以下、図1〜図7を参照しながら本発明のグラブボックスの好適な実施形態について説明する。図1〜図7において、前、後、右、左、上、下は自動車等の乗員が車両の進行方向に向かって見た方向である。すなわち、前は車両進行方向の先側に相当し、後は車両進行方向の後側つまり車室内側に相当する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、重複した説明は省略される。なお、発明の実施形態は本発明が実施される特に有用な形態として記載されるものであり、本発明がこれに限定されるものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。本明細書において運転席は左側、助手席は右側である左ハンドルの車両を例に挙げて説明をする。
(第1実施形態)
図1〜図5に示されるように、第1実施形態に係るグラブボックスAは、収容部1と、グラブドア2と、グラブドア2に配設されているロック要素10とを備える。ロック要素10は、グラブドア2が閉位置の状態においてロック位置又は解除位置に状態変化する。
図3及び図4に示すように、収容部1は、車両のインストルメントパネルに組み付けられている。具体的には、収容部1は開口11を持つ箱状をなし、開口11をインストルメントパネルの意匠面(後面、車室内に露出する面)に向けている。なお、第1実施形態のグラブボックスAにおいては、収容部1はインストルメントパネルと別体であって、インストルメントパネルに組み付けられている。なお、収容部1は全体として箱状をなせば良く、例えば、インストルメントパネル等の車両構成部材の少なくとも一部を構成している形態であっても良い。
図1、図2、及び図4に示すように、収容部1は、開口11の近傍に係止部を持つ。係止部は、開口11の近傍であって収容部1の側壁上部に設けられており、左右方向に貫通する係止孔を持つ枠状をなしている。具体的には、係止部は、収容部右側壁12bに設けられる第1係止部12と収容部左側壁13bに設けられる第2係止部13からなる。そして、第1係止部12は第1係止孔12aを持ち、第2係止部13は第2係止孔13aを持つ。後述するように、第1係止部12の第1係止孔12aは第1ロッド6の右端部62が進退可能に設けられている。第1ロッド6の右端部62が第1係止孔12aに進退することで第1ロッド6はロック位置又は解除位置の状態となる。また、第2係止部13の第2係止孔13aは第2ロッド7の左端部72が進退可能に設けられている。第2ロッド7の左端部72が第2係止孔13aに進退することで第2ロッド7はロック位置又は解除位置の状態となる。
なお、第1実施形態のグラブボックスAにおいては、係止部は左右方向に貫通する係止孔を持つ枠状をなすが、第1ロッド6及び第2ロッド7が進退可能でありかつ係脱可能な形態で収容部1に設けられていれば良い。例えば、収容部右側壁12b及び収容部左側壁13bに設けられる凹状の穴であってもよい。
グラブドア2は、グラブドア本体21と、ベース部24とを備えている。
グラブドア2は、収容部1の開口11を車室内から遮蔽する閉位置と収容部1の開口11を車室内に露出する開位置との間を状態変化する。
グラブドア本体21は、収容部1の開口11を開閉可能な形状をなす。図4に示すように、グラブドア本体21は収納容器2aと一体的に設けられている。収納容器2aは物品等が出し入れ可能でかつ収容部1に収容可能な容器である。なお、第1実施形態のグラブボックスAにおいては、グラブドア本体21は収納容器2aと一体的に設けられているが、グラブドア本体21と収納容器2aは別体であってもよい。すなわち、グラブドア本体21は収容部1の開口11を車室内へ露出又は遮蔽する板状体であってもよい。
グラブドア本体21は樹脂製であり、表面23と表面23に背向する裏面22とを持つ。表面23は閉位置において車室内に面して意匠面を構成し、裏面22は閉位置において収容部1側に面する。
また、グラブドア本体21は表面23から裏面22に貫通する矩形形状の貫通窓20を有する。図3に示すように、第1実施形態において貫通窓20は、運転席側であるグラブドア本体21左側に設けられている。貫通窓20には、後述する操作部5が表面23に露出するように配設されている。また、グラブドア本体21の裏面22であって貫通窓20の左右方向外縁部にはドア爪部20aが設けられている。ドア爪部20aは、後述するベース爪受け部20bと嵌合し、ベース部24をグラブドア本体21に固定する。
図4に示すように、第1実施形態のグラブボックスAにおいて、グラブドア2左右下端部は収容部1左右下端部に回転可能に支持されている。すなわち、グラブドア2の閉位置と開位置の状態変化は、グラブドア2が収容部1に対して揺動することにより行われる。グラブドア2の開位置への状態変化は、グラブドア2が所定の位置まで自重によって揺動し、図略の移動規制部でグラブドア2が静止させられることによって完結する。
ベース部24には、後述するロック要素10が一体的に組み付けられている。ロック要素10を一体的に組み付けたベース部24は、グラブドア本体21に配設されている。ベース部24は、グラブドア本体21に対面するベース表面26とベース表面26に背向するベース裏面25を持つ。ベース部24の左右両端部には、グラブドア本体21の裏面22に設けられたドア爪部20aと嵌合するベース爪受け部20bが設けられている。なお、ベース部24とグラブドア本体21との組み付けにおいて、ベース部24に爪部を設け、グラブドア本体21にこの爪部が嵌合する爪受け部が設けられていてもよい。
ベース表面26には、後述するロック要素10の操作部5が組み付けられており、ベース裏面25には、ロック要素10のピニオン4と第1ロッド6と第2ロッド7と付勢部材8とが組み付けられている。ロック要素10の各構成部品を一体的に組み付けられたベース部24は、操作部5が貫通窓20を通じてグラブドア2の表面23に露出するようにグラブドア2の裏面22側からグラブドア本体21に固定されている。具体的には、ドア爪部20aがベース爪受け部20bと嵌合することによりベース部24がグラブドア本体21に固定されている。
このように、第1実施形態のグラブボックスAでは、後述するロック要素10とベース部24とを一体化させた後、グラブドア本体21に組み付けることによって、ロック要素10を備えたグラブドア2を製造することができる。したがって、当該実施形態であれば、グラブドア2の製造が容易となる。ひいては、当該実施形態のグラブボックスAの製造時間を短縮することができる。また、ロック要素10をネジ等の部品を用いることなくグラブドア本体21に組み付けることができるため、第1実施形態のグラブボックスAであれば、部品点数を減らすことができ製造コスト削減に有利となる。
ロック要素10は、操作部5と、ピニオン4と、第1ロッド6と、第2ロッド7と、第1ロッド6に取り付けられた付勢部材8と、第2ロッド7及びグラブドア2に設けられたストッパ部9とを有する。
操作部5は、矩形形状の板状体であり、グラブドア2の貫通窓20に位置するノブ状の形態をとる。操作部5は、上端である操作上端部54と下端である操作下端部55を有する。図5に示すように、ベース部24のベース表面26は、中央部よりもやや上方における左右両端側に一対のベース支持部27を持つ。操作部5は、操作部5の中央部よりもやや上方における左右両端側で、一対のベース支持部27によって所定の角度範囲で揺動可能に支持されている。一対のベース支持部27の一方には、ねじりばね29が配設されている。ねじりばね29の一端はベース部24に固定され、他端は操作上端部54に固定されている。ねじりばね29は、操作上端部54とベース部24が互いに離れる方向すなわち図5中の前後方向に両者を付勢している。また、操作部5の揺動は図略の操作規制部によって規制され、操作部5がベース部24に対して平行に位置している。
このように配設された操作部5は、ユーザーが操作下端部55を手前側(後方向)に向けて引くと、ねじりばね29の付勢力に抗して操作上端部54がベース部24に近づく方向すなわち図5中の前方向に移動する。ユーザーが操作下端部55を離すと、操作部5はねじりばね29の付勢力に従って元の位置すなわちベース部24に対して平行となる位置に戻る。
また、操作部5は、グラブドア2の表面23とともに意匠面を構成する操作表面51と、操作表面51に背向しグラブドア2の閉位置において収容部1側に面する操作裏面52とを持つ。
操作裏面52は、ベース部24をグラブドア2に組み付けた後において、グラブドア2の裏面22側に位置する。そして、操作上端部54の操作裏面52には、後述するピニオン凸部44と接続する操作凸部53が設けられている。図1及び図2に示すように、操作凸部53は、操作部5の揺動により上下方向に移動する。具体的には、操作下端部55が、ユーザーによって手前側(後方向)に向けて引かれると、操作上端部54はベース部24に近づく方向すなわち図5中の前方向に移動する。操作上端部54の移動に伴って、操作凸部53は下方向に移動する。
ピニオン4は、ベース部24のベース裏面25に回転可能に支持されている。ピニオン4は、図1及び図2において、反時計回りである正方向と、時計回りである逆方向に回転する。図1及び図2に示すように、ピニオン4は、ギア比の異なる2つの第1ギア部41と第2ギア部42が設けられている。そして、第1ギア部41は第1ロッド6の第1歯列部61と噛合し、第2ギア部42は第2ロッド7の第2歯列部71と噛合している。
第1実施形態のグラブボックスAにおいて、第1ギア部41のギア比は、第2ギア部42のギア比よりも大きい。すなわち、第1ギア部41と第1歯列部61との噛合部分からピニオン4の回転軸43までの距離が、第2ギア部42と第2歯列部71との噛合部分からピニオン4の回転軸43までの距離よりも大きくなるように、2つのギア部がピニオン4に設けられている。
また、ピニオン4は操作部5に設けられた操作凸部53と接続するピニオン凸部44を持つ。ユーザーによって操作下端部55が手前側(後方向)に引かれると、操作上端部54が前方向に揺動する。すると、操作上端部54に設けられた操作凸部53は下方向に移動してピニオン凸部44を下方向に押圧する。こうして、図2に示すように、ピニオン4は操作凸部53の下方向への移動距離分だけ時計回りすなわち逆方向へ回転する。
第1ロッド6及び第2ロッド7は、ピニオン4と接続しており、ピニオン4の回転運動により自己の長手方向に往復動する。第1ロッド6及び第2ロッド7は、左右方向に向けて往復動可能であるように、ベース部24のベース裏面25に配設されている。第1実施形態のグラブボックスAにおいて、左右方向とは第1ロッド6及び第2ロッド7の自己の長手方向であって、往復動方向を意味する。
図1及び図2に示すように、第1ロッド6は第2ロッド7よりも長尺であり、グラブドア2の右側部分に位置している。第1ロッド6の右端部62は、テーパ状をなし、第1係止部12の第1係止孔12aに進退可能である。第2ロッド7は、グラブドア2の左側部分に位置している。第2ロッド7の左端部72もテーパ状をなし、第2係止部13の第2係止孔13aに進退可能である。
図1に示すように、ロック要素10のロック位置において、第1ロッド6の右端部62は第1係止部12に係止しており、かつ、第2ロッド7の左端部72は第2係止部13に係止している。図2に示すように、第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10の解除位置において、第1ロッド6の右端部62は第1係止部12から離脱しており、かつ、第2ロッド7の左端部72は第2係止部13から離脱している。
第1ロッド6は、他端部すなわち左端部側にラック状の第1歯列部61を有する。第1ロッド6とピニオン4は、第1歯列部61と第1ギア部41とが噛合することで接続している。第2ロッド7は、他端部すなわち右端部にラック状の第2歯列部71を有する。第2ロッド7とピニオン4は、第2歯列部71と第2ギア部42とが噛合することで接続している。そして、図1及び図2に示すように、第1ロッド6と第2ロッド7は左右方向に延び、かつ、互いに平行に配設されている。
ロック要素10は、第1ロッド6に取り付けられた付勢部材8を持つ。付勢部材8は、第1ロッド6を第1係止部12に係止させる方向すなわち係止方向である右方向に付勢している。図1及び図2に示すように、付勢部材8はつるまきばねであり、第1ロッド6の左端部に外装されている。具体的には、付勢部材8の一端は第1ロッド6に固定され、他端はベース部24のベース裏面25に固定されている。すなわち、付勢部材8は第1ロッド6と同軸的に配設されている。これにより、第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10では、付勢部材8の付勢力をより直接的に第1ロッド6に付加することができる。したがって、第1実施形態のグラブボックスAは、第1ロッド6の動作信頼性を向上させることに有利となる。また、付勢部材8は第1ロッド6の端部に外装されている。したがって、第1実施形態のグラブボックスAによれば、付勢部材8を容易に組み付けることができる。なお、付勢部材8は、弾性エネルギーを蓄積及び放出することができる部材であれば特に限定されず、例えば板バネであってもよい。
第1歯列部61は、付勢部材8の近傍又は可能な限り近くに並列して設けられている。具体的には、第1ロッド6の左端部から付勢部材8、第1歯列部61の順に設けられている。第1歯列部61の左端から付勢部材8の右端までの距離は、50mm〜100mmの範囲内であることが好ましい。さらに、70mm〜80mmの範囲内であることがより好ましい。
ロック要素10は、第2ロッド7及びグラブドア2に設けられたストッパ部9を持つ。ストッパ部9は、ロック要素10のロック位置において、第2ロッド7が第2係止部13に係止する方向すなわち係止方向である左方向へさらに移動することを規制する。
第1実施形態のグラブボックスAにおいて、ストッパ部9は、第2ロッド7側に設けられたロッド側ストッパ凹部91と、グラブドア2側に設けられたドア側ストッパ凸部92からなる。ロッド側ストッパ凹部91とドア側ストッパ凸部92は互いに係合している。
ロッド側ストッパ凹部91は、左右方向に延びた長穴状の貫通孔をなす。なお、ロッド側ストッパ凹部91は、ドア側ストッパ凸部92と係合できる形状であればよく、貫通孔に代えて溝状のものであってもよい。
ドア側ストッパ凸部92はグラブドア2側に位置するベース部24のベース裏面25に設けられている。なお、ストッパ部9において、第2ロッド7に設けられるロッド側ストッパ凹部91は、これに代えてロッド側ストッパ凸部としてもよい。この場合、グラブドア2側であるベース裏面25には、ドア側ストッパ凸部92に代えて、ロッド側ストッパ部凸部と係合する長穴状のドア側ストッパ凹部が設けられる。ドア側ストッパ凹部は、ロッド側ストッパ凸部と係合できる形状であればよく、貫通孔であっても、ベース裏面25に設けられた溝状のものであってもよい。
ロッド側ストッパ凹部91は、第2ロッド7の右端部側であって、第2歯列部71の近傍又は可能な限り近くに並列して設けられている。具体的には、第2ロッド7の右端部から第2歯列部71、ロッド側ストッパ凹部91の順に設けられている。第2歯列部71の左端からロッド側ストッパ凹部91の右端までの距離は、20mm〜60mmの範囲内であることが好ましい。さらに、35mm〜45mmの範囲内であることがより好ましい。
なお、図1及び図2に示すように、付勢部材8は第1歯列部61の近傍または可能な限り近くに配設され、ロッド側ストッパ凹部91は第2歯列部71の近傍又は可能な限り近くに配設されており、さらに付勢部材8とロッド側ストッパ凹部91が対向していることが好ましい。このように構成されることにより、付勢部材8の付勢力はストッパ部9に対してより短い距離で作用させることができる。したがって、より効果的に第1ロッド6、ピニオン4、及び第2ロッド7の動きを規制することが可能となり、ゆえに、がたつきをより効果的に抑制することができる。
図1に示すように、ロッド側ストッパ凹部91は、ロック要素10のロック位置において、ドア側ストッパ凸部92がロッド側ストッパ凹部91の右端部に係止するように設けられている。また、ロッド側ストッパ凹部91は、第2ロッド7の左端部72が第2係止部13から離脱するまで、第2ロッド7の右方向への移動を許容できるよう設けられている。すなわち、ロッド側ストッパ凹部91は、第2ロッド7の左端部72が第2係止部13から離脱するまで、ロッド側ストッパ凹部91の左端部がドア側ストッパ凸部92に接しないように設けられている。なお、第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10の解除位置において、ロッド側ストッパ凹部91の左端部は、ドア側ストッパ凸部92に接する又は接していない、どちらの状態であってもよい。
以下、第1実施形態におけるグラブボックスAの動作を説明する。第1実施形態のグラブボックスAでは、グラブドア2が開位置と閉位置の間を状態変化をする。そして、グラブドア2が閉位置にある状態において、ロック要素10がロック位置から解除位置に状態変化することにより、グラブドア2の閉位置から開位置への状態変化が可能となる。
第1実施形態のグラブボックスAのロック位置では、図1に示すように、第1ロッド6は第1係止部12に係止し、第2ロッド7は第2係止部13に係止している。このとき、グラブドア2は、閉位置の状態をなしている。
付勢部材8は第1ロッド6を第1係止部12に係止する方向すなわち係止方向である右方向に付勢している。第1歯列部61と第1ギア部41との噛合によって第1ロッド6と接続されているピニオン4は、付勢部材8の付勢力によって図1中において反時計回りすなわち正方向に回転している。
第2ギア部42と第2歯列部71との噛合によってピニオン4と接続する第2ロッド7は、ピニオン4の正方向への回転運動に従動して左方向すなわち第2係止部13に係止する方向である係止方向に移動している。つまり、ピニオン4の正方向への回転運動に同期して第1ロッド6と第2ロッド7は係止方向にそれぞれ移動し、第1ロッド6は第1係止部12に第2ロッド7は第2係止部13にそれぞれ係止している。
第2ロッド7は、ロッド側ストッパ凹部91の右端部がドア側ストッパ凸部92に係止するまで、左方向に移動している。すなわち、ロック位置において、第2ロッド7の係止方向である左方向へのさらなる移動は、ストッパ部9によって規制されている。第2ロッド7の移動がストッパ部9によって規制されているため、第2ロッド7と接続しているピニオン4も自身の回転運動が規制されている。さらに、ピニオン4の回転運動が規制されているため、ピニオン4と接続している第1ロッド6も自身の右方向への移動が規制されている。つまり、第1実施形態のグラブボックスAにおいて、ストッパ部9が第2ロッド7の左方向への移動を規制することによって、第1ロッド6の右方向への移動は規制されている。
このように、第1実施形態のグラブボックスAでは、付勢部材8とストッパ部9の協働によって第1ロッド6及び第2ロッド7の往復動方向への移動が規制されている。したがって、歯列部とギア部との組み付けにおける寸法公差等によりバックラッシュが存在したとしても、第1実施形態のグラブボックスAでは、第1ロッド6の第1歯列部61とピニオン4の第1ギア部41との噛合部分、及び第2ロッ7ドの第2歯列部71とピニオン4の第2ギア部42との噛合部分との動きが効果的に規制される。よって、車両の振動等によるがたつきを効果的に抑制できる。
次に、第1実施形態のグラブボックスAのロック要素10におけるロック位置から解除位置の状態変化について説明する。ロック要素10がロック解除位置の状態をなすことにより、グラブドア2は閉位置から開位置への状態変化をなし得る。
ユーザーが操作部5の操作下端部55を手前側(後方向)に引くと、操作上端部54に設けられた操作凸部53が下方向に移動する。下方向に移動する操作凸部53は、ピニオン凸部44を下方向に押圧する。下方向に押圧されたピニオン凸部44により、ピニオン4は図2中において時計回りに回転する。そして、ピニオン4は、自身に接続している第1ロッド6及び第2ロッド7を駆動させる。つまり、ユーザーによって操作部5に与えられた力により、ピニオン4は付勢部材8の付勢力に抗して時計回りすなわち逆方向へ回転する。
第1ギア部41に噛合している第1歯列部61を持つ第1ロッド6は、ピニオン4の逆方向への回転運動に従動して左方向すなわち第1係止部12から離脱する方向である離脱方向に移動する。その一方で、第2ギア部42に噛合している第2歯列部71を持つ第2ロッド7はピニオン4の逆方向への回転運動に従動して右方向すなわち第2係止部13から離脱する方向である離脱方向に移動する。つまり、ピニオン4の逆方向への回転運動に同期して第1ロッド6と第2ロッド7は離脱方向に移動し、第1ロッド6は第1係止部12から第2ロッド7は第2係止部13からそれぞれ離脱する。こうして、第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10はロック位置から解除位置に状態変化する。図2は、第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10の解除位置を示す。このときグラブドア2は、開位置への状態変化が可能となる。
第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10が解除位置をなすことにより、グラブドア2は開位置への状態変化を始める。ユーザーが操作部5から手を離すと、操作部5はねじりばね29の付勢力によって、ベース部24と平行となる位置すなわち元の状態に戻る。これに伴い、操作上端部54に設けられた操作凸部53は上方向へ移動する。
すると、第1ロッド6は付勢部材8の付勢力に従って右方向に移動し、これに従動してピニオン4は反時計回りである正方向に回転する。そして、第2ロッド7はピニオン4の動きに従動してストッパ部9により規制されるまで左方向に移動する。第2ロッド7がストッパ部9により移動が規制されることにより、第1ロッド6の右方向への移動も規制される。
このとき、第1ロッド6の右端部62及び第2ロッド7の左端部72は、グラブドア2から突出した状態となる。すなわち、ロック要素10は、第1ロッド6及び第2ロッド7がそれぞれに対応する第1係止部12及び第2係止部13に係止していない状態で、ロック要素10のロック位置の状態をなす。つまり、この場合においても、ロック要素10は、付勢部材8とストッパ部9の協働によって第1ロッド6及び第2ロッド7の往復動方向への移動が規制されている。したがって、第1実施形態のグラブボックスAは、第1ロッド6の第1歯列部61とピニオン4の第1ギア部41との噛合部分、及び第2ロッド7の第2歯列部71とピニオン4の第2ギア部42との噛合部分との動きを効果的に規制する。よって、グラブドア2が開位置にあるときにおいても車両の振動等によるがたつきを効果的に抑制できる。
このように、第1実施形態のグラブボックスAでは、グラブドア2の閉位置及び開位置のいずれの状態においても、がたつきを効果的に抑制することができる。
次に、第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10の解除位置からロック位置への状態変化について説明する。
ユーザーは、グラブドア2の開位置から閉位置に向けてグラブドア2を揺動させることにより、グラブドア2を閉位置の状態に変化させる。具体的には、ユーザーはグラブドア2を収容部1の開口11に向けて押すことによりグラブドア2を閉位置の状態とする。
グラブドア2の開位置の状態において、第1ロッド6の右端部62及び第2ロッド7の左端部72はグラブドア2より突出している。
グラブドア2の閉位置へ向かう移動により、グラブドア2より突出している第1ロッド6のテーパ状の右端部62が収容部右側壁12bに当接する。そして、グラブドア2のさらなる閉位置へ向かう移動に伴い、第1ロッド6の右端部62は収容部右側壁12bに摺動しながらグラブドア2内に収容される方向すなわち左方向へ、付勢部材8の付勢力に抗して移動する。そして、第1ロッド6の右端部62が第1係止部12の第1係止孔12aに到達することにより、第1ロッド6は付勢部材8の付勢力に従って右方向へ移動する。すると、第1ロッド6の右端部62は第1係止孔12aに係止される。
一方、グラブドア2の閉位置へ向かう移動により、グラブドア2より突出している第2ロッド7のテーパ状の左端部72は収容部左側壁13bに当接する。そして、グラブドア2のさらなる閉位置へ向かう移動に伴い、第2ロッド7の左端部72は収容部左側壁13bに摺動しながらグラブドア2内に収容される方向すなわち右方向へ付勢部材8の付勢力に抗して移動する。そして、第2ロッド7の左端部72が第2係止部13の第2係止孔13aに到達することにより、第2ロッド7は付勢部材8の付勢力に従って左方向へ移動する。すると、第2ロッド7の左端部72は第2係止孔13aに係止される。こうして、グラブドア2は閉位置の状態をとるとともに、第1実施形態のグラブボックスAは、図1に示すロック位置の状態に変化する。
ところで、図3に示すように操作部5をグラブドア2に設ける場合、グラブドア本体21における長手方向の左側すなわち運転席側に偏った位置に操作部5は配置される。一般にグラブボックスは車両の助手席側に配設されるが、操作部5をグラブドア本体21における運転席側の位置に設ければ、運転者が操作部5を操作し易くなる。この場合、操作部5から第1係止部12までの距離が、操作部5から第2係止部13までの距離よりも大きくなる。したがって、第1ロッド6の長手方向の長さを第2ロッド7の長手方向の長さよりも長くする必要がある。
第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10では、第1ロッド6の長手方向の長さは、第2ロッド7の長手方向の長さよりも長い。また、操作部5から第1係止部12までの距離は、操作部5から第2係止部13までの距離よりも長い。このため、第1ロッド6と第1係止部12との配置は、第2ロッド7と第2係止部13との配置に比べて位置ズレし易くなると考えられる。第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10では、材料の大部分が樹脂で占められている。大型の樹脂部材は寸法精度高く成形し難いため、比較的大型の部材である第1ロッド6もまた寸法精度高く成形し難い。また、比較的大型の部材である収容部1もまた寸法精度高く成形し難い。このため、第1ロッド6と、収容部1に設けられている第1係止部12とは比較的位置ズレし易いと考えられる。このような位置ズレにより、一方の係止部のみが係止して他方の係止部が十分に係止できない現象(所謂、ロックの片掛かり現象)が生じる可能性がある。
上述したロックの片掛かり現象を抑制するためには、位置ズレする分の余裕をもたせて、第1ロッド6の往復動量を第2ロッド7の往復動量よりも大きくすれば良いと考えられる。
図1及び図2に示すように、第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10では、ピニオン4はギア比の異なる2つのギア部(第1ギア部41及び第2ギア部42)で構成されている。そして、第1ギア部41と第1歯列部61との噛合部分からピニオン4の回転軸43までの距離は、第2ギア部42と第2歯列部71との噛合部分から回転軸43までの距離に比べて大きい。このため、ピニオン4が回転したときの第1歯列部61の移動距離は、第2歯列部71の移動距離に比べて大きくなり、第1ロッド6の往復動量は第2ロッド7の往復動量に比べて大きくなる。つまり、ピニオン4は、第1ロッド6の往復動量が第2ロッド7の往復動量よりも大きくなるように、操作部5の動作を第1ロッド6及び第2ロッド7に伝達する。このため、当該実施形態におけるロック要素10によれば、上述したロックの片掛かり現象を回避あるいは抑制することができる。すなわち、第1実施形態のグラブボックスAにおけるグラブドア2は閉位置において信頼性高くロックされ得る。ゆえに、ロック要素10はロック性能に優れる。
なお、操作部5はグラブドア2の中央部に設けられ、第1ロッド5及び第2ロッド6の長さが等しくなるように設けられても良い。このような場合であっても、第1実施形態のグラブボックスAと同様の効果が得られる。
(第2実施形態)
第2実施形態のグラブボックスBは、ロック要素10においてピニオン4と同軸上に補助板100を配設し、補助板100を圧接するとともに補助板100が摺動する第1ガイド部110を第1ロッド6に第2ガイド部120を第2ロッド7にそれぞれ設けていること以外は第1実施形態と同じものである。第2実施形態のグラブボックスBにおけるロック要素10を模式的に表す説明図を図6及び図7に示す。
図6及び図7に示すように、第2実施形態のグラブボックスBにおけるロック要素10では、第1ロッド6は、第1歯列部61に背向する上端部に左右方向すなわち往復動方向に延びた第1ガイド部110を持ち、第2ロッド7は、第2歯列部71に背向する下端部に左右方向すなわち往復動方向に延びた第2ガイド部120を持つ。第1ガイド部110及び第2ガイド部120は樹脂製の板状体である。
また、第2実施形態のグラブボックスBにおけるロック要素10では、ピニオン4に同軸的に配設された樹脂製の補助板100をさらに備えている。具体的には、ピニオン4と同じ回転軸43によって回転可能に支持されており、ピニオン4と補助板100とは同期回転となっている。なお、補助板100はピニオン4と一体的に設けられていることが望ましい。補助板100は、第1ガイド部110に圧接されるとともに第1ガイド部110を摺動する第1円弧部101と、第2ガイド部120に圧接されるとともに第2ガイド部120と摺動する第2円弧部102を持つ。第1円弧部101及び第2円弧部102は可撓性を有する。なお、補助板100は、補助板100自身が弾力性を有するものであってもよく、あるいは補助板100のうち第1円弧部101及び第2円弧部102が可撓性を有するものであってもよい。
このように構成された第2実施形態のグラブボックスBにおけるロック要素10は、補助板100の第1円弧部101が第1ガイド部110によって圧接され、補助板100の第2円弧部102が第2ガイド部120によって圧接されている。つまり、補助板100は第1ガイド部110及び第2ガイド部120との協働により、第2実施形態のグラブボックスBにおけるロック要素10の第1ロッド6、及び第2ロッド7の往復動方向以外の動きをさらに規制することができる。例えば、第1ロッド6、第2ロッド7、及びピニオン4に与えられ得る車両進行方向である前後方向の動き、上下方向の動き等、あらゆる方向からの動きを、補助板100と第1ガイド部110及び第2ガイド部120との協働により規制することができる。よって、当該実施形態のグラブボックスBによれば、第1ロッド6、第2ロッド7、及びピニオン4の動きをさらに効果的に規制することができ、ゆえにより効果的にがたつきを抑制することができる。なお、補助板100と第1ガイド部110及び第2ガイド部120とは、ロック要素10の作動時における、第1ロッド6及び第2ロッド7の往復動方向への移動に支障をきたさないように配設されている。
また、図6及び図7に示すように、補助板100の第1円弧部101の内周側には、第1円弧部101に沿って設けられた円弧状の貫通孔103が設けられている。補助板100の第2円弧部102の内周側も、同様に第2円弧部102に沿って設けられた円弧状の貫通孔103が設けられている。補助板100に円弧状の貫通孔103が設けられることにより、補助板100を第1ガイド部110及び第2ガイド部120の間に嵌め込む際に、第1円弧部101及び第2円弧部102が撓み易くなる。したがって、この構成によれば、補助板100は容易に組み付け可能となる。
また、補助板100に円弧状の貫通孔103が設けられていることにより、補助板100が回転運動する際に、第1円弧部101及び第2円弧部102はより撓み易くなる。したがって、第1ガイド部110及び第2ガイド部120との摺動がよりスムーズになる。ゆえに、ロック要素10の作動時において操作部5の操作性低下を効果的に抑えることができる。
以上、本発明の一実施形態に係るグラブボックスを説明したが、本発明に係るグラブボックスは上述した実施形態に限定されない。
例えば、第1実施形態のグラブボックスAは、ベース部24が配設されていない場合においても本発明の効果を奏する。この場合には、第1実施形態のグラブボックスAにおけるロック要素10は、グラブドア本体21に直接配設されるように設計されていれば良い。