JP2016094597A - ポリマーフィルム、積層フィルム、ポリマーフィルムの製造方法、偏光板および画像表示装置 - Google Patents

ポリマーフィルム、積層フィルム、ポリマーフィルムの製造方法、偏光板および画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】干渉ムラの発生および裁断時の割れの発生が抑制され、かつ剥離力に抗することのできる傾斜フィルムを提供すること。【解決手段】重合性化合物の重合体と、有機溶剤可溶性樹脂と、を少なくとも含むポリマーフィルムであって、第一の表面側の表層部における重合体の含有率が70質量%以上かつ有機溶剤可溶性樹脂の含有率が1質量%超であり、第一の表面の反対側の表面である第二の表面側の表層部における重合体の含有率が50質量%以下かつ有機溶剤可溶性樹脂の含有率が35質量%以上であり、第一の表面側の表層部と第二の表面側の表層部との間の領域にも有機溶剤可溶性樹脂が存在し、かつ、第一の表面側の表層部から第二の表面側の表層部に向かって、重合体の含有率が連続的に変化するポリマーフィルム。積層フィルム、ポリマーフィルムの製造方法、偏光板および画像表示装置。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリマーフィルム、積層フィルム、ポリマーフィルムの製造方法、偏光板および画像表示装置に関する。
液晶表示装置(以下、LCD(Liquid Crystal Display)とも言う)などのフラットパネルディスプレイには、通常、ポリマーを構成成分として含むフィルムが一層以上含まれている。以下、ポリマーを構成成分として含むフィルム(積層体を構成する層として存在する態様も含む。)を、ポリマーフィルムと呼ぶ。ポリマーフィルムは、例えば、LCDにおける保護フィルム、反射防止フィルムを構成する層等として、フラットパネルディスプレイに組み込まれる。また、フラットパネルディスプレイ以外にも、表面の保護や反射防止等を要する各種分野において、ポリマーフィルムは広く用いられている。
近年、かかるポリマーポリマーフィルムの厚み方向に組成分布をもたせることについて検討が行われている。一般に、このように厚み方向に組成分布を持つことを傾斜といい、傾斜を有するフィルムは、傾斜フィルム(または傾斜膜、傾斜層)と呼ばれる。このような傾斜技術は、例えば、フィルムの一方の表面と他方の表面とで物性を変えるべき場合やフィルムの表層部と内部とで物性を変えるべき場合等に有用である。
上記傾斜技術に関し、特許文献1には、傾斜膜を形成するための組成物が開示されている。また、特許文献2には、基材上にハードコート層を形成し、このハードコート層上に高屈折率傾斜ハードコート層を形成したフィルムが、その上に低屈折率層を積層し反射防止用光学フィルムを得るためのフィルムとして、開示されている。
特開2014−34596号公報 特開2009−265658号公報
傾斜技術により厚み方向で組成分布をもたせたポリマーフィルムでは、層内各部での組成の違いに起因した屈折率分布によって、干渉ムラが発生することがある。干渉ムラとは、フィルムを観察した際にまだらに見える虹色のムラである。干渉ムラが発生したポリマーフィルムを、例えばLCDに組み込むと、LCDの表示面の視認性を低下させてしまう。また、LCD以外の用途においても、ポリマーフィルムの存在が干渉ムラにより容易に認識されてしまうことは、このポリマーフィルムを組み込んだ物品の外観を変化させたり損なう原因となる。
また、ポリマーフィルムは、多くの場合、用途に応じたサイズに裁断して用いられる。しかるにポリマーフィルムの脆性が不十分であると、裁断後のフィルムに割れ(クラック)が発生してしまう。このような割れが発生したポリマーフィルムは、例えば、割れに起因して透明性に劣るものとなってしまう場合がある。また、割れが重度であると、フィルム形状を保つことができず破断してしまう。
更に、ポリマーフィルムの使用前または加工前には、ポリマーフィルム表面に粘着テープを圧着し次いで引き剥がすことにより、表面に付着した塵や埃を除去することが行われることがある。ここで粘着テープを引き剥がす際に加わる力(剥離力)にポリマーフィルムが抗することができないと、粘着テープにポリマーフィルムの一部が付着して粘着テープを引き剥がした後のポリマーフィルム表面に面荒れが生じたり、ポリマーフィルムが厚み方向で分離(層間剥離)してしまう現象が発生することが懸念される。また、ポリマーフィルムをフィルムそのものとして出荷する場合や、積層フィルムとして、または物品(例えば後述する偏光板)に組み込んだ状態で出荷する場合には、塵や埃が付着することを防ぐために、フィルムや物品の表面をラミネートフィルム等の保護フィルムで保護することが多い。かかる保護フィルムは、フィルムや物品を使用する際に通常剥離される。この剥離時に、保護フィルムを貼り合せて出荷されたフィルムや物品には、剥離力が加わることになる。ここでポリマーフィルムが剥離力に抗することができないと(耐剥離力に劣るものであると)、ポリマーフィルムの層間剥離によってフィルムや物品に部分的な剥がれが生じたり、重度の場合にはフィルムや物品が破壊されてしまうことが懸念される。
したがって、傾斜技術により作製されるポリマーフィルム(傾斜フィルム)には、以下の3点が求められる。
・干渉ムラの発生が抑制されていること。
・裁断時の割れの発生が抑制されていること。
・剥離力に抗することができること(耐剥離力に優れること)。
しかるに本発明者らの検討によれば、特許文献1、2に記載の傾斜技術は、これらの点で、更に改善が求められるものであった。
そこで本発明の目的は、干渉ムラの発生および裁断時の割れの発生が抑制され、かつ剥離力に抗することのできる傾斜フィルムを提供することにある。
本発明の一態様は、
重合性化合物の重合体と、有機溶剤可溶性樹脂と、を少なくとも含むポリマーフィルムであって、
第一の表面側の表層部における重合体の含有率が70質量%以上かつ有機溶剤可溶性樹脂の含有率が1質量%超であり、
第一の表面の反対側の表面である第二の表面側の表層部における重合体の含有率が50質量%以下かつ有機溶剤可溶性樹脂の含有率が35質量%以上であり、
第一の表面側の表層部と第二の表面側の表層部との間の領域にも有機溶剤可溶性樹脂が存在し、かつ、
第一の表面側の表層部から第二の表面側の表層部に向かって、重合体の含有率が連続的に変化するポリマーフィルム、
に関する。上記ポリマーフィルムにおいて干渉ムラの発生および裁断時の割れの発生抑制することができ、しかも上記ポリマーフィルムが剥離力に抗することができる理由についての本発明者らによる推察は、後述する。
本発明において「有機溶剤可溶性」とは、液温25℃の有機溶剤に1質量%以上溶解することを言うものとする。ここでいう有機溶剤とは、例えば、炭素数1以上8以下の有機化合物からなる群から選ばれる一種または複数を任意の割合で混合した組成物で、25℃1気圧において液体であるものを言う。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル類、およびこれらを任意の割合で混合した組成物が挙げられる。なお、本発明においてポリマーフィルムの製膜のために使用可能な溶剤は、上記のものに限定されるものではない。
上記ポリマーフィルムは、上記の有機溶剤可溶性を示す樹脂(有機溶剤可溶性樹脂)を含む。なお以下において、特記しない限り、樹脂とは、有機溶剤可溶性樹脂をいうものとする。一方、上記ポリマーフィルムに有機溶剤可溶性樹脂とともに含まれる前述の重合体は、一般に、重合体としては上記の有機溶剤可溶性を示さないことが多い。他方、重合体を得るために用いる重合性化合物は、一般に、有機溶剤可溶性を示すことが多い。なお先に記載した通り、ポリマーフィルムとは、ポリマーを構成成分として含むフィルムを言う。かかるポリマーには、上記の有機溶剤可溶性樹脂および重合体が包含される。
また、上記ポリマーフィルムの「表層部」とは、表面からフィルム厚さ方向0.50μmまでの領域をいうものとする。本発明において、かかる領域(表層部)および表層部よりフィルム内部に位置する領域の組成(上記重合体、有機溶剤可溶性樹脂等の含有率)は、ラマン(Raman)分光法による組成分析によって求めるものとする。表層部を上記のように規定する理由は、ラマン分光法による測定の空間分解能を考慮したものである。なおラマン分光法は、フィルム試料の組成を精度よく分析可能な分析法の1つである。
ポリマーフィルムの各領域の組成は、具体的には、ラマン分光法により、以下のように求めるものとする。
ポリマーフィルムを厚さ方向に切断し、切断面において、ポリマーフィルムの表面から厚さ方向0.50μmまでの領域(一方の表面側の表層部。具体的には、表面からの距離0.25μmのところにラマン分光のための励起光の光強度プロファイルのピークを当てる(ビーム径は0.50μmφ)。)を測定開始箇所とし、以降、0.50μm間隔ごとに測定箇所をとって、各測定箇所においてラマン分光法による組成分析を行う。表層部での測定と同様に、各測定箇所(それぞれ厚み0.50μmの領域)では測定箇所の中央にラマン分光のための励起光の光強度プロファイルのピークを当てる(ビーム径は0.50μmφ)。なお組成分析の起点とした一方の表面側の表層部から他方の表面まで0.50μm間隔ごとに測定していくと、最終から2番目の測定箇所と測定の終点となる測定箇所(他方の表面上)との間隔が0.50μmを下回る場合もある。この場合には、ポリマーフィルムの上記表面とは反対側の表面から厚さ方向0.50μmまでの領域(他方の表面の表層部)について、ラマン分光法による組成分析を行う。こうして、ポリマーフィルムの一方の表面側の表層部、他方の表面側の表層部、およびこれら表層部の間に位置する領域の組成分析を行うことができる。例えば面内方向に1〜10cm程度の一定間隔離れた複数の測定位置において、上記のように厚さ方向において0.50μm間隔ごとに測定箇所をとってもよい。
ラマン分光法による組成分析の詳細については、後述の実施例において詳述する。また、構成成分が未知のポリマーフィルムについては、溶媒抽出等の公知の分離方法によりポリマーフィルムから構成成分を分離し、分離された構成成分を、公知の同定方法により同定することができる。こうして同定された構成成分について、ラマン分光法による組成分析を行うことにより、各層の組成を決定することができる。同定方法としては、NMR法(核磁気共鳴分光法)、IR法(赤外分光法)、MS法(質量分析法)等を挙げることができる。
なお、上記組成分析において「検出されない」とは、まったく含まれない場合と、ラマン分光法による検出限界を下回る量で微量含まれる場合と、を包含するものとする。ラマン分光法による検出限界は、例えば1質量%以下である。このように検出されない場合、含有率は0%と表記する。
また、組成分析を行う切断面は、少なくとも1面であり、任意の位置で切断した2箇所以上の複数の切断面であってもよい。一例として、1〜10cm程度の一定間隔離れた位置において切断面を得ることができる。複数の切断面の数は、例えば2〜20程度である。また、複数の切断面において組成分析を行う場合には、複数の切断面における分析結果の算術平均値により、各層を規定することとする。
また、上記ポリマーフィルムにおいて、第一の表面側の表層部と第二の表面側の表層部との間の領域にも有機溶剤可溶性樹脂が存在するとは、上記のラマン分光法による組成分析において、第一の表層部および第二の表層部以外の全測定箇所において、有機溶剤可溶性樹脂が1質量%超の含有率で検出されることをいう。
また、上記の重合体の濃度が「連続的に変化する」とは、先に記載したラマン分光法による組成分析により得られる各測定箇所における含有率(C(x)、単位:質量%)と、フィルム表面からの厚み方向に向かう距離(x、単位:μm)との関係において、その二階微分係数の絶対値F(x)が異常に大きな値を持たない状態をいう。二階微分係数は下記式で表すものとする。下記式において、Δxは厚み方向の測定間隔(即ち、上記の通り0.50μm)を表す。求められる値の単位は、%/μmである。
F(x)=|{(C(x+2Δx))−2C(x+Δx)+C(x)}/Δx
ここで異常に大きな値とは、Δx=0.50μmで測定し、上記の式で演算したときに、F(x)が10.0%/μm以上の値を持つ状態をいう。即ち、各測定箇所について求められるF(x)の値の最大値が、10.0%/μm未満であれば、「連続的に変化する」と判定し、最大値が10.0%/μm以上であれば不連続な変化と判定する。ただしこのときの演算範囲は、全測定箇所のうち、第一の表面に最も近い測定箇 所(即ち第一の表面側の表層部)と、裏面(第二の表面)に最も近い測定箇所よりも2箇所、第一の表面側にある測定箇所までとする。ポリマーフィルムの総厚みが0.50μmで割り切れる値の場合には、上記の「裏面(第二の表面)に最も近い測定箇所」とは、第二の表面側の表層部となる。したがって、「裏面(第二の表面)に最も近い測定箇所よりも2箇所、第一の表面側の測定箇所」とは、第二の表面側の表層部の2つ隣の測定箇所となる。一方、ポリマーフィルムの総厚みが0.50μmで割り切れない値の場合には、「裏面(第二の表面)に最も近い測定箇所」とは、第一の表面側の表層部から第二の表面側へ向かって 0.50μm間隔ごとに測定箇所を取り、0.50μmの測定領域を取ることができる最も裏面側(第二の表面側)の測定箇所である。そして、この測定箇所の2つ隣の測定箇所が、「裏面(第二の表面)に最も近い測定箇所よりも2箇所、第一の表面側の測定箇所」となる。例えば、一例として、ポリマーフィルムの総厚み が60.30μmである場合、「裏面(第二の表面)に最も近い測定箇所」とは、ラマン分光のための励起光の光強度プロファイルのピークが、第一の表面から59.75μmの距離にある位置にあたる測定箇所である。この場合、「裏面(第二の表面)に最も近い測定箇所よりも2箇所、第一の表面側の測定箇所」と は、第一の表面から58.75μmの距離にある位置に、ラマン分光のための励起光の光強度プロファイルのピークがあたる測定箇所である。
一態様では、上記ポリマーフィルムにおいて、第一の表面側で測定される屈折率は、1.55以上である。なお本発明における屈折率とは、波長550nmにおける屈折率であり、波長550nmにおける反射率から、下記のフレネルの式を満たすように未知のパラメータnをフィッティングで求めることで得られる屈折率n(≧1)をいうものとする。ここで、フィッティングは、二次方程式を解く、または最小二乗法により行うことができる。本発明では、最小二乗法を特に好ましく用いることができる。
(フレネルの式)
反射率R=[(1−n)/(1+n)]
一態様では、上記重合性化合物は、屈折率1.60以上の重合性化合物を含む。重合性化合物の屈折率とは、以下の方法で求められる波長550nmにおける屈折率における屈折率をいうものとする。
重合性化合物および光重合開始剤(添加量は重合性化合物100質量部に対して1質量部)からなる膜厚約0.10μmの塗膜をガラス基板上に形成し、紫外線照射により光硬化した後に、この塗膜の反射率スペクトルの測定値に対して有効フレネル係数法による計算シミュレーションの結果が整合するように最小二乗法により波長範囲400nm〜700nmにおいてフィッティングを行う。後述の実施例では、重合性化合物の屈折率を求めるために、大塚電子株式会社製の反射分光膜厚計FE3000を使用して反射率スペクトルを測定した後、上記反射分光膜厚計付属の解析ツールから最小二乗法を選択して屈折率と膜厚の両未知パラメータに対してフィッティングを行った。このときガラス基板の屈折率は1.5に設定し、フィッティングを行う波長範囲を400nm〜700nmに設定した。
一態様では、上記重合性化合物は、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格およびアントラセン骨格からなる群から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する重合性化合物を含む。
一態様では、上記有機溶剤可溶性樹脂は、セルロースアシレートを含む。
一態様では、上記ポリマーフィルムにおいて、第一の表面側の表層部における上記重合体の含有率は90質量%以上である。
一態様では、上記ポリマーフィルムにおいて、第二の表面側の表層部における上記重合体の含有率は20質量%未満である。
本発明の更なる態様は、
上記ポリマーフィルムと、このポリマーフィルムの第一の表面と隣接する隣接層と、を有し、上記隣接層は、上記ポリマーフィルムの第一の表面側で測定される屈折率より屈折率の低い層である、積層フィルム、
に関する。
本発明の更なる態様は、
上記ポリマーフィルムの製造方法であって、
重合性化合物、有機溶剤可溶性樹脂、および有機溶剤を含む第一の組成物を支持体上に流延してウェブを形成すること、ならびに、
形成したウェブに上記重合性化合物の重合処理を施すこと、を含む、上記ポリマーフィルムの製造方法、
に関する。
一態様では、上記重合処理は、少なくとも光照射により行われる。
一態様では、上記流延は、第一の組成物と他の組成物とを共流延することにより行われる。
一態様では、上記他の組成物は、第一の組成物より上記重合性化合物の濃度の低い組成物である。
本発明の更なる態様は、
上記ポリマーフィルムおよび上記積層フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1つのフィルムと、偏光子と、を含む偏光板、
に関する。
本発明の更なる態様は、
上記ポリマーフィルムおよび上記積層フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1つのフィルムを含む画像表示装置、
に関する。
本発明の更なる態様は、
上記偏光板を含む画像表示装置、
に関する。
本発明によれば、フィルム内に組成分布(傾斜)を有するとともに、裁断時の割れの発生および干渉ムラの発生が抑制され、かつ粘着フィルムの圧着・引き剥がし等において加わる剥離力に抗することのできるポリマーフィルム、およびこのポリマーフィルムの製造方法を提供することができる。
更に本発明によれば、上記ポリマーフィルムを含む積層フィルム、偏光板、および画像表示装置を提供することもできる。
共流延可能な流延ダイを含む溶液流延製膜装置の一部拡大図である。 実施例1で作製されたポリマーフィルム内の重合体含有率の変化を示すグラフである。
以下の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明および本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[ポリマーフィルム]
本発明の一態様にかかるポリマーフィルム(以下、「フィルム」とも記載する。)は、重合性化合物の重合体(以下、「重合体」とも記載する。)と、有機溶剤可溶性樹脂と、を少なくとも含むポリマーフィルムであって、第一の表面側の表層部における上記重合体の含有率が70質量%以上かつ上記有機溶剤可溶性樹脂の含有率が1質量%超であり、第一の表面の反対側の表面である第二の表面側の表層部における上記重合体の含有率が50質量%以下かつ上記有機溶剤可溶性樹脂の含有率が35質量%以上であり、第一の表面側の表層部と第二の表面側の表層部との間の領域にも有機溶剤可溶性樹脂が存在し、かつ、第一の表面側の表層部から第二の表面側の表層部に向かって、上記重合体の含有率が連続的に変化するポリマーフィルムである。
上記ポリマーフィルムでは、干渉ムラの発生および裁断時の割れの発生を抑制することができる。更に、上記ポリマーフィルムは、ポリマーフィルム上に貼合された粘着フィルムの圧着・引き剥がし等において加わる剥離力に抗することもできる。上記ポリマーフィルムにおいてこれらが可能となる理由を、本発明者らは次のように考えている。
干渉ムラについては、上記ポリマーフィルムにおいて第一の表面側の表層部から第二の表面側の表層部に向かって、上記重合体の含有率が連続的に変化することが、干渉ムラの発生を抑制できる理由と考えられる。
これに対し、特許文献2に開示されている基材上にハードコート層を形成し、このハードコート層上に高屈折率傾斜ハードコート層を形成したフィルムは、特許文献2には、ハードコート層と基材との界面近傍の屈折率が連続的に変化していると記載されている(特許文献2の請求項1参照)。しかるに、先に記載したラマン分光法による組成分析を行うと、界面近傍では重合体の含有率の変化は連続的ではなく、F(x)が10.0%/μm以上の値を持つことが本発明者らの検討により判明した。このことが、特許文献2に記載の上記フィルムにおいて、干渉ムラが発生してしまう理由と本発明者らは考えている。
また、裁断時の割れの発生を抑制できる理由は、上記ポリマーフィルムにおいて、一方の表面側(第二の表面側)の表層部の樹脂(有機溶剤可溶性樹脂)の含有率が35質量%以上であることにあると推察される。フィルム全体が剛直なフィルムは裁断時に割れが発生しやすいのに対し、上記のように一方の表面の表層側に樹脂を存在させることでフィルムに適度な柔軟性を付与できることが、裁断時の割れの発生抑制に寄与していると、本発明者らは考えている。
これに対し、特許文献1に記載の傾斜膜を形成するための組成物は、フッ素含有ケイ素化合物(A)、重合性官能基(b)を有するケイ素化合物(B)、重合性官能基(b)に対して重合性を有する官能基(c)を有するフルオレン化合物(C)を含むが(特許文献1の請求項1参照)、有機溶剤可溶性樹脂を含まない。したがって、かかる組成物から形成されるポリマーフィルムは、フィルム全体に有機溶剤可溶性樹脂を含まないため剛直なフィルムと考えらえる。このことが、特許文献1に記載の組成物から形成されたポリマーフィルムでは、裁断により割れが発生してしまう理由と推察される。
更に、剥離力に抗することができる点には、フィルム全体に有機溶剤可溶性樹脂が存在することが寄与していると本発明者らは推察している。
これに対し、特許文献2に記載の上記フィルムは、フィルム全体に有機溶剤可溶性樹脂が存在するものではない(ハードコート層等には有機溶剤可溶性樹脂が存在しない)。また、例えば特許文献2の実施例で作製された上記フィルムは、後述の比較例で示すように、第一の表層部からは有機溶剤可溶性樹脂は検出されない。このことが、特許文献2に記載の上記フィルムが、剥離力に十分抗することができない理由であると、本発明者らは考えている。
ただし、以上は本発明者らによる推察を含むものであり、本発明を何ら限定するものではない。
以下、上記ポリマーフィルムについて、更に詳細に説明する。
本発明および本明細書において、特記しない限り、ある成分(例えば、重合体、重合性化合物、有機溶剤可溶性樹脂、溶剤等)は、組成物やフィルムに一種のみ含まれていてもよく、二種以上が任意の組み合わせで含まれていてもよい。また、ある成分が組成物やフィルム等において占める割合(含有率、含有量)は、特記しない限り、その成分が二種以上含まれる場合には、二種以上の合計についていうものとする。
<ポリマーフィルムにおける組成分布>
(重合体の分布)
上記ポリマーフィルムは、第一の表面側の表層部における重合体の含有率が70質量%以上であり、第一の表面の反対側の表面である第二の表面側の表層部における重合体の含有率が50質量%以下である。上記ポリマーフィルムのフィルム内に分布を持たせて付与すべき物性は、重合体の種類によって制御することができる。詳しくは、重合体を構成する重合性化合物の種類によって制御することができる。そのような物性は、例えば、屈折率、硬度等であるが、これらに限定されるものではなく、ポリマーフィルムの用途に応じて定めればよい。重合体の一方の表面側の表層部における含有率が70質量%以上であり、他方の表面側の表層部における含有率が50質量%以下であるポリマーフィルムは、フィルムの一方の側と他方の側とで物性を大きく変化させることができるため、傾斜フィルムとして好ましい。したがって本発明の一態様にかかるポリマーフィルムにおいて、第一の表面側の表層部、第二の表面側の表層部のそれぞれにおける重合体の含有率は、上記の通りとする。
第一の表面側の表層部における重合体の含有率は、上記の通り70質量%以上であり、例えば80質量%以上、更には85質量%以上、90質量%以上であってもよい。または更に95質量%以上であってもよい。また、第一の表面側の表層部における重合体の含有率は、例えば99質量%以下であり、98質量%以下であってもよい。
一方、第二の表面側の表層部における重合体の含有率は、上記の通り50質量%以下であり、例えば45質量%以下、更には40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、または20質量%未満であってもよい。また、傾斜フィルムは、一般にフィルム内で大きな組成分布を有することが望ましい。この点からは、第一の表面側の表層部における重合体の含有率と第二の表面側の表層部における重合体の含有率との差は、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることがいっそう好ましい。また、上記の含有率の差は、例えば80質量%以下であるが、80質量%超であってもよい。
第一の表層部における重合体の含有率、第二の表層部における重合体の含有率については、上記の通りである。更に、本発明の一態様にかかるポリマーフィルムでは、第一の表面側の表層部から第二の表面側の表層部に向かって、上記重合体の含有率が連続的に変化する。これにより、干渉ムラの発生を抑制することが可能になる。「連続的に変化する」とは、先に記載した通り、各測定箇所について求められるF(x)の値の最大値が10.0%/μm未満であることをいう。F(x)の値の最大値は10.0%/μm未満であれば干渉ムラの発生を抑制することができ、低いほど連続性が高く干渉ムラ発生の抑制の観点からは好ましく、例えば9.0%以下であることが好ましく、8.5%以下であることがより好ましく、8.0%以下であることが更に好ましい。F(x)の値の最大値は、例えば1.0%/μm以上、2.0%/μm以上、または3.0%/μm以上とすることができるが、これらの値より低くてもよい。
(有機溶剤可溶性樹脂の分布)
上記ポリマーフィルムは、第一の表面の反対側の表面である第二の表面側の表層部における有機溶剤可溶性樹脂の含有率が35質量%以上であり、かつ第一の表層部における有機溶剤可溶性樹脂の含有率が1質量%超であって第一の表面側の表層部と第二の表面側の表層部との間の領域にも有機溶剤可溶性樹脂が存在する。即ち、ラマン分光法による組成分析において、第一の表面側の表層部からも、第一の表層部と第二の表面側の表層部との間の領域の全測定箇所(測定箇所の詳細は前述の通りである。)からも、有機溶剤可溶性樹脂が1質量%超の含有率で検出される。先に記載したように、本発明者らは、第二の表面側の表層部における有機溶剤可溶性樹脂の含有率が35質量%以上であることが、裁断時の割れの発生抑制に寄与していると考えている。また、第二の表面側の表層部における有機溶剤可溶性樹脂含有率が35質量%以上であり、かつ、第一の表面側の表層部からも、第一の表層部と第二の表面側の表層部との間の領域の全測定箇所からも、有機溶剤可溶性樹脂が1質量%超の含有率で検出されること、即ち、フィルム全体に有機溶剤可溶性樹脂が存在することが、上記ポリマーフィルムが剥離力に抗することができる理由であると、本発明者らは推察している。なお有機溶剤可溶性樹脂はフィルム全体に存在すればよく、有機溶剤可溶性樹脂のフィルムの厚み方向における含有率の変化は、先に記載の方法による判定において連続的であっても連続的でなくてもよい。
次に、ポリマーフィルムを構成する各成分の詳細を、順次説明する。
<重合体>
(重合性化合物)
上記ポリマーフィルムに含まれる重合体は、一種または二種以上の重合性化合物の重合体であり、上記重合性化合物を含む組成物に光照射や加熱等の重合処理を施すことにより得ることができる。重合性化合物とは、1分子中に1つ以上の重合性基を含む化合物であり、重合性基を1分子中に1つ含む単官能重合性化合物であっても、重合性基を1分子中に2つ以上含む多官能重合性化合物であってもよい。また、重合性化合物は、モノマーであっても、オリゴマーやプレポリマー等の多量体であってもよい。上記重合性化合物は、一種単独であってもよく、二種以上の任意の割合の組み合わせでもよい。また、二種以上の重合性化合物を用いる場合、二種以上の重合性化合物の組み合わせは、二種以上の単官能重合性化合物の組み合わせ、二種以上の多官能重合性化合物の組み合わせ、一種以上の単官能重合性化合物と一種以上の多官能重合性化合物との組み合わせ、のいずれであってもよい。これら重合性化合物の分子量は、例えば80以上30,000以下であるが、特に限定されるものではない。なお本発明および本明細書において分子量とは、多量体については、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量を言うものとする。具体的な測定条件の一例としては、以下の測定条件を挙げることができる。後述する重量平均分子量は、下記測定条件により測定された値である。
GPC装置:HLC−8120(東ソー製):
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー製、7.8mmID(内径)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
重合性基は、ラジカル重合性基であってもカチオン重合性基であってもよく、ラジカル重合性基が好ましい。重合反応の反応性の観点からは、エチレン性不飽和結合含有基、エポキシ基、オキセタン基、メチロール基等の重合性基を挙げることができ、エチレン性不飽和結合含有基がより好ましい。エチレン性不飽和結合含有基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基を挙げることができ、(メタ)アクリロイルオキシ基および(メタ)アクリロイル基がより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がいっそう好ましい。なお本発明および本明細書において、「(メタ)アクリロイルオキシ基」との記載は、アクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基の少なくともいずれかの意味で用いるものとする。「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」等も同様である。多官能重合性化合物については、化合物に含まれる重合性基の数は1分子中に2つ以上であり、好ましくは2〜20の範囲であり、より好ましくは3〜12の範囲である。
好ましい重合性化合物の一態様としては、エチレン性不飽和結合含有基を1分子中に2つ以上有する多官能性(メタ)アクリレート系化合物を挙げることができる。
ポリマーフィルムの第一の表面側の表層部における重合体の含有率が70質量%以上となるようにするために、重合性化合物は疎水的であることが好ましい。疎水的な重合性化合物は、一般に有機溶剤可溶性樹脂と相溶し難い傾向があり、ポリマーフィルム作製時にウェブの一方の表層部(例えば空気層側の表層部)に局在しやすいためである。これにより一方の(第一の表面側の)表層部に重合体を70質量%以上の含有率で含み、他方の(第二の表面側の)表層部での重合体の含有率が50質量%以下であって、第一の表面側の表層部から第二の表面側の表層部に向かって重合体の含有率が連続的に変化する重合体の分布を有するポリマーフィルムを得ることができる。
構造式から計算で得られるClogP値は親疎水性の指標となり、数字が大きいほど疎水的であることを示す。重合性化合物のClogP値は、5.00以上であることが好ましく、7.00以上であることがより好ましい。また、重合性化合物のClogP値は、例えば12.00以下であるが、12.00超であってもよい。ここでClogPにおけるPとは、n−オクタノール−水系での分配係数を表し、n−オクタノールと水を用いて測定することができ、これら分配係数は、ClogP値推算プログラム(Daylight Chemical Information Systems 社のPC Modelsに組み込まれたCLOGPプログラム)を使用して推算値を求めることもできる。
傾斜フィルムの一態様としては、一方の表面側の表層部から他方の表面側の表層部に向かって屈折率が変化する傾斜フィルムを挙げることができる。そのような傾斜フィルムは、一方の表面(以下、「高屈折率側表面」とも記載する。)において測定される屈折率が、他方の表面において測定される屈折率よりも高くなる。このような傾斜フィルム(屈折率傾斜フィルム)の高屈折率側の表面に、この表面において測定される屈折率よりも屈折率の低い層(低屈折率層)を積層することにより、反射防止機能を有する積層フィルム(反射防止フィルム)を得ることができる。また、このような傾斜フィルムを高屈折率材料と低屈折率材料の接合部に挿入することで、高屈折率材料と低屈折率材料の界面で発生する光反射を抑制することができる。
反射防止フィルム(積層フィルム)を構成する屈折率傾斜フィルムは、低屈折率層と組み合わせることで良好な反射防止機能を得る観点から、高屈折率側表面において測定される屈折率が、1.55以上であることが好ましく、1.56以上であることがより好ましく、1.60以上であることが更に好ましい。また、高屈折率層側表面において測定される屈折率は、例えば1.75以下であるが、高いほど低屈折率層との組み合わせにおいて良好な反射防止機能が得られるため、1.75超であってもよい。一方、高屈折率側表面の反対側の表面(以下、「低屈折率側表面」とも記載する。)において測定される屈折率は、高屈折率側表面において測定される屈折率より低ければよく、例えば1.55以下(ただし高屈折率側表面において測定される屈折率より低い)である。高屈折率側表面において測定される屈折率と低屈折率側表面において測定される屈折率の差((高屈折率側表面において測定される屈折率)−(低屈折率側表面において測定される屈折率))は、0.05以上であることが好ましく、0.06以上であることがより好ましく、0.07以上であることがより好ましい。また、上記の屈折率の差は、例えば0.20以下であるが、0.20超であってもよい。
高屈折率表面(好ましくは屈折率1.55以上の高屈折率表面)を有する傾斜フィルムを得るためには、屈折率が1.60以上の重合性化合物の重合体を、ポリマーフィルムの一方の表面側(高屈折率表面側)の表層部に局在させることが好ましい。重合性化合物の屈折率は、より好ましくは1.65以上であり、更に好ましくは1.70以上である。一方、重合性化合物の屈折率は、例えば1.80以下であるが、1.80超であってもよい。また、重合性化合物としては、屈折率の異なる二種以上を任意の割合で混合して用いることもできる。
以上の観点から、好ましい重合性化合物としては、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、ベンゾフェノン骨格、メロシアニン骨格、ベンゾオキサゾール骨格、ベンゾチオール骨格、トリフェニレン骨格、シンナモイル骨格、トラン骨格等を挙げることができる。具体例としては、特開2007-91876号公報の段落0029〜0046に記載の一般式(I)〜(VI)で表される化合物、特開2014-34596号公報の段落0113〜0115に記載のフルオレン化合物、特開2014−80572号公報の一般式(1)で表される縮合環含有化合物(好ましくは同公報の一般式(3)で表される縮合環含有化合物)、特開2013−253161号公報の段落0016に記載の化合物、特開2006−301614号公報の段落0025〜0153に記載の化合物、特開2007−108732号公報の段落0020〜0122に記載の化合物、特開2010−244038号公報の段落0012〜0108に記載の化合物等が挙げられる。中でも、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格およびアントラセン骨格からなる群から選ばれる少なくとも一つの骨格を有する化合物が好ましく、フルオレン骨格を有する化合物がより好ましい。ポリマーフィルムを作製するために用いる組成物中の重合性化合物の濃度については、後述する。
<有機溶剤可溶性樹脂>
有機溶剤可溶性樹脂とは、前述の定義による有機溶剤可溶性を示す樹脂を言うものとする。ポリマーフィルムは、有機溶剤可溶性樹脂として一種のみを含んでいてもよく、二種以上の異なる有機溶剤可溶性樹脂を任意の割合で含んでいてもよい。
有機溶剤可溶性樹脂の一例としては、透明性に優れることから画像表示装置等の保護フィルム材料として好適な(i)セルロースアシレートを挙げることができる。また、他の例としては、積層構造を有するハードコートフィルムのベースフィルム材料として通常使用される各種熱可塑性樹脂、例えば、(ii)(メタ)アクリル系樹脂、(iii)ポリカーボネート系樹脂、(iv)ポリスチレン系樹脂、(v)環状ポリオレフィン系樹脂、(vi)グルタル酸無水物系樹脂、(vii)グルタルイミド系樹脂等を挙げることができる。
以下、上記有機溶剤可溶性樹脂の具体的態様について説明するが、本発明は下記の態様に限定されるものではない。有機溶剤可溶性樹脂としては、前述の規定に該当するものであれば、何ら制限なく用いることができる。
(i)セルロースアシレート
セルロースアシレートとしては、特に制限はない。セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基の置換するアシル基の詳細については、特開2012−215812号公報段落0017を参照できる。好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基であり、より好ましくはアセチル基、プロピオニル基であり、更に好ましくはアセチル基である。素材分布の傾斜形成の観点からは、アセチル置換度が2.95以下のセルロースアシレートが好ましく、より好ましくは2.86以下、更に好ましくは2.70以下、最も好ましくは2.50以下である。また、光学性能の観点からは、アセチル置換度が2.95以下のセルロースアシレートが好ましく、より好ましくは2.90以下、更に好ましくは2.89以下である。一方、溶剤溶解性等の観点からは、アセチル置換度が2.00以上のセルロースアシレートが好ましく、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.80以上である。同様の観点から、セルロースアシレートの総アシル置換度も、アセチル置換度について上記した範囲にあることが好ましい。なお総アシル置換度およびアセチル置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。その他、セルロースアシレートの詳細については、特開2012−215812号公報段落0018〜0020も参照できる。
(ii)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂とアクリル系樹脂の両方を含む概念である。また、(メタ)アクリル系樹脂には、アクリレートエステルとメタクリレートエステルとの共重合体も含まれる。(メタ)アクリル系樹脂の繰り返し構造単位は、特に限定されない。(メタ)アクリル系樹脂は、繰り返し構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位を有することが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂は、繰り返し構造単位として、更に、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸および下記一般式(10)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して得られる繰り返し構造単位を含んでいてもよい。
一般式(10)
CH2=C(X)R201
一般式(10)中、R201は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−CN基、−CO−R202基、またはO−CO−R203基を表し、R202およびR203は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。
(メタ)アクリル酸エステルは、特に限定されない。詳細については、特開2013−099875号公報段落0034を参照できる。
水酸基含有単量体も、特に限定されない。詳細については、特開2013−099875号公報段落0035を参照できる。
不飽和カルボン酸も、特に限定されない。詳細については、特開2013−099875号公報段落0036を参照できる。
一般式(10)で表される単量体の詳細については、特開2013−099875号公報段落0037を参照できる。
(メタ)アクリル系樹脂は、1つ以上のラクトン環構造を含んでいてもよい。ラクトン環構造の一態様としては、下記一般式(11)で示されるラクトン環構造を挙げることができる。
一般式(11)中、R401、R402およびR403は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を表し、有機残基は酸素原子を含有していてもよい。ここで、炭素原子数1〜20の有機残基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが好ましい。
ラクトン環含有(メタ)アクリル系樹脂の構造中における上記一般式(11)で示されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、更に好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ラクトン環構造の含有割合を5質量%以上とすることにより、樹脂の耐熱性、および表面硬度が向上する傾向にあり、ラクトン環構造の含有割合を90質量%以下とすることにより、樹脂の成形加工性が向上する傾向にある。
ラクトン環含有(メタ)アクリル系樹脂の製造方法については、特に制限はない。例えば、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(p)を得た後に、得られた重合体(p)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入すること(ラクトン環化縮合工程)により、ラクトン環含有(メタ)アクリル系樹脂を得ることができる。ラクトン環含有(メタ)アクリル系樹脂の好ましい物性等の詳細については、特開2012−250535号公報段落0040〜0047を参照できる。
また、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは80,000以上であることが好ましい。(メタ)アクリル樹脂の質量平均分子量Mwが80,000以上であれば、機械的強度が高く、製造時のハンドリング適性に優れる。この観点から、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは100,000以上であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば5,000,000以下であるが、特に限定されるものではない。
(メタ)アクリル系樹脂としては、市販品または公知の合成方法により合成されたものを使用することができる。市販品としては、これらに限定されるものではないが、例えば、デルペット(日本登録商標)60N、80N(旭化成ケミカルズ製)、ダイヤナール(日本登録商標)BR80、BR85、BR88、BR102(三菱レイヨン製)、KT75(電気化学工業製)等が挙げられる。
(iii)環状ポリオレフィン系樹脂
環状ポリオレフィン系樹脂とは、環状オレフィン構造を有する樹脂を言うものとする。
環状オレフィン構造を有する樹脂の例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、および(1)〜(4)の水素化物等を挙げることができる。より具体的態様としては、下記一般式(21)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体である環状ポリオレフィン系樹脂、および必要に応じ、一般式(20)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含む付加(共)重合体である環状ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。また、一般式(22)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も挙げることができる。
一般式(20)、(21)、(22)中、mは0〜4の範囲の整数を表す。R1〜R6は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜X3、Y1〜Y3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、または、X1とY1もしくはX2とY2もしくはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11、R12、R13、R14、R15は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基を表し、WはSiR16 p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子、−OCOR16またはOR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の範囲の整数を示す。R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子または−CH3であることが好ましく、X3、およびY3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、または−COOCH3であることが好ましい。その他の基については、上記の中から適宜選択することが好ましい。ノルボルネン系重合体は、市販品としては、JSRからアートン(日本登録商標)(Arton)GまたはアートンFとの商品名で発売されている。また、日本ゼオンからは、ゼオノア(日本登録商標)(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250またはゼオネックス280との商品名で市販されている。ノルボルネン系重合体として、これら市販品を用いることも、もちろん可能である。ノルボルネン系重合体および環状ポリオレフィン系樹脂の詳細については、特開2013−029792号公報段落0032および0033も参照できる。
(iv)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されるものではない。例えば、市販品をそのまま、または市販品に適宜剥離力や靭性を制御するべく添加剤を添加したものを用いることができる。市販品の具体例としては、これらに限定されるものではないが、パンライト(日本登録商標)L−1225L、L−1250Y、K−1300Y、AD−5503(帝人化成製)、ノバレックス7020R、7022R、7025R、7027R、7030R(三菱エンジニアリングプラスチックス製)等が挙げられる。
(v)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、市販品をそのまま、または適宜剥離力や靭性を制御するべく添加剤を添加したものを用いることができる。また、物性制御のため、ポリスチレンに、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、無水マレイン酸などが共重合されたものを用いてもよい。市販品の具体例としては、これらに限定されるものではないが、PSJポリスチレンG9401、G9305、SGP−10(ポリスチレンジャパン製)、ハイブランチ(日本登録商標)XC−540HB、XC−520、ディックスチレン(日本登録商標)CR−250、CR−350、CR−450(DIC製)、スチレン−アクリロニトリル共重合体としては、セビアン(日本登録商標)N020SF、050SF、070SF、080SF(ダイセルポリマー製)、スチレン−無水マレイン酸共重合体としては、XIRAN SZ28110、SZ26180、SZ26120、SZ26080、SZ23110、SZ15170、SZ08250(ポリスコープポリマーズB.V.製)等が挙げられる。
(vii)グルタル酸無水物系樹脂
グルタル酸無水物系樹脂とは、グルタル酸無水物単位を有する重合体である樹脂を表す。グルタル酸無水物単位を有する重合体は、下記一般式(30)で表されるグルタル酸無水物単位(以下、グルタル酸無水物単位と呼ぶ)を有することが好ましい。
一般式(30)中、R31、R32は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。R31、R32は、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
グルタル酸無水物系樹脂に対する一般式(30)で表されるグルタル酸無水物単位の含有量としては、耐熱性等の観点から、5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜45質量%である。
グルタル酸無水物単位を有する重合体の詳細については、特開2012−250535号公報段落0052〜0065を参照できる。
(vii)グルタルイミド系樹脂
グルタルイミド系樹脂とは、グルタルイミド単位を有する重合体である樹脂を表す。グルタルイミド系樹脂は、側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂である。側鎖に置換または非置換イミド基を有することによって光学特性や耐熱性などの点で好ましい特性バランスを発現できる。グルタルイミド系樹脂としては、少なくとも下記一般式(40):
で表されるグルタルイミド単位(式中、R301、R302、R303は、それぞれ独立に水素または炭素数1〜12個の非置換のまたは置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表す。)を有することが好ましい。
グルタルイミド系樹脂を構成する好ましいグルタルイミド単位としては、R301、R302がそれぞれ独立に水素またはメチル基であり、R303がメチル基またはシクロヘキシル基である。樹脂に含まれるグルタルイミド単位は、単一の種類でもよく、R301、R302、R303が異なる複数の種類が含まれていてもよい。
グルタルイミド系樹脂には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル構成単位が含まれていることが好ましい。別の好ましい構成単位としては、N−メチルメタクリルアミドや、N−エチルメタクリルアミドのような、N−アルキルメタクリルアミドが挙げられる。これらのグルタルイミド単位以外の構成単位は単独の種類でもよく、複数の種類が含まれていてもよい。
グルタルイミド系樹脂の一般式(40)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、耐熱性および透明性の観点から、グルタルイミド系樹脂の総繰り返し単位を基準として、20〜95質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは、60〜80質量%である。
その他の共重合可能な成分については、特開2005−189623号公報段落0030を参照できる。また、グルタルイミド系樹脂の合成方法等の詳細については、特開2005−189623号公報段落0031を参照できる。グルタルイミド系樹脂の重量平均分子量は、1×10〜5×10の範囲であることが好ましい
ポリマーフィルムを作製するために用いる組成物中の有機溶剤可溶性樹脂の濃度については、後述する。
<ポリマーフィルムの厚さ>
ポリマーフィルムの厚さは、用途に応じて定めればよく、特に限定されるものではない。ポリマーフィルムの厚さは、例えば5μm以上もしくは20μm以上であり、例えば80μm以下であるが、この範囲を外れる厚さであってもよい。ポリマーフィルムの厚さは、製膜条件により調整することができる。
<ヘイズ>
ポリマーフィルムは、下記方法により測定されるヘイズが1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。本発明の一態様にかかるポリマーフィルムは、上記範囲のヘイズを示すことができる。このようなヘイズを示すポリマーフィルムは、透明性に優れるため、画像表示装置のフィルム部材として好適である。ヘイズの下限値は、例えば0.001%以上であるが、特に限定されない。
ヘイズは、温度25℃、相対湿度60%の環境下で、ヘイズメーター(スガ試験機HGM−2DP)を用いて、JISK 7136(2000)にしたがって測定する。
次に、本発明の一態様にかかるポリマーフィルムの製造方法として好適な製造方法について説明する。ただし、本発明の一態様にかかるポリマーフィルムは、先に詳述した組成分布を有するものであれば、いかなる製造方法で製造されたものであってもよい。
[ポリマーフィルムの製造方法]
本発明の更なる態様は、先に説明した本発明の一態様にかかるポリマーフィルムの製造方法であって、重合性化合物、有機溶剤可溶性樹脂、および有機溶剤を含む第一の組成物を支持体上に流延してウェブを形成すること、ならびに、形成したウェブに上記重合性化合物の重合処理を施すことを含む上記ポリマーフィルムの製造方法に関する。
以下、上記製造方法について、更に詳細に説明する。
<流延製膜用組成物>
上記製造方法では、流延製膜によりポリマーフィルムを作製する。流延製膜用組成物としては、少なくとも、上記の第一の組成物が用いられる。一態様では、第一の組成物を単層流延することによりポリマーフィルムを作製することできる。また、他の一態様では、第一の組成物と他の組成物との共流延によりポリマーフィルムを作製することができる。以下、流延製膜用組成物を、ドープとも記載する。
(第一の組成物)
第一の組成物は、重合性化合物、有機溶剤可溶性樹脂、および有機溶剤を少なくとも含む。重合性化合物および有機溶剤可溶性樹脂の詳細は、先に記載した通りである。
−有機溶剤−
第一の組成物に含まれる有機溶剤としては、一般に流延製膜に用いられる有機溶剤を何ら制限なく用いることができる。例えば、先に有機溶剤可溶性に関して提示した各種有機溶剤の一種またはこれらの二種もしくは三種を任意の割合で混合した混合溶剤を例示できるが、これらに限定されるものではない。
一態様では、有機溶剤の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ-ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン(メチレンクロライド)、アセト酢酸メチルなどが挙げられる。1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチルおよびメチレンクロライドが好ましい。二種以上の溶剤を混合した混合溶剤においては、上記例示した有機溶剤が最も多くの割合(例えば混合溶剤全量100質量%に対して50質量%以上99質量%未満)を占める主溶剤であることが好ましい。
混合溶剤に主溶剤とともに含まれる有機溶剤(副溶媒)としては、炭素原子数1〜4のアルコールが好ましい。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルの一種または二種以上を挙げることができる。副溶媒は、混合溶剤全量100質量%に対して、例えば1質量%以上50質量%未満、好ましくは1質量%以上40質量%以下の割合で混合溶剤に含まれ得る。なお流延製膜用組成物には、有機溶剤に加えて少量の水が含まれていてもよい。水を含む場合、溶剤全量100質量%に対する水の含有量は、例えば0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.2〜2質量%とすることができる。
有機溶剤としては、組成物に共に含まれる有機溶剤可溶性樹脂が良好な溶解性を示すものが好ましい。これに対して、混合溶剤を用いる場合には、組成物に含まれる重合性化合物が、混合溶剤の一部の溶剤に対する溶解性に乏しく、他の一部の溶剤に対して良好な溶解性を示すことが好ましい。これにより、混合溶剤に対して有機溶剤可溶性樹脂と重合性化合物が異なる溶解性を示すことができるため、ウェブの一方の表面側の表層部に重合性化合物を局在させることや、ウェブ内で重合性化合物や有機溶剤可溶性樹脂の濃度勾配をつけることが容易になる傾向があるからである。また、混合溶剤において、重合性化合物が良好な溶解性を示す溶剤が、重合性化合物の溶解性に乏しい溶剤よりも、沸点が低い溶剤であることが好ましい。以下は、本発明者らによる推察であって本発明を何ら限定するものではないが、例えばウェブの乾燥処理においてウェブに熱が加わる際に、沸点が低い溶剤(重合性化合物が良好な溶解性を示す溶剤)が、混合溶剤に含まれる他の溶剤よりも早くウェブ表層部から揮発することにより、ウェブ表層部は重合性化合物が析出しやすい状態となることが、ウェブ表層部に重合性化合物の高濃度領域を形成することや、ウェブ内部に重合性化合物の連続的な濃度分布をもたらすことに寄与すると考えられる。
以上の点から、例えば有機溶剤可溶性樹脂としてセルロースアセテートを用いる態様では、混合溶剤としてメチレンクロライドとアルコールとの混合溶剤と、疎水的な重合性化合物(例えば先に記載したClogPを有する重合性化合物)とを併用することが好ましい。疎水的な重合性化合物は、一般に、メチレンクロライドに対して良好な溶解性を示し、アルコールに対する溶解性に乏しく、またメチレンクロライドは、一般にアルコールより低沸点だからである。
第一の組成物全量を100質量%として、溶剤全量の占める割合は、例えば60〜95質量%の範囲であり、好ましくは70〜85質量%の範囲である。上記範囲で溶剤を含むドープは、溶剤の揮発による濃度・組成の変化や固形分の析出を起こしにくく、また、安定した流延に適した粘度が得られるため、好ましい。
第一の組成物における有機溶剤可溶性樹脂の含有量は、第一の組成物全量を100質量%として、例えば5.0〜30.0質量%の範囲である。送液の容易性の観点からは、30.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることがより好ましく、12.5質量%以下であることが更に好ましい。一方、素材分布の傾斜形成の観点からは、5.0質量%以上であることが好ましく、8.0質量%以上であることがより好ましく、11.0質量%以上であることが更に好ましい。
第一の組成物における重合性化合物の含有量は、質量基準で、有機溶剤可溶性樹脂の含有量を1.0として、例えば0.5〜10.0の範囲とすることができる。流延の容易性の観点からは、有機溶剤可溶性樹脂成分の比率が多いほうが良好なため、10.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。一方、素材分布の傾斜形成の観点からは、重合性化合物量の比率が多い方が良好なため、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることが更に好ましい。
−任意成分−
第一の組成物は、上記成分に加えて、一般にポリマーフィルムの作製に用いられる公知の成分の一種以上を、任意の割合で含むことができる。そのような成分としては、公知の可塑剤、重合開始剤、界面活性剤、マット剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、ポリマーフィルムの用途に応じて求められる物性に基づき、第一の組成物に添加する成分および添加量を定めることができる。なお、重合性化合物の重合処理は、重合性化合物の種類に応じて、光照射または加熱により行うことができる。併用される成分によっては、光照射や加熱により活性種を発生し、この活性種が重合性化合物の重合を開始させる作用を発揮する場合がある。そのような場合には、第一の組成物は、重合開始剤を含まないものであってもよい。一例として、セルロースアシレートは、光照射によりラジカルを発生する場合があり、そのような場合には、重合開始剤を用いることなく、重合性化合物とセルロースアシレートを併用して少なくとも光照射を行う重合処理により、重合性化合物の重合処理を行うことができる。また、重合性化合物が加熱によりラジカルを発生する場合もあり、このような場合には、重合開始剤を用いることなく、少なくとも加熱を行う重合処理により、重合性化合物の重合処理を行うことができる。
−固形分濃度−
本発明および本明細書において、固形分濃度とは、組成物全量100質量%に対して、溶剤以外の全成分の合計が占める割合をいう。第一の組成物の固形分濃度は、塗布適性を考慮して決定すればよく、例えば5.0〜40.0質量%の範囲であり、好ましくは15.0〜30.0質量%の範囲である。後述する他の組成物の固形分濃度についても同様である。固形分濃度は低いほうが安定した流延に適した粘度が得られるため、好ましい。一方、素材分布の傾斜形成の観点では固形分濃度は高いほうが好ましい。上記範囲はそれらを両立できる範囲である。
(他の組成物)
一態様では、本発明の一態様にかかるポリマーフィルムは、第一の組成物を単層流延することにより作製することができる。他の態様では、第一の組成物と他の組成物とを共流延(重層同時流延とも呼ばれる)することにより、本発明の一態様にかかるポリマーフィルムを作製することができる。共流延は、共流延に用いる組成物の組成を変えることにより、一方の表面側の表層部と他方の表面側の表層部とに物性の大きな違いを持たせることが容易である点で、好ましい。第一の組成物との共流延に用いる他の組成物(共流延用組成物)は、第一の組成物より重合体の濃度の低い組成物であることが好ましく、例えば先に第一の組成物について記載した有機溶剤可溶性樹脂に対する重合性化合物量の比率に関して、0.5以上の比率差のある組成物であることがより好ましく、重合性化合物を含まない組成物であることが更に好ましい。ここで「含まない」とは、組成物を調製するための成分として積極的に添加しないことを意味する。
他の組成物の詳細については、重合性化合物の濃度以外、第一の組成物に関する前述の記載を適用することができる。
<流延製膜によるポリマーフィルム作製>
流延製膜によるポリマーフィルムの作製は、公知の流延製膜法により行うことができる。一例として、特開2012−96523号公報の図3および図4および同公報中のこれら図面の説明を参照することができるが、特開2012−96523号公報に記載の態様に限定されるものではなく、公知の流延製膜法を何ら制限なく用いることができる。流延製膜によれば、通常、流延製膜用組成物(ドープ)を支持体上に流延してウェブを形成し、形成したウェブに乾燥処理、重合処理等の各種処理を施すことにより、ポリマーフィルムを作製することができる。例えば、流延製膜用組成物(ドープ)を、走行する流延製膜用支持体(例えばバンドまたはドラム)の上に流延し、支持体とともに走行させながら各種処理を施し、適当な時期に支持体から剥ぎ取る。支持体から剥ぎ取る前、支持体から剥ぎ取った後、またはその両時期において、ウェブに乾燥処理を施すことができる。乾燥処理は、加熱炉内への配置、加熱炉内での搬送、ウェブ表面への風の吹き付け(送風)等により行うことができる。上記の加熱処理の2つ以上を実施してもよい。送風は、一般的なサーキュレーター(空気循環機)を用いて行うことができる。サーキュレーターによる送風では、通常、室温の空気がウェブ表面に吹き付けられる。室温は、例えば20〜25℃程度である。または、送風による乾燥処理は、ウェブ表面への除湿風や温風の吹き付けによって行うこともできる。なお本発明者らの検討によれば、送風による乾燥処理により、作製されるポリマーフィルムの一方の表面において測定される屈折率と他方の表面において測定される屈折率との差(屈折率差)が大きくなる傾向が見られた。また、送風する風の風速を高めるほど、上記屈折率差は大きくなる傾向も見られた。例えば風速は、0.02〜10.0m/s程度とすることができるが、この範囲に限定されるものではない。また、この送風による乾燥処理は、支持体から剥ぎ取る前、支持体から剥ぎ取った後、またはその両時期において、施すことができ、支持体から剥ぎ取る前に行うことが好ましい。
加熱を伴う乾燥処理を実施する場合、乾燥時の加熱温度は、重合性化合物の重合反応の進行や樹脂の大きな熱収縮が生じない程度の温度、例えば、40℃以上(好ましくは50℃以上)100℃以下の温度とすることが好ましい。ここで加熱温度とは、送風する風の温度または加熱炉内の雰囲気温度をいうものとする。
また、重合処理は、任意の時期に行うことができ、例えば支持体から剥ぎ取った後のウェブに対して行うことができる。重合処理は、光照射または加熱により行うことができ、重合反応が早期に進行する点で、少なくとも光照射による重合処理(光重合)を行うことが好ましい。または、光重合および加熱による重合(熱重合)を併せて行ってもよい。中でも、重合開始剤を用いずに、先に記載したように光照射により活性種を発生させる態様では、光照射(光重合)後に熱重合を行うことが好ましい。
光照射のための光源としては、例えば紫外線を照射可能なUV(Ultra Violet)光源を用いることができるが、特に限定されるものではない。具体例としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光線等を挙げることができる。また、光照射条件も特に限定されるものではなく、重合性化合物の種類に応じて決定すればよい。一例として、紫外線照射による光重合は、例えば、紫外線の照射量を10〜2000mJ/cm程度とすることができる。なお本発明における紫外線(紫外光)とは、200〜400nmの波長域の光を言うものとする。また、本発明および本明細書において、ウェブとは、湿潤状態〜乾燥状態にあるフィルム原反をいい、溶媒含有の有無や、含まれる重合性化合物の重合の有無を問わないものとする。
一方、熱重合は、ウェブを、140〜200℃の範囲の加熱温度で2〜200分間加熱する加熱処理により行うことが好ましい。なお本発明および本明細書において、ウェブに関する加熱温度とは、加熱されているウェブの温度をいうものとする。また、ウェブは、走行しながら加熱されてもよく、停止した状態で加熱されてもよい。生産性の観点から、ウェブは、通常、走行しながら加熱される。また加熱処理はウェブ形態に対するものに限定されず、例えば、ウェブから打ち抜いたシートに対して上記温度範囲、時間範囲で加熱処理を行ってもよい。
共流延では、第一の組成物の塗布層と第二の組成物の塗布層が積層された状態のウェブが得られ、流延中に両塗布層の間や各塗布層の内部で成分の拡散が進行することにより、ウェブ内に各成分の濃度分布がもたらされると考えられる。またこれに加えて、先に記載したように、疎水的な重合性化合物の使用や混合溶剤の使用が、有機溶剤可溶性樹脂と重合性化合物を分離しやすくし、疎水的な重合性化合物が空気側に寄り集まることで(表面偏在)、重合体の含有率が前述のように連続的に変化するポリマーフィルムが得られることに寄与すると、本発明者らは推察している。また、単層流延でも、流延中に塗布層の内部で上述の表面偏在が進行することにより、第一の組成物の塗布層(ウェブ)内に各成分の濃度分布がもたらされると考えられる。このように濃度分布がもたらされることが、重合体の含有率が前述のように連続的に変化するポリマーフィルムが得られることに寄与していると考えられる。共流延において、第一の組成物の塗布層と第二の組成物の塗布層の厚さは、各組成物の処方や処方の違い、作製すべきポリマーフィルムの厚さ等を考慮して設定すればよい。また、組成の異なる三種以上のドープを同時流延することも可能である。
[積層フィルム]
本発明の更なる態様は、先に記載した本発明の一態様にかかるポリマーフィルムと、上記ポリマーフィルムの第一の表面と隣接する隣接層とを有し、隣接層が、上記ポリマーフィルムの第一の表面側で測定される屈折率より屈折率の低い層である積層フィルムに関する。かかる積層フィルムは、反射防止フィルムとして機能し得るものである。
以下、上記積層フィルムについて、更に詳細に説明する。
上記積層フィルムに含まれるポリマーフィルムについては、先に記載した通りである。
(隣接層)
隣接層の屈折率とは、隣接層を構成する材料の波長550nmの光に対する屈折率をいうものとする。
屈折率の測定は、先に重合性化合物の屈折率の測定方法として記載した方法により行うことができる。隣接層を構成する材料の組成が未知の場合には、公知の組成解析法により、例えば、赤外分光により、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)測定により、隣接層を溶解可能な任意の溶媒に溶解して得られた溶液をガスクロマトグラフィー測定等の組成解析に付すことにより、または上記方法の2つ以上の組み合わせにより、組成委解析を行うことができる。なお隣接層についての「隣接」とは直接または間接的に隣り合うことを意味し、本発明の一態様にかかるポリマーフィルムの第一の表面上に直接積層されていてもよく、公知の接着層等の他の層を介して間接的に積層されていてもよい。
隣接層の屈折率は、上記ポリマーフィルムの第一の表面において測定される屈折率より低ければよく、例えばそれらの屈折率差((上記ポリマーフィルムの第一の表面において測定される屈折率)−(隣接層の屈折率))は、反射防止の観点から大きいほうが好ましく、例えば0.15以上であり、好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.30以上である。また、隣接層の屈折率は、反射防止の観点から低いほうが好ましく、例えば1.45以下であり、好ましくは1.36以下であるが、これに限定されるものではない。
隣接層の屈折率は、隣接層を形成するために用いる材料の屈折率、隣接層への無機粒子の添加等により調整することができる。無機粒子としては、金属酸化物粒子が好ましい。金属酸化物としては、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができる。また、内部に空洞を有する中空粒子も好適である。
隣接層は、例えば、水系塗布液または非水系塗布液を用いて塗布により形成することができる。
水系塗布液としては、バインダーとして水溶性ポリマーを含むものを用いることができる。なお「水系」とは、「水を含む」の意味で用いるものとする。また、水溶性ポリマーとは、このポリマーが最も溶解する温度で、0.5質量%の水溶液として調製したのち、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜80μm)で濾過した際に濾別される不溶物の質量が、添加したポリマー量の50質量%以内であるものを言うこととする。水溶性ポリマーの重量平均分子量は、1,000以上200,000以下であることが好ましく、3,000以上40,000以下であることがより好ましい。水溶性ポリマーの具体例としては、WO2012/014644A1段落0047に記載の各種水溶性ポリマーを挙げることができ、ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールとしては、市販品を何ら制限なく用いることができる。また、ポリビニルアルコールについては、WO2012/014644A1段落0048〜0053も参照できる。
また、水系塗布液は、無機ポリマーを含んでもよい。無機ポリマーの詳細については、WO2012/014644A1段落0054〜0059を参照できる。
水系塗布液は、更に、水溶性ポリマーを硬化(架橋)するための硬化剤を含むこともできる。硬化剤としては、水溶性ポリマーと架橋構造を形成できるものであれば何ら制限なく用いることができる。好ましい硬化剤としては、ホウ酸およびホウ酸塩を挙げることができる。ホウ酸およびホウ酸塩とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいう。具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。また、ホウ酸およびホウ酸塩以外の公知の硬化剤を用いることもできる。そのような硬化剤としては、WO2012/014644A1段落0061に記載のものが挙げられる。硬化剤の使用量は、水溶性ポリマー100質量部あたり0.1〜60質量部とすることが好ましく、10〜60質量部とすることがより好ましい。
また、水系塗布液は、WO2012/014644A1段落0066〜0077、同公報段落0079に記載の各種成分や添加剤を含んでいてもよい。
水系塗布液は、以上記載した各成分を、水を含む溶媒、好ましくは水に、溶解または懸濁することにより調製することができる。塗布液における溶媒量は、塗布液全量に対して、例えば50質量%以上95質量%以下であるが、塗布可能な粘度に調製できればよく、特に限定されるものではない。
一方、非水系塗布液としては、
(1)架橋性または重合性の官能基を有する含フッ素化合物を含有する組成物;
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物;または、
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと無機粒子を含有する組成物;
を挙げることができる。
これら組成物の詳細については、特開2012−78539号公報段落0052〜0062を参照できる。
また、隣接層については、特開2009−265658号公報段落0030〜0032等の低屈折率層に添加可能な粒子に関する記載および同公報段落0033〜0046の低屈折率層に添加可能な成分の記載も参照できる。
隣接層の厚さは、例えば0.01〜20.00μmであるが、積層フィルムの用途に応じて定めればよく、特に限定されるものではない。反射防止フィルムの用途のためには隣接層の厚みは0.05μm〜0.50μmが好ましく、特に隣接層として低反射層を一層のみ付与するタイプの反射防止フィルムにおいてはその厚みは0.08μm〜0.12μmが好ましい。隣接層は、塗布法等の公知の製膜法により、上記ポリマーフィルムの第一の表面上に直接または間接的に積層することができる。
本発明の一態様にかかる積層フィルムは、隣接層表面において、後述の方法により測定される視感度反射率が、1.00%以下となる反射防止性能を示すことができることが好ましい。かかる反射防止性能を有する積層フィルムは、各種用途において反射防止フィルムとして好ましい。上記反射率は、より好ましくは0.75%以下、更に好ましくは0.50%以下であり、低いほど好ましい。
[偏光板]
本発明の更なる態様は、
上記ポリマーフィルムおよび上記積層フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1つのフィルムと、偏光子と、を含む偏光板;
に関する。上記ポリマーフィルムおよび積層フィルムは、偏光板保護フィルムとして機能することができる。また、上記積層フィルムは、反射防止フィルムとして機能することができる。
偏光板は、通常、偏光子が2枚の保護フィルムの間に配置される。上記ポリマーフィルムおよび積層フィルムは、2枚の保護フィルムの少なくとも一方または両方であることができる。なお、液晶表示装置には、通常、液晶セルを挟んで2枚の偏光板(視認側偏光板、バックライト側偏光板)が配置される。本発明の一態様にかかる偏光板は、2枚の偏光板のいずれに用いてもよく、一態様では、視認側偏光板として用いることができる。視認側偏光板に含まれる2枚の保護フィルムは、一方が視認側、他方が液晶セル側に配置される。この場合、上記ポリマーフィルムおよび積層フィルムは、視認側保護フィルム、液晶セル側保護フィルムのいずれに用いてもよく、一態様では、視認側保護フィルムとして用いることができる。この場合、上記ポリマーフィルムは、第二の表面側の表層部が液晶セル側、第一の表面側の表層部が反対側に配置されることが好ましい。また、上記積層フィルムは、ポリマーフィルムの第二の表面側の表層部が液晶セル側、隣接層が反対側に配置されることが好ましい。
上記偏光板に含まれる偏光子としては、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。偏光子の詳細については、例えば特開2011−136503号段落0117を参照できる。
一態様では、偏光板に含まれる2枚の保護フィルムの一方が上記ポリマーフィルムまたは積層フィルムであり、他方が光学補償フィルムであることもできる。光学補償フィルムとしては、公知のフィルムを用いることができる。
[画像表示装置]
本発明の更なる態様は、上記ポリマーフィルムおよび積層フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1つのフィルムを含む画像表示装置に関する。
画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)等の各種画像表示装置を挙げることができる。
一態様では、上記ポリマーフィルムおよび積層フィルムは、画像表示装置の表示面外側に配置される保護フィルムであることができる。
また、一態様では、画像表示装置は、偏光板を必須の構成部材として含む液晶表示装置であることができる。この場合、上記ポリマーフィルムおよび積層フィルムは、偏光板に含まれることが好ましい。そのような偏光板の詳細は、先に記載した通りである。
液晶表示装置の液晶セルは、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In Plane Switching)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード等の各種駆動モードの液晶セルであることができる。
画像表示装置に関するその他詳細については、公知技術を何ら制限なく適用することができる。
以下に実施例に基づき本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
また、以下の実施例、比較例で作製したポリマーフィルムの評価に当たっては、ポリマーフィルムの四方の外側面からそれぞれ1cm以上離れた位置から、20cm四方のポリマーフィルムを切り出して測定試料とした。
ポリマーフィルムの総厚は、上記測定試料の縦横を5cm間隔で4等分する線の、9つの格子点を測定箇所とし、各測定箇所において触針式膜厚計により測定した値の算術平均値として求めた。
以下に記載の流延製膜工程におけるウェブの温度は、非接触の温度計によりモニターした。
[実施例1]
<第一の組成物(重合性化合物含有セルロースアシレートドープA)の調製>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、ドープAを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(固形分)
セルロースアセテート(アセチル置換度2.86,重合度350) 100質量部
重合性化合物1 150質量部
(フルオレン化合物(大阪ガスケミカル社製オグソールEA0200))
固形分濃度(組成物全量100質量%に対して) 17質量%
(溶剤組成比:溶剤全量100質量%に対して、括弧内はセルロースアセテート100質量部に対する含有量)
メチレンクロライド 79質量%(500質量部)
メタノール 20質量%(127質量部)
1−ブタノール 1質量%( 6質量部)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<共流延用組成物(セルロースアシレートドープB)の調製>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、ドープBを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(固形分)
セルロースアセテート(置換度2.86,重合度350)
固形分濃度(組成物全量100質量%に対して) 17質量%
(溶剤組成比:溶剤全量100質量%に対して、括弧内はセルロースアセテート100質量部に対する含有量)
メチレンクロライド 79質量%(625質量部)
メタノール 20質量%(158質量部)
1−ブタノール 1質量%( 8質量部)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<ポリマーフィルム(セルロースアシレートフィルム)の共流延製膜>
上記のドープA、Bを、空気面側から支持体面側に向かってドープA、Bの順序になるように、それぞれが膜厚(設定膜厚)30μm相当になるようにアプリケーターのギャップを調節して、表面温度20℃のガラス支持体上に共流延して湿潤状態のポリマーフィルムを形成した。その後、ポリマーフィルムを載せたままガラス支持体を70℃のオーブンに6分間投入して乾燥し(乾燥処理)、オーブンから取り出してガラス支持体からポリマーフィルムを剥ぎとった。
次に紫外線露光機で紫外線を300mJ/cmの照射量で照射し、光重合させた。こうして形成されたポリマーフィルムの総厚は60μmであった。
[実施例2〜21]
ドープAで用いるセルロースアセテートのアセチル置換度、ドープBで用いるセルロースアセテートのアセチル置換度、ドープAに添加する重合性化合物の種類、添加量(セルロースアセテート100質量部に対する質量部)、ドープAの固形分濃度、ドープBの固形分濃度、ドープAの設定膜厚、ドープBの設定膜厚、ドープAの溶剤組成、およびドープBの溶剤組成を、表2に示す値とし、実施例1と同様にポリマーフィルムを得た。なお実施例11、12では、ドープBを用いずドープAのみを単層流延してポリマーフィルムを得た。下記の表2および表4中、溶剤組成1とは、ドープA、ドープBの溶剤組成である。
表2に示す重合性化合物2〜6は、以下の化合物である。
重合性化合物1〜6のClogP値推算プログラム(Daylight Chemical Information Systems 社のPC Modelsに組み込まれたCLOGPプログラム)を使用して推算値として求めたClogP値を、以下の表に示す。
また、重合性化合物1〜6の屈折率を、先に記載した方法により求めた。結果を以下の表1に示す。
溶剤組成2〜4は、以下の通りである。各溶媒の含有率は、溶剤全量100質量%に対する質量%として示す。括弧内は、ドープAのセルロースアセテート100質量部に対する含有量を示す。
溶剤組成2
メチレンクロライド 90質量%(500質量部)
メタノール 10質量%(127質量部)
溶剤組成3
メチレンクロライド 100質量%(500質量部)
溶剤組成4
メチレンクロライド 79質量%(500質量部)
メタノール 15質量%( 95質量部)
1−ブタノール 1質量%( 6質量部)
メチルエチルケトン 5質量%( 32質量部)
[実施例22]
<ドラム支持体を用いる共流延製膜>
流延ダイとして、図1に示す構成の流延ダイを用いた。実施例22で用いた製膜装置は、流延ドラムを備え、流延ドラムからはぎ取られたフィルムが乾燥室(加熱室)に搬送されて加熱される。乾燥室以外は開放系とした。加熱時間は、乾燥室の搬送距離を変更することにより制御した。図1に示す流延ダイ21は、ドープaの流れとドープbの流れとを合流させた後、先端の吐出口から走行する流延ドラム22上に流出させることによって、ドープa由来の流延膜40aとドープb由来の流延膜40bの積層体としてウェブ40を形成する。
実施例1と同様のドープA、Bを、図1に示すドープaとしてドープA、ドープbとしてドープBを用い、空気面側から支持体面側に向かってドープA、Bの順序になるように、それぞれが膜厚(設定膜厚)30μm相当になるように流量を調節して、流延ダイから表面温度5℃のドラム支持体上に共流延してウェブを形成した。その後、ドラム支持体上で40℃の除湿風(風速4.0m/s)を吹き付け、ドラム支持体からウェブを剥ぎとった。
走行するウェブに乾燥室において温風をあて70℃の加熱温度で6分間加熱し、溶剤を乾燥させた。このときウェブ中の残留溶媒は7%であった。次に紫外線露光機で紫外線を300mJ/cmの照射量で照射し、光重合させた。こうして形成されたポリマーフィルムの総厚は60μmであった。
なお上記風速は、風速測定器(日本カノマックス社製アネモマスター)により計測した値である。後述の風速も上記風速測定器により測定した値である。
[実施例23]
<ドラム支持体を用いる共流延製膜>
実施例22で用いた製膜装置に、乾燥室(以下、「一次乾燥室」と呼ぶ。)よりもウェブ走行方向下流に更なる乾燥室(以下、「二次乾燥室」と呼ぶ。)を設けた製膜装置を用いて、以下の方法で製膜した。
実施例1と同様のドープA、Bを、図1に示すドープaとしてドープA、ドープbとしてドープBを用い、空気面側から支持体面側に向かってドープA、Bの順序になるように、それぞれが膜厚(設定膜厚)30μm相当になるように流量を調節して、流延ダイから表面温度5℃のドラム支持体上に共流延してウェブを形成した。その後、ドラム支持体上で40℃の除湿風(風速4.0m/s)を吹き付け、ドラム支持体からウェブを剥ぎとった。
走行するウェブに一次乾燥室において温風をあて70℃の加熱温度で6分間加熱し、溶剤を乾燥させた。次に紫外線露光機で紫外線を300mJ/cmの照射量で照射し、セルロースアセテートが紫外線照射を受けて分解することによって発生するラジカルを利用して重合性化合物の一部を光重合させた。更にウェブを走行させながら二次乾燥室において190℃の加熱温度で20分間加熱した。ドープAに含まれる残りの重合性化合物は、約140℃以上において重合性基がラジカルを発生することで重合反応が開始される。加熱温度は、乾燥風の温度設定により制御した。こうして形成されたポリマーフィルムの総厚は60μmであった。
[実施例24〜33]
ドープAで用いるセルロースアセテートのアセチル置換度、ドープBで用いるセルロースアセテートのアセチル置換度、ドープAに添加する重合性化合物の種類、添加量(セルロースアセテート100質量部に対する質量部)、ドープAの固形分濃度、ドープBの固形分濃度、ドープAの設定膜厚、ドープBの設定膜厚、ドープAの溶剤組成、およびドープBの溶剤組成は、表4に示す値とし、かつ乾燥処理において、オーブンによる乾燥処理の前に、送風による乾燥処理を行った。送風は、サーキュレーターを用いて、共流延後の湿潤状態のポリマーフィルム表面に水平方向から室温の風を吹き付けて行った(風速4m/s)。上記送風は、共流延後15秒以内に開始し、180秒間行った。その後、更に実施例1と同様にオーブンによる加熱処理を行った。
以上の点以外、実施例1と同様にポリマーフィルムを得た。
[実施例34]
ドラム支持体上で吹き付ける40℃の除湿風の風速を4m/sに変更した点以外、実施例22と同様にポリマーフィルムを得た。
[実施例35]
ドラム支持体上で吹き付ける40℃の除湿風の風速を4m/sに変更した点以外、実施例23と同様にポリマーフィルムを得た。
[比較例1]
特開2014−034596号公報(特許文献1)の実施例3を再現して傾斜フィルムを作製した。詳しくは、特開2014−034596号公報の実施例1の方法で混合液を調製し、調製した混合液を、シリカガラス基板上にキャスト法によりコーティングした後、80℃で30分乾燥し塗布膜(厚み30μm)を得た。さらに、形成した塗布膜に、メタルハライドランプを用いて30秒間光照射して得られた硬化膜を基材から剥離し、ポリマーフィルム(硬化膜)を得た。
[比較例2]
特開2009−265658号公報(特許文献2)の実施例1に記載の方法により、基材上にハードコート層と高屈折率傾斜ハードコート層をこの順に有するフィルムを得た。より詳しくは、同公報段落0049〜0050に記載の方法でトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上にハードコート層を形成し、形成したハードコート層上に、同公報段落0047に記載の方法で調製した高屈折率傾斜ハードコート層形成用コーティング組成物を用いて同公報段落0050に記載の方法で高屈折率傾斜ハードコート層を形成した。
[比較例3]
ドープAの重合性化合物1に代えて、以下のフルオレン骨格を有する化合物(重合性基をもたない化合物、以下、「非重合性フルオレン化合物」と記載する。)を用いた点以外、実施例1と同様にポリマーフィルムを作製した。
<ラマン分光法による組成分析>
ポリマーフィルムの組成分析は、共焦点ラマン顕微鏡(東京インスツルメンツ製:NanoFinder30)を用いて行った。励起波長は785nm、レーザーパワーは18mWであり、100倍の対物レンズを使用した。積算時間は120秒とした。
先に記載したようにポリマーフィルムから切り出した20cm四方の測定試料において、5cm間隔で測定試料を切断して得られた3つの切断面において、それぞれ5cm間隔で厚さ方向における測定位置を決定した。こうして9つの測定位置が決定される。各測定位置において、流延時の空気面側表面からフィルム厚さ方向0.50μm間隔の測定箇所(実施例1については121箇所)で上記ラマン顕微鏡を用いたラマン分光法(顕微ラマン分光法)による組成分析を行い、各測定箇所において上記重合性化合物の重合体および上記セルロースアセテートの含有量を測定した。第一の表面側(流延において空気層側)の表層部、第二の表面側(流延において支持体側)の表層部のそれぞれにおける重合体および有機溶剤可溶性樹脂(セルロースアセテート)の含有率を、以下の表に示す。また、各ポリマーフィルムについて、先に記載した方法により二階微分係数の絶対値を求めて得られたF(x)の値の最大値を、以下の表に示す。実施例のポリマーフィルムおよび比較例1、3のポリマーフィルムでは、重合体の含有率が、第一の表面側の表層部から第二の表面側の表層部に向かって連続的に変化していたが、比較例2のポリマーフィルムでは、重合体の含有率が不連続に変化していた。より詳しくは、比較例2のポリマーフィルムでは、基材とハードコート層との界面近傍で、F(x)の値の値が最大値22.0%であった。
一例として、実施例1のポリマーフィルムの重合体の含有率変化を示すグラフを、図2に示す。
<第一の表面、第二の表面において測定される屈折率>
実施例、比較例のポリマーフィルムの第一の表面、第二の表面のそれぞれにおける屈折率を、以下の方法により求めた。
反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製:FE3000)を用いて、倍率25倍の対物レンズを使用し、波長550nmの反射率を測定した。第一の表面面側の屈折率を測る時は第一の表面側を対物レンズに向け、ピントを第一の表面側に合わせて測定を行った。第二の表面側についても同様に、第二の表面側を対物レンズに向けて測定を行った。
こうして得られた反射率に対し、前述のフレネルの式を満たすように未知のパラメータnをフィッティングで求めることで屈折率nを得た。
<裁断時の割れ評価>
実施例、比較例の各ポリマーフィルムから、16cm×9cmの小片を切断するため、トムソン刃を用いて切断を行った。裁断後にポリマーフィルムの割れの頻度を評価した。ポリマーフィルムの割れは、目視で確認される程度の故障をカウントした。Dは実用レベルで許容されない評価結果である。
A:ポリマーフィルムの裁断品10個中、割れは確認されなかった。
B:ポリマーフィルムの裁断品10個中、1個のサンプルで割れが確認された。
C:ポリマーフィルムの裁断品10個中、2個のサンプルで割れが確認された。
D:偏光板裁断品10個中、3個以上のサンプルで割れが確認された。
<干渉ムラの評価>
実施例、比較例の各ポリマーフィルムについて、干渉ムラを、以下の方法により6段階評価した。
各ポリマーフィルムの裏面に黒色PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを貼合し、正面から三波長蛍光灯(ナショナルパルック蛍光灯FL20SS・EX−D/18)でポリマーフィルムを照らし、干渉ムラを観察し、下記の基準により評価した。
A:干渉ムラが見えない
B:干渉ムラが見える
<析出の評価>
得られたポリマーフィルムから40mm×40mmのサンプル片を切り出し、得られたサンプル片を140℃のオーブンに入れて20分間加熱した。加熱後、オーブンから取り出したサンプル片を目視観察して、サンプル片表面の析出物の有無と析出の程度を以下の評価基準により評価した。
A:析出が全く見られない
B:サンプル片の表面の一部に析出が見られる
C:サンプル片の表面全面に析出が見られる
<耐剥離力の評価>
実施例、比較例の各ポリマーフィルムの第一の表面に、カッターナイフで格子状に縦11本、横11本の切り込みを入れて合計100個の正方形のマス目を刻み、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ“NO.31B”を圧着した後に引き剥がす密着試験を同じ表面において合計5回行った。その後、ポリマーフィルムの剥がれの有無を目視で観察し、下記の2段階評価を行った。なお評価結果Bであった比較例2で作製したポリマーフィルムを光学顕微鏡で断面観察したところ、剥がれは、基材とハードコート層との界面付近で発生していた。
A:密着試験5回で100個のマス目中に剥がれが全く認められなかったもの
B:密着試験5回で100個のマス目中に1マス目以上剥がれが生じたもの
なお実施例1〜35の各ポリマーフィルムのヘイズを、先に記載した方法により測定したところ、いずれも1.0%以下であり、高い透明性を有するポリマーフィルムであることが確認された。
[積層フィルム作製の実施例・比較例]
実施例1〜35の第一の表面上、比較例3で作製したポリマーフィルムの第一の表面上に、以下の方法で隣接層(低屈折率層)を積層し、積層フィルムを得た。
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm)であった。65℃の温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点でオートクレーブを開放して反応液を取り出した。
得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gが得られた。
次に、得られたポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。重量平均分子量は50000であった。
(中空シリカ粒子分散液Aの調製)
中空シリカ粒子ゾル(イソプロピルアルコール(IPA)シリカゾル、日揮触媒化成(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
(低屈折率層用塗布液の調製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1)の18.0質量部、トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール(下記構造式)3.0質量部(共栄社化学製LINC3A(ペンタエリスリトールテトラアクリレートを35質量%含む))、反応性シリコーン(信越化学(株)製X22−164C)2.5質量部、イルガキュア127(BASF・ジャパン(株)製)1.5質量部、中空シリカ粒子分散液A137.4質量部をメチルエチルケトンに添加して1000質量部とし、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
(低屈折率層の形成)
実施例1〜23のポリマーフィルムの第一の表面上、比較例3で作製したポリマーフィルムの第一の表面上に、低屈折率層用塗布液を、特開2003−211052号公報の図1に記載されたスロットダイコーターを用いて塗布し、厚さ92nmの低屈折率層を形成した。低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量300mJ/cmの照射量とした。
<隣接層(低屈折率層)の屈折率測定>
隣接層形成用材料(上記低屈折率層用塗布液)をガラス基板上に塗布し、上記と同様に紫外線硬化し、厚み約0.1μmの塗膜を形成した。形成した塗膜の屈折率を、大塚電子株式会社製の反射分光膜厚計FE3000を使用し、先に重合性化合物の屈折率測定について記載した方法により求めたところ、1.36であった。
<積層フィルムの視感反射率測定(反射防止性能の評価)>
各ポリマーフィルムの裏面に黒色PETフィルムを貼合し、分光光度計(日本分光(株)製V−550)にアダプターARV−474を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分球反射率を測定した。装置付属のソフトウェアが出力する感度で重み付けした平均反射率である視感度反射率を抽出して求めた。こうして求められる視感反射率が低いほど反射防止性能に優れると判定することができる。
以上の実施例、比較例の概要および評価結果を、以下の表2〜4に示す。
本発明は、液晶表示装置等の画像表示装置の製造分野をはじめとする各種分野において有用である。

Claims (15)

  1. 重合性化合物の重合体と、有機溶剤可溶性樹脂と、を少なくとも含むポリマーフィルムであって、
    第一の表面側の表層部における前記重合体の含有率が70質量%以上かつ前記有機溶剤可溶性樹脂の含有率が1質量%超であり、
    第一の表面の反対側の表面である第二の表面側の表層部における前記重合体の含有率が50質量%以下かつ前記有機溶剤可溶性樹脂の含有率が35質量%以上であり、
    第一の表面側の表層部と第二の表面側の表層部との間の領域にも有機溶剤可溶性樹脂が存在し、かつ、
    第一の表面側の表層部から第二の表面側の表層部に向かって、前記重合体の含有率が連続的に変化するポリマーフィルム。
  2. 第一の表面側で測定される屈折率が1.55以上である請求項1に記載のポリマーフィルム。
  3. 前記重合性化合物は、屈折率1.60以上の重合性化合物を含む請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
  4. 前記重合性化合物は、フルオレン骨格、ジナフトチオフェン骨格、ナフタレン骨格およびアントラセン骨格からなる群から選ばれる少なくとも1つの骨格を有する重合性化合物を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
  5. 前記有機溶剤可溶性樹脂は、セルロースアシレートを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
  6. 第一の表面側の表層部における前記重合体の含有率は90質量%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
  7. 第二の表面側の表層部における前記重合体の含有率は20質量%未満である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーフィルムと、前記ポリマーフィルムの第一の表面と隣接する隣接層と、を有し、
    前記隣接層は、前記ポリマーフィルムの第一の表面側で測定される屈折率より屈折率の低い層である、積層フィルム。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーフィルムの製造方法であって、
    重合性化合物、有機溶剤可溶性樹脂、および有機溶剤を含む第一の組成物を支持体上に流延してウェブを形成すること、ならびに、
    形成したウェブに前記重合性化合物の重合処理を施すこと、を含む、前記ポリマーフィルムの製造方法。
  10. 前記重合処理を、少なくとも光照射により行う請求項9に記載のポリマーフィルムの製造方法。
  11. 前記流延を、第一の組成物と他の組成物とを共流延することにより行う請求項9または10に記載のポリマーフィルムの製造方法。
  12. 前記他の組成物は、第一の組成物より前記重合性化合物の濃度の低い組成物である請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリマーフィルムの製造方法。
  13. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーフィルムおよび請求項8に記載の積層フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1つのフィルムと、偏光子と、を含む偏光板。
  14. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーフィルムおよび請求項8に記載の積層フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1つのフィルムを含む画像表示装置。
  15. 請求項13に記載の偏光板を含む画像表示装置。
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