JP2016082636A - モータ制御装置、圧縮機、空気調和機およびプログラム - Google Patents

モータ制御装置、圧縮機、空気調和機およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】空気調和機等に適用されるモータ制御装置において、騒音や振動の低減と消費電力の低減とをバランスを取りつつ実現する。
【解決手段】直流電圧を交流電圧に変換する電力変換回路と、該電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部とを備え、負荷装置に接続された電動機を交流電圧によって駆動するモータ制御装置において、該制御部は、電動機または負荷装置の振動量に応じて増減する振動対応量(Δτm ^)を取得する手段と、該振動対応量に基づいてドライブ信号(Iqsin *)を決定するドライブ信号決定部(11a)とを設けた。
【選択図】図17

Description

本発明は、モータ制御装置、圧縮機、空気調和機およびプログラムに関する。
空気調和機等に適用されるモータ制御装置の背景技術として、例えば、特許文献1の要約書には、「交流同期電動機の回転駆動対象となる負荷装置が周期的な外乱を発生する場合に、この周期的な外乱を抑制しつつ、入力電力の低減を図った電動機制御装置を提供する」および「負荷装置が発生するトルクの脈動成分を抽出し、それを補償するトルク制御において、脈動成分を補正する電流成分を制限するリミッタを設ける」と記載されている。
特開2006−180605号公報
しかし、特許文献1には、リミッタが脈動成分を補正する電流成分を制限する際、周期的な外乱との関係において如何なる条件下で制限するのか開示されていない。すなわち、騒音や振動の低減と消費電力の低減とをバランスを取りつつ実現することは特許文献1では考慮されていなかった。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、騒音や振動の低減と消費電力の低減とをバランスを取りつつ実現できるモータ制御装置、圧縮機、空気調和機およびプログラムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明にあっては、電動機または負荷装置の振動量に応じて増減する振動対応量を取得し、この振動対応量に基づいて電動機を制御することを特徴とする。
本発明によれば、電動機等の騒音や振動の低減と消費電力の低減とをバランスを取りつつ実現できる。
比較例1による圧縮機の全体ブロック図である。 比較例1における電力変換回路および電流検出部の構成を示すブロック図である。 比較例1における負荷装置である回転ロータリー型圧縮機構部の構成を示す図である。 比較例1における電気角、機械角、座標系を説明する図である。 比較例1におけるPWM信号作成器の波形図である。 比較例1における制御部のブロック図である。 比較例1における電圧指令値演算部のブロック図である。 比較例1におけるPLL制御器のブロック図である。 比較例1におけるトルク電流指令値作成器のブロック図である。 比較例1における各部の波形図である。 比較例2による圧縮機の全体ブロック図である。 比較例2における制御部のブロック図である。 比較例2における脈動トルク推定器の原理を示すブロック図である。 比較例2における脈動トルク電流指令値作成器のブロック図である。 比較例2における機械速度ωrに対する振動振幅値の特性を示す図である。 比較例2における制御応答周波数に対する振動振幅値および消費電力の特性を示す図である。 本発明の第1実施形態における圧縮機の全体ブロック図である。 第1実施形態における制御部のブロック図である。 第1実施形態における振動状態推定器のブロック図である。 第1実施形態における脈動トルク電流指令値作成器のブロック図である。 第1実施形態の動作説明図である。 第2実施形態による圧縮機の外観構成を示す図である。 第2実施形態における脈動トルク電流指令値作成器のブロック図である。 第2実施形態における指令値切替器の動作説明図である。 第2実施形態における指令値切替器の他の動作説明図である。 第3実施形態における脈動トルク電流指令値作成器のブロック図である。 第3実施形態における他の振動状態推定器のブロック図である。 第3実施形態における各部の波形図である。 第4実施形態における空気調和機の冷却系統図である。 振動状態推定器の変形例のブロック図である。 振動状態推定器の他の変形例のブロック図である。 脈動トルク電流指令値作成器の変形例のブロック図である。 脈動トルク電流指令値作成器の他の変形例のブロック図である。
[比較例1]
<比較例1の構成>
(比較例1の全体構成)
本発明の実施形態を説明する前に、実施形態と比較するための比較例1の構成について説明する。図1は比較例1による圧縮機の全体構成を示す図である。この圧縮機は、圧縮機構である負荷装置9と、該負荷装置9を駆動する電動機6と、電動機6を制御するモータ制御装置1aとから構成されている。
図1において、モータ制御装置1aは、電力変換回路5にドライブ信号を出力する制御部2aを有している。電力変換回路5は直流電圧源とインバータとを内蔵し、インバータは上記ドライブ信号に基づいて交流電圧を出力する。電動機6はこの交流電圧によって回転し、電動機6に結合された負荷装置9を回転駆動する。これにより、ドライブ信号に基づいた電圧または電流により、電動機(モータ)6の速度やトルクが所期の状態になるように制御される。
本比較例において、電動機6は、回転子に永久磁石を有する永久磁石同期モータである。また、電動機6により駆動される負荷装置9は、本比較例においては、回転ロータリー型圧縮機構である。電流検出部7は、電動機6あるいは電力変換回路5に流れる電流を検出する。これら制御部2aと、電力変換回路5と、電流検出部7とによってモータ制御装置1aが構成されている。
次に、電力変換回路5と電流検出部7の構成を図2に示す。電力変換回路5は、図2に示すように、インバータ21と、直流電圧源20と、ゲートドライバ回路23とを有している。インバータ21は、スイッチング素子22a〜22f(例えば、IGBTやMOS−FET等の半導体スイッチング素子)と、これらに並列に接続された還流用ダイオードとを有している。なお、スイッチング素子22a〜22fを総称して「スイッチング素子22」と呼ぶ。
これらのスイッチング素子22は、2組のスイッチング素子22が直列に接続されることにより、各相の上下アームを構成している。図2の例においては、スイッチング素子22a,22bによりU相、スイッチング素子22c,22dによりV相、スイッチング素子22e,22fによりW相の上下アームが構成されている。各相の上下アームの接続点は、電動機6へ接続されている。ゲートドライバ回路23は、供給されたパルス状のドライブ信号を増幅して出力する。スイッチング素子22は、ゲートドライバ回路23が出力するドライブ信号24a〜24fに応じて、直流電圧源20の出力電圧をスイッチングする。
本比較例においては、直流電圧源20には、シャント抵抗器25が直列接続されている。これは、過大な電流が流れないようにスイッチング素子22を保護するものである。このように、直流電圧源20の出力電圧をスイッチングして3相交流電圧を出力することにより、任意の周波数の3相交流電圧を電動機6に印加することができ、これによって電動機6を可変速駆動することができる。電流検出部7は、電力変換回路5から電動機6に流れる3相の交流電流のうち、U相とW相に流れる電流Iu,Iwを検出する。勿論、全相の交流電流を検出しても差支えないが、キルヒホッフの第1法則から、3相のうち2相が検出できれば、他の1相は検出した2相から算出できる。
本比較例は、電動機6や負荷装置9等の機械部分において生じる振動や騒音の問題を解消しようとするものである。そのために、まず負荷装置9すなわち回転ロータリー型の圧縮機構における具体的な課題について述べる。図3(a),(b)は、本比較例において負荷装置9として採用される回転ロータリー型圧縮機構部500を示す。図3(a)は圧縮機構部500および電動機6の側断面図を示し、図3(b)は図3(a)におけるA−A’断面図である。図3(a)において圧縮機構部500は、密閉容器511に収容された電動機6と、該電動機6によって駆動される負荷装置9としての圧縮機構部500とを有している。圧縮機構部500は、円筒状のシリンダ504と、偏心しつつ該シリンダ504内を回動自在に構成されたロータリーピストン501とを有している。
電動機6は回転子6aと固定子6bとを有しており、回転子6aはシャフト502を上方向に突出させている。このシャフト502はクランクシャフト503に結合され、クランクシャフト503はロータリーピストン501に結合されている。これにより、圧縮機構部500は電動機6のシャフト502により回転駆動される。また、図3(b)に示すように、シリンダ504には、吸込み口505と吐出口507とが形成されるとともに、ベーン506が設けられている。ベーン506は、シリンダ504の中心に向かって付勢されており、ロータリーピストン501に摺動しつつ半径方向に移動自在になっている。
上記構成により圧縮機構部500では、電動機6を動力源としてロータリーピストン501が偏心駆動され、圧縮機としての吸込み、圧縮、吐出の一連の工程が実行される。次に、図3(b)を参照しつつ具体的な圧縮工程を説明する。まずシリンダ504に設けられた吸込み口505から気化した冷媒が吸い込まれる。その後、電動機6の回転によりロータリーピストン501が回転し、ベーン506の図中の左側の容積が小さくなることで冷媒が圧縮される。さらにロータリーピストン501が回転し、上部に戻るあたりで吐出口507から、圧縮された(液化された)冷媒が吐出される。以上のような吸込み、圧縮、吐出の一連の工程においては、ロータリーピストン501に印加される圧力が変化する。この圧力変化を、ロータリーピストン501を駆動する電動機6から見ると、周期的に負荷トルクが変化していることを意味する。
図4(a)は、ロータリーピストン501の機械角1回転における、回転子6aの回転角度位置θdに対する負荷トルクτLの変化の例を示す図である。図4(a)の横軸はロータリーピストン501の1周期(0度から360度)を示し、縦軸は負荷トルクτLの大きさを示している。本比較例では、電動機6として4極電動機(回転子6aの極数が「4」)の例を示しているため、電気角2周期が機械角1周期に相当する。したがって、仮に、電動機6が6極であった場合は、電気角3周期が機械角1周期に相当することになる。また、回転子6aの位置とロータリーピストン501との位置関係は組み付けによって決まるが、図4(a)ではロータリーピストン501が、図3(a)においてベーン506を最大限外側に押し出す位置を0°としている。
図4(a)によれば、圧縮工程が進むにつれ負荷トルクτLが急激に大きくなり、吐出工程では、負荷トルクτLが減少しており、1回転中において負荷トルクτLが変動している事が分かる。また、回転する度に回転角度位置に応じて負荷トルクτLが変動するため、電動機6から見ると周期的に負荷トルクτLが変動していることになる。従って、電動機6の回転の都度、図4(a)のパターンのトルク変化が生じていることになる。但し、たとえ同一の圧縮機構部500を用いたとしても、電動機6の回転速度、吸込み口505や吐出口507の圧力、吸込み口505と吐出口507の圧力差等によって、負荷トルクτLのピーク値や、ピーク値となる回転角度位置θdや、負荷トルクの増減変化波形は変化する。
圧縮機構部500における負荷トルクτLの変動と、電動機6が発生するモータトルクτmとに差が生じると、振動や騒音が生じる。特に、前述のように負荷トルクτLの変動が大きい場合は、制御部2aの構成によっては、電動機6に流れる電流に跳ね上りが生じ、あるいは電動機6の回転速度変動が生じるため、振動や騒音が生じやすい。そのため、負荷トルクτLの変動を考慮して制御部2aを構成することが望ましい。本比較例においては、周期的な負荷変動に対応し電動機6の騒音や振動を低減しようとしているため、その目的を達成するために望まれることは、負荷トルクτLとモータトルクτmとをなるべく一致させることである。
(座標軸の説明)
モータ制御装置1aの各部の説明の前に、座標軸の定義を明確にしておく。図4(b)は、モータ制御装置1aにて検出、推定、あるいは仮定する制御軸の回転角度位置(推定回転角度位置θdc)と、実際の回転子6aの回転角度位置θdとの関係を示す図である。回転子6aに設けられた永久磁石の主磁束方向の位置をd軸とし、d軸から回転方向に電気的に90度(電気角90度)進んだq軸とからなるd−q軸を定義する。このd−q軸は回転座標系である。
図4(b)において、回転子6aの回転角度位置θdはd軸の位相を示す。このd−q軸に対し、制御上の仮想回転子位置をdc軸とし、そこから回転方向に電気的に90度進んだ軸をqc軸とし、dc軸,qc軸からなるdc−qc軸を定義する。dc−qc軸も回転座標系である。これらの座標軸の関係が図4(b)に示されている。なお、これ以降の説明において、d−q軸を実軸、dc−qc軸を制御軸と呼ぶ。また、実軸と制御軸のズレである誤差角を軸誤差Δθdと呼ぶ。但し、本比較例においては、位置センサ等によって実際の軸誤差Δθdが直接的に得られるわけではなく、推測によって求めるため、軸誤差Δθdの推定値をΔθcと呼ぶ。
図4(c)は、固定座標系である3相軸と回転座標系である制御軸との関係を示した図である。図4(c)ではU相を基準にdc軸の回転角度位置(磁極位置)を推定し、その結果を上述の推定回転角度位置θdcとする。dc軸は図中の円弧状矢印の方向(反時計方向)に回転している。そのため、回転周波数(後に示す、インバータ周波数指令値ω1)を積分することで、推定回転角度位置θdcが得られる。本比較例では、電動機6として永久磁石同期モータを用いているため、モータ制御装置1aにて検出、推定、あるいは仮定する制御軸の推定回転角度位置θdcと、実際の回転子6aの回転角度位置θdとは、基本的には同期している場合が多い。
但し、実際には加減速時や負荷変動時等の過渡状態において、制御軸の位置と回転子6aの実軸の位置にズレ(軸誤差Δθd)が生じる場合がある。軸誤差Δθdが生じた場合、電動機6が実際に発生するトルクが減少したり、電動機6に流れる電流に歪みや跳ね上がりが生じたりすることもある。これらも振動や騒音の原因となる。特に、加減速中の過渡状態や低速駆動状態においては、軸誤差Δθdの影響により、適切な制御が困難になる場合がある。そこで、本比較例では、加減速中の過渡状態や低速駆動状態において軸誤差Δθdが発生した場合においても、電動機6のモータトルクτmを適切に制御することにより、電動機6の騒音や振動を低減しようとするものである。
(制御部2a)
図1に戻り、制御部2aについて説明する。制御部2aの内部において、トルク電流指令値作成器10は、負荷トルクτLの平均値および周期的に変動する値に応じたトルク電流指令値Itq *を作成する。本比較例においては、出力されたトルク電流指令値Itq *が、そのままq軸電流指令値Iq *として、電圧指令値作成器3に供給される。
電圧指令値作成器3においては、q軸電流指令値Iq *と、電流検出部7から供給された交流電流検出値Iu,Iwとに基づいて電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *が生成される。PWM信号作成器33においては、これら電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *に応じたドライブ信号が生成される。制御部2aは、マイクロコンピュータやDSP(digital signal processor)等の半導体集積回路(演算制御部)と、演算制御部に供給されるプログラム等のソフトウェアを有しており、これらによって各機能を実現している。
(PWM信号作成器33)
制御部2aの内部においてPWM信号作成器33は、電圧指令値作成器3から出力された3相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *と、キャリア信号である三角波との比較により、電力変換回路5に与えるドライブ信号を生成する。電気角一周期における1相分の電圧指令値と三角波信号とドライブ信号との関係を図5に示す。図5は比較例1におけるPWM信号作成器の波形図であり、図中の「電圧指令値」とは、上述のVu *,Vv *,Vw *の何れかである。生成されるドライブ信号Gp,Gnは、対応する相における上アーム,下アーム(図2参照)のドライブ信号である。例えば、U相の電圧指令値Vu *に対して、生成されるドライブ信号Gp,Gnは、図2におけるドライブ信号24a,24bに対応する。
図5において、電圧指令値が三角波キャリア信号のレベル以上になると、上アームのドライブ信号GpはHレベルになり、上アームのスイッチング素子はオン状態になる。また、下アームのドライブ信号GnはLレベルになり、下アームのスイッチング素子はオフ状態になる。また、電圧指令値が三角波キャリア信号のレベル未満になると、上アームのドライブ信号GpはLレベルになり、上アームのスイッチング素子はオフ状態になる。また、下アームのドライブ信号GnはHレベルになり、下アームのスイッチング素子はオン状態になる。従って、図5に示すように、電圧指令値のレベルに応じて、ドライブ信号のデューティ比が設定される。
なお、ゲートドライバ回路23やスイッチング素子22自体の遅れに起因して、上下アームのスイッチング素子22が短絡する恐れがあるため、実際には上下アームの両方がオフ状態となるデッドタイム(数マイクロ秒〜十数マイクロ秒程度)を付加して最終的なドライブ信号とすることが望ましい。但し、以下の説明においては、説明の簡略化のため、デッドタイムを有しない理想的なドライブ信号を用いることを前提として説明する。
(3φ/dq変換器8,dq/3φ変換器4)
次に、図6を参照して、PWM信号作成器33以外の制御部2aの各構成要素について説明する。図6は比較例1における制御部2aのブロック図であり、図中の3φ/dq変換器8は、推定回転角度位置θdcを用いて、3相軸上の交流電流検出値Iu,Iwを制御軸上(すなわちdc軸上およびqc軸上)の電流検出値Idc,Iqcに座標変換する。また、dq/3φ変換器4は、推定回転角度位置θdcを用いて、dc−qc軸上の電圧指令値Vd *,Vq *を3相軸上の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *に座標変換する。
これらにより、制御部2aの内部では、主として回転座標系であるdc−qc軸が使用される。その理由は、回転座標系では電圧や電流の定常的な値は直流量として扱えるという利点があるためである。座標変換のためには、電動機6の回転子6aの回転角度位置の情報が必要になる。本比較例では、位置センサ等によって回転角度位置を検出するのではなく、上述したように、電動機6に流れる電流および電動機6への印加電圧に基づいて、推定回転角度位置θdcを計算することとしている。これにより、回転子6aに位置センサ等を設けることが不要になり、コストダウンを図ることができる。
(電圧指令値演算部34)
次に、図7を参照し、電圧指令値演算部34の構成を説明する。電圧指令値演算部34には、d軸,q軸の電流指令値Id *,Iq *が供給される。本比較例において、q軸電流指令値Iq *は、上述したように、トルク電流指令値作成器10が出力するトルク電流指令値Itq *に等しい。また、d軸電流指令値Id *は本比較例においてはゼロを設定しているので、この理由について述べておく。本比較例においては、電動機6は、非突極型の永久磁石同期モータであるため、d軸,q軸のインダクタンスLd,Lqが同一になる。
これにより、本比較例においては、d軸,q軸のインダクタンスLd,Lqの差によって発生するリラクタンストルクは考慮する必要がなくなる。したがって、電動機6が発生するモータトルクτmはq軸を流れる電流に比例するものと考え、d軸電流指令値Id *はゼロを設定している。また、電圧指令値演算部34には、後述するPLL制御器13からインバータ周波数指令値ω1(電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *が有すべき周波数の指令値)が供給されるとともに、3φ/dq変換器8から電流検出値Idc,Iqcが供給される。
図7のd軸電流制御器14aにおいて、減算器91cは、d軸電流指令値Id *からdc軸電流検出値Idcを減算する。比例器92c,92dは、この減算結果に対して、各々所定のゲインKp_acrd,Ki_acrdを乗算する。積分器94cは、比例器92dの出力結果、すなわち「Ki_acrd×(Id *−Idc)」を積分する。加算器90cは、比例器92cの乗算結果と、積分器94cの積分結果とを加算し、その加算結果をd軸電流指令値Id **として出力する。
同様に、q軸電流制御器14bにおいて、減算器91dはq軸電流指令値Iq *からqc軸電流検出値Iqcを減算する。比例器92e,92fは、この減算結果に対して、各々ゲインKp_acrq,Ki_acrqを乗算する。積分器94dは、比例器92fの出力結果、すなわち「Ki_acrq×(Iq *−Iqc)」を積分する。加算器90dは、比例器92eの乗算結果と、積分器94dの積分結果とを加算し、その加算結果をq軸電流指令値Iq **として出力する。このように、d軸電流制御器14aおよびq軸電流制御器14bは、各々比例積分演算器を構成している。
ここで、電流制御器14a,14bにおいて比例積分演算を行っている理由について説明しておく。後述する乗算器92g,92i等の構成要素では、電動機6の1相あたりの巻線抵抗値Rを用いて演算を行っている。しかし、実際の巻線抵抗値Rは一定値ではない。例えば、固定子6bに対して大きな電流を供給すると、固定子6bの温度上昇によって実際の巻線抵抗値Rは大きくなる。
このような場合、d軸,q軸の電流指令値Id *,Iq *と、想定した巻線抵抗値Rとに基づいてd軸,q軸電圧指令値Vd *,Vq *を出力すると、実際のd軸,q軸の電流値がd軸,q軸の電流指令値Id *,Iq *に一致しなくなり、トルク制御の精度が悪化する。そこで、d軸,q軸電流指令値Id *,Iq *と、対応する電流検出値Idc,Iqcとを比較し、その差分に基づいて求めたd軸,q軸電流指令値Id **,Iq **を用いることにより、巻線抵抗値Rの変動による影響を吸収しつつ制御を続行することが可能になる。
d軸,q軸電流指令値Id **,Iq **には、乗算器92g,92iにて、それぞれ電動機6の1相あたりの巻線抵抗値Rが乗算され、電圧値R×Id **,R×Iq **が出力される。また、d軸電流指令値Id **は、低域通過フィルタ98bに供給され、一次遅れフィルタの伝達関数「1/(1+Tds)」にてフィルタリングされ、d軸電流指令値Idf **として出力される。同様に、q軸電流指令値Iq **は、低域通過フィルタ98aに供給され、一次遅れフィルタの伝達関数「1/(1+Tqs)」にてフィルタリングされ、q軸電流指令値Iqf **として出力される。ここで、時定数Td,Tqは、電動機6の固定子6bの電気時定数であり、Td=Ld/R,Tq=Lq/Rになる。
乗算器92hにおいては、q軸電流指令値Iqf **に対して、インバータ周波数指令値ω1と、q軸のインダクタンスLqとが乗算される。減算器91eにおいては、電圧値R×Id **から乗算器92hの出力信号ω1×Lq×Iqf **から減算され、下式(1)に示すd軸電圧指令値Vd *が出力される。

d *=R×Id **−ω1×Lq×Iqf ** …(1)
また、乗算器92jにおいては、d軸電流指令値Idf **に対して、インバータ周波数指令値ω1と、d軸のインダクタンスLdとが乗算される。乗算器92kにおいては、インバータ周波数指令値ω1に対して、誘起電圧定数Keが乗算される。電動機6は同期電動機であると同時に同期発電機でもある。すなわち、回転子6aが回転すると、回転速度に比例する起電力が固定子6bに生ずる。その際の比例定数が上記誘起電圧定数Keである。そして、加算器90eにおいては、乗算器92i,92j,92kの各出力信号が加算され、その結果として下式(2)に示すq軸電圧指令値Vq *が出力される。

q *=R×Iq **+ω1×Ld×Idf **+ω1×Ke …(2)
上述の乗算器92h,92jは、d軸,q軸間の相互干渉をシミュレートしようとするものである。q軸電流によって生じた起電力は、ほぼ90°遅れてd軸に現れる。この現象をシミュレートするため、減算器91eにおいては、電圧値Id **Rからω1×Lq×Iqf **を減算している。また、d軸電流によって生じた起電力は、ほぼ90°遅れてq軸のマイナス方向に現れる。この現象をシミュレートするため、加算器90eでは、電圧値Iq **Rに対してω1×Ld×Idf **を加算している。
図7の回路構成では、電圧指令値演算部34の中に、電流制御器14a,14bを設けた点と、電動機6の電気時定数相当の遮断周波数を有する一次遅れフィルタである低域通過フィルタ98a,98bを設けた点とが特徴である。これらによって電動機6の逆モデルを成立させているため、制御部2aの演算周期に制約がある場合においても電動機6に対するベクトル制御を実現できる。
(位置推定部40)
次に、位置推定部40について説明する。前述のように、本比較例では回転子6aの回転角度位置として推定回転角度位置θdcを用いるが、これを演算するものが位置推定部40である。図6において、位置推定部40内の軸誤差演算器12は、制御軸上の電流検出値Idc,Iqcおよびd軸,q軸電圧指令値Vd *,Vq *等に基づいて、下式(3)により実軸と制御軸との軸誤差(推定値)Δθcを演算する。
次に、図8を参照し、PLL制御器13の構成を説明する。PLL制御器13は、軸誤差Δθcが軸誤差指令値Δθ*(本比較例ではゼロ)に一致させる方向にインバータ周波数指令値ω1を調整するものである。減算器91bは、軸誤差指令値Δθ*と軸誤差Δθcとの差分を出力する。比例器92aは、この差分に比例ゲインKp_pllを乗算し、比例器92bは該差分に比例ゲインKi_pllを乗算する。積分器94bは、比例器92bの出力を積分する。これにより、比例器92bと積分器94bとは、積分演算部93aを構成する。この積分演算部93aにおける演算結果と比例器92aにおける乗算結果とは、加算器90cにて加算され、この加算結果がインバータ周波数指令値ω1になる。これにより、PLL制御器13は、いわゆる比例積分演算器を構成している。
仮に、図4(b)に示したように、dc−qc軸がd−q軸よりも進むと、軸誤差Δθcが正値になる。すると、減算器91bから負値である「−Δθc」がPLL制御器13に供給されるから、比例器92aの出力も負値になり、積分演算部93aにおける積分結果は低下する。これにより、インバータ周波数指令値ω1が低下するから、dc−qc軸がd−q軸に近づいてゆく。すなわち、軸誤差Δθcがゼロに近づいてゆく。逆に、dc−qc軸がd−q軸よりも遅れると、軸誤差Δθcが負値になる。すると、減算器91bから正値である「−Δθc」がPLL制御器13に供給されるから、比例器92aの出力も正値になり、積分演算部93aにおける積分結果は上昇する。これにより、インバータ周波数指令値ω1が上昇するから、dc−qc軸がd−q軸に近づいてゆく。すなわち、軸誤差Δθcがゼロに近づいてゆく。
図6に戻り、PLL制御器13の後段に設けられた積分器94aにより、インバータ周波数指令値ω1が積分される。速度を積分すると位置になるから、積分器94aは、インバータ周波数指令値ω1を積分することによって、推定回転角度位置θdcを出力する。このように、本比較例の位置推定部40は、実軸と制御軸のズレである誤差角(軸誤差Δθc)を推定し、軸誤差Δθcがゼロに近づくよう制御することにより、推定回転角度位置θdcを間接的に推定するものである。出力された推定回転角度位置θdcは、上述したように、dq/3φ変換器4、3φ/dq変換器8等に供給される。
(トルク電流指令値作成器10)
次に、トルク電流指令値作成器10の構成を図9を参照し説明する。
トルク電流指令値作成器10には、インバータ周波数指令値ω1と、回転速度指令値ω*とが供給され、減算器91bにおいて両者の差分が出力される。なお、回転速度指令値ω*は、図示せぬ上位制御系等から与えられる。この差分に対して、比例器92p,92qでは、各々比例ゲインKp_asr,Ki_asrが乗算され、比例器92qの出力は積分器94eによって積分される。比例器92pおよび積分器94eの出力は、加算器90fにおいて加算され、その結果がトルク電流指令値Itq *として出力される。すなわち、トルク電流指令値作成器10は、いわゆる比例積分演算器を構成している。
仮に、インバータ周波数指令値ω1が回転速度指令値ω*よりも低くなると、減算器91bから出力される両者の差分は正値になるから、比例器92p,92q、積分器94e、加算器90fを介してトルク電流指令値Itq *が増加してゆくことになる。トルク電流指令値Itq *が増加すると、実際の回転子6aの回転速度が増加するため、インバータ周波数指令値ω1も増加し、インバータ周波数指令値ω1が回転速度指令値ω*に近づいてゆくことになる。
逆に、インバータ周波数指令値ω1が回転速度指令値ω*よりも高くなると、減算器91bから出力される両者の差分は負値になるから、比例器92p,92q、積分器94e、加算器90fを介してトルク電流指令値Itq *が減少してゆくことになる。トルク電流指令値Itq *が減少すると、実際の回転子6aの回転速度が減少するため、インバータ周波数指令値ω1も減少し、インバータ周波数指令値ω1が回転速度指令値ω*に近づいてゆくことになる。
通常、上位制御系等から与えられる回転速度指令値ω*は、インバータ周波数指令値ω1と比較すると、変化の周期は非常に長く、電動機6の一回転中においては一定値であるとみなして良い。そのため、トルク電流指令値作成器10によって、電動機6はほぼ一定周波数で回転する。この時、インバータ周波数指令値ω1を積分することで得られる推定回転角度位置θdcは、ほぼ一様に増加する。
但し、トルク電流指令値作成器10によって実現されるフィードバックループは、PLL制御器13や電流制御器14a,14bよりも外側の制御ループとなる。そのため他の制御器よりも設定可能な応答周波数を低く設定する必要がある。これにより、トルク電流指令値Itq *は、負荷トルクτLの平均値にほぼ比例しながら、若干脈動する値になる。
<比較例1の問題点>
比較例1に対して、圧縮機構部500を駆動した際に生じる各部の波形の数値解析結果を図10(a)〜(d)に示す。図10(a)は、モータトルクτmと負荷トルクτL(単位はP.U.)の変化を示す。モータトルクτmとは、電動機6の発生トルクであり、負荷トルクτLは瞬時負荷トルクである。また、図10(b)は、回転速度指令値ω*とインバータ周波数指令値ω1との変化(単位はHz)を示す。また、図10(c)はq軸電流指令値Iq *(本比較例ではトルク電流指令値Itq *に等しい)の変化を示し、図10(d)はU相モータ電流の変化(単位はP.U.)を示す。ここで横軸の時間目盛の単位は何れも0.02秒であり、図10の例にあっては、図4(a)で示した機械角の1周期が0.04秒であることが解る。
図10(a)によれば、モータトルクτmと負荷トルクτLは、機械角1周期内でのピーク値の位相が一致していない。モータトルクτmがこの周期内でほぼ正弦波状に変動して繰り返すのに対し、負荷トルクτLは前半周期での急増後、後半周期ではやや緩やかな減少を繰り返しており、1周期内でのトルクの位相の不一致が際立っている。但し、図示の例は回転ロータリー型圧縮機構部500の動作例であるため、負荷トルクτLは負になることはない。また、図10(b)によれば、回転速度指令値ω*が一定であるのに対して、インバータ周波数指令値ω1は正弦波状の変動を繰り返している。また、図10(c)に示すq軸電流指令値Iq *および図10(d)に示すU相モータ電流値も脈動している。
図10の結果から、1回転中における負荷トルクτLが変動することによって、モータトルクτm、電動機6の実周波数(電動機6の回転速度)、電動機に流れる電流等が脈動することが分かる。q軸電流指令値Iq *および実際に電動機に流れる電流が脈動すること自体は問題ではないが、問題は、q軸電流指令値Iq *および実際に電動機に流れる電流のピークと、負荷トルクτLのピークとの間にタイミングのずれが生じていることである。これは、図8のPLL制御器13、図7の電流制御器14a,14b、図9のトルク電流指令値作成器10等のフィードバック制御器に設定可能な応答周波数に制約があるためである。
そこで、設定可能な応答周波数の制約について述べておく。まず、図8のPLL制御器13は、電動機の電気定数(例えば、電動機6の1相あたりの巻線抵抗値Rやq軸のインダクタンスLq等)によって設定可能な応答周波数が決まり、その値はインバータ周波数指令値ω1が低いほど、低い応答周波数を設定する必要がある。これは、応答周波数を高くしてしまうと、インバータ周波数指令値ω1の変化に対して電動機6の動作が追従できず、インバータ周波数指令値ω1が発散してしまう可能性があるためである。
一方、図7の電流制御器14a,14bは、制御部2の演算時間の制約によって、設定可能な応答周波数が決まる。従って、電動機6が高速で回転するほど電流制御器14a,14bの応答周波数を低く設定する必要がある。制御部2の演算は、実際は所定周期でマイクロコンピュータに対して割込みを発生させることによって実現されている。すると、電動機6が高速で回転するほど、1回転あたりの割込み回数が減少することになり、様々なデータのサンプリング回数も減少することになる。仮に、少ないサンプルに基づいて強い制御をかけようとすると、やはりq軸電流指令値Iq *などが発散してしまう可能性がある。
他に、フィードバック制御を行う要素としては、トルク電流指令値作成器10がある。しかし、上述したように、トルク電流指令値作成器10は、PLL制御器13や電流制御器14a,14bよりも外側の制御ループに設けられるため、他の制御器よりも応答周波数を低く設定する必要がある。このように、比較例1の構成のみでは、広い運転範囲において周期的な負荷変動に対応することは難しい場合がある。
[比較例2]
<比較例2の構成>
(脈動トルク推定器16)
次に、比較例1の問題点に対応する比較例2の圧縮機の構成を図11,図12を参照し説明する。比較例2においては、図11に示すように、比較例1(図1参照)におけるモータ制御装置1aに代えて、モータ制御装置1bが適用される。モータ制御装置1a,1bの相違点は、制御部2aに代えて、制御部2bが適用されていることである。この制御部2bには、脈動トルク推定器16と、脈動トルク電流指令値作成器11aと、加算器90aとが追加されている。ここで、比較例2における制御部2bの詳細を図12に示す。
次に、脈動トルク推定器16について説明するが、最初に脈動トルク推定器16の原理を図13(a),(b)を参照し説明する。図13(a)は、モータトルクτmと負荷トルクτLの差によって軸誤差Δθdが発生する過程を説明するための図である。上述した比較例1においては、図9に示したトルク電流指令値作成器10により、インバータ周波数指令値ω1の平均速度は、上位制御系等から与えられる回転速度指令値ω*に一致する。しかし、瞬時速度においては、下式(4)のように速度変動Δωが生じる。
上述したように、モータトルクτmは電動機6の発生トルクであり、負荷トルクτLは瞬時負荷トルクである。また、Jは電動機6の慣性モーメントである。従って、モータトルクτmと負荷トルクτLとの差によって速度変動Δωが生じ、速度変動Δωによって軸誤差Δθdも生じる。
図13(a)は、モータトルクτmと負荷トルクτLとの差が軸誤差Δθdに至るまでの現象をブロック線図として示したものである。モータトルクτmと負荷トルクτLとの差トルクΔτm(減算器91h)に慣性モーメントJの逆数を掛けて積分(積分器94f)することで、電動機の回転子6aの機械速度ωrが得られる。次いで機械速度ωrに電動機6の極対数(=極数P/2)を乗算する(乗算器92r)ことにより、電動機6の電気速度ωeが得られる。さらに電気速度ωeを積分(積分器94g)することにより、回転子6aの回転角度位置θdが得られる。そして、回転角度位置の指令値である回転角度指令値θd *から回転子6aの回転角度位置θdを減算(減算器91i)することにより、その角度誤差(軸誤差Δθd)が得られる。
図13(a)の模式図のような過程を経て、トルク差が軸誤差Δθdに至ると考えることができる。このことは逆に考えると、軸誤差Δθdに対応する検知可能な値からトルク差を推定可能であることを意味している。前述の通り、本比較例では、位置センサ等が設けられていないため、軸誤差Δθdは直接的には得られない。そこで、本比較例で検出あるいは推定が可能な値を用いることとする。
図13(b)は、本比較例において取得可能な軸誤差Δθcからトルク差を推定する機能ブロック図である。ブロック線図の特徴として、矢印の方向(すなわち、演算方向)を逆にする場合、乗算は除算に、積分は微分に、それぞれ置き換えることで、等価な関係を維持したまま入出力関係を変えることができる。図13(b)に示したブロック図は、軸誤差から差トルクを得られるように、図13(a)の矢印の方向を逆にし、かつ、本比較例で検出あるいは推定が可能な値を用いるように等価変換した結果である。
図13(b)についてより詳細に説明すると、上述のように、軸誤差Δθcは、軸誤差演算器12によって得られる。この軸誤差の負値(−Δθc)を微分することにより(微分器95a)、電気速度ωeの推定値である推定電気速度ωe *が得られ、さらに「2/極数P」を乗ずることによって(乗算器92s)、推定機械速度ωr *が得られる。そして、微分器95bにて推定機械速度ωr *を微分し、慣性モーメントJを乗ずることにより、差トルク推定値Δτm ^が得られる。
図13(c)は、図13(b)の等価変換手順をまとめて示した図であるとともに、脈動トルク推定器16の構成を示す図である。本比較例では、機械角の1周期あるいは複数周期で変化する脈動負荷トルクに注目しているため、図13(b)のブロック図の複素数sをjωrに置き換えて整理し、脈動トルク推定器16を構成する演算回路93bを得たものである。jは複素数の虚部を示す虚数単位であり、2乗すると(−1)となる。そのため、図13(b)にてΔθcに付されていた負号が無くなる。このように、図13(c)の脈動トルク推定器16は、図6および式(3)で示した軸誤差演算器12によって得られる軸誤差Δθcが入力されると、差トルク推定値Δτm ^を出力する。
(脈動トルク電流指令値作成器11a)
次に、脈動トルク電流指令値作成器11aの具体的な構成を図14を参照し説明する。
図14において、積分器94jはインバータ周波数指令値ω1を積分することにより、推定回転角度位置θdcを出力する。乗算器92oでは、推定回転角度位置θdcに「2/P」(Pは極数)が乗算され、その結果が推定機械角度位置θrとして出力される。余弦演算器96および正弦演算器97は、それぞれ推定機械角度位置θrの余弦成分cosθrおよび正弦成分sinθrを出力する。
図13(c)の脈動トルク推定器16により推定された差トルク推定値Δτm ^は、図10(a)に示したモータトルクτmと負荷トルクτLの差分に相当する値である。単相座標変換器32においては、差トルク推定値Δτm ^に推定機械角度位置θrの余弦成分cosθrおよび正弦成分sinθrが乗算され、下式(5),(6)に示すように、機械速度ωr(機械角1次成分)における余弦成分Δτmcと正弦成分Δτmsとが出力される。すなわち、差トルク推定値Δτm ^が、機械速度ωrで回転する座標系に座標変換される。

Δτmc=cos θr×Δτm ^ …(5)
Δτms=sin θr×Δτm ^ …(6)

低域通過フィルタ98c,98dでは、差トルク推定値余弦成分Δτmcおよび差トルク推定値正弦成分Δτmsのうち、機械速度ωr以上の成分が減衰される。次に、減算器91j,91kにおいては、差トルク推定値余弦成分Δτmc,差トルク推定値正弦成分Δτmsと、それぞれの指令値(Δτmc *=0,Δτms *=0)との差が求められる。そして、求められた差に対して比例器92t,92mでは積分ゲインKi_atrが乗じられ、積分器94h,94iでは、各乗算結果が積分される。
これらの積分結果は、脈動トルク電流指令値の余弦成分Iqsin * cおよび正弦成分Iqsin * sになる。この後、再度、単相座標逆変換器37にて、次式(7)に基づいて座標変換が実行される。

Δτmm ^=cos θr×Iqsin * c+sinθr×Iqsin * s …(7)
この座標変換により、差トルク推定値Δτm ^の機械速度ωrの成分Δτmm ^が得られる。差トルク推定値の機械速度成分Δτmm ^には、比例器92nにてゲインKtrqが乗算され、その乗算結果が脈動トルク電流指令値Iqsin *として出力される。なお、本比較例では、ゲインKtrqは「1」である。図12に戻り、加算器90aにおいては、脈動トルク電流指令値Iqsin *とトルク電流指令値Itq *とが加算され、加算結果がq軸電流指令値Iq *として出力される。
ここで、再び図14を参照し、脈動トルク電流指令値作成器11aの全体動作について説明しておく。仮に、モータトルクτmが負荷トルクτLよりも大きくなると、差トルク推定値Δτm ^が正値になるから、減算器91j,91kの出力値が負値になる。すると、積分器94h,94iにおける積分結果が減少してゆくから、脈動トルク電流指令値Iqsin *も減少してゆく。これにより、モータトルクτmが下がってゆくから、差トルク推定値Δτm ^がゼロに近づいてゆく。
逆に、差トルク推定値Δτm ^が負値であったとすると、減算器91j,91kの出力値が正値になり、積分器94h,94iの積分結果は増加してゆくから、脈動トルク電流指令値Iqsin *が増加してゆく。これにより、モータトルクτmが上昇してゆくから、差トルク推定値Δτm ^がゼロに近づいてゆく。このように、図14の脈動トルク電流指令値作成器11aにおいては、差トルク推定値Δτm ^がゼロに近づくように脈動トルク電流指令値Iqsin *が制御されるから、機械速度ωr(機械角1次成分)の各成分のトルク変動を抑制できる。
<比較例2の問題点>
比較例2によれば、周期的な負荷変動すなわち差トルク推定値Δτm ^の変動に対応し、電動機6の騒音や振動を効果的に抑制することができる。一方、前述のように、モータ制御装置1b内の各構成要素には設定可能な応答周波数に上限があり、その設定可能な応答周波数は、電動機6の駆動周波数(回転速度)に応じて変動する。従って、各構成要素の応答の特性には周波数依存性がある。一方、電動機6および負荷装置9等の機構部は複数の機械共振周波数を有する。
図15は、上述のモータ制御装置1bを用いて電動機6および負荷装置9を駆動した際の振動(振動振幅値)の周波数特性の例を示している。全体的には、回転速度が低速になっていくにつれ、振動振幅値が大きくなっていく傾向を有する。これは、電動機6の速度が低下すると、慣性力が小さくなるためである。また、1500rpm近傍にピークが現れているが、これは電動機6や負荷装置9等の機械系の機械共振周波数である。
振動の周波数特性は、負荷条件によっても変動する。図15に破線で示した周波数特性は、実線よりも負荷が重い場合の例である。例えば、圧縮機構部500の吸込み口505の圧力と吐出口507の圧力の差が大きくなれば、負荷が大きくなる。負荷が大きい場合であっても、3000rpm付近の高速域では振動の差は小さくなる。一方、回転速度が低速になるほど振動の増加(悪化)が顕著になる。
次に、図16は、ある回転速度おいて、脈動トルク電流指令値作成器11aの積分制御の応答周波数を変更した場合の振動と消費電力の例である。なお、積分制御の応答周波数を変更するとは、具体的には図14の比例器92t,92mにおける積分ゲインKi_atrを変更することである。図16から、応答周波数を低くする(すなわち、積分ゲインKi_atrを小さくする)ことにより、振動振幅値が変動し、これによって周期脈動トルクを抑制する際の効き具合を調整できる。
周期脈動トルク制御の効き具合を弱くすると(すなわち制御応答周波数を下げると)、振動抑制効果も低減するため、振動振幅値は大きくなる。その一方、消費電力は、ある制御応答周波数faまでは低減してゆくことが解る。これは、周期変動負荷に合わせて発生する電動機の発生トルクの周期変動成分が小さくなる、すなわち電動機に印加される電圧の周期変動成分が小さくなるため、消費電力が抑えられるためである。
しかし、制御応答周波数faよりもさらに制御応答周波数を低下させてゆくと(周期脈動トルク制御の効き具合を弱くしていくと)、消費電力は増加に転ずる。これは、周期変動負荷と電動機の発生トルクの乖離が大きくなり、速度変動が増加し過ぎてしまうためである。以上をまとめると、振動抑制効果と消費電力とはトレードオフの関係があり、許容範囲内であれば、ある程度の振動を容認することにより、消費電力を低減できる点が分かる。比較例2は、単純に振動振幅を抑制しようとしたものであり、確かに振動振幅は抑制できるものの、消費電力が大きくなるという課題が生じる。
[第1実施形態]
<第1実施形態の構成>
次に、本発明の第1実施形態の構成を図17,図18を参照し説明する。
上述したように、比較例2の構成では、振動振幅は抑制できるものの、消費電力が大きくなるという課題があった。そこで、第1実施形態は、振動振幅の抑制と、消費電力の削減とを両立させようとするものである。そのため、本実施形態にあっては、図17に示すように、比較例2(図11参照)におけるモータ制御装置1bに代えて、モータ制御装置1が適用される。両者の相違点は、制御部2bに代えて、制御部2が適用されていることである。ここで、制御部2の構成を図18に示す。制御部2においては、比較例2における脈動トルク電流指令値作成器11aに代えて脈動トルク電流指令値作成器11が適用され、さらに振動状態推定器17が追加されている。
まず、振動状態推定器17の構成を図19を参照し説明する。
図19においてピークホールド部80a,80bは、各々所定時間内における軸誤差Δθcの最大値および最小値を保持し、保持した値を出力する。減算器91mは、両者の差、すなわち軸誤差Δθcの周期変動の振幅AmpPulΔθcを出力する。比較器81aは、この振幅AmpPulΔθcと閾値PulJud1とを比較し、振幅AmpPulΔθcが閾値PulJud1未満である場合は“1”を出力し、閾値PulJud1以上の場合は“0”を出力する。比較器81aから出力される信号を「振動状態判定フラグPulFlg」という。
電動機6または負荷装置9の振動は、電動機6の回転速度の変動が主要因である。そのため、図19の振動状態推定器17は、図13(a)にて説明した速度変動と軸誤差Δθの関係を利用して、振動を推定している。軸誤差Δθcの周期変動の振幅AmpPulΔθcから振動振幅値を推定し、振動振幅値に基づいて閾値PulJud1の値を決定することも勿論可能である。しかし、「振動が許容範囲内であるか否か」の判断を行うためには、必ずしも振動振幅値は必要ではないため、本実施形態においては、上記振幅AmpPulΔθcに基づいて、閾値PulJud1の値を決定することにより、演算器の構成を簡易化している。このように、振幅AmpPulΔθcは、「電動機(6)または負荷装置(9)の振動量に応じて増減する振動対応量」であり、本実施形態においては、この振動対応量によって、電動機または負荷の振動を推定している。
次に、脈動トルク電流指令値作成器11の構成を図20を参照し説明する。脈動トルク電流指令値作成器11の構成は、単相座標変換器32の前段部分を除いて、脈動トルク電流指令値作成器11a(図14参照)と同様である。すなわち、脈動トルク電流指令値作成器11aにおいては、単相座標変換器32に対する入力信号は常に差トルク推定値Δτm ^であった。これに対して、本実施形態においては、単相座標変換器32の前段にスイッチ82aが挿入され、ゼロ信号または差トルク推定値Δτm ^のうち一方が選択され、選択された信号が単相座標変換器32に入力される。
ここで、スイッチ82aの状態は、振動状態判定フラグPulFlgによって切り替えられる。すなわち、振動状態判定フラグPulFlgが“0”である場合(軸誤差Δθcの周期変動が大きく、振動が大きいと推定される場合)には、差トルク推定値Δτm ^が選択され、振動状態判定フラグPulFlgが“1”である場合(軸誤差Δθcの周期変動が小さく、振動が小さいと推定される場合)にはゼロ信号が選択される。
スイッチ82aにて差トルク推定値Δτm ^が選択された場合の脈動トルク電流指令値作成器11の動作は、比較例2における脈動トルク電流指令値作成器11aの動作と同様である。すなわち、脈動トルク電流指令値作成器11からは、差トルク推定値Δτm ^をゼロに近づけるような脈動トルク電流指令値Iqsin *が出力され続ける。
一方、スイッチ82aにてゼロ信号が選択されると、積分器94h,94iの前段までの信号が全てゼロ信号になる。これにより、積分器94h,94iの出力信号すなわち脈動トルク電流指令値正弦成分Iqsin * sおよび脈動トルク電流指令値余弦成分Iqsin * cも、一定値に保持される。
<第1実施形態の効果>
第1実施形態は以上のような構成を用いることにより、周期脈動トルク制御の効き具合を弱くでき、消費電力を抑えることができる。その効果を図21を参照し、さらに詳細に説明する。図21において、破線で示した波形は、周期脈動トルク制御の効き具合を変更しない比較例2の回転速度および消費電力の遷移を示す。この例においては、脈動トルク電流指令値作成器11の積分制御が収束するまで、振動を抑制するような制御が続行される。これによって、確かに振動は抑制されるが、q軸電流指令値Iq *の変動成分の振幅は増加するため消費電力も増加する。
一方、図21にて実線で示した波形が、本実施形態による波形であり、振動が許容範囲内になった時刻t101、すなわち振動状態推定器17にて振動が許容範囲内に入った(振動状態判定フラグPulFlgが“1”になった)時点で、周期脈動トルク制御の効き具合が弱められる。この例においては、q軸電流指令値Iq *の変動成分の振幅(および位相)は、その時点の値に固定されるため、比較例2の場合よりも消費電力を削減することができる。このように、本実施形態においては、周期脈動トルク制御の効き具合を弱くすることにより、振動を許容範囲内に抑制しつつ消費電力を抑えることができる。
そして、周期脈動トルク制御の効き具合は、振動状態推定器17において、閾値PulJud1の値をどのように設定するかによって操作できる。従って、消費電力の低減を優先するのか、振動抑制を優先するのか等の用途に応じて閾値PulJud1を変更するとよい。また、閾値PulJud1の変更は、エンドユーザに委ねてもよい。すなわち、エンドユーザが、「多少の振動があってもできるだけ消費電力を抑制したい」と希望する場合は、閾値PulJud1を高めに設定すればよく、「消費電力が多少増えても、なるべく振動を抑制したい」と希望するのであれば、閾値PulJud1を低めに設定するとよい。
[第2実施形態]
<第2実施形態の全体構成>
次に、本発明の第2実施形態による圧縮機302の構成を図22を参照し説明する。なお、既に説明した比較例1,2および第1実施形態に示されたものに対応するものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
圧縮機302においては、動力源である電動機6と圧縮機構部500とが、密閉容器511の内部に装着されている。そして、電動機6は、配線ケーブル310を介してモータ制御装置301に接続されている。また、電動機6の回転子6aに結合されているシャフト502とロータリーピストン501とは、クランクシャフト503を介して接続されている。これにより、電動機6の回転に応じてロータリーピストン501が偏心して回転し、吸込み、圧縮、吐出、という一連の工程が実行される。吸込みパイプ508は吸込み口に、吐出パイプ509は吐出口に、それぞれ接続されており、圧縮機302に接続される外部のシステムとの間で冷媒を循環する。
シャフト502の一端は、軸受け510によって支持されている。密閉容器511の底部には潤滑油が貯溜されており、軸受け510および圧縮機構部500を潤滑する。シャフト502の他端には、バランスウェイト512が付加されており、ロータリーピストン501の偏心による重量のアンバランスを緩和している。バランスウェイト512の重量を重くすると、慣性モーメントが大きくなり、電動機6の発生トルクと負荷トルクの差による速度変動も小さくできる。その反面、電動機の加減速に要する時間もエネルギーも増加する。
<脈動トルク電流指令値作成器11dの構成>
本実施形態におけるモータ制御装置301は、第1実施形態のモータ制御装置1(図17参照)における脈動トルク電流指令値作成器11に代えて、図23に示す脈動トルク電流指令値作成器11dが適用されている点が異なる。そこで、脈動トルク電流指令値作成器11dの構成を図23を参照し説明する。
脈動トルク電流指令値作成器11dには、積分器94jと、乗算器92oと、余弦演算器96と、正弦演算器97と、任意周波数成分抑制器50と、比例器92nとが設けられている。これらの構成は、比較例2の脈動トルク電流指令値作成器11a(図14参照)のものと同様である。但し、比較例1においては、比例器92nの出力がそのまま脈動トルク電流指令値Iqsin *として出力されていたのに対して、本実施形態においては、比例器92nの出力信号は必ずしも脈動トルク電流指令値Iqsin *になるわけではない。そこで、本実施形態においては、比例器92nの出力信号を「指令値候補Iqsin * TQ」と呼ぶ。
また、本実施形態の脈動トルク電流指令値作成器11dにおいては、第二の任意周波数成分抑制器50cが設けられており、その内部には、単相座標変換器32と、低域通過フィルタ98e,98fと、減算器91n,91pと、比例器92p,92qと、積分器94k,94mと、単相座標逆変換器37とが設けられている。これらの構成要素は、任意周波数成分抑制器50内の対応する構成要素と同様の機能を有している。但し、第二の任意周波数成分抑制器50cへの入力信号は、qc軸電流検出値Iqcの脈動成分である点において、任意周波数成分抑制器50とは相違する。第二の任意周波数成分抑制器50cの出力信号を「指令値候補Iqsin * ACR」と呼ぶ。
指令値切替器54は、振動状態判定フラグPulFlgと、インバータ周波数指令値ω1とに基づいて、指令値候補Iqsin * ACR,Iqsin * TQまたはゼロ信号のうち何れかを選択し、選択した信号を脈動トルク電流指令値Iqsin *として出力する。
ここで、指令値候補Iqsin * TQが脈動トルク電流指令値Iqsin *として選択された場合の動作を検討すると、比較例2において述べたように、差トルク推定値Δτm ^がゼロに近づくように脈動トルク電流指令値Iqsin *が制御される。電動機6または負荷装置9の振動は、電動機6の回転速度の変動が主要因であり、回転速度の変動は、モータトルクτmと負荷トルクτLの差である差トルクΔτmによって生じる。従って、その推定値である差トルク推定値Δτm ^をゼロに近づけることは、「振動を減少させる」という目的を達成するためには極めて好適である。但し、この場合は、差トルク推定値Δτm ^をゼロに近づける方向にq軸電流指令値Iq *および実際に固定子6bに供給される電流の振幅値を変化させるため、この振幅値の変動は大きくなる。
一方、指令値候補Iqsin * ACRが脈動トルク電流指令値Iqsin *として選択された場合の動作を検討する。第二の任意周波数成分抑制器50cに供給されるqc軸電流検出値Iqcには、直流成分と脈動成分とが含まれているが、単相座標変換器32を介することにより、機械速度ωrの脈動成分以外の成分が減衰される。これにより、第二の任意周波数成分抑制器50cにおいては、qc軸電流検出値Iqcが一定値に近づくように、すなわちqc軸電流検出値Iqcの脈動成分がゼロに近づくように、脈動トルク電流指令値Iqsin *が制御される。
これは、「消費電力を低減する」という目的を達成するためには極めて好適である。その理由を以下説明する。qc軸電流検出値Iqcが脈動するという事は、実際に固定子6bに供給される電流の振幅が脈動するという事である。そして、固定子6bの銅損は電流値の二乗に比例するから、脈動が大きくなるほど銅損が大きくなる。従って、銅損を抑制する(消費電力を低減する)ためには、固定子6bに流れる電流の振幅を一定値に近づけること、すなわちqc軸電流検出値Iqcを一定値に近づけることが望ましいことが解る。
次に、指令値切替器54の動作を図24,図25を参照し説明する。仮に、周期脈動トルク制御を行わなかった場合、すなわち脈動トルク電流指令値Iqsin *として常にゼロ信号が選択されていたと仮定した場合、機械速度ωrに対して、実際に電動機6および負荷装置9に発生する振動振幅値の例を図24(a)に示す。図24(a)において実線は軽負荷時、破線は重負荷時の振動振幅値の例であり、何れにおいても、機械速度ωrが上昇するに従って、振動振幅値が小さくなることが解る。
すると、負荷の大きさ(負荷トルクτLの平均値)と、機械速度ωrとが推定できたとすると、図24(a)の特性に基づいて、振動振幅値が推定できることが解る。すると、推定された振動振幅値は、「電動機(6)または負荷装置(9)の(実際の)振動量に応じて増減する振動対応量」に該当するものであり、本実施形態においては、この振動対応量によって、電動機または負荷の振動を推定している。但し、実際に電動機6の制御を行うにあたって、振動振幅値の推定値を求める必要はなく、「機械速度ωrがある回転速度に達したか否か」を判断すれば充分である。従って、機械速度ωrも、「負荷の大きさ(負荷トルクτLの平均値)」との組み合わせにおいて、「電動機(6)または負荷装置(9)の振動量に応じて増減する振動対応量」に該当し、本実施形態は、この振動対応量(機械速度ωrまたはその推定値)によって、電動機または負荷の振動を推定しているものでもある。
ここで、重負荷時においても、振動振幅値が所定の許容値Th1(第1の閾値)未満になる回転速度をN1とする。この許容値Th1は、図19にて説明した閾値PulJud1に対応する値である。すると、図24(b)に示すように、重負荷時において、振動状態判定フラグPulFlgは、機械速度ωrが回転速度N1以上になると“1”になり、回転速度N1未満では“0”になる。一方、軽負荷時においては、回転速度N1よりも低い回転速度N2において、振動振幅値が許容値Th1以下になる。すると、軽負荷時において、閾値PulJud1は、機械速度ωrが回転速度N2以上になると“1”になり、回転速度N2未満では“0”になる。
何れの場合おいても、回転速度がN1以上では、振動状態判定フラグPulFlgは常に“1”になる。従って、N1未満の回転速度は、「トルク制御許容速度範囲内」の回転速度であり、N1以上の回転速度は、「トルク制御許容速度範囲外」の回転速度になる。
振動状態判定フラグPulFlgが“1”であるとき、第1実施形態の場合と同様に、指令値切替器54にあってはゼロ信号が脈動トルク電流指令値Iqsin *として選択される。一方、振動状態判定フラグPulFlgが“0”であるとき、本実施形態にあっては、指令値候補Iqsin * ACR,Iqsin * TQのうち一方が脈動トルク電流指令値Iqsin *として選択されるが、何れが選択されるかは機械速度ωrに基づいて決定される。なお、本実施形態では位置センサ等が設けられていないことにより機械速度ωrの実測値は得られないため、実際には、インバータ周波数指令値ω1に基づいて推定した機械速度ωrが用いられる。
振動状態判定フラグPulFlgが“0”であるとき、指令値切替器54において脈動トルク電流指令値Iqsin *を選択する処理を、図25(a)〜(c)を参照し説明する。図25(a)に示すように、振動振幅値に対して、上記許容値Th1よりも大きい許容値Th2(第2の閾値)を定める。そして、機械速度ωrを最大値から徐々に下げていったときに、振動振幅値が最初に許容値Th2になる回転速度を予め求めておく。図25(a)において、その回転速度は、重負荷時においてはN3であり、軽負荷時においてはN4である。
指令値切替器54は、振動状態判定フラグPulFlgが“0”であるとき、機械速度ωrが当該回転速度(N3またはN4)未満である場合は、指令値候補Iqsin * TQを選択し、機械速度ωrが当該回転速度(N3またはN4)以上である場合は指令値候補Iqsin * ACRを選択し、選択した信号を脈動トルク電流指令値Iqsin *として出力する。これにより、重負荷時および軽負荷時において、機械速度ωrに対応して選択される脈動トルク電流指令値Iqsin *は、図25(b),(c)に示す通りになる。何れの場合も、振動振幅値の大きい低速度領域から、振動振幅値の小さい高速度領域に向かうにつれて、脈動トルク電流指令値Iqsin *は、指令値候補Iqsin * TQ、指令値候補Iqsin * ACRおよびゼロ信号の順に変化してゆく。
<第2実施形態の効果>
このように、本実施形態によれば、振動振幅値が大きくなる低速度領域においては、差トルク推定値Δτm ^をゼロに近づける制御が実行される。一方、振動振幅値が小さくなる中速度領域においては、qc軸電流検出値Iqcの変動をゼロに近づける制御が行われ、振動振幅値がさらに小さくなる高速度領域においては、周期脈動トルク制御が停止される(脈動トルク電流指令値Iqsin *としてゼロ信号が選択される)。
換言すれば、本実施形態は、第1のパラメータ(差トルク推定値Δτm ^)の変動を抑制することにより、負荷トルクに起因する電動機6の回転速度の変動を抑制する第1の周期脈動トルク制御部(50)と、第2のパラメータ(qc軸電流検出値Iqc)の変動を抑制することにより、負荷トルクに起因する前記電動機6の回転速度の変動を抑制する第2の周期脈動トルク制御部(50c)と、振動対応量または回転速度に基づいて、第1の周期脈動トルク制御部(50)または第2の周期脈動トルク制御部(50c)のうち何れか一方を選択する選択部(54)とを有する。
従って、本実施形態によれば、電動機6や負荷装置9等の駆動条件に応じて、適切な制御状態を選択することができ、振動の抑制と消費電力の低減とを両立させることができる。これにより、バランスウェイト512の重量を削減することができ、慣性モーメントも削減できるため、起動特性を改善することができ、短時間で吸込パイプと吐出パイプに圧力差を生じさせることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態による圧縮機について説明する。本実施形態による圧縮機は、上述した第1実施形態のもの(図17)と同様であるが、第1実施形態の脈動トルク電流指令値作成器11に代えて、図26に示す脈動トルク電流指令値作成器11eが適用される。また、振動状態推定器17に加えて、図27に示す振動状態推定器17dが適用される。すなわち、本実施形態においては、振動状態推定器17,17dの双方が適用されることになる。そこで、これら追加された構成要素および異なる構成要素について説明する。
<振動状態推定器17d>
まず、図27を参照し、振動状態推定器17dの構成を説明する。振動状態推定器17dにおいては、第1実施形態の振動状態推定器17(図19参照)と同様に、ピークホールド部80a,80bと減算器91mとが設けられており、減算器91mは、軸誤差Δθcの周期変動の振幅AmpPulΔθcを出力する。比較器81dは、この振幅AmpPulΔθcと閾値PulJud4とを比較し、振幅AmpPulΔθcが閾値PulJud4よりも小さい場合は“1”を出力し、それ以外の場合は“0”を出力する。比較器81dから出力される信号を「振動状態判定フラグPulFlgDS」という。比較器81dの構成は第1実施形態の比較器81aと近似しているが、閾値PulJud4は閾値PulJud1の数倍程度の値である点が異なる。
<脈動トルク電流指令値作成器11e>
次に、図26を参照し、脈動トルク電流指令値作成器11eの構成を説明する。脈動トルク電流指令値作成器11eには、積分器94jと、乗算器92oと、余弦演算器96と、正弦演算器97と、単相座標変換器32とが設けられている。これらの構成は、比較例2の脈動トルク電流指令値作成器11a(図14参照)のものと同様である。これにより、単相座標変換器32からは、上述の式(5),(6)に示した、差トルク推定値Δτm ^の機械速度ωr(機械角1次成分)における余弦成分Δτmcと正弦成分Δτmsとが出力される。
また、単相座標変換器32の後段に設けられている低域通過フィルタ98c,98d、減算器91j,91k、比例器92t,92m、積分器94h,94iも、比較例1のものと同様である。比較例1においては、これら積分器94h,94iの出力信号によって直ちに脈動トルク電流指令値Iqsin *が決定されていたが、本実施形態では直ちに脈動トルク電流指令値Iqsin *が決定されるわけではないため、積分器94h,94iの出力信号の名称を「積分結果余弦成分Iqnc *」「積分結果正弦成分Iqns *」と呼ぶ。
振幅位相演算器51は、積分結果余弦成分Iqnc *および積分結果正弦成分Iqns *を振幅値Aと位相値θkとから成る極座標値に変換する。保持部52は、振動状態推定器17(図19参照)から供給される振動状態判定フラグPulFlgが“0”である限り、振幅位相演算器51から供給された振幅値Aと位相値θkとをそのまま出力する。そして、振動状態判定フラグPulFlgが“0”から“1”に立ち上がると、その時点における振幅値Aと位相値θkとが保持部52に保持され、それ以降は保持された振幅値Aと位相値θkとが出力され続ける。上述したように、振動状態推定器17d(図27参照)に適用される閾値PulJud4は、振動状態推定器17に適用される閾値PulJud1の数倍程度の値である。従って、振動状態判定フラグPulFlgが“0”から“1”に立ち上がったタイミングでは、振動状態推定器17dから出力される振動状態判定フラグPulFlgDSも、既に“1”になっている筈である。
位相固定振幅減少部55は、位相値θkを維持したまま、振動状態判定フラグPulFlgDSが“1”である限り、振幅値Aを所定の補正周期毎に段階的に減衰させてゆき、減衰した結果を振幅値ADとして出力する。そして、振動状態判定フラグPulFlgDSが“0”になると、振幅値ADを徐々に増加させてゆく。そして、振動状態判定フラグPulFlgDSが再び“1”になると、その時点の振幅値ADを保持する。
次に、余弦正弦成分配部53においては、位相固定振幅減少部55から出力された振幅値ADと、位相値θkとに基づいて、余弦成分および正弦成分が生成される。単相座標逆変換器37においては、これら余弦成分および正弦成分に基づいて、差トルク推定値の機械速度成分Δτmm ^が合成される。差トルク推定値の機械速度成分Δτmm ^には、比例器92nにてゲインKtrq(本実施形態においては「1」)が乗算され、その乗算結果が脈動トルク電流指令値Iqsin *として出力される。
<第3実施形態の動作>
次に、本実施形態の動作を図28を参照し説明する。図28(a)において、時刻t1以前の期間中では、機械速度ωrは、その平均速度が目標速度に近づくように制御されている。その期間中、図28(c)の例では軸誤差Δθcは閾値PulJud1,PulJud4未満になっているが、平均速度が目標速度に達しておらず、振動状態の評価が始まっていないため、振動状態判定フラグPulFlg,PulFlgDSは共に“0”になっている。
次に、時刻t1において機械速度ωrの平均速度は目標速度に達しているが、振動状態の判定期間を設けるため、若干の時間を経過した時刻t2において、振動状態の判定が開始される。図28(c)を参照すると、時刻t2において、軸誤差Δθcは閾値PulJud1,PulJud4未満であるため、図28(e),(f)に示すように、振動状態判定フラグPulFlg,PulFlgDSは共に“1”に立ち上がる。
振動状態判定フラグPulFlgが“0”から“1”に立ち上がったことにより、時刻t2以降、位相固定振幅減少部55から出力される振幅値ADは、補正周期毎に段階的に減少されてゆく。これにより、図28(d)に示すように、脈動トルク電流指令値Iqsin *の振幅が段階的に減少し、周期脈動トルク制御の効き具合が弱められてゆくことになる。図28(c),(e)を参照すると、時刻t3には軸誤差Δθcが閾値PulJud1以上になるから、振動状態判定フラグPulFlgが“0”に立ち下がる。
但し、位相固定振幅減少部55による振幅値ADの制御は、先に時刻t2に振動状態判定フラグPulFlgが“0”から“1”に立ち上がった際に開始されているから、時刻t3における立下りは、その後の制御に対して影響を及ぼすわけではない。時刻t2以降、脈動トルク電流指令値Iqsin *が段階的に減少され、軸誤差Δθcが段階的に増加してゆくと、やがて時刻t4において軸誤差Δθcが閾値PulJud4以上になる。
これにより、位相固定振幅減少部55においては、出力する振幅値ADの値が徐々に増加されてゆく。その結果、時刻t5において軸誤差Δθcは再び閾値PulJud4未満になるから、以降はその状態における振幅値ADが継続して出力されるようになり、脈動トルク電流指令値Iqsin *の振幅も一定になる。このように、本実施形態においては、時刻t5以降は周期脈動トルク制御の効き具合を弱めることにより、振動を許容範囲内にしつつ消費電力を抑制することができる。
ところで、圧縮機の動作中には、例えば急に液状の冷媒が圧縮機に還流されるような状況等、負荷トルクτLが急増する場合もある。そのため、機械速度ωrまたは軸誤差Δθc等の変動幅が所定の許容値を超えた場合には、振幅値ADの保持を停止し、図28に示したシーケンスを最初から実行し直すとよい。これにより、負荷急変等の異常時においても低振動で圧縮機を駆動することが可能になる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態の空気調和機について、図29を参照し説明する。
図29において、空気調和機300は、室内機303と、室外機304と、両者を接続する配管305とを有している。室内機303には室内熱交換器306と、室内熱交換器306に送風する送風機307とが設けられている。また、室外機304には、圧縮機302と、該圧縮機302を制御するモータ制御装置301とが設けられ、両者は配線ケーブル310を介して接続されている。さらに、室外機304には、室外熱交換器308と、該室外熱交換器308に送風する送風機309とが設けられている。室内を冷房する場合においては、図上で上側の配管305を介して室外機304の室外熱交換器308から室内機303の室内熱交換器306に冷媒が供給される。室内を冷房した後に気化した冷媒は、下側の配管305を介して圧縮機302に還流される。圧縮機302の構成は、第2実施形態のもの(図22参照)と同様である。
このような構成において、圧縮機302には、機械角1回転毎、または負荷である圧縮機構部500の特性によって、脈動トルクが生じる。空気調和機300においては、地球温暖化や電気代削減のために、省エネ化が強く望まれている。そのため、圧縮機302をインバータで駆動して可変速にすることにより、冷暖房サイクルの起動/停止に伴うロスを削減することが一般的となっている。さらに、住宅の断熱性能の向上により、一旦室内の温度が設定値になった後は、空気調和機300の能力を最小化して動作し続けることが望まれている。このように、モータ制御装置301および圧縮機302に対しては、「より低速で駆動する」ことが望まれている。しかし、低速で駆動する際には、振動抑制が大きな課題となる。振動が大きいと騒音の原因になるだけでなく、配管305に応力が生じ、寿命を低下させる可能性もある。
圧縮機302を構成する電動機6の回転子6aが高速で駆動している場合は、慣性モーメントの効果により、電動機6のモータトルクτmと負荷トルクτLとの差である差トルクΔτmが大きかったとしても、振動や騒音への影響は比較的小さい。しかし、電動機6を低速で駆動する場合には、差トルクΔτmが振動や騒音に与える影響は大きい。圧縮機302が搭載される空気調和機の室外機は、その名称通り室外に設置されるが、居住空間に近いところに設置されることも多いため、振動や騒音は極力削減することが望ましい。そこで、周期的な負荷変動を抑制し電動機の騒音や振動を低減可能なモータ制御装置、すなわち、上記第1〜第3実施形態に述べた何れかのモータ制御装置が、図29におけるモータ制御装置301として適用される。
一般的に、空気調和機は、運転直後は冷却サイクルが安定しないために負荷変動が大きくなり、冷却サイクルが安定すると負荷変動も一様の変動に落ち着く傾向がある。そのため、運転直後は脈動トルク制御により十分な振動抑制が望まれるが、冷凍サイクルが安定した後は、周期脈動トルク制御の効き具合を調整し、振動を許容範囲内にしつつ消費電力を抑制することが望まれる。上記第1〜第3実施形態に述べた何れかのモータ制御装置が、図29におけるモータ制御装置301として適用されることにより、この要望が充足される。
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
<振動状態推定器の変形例>
(1)上記各実施形態において、振動状態推定器17(図19参照)または振動状態推定器17d(図27参照)に代えて、図30に示す振動状態推定器17bを適用してもよい。
図30において、ピークホールド部80c,80dは、各々所定時間内におけるインバータ周波数指令値ω1の最大値および最小値を保持し、出力する。減算器91nは、両者の差、すなわちインバータ周波数指令値ω1の周期変動の振幅AmpPulω1を出力する。比較器81bは、この振幅AmpPulω1と閾値PulJud2とを比較し、振幅AmpPulω1が閾値PulJud2よりも小さい場合は“1”、それ以外の場合は“0”になる振動状態判定フラグPulFlg2を出力する。この振動状態判定フラグPulFlg2は、上記各実施形態における振動状態判定フラグPulFlgまたはPulFlgDSに代えて用いることができる。
本変形例の振動状態推定器17bは、特に低速域に用いて好適である。上記実施形態の振動状態推定器17にて適用された軸誤差Δθcは、式(3)にあるように逆正接を用いて計算される。そして、式(3)の分母に注目すると、q軸電圧指令値Vq *が含まれている。式(2)より、q軸電圧指令値Vq *の第3項は誘起電圧定数と速度の積であり、いわゆる速度起電圧であるから、低速域になると値が小さくなる。すなわち、式(3)は分子の変化や変動が仮に同一であった場合でも、逆正接の値は大きくなる。これに対して、本変形例に適用されるインバータ周波数指令値ω1は、PLL制御器13(図8参照)にて軸誤差Δθcを用いて計算されるが、PLL制御器13の比例積分制御の応答周波数に基づいて、その変動範囲は適切な変動範囲に抑えることができる。このように、振幅AmpPulω1は、「電動機(6)または負荷装置(9)の振動量に応じて増減する振動対応量」であり、本変形例は、この振動対応量(振幅AmpPulω1)によって、電動機または負荷の振動を推定しているものである。
(2)また、上記各実施形態における振動状態推定器17,17dに代えて、図31に示す振動状態推定器17cを適用することもできる。
振動状態推定器17cには、εΔτmcおよびεΔτmsという二つの信号が入力される。これらの信号は、脈動トルク電流指令値作成器11,11d,11e(図20,図23,図26参照)等に含まれる減算器91j,91kの出力信号を指す。すなわち、差トルク推定値Δτm ^の機械速度ωrに対する余弦成分Δτmc,正弦成分Δτmsと、それぞれの指令値(Δτmc *=0,Δτms *=0)との差である。
比較器81cは、入力された信号εΔτmc,εΔτmsの双方が閾値PulJud3未満であれば“1”、少なくとも何れか一方が閾値PulJud3以上であれば“0”になる振動状態判定フラグPulFlg3を出力する。この振動状態判定フラグPulFlg3は、上記各実施形態における振動状態判定フラグPulFlgまたはPulFlgDSに代えて用いることができる。
本変形例の振動状態推定器17cは、特に、差トルク推定値Δτm ^等に高次の振動成分が多く含まれる場合に用いて好適である。上記各実施形態における脈動トルク電流指令値作成器11,11d,11e(図20,図23,図26)においては、単相座標変換器32から差トルク推定値余弦成分Δτmcおよび正弦成分Δτmsが出力されると、それらが指令値(Δτmc *=0,Δτms *=0)に近づくように、積分器94h,94iが動作する。
すると、信号εΔτmc,εΔτmsが小さくなった(共に閾値PulJud3未満になった)ということは、単相座標変換器32および単相座標逆変換器37で座標変換時に使用した周波数と同一の周波数成分が、抑制されている事を意味する。単相座標変換を適用することにより、他の周波数成分の感度は下げられるため、例えば、振動成分に複数の高次成分が含まれていても、対象とする周波数成分(すなわち機械速度ωrの成分)を抑制できたかどうかを容易に判断できる。このように、信号εΔτmc,εΔτmsは、「電動機(6)または負荷装置(9)の振動量に応じて増減する振動対応量」であり、本変形例は、この振動対応量(信号εΔτmc,εΔτms)によって、電動機または負荷の振動を推定しているものである。
(3)上述の変形例以外にも、制御部2にて直接的あるいは間接的に検出可能な値または計算値を用いて、振動状態を推定することができるから、これらの値を用いて振動状態推定器を構成してもよいことは勿論である。例えば、dq/3φ変換器4から出力される電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *の瞬時値と理想的なサインカーブとの差によって振動状態を推定することができ、交流電流検出値Iu,Iwの瞬時値とサインカーブとの差によっても振動状態を推定することができる。また、これらによって求められる電動機6の消費電力によっても振動状態を推定することができる。従って、これらの電圧、電流、電力など量は、「電動機(6)または負荷装置(9)の振動量に応じて増減する振動対応量」であり、これら振動対応量によって、電動機または負荷の振動を推定することができる。
(4)上記各実施形態、比較例、変形例における振動状態推定器17b,17dには、インバータ周波数指令値ω1を供給したが、該指令値ω1に代えて、回転速度指令値ω*を供給してもよい。また、第3実施形態の振動状態推定器17d(図27)には、軸誤差Δθcが供給されたが、これに代えてインバータ周波数指令値ω1または回転速度指令値ω*を供給してもよい。
<脈動トルク電流指令値作成器の変形例>
(1)第1実施形態における脈動トルク電流指令値作成器11(図20)に代えて、図32に示す脈動トルク電流指令値作成器11bを適用してもよい。
図20においては、単相座標変換器32の前段にスイッチ82aが挿入され、振動状態判定フラグPulFlgの値に応じて、差トルク推定値Δτm ^またはゼロ信号の何れかが選択されていた。本変形例においては、比例器92t,92mの前段にスイッチ82b,82cが挿入されている。そして、振動状態判定フラグPulFlgが“0”である場合には、スイッチ82b,82cにて、減算器91j,91kの出力信号(上述した信号εΔτmc,εΔτms)が選択され、比例器92t,92mに供給される。
振動状態判定フラグPulFlgが“0”である場合の脈動トルク電流指令値作成器11bの動作は、比較例2における脈動トルク電流指令値作成器11a(図14参照)の動作と同様である。すなわち、脈動トルク電流指令値作成器11bからは、差トルク推定値Δτm ^をゼロに近づけるような脈動トルク電流指令値Iqsin *が出力され続ける。
一方、振動状態判定フラグPulFlgが“1”になると、スイッチ82b,82cにてゼロ信号が選択される。これにより、積分器94h,94iに供給される信号がゼロ信号になる。これにより、積分器94h,94iの出力信号すなわち脈動トルク電流指令値正弦成分Iqsin * sおよび脈動トルク電流指令値余弦成分Iqsin * cも、一定値に保持される。この結果、周期脈動トルク制御の効き具合を弱くでき、消費電力を抑えることができる。本変形例によれば、振動状態判定フラグPulFlgが“1”である場合には、単相座標変換器32や低域通過フィルタ98c,98dの演算を省略することができるため、演算時間を短縮できるという効果も呈する。
(2)また、第1実施形態における脈動トルク電流指令値作成器11(図20)に代えて、図33に示す脈動トルク電流指令値作成器11cを適用してもよい。
本変形例の脈動トルク電流指令値作成器11cは、比較例2の脈動トルク電流指令値作成器11a(図14参照)において、積分器94h,94iと単相座標逆変換器37との間に振幅位相演算器51、保持部52および余弦正弦成分配部53を挿入したものに等しい。
また、振幅位相演算器51、保持部52、余弦正弦成分配部53は、第3実施形態の脈動トルク電流指令値作成器11e(図26参照)に適用されているものと同様である。従って、積分器94h,94iから積分結果余弦成分Iqnc *,積分結果正弦成分Iqns *が出力されると、これらの値が振幅位相演算器51において極座標値に変換され、振幅値Aと位相値θkとが出力される。
また、保持部52は、振動状態推定器17(図19参照)から供給される振動状態判定フラグPulFlgが“0”である限り、これら振幅値Aと位相値θkとをそのまま出力する。そして、振動状態判定フラグPulFlgが“0”から“1”に立ち上がると、その時点における振幅値Aと位相値θkとが保持部52に保持され、それ以降は保持された振幅値Aと位相値θkとが出力され続ける。余弦正弦成分配部53においては、保持部52から出力された振幅値ADと、位相値θkとに基づいて、余弦成分および正弦成分が生成される。単相座標逆変換器37においては、これら余弦成分および正弦成分に基づいて、差トルク推定値の機械速度成分Δτmm ^が合成される。
本変形例と比較例2の脈動トルク電流指令値作成器11a(図14)とを比較すると、本変形例においては、振動状態判定フラグPulFlgが“1”になった後は、周期脈動トルク制御の効き具合を弱くでき、これによって消費電力を抑制することができる。また、本変形例によれば、振動状態判定フラグPulFlgが“1”である場合には、保持部52の前段までの要素、すなわち単相座標変換器32、低域通過フィルタ98c,98d、積分器94h,94i等の演算を省略することができるため、演算時間を短縮できるという効果もある。
(3)第3実施形態の脈動トルク電流指令値作成器11e(図26)、あるいは上述した図33の変形例による脈動トルク電流指令値作成器11cのように、単相座標変換器32および単相座標逆変換器37を用いる脈動トルク電流指令値作成器にあっては、さらなる変形が可能である。すなわち、これらの脈動トルク電流指令値作成器において、振動状態判定フラグPulFlgが“1”になった際、位相値θkを所定範囲内に制限するようにしてもよい。位相値θkが所定範囲内に制限されると、これによって周期脈動トルク制御の効きが弱くなるため、上述した各実施形態と同様に、消費電力を抑制することができる。
(4)上記各実施形態、比較例、変形例における脈動トルク電流指令値作成器11,11a〜11eには、インバータ周波数指令値ω1を供給したが、該指令値ω1に代えて、回転速度指令値ω*を供給してもよい。
(5)第3実施形態において、位相固定振幅減少部55(図26)は、振幅値ADを段階的に減少させたが、振幅値ADをランプ状に連続的に減少させてもよい。
<電動機、負荷装置等の変形例>
(1)上記各実施形態においては、電動機6は回転子6aに永久磁石を有する永久磁石同期モータを用いた例を説明したが、電動機6として、その他の電動機(例えば、誘導機、同期機、スイッチトリラクタンスモータ、シンクロナスリラクタンスモータ等)を用いることができる。また、電動機6は三相電動機でなくてもよく、例えば二相電動機、その他の多相電動機であってもよい。電動機の種類によっては、電圧指令値演算部34での演算方法が変わるが、それ以外については各実施形態の構成と同様のものを適用でき、各実施形態と同様の効果を奏することができる。
(2)上記各実施形態においては、電動機6として非突極型のものを採用したため、d軸とq軸のインダクタンス値は同一であると仮定し、d軸電流指令値Id *としてゼロを設定した。しかし、電動機6として突極型の電動機を採用してもよい。すなわち、突極型の電動機においては、d軸とq軸のインダクタンスに差が生じるから、q軸電流によるトルクの他に、d軸とq軸のインダクタンスの差に起因するリラクタンストルクが生じる。その場合、リラクタンストルクを考慮してd軸電流指令値Id *を設定することにより、同一のトルクを小さいq軸電流で発生できる。これにより、消費エネルギーを削減できるという効果を奏する。
(3)上記各実施形態においては、負荷装置9として回転ロータリー型の圧縮機構を用いた例を説明したが、負荷装置9として、ピストンが直線的に動くレシプロ型、あるいは渦巻状の旋回翼からなるスクロール型等の圧縮機構を適用してもよい。それぞれの圧縮方式によって周期的な負荷変動の特性は異なるものの、何れの圧縮方式においても圧縮工程に起因する負荷変動がある。これらの負荷トルク変動特性はそれぞれ異なるが、前述の手段を備えるモータ制御装置は圧縮機構が異なる場合にも同様に適用でき、何れにおいても上記各実施形態と同様の効果を奏する。
(4)上記各実施形態においては、負荷装置9として圧縮機を適用した例を説明したが、負荷装置9として、周期的に変動する負荷トルク特性を有する他の流体機械(例えばポンプ)を採用でき、その場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
(5)上記各実施形態において、電動機6のシャフト502は、クランクシャフト503を介して圧縮機構部500のロータリーピストン501に接続されていた。そのため、圧縮機302としての一連の工程は電動機6の機械角1周期となり、その結果、負荷トルクの変動も機械角1周期であった。しかし、例えば電動機6のシャフトとクランクシャフト503の間に、ギア等の変速機構を追加してもよい。この場合、負荷トルクの変動は、機械角1周期の所定値倍(この所定値は、整数であると整数ではない場合がある)で変動するが、負荷トルクの変動周期が予め分かっているため、上記各実施形態と同様の内容を適用可能であり、同様の効果を奏する。
(6)上記各実施形態においては、電動機6と負荷装置9との間の動力伝達は、図3(a),(b)に示したように機械的な接続により実現されていた。しかし、潤滑油の給油の構成や、圧縮あるいは搬送対象(例えば有害ガス)によっては、磁気的に接続された機構を含めることで、電動機6と負荷装置9とを隔離し、安全性やメンテナンス性を高めてもよい。
<その他各部の変形例>
(1)上記各実施形態においては、図9に示すトルク電流指令値作成器10によってトルク電流指令値Itq *を生成したが、トルク電流指令値Itq *は図示せぬ上位制御系等から得てもよい。
(2)上記各実施形態においては、制御軸上で電圧や電流を制御したが、実際に電動機6に印加される電圧の振幅と位相を調整して電動機6を制御してもよい。また、上記各実施形態においては、制御軸上のd軸,q軸電流指令値Id *,Iq *に基づいてd軸,q軸電圧指令値Vd *,Vq *を求め(図7参照)、d軸,q軸電圧指令値Vd *,Vq *に基づいて三相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *を求めていた。しかし、d軸,q軸電流指令値Id *,Iq *に基づいて、三相の電流指令値を求め、この三相の電流指令値に基づいて三相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *を求めてもよい。
(3)上記各実施形態においては、直流電圧源20に対してシャント抵抗器25を直列に接続したが、他にスイッチング素子22を保護する手段を講じた場合等は、シャント抵抗器25を省略することもできる。
(4)上記各実施形態においては、電力変換回路5から電動機6に供給される電流を電流検出部7によって直接的に検出したが、この電流検出部7に代えてシングルシャント電流検出方式の電流検出部を採用してもよい。シングルシャント電流検出方式とは、例えばシャント抵抗器25の電圧降下を測定することによって直流電圧源20の出力電流を測定し、交流側の電流を求めるものである。これは、電力変換回路5の各相の交流電流と同等の電流がシャント抵抗器25に流れることを利用している。シャント抵抗器25に流れる電流は時間的に変化するため、ドライブ信号24a〜24fが変化するタイミングを基準に適切なタイミングで電流検出するとよい。
(5)上記各実施形態において、制御部2はマイクロコンピュータやDSP等の半導体集積回路(演算制御部)によって構成したが、各実施形態の構成、機能、処理部、処理手続き等は、それらの一部または全部を、例えばASIC(特定用途向けIC)等のハードウェアによって実現しても良い。また、マイクロコンピュータやDSP等の半導体集積回路を用いる場合には、これらに適用されるプログラムを記憶媒体に格納して頒布し、あるいは伝送路を通じて頒布してもよい。
1,1a,1b モータ制御装置
2,2a,2b 制御部
3 電圧指令値作成器
4 dq/3φ変換器4(逆座標変換部)
5 電力変換回路
6 電動機
7 電流検出部
8 3φ/dq変換器(座標変換部)
9 負荷装置
10 トルク電流指令値作成器
11,11a,11b,11c,11d,11e 脈動トルク電流指令値作成器(ドライブ信号決定部)
12 軸誤差演算器
13 PLL制御器
16 脈動トルク推定器
17,17b,17c,17d 振動状態推定器(振動状態推定部)
20 直流電圧源
21 インバータ
22 スイッチング素子
23 ゲートドライバ回路
32 単相座標変換器
33 PWM信号作成器
34 電圧指令値演算部(ドライブ信号決定部)
37 単相座標逆変換器
40 位置推定部
50 任意周波数成分抑制器(第1の周期脈動トルク制御部)
50c 任意周波数成分抑制器(第2の周期脈動トルク制御部)
51 振幅位相演算器
52 保持部
53 余弦正弦成分配部
54 指令値切替器(選択部)
55 位相固定振幅減少部
80a〜80d ピークホールド部
81a,81b,81c,81d 比較器(振動判定部)
82a,82b,82c スイッチ
300 空気調和機
301 モータ制御装置
302 圧縮機
303 室内機
304 室外機
305 配管
306 室内熱交換器
307 送風機
308 室外熱交換器
309 送風機
310 配線ケーブル
500 圧縮機構部
500 回転ロータリー型圧縮機構部(圧縮機構部)
501 ロータリーピストン
502 シャフト
503 クランクシャフト
504 シリンダ
505 吸込み口
506 ベーン
507 吐出口
508 吸込みパイプ
509 吐出パイプ
510 軸受け
511 密閉容器(収納容器)
512 バランスウェイト
Th1 許容値(第1の閾値)
Th2 許容値(第2の閾値)

Claims (11)

  1. 直流電圧を交流電圧に変換し、負荷装置に接続された電動機を前記交流電圧によって駆動する電力変換回路と、
    前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部と
    を備え、前記制御部は、
    前記電動機または前記負荷装置の振動量に応じて増減する振動対応量に基づいて、前記電動機または前記負荷装置の振動状態を推定する振動状態推定部と、
    前記振動対応量に基づいて前記ドライブ信号を決定するドライブ信号決定部と
    を有することを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記振動状態推定部は、
    前記振動対応量が所定の閾値以上であるか否かを判定する振動判定部
    をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記負荷装置は、前記電動機の機械角一周期の所定値倍の長さを有する脈動周期で負荷トルクが変動するものであり、
    前記ドライブ信号決定部は、前記振動対応量が前記閾値以上である場合に、前記負荷トルクに起因する前記電動機の回転速度の変動を抑制する周期脈動トルク制御を行う
    ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記ドライブ信号決定部は、
    前記回転速度が所定のトルク制御許容速度範囲内であり、かつ、前記振動対応量が前記閾値以上である場合に前記周期脈動トルク制御を行う一方、前記回転速度が前記トルク制御許容速度範囲から外れると、前記周期脈動トルク制御を停止する
    ことを特徴とする
    行うことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
  5. 前記電動機は多相電動機であり、
    前記電力変換回路から前記電動機に印加される多相電圧または前記電動機に供給される多相電流を、回転座標における値に変換する座標変換部と、
    前記回転座標における値を前記多相電流または前記多相電流に変換する逆座標変換部と
    をさらに有し、
    前記ドライブ信号決定部は、前記負荷トルクに起因する前記電動機の回転速度の変動をフィードバック制御するとともに、前記振動対応量が前記閾値未満になると、前記回転座標における値の位相または振幅のうち少なくとも一方を固定する
    ことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
  6. 前記ドライブ信号決定部は、
    第1のパラメータの変動を抑制することにより、前記負荷トルクに起因する前記電動機の回転速度の変動を抑制する第1の周期脈動トルク制御部と、
    第2のパラメータの変動を抑制することにより、前記負荷トルクに起因する前記電動機の回転速度の変動を抑制する第2の周期脈動トルク制御部と、
    前記振動対応量または前記回転速度に基づいて、前記第1の周期脈動トルク制御部または前記第2の周期脈動トルク制御部のうち何れか一方を選択する選択部と
    を有することを特徴とする請求項5に記載のモータ制御装置。
  7. 前記振動対応量は、前記回転速度の変動幅、前記電動機に供給される電流の振幅値の変動幅、前記電動機に印加される電圧の振幅値の変動幅、前記電動機に供給される電力の振幅値の変動幅、または前記電動機若しくは前記負荷装置に生じる振動振幅の推定値のうち、何れか一または複数の値である
    ことを特徴とする請求項6に記載のモータ制御装置。
  8. 前記第1の周期脈動トルク制御部は、前記回転速度の変動幅が小となるように、前記電動機に供給される電流の振幅値を制御するものであり、
    前記第2の周期脈動トルク制御部は、前記電動機に供給される電流の振幅値の変動が小となるように、前記電動機に供給される電流の振幅値を制御するものであり、
    前記選択部は、
    前記振動対応量が第1の閾値未満であれば、周期脈動トルク制御を停止し、
    前記振動対応量が第1の閾値以上であって第2の閾値未満であれば、前記第2の周期脈動トルク制御部を選択し、
    前記振動対応量が第2の閾値以上であれば、前記第1の周期脈動トルク制御部を選択する
    ことを特徴とする請求項7に記載のモータ制御装置。
  9. 請求項1に記載のモータ制御装置と、
    前記モータ制御装置に駆動された電動機と、
    前記電動機に接続された圧縮機構部と、
    前記電動機と前記負荷装置とを収納する収納容器と
    を有することを特徴とする圧縮機。
  10. 請求項9に記載の圧縮機と、
    前記圧縮機に接続された室内熱交換器と、
    前記圧縮機および前記室内熱交換器に接続された室外熱交換器と、
    を有することを特徴とする空気調和機。
  11. 直流電圧を交流電圧に変換し、負荷装置に接続された電動機を前記交流電圧によって駆動する電力変換回路と、コンピュータを有し前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部とを備えるモータ制御装置に適用されるプログラムであって、前記コンピュータを
    前記電動機または前記負荷装置の振動量に応じて増減する振動対応量に基づいて、前記電動機または前記負荷装置の振動状態を推定する振動状態推定部、
    前記振動対応量に基づいて前記ドライブ信号を決定するドライブ信号決定部、
    として機能させるためのプログラム。
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