JP2017046430A - モータ制御装置、流体機械、空気調和機およびプログラム - Google Patents

モータ制御装置、流体機械、空気調和機およびプログラム Download PDF

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Hisanori Suzuki
尚礼 鈴木
田村 建司
Kenji Tamura
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能登原 保夫
Yasuo Notohara
保夫 能登原
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Abstract

【課題】モータの振動や騒音を抑制する。【解決手段】直流電圧を交流電圧に変換し出力することにより、負荷トルクが周期的に変動する負荷装置に結合される電動機を駆動する電力変換回路と、前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部(2)と、を有し、前記制御部(2)は、前記負荷トルクに応じた周期で増減する負荷トルク対応パラメータ(電圧変調率KhV1)を演算し、前記負荷トルク対応パラメータのピーク値が所定の第1の閾値を超えると、前記電動機の回転により発生する誘起電圧を抑制する弱め磁束状態で前記電力変換回路を駆動するようにした。【選択図】図11

Description

本発明は、モータ制御装置、流体機械、空気調和機およびプログラムに関する。
モータ制御装置の背景技術として、下記特許文献1の要約書には、「交流電源1からの交流電圧を整流し、任意の目標直流電圧となるように、直流電圧へ変換するコンバータ2と、電動機4を概正弦波状または概台形波状の電流にて駆動するインバータ5を備え、インバータ5の変調率に応じて、コンバータ2の目標電圧およびインバータ5の電流位相を予め記憶された補正パターンに基づいて補正することで、適切な直流電圧および電流位相で電動機を駆動することにより、トータル効率を高めることができる」と記載されている。
特開2006−204050号公報
直流電圧を交流電圧に変換するインバータによってモータを駆動する際、回転速度を高めるためには、モータに印加する交流電圧を上昇させる必要が生じる。ここで、交流電圧を限界付近まで高めた後、さらに回転速度を高めるためには、特許文献1に示されているように「弱め磁束制御(弱め界磁制御)」が適用される。これは、電流位相を進め、モータ内の磁束を弱めることによって誘起電圧を抑える制御である。
しかし、「弱め磁束制御」を適用すると、より大きな電流がモータに流れ、効率が悪くなるという問題が生じる。従って、弱め磁束制御は、それを適用しなければ実現できない回転速度に対してのみ適用し、弱め磁束制御を適用しなくても実現できる回転速度に対しては、適用しないことが通常である。
また、モータに結合される負荷によって生じる負荷トルクが脈動すると、モータに振動、騒音が生じる原因になる。振動、騒音を低減するためには、負荷トルクの増減に追従してモータ発生トルクを増減させるとよい。しかし、モータに印加する交流電圧に制約があると、モータ発生トルクが負荷トルクに追従できなくなり、振動、騒音が大きくなることがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、モータの振動や騒音を抑制できるモータ制御装置、流体機械、空気調和機およびプログラムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のモータ制御装置は 、直流電圧を交流電圧に変換し出力することにより、負荷トルクが周期的に変動する負荷装置に結合される電動機を駆動する電力変換回路と、前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部と、を有し、前記制御部は、前記負荷トルクに応じた周期で増減する負荷トルク対応パラメータを演算する機能と、前記負荷トルク対応パラメータのピーク値が所定の第1の閾値を超えると、前記電動機の回転により発生する誘起電圧を抑制する弱め磁束状態で前記電力変換回路を駆動する機能と、を有することを特徴とする。
本発明のモータ制御装置、流体機械、空気調和機およびプログラムによれば、モータの振動や騒音を抑制できる。
本発明の第1実施形態におけるモータ制御システムのブロック図である。 圧縮機の(a)側断面図および(b)I−I’断面図である。 回転角度位置に対する負荷トルクの変化の例を示す図である。 電力変換回路および電流検出部のブロック図である。 PWM信号作成器の動作説明図である。 電圧変調率と、電圧比率との関係を示す図である。 制御軸の回転角度位置と実際の回転子の回転角度位置の関係を示す図である。 固定座標系である三相軸と回転座標系である制御軸との関係を示す図である。 (a)電圧変調率の時間変化の例を示す図、(b)はオーバーフラグの波形の例を示す図である。 部分電圧飽和領域で駆動した場合の電圧ベクトル軌跡の例を示す図。 制御部のブロック図である。 電圧指令値演算部のブロック図である。 変調率演算器と印加電圧作成器のブロック図である。 電圧ベクトルの変化を示す図である。 PLL制御器のブロック図である。 トルク電流指令値作成器のブロック図である。 脈動トルク推定器の原理を説明する図である。 脈動トルク推定器のブロック図である。 脈動トルク電流指令値作成器のブロック図である。 振動の周波数依存特性の例を示す図である。 電圧位相調整器のブロック図である。 (a)圧縮機構部の吐出圧の波形図、(b)最大電圧変調率Kおよび平均電圧変調率の波形図、(c)電圧位相調整量の波形図、(d)オーバーフラグの波形図、(e)アンダーフラグの波形図、(f)減算フラグの波形図である。 電圧位相調整器による電圧変調率の時間変化の例を示す図である。 電圧位相調整器による電圧ベクトル軌跡の変化の例を示す図である。 第2実施形態における電圧位相調整器のブロック図である。 第3実施形態における電圧位相調整器のブロック図である。 第3実施形態における電力変換回路および電流検出部のブロック図である。 第3実施形態における(a)直流電圧の波形図、(b)最大電圧変調率および平均電圧変調率の波形図、(c)d軸電流指令値の波形図、(d)オーバーフラグの波形図、(e)アンダーフラグの波形図、(f)減算フラグの波形図である。 第4実施形態による流体機械の模式図である。 第4実施形態における電圧位相調整器のブロック図である。 電圧位相調整積分ゲインの第1の設定例を示す図である。 電圧位相調整積分ゲインの第2の設定例を示す図である。 回転速度に応じて変調率判定値を変更する設定例を示す図である。 吐出圧または吐出温度に応じて変調率判定値を変更する設定例を示す図である。 第5実施形態における流体機械の模式図である。 レシプロ圧縮機の負荷トルクの変化の例を示す図。 第5実施形態における電圧位相調整器のブロック図である。 第6実施形態による空気調和機の模式図である。 第6実施形態における電圧位相調整積分の設定例を示す図である。 第6実施形態における変調率判定値を変更する設定例を示す図である。 第7実施形態による検証システムのブロック図である。
[第1実施形態]
<全体構成>
まず、図1に示すブロック図を参照し、本発明の第1実施形態によるモータ制御システムSの全体構成を説明する。
モータ制御システムSは、モータ制御装置1と、圧縮機17とを有している。圧縮機17は、共通の密閉容器に収納された電動機6と負荷装置9とを有している。本実施形態において、電動機6は、回転子に永久磁石を埋設した三相の永久磁石同期モータであり、負荷装置9は、回転ロータリー型圧縮機構である。
また、モータ制御装置1は、インバータを有し直流電圧源から供給された電力によって交流電圧を出力し電動機6を駆動する電力変換回路5と、該電力変換回路5を駆動するドライブ信号を出力する制御部2と、電動機6または電力変換回路5に流れる電流を検出する電流検出部7とを有している。すなわち、制御部2および電力変換回路5によって与えられる交流電圧または交流電流によって、電動機6の速度やトルクを所望の状態に制御し、電動機6に結合された負荷装置9を回転駆動する。
制御部2は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、ROMには、CPUによって実行される制御プログラム、DSPによって実行されるマイクロプログラムおよび各種データ等が格納されている。図1において、制御部2の内部は一部のみ示すが、制御部2の詳細構成は後述する図11に示す。図11は、制御プログラムおよびマイクロプログラムによって実現される機能を、ブロックとして示している。
<圧縮機17>
次に、図2(a),(b)を参照し、圧縮機17の構成を説明する。なお、図2(a)は、圧縮機17の側断面図であり、図2(b)は図2(a)におけるI−I’断面図である。
図2(a)において、圧縮機17は、負荷装置9として採用される回転ロータリー型圧縮機構部500と、電動機6とを有し、これらは密閉容器511に収容されている。圧縮機構部500は、円筒状のシリンダ504と、偏心しつつシリンダ504内を回動するロータリーピストン501とを有している。電動機6は回転子6aと固定子6bとを有しており、回転子6aはシャフト502を上方向に突出させている。このシャフト502はクランクシャフト503に結合され、クランクシャフト503はロータリーピストン501に結合されている。これにより、圧縮機構部500は電動機6のシャフト502によって回転駆動される。
また、図2(b)に示すように、シリンダ504には、吸込み口505と吐出口507とが形成されるとともに、ベーン506が設けられている。ベーン506は、シリンダ504の中心に向かって付勢されており、ロータリーピストン501に摺動しつつ半径方向に移動自在になっている。このような構成により、圧縮機構部500では、電動機6を動力源としてロータリーピストン501が偏心駆動され、圧縮機としての吸込み、圧縮、吐出の一連の工程が実行される。次に、図2(b)を参照しつつ具体的な圧縮工程を説明する。まずシリンダ504に設けられた吸込み口505から気化した冷媒が吸い込まれる。
その後、電動機6の回転によりロータリーピストン501が回転し、図中にてベーン506よりも左側の空間の容積が小さくなることで冷媒が圧縮される。さらにロータリーピストン501が回転し、ベーン506を外方向に押し切るあたりで、吐出口507から圧縮された(液化された)冷媒が吐出される。以上のような吸込み、圧縮、吐出の一連の工程においては、ロータリーピストン501に印加される圧力が変化する。この圧力変化を、ロータリーピストン501を駆動する電動機6から見ると、周期的に負荷トルクが変化していることを意味する。
図3は、ロータリーピストン501の機械角一回転における、回転子6aの回転角度位置θdに対する負荷トルクτLの変化の例を示す図である。図3の横軸はロータリーピストン501の1周期(0度から360度)を示し、縦軸は負荷トルクτLの大きさを示している。本実施形態では、電動機6として4極電動機(回転子6aの極数が「4」)の例を示しているため、電気角2周期が機械角1周期に相当する。従って、仮に、電動機6が6極であった場合は、電気角3周期が機械角1周期に相当することになる。また、回転子6aの位置とロータリーピストン501との位置関係は組み付けによって決まるが、図3では、ロータリーピストン501が、図2(a)においてベーン506を最大限外側に押し出す位置を0°としている。
図3によれば、圧縮工程が進むにつれ負荷トルクτLが急激に大きくなり、吐出工程では、負荷トルクτLが減少しており、1回転中において負荷トルクτLが変動していることが分かる。また、回転する度に回転角度位置に応じて負荷トルクτLが変動するため、電動機6から見ると周期的に負荷トルクτLが変動していることになる。従って、電動機6の回転の都度、図3のパターンのトルク変化が生じていることになる。但し、たとえ同一の圧縮機構部500を用いたとしても、電動機6の回転速度、吸込み口505や吐出口507の圧力、吸込み口505と吐出口507の圧力差等によって、負荷トルクτLのピーク値や、ピーク値となる回転角度位置θdや、負荷トルクの増減変化波形は変化する。
圧縮機構部500における負荷トルクτLの変動と、電動機6が発生するモータ発生トルクτmとに差が生じると、振動や騒音が生じる。特に、前述のように負荷トルクτLの変動が大きい場合は、制御部2の構成によっては、電動機6に流れる電流に跳ね上りが生じ、あるいは電動機6の回転速度変動が生じるため、振動や騒音が生じやすい。本実施形態においては、このような振動や騒音を抑制するため、後述する制御部2(図11参照)においては、負荷トルクτLに追従するように、モータ発生トルクτmが設定される。
<電力変換回路5および電流検出部7>
次に、図4に示すブロック図を参照し、電力変換回路5および電流検出部7の構成を説明する。
電力変換回路5は、図4に示すように、インバータ21と、直流電圧源20と、ゲートドライバ回路23とを有している。直流電圧源20は、直流電圧Edcを出力する。インバータ21は、スイッチング素子22a〜22f(例えば、IGBTやMOS−FET等の半導体スイッチング素子)と、これらに並列に接続された還流用ダイオードとを有している。なお、スイッチング素子22a〜22fを総称して「スイッチング素子22」と呼ぶ。直流電圧源20には、シャント抵抗器25が直列接続されている。これは、過大な電流が流れないようにスイッチング素子22を保護するものである。
これらのスイッチング素子22は、2組のスイッチング素子22が直列に接続されることにより、各相の上下アームを構成している。図4の例においては、スイッチング素子22a,22bによりU相、スイッチング素子22c,22dによりV相、スイッチング素子22e,22fによりW相の上下アームが構成されている。各相の上下アームの接続点は、電動機6へ接続されている。ゲートドライバ回路23は、図1に示すPWM信号作成器33が出力するパルス状のドライブ信号(詳細は後述する)を受信し、これに基づいてドライブ信号24a〜24fを出力する。インバータ21においては、これらドライブ信号24a〜24fに基づいて、各スイッチング素子22がスイッチング制御される。
上下アームのスイッチングの状態によって、電力変換回路5の各相の電圧は、直流電圧Edcまたは零電圧の何れかになる。電力変換回路5においては、電動機6に現れる交流電圧の周波数よりも充分に高い周波数でスイッチングを行うため、電力変換回路5の各相の出力電圧は、上下アームのスイッチングの比率(スイッチングデューティ)を変えることにより自由に調整できる。すなわち、任意の周波数の三相交流電圧を電動機6に印加することができ、これによって電動機6の可変速駆動や、トルク制御を実現することができる。
電流検出部7は、電力変換回路5から電動機6に流れる三相の交流電流のうち、U相とW相に流れる電流を検出し、その結果を交流電流検出値Iu,Iwとして出力する。勿論、全相の交流電流を検出しても差支えないが、キルヒホッフの第1法則から、三相のうち2相が検出できれば、他の1相は検出した2相から算出できる。
<PWM信号作成器33>
(PWM信号作成器33の基本的動作)
図1において制御部2の内部のPWM信号作成器33は、供給された3相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *と、キャリア信号である三角波との比較により、電力変換回路5に与えるドライブ信号を生成する。電気角一周期における1相分の電圧指令値と三角波キャリア信号とドライブ信号との関係を図5に示す。図5は本実施形態におけるPWM信号作成器33の波形図であり、図中の「電圧指令値」とは、上述のVu *,Vv *,Vw *の何れかである。生成されるドライブ信号Gp,Gnは、対応する相における上アーム,下アーム(図4参照)のドライブ信号である。例えば、U相の電圧指令値Vu *に対して、生成されるドライブ信号Gp,Gnは、図4におけるドライブ信号24a,24bに対応する。
図5において、電圧指令値が三角波キャリア信号のレベル以上になると、上アームのドライブ信号GpはHレベルになり、上アームのスイッチング素子はオン状態になる。また、下アームのドライブ信号GnはLレベルになり、下アームのスイッチング素子はオフ状態になる。また、電圧指令値が三角波キャリア信号のレベル未満になると、上アームのドライブ信号GpはLレベルになり、上アームのスイッチング素子はオフ状態になる。また、下アームのドライブ信号GnはHレベルになり、下アームのスイッチング素子はオン状態になる。従って、図5に示すように、電圧指令値のレベルに応じて、ドライブ信号のデューティ比が設定される。
なお、ゲートドライバ回路23やスイッチング素子22自体の遅れに起因して、上下アームのスイッチング素子22が短絡する恐れがあるため、実際には上下アームの両方がオフ状態となるデッドタイム(数マイクロ秒〜十数マイクロ秒程度)を付加して最終的なドライブ信号とすることが望ましい。但し、以下の説明においては、説明の簡略化のため、デッドタイムを有しない理想的なドライブ信号を用いることを前提として説明する。
(変調率と電圧比率)
図6に示すグラフは、電力変換回路5をPWM変調で制御した場合の電圧変調率Khと、電圧比率Rhとの関係を示すものである。ここで、横軸の電圧変調率Khは、「電圧指令値の振幅(波高値)/三角波キャリア信号の振幅(波高値)」に等しい値である。なお、電圧変調率Khは、「電圧指令値の振幅(波高値)/直流電圧Edc」であってもよい。電力変換回路5の出力電圧は、直流電圧源20に対するスイッチングデューティで決定されるため、図示のように、電圧変調率Khによって表現している。また、縦軸の電圧比率Rhは、「相電圧の基本波の振幅(波高値)/直流電圧Edc」に等しい値である。
また、特性L1は、線間変調を行った場合の特性であり、特性L2は、相変調を行った場合の特性である。電圧変調率Khが「1.0」未満である場合は、特性L1,L2は一致している。本実施形態においては、線間変調を行うこととしている。この場合、電圧変調率Khが2/√3(≒1.15)以下であれば、電圧変調率Khと電圧比率Rhとの関係は線形である。この領域を「通常領域」と呼ぶ。一方、電圧変調率Khが境界値Khsat(=2/√3)を超えると、両者の関係は非線形になる。この領域を、「電圧飽和領域」と呼ぶ。電圧飽和領域においては、制御部2の各部の応答特性も非線形になるため、電動機6の動作が不安定になりやすくなる。電動機6を安定に駆動する方法として、「電圧飽和領域では電流制御を停止する」という方法が考えられる。しかし、単に電流制御を停止すると、負荷トルクτLの脈動に対応する電流制御も行えなくなるため、電動機6の回転速度変動が生じ、振動や騒音が悪化するという問題が生じる。
<座標軸の説明>
モータ制御装置1の各部の説明の前に、座標軸の定義を明確にしておく。図7は、モータ制御装置1にて検出、推定、あるいは仮定する制御軸の回転角度位置(推定回転角度位置θdc)と、実際の回転子6aの回転角度位置θdとの関係を示す図である。回転子6aに設けられた永久磁石の主磁束方向をd軸とし、d軸から回転方向に電気的に90度(電気角90度)進んだq軸とからなるd−q軸を定義する。このd−q軸は回転座標系である。
図7において、回転子6aの回転角度位置θdはd軸の位相を示す。このd−q軸に対し、制御上の仮想回転子位置をdc軸とし、そこから回転方向に電気的に90度進んだ軸をqc軸とし、dc軸,qc軸からなるdc−qc軸を定義する。dc−qc軸も回転座標系である。これらの座標軸の関係が図7に示されている。なお、これ以降の説明において、d−q軸を実軸、dc−qc軸を制御軸と呼ぶこともある。また、実軸と制御軸のズレである誤差角を軸誤差Δθdと呼ぶ。但し、本実施形態においては、位置センサ等によって実際の軸誤差Δθdが直接的に得られるわけではなく、推測によって求めるため、軸誤差Δθdの推定値を推定軸誤差Δθcと呼ぶ。
図8は、固定座標系である3相軸と回転座標系である制御軸との関係を示した図である。図8ではU相を基準にdc軸の回転角度位置(磁極位置)を推定し、その結果を上述の推定回転角度位置θdcとする。dc軸は図中の円弧状矢印の方向(反時計方向)に回転している。そのため、回転周波数(後に示す、インバータ周波数指令値ω1)を積分することで、推定回転角度位置θdcが得られる。本実施形態では、電動機6として永久磁石同期モータを用いているため、モータ制御装置1にて検出、推定、あるいは仮定する制御軸の推定回転角度位置θdcと、実際の回転子6aの回転角度位置θdとは、基本的には同期している場合が多い。
<部分的な電圧飽和駆動時の課題>
図9(a)は、電圧飽和領域に近い領域で電動機6を駆動した場合の電圧変調率Khの時間変化の例を示す図である。図9(a)においては、直流電圧源20が出力する直流電圧Edc(図4参照)は一定であると仮定している。しかし、負荷トルクτLの変動によって、機械角一回転の周期で電圧変調率Khは変化している。ここで、電圧変調率Khの機械角一回転中の平均値を電圧変調率Khの「直流成分」と呼び、電圧変調率Khからこの直流成分を減算したものを「交流成分」と呼ぶ。
電動機6の一回転中の負荷トルクτLの変動が大きくなると、一回転中のある一部の期間のみ、電圧変調率Khが境界値Khsat(=2/√3)を超えるような状態が生じる。このような状態を「部分電圧飽和状態」と呼ぶ。また、図9(b)に示すオーバーフラグKhOverFlgは、電圧変調率Khが境界値Khsatを超えた場合に“1”になり、それ以外の場合に“0”になるフラグである。このフラグの用途については後述する。
図10は、部分電圧飽和状態で駆動した場合の電圧ベクトル軌跡の例を示す図である。一点鎖線で示す円弧102の外側が電圧飽和領域になり、円弧102の内側が通常領域になる。電圧ベクトル104は、機械角一回転中に、一周するような電圧ベクトル軌跡106を描くが、部分電圧飽和状態においては、電圧ベクトル軌跡106の一部が、円弧102の外側にはみ出す。なお、図10において、電圧ベクトル104は、機械角一回転中における平均値を示している。電圧ベクトル104は、瞬時的には、電圧ベクトル軌跡106上の何れかの点に位置することになる。
このような部分電圧飽和状態での駆動は、短時間であれば問題にならない場合が多い。しかし、部分電圧飽和状態が継続すると、電動機6に対する電流制御が適切に行われず、電動機6が不安定になる場合がある。そこで、本実施形態においては、電圧変調率Khの最大値が境界値Khsat以下になるように、電圧変調率Khを抑制するとともに、電動機6に充分な電流を流せるように、電圧指令値の位相を制御する(弱め磁束制御を行う)ことにしている。これにより、電動機6の負荷トルクτLの変動や直流電圧Edcの変動があった場合においても、安定的に電動機6を駆動することができる。
<制御部2>
(全体構成)
次に、図11に示すブロック図を参照し、PWM信号作成器33以外の制御部2の各構成要素について説明する。
図中の3φ/dq変換器8は、推定回転角度位置θdcを用いて、3相軸上の交流電流検出値Iu,Iwを制御軸上(すなわちdc軸上およびqc軸上)の電流検出値Idc,Iqcに座標変換する。また、dq/3φ変換器4は、推定回転角度位置θdcを用いて、制御軸上の電圧指令値Vd **,Vq **を3相軸上の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *に座標変換する。
これらにより、制御部2の内部では、主として回転座標系であるdc−qc軸が使用される。その理由は、回転座標系では電圧や電流の定常的な値は直流量として扱えるという利点があるためである。座標変換のためには、電動機6の回転子6aの回転角度位置の情報が必要になる。本実施形態では、位置センサ等によって回転角度位置を検出するのではなく、上述したように、電動機6に流れる電流および電動機6への印加電圧に基づいて、推定回転角度位置θdcを計算することとしている。これにより、回転子6aに位置センサ等を設けることが不要になり、コストダウンを図ることができる。
軸誤差演算器12は、制御軸上の電流検出値Idc,Iqcと、制御軸上の電圧指令値Vd *,Vq *とに基づいて、実軸と制御軸との推定軸誤差Δθcを演算する。減算器91bは、推定軸誤差Δθcと軸誤差指令値Δθ*(通常は零)との差分を出力する。PLL制御器13は、この差分が零に近づくように、位相制御を行いつつ、インバータ周波数指令値ω1を出力する。積分器94aは、インバータ周波数指令値ω1を積分することにより、上述した推定回転角度位置θdcを出力する。このように、軸誤差演算器12、減算器91b、PLL制御器13および積分器94aは、推定回転角度位置θdcを求める位置推定部40を構成する。
脈動トルク推定器16は、モータ発生トルクτmと負荷トルクτLとの差分(差トルクΔτm)の推定値である差トルク推定値Δτm ^を求める。また、トルク電流指令値作成器10は、負荷トルクτLの平均値に応じたトルク電流指令値Itq *を作成する。また、脈動トルク電流指令値作成器11は、差トルク推定値Δτm ^に基づいて、これを補償する脈動トルク電流指令値Iqsin *を出力する。加算器90bは、トルク電流指令値Itq *と脈動トルク電流指令値Iqsin *とを加算し、その結果をq軸電流指令値Iq *として出力する。
電圧指令値演算部34は、d軸電流指令値Id *と、q軸電流指令値Iq *と、インバータ周波数指令値ω1とに基づいて、制御軸上の電圧指令値Vd *,Vq *を出力する。変調率演算器29は、直流電圧源20(図4参照)が出力する直流電圧Edcと、電圧指令値Vd *,Vq *とに基づいて、電圧変調率KhV1を出力する。なお、「電圧変調率KhV1」は、図6、図9等に示した「電圧変調率Kh」と同様であるが、電圧変調率KhV1は、「電圧指令値Vd *,Vq *の振幅すなわち√(Vd *2+Vq *2)と、直流電圧Edcとの比」という意味に限定して用いる。電圧変調率KhV1は、負荷トルクτLに対応する周期(例えば同一の周期)で増減する。このようなパラメータを「負荷トルク対応パラメータ」と呼ぶ。
電圧位相調整器60は、電圧指令値Vd *,Vq *に対して、進めるべき位相を電圧位相調整量Δθv *として出力する。印加電圧作成器19は、電圧指令値Vd *,Vq *に対して、電圧位相調整量Δθv *だけ位相を進め、その結果を電圧指令値Vd **,Vq **として出力する。なお、図11および他の図においては、見やすくするために、一部の信号線は結線していない。しかし、同一の記号を付した箇所(例えば、インバータ周波数指令値の「ω1」を付した箇所)は、結線されているのと等価である。
(電圧指令値演算部34)
次に、図12を参照し、電圧指令値演算部34の構成を説明する。電圧指令値演算部34には、d軸,q軸の電流指令値Id *,Iq *が供給される。また、電圧指令値演算部34には、PLL制御器13からインバータ周波数指令値ω1が供給されるとともに、3φ/dq変換器8から電流検出値Idc,Iqcが供給される。d軸電流指令値Id *は本実施形態においては零値を設定しているので、この理由について述べておく。本実施形態においては、電動機6は、非突極型の永久磁石同期モータであることを想定しているため、d軸,q軸のインダクタンスLd,Lqが同一になる。
これにより、本実施形態においては、d軸,q軸のインダクタンスLd,Lqの差によって発生するリラクタンストルクは考慮する必要がなくなる。したがって、電動機6が発生するモータ発生トルクτmはq軸を流れる電流に比例するものと考え、d軸電流指令値Id *は零値を設定している。また、後述する弱め磁束制御を行うことにより、電動機6には弱め磁束制御に基づくd軸電流が流れるが、これは印加電圧作成器19および電圧位相調整器60(図11参照)等によって実現されるため、電圧指令値演算部34内ではd軸電流指令値Id *は零値として扱う。
なお、電動機6が突極型(d軸とq軸のインダクタンスの差がある)である場合は、q軸電流によるトルクの他に、d軸とq軸のインダクタンスの差に起因するリラクタンストルクが生じる。この場合は、リラクタンストルクを考慮してd軸電流指令値Id *を設定することにより、同じトルクを小さいq軸電流で発生でき、消費エネルギーを削減できる。
図12のd軸電流制御器14aにおいて、減算器91cは、d軸電流指令値Id *からdc軸電流検出値Idcを減算する。比例器92c,92dは、この減算結果に対して、各々所定のゲインKp_acrd,Ki_acrdを乗算する。積分器94cは、比例器92dの出力結果、すなわち「Ki_acrd×(Id *−Idc)」を積分する。加算器90cは、比例器92cの乗算結果と、積分器94cの積分結果とを加算し、その加算結果をd軸電流指令値Id **として出力する。
同様に、q軸電流制御器14bにおいて、減算器91dはq軸電流指令値Iq *からqc軸電流検出値Iqcを減算する。比例器92e,92fは、この減算結果に対して、各々ゲインKp_acrq,Ki_acrqを乗算する。積分器94dは、比例器92fの出力結果、すなわち「Ki_acrq×(Iq *−Iqc)」を積分する。加算器90dは、比例器92eの乗算結果と、積分器94dの積分結果とを加算し、その加算結果をq軸電流指令値Iq **として出力する。このように、d軸電流制御器14aおよびq軸電流制御器14bは、各々比例積分演算器を構成している。
ここで、電流制御器14a,14bにおいて比例積分演算を行っている理由について説明しておく。後述する乗算器92g,92i等の構成要素では、電動機6の1相あたりの巻線抵抗値Rを用いて演算を行っている。しかし、実際の巻線抵抗値Rは一定値ではない。例えば、固定子6bに対して大きな電流を供給すると、固定子6bの温度上昇によって実際の巻線抵抗値Rは大きくなる。
このような場合、d軸,q軸の電流指令値Id *,Iq *と、想定した巻線抵抗値Rとに基づいてd軸,q軸電圧指令値Vd *,Vq *を出力すると、実際のd軸,q軸の電流値がd軸,q軸の電流指令値Id *,Iq *に一致しなくなり、トルク制御の精度が悪化する。そこで、d軸,q軸電流指令値Id *,Iq *と、対応する電流検出値Idc,Iqcとを比較し、その差分に基づいて求めたd軸,q軸電流指令値Id **,Iq **を用いることにより、巻線抵抗値Rの変動による影響を吸収しつつ制御を続行することが可能になる。
d軸,q軸電流指令値Id **,Iq **には、乗算器92g,92iにて、それぞれ電動機6の1相あたりの巻線抵抗値Rが乗算され、電圧値R×Id **,R×Iq **が出力される。また、d軸電流指令値Id **は、低域通過フィルタ98bに供給され、一次遅れフィルタの伝達関数「1/(1+Tds)」にてフィルタリングされ、d軸電流指令値Idf **として出力される。同様に、q軸電流指令値Iq **は、低域通過フィルタ98aに供給され、一次遅れフィルタの伝達関数「1/(1+Tqs)」にてフィルタリングされ、q軸電流指令値Iqf **として出力される。ここで、時定数Td,Tqは、電動機6の固定子6bの電気時定数であり、Td=Ld/R,Tq=Lq/Rになる。
乗算器92hにおいては、q軸電流指令値Iqf **に対して、インバータ周波数指令値ω1と、q軸のインダクタンスLqとが乗算される。減算器91eにおいては、電圧値R×Id **から乗算器92hの出力信号ω1×Lq×Iqf **から減算され、下式(1)に示すd軸電圧指令値Vd *が出力される。
d *=R×Id **−ω1×Lq×Iqf ** …(1)
また、乗算器92jにおいては、d軸電流指令値Idf **に対して、インバータ周波数指令値ω1と、d軸のインダクタンスLdとが乗算される。乗算器92kにおいては、インバータ周波数指令値ω1に対して、誘起電圧定数Keが乗算される。電動機6は同期電動機であると同時に同期発電機でもある。すなわち、回転子6aが回転すると、回転速度に比例する起電力が固定子6bに生ずる。その際の比例定数が上記誘起電圧定数Keである。そして、加算器90eにおいては、乗算器92i,92j,92kの各出力信号が加算され、その結果として下式(2)に示すq軸電圧指令値Vq *が出力される。
q *=R×Iq **+ω1×Ld×Idf **+ω1×Ke …(2)
上述の乗算器92h,92jは、d軸,q軸間の相互干渉をシミュレートしようとするものである。q軸電流によって生じた起電力は、ほぼ90°遅れてd軸に現れる。この現象をシミュレートするため、減算器91eにおいては、電圧値Id **Rからω1×Lq×Iqf **を減算している。また、d軸電流によって生じた起電力は、ほぼ90°遅れてq軸のマイナス方向に現れる。この現象をシミュレートするため、加算器90eでは、電圧値Iq **Rに対してω1×Ld×Idf **を加算している。
図12の回路構成では、電圧指令値演算部34の中に、電流制御器14a,14bを設けた点と、電動機6の電気時定数相当の遮断周波数を有する一次遅れフィルタである低域通過フィルタ98a,98bを設けた点とが特徴である。これらによって電動機6の逆モデルを成立させているため、制御部2の演算周期に制約がある場合においても電動機6に対するベクトル制御を実現できる。
(変調率演算器29および印加電圧作成器19)
次に、図13に示すブロック図を参照し、変調率演算器29および印加電圧作成器19の構成を説明する。
変調率演算器29の内部において、極座標変換器88は、d軸,q軸電圧指令値Vd *,Vq *を極座標に変換することにより、電圧指令値振幅V1と、電圧位相δVとを出力する。除算器93bは、直流電圧源20(図4参照)の直流電圧Edcを1/2で除し、除算器93aは、電圧指令値振幅V1を、「Edc/2」で除し、その結果を電圧変調率KhV1として出力する。これにより、変調率演算器29は、電圧変調率KhV1と、電圧位相δVとを出力する。
また、印加電圧作成器19の内部において、加算器90gは、電圧位相δVと、電圧位相調整器60から出力された電圧位相調整量Δθv *とを加算する。電圧変調率KhV1と、加算器90gの出力信号(δV+Δθv *)とは、直交座標変換器89に供給され、これらは再度、直交二軸上の電圧指令値Vd **,Vq **に変換される。このように、電圧変調率KhV1を用いて電圧指令値Vd **,Vq **を生成することにより、直流電圧Edcが変化した場合においても、所望の電圧を電動機6に印加できる可能性を高めることができる。
図14は、変調率演算器29に入力されたd軸,q軸電圧指令値Vd *,Vq *と、印加電圧作成器19から出力された電圧指令値Vd **,Vq **との、電圧ベクトルの変化を示す図である。図14から明らかなように、電圧指令値Vd **,Vq **は、電圧指令値Vd *,Vq *に対して同一の振幅を有し、電圧位相が電圧位相調整量Δθv *相当だけ変更されたものになる。
(位置推定部40)
図11に戻り、位置推定部40についてさらに詳細を説明する。
本実施形態においては、電動機6の回転子6aの回転角度位置θdを実測せず、電流検出値Idc,Iqcと電圧指令値Vd *,Vq *とに基づいて、推定回転角度位置θdcを求め、位置センサレス制御を行っている。また、推定回転角度位置θdcは、直接的に推定するのではなく、実軸と制御軸のズレである誤差角(軸誤差Δθd)の推定値である推定軸誤差Δθcを求め、これが零値に近づくように制御することにより、間接的に推定している。
上述したように、軸誤差演算器12は、制御軸上の電流検出値Idc,Iqcと、制御軸上の電圧指令値Vd *,Vq *とに基づいて、推定軸誤差Δθcを演算するが、これは具体的には下式(3)によって求めている。
Figure 2017046430
次に、図15に示すブロック図を参照し、PLL制御器13の構成を説明する。
PLL制御器13は、軸誤差Δθcが軸誤差指令値Δθ*(本実施形態では零値)に一致させる方向にインバータ周波数指令値ω1を調整するものである。減算器91bから、軸誤差指令値Δθ*と軸誤差Δθcとの差分が出力されると、比例器92aは、この差分に比例ゲインKp_pllを乗算し、比例器92bは該差分に比例ゲインKi_pllを乗算する。積分器94bは、比例器92bの出力を積分する。これにより、比例器92bと積分器94bとは、積分演算部95を構成する。この積分演算部95における演算結果と比例器92aにおける乗算結果とは、加算器90aにて加算され、この加算結果がインバータ周波数指令値ω1になる。これにより、PLL制御器13は、いわゆる比例積分演算器を構成している。
図11に戻り、PLL制御器13の後段に設けられた積分器94aにより、インバータ周波数指令値ω1が積分される。速度を積分すると位置になるから、積分器94aは、インバータ周波数指令値ω1を積分することによって、推定回転角度位置θdcを出力する。このように、本実施形態の位置推定部40は、実軸と制御軸のズレである軸誤差Δθdを推定して推定軸誤差Δθcを求め、推定軸誤差Δθcが零値に近づくよう制御することにより、推定回転角度位置θdcを間接的に推定するものである。出力された推定回転角度位置θdcは、上述したように、dq/3φ変換器4、3φ/dq変換器8等に供給される。
(トルク電流指令値作成器10)
次に、図16に示すブロック図を参照し、図11に示したトルク電流指令値作成器10の詳細構成を説明する。
図16において、減算器91fは、周波数指令値ω*と、インバータ周波数指令値ω1との差分を出力する。なお、回転速度指令値ω*は、図示せぬ上位制御系等から与えられる。この差分に対して、比例器92p,92qでは、各々比例ゲインKp_asr,Ki_asrが乗算され、比例器92qの出力は積分器94eによって積分される。比例器92pおよび積分器94eの出力は、加算器90fにおいて加算され、その結果がトルク電流指令値Itq *として出力される。すなわち、トルク電流指令値作成器10は、いわゆる比例積分演算器を構成している。比例ゲインKp_asr,Ki_asrは、比較的応答速度が遅くなるように設定されているため、トルク電流指令値作成器10が出力するトルク電流指令値Itq *は、負荷トルクτLの平均値に比例する値になる。
(脈動トルク推定器16)
電動機6により駆動される負荷装置9の負荷トルクτLが、図3に示したように1回転中において変動する場合、モータ発生トルクτmや、電動機の実周波数(電動機の回転速度)や、電動機に流れる電流等が電動機の回転周波数で脈動することが知られている。しかし、PLL制御器13(図15参照)、電流制御器14a,14b(図12参照)、トルク電流指令値作成器10(図16参照)等のフィードバック制御器に設定可能な応答周波数には制約があり、1回転中における負荷トルクτLの変動を充分に補償することは難しい。そこで、負荷トルクτLの変動を抑制するために、脈動トルク推定器16と、脈動トルク電流指令値作成器11とが設けられている。
トルク電流指令値作成器10(図16参照)について説明したように、インバータ周波数指令値ω1の平均値は、上位制御系等から与えられる周波数指令値ω*に一致する。しかし、瞬時速度には、式(4)に示す速度変動Δωが生じる。
Figure 2017046430
ここで、τmはモータ発生トルク、τLは負荷トルク、Jは電動機6の慣性モーメントである。式(4)から明らかなように、モータ発生トルクτmと負荷トルクτLとの差によって、速度変動が生じる。また、速度変動が生じるということは、位置誤差も生じることを意味している。
図17は、モータ発生トルクτmと負荷トルクτLとの差が軸誤差Δθdに至るまでの現象をブロック線図として示したものである。モータ発生トルクτmと負荷トルクτLとの差トルクΔτmを減算器91hにて求め、これに慣性モーメントJの逆数を乗算して積分器94fにて積分することで、電動機の回転子6aの機械速度ωrが得られる。次に、機械速度ωrに電動機6の極対数(=極数P/2)を乗算器92rにて乗算することにより、電動機6の電気速度ωeが得られる。さらに電気速度ωeを積分器94gにて積分することにより、回転子6aの回転角度位置θdが得られる。そして、推定回転角度位置θdcから回転子6aの回転角度位置θdを減算器91iにて減算することにより、その角度誤差(軸誤差Δθd)が得られる。
図17に示した過程を経て、差トルクΔτmが軸誤差Δθdに至ると考えることができる。これは、換言すると、軸誤差Δθdを検出または推定できれば、差トルクΔτmを推定することが可能になることを意味している。前述の通り、本実施形態では、位置センサレス制御を採用しているため、軸誤差Δθdは直接的には得られないが、軸誤差Δθdに代えて推定軸誤差Δθcを用いることができる。そこで、軸誤差Δθdから差トルクΔτmが得られるように、図17における矢印を逆方向にし、図17における複素数sをjωrに置き換えて整理し、かつ、本実施形態で検出あるいは推定が可能な値を用いるように等価変換すると、図18に示すブロック図が得られる。この図18に示すブロック図が、脈動トルク推定器16の構成に等しくなる。すなわち、脈動トルク推定器16は、推定軸誤差Δθcが入力されると、これに「2×J×ωr 2/P」を乗算し、その乗算結果を差トルク推定値Δτm ^として出力する。
(脈動トルク電流指令値作成器11)
次に、図19に示すブロック図を参照し、脈動トルク電流指令値作成器11の構成を説明する。
図19において、積分器94jはインバータ周波数指令値ω1を積分することにより、推定回転角度位置θdcを出力する。乗算器92oでは、推定回転角度位置θdcに「2/P」(Pは極数)が乗算され、その結果が推定機械角度位置θrとして出力される。余弦演算器96および正弦演算器97は、それぞれ推定機械角度位置θrの余弦成分cosθrおよび正弦成分sinθrを出力する。
脈動トルク推定器16(図18参照)から出力された差トルク推定値Δτm ^は、図17に示したモータ発生トルクτmと負荷トルクτLの差分に相当する値である。単相座標変換器32においては、差トルク推定値Δτm ^に推定機械角度位置θrの余弦成分cosθrおよび正弦成分sinθrが乗算され、下式(5),(6)に示すように、機械速度ωr(機械角1次成分)における余弦成分Δτmcと正弦成分Δτmsとが出力される。すなわち、差トルク推定値Δτm ^が、機械速度ωrで回転する座標系に座標変換される。
Δτmc=cos θr×Δτm ^ …(5)
Δτms=sin θr×Δτm ^ …(6)
低域通過フィルタ98c,98dでは、差トルク推定値余弦成分Δτmcおよび差トルク推定値正弦成分Δτmsのうち、機械速度ωr以上の成分が減衰される。次に、減算器91j,91kにおいては、差トルク推定値余弦成分Δτmc,差トルク推定値正弦成分Δτmsと、それぞれの指令値(Δτmc *=0,Δτms *=0)との差が求められる。そして、求められた差に対して比例器92t,92mでは積分ゲインKi_atrが乗じられ、積分器94h,94iでは、各乗算結果が積分される。
これらの積分結果は、脈動トルク電流指令値の余弦成分Iqsin * cおよび正弦成分Iqsin * sになる。この後、再度、単相座標逆変換器37にて、次式(7)に基づいて座標変換が実行される。
Δτmm ^=cos θr×Iqsin * c+sinθr×Iqsin * s …(7)
この座標変換により、差トルク推定値Δτm ^の機械速度ωrの成分Δτmm ^が得られる。差トルク推定値の機械速度成分Δτmm ^には、比例器92nにてゲインKtrqが乗算され、その乗算結果が脈動トルク電流指令値Iqsin *として出力される。なお、本実施形態では、ゲインKtrqは「1」である。そして、図11について上述したように、加算器90bにおいては、脈動トルク電流指令値Iqsin *とトルク電流指令値Itq *とが加算され、加算結果がq軸電流指令値Iq *として出力される。
(部分電圧飽和状態における脈動トルク制御の課題)
以上のように、脈動トルク推定器16、脈動トルク電流指令値作成器11を設けることにより、周期的な負荷変動を補償し、電動機6の騒音や振動を低減することが可能になる。
しかし、前述の通り、部分電圧飽和状態で制御部2を継続して駆動すると、電流制御器14や脈動トルク電流指令値作成器11が適切に動作せず、電動機6が不安定になる場合がある。
様々な回転速度で電動機6および負荷装置9を駆動した際の振動(振動振幅値)の周波数特性の例を図20に示す。図示のように、全体的には、回転速度が低速になっていくにつれ、振動振幅値が大きくなっていく傾向を有する。これは、電動機6の速度が低下すると、慣性力が小さくなるためである。また、1300rpm近傍にピークが現れているが、これは電動機6や負荷装置9等の機械系の機械共振周波数である。
振動の周波数特性は、負荷条件によっても変動する。図20に破線で示した周波数特性は、実線よりも負荷が重い場合の例である。例えば、圧縮機構部500(図3(b)参照)の吸込み口505の圧力と吐出口507の圧力の差が大きくなれば、負荷が大きくなる。負荷が大きい場合であっても、3000rpm付近の高速域では振動の差は小さくなる。一方、回転速度が低速になるほど振動の増加(悪化)が顕著になる。
例えば、1300rpm付近の回転速度で電動機6を駆動すると、負荷が重くなり、あるいは直流電圧源20(図4参照)の電圧が低下することで、部分電圧飽和状態が発生する可能性がある。その際、単純に電流制御器14a,14b(図12参照)や脈動トルク電流指令値作成器11(図19参照)を停止してしまうと、電動機6の回転速度変動が生じ、振動や騒音が悪化する。
ここで、再び図10を参照し、電圧ベクトル軌跡106に着目すると、電圧ベクトル104の平均値つまり楕円の電圧ベクトル軌跡106の中央部分は、通常領域であり、充分に余裕があることが分かる。この点が、電動機6の負荷変動および直流電圧Edcの変動が生じた場合においても、安定に電動機6を駆動制御する着眼点になる。
(電圧位相調整器60)
次に、図21のブロック図を参照し、電圧位相調整器60の構成を説明する。
上述したように、電圧位相調整器60は、電圧変調率KhV1に基づいて、電圧位相調整量Δθv *を出力するためのものであり、比較器61a,61bと、状態保持器(ラッチ回路)82と、ピークホールド回路63と、論理積器83と、入力切替器84と、積分器94kとを有している。ピークホールド回路63は、電圧変調率KhV1のピーク値を検出するとそのピーク値をラッチして出力し、次のピークを検出するまで、そのピーク値を出力し続ける。電圧変調率KhV1は機械角一回転を周期として脈動するため、このピーク値は、過去の機械角一回転中の電圧変調率KhV1の最大値に等しい。そこで、このピーク値を「最大電圧変調率Khp」と呼ぶ。比較器61aは、最大電圧変調率Khpと第一の判定値KhJud1とを比較し、「Khp>KhJud1」である場合は“1”、「Khp≦KhJud1」である場合は“0”になるオーバーフラグKhOverFlgを出力する。
上述した図9(a),(b)においては、第一の判定値KhJud1は、境界値Khsat(=2/√3)に等しいことを想定している。但し、第一の判定値KhJud1は、必ずしも境界値Khsatに一致する必要はない。例えば、ある程度の振動、騒音を容認しても消費電力を低減させたい場合は、第一の判定値KhJud1は境界値Khsatよりも大きくするとよい。
比較器61bは、最大電圧変調率Khpと第二の判定値KhJud2とを比較し、「Khp<KhJud2」である場合は“1”、「Khp≧KhJud2」である場合は“0”になるアンダーフラグKhUnderFlgを出力する。なお、第二の判定値KhJud2は、第一の判定値KhJud1よりも若干低い値になっている。状態保持器82は、オーバーフラグKhOverFlgが“1”になると、そのオーバーフラグKhOverFlgの値(“1”)を保持し続け、信号S82として出力する。
また、ラッチ解除フラグUnlatchFlgが“1”になると、信号S82は“0”にリセットされる。論理積器83は、信号S82およびアンダーフラグKhUnderFlgの双方が“1”である場合に“1”となり、それ以外の場合に“0”になる減算フラグDecFlgを出力する。積分器94kは、減算フラグDecFlgが“1”である場合は、積分結果(すなわち電圧位相調整量Δθv *)を、所定の減算レートで減少させる。
なお、図21には2種類の矢印が示されているが、V字状に開いた矢印は、「状態切替信号」または「トリガー」が伝達されることを示し、先端が黒塗り三角形の矢印は他の「信号」が伝達されることを示す。入力切替器84は、オーバーフラグKhOverFlgが“1”になると電圧変調率KhV1を選択し、オーバーフラグKhOverFlgが“0”になると零値を選択し、選択した値を積分器94kに供給する。これにより、積分器94kは、オーバーフラグKhOverFlgが“1”になると、電圧変調率KhV1を積分する。そして、積分器94kにおける積分結果は、電圧位相調整量Δθv *として出力される。
零値検出器64は、電圧位相調整量Δθv *が「0」以上の値から「0」になった場合、その旨を検出し、ワンショットのラッチ解除フラグUnlatchFlgを出力する。
<実施形態の動作>
次に、図22(a)〜(f)の波形図を参照し、本実施形態の動作を説明する。
なお、図22(a)は、圧縮機構部500(図3(a),(b)参照)の吐出口507における吐出圧の波形図であり、図22(b)は、最大電圧変調率Khpおよび平均電圧変調率Khaの波形図である。なお、平均電圧変調率Khaとは、電圧変調率KhV1を機械角一回転毎に平均した値である。図22(c)は電圧位相調整量Δθv *の波形図、図22(d)はオーバーフラグKhOverFlgの波形図、図22(e)はアンダーフラグKhUnderFlgの波形図、図22(f)は減算フラグDecFlgの波形図である。
本実施形態においては、負荷トルクτLは機械角一回転周期で脈動するため、電圧変調率KhV1が変化する要因として、
(1)直流電圧源20(図4参照)の直流電圧Edcの変化、
(2)電圧指令値Vd **,Vq **の直流成分(1回転中の平均値)の変化、および
(3)電圧指令値Vd **,Vq **の交流成分の変化、
という3つの要因が考えられる。しかし、図22(a)〜(f)では説明の簡略化のために、「直流電圧Edcは一定である」「電圧指令値Vd **,Vq **の直流成分は一定である」と仮定する。
より具体的には、直流電圧源20の直流電圧Edc、電動機6の回転速度、および圧縮機構部500の吸込圧は一定であり、圧縮機構部500の吐出圧が時間的に変化するものと考える。吐出圧が変化すると、負荷トルクτLの振幅が変化する。すなわち、電圧指令値Vd **,Vq **の交流成分が変化する。なお、厳密にはd−q軸の干渉等によって、電圧指令値の平均値も変化するが、吐出圧のみが変化する場合は、電圧指令値の交流成分の変化が支配的になるため、ここでは電圧指令値Vd **,Vq **の交流成分のみが変化すると仮定する。図22(b)の縦軸は電圧変調率であるが、直流電圧源20の直流電圧Edcが一定であれば、縦軸は電力変換回路5のスイッチングデューティと見なすこともできる。
図22(a)においては、時刻t1から圧縮機構部500の吐出圧が上昇し始めている。吐出圧が上昇すると、これに伴って電圧指令値Vd **,Vq **の交流成分も大きくなる。これにより、図22(b)においても、時刻t1に最大電圧変調率Khpが上昇し始めており、時刻t2に最大電圧変調率Khpは第二の判定値KhJud2に達している。これにより、図22(e)に示すように、アンダーフラグKhUnderFlgは、時刻t2において“1”から“0”に立ち下がっている。
時刻t2以降も圧縮機構部500の吐出圧の上昇に伴って最大電圧変調率Khpも上昇を続け、時刻t3において最大電圧変調率Khpは第一の判定値KhJud1に達している。これは、機械角一回転中に、電圧変調率KhV1が第一の判定値KhJud1を超える期間が生じた、ということであり、それ以降、オーバーフラグKhOverFlgは、機械角一回転を周期として、“1”および“0”に交互に切り替わるようになる。なお、図22(e)には、状態保持器82が出力する信号S82の波形も示しておく。なお、時刻t1〜t3の区間を「区間A」と呼び、時刻t3〜t4の区間を「区間B」と呼ぶ。
オーバーフラグKhOverFlgが“1”になる期間が生じると、オーバーフラグKhOverFlgのデューティ比に応じて、積分器94kにて電圧変調率KhV1が積分される。従って、その積分結果である電圧位相調整量Δθv *は、図22(c)の区間Bの波形に示すように、徐々に上昇してゆく。
上述したように、電圧位相調整量Δθv *は、印加電圧作成器19(図13参照)に供給され、電圧指令値Vd **,Vq **の位相に反映される。電圧指令値Vd **,Vq **の電圧位相を進めると、電動機6における誘起電圧を抑制することができる。誘起電圧を抑制すると、電動機6に供給可能な電流が増加するため、電圧飽和領域ではなく通常領域での駆動を実現することができる。従って、電流制御器14a,14bおよび脈動トルク電流指令値作成器11を継続的に動作させることができ、電動機6を安定に駆動することが可能になる。換言すると、トルク制御を適用できる速度範囲が高速側および高負荷側に拡大でき、広い動作範囲での低振動駆動を実現できる。
図22(a)の時刻t4において、圧縮機構部500の吐出圧の上昇が止まっている。これにより、1回転中の電圧変調率KhV1の変動幅も、電圧位相調整量Δθv *も、ある値に収束するようになる。時刻t4〜t5の区間は、吐出圧が一定になっており、この区間を「区間C」と呼ぶ。区間Cにおいて電圧指令値Vd **,Vq **の電圧位相を進めること、すなわち弱め磁束制御を行うことにより、通常領域においては、より低い電圧指令値Vd **,Vq **によって必要な電流Id,Iqを流すことができるため、区間Cにおける電圧変調率KhV1の平均電圧変調率Khaは、区間Aよりも低くなっている。区間Cにおける電圧変調率KhV1の時間変化の一例を図23に示す。区間Cにおいては、電圧変調率KhV1の最大値は、第一の判定値KhJud1以下であり、電圧飽和領域には達しておらず、部分電圧飽和も発生していない。
図24は、区間Cにおける電圧ベクトル軌跡の変化の状態を示す図である。
電圧ベクトル軌跡116は、区間Cにおける電圧ベクトルの軌跡であり、電圧ベクトル114は、区間Cにおける電圧ベクトルの平均値である。図示のように、電圧位相調整器60を用いることにより、電圧ベクトル114の1回転中の平均電圧角度がδVave_1 になっている。これにより、電圧ベクトル軌跡116は、その全体が通常領域内にとどまっている。比較のため、図10に示した電圧ベクトル104および電圧ベクトル軌跡106も図24内に破線で図示する。
図22(a)に戻り、時刻t5以降は、圧縮機構部500の吐出圧が減少し始めており、これに伴って、図22(b)に示すように、最大電圧変調率Khpも減少し始めている。そして、時刻t6において、最大電圧変調率Khpは第二の判定値KhJud2未満になる。これにより、図22(e)に示すように、時刻t6において、アンダーフラグKhUnderFlgが“0”から“1”に立ち上がる。時刻t5〜t6の区間を「区間D」と呼ぶ。また、図22(d)に示す信号S82は、それ以前から“1”であった。これにより、図22(f)に示すように、信号S82とアンダーフラグKhUnderFlgとの論理積である減算フラグDecFlgは、時刻t6に“0”から“1”に立ち上がる。
減算フラグDecFlgが“1”になると、積分器94kは、積分結果(すなわち電圧位相調整量Δθv *)を、所定の減算レートで減少させる。これにより、図22(c)に示すように、時刻t6以降、電圧位相調整量Δθv *が所定の減算レートで減少している。そして、時刻t7において電圧位相調整量Δθv *は零値になっている。時刻t6〜t7の区間を「区間E」と呼び、時刻t7以降の区間を「区間F」と呼ぶ。
時刻t7において電圧位相調整量Δθv *が“0”になると、零値検出器64(図21参照)がワンショットのラッチ解除フラグUnlatchFlgを出力する。これにより、状態保持器82から出力される信号S82は、図22(d)に示すように、“0”に立ち下がる。また、図22(f)に示すように、減算フラグDecFlgも“0”に立ち下がる。これにより、時刻t7以降の各部の状態は、時刻t1以前の状態と同様になり、通常のトルク制御が続行される。
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態におけるモータ制御装置1は、直流電圧(Edc)を交流電圧に変換し出力することにより、負荷トルク(τL)が周期的に変動する負荷装置(9)に結合される電動機(6)を駆動する電力変換回路(5)と、前記電力変換回路(5)を駆動するドライブ信号を出力する制御部(2)と、を有し、前記制御部(2)は、前記負荷トルク(τL)に対応する周期で増減する負荷トルク対応パラメータ(KhV1)を演算し、前記負荷トルク対応パラメータのピーク値(Khp)が所定の第1の閾値(KhJud1)を超えると、前記電動機(6)の回転により発生する誘起電圧を抑制する弱め磁束状態で前記電力変換回路(5)を駆動するものである。
さらに、本実施形態における制御部2は、前記弱め磁束状態で前記電力変換回路(5)を駆動している際に前記ピーク値(Khp)が前記第1の閾値(KhJud1)よりも低い第2の閾値(KhJud2)未満になると、前記誘起電圧を抑制しない通常状態で前記電力変換回路(5)を駆動するものである。
さらに、本実施形態において、前記負荷トルク対応パラメータ(KhV1)は、前記交流電圧を指令する電圧指令値の振幅と前記直流電圧(Edc)との比である電圧変調率(KhV1)であり、前記制御部(2)は、前記電圧変調率(KhV1)のピーク値(Khp)が前記第1の閾値(KhJud1)以下になるように、前記電圧指令値の位相を制御するものである。
さらに、制御部2は、前記電圧変調率(KhV1)のピーク値(Khp)が前記第1の閾値(KhJud1)以下になるように前記電圧指令値の位相を制御する際に、前記電圧変調率(KhV1)の平均値を減少させるものである。
さらに、前記負荷トルク(τL)は、前記電動機(6)の機械角一回転の所定値倍の周期で変動するものである。
これらの特徴により、本実施形態のモータ制御装置1は、負荷トルクτLに変動が生じた場合や、直流電圧Edcの変動が大きくなった場合においても、電動機6を安定して駆動制御することができる。さらに、トルク制御を適用できる速度範囲が高速側および高負荷側に拡大でき、広い動作範囲に渡って、振動、騒音を抑制することができる。
[第2実施形態]
<実施形態の構成・動作>
次に、本発明の第2実施形態によるモータ制御システムについて説明する。
本実施形態のモータ制御システムの全体構成は、第1実施形態のもの(図1参照)と同様であるが、本実施形態においては、第1実施形態のモータ制御装置1に含まれる電圧位相調整器60(図21参照)に代えて、図25に示す電圧位相調整器60bが適用される。
電圧位相調整器60bの構成は、第1実施形態の電圧位相調整器60と比較すると、電圧変調率KhV1に代えて脈動トルク電流指令値Iqsin *が入力信号になっている。これにより、ピークホールド回路63は、脈動トルク電流指令値Iqsin *のピーク値である最大脈動トルク電流指令値Iqsinp *を出力する。また、比較器61a,61bに代えて、比較器61c,61dが適用される点が異なる。ここで、比較器61cは、最大脈動トルク電流指令値Iqsinp *と第一の判定値IqJud1とを比較し、「Iqsinp *>IqJud1」である場合は“1”、「Iqsinp *≦IqJud1」である場合は“0”になるオーバーフラグIqOverFlgを出力する。
また、比較器61dは、最大脈動トルク電流指令値Iqsinp *と第二の判定値IqJud2とを比較し、「Iqsinp *<IqJud2」である場合は“1”、「Iqsinp *≧IqJud2」である場合は“0”になるアンダーフラグIqUnderFlgを出力する。なお、第二の判定値IqJud2は、第一の判定値IqJud1よりも若干低い値になっている。状態保持器82は、オーバーフラグIqOverFlgが“1”になると、そのオーバーフラグIqOverFlgの値(“1”)を保持し続け、信号S82として出力する。
電圧位相調整器60bの上述した以外の構成は、第1実施形態の電圧位相調整器60と同様である。脈動トルク電流指令値Iqsin *は、電圧変調率KhV1と同様に脈動し、ピークが現れるタイミングも近いため、このように電圧変調率KhV1に代えて用いることができる。
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態におけるモータ制御装置は、第1実施形態のものと同様に、直流電圧(Edc)を交流電圧に変換し出力することにより、負荷トルク(τL)が周期的に変動する負荷装置(9)に結合される電動機(6)を駆動する電力変換回路(5)と、前記電力変換回路(5)を駆動するドライブ信号を出力する制御部(2)と、を有し、前記制御部(2)は、前記負荷トルク(τL)に対応する周期で増減する負荷トルク対応パラメータ(Iqsin *)を演算し、前記負荷トルク対応パラメータのピーク値(Iqsinp *)が所定の第1の閾値(IqJud1)を超えると、前記電動機(6)の回転により発生する誘起電圧を抑制する弱め磁束状態で前記電力変換回路(5)を駆動するものである。
さらに、本実施形態においては、前記電動機(6)は永久磁石を埋設した回転子(6a)と固定子(6b)とを有し、前記制御部(2)は、前記永久磁石の主磁束方向をd軸とし、前記d軸から回転方向に電気的に90度進んだ軸をq軸とし、前記q軸に流れる電流の脈動成分である脈動トルク電流指令値(Iqsin *)を計算するものであり、前記負荷トルク対応パラメータは、前記脈動トルク電流指令値(Iqsin *)である。
かかる特徴により、本実施形態においては、第1実施形態のものと同様に、広い動作範囲に渡って、振動、騒音を抑制することができる。
さらに、本実施形態においては、電流指令値Id *,Iq *を演算するループ内で、弱め磁束制御を実現できるので、印加電圧作成器19(図11参照)において電圧位相を変更する必要がなくなり、第1実施形態のものよりも少ない演算量で弱め磁束制御を実現できる。
[第3実施形態]
<実施形態の構成>
次に、本発明の第3実施形態によるモータ制御システムについて説明する。
本実施形態のモータ制御システムの全体構成は、第1実施形態のもの(図1参照)と同様であるが、本実施形態においては、第1実施形態の電圧位相調整器60(図21参照)に代えて、図26に示す電圧位相調整器60cが適用される。
電圧位相調整器60cは、電圧変調率KhV1を入力信号としているが、出力信号はd軸電流指令値Id *である。すなわち、電圧位相調整器60cが出力するd軸電流指令値Id *は、電圧指令値演算部34(図11、図12参照)に入力される。
また、電圧位相調整器60cにおいては、電圧変調率KhV1の入力端子と入力切替器84との間に減算器91kが挿入されている。減算器91kは、電圧変調率KhV1から第三の判定値KhJud3を減算する。なお、第三の判定値KhJud3は第一の判定値KhJud1と同じ値であってもよく、異なっていてもよい。積分器94kは、入力切替器84を介して供給された信号の負値を積分し、積分結果をd軸電流指令値Id *として出力する。
本実施形態によれば、積分器94kは、入力切替器84において減算器91kが選択されると、「電圧変調率KhV1が第三の判定値KhJud3を超えた値」の負値を積分する。これにより、積分を開始する電圧変調率KhV1と、実際に積分に使用する被積分値とを異ならせることができ、様々な電圧変調率KhV1の変化に対応することが可能になる。また、本実施形態においては、第1実施形態の電力変換回路5(図5参照)に代えて、図27に示す電力変換回路5aが適用される。
図27において、直流電圧源30は、商用電源等の交流電圧源26の交流電圧を全波整流する整流回路27と、整流回路27の出力端子に並列に接続された、電界コンデンサ等の平滑コンデンサ28とを有している。電力変換回路5aの上記以外の構成は、第1実施形態の電力変換回路5のものと同様である。本実施形態においては、直流電圧Edcには、交流電圧源26のリプル電圧が重畳する。すなわち、図27のように単相交流電圧源を用いた場合は電源周波数の2倍、三相交流電圧源を用いた場合は電源周波数の6倍の周波数のリプル電圧が直流電圧Edcに重畳する。
<実施形態の動作>
次に、図28(a)〜(f)の波形図を参照し、本実施形態の動作を説明する。
なお、図28(a)は、直流電圧Edcの波形図であり、図28(b)は、最大電圧変調率Khpおよび平均電圧変調率Khaの波形図、図28(c)はd軸電流指令値Id *の波形図、図28(d)はオーバーフラグKhOverFlgの波形図、図28(e)はアンダーフラグKhUnderFlgの波形図、図28(f)は減算フラグDecFlgの波形図である。
また、図28(a)〜(f)においては、電動機6の回転速度、圧縮機構部500の吸込圧および吐出圧は一定であり、直流電圧源20の直流電圧Edcが変化すると仮定して説明する。
前述のように、電圧変調率KhV1は、電圧指令値Vd *,Vq *の振幅すなわち√(Vd *2+Vq *2)と、直流電圧Edcとの比であるため、直流電圧Edcに含まれるリプル電圧によって、電圧変調率KhV1は変化する。すなわち、電動機6の回転速度、圧縮機構部500の吸込圧および吐出圧が一定であって電圧指令値Vd *,Vq *が変化しなかったとしても、図28(a)の区間Aに示すように、直流電圧Edcにはリプル電圧が重畳し、最大電圧変調率Khpと平均電圧変調率Khaとの間に差が生じる。
リプル電圧の振幅値は、平滑コンデンサ28の容量によって大きく影響を受ける。すなわち、平滑コンデンサ28の容量を大きくするほど、リプル電圧の振幅を小さくできる。その反面、平滑コンデンサ28の体積は容量に応じて大きくなる。したがって、リプル電圧が大きい場合においても、安定にモータを駆動できれば、電力変換回路5aを小型にすることができる。
図28(a)においては、時刻t1以降、交流電圧源26の交流電圧が低下したことを想定している。交流電圧が低下したことにより、図28(b)に示すように、最大電圧変調率Khpおよび平均電圧変調率Khaが上昇している。時刻t13においては、交流電圧がさらに低下したことにより、最大電圧変調率Khpが第一の判定値KhJud1を超えており、オーバーフラグKhOverFlgが“1”または“0”に振動するようになり、信号S82は“1”になる。これにより、図26に示す入力切替器84は、減算器91kの出力信号を選択するようになり、「電圧変調率KhV1が第三の判定値KhJud3を超えた値」が積分器94kに入力され、積分器94kでは、その負値が積分される。
積分器94kの積分結果は、d軸電流指令値Id *として出力されるため、図28(c)に示すように、時刻t13以降、d軸電流指令値Id *が負の方向の増加し、これによって電圧指令値Vd *,Vq *の位相が進む。電圧指令値Vd *,Vq *の位相が進むと、これによって電動機6に流れる電流の位相も進み、電動機6における誘起電圧を減少させることができる。これにより、駆動領域を、電圧飽和領域から通常領域に変えることができる。
図28(a)の時刻t15においては、交流電圧源26の交流電圧が上昇し始め、それに伴って、図28(b)に示すように、最大電圧変調率Khpおよび平均電圧変調率Khaが減少し始める。そして、時刻t16においては、最大電圧変調率Khpが第二の判定値KhJud2を下回り、これによって図28(c)に示すように、時刻t16以降はd軸電流指令値Id *の絶対値が減少している。これにより、電圧指令値Vd *,Vq *の位相も基に戻る方向に変化してゆく。そして、時刻t17においては、d軸電流指令値Id *が零値に戻るため、零値検出器64(図26参照)がワンショットのラッチ解除フラグUnlatchFlgを出力する。これにより、状態保持器82から出力される信号S82は、図28(d)に示すように、“0”に立ち下がり、図22(f)に示す減算フラグDecFlgも“0”に立ち下がる。時刻t17以降の各部の状態は、時刻t11以前の状態と同様になり、通常のトルク制御が続行される。
以上のように、本実施形態によれば、第1,第2実施形態と同様に、電流制御器14a,14bおよび脈動トルク電流指令値作成器11を継続して動作させることができる。すなわち、負荷トルクτLの変動や、直流電圧Edcの変動が大きい場合においても、電動機6を安定して駆動することができ、振動、騒音を低減することができる。さらに、本実施形態によれば、リプル電圧が大きい場合においても、安定して電動機6を駆動できるので、平滑コンデンサ28の容量を小さくすることができ、電力変換回路5aを小型にすることができる。
[第4実施形態]
次に、図29に示す模式図を参照し、本発明の第4実施形態による流体機械302の構成を説明する。
図29に示す流体機械302においては、動力源である電動機6と圧縮機構部500とが、密閉容器511の中に配置されている。電動機6の回転子6aに接続されている。そして、電動機6は、配線ケーブル310を介してモータ制御装置301に接続されている。シャフト502とロータリーピストン501とは、クランクシャフト503を介して接続されている。
クランクシャフト503の下端は、軸受け510によって支持されている。密閉容器511の底部には潤滑油が貯溜されており、軸受け510および圧縮機構部500を潤滑する。シャフト502の上端部には、バランスウェイト512が付加されており、ロータリーピストン501の偏心による重量のアンバランスを緩和している。これにより、電動機6の回転に応じてロータリーピストン501が偏心して回転し、吸込み、圧縮、吐出、といった一連の工程を行う。なお、圧縮機構部500の断面形状は、第1実施形態のもの(図2(b)参照)と同様である。
吸込みパイプ508は吸込み口505(図2(b)参照)に接続され、吐出パイプ509は、密閉容器511の内部の空間を介して吐出口507にそれぞれ接続されており、流体機械302に接続される外部のシステムとの間で冷媒を循環する。但し、流体機械302は、圧縮機に限られるものではなく、周期的に変動する負荷トルク特性を有するモータ制御装置(例えば、ポンプなど)にも適用可能であり、圧縮機に適用した場合と同様の効果があることは言うまでもない。
圧縮機構部500によって生じる負荷トルクτLの変化パターンは、たとえ同じ圧縮機構部500を用いたとしても、電動機6の回転速度、吸込み口505や吐出口507の圧力(吸込み圧および吐出圧)、吸込み口505と吐出口507の圧力比等によって異なる。すなわち、負荷トルクτLのピーク値、ピーク値となる回転角度位置、負荷トルクの増減変化波形等が変化する。従って、本実施形態は、トルク変化のパターン変化によって電圧ベクトル軌跡(特に部分電圧飽和状態での軌跡)が変化した場合であっても、安定に電動機6を駆動制御可能なモータ制御装置を実現しようとするものである。
モータ制御装置301の機能構成は、第1実施形態のモータ制御装置1(図1参照)と同様である。但し、第1実施形態の電圧位相調整器60(図21参照)に代えて、本実施形態においては、図30に示す電圧位相調整器60dが適用される。電圧位相調整器60dの構成は第1実施形態の電圧位相調整器60と同様であるが、入力切替器84と積分器94kとの間に比例器85が挿入されている点が異なる。比例器85は、入力された信号に電圧位相調整積分ゲインKi_δVを乗算した後に積分器94kに供給する。ここで、電圧位相調整積分ゲインKi_δVは、周波数指令値ω*、インバータ周波数指令値ω1(以下、これらを総称して「回転速度」という)または吐出温度Tcに基づいて決定される。
図31は、電圧位相調整積分ゲインKi_δVの第1の設定例を示す図である。図31の例では、回転速度が高い領域では電圧位相調整積分ゲインKi_δVが高くなり、回転速度が低くなる領域では電圧位相調整積分ゲインKi_δVも低くなるように設定される。そこで、その理由を説明しておく。式(1)および式(2)から明らかなように、回転速度(式中のω1)が高くなるほど、d軸,q軸電圧指令値Vd *,Vq *は高くなる。すなわち、回転速度が高くなると、平均電圧変調率Khaは高くなるため、平均電圧変調率Khaと第一の判定値KhJud1との差が小さくなる。従って、電圧位相調整積分ゲインKi_δVを高くする(高応答化する)ことで最大電圧変調率Khpの変化に電圧位相調整量Δθv *を高速に応答させることができるようになり、部分電圧飽和状態から通常領域への変移が短時間で実現できるようになる。この結果、電動機6を安定して駆動制御することができる。一方、回転速度が低い領域では、電圧位相調整積分ゲインを低くする(低応答化する)ことにより、電圧位相調整量Δθv *が過度に調整されないようにすることができ、最適な電圧位相近傍で、安定して電動機6を駆動制御することができ、振動、騒音を低減できるようになる。
図32は、電圧位相調整積分ゲインKi_δVの第2の設定例を示す図である。図32の例では、吐出口507(図2(b)参照)における吐出圧または吐出温度Tcに応じて電圧位相調整積分ゲインを変更する。吐出圧は、トルク変化のパターンを決める主要要素の一つである。吐出圧を直接測定してもよいが、吐出圧の測定が難しい場合は、吐出パイプ509と密閉容器511との境界部分、または吐出口507に温度センサを設置し、その温度変化から間接的に吐出圧を推定するとよい。吐出圧が高いと平均電圧変調率Khaは高くなるため、平均電圧変調率Khaと第一の判定値KhJud1との差が小さくなる。従って、電圧位相調整積分ゲインKi_δVを高くする(高応答化する)ことで吐出圧の変化に電圧位相調整量Δθv *を高速に応答させることができるようになり、部分電圧飽和状態から通常領域への変移が短時間で実現できるようになる。これにより、最適な電圧位相近傍で、安定して電動機6を駆動制御することができ、振動、騒音を低減できるようになる。
また、回転速度に応じて変調率判定値(第一の判定値KhJud1および第二の判定値KhJud2のうち、少なくとも1つ)を変更するようにしてもよい。図33は、回転速度に応じて変調率判定値を変化させる際の設定例を示す。前述の通り、回転速度が高い領域では、平均電圧変調率Khaは高くなるため、平均電圧変調率Khaと第一の判定値KhJud1との差が小さくなる。そこで、第一の判定値KhJud1を回転速度の増加に応じて下げることにより、電圧位相調整量Δθv *を早めに調整できるようになる。この結果、安定にモータを駆動制御することができ、振動、騒音を抑制することができる。
また、吐出圧または吐出温度Tcに応じて、変調率判定値を変更するようにしてもよい。図34は、吐出圧または吐出温度Tcに応じて変調率判定値を変化させる際の設定例を示す。負荷トルクτLが高くなるほど平均電圧変調率Khaは高くなるため、平均電圧変調率Khaと第一の判定値KhJud1との差が小さくなる。そこで、第一の判定値KhJud1を吐出圧または吐出温度Tcの増加に応じて下げることにより、電圧位相調整量Δθv *を早めに調整できるようになる。この結果、安定にモータを駆動制御することができ、振動、騒音を抑制することができる。
[第5実施形態]
次に、図35に示す模式図を参照し、本発明の第5実施形態による流体機械302aの構成を説明する。
図35に示す流体機械302aにおいては、動力源である電動機6とレシプロ型圧縮機構部600とが、密閉容器611の中に配置され、電動機6を動力源としてピストン601を駆動し、これにより、圧縮動作を行う。電動機6のシャフト602には、クランクシャフト603が接続され、電動機6の回転運動を直線運動に変換している。電動機6の回転に応じて、ピストン601も動作し、吸込み、圧縮、吐出、といった一連の工程を行う。圧縮機構の工程では、まずシリンダ604に設けられた吸込み口605から冷媒を吸い込む。その後、弁606を閉じて圧縮を行い、吐出口607から圧縮した冷媒を吐出する。また、電動機6は、配線ケーブル610を介してモータ制御装置301aに接続されている。
一連の工程において、ピストン601にかかる圧力が変化する。これは、ピストンを駆動する電動機6から見ると、周期的に負荷トルクτLが変化していることを意味する。図36は、機械角一回転における、回転子6aの回転角度位置に対する負荷トルクτLの変化の例を示している。図36では、電動機6として4極モータの例を示しているため、電気角2周期が機械角1周期に相当する。回転子6aの位置とピストン601との位置関係は組み付けによって決まるが、図36ではピストン601の下死点が機械角の0°として、回転角度位置(ピストン位置)に対する負荷トルクτLの変化を示している。
圧縮工程が進むにつれ負荷トルクτLが大きくなり、吐出工程では、急激に負荷トルクτLが小さくなるのが特徴的である。図36から、1回転中において負荷トルクτLが変動している事が分かる。回転する度に負荷トルクτLが変動するため、電動機6から見ると周期的に負荷トルクτLが変動していることになる。
モータ制御装置301aの機能構成は、第1実施形態のモータ制御装置1(図1参照)と同様である。但し、第1実施形態の電圧位相調整器60(図21参照)に代えて、本実施形態においては、図37に示す電圧位相調整器60eが適用される。電圧位相調整器60eは、第1実施形態の電圧位相調整器60と同様の構成を有しているが、積分器94kの後段に位置依存比例器62が挿入されている点が異なる。
位置依存比例器62は、図36に示した負荷トルクτLの変化のように、所定の回転角度範囲において負荷トルクτLが急変する場合に、比例ゲインを調整する。回転角度位置(機械角)としては、脈動トルク電流指令値作成器11(図19参照)の乗算器92oから出力される推定機械角度位置θrを用いるとよい。位置依存比例器62は、通常は0dBのゲインが設定されるが、推定機械角度位置θrが所定の範囲内にある場合には、0dBよりも大きなゲインが設定される。
以上のように、本実施形態によれば、制御部2は、電圧指令値の位相を、電動機6の機械角一回転の所定値倍(本実施形態では1倍)の周期で変動させるので、負荷トルクτLが所定の回転角度範囲において急変する場合に、電圧位相調整量Δθv *を大きくすることができ、モータを安定に駆動制御することができる。
[第6実施形態]
次に、図38に示す模式図を参照し、本発明の第6実施形態による空気調和機300の構成を説明する。
図38において、空気調和機300は、室内機303と室外機304とを有している。室内機303と室外機304とは、配管305を介して接続され、配管内を冷媒が流れることで冷凍サイクルを形成している。室内機303は、熱交換器306と送風機307とを有している。また、室外機304は、熱交換器308、送風機309、流体機械302、モータ制御装置301を有している。モータ制御装置301と流体機械302とは、配線ケーブル310で接続されている。なお、モータ制御装置301、配線ケーブル310および流体機械302は、第2実施形態(図29参照)に示したものと同様である。
空気調和機300は、室内機303と室外機304の間に冷媒を流通させ、室内機303の熱交換器306により、冷風または温風を室内に送風する。このような構成において、流体機械302には、機械角一回転毎、または負荷の特性によって生じる脈動トルクが存在する。また、冷房運転や暖房運転といった運転モードによって脈動トルクのパターンは変わる。空気調和機においては、地球温暖化や電気代削減のために、省エネルギー化が強く望まれている。そのため、流体機械302をインバータで駆動して可変速にすることで、冷凍サイクルの起動停止によるロスを削減することが一般的となっている。
さらに、住宅の断熱性能の向上により、一旦室内の温度が設定値に至ると、後は空気調和機の能力を最小化して動作し続けることが望まれている。その一方で、快適性を向上するために、短時間で室温が設定温度に達することが望まれている。そのためには、圧縮機を高速駆動し冷媒循環量を増やすことが望ましい。高速駆動の際は、負荷変動も大きくなるため、電動機6の負荷変動が大きい場合においても、安定にモータを駆動制御することが望ましい。
図39は、本実施形態における電圧位相調整積分ゲインKi_δVの設定例を示す図である。図39の例では、空気調和機の運転モードに応じて電圧位相調整積分ゲインを変更する。冷房運転と暖房運転では、回転速度、吸込圧、吐出圧は異なる。すなわち、負荷トルクτLの変化の仕方が異なる。そこで、運転モードに応じて電圧位相調整積分ゲインKi_δVを変更することにより、様々な運転モードにおいても安定にモータを駆動制御することができ、振動、騒音を抑制できる。
図40は、回転速度に応じて変調率判定値(第一の判定値KhJud1および第二の判定値KhJud2のうち、少なくとも1つ)を変更する例を示す図である。空気調和機300は運転時間が長いため、運転中に電源電圧が変動することが考えられる。前述の通り、電源電圧は電圧変調率KhV1に影響を与える。電源電圧が低下した場合は、平均電圧変調率Khaは高くなるため、第一の判定値KhJud1との差が小さくなる。そこで、第一の判定値KhJud1または第二の判定値KhJud2を回転数の増加に応じて下げることにより、早めに電圧位相を調整できるようになる。この結果、安定にモータを駆動制御することができ、振動、騒音を抑制できる。
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態による検証システムについて説明する。
上述の第1〜第6実施形態に適用されたモータ制御装置は、マイクロコンピュータやDSPなどの半導体集積回路によって構成され、ソフトウエア等で実現していることが多い。そのため、これらモータ制御装置が正しく構成されているか、検証することが難しくなるという課題がある。そこで、本実施形態においては、第1〜第6実施形態の構成が正しく動作しているかを検証する検証システムを提供するものである。
図41は、本実施形態による検証システムのブロック図である。
図41において、電動機6には、回転子6aの磁極の位置、すなわち回転角度位置θdを直接的に検出する磁極位置センサ194が装着されている。磁極位置センサ194は、電動機6のシャフト502(図2、図29参照)に、エンコーダ等を用いた角度センサを装着することによって実現できる。また、電力変換回路5の内部においては、シャント抵抗25の両端の電圧を測定する電圧検出器192が設けられている。また、第1実施形態に適用されていた直流電圧源20に代えて、本実施形態においては、電圧を増減できる可変直流電圧源30が適用される。
電力変換回路5と電動機6との間の各相の結線には、計器用変流器191a,191b,191cと、電圧計193a,193b,193cとが挿入されている。これらの電圧計は、各相の電位と、可変直流電圧源30のN(マイナス)側との電位との差を各相の電圧として検出する。なお、計器用変流器191a,191b,191cは、電流検出部7よりも高精度のものである。
さらに、本実施形態においては、検証装置190が設けられている。その内部に設けられた3φ/dq変換器195は、上記計器用変流器191a,191b,191cを介して電動機6の各相に供給される電流IU,IV,IWを検出するとともに、電圧検出器192の測定結果をシャント抵抗25の抵抗値で除算し、電流値を求める。また、電圧判定部197は、電圧計193a,193b,193cを介して、電動機6の各相の交流電圧VU,VV,VWを取得する。また、速度変換部198は、回転角度位置θdに基づいて、回転速度を求める。
さらに、電圧判定部197は、各相のドライブ信号(ゲート信号)を、制御部2またはゲートドライバ回路23の基準電位からの電位差によって検出する。3φ/dq変換器195は、電流IU,IV,IWまたはシャント抵抗25に流れる電流値と、回転角度位置θd(磁極位置)とが供給されると、下式(8)に基づいて、三相軸上の電流をd−q軸上の電流Id,Iqに変換する。
Figure 2017046430
電流判定部196は、q軸電流Iqが適切であるか否かを判定する。電圧判定部197においては、各相の交流電圧VU,VV,VWのうち少なくとも2相以上の電圧から、回転数1次成分の振幅と位相とが求められる。そして、各電圧の位相と、電動機6の回転角度位置θdとが比較され、両者の差が検出される。仮に、制御部2が所望の動作を行っている場合は、負荷の変化が大きい期間において、電圧の位相が変化するはずである。このように、回転角度位置θd、各相の交流電流IU,IV,IW、交流電圧VU,VV,VW、電動機6に流れる電流およびドライブ信号等を測定することにより、第1〜第6実施形態の制御部2が所期の動作を行っているか否かを検証することができる。
また、可変直流電圧源30の電圧を図28のように変化させ、電圧の振幅と位相の変化を測定することにより、第1〜第6実施形態の制御部2が所期の動作を行っているか否かを検証することができる。
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
(1)上記各実施形態においては、電動機6は回転子に永久磁石を有する永久磁石同期モータを用いた例で説明したが、その他各種の電動機(例えば、誘導機、同期機、スイッチトリラクタンスモータ、シンクロナスリラクタンスモータなど)を電動機6として適用してもよい。その際、電動機の種類によってはトルク電流指令値作成器10等での演算方法が変わるが、それ以外については同様に適用でき、本発明の目的を達成可能である。
(2)上記各実施形態においては、負荷装置9として、回転ロータリー型の圧縮機構部500やレシプロ型圧縮機構部600を適用した例を説明したが、負荷装置9は、スクロール型など他の圧縮方式の圧縮機構部を適用してもよく、ポンプ等に適用することも可能である
(3)上記各実施形態において、インバータ周波数指令値ω1を用いていた箇所(例えば図19に示す脈動トルク電流指令値作成器11)においては、インバータ周波数指令値ω1に代えて、周波数指令値ω*を用いてもよい。
(4)上記各実施形態においては、「負荷トルク対応パラメータ」の例として、電圧変調率KhV1または脈動トルク電流指令値Iqsin *を適用した例を説明したが、これら以外にも負荷トルクτLに対応する周期で増減するパラメータを「負荷トルク対応パラメータ」として用いてもよい。
(5)上記各実施形態に用いた負荷トルクτLは、空気調和機の室内機と室外機の風速や、室外機や室内機の周辺温度によっても変化する。そのため、これらの情報に基づいて第一〜第三の判定値KhJud1〜KhJud3等の設定を変更してもよい。
(6)上記第3実施形態の電圧位相調整器60c(図26)においては、電圧変調率KhV1に基づいてd軸電流指令値Id *を操作したが、脈動トルク電流指令値Iqsin *に基づいてd軸電流指令値Id *を制御するようにしてもよい。
(7)上記各実施形態においては、電動機6と負荷装置9とは直結されていたが、電動機6と負荷装置9との間に変速機を挿入してもよい。この場合、負荷トルクτLは、電動機6の機械角一回転を周期として変動するのではなく、機械角一回転の所定値(例えば減速比)倍で変動することになる。
(8)上記各実施形態において図11、図12、図21等に示した処理は、コンピュータおよびDSPによって実現できるため、これらの処理の内容を記述したプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
(9)上記各実施形態において図11、図12、図21等に示した処理は、上記各実施形態ではCPU用のプログラムまたはDSP用のマイクロプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(field-programmable gate array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
1 モータ制御装置
2 制御部
4 dq/3φ変換器
8 3φ/dq変換器
5,5a 電力変換回路
6 電動機
6a 回転子
6b 固定子
7 電流検出部
9 負荷装置
10 トルク電流指令値作成器
11 脈動トルク電流指令値作成器
12 軸誤差演算器
13 PLL制御器
14a d軸電流制御器
14b q軸電流制御器
14a,14b 電流制御器
16 脈動トルク推定器
17 圧縮機
19 印加電圧作成器
20 直流電圧源
30 可変直流電圧源
302,302a 流体機械
306 熱交換器
308 熱交換器
Edc 直流電圧
n,Gp ドライブ信号
d *,Iq * 電流指令値
dc,Iqc 電流検出値
tq * トルク電流指令値
qsin * 脈動トルク電流指令値(負荷トルク対応パラメータ)
qsinp * 最大脈動トルク電流指令値
IqJud1 第一の判定値(第1の閾値)
IqJud2 第二の判定値(第2の閾値)
e 誘起電圧定数
ha 平均電圧変調率
hp 最大電圧変調率(ピーク値)
hV1 電圧変調率(負荷トルク対応パラメータ)
KhJud1 第一の判定値(第1の閾値)
KhJud2 第二の判定値(第2の閾値)
KhJud3 第三の判定値
1 電圧指令値振幅
d *,Vq * 電圧指令値
d **,Vq ** 電圧指令値
S モータ制御システム
Tc 吐出温度
τL 負荷トルク
τm モータ発生トルク
θd 回転角度位置
θdc 推定回転角度位置
θr 推定機械角度位置
ωe 電気速度
ωr 機械速度
Δθc 推定軸誤差
Δθd 軸誤差
Δτm 差トルク
Δτm ^ 差トルク推定値
Δθv * 電圧位相調整量

Claims (10)

  1. 直流電圧を交流電圧に変換し出力することにより、負荷トルクが周期的に変動する負荷装置に結合される電動機を駆動する電力変換回路と、
    前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部と、
    を有し、前記制御部は、
    前記負荷トルクに対応する周期で増減する負荷トルク対応パラメータを演算する機能と、
    前記負荷トルク対応パラメータのピーク値が所定の第1の閾値を超えると、前記電動機の回転により発生する誘起電圧を抑制する弱め磁束状態で前記電力変換回路を駆動する機能と
    を有することを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記制御部は、前記弱め磁束状態で前記電力変換回路を駆動している際に前記ピーク値が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満になると、前記誘起電圧を抑制しない通常状態で前記電力変換回路を駆動する
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記負荷トルク対応パラメータは、前記交流電圧を指令する電圧指令値の振幅と前記直流電圧との比である電圧変調率であり、
    前記制御部は、前記電圧変調率のピーク値が前記第1の閾値以下になるように、前記電圧指令値の位相を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  4. 前記制御部は、前記電圧変調率のピーク値が前記第1の閾値以下になるように前記電圧指令値の位相を制御する際に、前記電圧変調率の平均値を減少させる
    ことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
  5. 前記負荷トルクは、前記電動機の機械角一回転の所定値倍の周期で変動する
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  6. 前記電動機は永久磁石を埋設した回転子と固定子とを有し、
    前記制御部は、前記永久磁石の主磁束方向をd軸とし、前記d軸から回転方向に電気的に90度進んだ軸をq軸とし、前記q軸に流れる電流の脈動成分である脈動トルク電流指令値を計算するものであり、
    前記負荷トルク対応パラメータは、前記脈動トルク電流指令値である
    ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  7. 前記制御部は、
    前記電圧指令値の位相を、前記電動機の機械角一回転の所定値倍の周期で変動させる
    ことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
  8. 負荷トルクが周期的に変動する負荷装置と、
    前記負荷装置に結合される電動機と、
    直流電圧を交流電圧に変換し出力することにより、前記電動機を駆動する電力変換回路と、
    前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部と、
    前記電動機と前記負荷装置とを収納する収納容器と、
    を有し、前記制御部は、
    前記負荷トルクに対応する周期で増減する負荷トルク対応パラメータを演算する機能と、
    前記負荷トルク対応パラメータのピーク値が所定の第1の閾値を超えると、前記電動機の回転により発生する誘起電圧を抑制する弱め磁束状態で前記電力変換回路を駆動する機能と
    を有することを特徴とする流体機械。
  9. 負荷トルクが周期的に変動する圧縮機構部と、
    前記圧縮機構部に結合される電動機と、
    直流電圧を交流電圧に変換し出力することにより、前記電動機を駆動する電力変換回路と、
    前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部と、
    前記電動機と前記圧縮機構部とを収納する収納容器と、
    前記圧縮機構部に接続された室内熱交換器と、
    前記圧縮機構部および前記室内熱交換器に接続された室外熱交換器と、
    を有し、前記制御部は、
    前記負荷トルクに対応する周期で増減する負荷トルク対応パラメータを演算する機能と、
    前記負荷トルク対応パラメータのピーク値が所定の第1の閾値を超えると、前記電動機の回転により発生する誘起電圧を抑制する弱め磁束状態で前記電力変換回路を駆動する機能と
    を有することを特徴とする空気調和機。
  10. 直流電圧を交流電圧に変換し出力することにより、負荷トルクが周期的に変動する負荷装置に結合される電動機を駆動する電力変換回路と、コンピュータを有し前記電力変換回路を駆動するドライブ信号を出力する制御部と、を有するモータ制御装置に適用されるプログラムであって、前記コンピュータを、
    前記負荷トルクに応じた周期で増減する負荷トルク対応パラメータを演算する手段、
    前記負荷トルク対応パラメータのピーク値が所定の第1の閾値を超えると、前記電動機の回転により発生する誘起電圧を抑制する弱め磁束状態で前記電力変換回路を駆動する手段、
    として機能させるためのプログラム。
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