
2a 陽極
2c 陰極
2e 導電性弾性体
2r 集電体
3 外枠
4 隔膜
5 電極室
5a 陽極室
5c 陰極室
5i 電解液入口
5o 吐出口(電解液出口)
5ai 陽極電解液入口
5ao 陽極電解液出口
5ago 陽極電解液入口
5ci 陰極電解液入口
5co 陰極電解液出口
5cgo 陰極電解液出口
6 整流板
6a 陽極整流板(陽極リブ)
6c 陰極整流板(陰極リブ)
7 ガスケット
10 ヘッダー
10O 外部ヘッダー
10Oai 陽極入口ヘッダー(陽極入口側ホース)
10Oao 陽極出口ヘッダー(陽極出口側ホース)
10Oago陽極出口ヘッダー(陽極出口側ホース)
10Oci 陰極入口ヘッダー(陰極入口側ホース)
10Oco 陰極出口ヘッダー(陰極出口側ホース)
10Ocgo陰極出口ヘッダー(陰極出口側ホース)
20 導管
20Oai 陽極用配液管
20Oao 陽極用集液管
20Oci 陰極用配液管
20Oco 陰極用集液管
20h 集液管の断面中心
50 複極式電解槽
51g ファストヘッド、ルーズヘッド
51a 陽極ターミナルエレメント
51c 陰極ターミナルエレメント
51r タイロッド
60 複極式エレメント
60a 領域A
60b 領域B
65 電解セル
70 電解装置
71 送液ポンプ
72 気液分離タンク
72h 水素分離タンク
72o 酸素分離タンク
73 水補給器
74 整流器
75 酸素濃度計
76 水素濃度計
77 流量計
78 圧力計
79 熱交換器
80 圧力制御弁
81 入口側温度計
82 出口側温度計
D1 隔壁に沿う所与の方向
Z ゼロギャップ構造
θ1 鉛直方向に最も高い位置の吐出口の傾き
θ2 鉛直方向に最も低い位置の吐出口の傾き
θ3 鉛直方向に最も高い位置の吐出口におけるホースの傾き
θ4 鉛直方向に最も低い位置の吐出口におけるホースの傾き
h 鉛直方向に最も低い位置の吐出口の鉛直方向中心と、電解液集液管の鉛直方向断面の鉛直方向中心との距離
Claims (15)
- 陽極と陰極とを含む電極と、前記陰極と前記陽極とを隔離する隔壁と、前記電極で発生したガスを含む電解液を排出する吐出口とを備え、
前記陽極又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域において、前記吐出口を複数個有する、外部ヘッダー型複極式エレメントを含み、
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記電解液集液管が、前記吐出口より鉛直方向下側に設けられ、
前記領域において、複数の前記吐出口が、鉛直方向に異なる位置に設けられ、
前記吐出口の傾きが、鉛直方向に最も高い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に0°以上90°以下であり、鉛直方向に最も低い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に−90°以上−10°以下である、
ことを特徴とする、外部ヘッダー型複極式電解槽。 - 陽極と陰極とを含む電極と、前記陰極と前記陽極とを隔離する隔壁と、前記電極で発生したガスを含む電解液を排出する吐出口とを備え、
前記陽極又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域において、前記吐出口を複数個有する、アルカリ水電解用外部ヘッダー型複極式エレメントを含み、
前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記電解液集液管が、前記吐出口より鉛直方向下側に設けられ、
前記領域において、複数の前記吐出口が、鉛直方向に異なる位置に設けられ、
前記吐出口の傾きが、鉛直方向に最も高い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に0°以上90°以下であり、鉛直方向に最も低い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に−90°以上−10°以下である、
ことを特徴とする、外部ヘッダー型複極式電解槽。 - 前記領域において、複数の前記吐出口が、鉛直方向に異なる位置に設けられている、請求項1又は2に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
- 前記陽極と前記隔壁とで挟まれた領域A、及び前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域B、のそれぞれにおいて、前記吐出口が2個設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
- 前記陽極と前記隔壁とで挟まれた領域A、及び/又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域Bにおいて、複数個の前記吐出口が鉛直方向に異なる位置に設けられ、鉛直方向に最も高い位置の吐出口が、鉛直方向に最も低い位置の吐出口から排出するガス量よりも多くのガスを排出する吐出口である、請求項1から4のいずれか一項に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
- 前記領域において、前記吐出口の数が2個であり、
前記ガスが鉛直方向に高い位置の吐出口から排出される、請求項3に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。 - 前記複極式エレメントの厚みが15mm以上40mm以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
- 前記吐出口の断面積が、1.25×10−5m2以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
- 前記吐出口の内径D(mm)と前記複極式エレメントの厚みT(mm)とが、0.1≦D/T≦0.9の関係を満たす、請求項1から8のいずれか一項に記載の外部ヘッダー型複極式電解槽。
- 前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記吐出口における前記ホースの傾きが、鉛直方向に最も高い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に0°以上90°未満であり、鉛直方向に最も低い位置の吐出口では、水平方向に対して鉛直方向に−90°超−10°以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の複極式電解槽。 - 前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
鉛直方向に最も高い位置の吐出口から延びるホースが前記電解液集液管の断面中心より鉛直方向上側で前記電解液集液管に接続され、
鉛直方向に最も低い位置の吐出口から延びるホースが前記電解液集液管の断面中心より鉛直方向下側で前記電解液集液管に接続される、請求項1から10のいずれか一項に記載の複極式電解槽。 - 前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記ホースが、前記電解液の流れが停止した後に、前記ホース内にガス層が形成される機構を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の複極式電解槽。 - 前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記ホースの電気抵抗率が1MΩ・cm以上である、請求項1から12のいずれか一項に記載の複極式電解槽。 - 前記吐出口と電解液集液管とがホースを通じて繋がっており、
前記ホースが、外部からホース内部を視認可能なホースである、請求項1から13のいずれか一項に記載の複極式電解槽。 - アルカリを含有する水を、電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法において、
前記電解槽は少なくとも複極式エレメントを有し、
前記複極式エレメントは、陽極と陰極とを含む電極と、前記陰極と前記陽極とを隔離する隔壁と、前記電極で発生したガスを含む電解液を排出する吐出口とを備え、前記陽極又は前記陰極と前記隔壁とで挟まれた領域において、前記吐出口を複数個有する、外部ヘッダー型複極式エレメントであり、
前記電解槽が、請求項1〜14のいずれか一項に記載の複極式電解槽である、
ことを特徴とする水素製造方法。
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