JP2016083945A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】乗り心地を損なうことなく、ピッチ音の低減が達成されたタイヤ2の提供。【解決手段】このタイヤ2のトレッド4には、複数の主溝40が刻まれている。トレッド4には、ショルダーリブ42sとミドルリブ42mとが形成されている。ショルダーリブ42sは多数の第一横溝44fを備える。第一横溝44fはショルダーリブ42sに刻まれている。ショルダーリブ42sには、多数のショルダーブロック46sが形成されている。ショルダーブロック46sは、周方向に並ぶ。第一横溝44fは、内側溝60と外側溝62とを有する。外側溝62は内側溝60より深い。ショルダーリブ42sとミドルリブ42mとの間に位置する主溝40を基準主溝40sとしたとき、基準主溝40sの深さに対する内側溝60の深さの百分比は50%以上70%以下であり、基準主溝40sの深さに対する外側溝62の深さの百分比は70%以上90%以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
通常タイヤのトレッドには、周方向に延びる溝(以下、主溝)、軸方向に延びる溝(以下、横溝)等が刻まれている。
トレッドは、路面を踏みしめる。溝の内部では、空気が振動する。この振動は、ノイズを招来する。ノイズは、不快である。ノイズを低減するために、様々な検討がなされている。この検討の一例が、特表2013−514236公報に開示されている。
特表2013−514236公報
多数の横溝を有するタイヤでは、多数のブロックが周方向に並んでいる。一のブロックとその隣に位置するブロックとの間が、横溝である。一のブロックと、その隣に位置するブロックとは、連続していない。横溝が路面を通過するたびに、ブロックの縁(又は、溝の縁)が路面を叩く。これにより、音が発生する。この音は、ピッチ音と称される。ピッチ音は、ノイズの一種である。
大きな容積を有する横溝は、大きなピッチ音を招来する。ピッチ音の低減の観点から、浅い横溝を採用することがある。しかし横溝を浅くすると、トレッドの剛性が増加してしまう。路面には凹凸があるため、浅い横溝を有するトレッドは、路面から受ける衝撃を伝達しやすい。このタイヤでは、乗り心地が損なわれる恐れがある。
本発明の目的は、乗り心地を損なうことなく、ピッチ音の低減が達成された空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、周方向に延在する複数の主溝を有するトレッドを備えている。これらの主溝は、上記トレッドに刻まれている。これによりこのトレッドには、軸方向外側に位置し周方向に延在するショルダーリブと、このショルダーリブの軸方向内側に位置し周方向に延在するミドルリブとが形成されている。上記ショルダーリブは、軸方向に延在する多数の第一横溝を備えている。これらの第一横溝は、上記ショルダーリブに刻まれている。これによりこのショルダーリブには、多数のショルダーブロックが形成されている。これらのショルダーブロックは、周方向に並んでいる。それぞれの第一横溝は、内側溝と、この内側溝の軸方向外側に位置する外側溝とを有している。上記外側溝は、上記内側溝の深さよりも大きな深さを有している。上記ショルダーリブと上記ミドルリブとの間に位置する上記主溝を基準主溝としたとき、この基準主溝の深さに対する内側溝の深さの百分比は50%以上70%以下である。この基準主溝の深さに対する外側溝の深さの百分比は、70%以上90%以下である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記第一横溝の長さに対する上記内側溝の長さの百分比は50%以上60%以下である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記内側溝は上記外側溝の延在方向に対して傾斜して延在している。この傾斜の角度は、10°以上30°以下である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記ミドルリブは軸方向に延在する多数の第二横溝を備えている。これらの第二横溝は、上記ミドルリブに刻まれている。これによりこのミドルリブには、多数のミドルブロックが形成されている。これらのミドルブロックは、周方向に並んでいる。それぞれのミドルブロックは、半端な横溝を有している。軸方向において、上記半端な横溝は上記ミドルブロックを貫通することなくこのミドルブロックの外縁から内向きに延在している。上記半端な横溝の周方向に対する傾斜方向は、上記第二横溝の周方向に対する傾斜方向とは逆である。
好ましくは、この空気入りタイヤは、一対のサイドウォール、一対のクリンチ、一対のフィラー、一対のビード及びカーカスをさらに備えている。それぞれのサイドウォールは、上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びている。それぞれのクリンチは、上記サイドウォールの半径方向内側に位置している。それぞれのフィラーは、上記クリンチよりも軸方向内側に位置している。それぞれのビードは、上記フィラーよりも半径方向内側に位置している。上記カーカスは、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されている。上記フィラーは、上記カーカスの軸方向外側において、上記クリンチと積層されている。上記ビードは、コアと、このコアから半径方向外向きに延びるエイペックスとを備えている。上記カーカスはカーカスプライを備えている。上記カーカスプライは、上記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しによりこのカーカスプライには、主部と折返し部とが形成されている。上記折返し部は、上記フィラーと上記エイペックスとの間に位置している。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記クリンチは、このクリンチの軸方向内面の法線に沿って計測される、最大の厚さTcxを有している。上記厚さTcxのための法線を第一基準線としたとき、この第一基準線に沿って計測される上記フィラーの厚さTf1の、この厚さTf1及びこの厚さTcxの和に対する比は、0.1以上0.6以下である。
本発明に係る空気入りタイヤでは、ショルダーリブに刻まれた第一横溝が、浅い内側溝と、深い外側溝とを有している。このタイヤでは、浅い内側溝は主にピッチ音の低減に寄与し、深い外側溝は主に乗り心地に寄与する。本発明によれば、乗り心地を損なうことなく、ピッチ音の低減が達成された空気入りタイヤが得られる。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤのトレッド面の一部が示された展開図である。 図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。 図4は、図2のIV−IV線に沿った断面図である。 図5は、図2のV−V線に沿った断面図である。 図6は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図7は、図7のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、リムRに組み込まれている。このリムRは、正規リムである。このタイヤ2には、空気が充填されている。このタイヤ2の内圧は、正規内圧である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、インナーライナー16及び一対のチェーファー18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。
このタイヤ2は、小形トラックに装着される。このタイヤ2は、JATMA規格のB章が対象とする小形トラック用タイヤに該当する。特にこのタイヤ2は、雪道での走行も予定したスタッドレスタイヤである。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面20を形成する。図1において、符号TEはトレッド面20の端を表している。トレッド4は、ベース層22とキャップ層24とを有している。ベース層22は、キャップ層24の半径方向内側に位置している。ベース層22は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層22の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層24は、ベース層22に積層されている。キャップ層24は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、カーカス12の軸方向外側に位置している。サイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の半径方向内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ8は、リムRのフランジFと当接する。
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置している。ビード10は、コア26と、このコア26から半径方向外向きに延びるエイペックス28とを備えている。コア26はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス28は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス28は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びクリンチ8の内側に位置している。カーカス12は、カーカスプライ30を備えている。カーカスプライ30は、両側のビード10の間に架け渡されている。カーカスプライ30は、コア26の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、このカーカスプライ30には、主部32と折返し部34とが形成されている。
図示されていないが、カーカスプライ30は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、カーカス12は1枚のカーカスプライ30から形成されている。このカーカス12が、2枚以上のカーカスプライ30から形成されてもよい。
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12の半径方向外側に位置している。ベルト14は、カーカス12と積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。ベルト14は、内側層36及び外側層38からなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層36の幅は外側層38の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層36及び外側層38のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層36のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層38のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト14の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト14が、3以上の層を備えてもよい。
インナーライナー16は、カーカス12の内側に位置している。インナーライナー16は、カーカス12の内面に接合されている。インナーライナー16は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー16の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー18は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムRに組み込まれると、このチェーファー18はリムRと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー18は、布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー18がクリンチ8と一体とされてもよい。この場合、チェーファー18の材質はクリンチ8の材質と同じとされる。
このタイヤ2では、トレッド4は複数の主溝40を有している。これらの主溝40はそれぞれ、周方向に延在している。主溝40は、3.5mm〜6.0mmの幅を有している。これらの主溝40は、トレッド4に刻まれている。これにより、このトレッド4には、複数のリブ42が形成されている。これらのリブ42は、周方向に延在している。これらのリブ42は、軸方向に並んでいる。軸方向において外側に位置するリブ42sは、ショルダーリブと称される。軸方向においてこのショルダーリブ42sの内側に位置するリブ42mは、ミドルリブと称される。赤道面上に位置するリブ42cは、センターリブと称される。
図2は、トレッド面20の展開図である。図2において、上下方向がタイヤ2の周方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の半径方向である。この図2において、矢印Aで示された方向は前進時におけるタイヤ2の移動方向を表している。紙面の上側は先着側であり、その下側は後着側である。
ショルダーリブ42sは、多数の第一横溝44fを有している。これらの第一横溝44fはそれぞれ、軸方向に延在している。これらの第一横溝44fは、ショルダーリブ42sに刻まれている。これにより、このショルダーリブ42sには、多数のショルダーブロック46sが形成されている。これらのショルダーブロック46sは、周方向に並んでいる。ショルダーブロック46sのそれぞれには、円弧状の筋48が複数設けられている。このショルダーブロック46sのそれぞれには、ジグザグ状のサイプ50が複数設けられている。
ミドルリブ42mは、多数の第二横溝44sを有している。これらの第二横溝44sはそれぞれ、軸方向に延在している。第二横溝44sは、1.0mm〜4.0mmの幅を有している。これらの第二横溝44sは、ミドルリブ42mに刻まれている。これにより、このミドルリブ42mには、多数のミドルブロック46mが形成されている。これらのミドルブロック46mは、周方向に並んでいる。ミドルブロック46mのそれぞれには、円弧状の筋48が複数設けられている。このミドルブロック46mのそれぞれには、ジグザグ状のサイプ50が複数設けられている。
このタイヤ2では、第二横溝44sは周方向と交差している。このタイヤ2では、この交差の角度は75°以上85°以下である。この交差の角度は、第二横溝44sの先着側の縁52fが周方向に対してなす角度で表される。この第二横溝44sは、周方向に対して傾斜している。
センターリブ42cには、円弧状の筋48が複数設けられている。このセンターリブ42cには、ジグザグ状のサイプ50が複数設けられている。このセンターリブ42cには、ショルダーリブ42s又はミドルリブ42mのように、軸方向において、その外縁から内縁までを貫通する横溝44は設けられていない。
ショルダーブロック46sは、副溝54を有している。副溝54は、周方向に延在している。副溝54は、0.5mm〜1.5mmの幅を有している。副溝54は、ショルダーブロック46sに刻まれている。これにより、このショルダーブロック46sには、内側部56と外側部58とが形成されている。
このタイヤ2では、一の内側部56とその隣に位置する他の内側部56との間は、内側溝60である。一の外側部58とその隣に位置する他の外側部58との間は、外側溝62である。一のショルダーブロック46sとその隣に位置する他のショルダーブロック46sとの間は、第一横溝44fである。第一横溝44fは、内側溝60と外側溝62とを有している。この第一横溝44fは、内側溝60及び外側溝62からなる。
図2から明らかなように、内側溝60の幅はその全体に亘って一様である。この内側溝60において、先着側の縁64fは後着側の縁64bと平行である。このタイヤ2では、内側溝60は、2.0mm〜5.0mmの幅を有している。この内側溝60が、その幅が軸方向外向きに漸増するように構成されてもよい。
内側溝60は、周方向と交差している。詳細には、この内側溝60は周方向に対して傾斜している。図2において、角度αは内側溝60の先着側の縁64fが周方向に対してなす角度である。本発明においては、この角度αが内側溝60の交差角度として用いられる。
このタイヤ2では、ピッチ音の低減の観点から、交差角度αは100°以上が好ましい。トラクションの観点から、この交差角度αは110°以下が好ましい。
外側溝62は、内側溝60の軸方向外側に位置している。軸方向において、外側溝62は内側溝60から外向きに延在している。図2から明らかなように、外側溝62の幅はその全体に亘って概ね一様である。このタイヤ2では、外側溝62は、3.0mm〜6.0mmの幅を有している。この外側溝62が、その幅が軸方向外向きに漸増するように構成されてもよい。
外側溝62は、周方向と交差している。図2において、角度βは外側溝62の先着側の縁66fが周方向に対してなす角度である。本発明においては、この角度βが外側溝62の交差角度として用いられる。このタイヤ2では、トラクションの観点から、交差角度βは80°以上が好ましく、90°以下が好ましい。
図3には、図2のIII−III線に沿った断面図が示されている。この図3において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図3には、ショルダーリブ42sとミドルリブ42mとの間、言い換えれば、ショルダーブロック46sとミドルブロック46mとの間に位置する主溝40sの断面が示されている。本願において、この主溝40sが基準主溝である。この図3において、両矢印DMはこの基準主溝40sの深さである。このタイヤ2では、基準主溝40sの深さDMは5mm以上20mm以下が好ましい。
図4には、図2のIV−IV線に沿った断面図が示されている。この図4において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の周方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の軸方向である。図2に示されているように、このIV−IV線は、軸方向において、内側部56の幅の中心を通る。
図4には、一の内側部56とその隣に位置する他の内側部56との間に位置する内側溝60の断面が示されている。この図4において、両矢印DUはこの内側溝60の深さである。
このタイヤ2では、内側溝60は基準主溝40sより浅い。言い換えれば、内側溝60の深さDUは基準主溝40sの深さDMよりも小さい。浅い内側溝60は、小さな容積を有する。この内側溝60は、ピッチ音の低減に寄与する。
このタイヤ2では、基準主溝40sの深さDMに対する内側溝60の深さDUの百分比は70%以下である。この深さDUの百分比が70%以下に設定されることにより、小さな容積を有する内側溝60が得られる。この内側溝60は、ピッチ音の低減に効果的に寄与する。このタイヤ2では、この深さDUの百分比は50%以上である。この深さDUの百分比が50%以上に設定されることにより、内側溝60による剛性への影響が抑えられる。路面の凹凸により、トレッド4は衝撃を受ける。しかし、このタイヤ2のトレッド4では、この衝撃の伝搬が抑えられる。このタイヤ2は、乗り心地に優れる。
図5には、図2のV−V線に沿った断面図が示されている。この図5において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の周方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の軸方向である。図2に示されているように、このV−V線は、軸方向において、外側部58の幅の中心を通る。
図5には、一の外側部58とその隣に位置する他の外側部58との間に位置する外側溝62の断面が示されている。この図5において、両矢印DSはこの外側溝62の深さである。
このタイヤ2では、外側溝62は基準主溝40sより浅い。言い換えれば、外側溝62の深さDSは基準主溝40sの深さDMよりも小さい。浅い外側溝62は、小さな容積を有する。この外側溝62は、ピッチ音の低減に寄与する。
このタイヤ2では、外側溝62は内側溝60より深い。言い換えれば、外側溝62の深さDSは内側溝60の深さDUよりも大きい。内側溝60の深さDUよりも大きな深さDSを有する外側溝62は、ショルダーリブ42sの柔軟性に寄与する。前述したように、路面の凹凸によりトレッド4は衝撃を受ける。しかし、このタイヤ2のトレッド4では、この衝撃の伝搬が効果的に抑えられる。このタイヤ2は、乗り心地に優れる。
このタイヤ2では、基準主溝40sの深さDMに対する外側溝62の深さDSの百分比は70%以上である。この深さDSの百分比が70%以上に設定されることにより、外側溝62はショルダーリブ42sの柔軟性に寄与する。このトレッド4では衝撃の伝搬が抑えられるので、このタイヤ2は乗り心地に優れる。このタイヤ2では、この深さDSの百分比は90%以下である。この深さDSの百分比が90%以下に設定されることにより、小さな容積を有する外側溝62が得られる。この外側溝62は、ピッチ音の低減に効果的に寄与する。
以上説明したように、このタイヤ2では、ショルダーリブ42sに刻まれた第一横溝44fが、浅い内側溝60と、深い外側溝62とを有している。このタイヤ2では、浅い内側溝60は主にピッチ音の低減に寄与し、深い外側溝62は主に乗り心地に寄与する。本発明によれば、乗り心地を損なうことなく、ピッチ音の低減が達成された空気入りタイヤ2が得られる。このタイヤ2では、特に、630Hzの周波数を有するピッチ音が効果的に低減される。
図2において、両矢印Cはショルダーブロック46sの軸方向幅を表している。この幅Cは、第一横溝44fの軸方向長さである。この長さCは、ショルダーリブ42sの内縁からトレッド面20の端TEまでの長さで表される。両矢印Bは、ショルダーブロック46sをなす、内側部56の軸方向幅を表している。この幅Bは、内側溝60の軸方向長さである。本発明においては、長さCと長さBとの差が外側溝62の軸方向長さである。
このタイヤ2では、第一横溝44fの長さCに対する内側溝60の長さBの百分比は60%以下が好ましい。この長さBの百分比が60%以下に設定されることにより、外側溝62の長さが適切に維持される。この第一横溝44fは、ショルダーリブ42sの柔軟性に寄与する。このトレッド4では衝撃の伝搬が抑えられるので、このタイヤ2は乗り心地に優れる。このタイヤ2では、この長さBの百分比は50%以上が好ましい。この長さBの百分比が50%以上に設定されることにより、内側溝60の長さが適切に維持される。この第一横溝44fは、小さな容積を有する。この第一横溝44fは、ピッチ音の低減に効果的に寄与する。乗り心地を損なうことなく、ピッチ音の低減が達成されるとの観点から、内側溝60は外側溝62の長さ(C−B)よりも大きな長さBを有するのがより好ましい。特に好ましくは、この長さBの百分比は55%以上である。
このタイヤ2では、外側溝62の延在方向は周方向と実質的に直交している。内側溝60は、この外側溝62の延在方向に対して傾斜して延在している。このタイヤ2では、内側溝60の縁64全体が路面を同時に叩くことが防止されている。しかもこの内側溝60は、小さな容積を有している。この内側溝60を有する第一横溝44fは、ピッチ音の低減に効果的に寄与する。そして内側溝60の軸方向外側に位置する外側溝62は、大きな容積を有している。この外側溝62を有する第一横溝44fは、衝撃の伝搬を効果的に抑える。この第一横溝44fは、乗り心地に寄与する。
図2において、角度γは内側溝60の縁64fが外側溝62の縁66fに対してなす傾斜角度を表している。この傾斜角度γは、交差角度αと交差角度βとの差を算出することにより得られる。
このタイヤ2では、角度γは10°以上30°以下が好ましい。この角度γが10°以上に設定されることにより、内側溝60の縁64全体が路面を同時に叩くことが効果的に防止される。このタイヤ2では、ピッチ音が低減される。この角度γが30°以下に設定されることにより、内側溝60の容積が適切に維持される。この場合においても、ピッチ音は低減される。
好ましくは、このタイヤ2では、図2に示されているように、ミドルブロック46mは半端な横溝68を有している。半端な横溝68は、軸方向において、ミドルブロック46mの外縁から内向きに延在している。この半端な横溝68は、ミドルブロック46mを貫通していない。このタイヤ2では、ミドルリブ42mを貫通する第一横溝44fと、このミドルリブ42mを貫通しない半端な横溝68とが、周方向に交互に並んでいる。
このタイヤ2では、半端な横溝68はミドルブロック46mの柔軟性に寄与する。この半端な横溝68は、浅い内側溝60による剛性への影響を効果的に抑える。このタイヤ2では、乗り心地を損なうことなく、ピッチ音の低減が達成される。この観点から、第二横溝44sの軸方向長さに対する半端な横溝68の軸方向長さの百分比は20%以上が好ましく、40%以下が好ましい。第二横溝44sの軸方向長さ及び半端な横溝68の軸方向長さは、それぞれの軸方向における最大の長さで表される
このタイヤ2では、半端な横溝68の先着側の縁70fは周方向に対して傾斜している。言い換えれば、このタイヤ2の半端な横溝68は周方向に対して傾斜している。このタイヤ2では、図2に示されているように、半端な横溝68の傾斜方向は第二横溝44sの傾斜方向とは逆であるように、この半端な横溝68は設けられるのが好ましい。これにより、半端な横溝68がミドルブロック46mの柔軟性に効果的に寄与する。この半端な横溝68は、浅い内側溝60による剛性への影響を効果的に抑える。このタイヤ2では、乗り心地を損なうことなく、ピッチ音の低減が達成される。
本発明では、タイヤ2及びこのタイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。後述するタイヤについても、同様にして、寸法及び角度は測定される。
図6には、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ72が示されている。図6において、上下方向がタイヤ72の半径方向であり、左右方向がタイヤ72の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ72の周方向である。図6において、一点鎖線CLはタイヤ72の赤道面を表わす。
図6において、符号PBは、タイヤ72の外面上にある、特定の位置を表している。この位置PBは、このタイヤ72とリムRとの接触面の半径方向外側縁に対応している。この接触面は、タイヤ72をリムRに組み込み、正規内圧となるようにこのタイヤ72に空気を充填して得られる。本願においては、この位置PBは別離点と称される。
図6において、実線BBLはビードベースラインである。ビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA参照)を規定する線である。このビードベースラインは、軸方向に延びる。両矢印Hsは、このビードベースラインからこのタイヤ72の赤道PEまでの半径方向高さを表している。この高さHsは、このタイヤ72の断面高さである。
図6において、符号PWはこのタイヤ72の外面上にある、特定の位置を表している。このタイヤ72では、この位置PWにおいて、この外面のプロファイルで表される軸方向幅が最大を示す。このタイヤ72では、この位置PWにおける左右の側面間の軸方向長さが、タイヤ72の最大幅(断面幅とも称される。)として表される。本願においては、この位置PWはタイヤ72の最大幅位置である。
このタイヤ72は、トレッド74、一対のサイドウォール76、一対のクリンチ78、一対のフィラー80、一対のビード82、カーカス84、ベルト86、インナーライナー88及び一対のチェーファー90を備えている。このタイヤ72では、トレッド74、サイドウォール76、ベルト86、インナーライナー88及び一対のチェーファー90は、図1に示されたタイヤ2のそれらと同等である。
それぞれのクリンチ78は、サイドウォール76よりも半径方向内側に位置している。クリンチ78は、ビード82、カーカス84及びフィラー80の軸方向外側に位置している。クリンチ78は、半径方向外向きに先細りである。クリンチ78は、半径方向内向きに先細りである。クリンチ78は、リムRのフランジFと当接する。クリンチ78は、架橋ゴムからなる。この架橋ゴムは、図1に示されたクリンチ8のための架橋ゴムと同等である。
このタイヤ72では、クリンチ78の外端92は、半径方向において、サイドウォール76の内端94よりも外側に位置している。図示されているように、クリンチ78の外端92はサイドウォール76で覆われている。サイドウォール76の内端94は、このタイヤ72の側面上にある。
このタイヤ72では、クリンチ78の複素弾性率Ecは10MPa以上90MPa以下が好ましい。この複素弾性率Ecが10MPa以上に設定されることにより、クリンチ78が剛性に寄与する。このタイヤ72では、撓みが効果的に抑えられる。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。この複素弾性率Ecが90MPa以下に設定されることにより、クリンチ78による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ72は、乗り心地に優れる。
本発明では、クリンチ78の複素弾性率Ecは、「JIS K 6394」の規定に準拠して、下記の測定条件により、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製の商品名「VESF−3」)を用いて計測される。この計測では、クリンチ78のゴム組成物から板状の試験片(長さ=45mm、幅=4mm、厚み=2mm)が形成される。この試験片が、計測に用いられる。なお、後述するエイペックスの複素弾性率Ea及びフィラー80の複素弾性率Efも、同様にして得られる。
初期歪み:10%
振幅:±2.0%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
それぞれのフィラー80は、クリンチ78よりも軸方向内側に位置している。フィラー80は、半径方向外向きに先細りである。フィラー80は、半径方向内向きに先細りである。フィラー80は、架橋ゴムからなる。
このタイヤ72では、フィラー80の内端96は、半径方向において、別離点PBよりも内側に位置するのが好ましい。言い換えれば、フィラー80の一部が別離点PBよりも半径方向内側に位置するのが好ましい。これにより、フィラー80の一部がビード82とフランジFとの間に挟まれるので、フィラー80がビード82の部分の変形に抗するように作用する。このフィラー80は、ビード82の部分のしなやかな撓みに寄与する。
このタイヤ72では、フィラー80の複素弾性率Efは15MPa以上75MPa以下が好ましい。この複素弾性率Efが15MPa以上に設定されることにより、フィラー80が剛性に寄与する。このタイヤ72では、撓みが効果的に抑えられる。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。この複素弾性率Efが75MPa以下に設定されることにより、フィラー80による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ72は、乗り心地に優れる。
それぞれのビード82は、フィラー80よりも半径方向内側に位置している。ビード82は、フィラー80及びクリンチ78よりも軸方向内側に位置している。ビード82は、コア98と、エイペックス100とを備えている。コア98は、図1に示されたコア26の構成と同等の構成を有している。エイペックス100は、コア98から半径方向外向きに延びている。エイペックス100は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス100の先端102は、半径方向において、フィラー80の内端96とその外端104との間に位置している。エイペックス100は、架橋ゴムからなる。この架橋ゴムは、図1に示されたエイペックス28のための架橋ゴムと同等である。
このタイヤ72では、エイペックス100の複素弾性率Eaは20MPa以上60MPa以下が好ましい。この複素弾性率Eaが20MPa以上に設定されることにより、エイペックス100が剛性に寄与する。このタイヤ72では、撓みが効果的に抑えられる。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。この複素弾性率Eaが60MPa以下に設定されることにより、エイペックス100による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ72は、乗り心地に優れる。
前述したように、このタイヤ72では、フィラー80は架橋ゴムからなる。タイヤ72に用いられるゴムの種類を減らすことは、タイヤ72のコストに寄与する。この観点から、フィラー80が、エイペックス100の架橋ゴムと同等の架橋ゴムで構成されてもよい。言い換えれば、フィラー80の材質がエイペックス100の材質と同じとされてもよい。
カーカス84は、一枚のカーカスプライ106からなる。カーカスプライ106は、図1に示されたカーカスプライ30の構成と同等の構成を有している。
このタイヤ72では、カーカスプライ106は、コア98の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ106には、主部108と折返し部110とが形成されている。
図6から明らかなように、折返し部110の端112は最大幅位置PWの近くに位置している。このタイヤ72のカーカス84は、「ハイターンアップ(HTU)」構造を有している。このタイヤ72では、この折返し部110の端112がビード82の近くに位置するように、このカーカス84が構成されてもよい。この場合、このカーカス84の構造は「ローターンアップ(LTU)」構造と称される。なお、カーカス84が折り返された2枚のカーカスプライ106からなる場合には、半径方向において、最も外側に端が位置する折返し部に基づいて、「HTU」構造と「LTU」構造とが区別される。
図6において、両矢印Htはビードベースラインから折返し部110の端112までの半径方向高さを表している。
このタイヤ72では、高さHtの断面高さHsに対する比は0.45以上0.55以下が好ましい。この比が0.45以上に設定されることにより、折返し部110の端112に、圧縮方向の力が作用することが防止される。この比が0.55以下に設定された場合においても、折返し部110の端112に圧縮方向の力が作用することが防止される。このタイヤ72では、折返し部110の端112に歪みは集中しにくい。
このタイヤ72のカーカス84が「LTU」構造を有する場合、この高さHtは28mm以下が好ましい。これにより、折返し部110の端112に圧縮方向の力が作用することが防止される。このタイヤ72では、折返し部110の端112に歪みは集中しにくい。折返し部110が引き抜かれることが防止され、カーカス84に十分なテンションが掛けられるとの観点から、この高さHtは5mm以上が好ましい。
図7には、図6のタイヤ72のビード82の部分が示されている。図7において、上下方向がタイヤ72の半径方向であり、左右方向がタイヤ72の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ72の周方向である。
図7に示されているように、折返し部110は、フィラー80とエイペックス100との間に位置している。フィラー80は、カーカス84の軸方向外側において、クリンチ78と積層されている。
このタイヤ72では、カーカス84とクリンチ78との間にフィラー80が設けられることにより、折返し部110がタイヤ72の内面に近い位置に配置されている。このタイヤ72では、折返し部110に圧縮方向の力が作用することが防止されている。しかもこのタイヤ72のカーカス84には、十分なテンションが掛けられる。このカーカス84は剛性に寄与するので、ロードインデックスに相当する荷重がタイヤ72にかけられても、ビード82の部分の撓みは小さい。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。
ロードインデックスは、JATMA規格において定められている。ロードインデックスは、規定の条件下でタイヤに負荷することが許される最大の質量を表す指数である。
このタイヤ72では、ビード82のエイペックス100の大きさは、従来のエイペックス28の大きさに比べて小さい。小さなエイペックス100は、折返し部110をタイヤ72の内面により近い位置に配置させる。このタイヤ72では、折返し部110に圧縮方向の力が作用することが効果的に防止されている。しかもこのタイヤ72のカーカス84には、より十分なテンションが掛けられる。このカーカス84は剛性に寄与するので、ロードインデックスに相当する荷重がタイヤ72にかけられても、ビード82の部分の撓みは小さい。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。
このタイヤ72では、エイペックス100の複素弾性率Eaに対するフィラー80の複素弾性率Efの百分比が適切に整えられている。好ましくは、エイペックス100の複素弾性率Eaに対するフィラー80の複素弾性率Efの百分比は70%以上125%以下である。弾性率Efの百分比が70%以上に設定されたフィラー80は、エイペックス100に比べて軟らかすぎない。フィラー80は、剛性に寄与する。このタイヤ72では、ロードインデックスに相当する荷重がタイヤ72にかけられても、ビード82の部分の撓みは小さい。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。この観点から、この弾性率Efの百分比は90%以上が好ましく、100%以上がより好ましい。この弾性率Efの百分比が125%以下に設定されたフィラー80は、エイペックス100に比べて硬すぎない。エイペックス100の剛性とフィラー80の剛性との乖離が抑えられているので、折返し部110には、歪みは集中しにくい。この観点から、この弾性率Efの百分比は110%以下が好ましい。
このタイヤ72では、クリンチ78の厚さ及びフィラー80の厚さはこのクリンチ78の軸方向内面の法線に沿って計測される。図7において、両矢印Tcxはクリンチ78の最大の厚さを表している。つまりクリンチ78は、最大の厚さTcxを有している。図7においては、この厚さTcxのための法線が直線L1で表されている。本発明では、この法線L1は第一基準線と称される。両矢印Tf1は、この第一基準線L1に沿って計測されるフィラー80の厚さである。さらに図7において、両矢印Tfxはフィラー80の最大の厚さを表している。つまりフィラー80は、最大の厚さTfxを有している。図7においては、この厚さTfxのための法線が直線L2で表されている。本発明では、この法線L2は第二基準線と称される。
このタイヤ72では、好ましくは、厚さTf1の、厚さTf1及び厚さTcxの和(Tf1+Tcx)に対する比は、0.1以上0.6以下である。この比が0.1以上に設定されることにより、フィラー80が剛性に寄与する。このタイヤ72では、撓みが効果的に抑えられる。ロードインデックスに相当する荷重がタイヤ72にかけられても、ビード82の部分の撓みは小さい。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。この観点から、この比は0.14以上がより好ましく、0.20以上がさらに好ましい。この比が0.6以下に設定されることにより、ビード82の部分の剛性が適切に維持される。このタイヤ72では、ビード82の部分が適正に撓むので、撓みで生じる歪みの位置が特異でない。このタイヤ72では、折返し部110に歪みは集中しにくい。この観点から、この比は0.50以下がより好ましい。このようにこのタイヤ72では、フィラー80の厚さのコントロールにより、ビード82の部分の撓みの程度と、この撓みで生じる歪みの位置とが整えられている。
前述したように、このタイヤ72のトレッド74は、図1に示されたトレッド4の構成と同等の構成を有している。このトレッド74は、一のショルダーブロック114sとその隣に位置する他のショルダーブロック114sとの間に、第一横溝116fを有している。第一横溝116fは、浅い内側溝118と、深い外側溝120とを有している。このタイヤ72では、浅い内側溝118は主にピッチ音の低減に寄与し、深い外側溝120は主に乗り心地に寄与する。
このタイヤ72では、カーカス84とクリンチ78との間にフィラー80を設けることにより、歪みの集中が抑えられている。このタイヤ72は、しなやかに撓む。このタイヤ72では、そのトレッド74のショルダー側の動きは、図1に示されたタイヤ2のそれに比べて小さい。このタイヤ72では、フィラー80の採用により、第一横溝116fの縁が路面を叩く力は、図1に示されたタイヤ2のそれよりも弱められている。このタイヤ72で発生するピッチ音は、かなり小さい。本発明によれば、乗り心地を損なうことなく、ピッチ音のより一層の低減が達成された空気入りタイヤ72が得られる。
図7において、符号P1は第一基準線L1とクリンチ78の軸方向内面との交点を表している。両矢印H1は、フィラー80の内端96からこの交点P1までの半径方向高さを表している。符号P2は、第二基準線L2とクリンチ78の軸方向内面との交点を表している。両矢印H2は、フィラー80の内端96からこの交点P2までの半径方向高さを表している。両矢印Hfは、フィラー80の内端96からその外端までの半径方向高さを表している。この高さHfは、フィラー80の半径方向高さである。
このタイヤ72では、高さH2の高さH1に対する比は0.6以上1.2以下が好ましい。この比が0.6以上に設定されることにより、第二基準線L2とコア98との間にある、折返し部110の湾曲の程度が適正に維持される。このタイヤ72では、カーカス84に十分なテンションが掛けられる。このカーカス84は剛性に寄与するので、ロードインデックスに相当する荷重がタイヤ72にかけられても、ビード82の部分の撓みは小さい。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。この観点から、この比は0.70以上がより好ましい。この比が1.2以下に設定されることにより、最大幅位置PWからエイペックス100の先端102までのゾーンにおけるカーカス84の輪郭(カーカスラインとも称される。)が適正な曲率半径を有する円弧で表される。このタイヤ72では、サイドウォール76の部分においても、カーカス84に歪みは集中しにくい。この観点から、この比は1.1以下がより好ましい。
このタイヤ72では、高さH2の高さHfに対する比は0.25以上0.5以下が好ましい。この比が0.25以上に設定されることにより、第二基準線L2とコア98との間にある、折返し部110の湾曲の程度が適正に維持される。このタイヤ72では、カーカス84に十分なテンションが掛けられる。このカーカス84は剛性に寄与するので、ロードインデックスに相当する荷重がタイヤ72にかけられても、ビード82の部分の撓みは小さい。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。この比が0.5以下に設定されることにより、最大幅位置PWからエイペックス100の先端102までのゾーンにおけるカーカスラインが適正な曲率半径を有する円弧で表される。このタイヤ72では、サイドウォール76の部分においても、カーカス84に歪みは集中しにくい。
このタイヤ72では、クリンチ78が最大の厚さTcxを有する位置(以下、厚さTcxの位置)において、厚さTf1を有するフィラー80が、ビード82の部分のしなやかな撓みに寄与する。そして、この厚さTcxの位置の近くにおいて、フィラー80が最大の厚さTfxを有することにより、カーカス84に十分なテンションが掛けられるとともに、このカーカス84の輪郭が、ビード82の部分のみならず、タイヤ72全体のしなやかな撓みに寄与する。このタイヤ72には、歪みは集中しにくい。このタイヤ72はしなやかに撓む。このタイヤ72では、第一横溝116fの縁が路面を叩く力は、図1に示されたタイヤ2のそれよりも一層弱められる。このタイヤ72では、ピッチ音の一層の低減が図られる。
図7において、両矢印TAはタイヤ72の厚さを表している。この厚さTAは、第一基準線L1に沿って計測される。この厚さTAは、厚さTcxの位置における、タイヤ72の厚さである。
このタイヤ72では、厚さTAは10mm以上20mm以下が好ましい。この厚さTAが10mm以上に設定されることにより、ビード82の部分は適度な剛性を有する。ロードインデックスに相当する荷重がタイヤ72にかけられても、ビード82の部分の撓みは小さい。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。このタイヤ72はしなやかに撓む。このタイヤ72では、ピッチ音の一層の低減が図られる。この観点から、この厚さTAは12mm以上がより好ましい。この厚さTAが20mm以下に設定されることにより、厚さTAによる質量及びコストへの影響が抑えられる。しかもビード82の部分の剛性が適切に維持されるので、このタイヤ72は乗り心地に優れる。この観点から、この厚さTAは18mm以下がより好ましい。
このタイヤ72では、フィラー80の外端104は、半径方向において、クリンチ78の外端92よりも内側又は外側に位置しているのが好ましい。言い換えれば、フィラー80の外端104は、半径方向において、クリンチ78の外端92と一致していないのが好ましい。これにより、撓みに伴う歪みが、異なる位置にあるフィラー80の外端104及びクリンチ78の外端92に分散される。歪みの分散は、タイヤ72のしなやかな撓みに寄与する。このタイヤ72では、ピッチ音の一層の低減が図られる。図7において、両矢印Dsはクリンチ78の外端92からフィラー80の外端104までの半径方向距離を表している。歪みを分散させピッチ音の低減を図るとの観点から、フィラー80の外端104がクリンチ78の外端92よりも半径方向内側に位置している場合においても、このフィラー80の外端104がクリンチ78の外端92よりも半径方向外側に位置している場合においても、この距離Dsは5mm以上が好ましい。歪みの分散の観点から、フィラー80の外端104はクリンチ78の外端92から離れた位置に設けられるのが好ましいので、この距離Dsの上限は設定されない。
前述したように、クリンチ78はリムRのフランジFと当接する。このクリンチ78には、フランジFとの擦れによるボリュームの低減を防止するために、耐摩耗性が要求される。このクリンチ78にはフィラー80が積層されるので、歪みの集中の観点から、クリンチ78の剛性とフィラー80の剛性とのバランスも重要である。耐摩耗性及び剛性のバランスの観点から、フィラー80の複素弾性率Efに対するクリンチ78の複素弾性率Ecの百分比は、70%以上が好ましく、125%以下が好ましい。
図6において、両矢印Hcはビードベースラインからクリンチ78の外端92までの半径方向高さを表している。この高さHcは、クリンチ78の高さである。両矢印Laは、エイペックス100の長さである。この長さLaは、エイペックス100の底面の軸方向中心(図6の符号PC)からその先端102までの長さで表される。両矢印Lfは、フィラー80の長さである。この長さLfは、フィラー80の内端96とその外端104とを結ぶ線分の長さで表される。
このタイヤ72では、クリンチ78の高さHcは30mm以上60mm以下が好ましい。この高さHcが30mm以上に設定されることにより、クリンチ78よりも柔軟なサイドウォール76がフランジFと接触することが防止される。このタイヤ72では、フランジFと擦れて、ビード82の部分のボリュームが低減するという損傷(リムチェーフィングとも称される。)が防止される。この高さHcが60mm以下に設定されることにより、最大幅位置PWよりも内側の部分の剛性が適切に維持される。このタイヤ72では、その全体がしなやかに撓む。しかもこのタイヤ72では、クリンチ78の外端92、そして、折返し部110の端112には、歪みは集中しにくい。このタイヤ72では、ピッチ音の一層の低減が図られる。
このタイヤ72では、エイペックス100の長さLaは10mm以下が好ましい。この長さが10mm以下に設定されることにより、エイペックス100の先端102への歪みの集中が防止される。このタイヤ72はしなやかに撓む。このタイヤ72では、ピッチ音の一層の低減が図られる。この長さLaは、5mm以上が好ましい。これにより、第二基準線L2とコア98との間にある、折返し部110の湾曲の程度が適正に維持され、耐久性への影響が抑えられる。
このタイヤ72では、フィラー80の長さLfは10mm以上50mm以下が好ましい。この長さLfが10mm以上に設定されることにより、フィラー80は剛性に寄与する。このタイヤ72では、ロードインデックスに相当する荷重がタイヤ72にかけられても、ビード82の部分の撓みは小さい。小さな撓みは、歪みの集中を抑える。このタイヤ72はしなやかに撓む。このタイヤ72では、ピッチ音の一層の低減が図られる。この長さLfが50mm以下に設定されることにより、最大幅位置PWよりも内側の部分の剛性が適切に維持される。このタイヤ72では、その全体がしなやかに撓む。しかもこのタイヤ72では、フィラー80の外端104、そして、折返し部110の端112には、歪みは集中しにくい。このタイヤ72はしなやかに撓む。このタイヤ72では、ピッチ音の一層の低減が図られる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1−5に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、155/80R14である。このタイヤには、フィラーは設けられていない。外側溝の交差角度βは、90°とされた。基準主溝の深さDMに対する内側溝の深さDUの百分比、この深さDMに対する外側溝の深さDSの百分比、第一横溝の長さCに対する内側溝の長さBの百分比、及び、内側溝が外側溝の延在方向に対してなす傾斜角度γは、下記の表1の通りである。
[実施例2−8及び比較例1−7]
内側溝の深さDUの百分比及び外側溝の深さDSの百分比を下記の表1から4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−8及び比較例1−7のタイヤを得た。
[実施例9−12]
内側溝の長さBの百分比を下記の表5の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例9−12のタイヤを得た。
[実施例13−16]
傾斜角度γを下記の表6の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例13−16のタイヤを得た。
[実施例17]
図6−7に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、155/80R14である。外側溝の交差角度βは、90°とされた。基準主溝の深さDMに対する内側溝の深さDUの百分比、この深さDMに対する外側溝の深さDSの百分比、第一横溝の長さCに対する内側溝の長さBの百分比、及び、内側溝が外側溝の延在方向に対してなす傾斜角度γは、下記の表7の通りである。
この実施例17には、フィラーが設けられている。比(Tf1/(Tf1+Tcx)及び比(H2/H1)は、下記の表7の通りである。
[実施例18−19及び比較例8−11]
内側溝の深さDUの百分比及び外側溝の深さDSの百分比を下記の表7の通りとした他は実施例17と同様にして、実施例18−19及び比較例8−11のタイヤを得た。
[実施例20−22]
比(Tf1/(Tf1+Tcx)を下記の表8の通りとした他は実施例17と同様にして、実施例20−22のタイヤを得た。
[実施例23−25]
比(H2/H1)を下記の表9の通りとした他は実施例17と同様にして、実施例23−25のタイヤを得た。
[ピッチ音の評価]
タイヤを5.0Jのリムに組み込んだ。フロントタイヤには、内圧が240kPaとなるように空気を充填した。リアタイヤには、内圧が290kPaとなるように空気を充填した。タイヤを、排気量が1500ccである商用車に装着した。この商用車には、ドライバーを含めて2名が乗車した。荷台には、150kgの質量を有する荷物が載せられた。ドライバーに、この商用車をレーシングサーキットで運転させて、ピッチ音(周波数=630Hz)を計測した。この結果が、下記の表1−9に示されている。数値が小さいほど好ましい。
[乗り心地]
タイヤを5.0Jのリムに組み込んだ。フロントタイヤには、内圧が240kPaとなるように空気を充填した。リアタイヤには、内圧が290kPaとなるように空気を充填した。タイヤを、排気量が1500ccである商用車に装着した。この商用車には、ドライバーを含めて2名が乗車した。荷台には、150kgの質量を有する荷物が載せられた。ドライバーに、この商用車をレーシングサーキットで運転させて、乗り心地を評価させた。この結果が、比較例1を5.0とした指数で下記の表1−9に示されている。数値が大きいほど好ましい。
Figure 2016083945
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表1−9に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。フィラーを設けてタイヤの撓みをコントロールすると、ピッチ音の一層の低減が図れることも確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された第一横溝に関する技術は、様々な用途のタイヤにも適用されうる。
2、72・・・タイヤ
4、74・・・トレッド
6、76・・・サイドウォール
8、78・・・クリンチ
10、82・・・ビード
12、84・・・カーカス
20・・・トレッド面
26、98・・・コア
28、100・・・エイペックス
30、106・・・カーカスプライ
32、108・・・主部
34、110・・・折返し部
40、40s・・・主溝
42、42s、42m、42c・・・リブ
44f、44s、44、116f・・・横溝
46s、46m、114s・・・ブロック
60、118・・・内側溝
62、120・・・外側溝
68・・・半端な横溝

Claims (6)

  1. 周方向に延在する複数の主溝を有するトレッドを備えており、
    これらの主溝が上記トレッドに刻まれており、これによりこのトレッドには、軸方向外側に位置し周方向に延在するショルダーリブと、このショルダーリブの軸方向内側に位置し周方向に延在するミドルリブとが形成されており、
    上記ショルダーリブが軸方向に延在する多数の第一横溝を備えており、
    これらの第一横溝が上記ショルダーリブに刻まれており、これによりこのショルダーリブには、多数のショルダーブロックが形成されており、これらのショルダーブロックが周方向に並んでおり、
    それぞれの第一横溝が内側溝と、この内側溝の軸方向外側に位置する外側溝とを有しており、
    上記外側溝が上記内側溝の深さよりも大きな深さを有しており、
    上記ショルダーリブと上記ミドルリブとの間に位置する上記主溝を基準主溝としたとき、
    この基準主溝の深さに対する内側溝の深さの百分比が50%以上70%以下であり、
    この基準主溝の深さに対する外側溝の深さの百分比が70%以上90%以下である、空気入りタイヤ。
  2. 上記第一横溝の長さに対する上記内側溝の長さの百分比が50%以上60%以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 上記内側溝が上記外側溝の延在方向に対して傾斜して延在しており、この傾斜の角度が10°以上30°以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 上記ミドルリブが軸方向に延在する多数の第二横溝を備えており、
    これらの第二横溝が上記ミドルリブに刻まれており、これによりこのミドルリブには、多数のミドルブロックが形成されており、これらのミドルブロックが周方向に並んでおり、
    それぞれのミドルブロックが半端な横溝を有しており、
    軸方向において、上記半端な横溝が上記ミドルブロックを貫通することなくこのミドルブロックの外縁から内向きに延在しており、
    上記半端な横溝の周方向に対する傾斜方向が、上記第二横溝の周方向に対する傾斜方向とは逆である、請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 一対のサイドウォール、一対のクリンチ、一対のフィラー、一対のビード及びカーカスをさらに備えており、
    それぞれのサイドウォールが、上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びており、
    それぞれのクリンチが、上記サイドウォールの半径方向内側に位置しており、
    それぞれのフィラーが、上記クリンチよりも軸方向内側に位置しており、
    それぞれのビードが、上記フィラーよりも半径方向内側に位置しており、
    上記カーカスが、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されており、
    上記フィラーが、上記カーカスの軸方向外側において、上記クリンチと積層されており、
    上記ビードが、コアと、このコアから半径方向外向きに延びるエイペックスとを備えており、
    上記カーカスがカーカスプライを備えており、
    上記カーカスプライが上記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返されており、この折り返しによりこのカーカスプライには主部と折返し部とが形成されており、
    上記折返し部が、上記フィラーと上記エイペックスとの間に位置している、請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 上記クリンチが、このクリンチの軸方向内面の法線に沿って計測される、最大の厚さTcxを有しており、
    上記厚さTcxのための法線を第一基準線としたとき、
    この第一基準線に沿って計測される上記フィラーの厚さTf1の、この厚さTf1及びこの厚さTcxの和に対する比が、0.1以上0.6以下である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
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