JP7012901B2 - 交流電動機の速度推定装置、交流電動機の駆動装置、冷媒圧縮機及び冷凍サイクル装置 - Google Patents
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Description
本発明は、誘導機又は同期機といった交流電動機の速度を推定する交流電動機の速度推定装置、交流電動機の駆動装置、冷媒圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。
交流電動機の制御において、負荷トルク又は交流電動機の発生トルクに脈動がある場合には、交流電動機の回転速度にも脈動が生じる。交流電動機の回転速度に脈動が生じると、その交流電動機を搭載する装置においても振動が生じてしまい、騒音の発生、機械的な強度などにおいて問題となることがある。これらの問題に対応するため、トルク脈動及び速度脈動を低減するための制御が検討されている。
例えば下記特許文献1には、低コスト化のため、又はセンサ取り付けが困難な装置においても適用できるようにするため、トルク脈動及び速度脈動を低減するための制御を、位置センサ又は速度センサを用いずにセンサレスで実現する手法が開示されている。この特許文献1によれば、指令角周波数と速度フィードバック角周波数との差から抽出した速度リップル成分に基づいてトルク補償値を求めている。これにより、補正量のマップを持つことなく交流電動機の速度変動を抑制している。
位置センサレス制御において、従来の制御方式では速度推定応答は数百[rad/s]が上限であり、高周波の脈動に対しては応答が不十分で、正確に脈動を推定することが難しい。また、特許文献1では推定速度を用いて振動抑制部を構成しているため、振動抑制部の性能は速度推定の応答に依存し、高周波領域では十分な性能が得られないと考えられる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、交流電動機のセンサレス制御において、高周波の速度推定精度の更なる高精度化を図ることができる交流電動機の速度推定装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る交流電動機の速度推定装置は、交流電動機の電圧、電流、及び推定角速度に基づいてモデル偏差を演算するモデル偏差演算部と、モデル偏差に基づいて第1の推定角速度を演算する第1の角速度推定部と、モデル偏差に基づいて第1の推定角速度とは周波数が異なる第2の推定角速度を演算する第2の角速度推定部と、を備える。また、交流電動機の速度推定装置は、外乱周波数に基づいて補償位相を演算する補償位相演算部と、第1及び第2の推定角速度に基づいて交流電動機の推定角速度を演算する推定角速度演算器と、を備える。第1及び第2の推定角速度のうちの何れか一方は、補償位相に基づいて演算される。
本発明に係る交流電動機の速度推定装置によれば、交流電動機のセンサレス制御において、高周波の速度推定精度の更なる高精度化を図ることができる、という効果を奏する。
以下に、本発明の実施の形態に係る交流電動機の速度推定装置、交流電動機の駆動装置、冷媒圧縮機及び冷凍サイクル装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、以下では、交流電動機の速度推定装置を、適宜「速度推定装置」と略す。また、交流電動機の駆動装置を、適宜「駆動装置」と略す。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る交流電動機の速度推定装置101の構成を示すブロック図である。図1に示す速度推定装置101は、適応オブザーバの手法により、交流電動機2に印加される電圧ベクトルと電流ベクトルとを用いて、交流電動機2の回転速度を推定し、推定角速度ω^ rとして出力する。
図1は、実施の形態1に係る交流電動機の速度推定装置101の構成を示すブロック図である。図1に示す速度推定装置101は、適応オブザーバの手法により、交流電動機2に印加される電圧ベクトルと電流ベクトルとを用いて、交流電動機2の回転速度を推定し、推定角速度ω^ rとして出力する。
速度推定装置101は、モデル偏差演算部11と、第1の角速度推定部21と、補償位相演算部51と、第2の角速度推定部22と、推定角速度演算器23とを備える。
モデル偏差演算部11は、電圧ベクトル、電流ベクトル及び推定角速度ω^
rに基づいてモデル偏差εを演算する。第1の角速度推定部21は、モデル偏差εに基づいて第1の推定角速度ω^
r1を演算する。補償位相演算部51は、特定の外乱周波数fdに基づいて補償位相θplsを演算する。第2の角速度推定部22は、補償位相θpls、モデル偏差ε、及び外乱周波数fdに基づいて第2の推定角速度ω^
r2を演算する。推定角速度演算器23は、第1の推定角速度ω^
r1、及び第2の推定角速度ω^
r2に基づいて、交流電動機2の推定角速度ω^
rを演算する。
速度推定装置101は、補償位相演算部51及び第2の角速度推定部22を備えており、これらの構成部による動作が、本発明の特徴の1つである。補償位相演算部51及び第2の角速度推定部22の詳細は、後述する。
また、実施の形態1において、外乱周波数fdは既知として扱う。外乱周波数fdは、どのような手法を用いて求めてもよい。例えば、決まった周波数の外乱が生じるような系において、外乱周波数fdは、定数として事前に与えておくことができる。また、回転周波数に応じた外乱が生じる圧縮機のようなアプリケーションにおいては、回転周波数を外乱周波数fdとして用いることができる。ここで言う回転周波数は、回転位置センサ又は速度センサにより取得することができる。また、実施の形態1のような角速度推定手段を備えた装置の場合には、推定角速度ω^
rにより回転周波数を求めることができる。また、トルク脈動の周波数を、トルクメータ、加速度センサ、又は振動センサにより検出、又は推定して、外乱周波数fdとして用いることもできる。
第1の角速度推定部21及び第2の角速度推定部22は、どちらも角速度推定を行っている。両者の違いは、推定する角速度の周波数が異なっていることにある。なお、実施の形態1においては、第1の角速度推定部21において角速度の直流成分も含む低周波成分を推定し、第2の角速度推定部22において角速度の高周波成分を推定している構成について記載するが、この構成に限定されない。逆の構成として、第1の角速度推定部21の方が高い角速度周波成分を推定することも可能であることは言うまでもない。
次に、モデル偏差演算部11の構成及び機能について説明する。モデル偏差演算部11は、状態推定器12と、減算器13と、偏差演算器14とを備える。状態推定器12は、交流電動機2に印加される電圧ベクトルと、交流電動機2が出力する電流ベクトルと、推定角速度ω^
rとに基づいて、推定磁束ベクトル及び推定電流ベクトルを演算して出力する。推定角速度ω^
rは、前述した推定角速度演算器23によって演算される推定角速度であり、速度推定装置101の出力でもある。
減算器13は、推定電流ベクトルから電流ベクトルを減算し、電流偏差ベクトルを演算する。偏差演算器14は、電流偏差ベクトルを入力とし、推定磁束ベクトルの直交成分をスカラ量として抽出し、この値をモデル偏差εとして出力する。なお、推定磁束ベクトルの直交成分をスカラ量として抽出する手法は、公知である。例えば、電流偏差ベクトルを回転二軸上に座標変換する手法、電流偏差ベクトルと推定磁束ベクトルとの外積値の大きさを演算する手法などが公知である。
具体的に、状態推定器12は、交流電動機2の状態方程式から電流と磁束を推定する。ここでは交流電動機2は一般的な埋込磁石型同期交流電動機であると仮定するが、状態推定器12において、下述する状態方程式と同様な状態方程式が立式できるものであれば、他の交流電動機であってもよい。他の交流電動機としては、表面磁石型同期電動機、誘導電動機などを例示できる。
埋込磁石型同期交流電動機の場合、状態方程式は、下記(1)、(2)式のように表される。
上記(1)、(2)式において、Ld、Lqは、d軸及びq軸のインダクタンスを表す。Rは、電機子抵抗を表す。ωは、一次角周波数を表す。ωrは、角速度を表す。vdsは、d軸電圧を表す。vqsは、q軸電圧を表す。idsは、d軸電流を表す。iqsは、q軸電流を表す。φdsは、d軸固定子磁束を表す。φqsは、q軸固定子磁束を表す。φdrは、d軸回転子磁束を表す。h11からh32は、オブザーバゲインを表す。記号「^」は、推定値を表す。
ここで、一次角周波数は、下記(3)式のように与える。
上記(3)式において、h41及びh42は、前述のh11からh32と同様に、オブザーバゲインを表す。
上記(1)、(2)式は通常の誘起電圧に基づく式であるが、上記(1)、(2)式に変形を加えて拡張誘起電圧の形式で表現しても同様の計算ができる。上記(1)式には推定角速度ω^
rが含まれるため、推定角速度ω^
rと実際の角速度ωrとが一致していない場合、電流推定に誤差が生じる。ここでは、モデル偏差εを下記(4)式のように定義する。速度推定装置101は、モデル偏差εが零になるように、第1の角速度推定部21と第2の角速度推定部22を用いて推定角速度ω^
rの値を調整する。
前述したように、速度推定装置101における特徴の1つは、補償位相演算部51及び第2の角速度推定部22を備える点にある。この特徴を説明するため、ここではまず、補償位相演算部51及び第2の角速度推定部22を有さない速度推定装置を比較例として説明する。
図2は、比較例に係る速度推定装置101Aの構成を示すブロック図である。図2に示される速度推定装置101Aは、図1に示す速度推定装置101と同様に、センサレスベクトル制御方式により動作する。速度推定装置101Aは、第1の角速度推定部21のみでモデル偏差εが零に調整されるように動作する。
図2に示す速度推定装置101Aでは、第1の角速度推定部21は、比例積分(Proportional Integral:PI)制御器24と、積分器25とを備えている。第1の角速度推定部21は、下記(5)式に従って動作する。
上記(5)式において、KPは、第1の角速度推定部21全体の比例ゲインを表す。KIは、第1の角速度推定部21全体の積分ゲインを表す。sはラプラス変換の演算子であり、sは微分、1/sは積分の意味を表す。
第1の角速度推定部21において、PI制御器24は、モデル偏差εに基づいて第1の推定角加速度ω・^
r1を演算する。積分器25は、第1の推定角加速度ω・^
r1を積分して第1の推定角速度ω^
r1を演算する。第1の角速度推定部21では、PI制御器24及び積分器25によって、第1の推定角速度ω^
r1が調整される。第1の推定角速度ω^
r1は、速度推定装置101Aの出力として外部に出力される。また、第1の推定角速度ω^
r1は、モデル偏差演算部11にフィードバックされる。以上のように、PI制御器24は、第1の角加速度推定器として動作し、積分器25は、第1の角速度演算器として動作する。
また、第1の推定角速度ω^
r1からモデル偏差εまでの伝達関数Ga(s)は、非特許文献である電気学会論文誌「低速・回生領域を含む誘導交流電動機の速度センサレスベクトル制御法」(D120巻2号 平成12年)の226頁で公知である。この伝達関数Ga(s)は、下記(6)式のように一次遅れで近似できる。
図3は、図2に示す速度推定装置101Aの伝達特性を示すボード線図である。横軸は周波数を表し、縦軸はゲインを表す。図3において破線で示す(1)の伝達関数は、低域のゲインが高くなるように設計される。(1)の伝達関数では、周波数が高くなるほどゲインが減少する。具体的に、低域ではゲインが-40[dB/decade]の割合で減少し、折れ点P1より高い周波数では-20[dB/decade]の割合で減少する。
また、図3において、点線で示す(2)の伝達関数は、上記(6)式の伝達関数Ga(s)に対応している。伝達関数Ga(s)は、第1の推定角速度ω^
r1からモデル偏差εまでの一次遅れ特性を持つため、遮断角周波数f1よりも高い周波数域では、-20[dB/decade]の割合でゲインが減少する。これらの2つの伝達関数を足し合わせると、実線で示す(3)の開ループ特性の伝達関数が得られる。
上記(5)式のPI制御ゲイン、即ち第1の角速度推定部21における比例ゲインKP及び積分ゲインKIを十分に大きく設定できれば、高い周波数の速度脈動を正確に推定できる。ところが、これらのゲインの値は、推定演算周期及びモータ定数の誤差の影響により制約される。無理にゲインを上げると高周波雑音の影響を受け易くなり、適切な推定処理が不可能となる。このため、比較例に係る速度推定装置101Aでは、高周波の速度脈動を捉えることが難しいという課題が存在する。
次に、別の比較例を説明する。図4は、図2とは異なる比較例に係る速度推定装置101Bの構成を示すブロック図である。なお、図2と区別するため、以下では、図2の比較例を「第1の比較例」と呼び、図4の比較例を「第2の比較例」と呼ぶ。図2の速度推定装置101Aに対し、図4に示す第2の比較例に係る速度推定装置101Bでは、第2の角速度推定部22Bが追加されている。
図4の速度推定装置101Bにおいて、第2の角速度推定部22Bは、第2の角加速度推定部30Bと、積分器31とを備える。第2の角加速度推定部30Bは、外乱周波数fdとモデル偏差εとに基づいて、第2の推定角加速度ω・^
r2を演算する。積分器31は、第2の推定角加速度ω・^
r2を積分して第2の推定角速度ω^
r2を出力する。
また、第2の角加速度推定部30Bは、フーリエ係数演算器26と、PI制御器27,28と、交流復元器29とを備える。
フーリエ係数演算器26は、モデル偏差の特定周波数成分を直流化して抽出する。フーリエ係数演算器26からは余弦係数Ecと、正弦係数Esとが出力されるが、これらの係数が直流化した特定周波数成分を表している。
このとき、モデル偏差εの余弦係数Ec、及びモデル偏差εの正弦係数Esは、モデル偏差ε及び外乱周波数fdに基づいて、下記(7)、(8)式によって計算される。
上記(7)、(8)式において、tは時間を表す。また、Tdは外乱の周期を表しており、外乱の周期Tdは外乱周波数fdの逆数である。つまり、Td=1/fdである。
モデル偏差の余弦係数Ecは、PI制御器27によって、下記(9)式のようにPI制御される。また、モデル偏差の正弦係数Esは、PI制御器28によって、下記(10)式のようにPI制御される。
上記(9)、(10)式において、KP2は、第2の角速度推定部22B全体の比例ゲインを表す。KI2は、第2の角速度推定部22B全体の積分ゲインを表す。文字の上のドットは微分を表し、ドットの数は微分の階数を表す。
交流復元器29は、モデル偏差の余弦係数Ecと、モデル偏差の正弦係数Esとに基づいて、下記(11)式の演算を行う。この(11)式は、第2の推定角加速度ω・^
r2を演算する演算式である。
図5は、図4に示す速度推定装置101Bの伝達特性を示すボード線図である。横軸は周波数を表し、縦軸はゲインを表す。図5の(1)の伝達関数は、図3の(1)の伝達関数と同じものである。図5の(2)の伝達関数は、図3の(2)の伝達関数と同じものである。図5の(3)の伝達関数は、図4に示す第2の角速度推定部22Bの伝達関数を表している。これらの3つの伝達関数を足し合わせると、実線で示す(4)の開ループ特性が得られる。
図5を図3と比較すると、実線で示される(4)開ループ特性において、図5では特定の周波数帯域のゲインが高くなっている。つまり、第2の比較例に係る速度推定装置101Bは、第1の角速度推定部21と第2の角速度推定部22Bとを併用することで、周期外乱によって速度脈動の発生が予想され得る特定の周波数帯域のゲインを上げ、速度の推定精度を高めることができている。これにより、第2の比較例に係る速度推定装置101Bは、第1の比較例に係る速度推定装置101Aでは難しかった高周波の速度脈動を高精度で推定することを可能にしている。
上記のように、第2の比較例に係る速度推定装置101Bでは、高周波の速度脈動を高精度で推定することは可能であるが、位相誤差の大きさによっては、制御系が不安定になることも想定される。そこで、本願発明者らは、本発明の提案に際し、位相補償の必要性について検討したので、以下に説明する。
図6は、図2に示す速度推定装置101Aのモデル偏差εから第1の推定角加速度ω・^
r1までの伝達特性を表すボード線図を開ループ特性と閉ループ特性で比較した図である。開ループ特性とは、第1の推定角速度ω^
r1がモデル偏差演算部11にフィードバックされない状態での伝達特性である。また、閉ループ特性とは、図2に示される通り、第1の推定角速度ω^
r1がモデル偏差演算部11にフィードバックされている状態での伝達特性である。ここで、図3及び図5は、モデル偏差εから第1の推定角速度ω^
r1までのボード線図である。これに対し、図6は、モデル偏差εの入力から第1の推定角加速度ω・^
r1の出力までの伝達特性を表しており、図3及び図5に対し1階の微分特性が付加されていることに注意を要する。図4に示すように、第2の角速度推定部22Bがモデル偏差εに基づいて第2の推定角加速度ω・^
r2の演算を行う場合には、図6に示すモデル偏差εの入力から第2の推定角加速度ω・^
r2の出力までの特性が、第2の角速度推定部22Bの制御対象の特性であると考えることができる。
フィードバック制御では、制御対象と制御器との開ループ特性を考慮して設計を行う手法がよく用いられる。そこでまず、制御対象の開ループ特性に着目して、第2の角速度推定部の設計を行う場合について考える。
図6の開ループ特性を見ると、ゲインは、低域で-20[dB/decade]で減衰していく。位相は、低域では-90[度]であり、周波数が高くなるにつれて位相が遅れてゆき、-180[度]に収束する。使用する周波数帯域はアプリケーションにもよるが、低域をメインで使用する場合には、位相は-90[度]でほぼ一定と考えることもできる。そのような場合には、開ループ特性を制御対象として第2の角速度推定部を設計すれば、位相補償は必要ないと思われる。
しかしながら、実際は、第1の角加速度推定器としてのPI制御器24が動作した状態で、第2の角加速度推定器としてのPI制御器27,28が演算処理を行う。このため、PI制御器24を含む第1の角速度推定部21によって推定された第1の推定角速度ω^
r1がモデル偏差演算部11にフィードバックされていることを考慮しなければならない。従って、第2の角速度推定部22Bの制御対象として、閉ループ特性を考慮して第2の角速度推定部22Bを設計する必要がある。
図6の閉ループ特性を見ると、高域では1階の積分特性、低域では1階の微分特性となっている。ゲインを見ると、高域では開ループ特性と一致して-20[dB/decade」の傾きで低下する特性であるが、低域では+20[dB/decade」の傾きで増加する特性となっており、低域ほどゲインが下がっている。また、位相を見ると、高域では-180[度]に収束しており開ループの場合と一致しているが、低域では+90[度]となっており、その間の周波数帯域では、+90[度]から、-180[度]まで位相が大きく変化している。
ここで、前述したように、第2の比較例に係る速度推定装置101Bの第2の角速度推定部22Bにおける角加速度演算は、上記(7)~(11)式を用いて行われる。(7)、(8)式は直流成分である余弦係数及び正弦係数を求める演算式であり、(9)、(10)式はPI制御のための演算式であり、(11)式は直流成分を交流成分に戻すことで、交流成分を復元する演算式である。これらの一連の演算処理において、位相についての考慮は、為されていない。これは、モデル偏差εの入力から第2の推定角加速度ω・^
2の出力までの位相に、周波数に応じた変化がないことを前提としていることを意味する。
例えば上記のように、開ループ特性のみを制御対象として捉え、低周波領域での動作を行う場合には、位相変化は小さいと考えて、上記のような制御設計を採ることが考えられる。しかしながら、実際は、図6のボード線図で示されるように、制御対象の位相特性は周波数によって大きく変化していく。そのため、外乱周波数に応じて制御対象の位相特性が変化することを考慮して、推定角加速度を計算しなければ、適切な角加速度の推定位相から誤差が生じてしまう。
第2の比較例における第2の角加速度推定部30Bでは、PI制御器27,28を用いて角加速度が演算される。このため、位相誤差が小さい場合には、PI制御器27,28により制御量が調整されることで適切な位相に収束する場合もある。一方、位相誤差が大きい周波数帯域では、制御が不安定化するおそれがある。
そこで、実施の形態1では、第2の角速度推定部22において、適切な位相で角速度演算が行えるように位相補償を行う制御系を構成する。図7は、図1に示す速度推定装置101における第2の角速度推定部22の細部の構成を示すブロック図である。図7に示すように、第2の角加速度推定部30は、フーリエ係数演算器52と、積分(Integral:I)制御器53,54と、交流復元器55とを備える。実施の形態1において、第2の角加速度推定部30は、特定周波数角加速度推定器として動作する。また、第2の角加速度推定部30のうち、フーリエ係数演算器52は、特定周波数成分を抽出する特定周波数抽出器として動作し、I制御器53,54、及び交流復元器55は、特定周波数角速度推定器として動作する。
図7において、外乱周波数fdは、補償位相演算部51と、フーリエ係数演算器52と、交流復元器55とに入力される。補償位相演算部51は、制御対象の閉ループ特性を考慮して補償位相θplsを決定する。具体的には、補償位相θplsを外乱周波数に応じたマップとして記憶させておき、そのマップを参照して補償位相θplsを決定することができる。或いは、外乱周波数により変化する近似式を保有しておき、その近似式により補償位相θplsを決定してもよい。補償位相θplsは、フーリエ係数演算器52に入力される。
フーリエ係数演算器52は、外乱周波数fd及び補償位相θplsに基づいて、下記(12)、(13)式を用いてモデル偏差の余弦係数Ec’及び正弦係数Es’を求める。
モデル偏差の余弦係数Ec’は、I制御器53によって、下記(14)式のようにI制御される。また、モデル偏差の正弦係数Es’は、I制御器54によって、下記(15)式のようにI制御される。
上記(14)、(15)式において、Krpl_iは、I制御器53,54の積分ゲインである。ここで、I制御器53,54において、制御入力である余弦係数Ec’及び正弦係数Es’は角速度の次元である一方で、制御出力は角加速度の次元としている。また、角速度から角加速度への変換は微分の関係にある一方で、制御対象は本来積分特性を持っている。このため、直流に変換した座標系において、制御入力である余弦係数Ec’及び正弦係数Es’は、変換周波数倍のゲインとして見える。従って、余弦係数Ec’及び正弦係数Es’は、この座標系では積分特性ではなく比例特性として捉えられる。このため、積分器のみでも制御が可能であり、I制御器53,54が用いられている。なお、応答性改善のために、必要に応じて、第2の比較例のように、PI制御器で構成されていてもよいことは言うまでもない。
交流復元器55は、余弦係数Ec’及び正弦係数Es’に基づいて、下記(16)式の演算を行う。この(16)式は、第2の推定角加速度ω・^
r2を演算する演算式である。
図9は、実施の形態1に係る速度推定装置101の効果の説明に供する第1の図である。図10は、実施の形態1に係る速度推定装置101の効果の説明に供する第2の図である。図9及び図10は共に、速度脈動を与えた状態で交流電動機2を駆動し、交流電動機2の回転速度を推定するシミュレーションを行った結果の一例を示している。本シミュレーションでは、交流電動機2を駆動してから5秒経過後に第2の角速度推定部22が起動され、速度脈動推定が開始されている。
また、図9は、推定応答を1[rad/s]に設定して推定した角加速度の余弦成分Ωc
・^と、角加速度の正弦成分Ωs
・^とをプロットした波形である。上段部は、位相補償なしの場合の波形であり、第2の比較例の構成による結果に相当する。また、下段部は、位相補償ありの場合の波形であり、実施の形態1の構成による結果に相当する。
位相補償がない場合、前述のとおり速度脈動の推定位相に誤差が生じているため、角加速度の値が収束せず発散していってしまい、設定した応答が得られていない。一方、位相補償ありの場合、推定する角加速度が収束し、安定に動作していることが分かる。また。応答速度を見ると推定開始から1秒程度で63%の立ち上がりとなっており、所望の応答が得られていることが分かる。
また、図10は、推定角速度の波形であり、上段部は位相補償なしの場合を示し、下段部は位相補償ありの場合を示している。また、各左側は、第2の角速度推定部22の起動前の波形であり、各右側は、第2の角速度推定部22を起動し、値が収束した後の波形を示している。また、太線は実角速度であり、細線は推定角速度である。
起動前は、実角速度に対して推定角速度の位相が遅れており、振幅も小さくなっている。また、起動後において、位相補償がない場合には、制御が発散して実際の角速度よりも推定角速度の振幅が大幅に大きくなり、位相にもずれがある。一方、位相補償がある場合には、推定角速度は実角速度に一致しており、制御が良好に動作していることが分かる。
積分器31は、交流復元器55で演算された第2の推定角加速度ω・^
r2を下記(17)式により積分して第2の推定角速度ω^
r2を求める。積分器31は、第2の角速度演算器として動作する。第2の推定角速度ω^
r2は、実角速度の特定の高周波成分として演算される。
なお、制御系のブロック図は、変形可能であることは当業者であれば自明である。例えば、図8のように構成してもよい。図8は、図7に示す細部の構成の変形例を示すブロック図である。例えば図7の積分器25,31は、それぞれの推定角加速度を加算してから積分器に通してもよい。即ち、図7の構成では、推定角速度演算器23の入力側に2つの積分器25,31を配置する構成であるが、図8の速度推定装置101-1のように、推定角速度演算器23の出力側に1つの積分器32を配置する構成でもよい。この構成の場合、積分器の数を削減できるという効果が得られる。
最終的な角速度の推定式は、下記(18)式で表される。即ち、推定角速度演算器23において、第1の角速度推定部21で演算された第1の推定角速度ω^
r1に、積分器31で演算された第2の推定角速度ω^
r2が加算されることにより、下記(18)式で示される推定角速度ω^
rが得られる。
上記(18)式、及び図7に示す推定角速度演算器23では、加算器を用いる例を示しているが、この例に限定されない。補償位相演算部51における補償位相の正負の定義、交流復元器55の出力の定義が逆位相となるような場合においては、減算器が用いられる。即ち、推定角速度演算器23の構成は、補償位相の正負の定義、交流復元器55の出力の定義などによって変化する。
上記(18)式、上記(5)式との違いは、上記(18)式では、第2の推定角速度ω^
r2が用いられている点である。第2の角速度推定部22は、モデル偏差εの任意調波を正弦波と余弦波とに分けることで直流化して抽出し、それらが零になるようにI制御を行う。そして、第2の角速度推定部22は、I制御の出力を交流に復元することで実角速度の高周波成分を推定し、特定の周波数の部分だけゲインを上げている。そのため、周期外乱に起因する速度の脈動成分を第2の推定角速度ω^
r2として高精度に推定することができる。なお、上述の第2の角速度推定部22は、一種の繰り返し制御器あるいは学習制御器の構造を採用している。よって、上記の第2の角速度推定部22の代わりに、別種の繰り返し制御器、又は学習制御器を用いてもよい。
図11は、実施の形態1に係る速度推定装置101のハードウェア構成図である。図1及び図7では記載を省略したが、図11には、電圧印加部3と、電流検出部4とが示されている。電圧印加部3は、交流電動機2に電圧を印加する電圧印加手段である。電圧印加手段の一例は、電力変換器である。電圧ベクトルは、電圧印加部3により生成される電圧指令に相当する。交流電動機2には、電圧指令に基づいて生成された電圧が印加され、速度推定装置101には、電圧指令に関する情報が入力される。また、電流ベクトルは、電流検出部4により生成されて速度推定装置101に入力される。電流ベクトルは、交流電動機2に流れる交流電流に関するベクトル情報である。電流ベクトルの一例は、電流検出部4によって検出された交流電流をdq座標軸上の値に変換したdq軸電流の検出値である。
速度推定装置101は、プロセッサ901及びメモリ902を備える。メモリ902はランダムアクセスメモリに代表される不図示の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリを代表とする不図示の不揮発性の補助記憶装置とを備える。なおメモリ902は、揮発性記憶装置と不揮発性の補助記憶装置との代わりに、ハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ901は、メモリ902から入力されたプログラムを実行する。メモリ902が補助記憶装置と揮発性記憶装置とを具備するため、プロセッサ901に、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプログラムが入力される。またプロセッサ901は、演算結果のデータをメモリ902の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置に当該データを保存してもよい。
電圧印加部3及び電流検出部4に関しては、様々な方式が検討されているが、基本的にはどの方式を用いても構わない。電圧印加部3及び電流検出部4は、速度推定装置101の内部に設けてもよい。また、速度推定装置101は、電圧印加部3が出力する電圧ベクトルを検出する電圧検出手段を有していてもよい。この場合、電圧印加部3は電圧ベクトルの指令値をプロセッサ901へ送信し、電圧検出手段によって検出された電圧に関する数値がプロセッサ901へ送信されるように構成してもよい。電流検出部4も同様に検出した数値をプロセッサ901へ送信するように構成してもよい。
プロセッサ901は交流電動機2の電流ベクトルと電圧ベクトルとに基づいて、推定角速度ω^
rを演算する。プロセッサ901が前述した第2の角速度推定部22の演算を行うことにより、周期外乱による速度脈動を高精度に推定できる。なお、プロセッサ901は交流電動機2の駆動装置を兼ねてもよい。即ち、プロセッサ901は、速度推定を行うだけでなく、推定速度が所望の値になるような電圧指令ベクトルを計算するように構成してもよい。位置センサレスでトルク制御を行う方法は前述した非特許文献をはじめ、様々な方法が公知である。
以上説明したように、実施の形態1に係る交流電動機の速度推定装置によれば、周波数によらず適切な位相で交流電動機の速度脈動を推定することができ、速度推定の高精度化が可能となる。
また、実施の形態1に係る交流電動機の速度推定装置によれば、従来の課題であった脈動周波数が高い場合においても速度推定を高精度で行えるようにしたもので、特別な記憶手段を設けなくとも、特定の周波数帯域の推定応答を上げるための演算部を設けることで、従来よりも高周波領域の脈動まで推定することができる。また、適応磁束オブザーバである第1の角速度推定部の角速度推定の閉ループ位相特性を考慮して補償位相を求めることで、所望の応答速度で角速度推定を行うことができるようになり、制御の安定化が実現できる。
実施の形態2.
図12は、実施の形態2に係る速度推定装置101Cの構成を示すブロック図である。図12において、実施の形態2に係る速度推定装置101Cでは、図7に示す実施の形態1に係る速度推定装置101の構成において、第2の角速度推定部22が第2の角速度推定部22Cに置き替えられている。第2の角速度推定部22Cでは、第2の角加速度推定部30が第2の角加速度推定部30Cに置き替えられている。第2の角加速度推定部30Cでは、フーリエ係数演算器52がフーリエ係数演算器52Cに置き替えられ、交流復元器55が交流復元器55Cに置き替えられている。図7では、補償位相演算部51により演算された補償位相θplsはフーリエ係数演算器52に入力されていたが、図12では交流復元器55Cに入力されている。なお、その他の構成については、図7と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図12は、実施の形態2に係る速度推定装置101Cの構成を示すブロック図である。図12において、実施の形態2に係る速度推定装置101Cでは、図7に示す実施の形態1に係る速度推定装置101の構成において、第2の角速度推定部22が第2の角速度推定部22Cに置き替えられている。第2の角速度推定部22Cでは、第2の角加速度推定部30が第2の角加速度推定部30Cに置き替えられている。第2の角加速度推定部30Cでは、フーリエ係数演算器52がフーリエ係数演算器52Cに置き替えられ、交流復元器55が交流復元器55Cに置き替えられている。図7では、補償位相演算部51により演算された補償位相θplsはフーリエ係数演算器52に入力されていたが、図12では交流復元器55Cに入力されている。なお、その他の構成については、図7と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図7に示す実施の形態1のフーリエ係数演算器52は、(12),(13)式を用いてフーリエ係数を演算していた。一方、図12に示す実施の形態2のフーリエ係数演算器52Cは、下記(19)、(20)式を用いてフーリエ係数を演算する。
また、図7に示す実施の形態1の交流復元器55は、上記(16)式を用いて第2の推定角加速度ω・^
r2を演算していた。一方、図12に示す実施の形態2の交流復元器55Cは、下記(21)式を用いて第2の推定角加速度ω・^
r2を演算する。
フーリエ係数演算器52(52C)及び交流復元器55(55C)の演算に用いる位相の関係性が保たれていれば、実施の形態1で述べた、周波数に依らず適切な位相で速度脈動を推定する効果は同様に得られる。このため、(19)~(21)式のように演算しても同じ効果が得られる。
なお、実施の形態2でも実施の形態1と同様に、モデル偏差εの余弦係数Ec
’及びモデル偏差εの正弦係数Es
’をI制御器53,54のそれぞれから求める構成を採用することができ、その演算式は、(14)、(15)式で変わらない。
実施の形態3.
図13は、実施の形態3に係る速度推定装置101Dの構成を示すブロック図である。図13において、実施の形態3に係る速度推定装置101Dでは、図7に示す実施の形態1に係る速度推定装置101の構成において、第1の角速度推定部21が第1の角速度推定部21Dに置き替えられ、第2の角速度推定部22が第2の角速度推定部22Dに置き替えられている。第1の角速度推定部21Dでは、第1の角速度推定部21の構成から積分器25が省略され、第2の角速度推定部22Dでは、第2の角速度推定部22の構成から積分器31が省略されている。なお、その他の構成については、図7と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図13は、実施の形態3に係る速度推定装置101Dの構成を示すブロック図である。図13において、実施の形態3に係る速度推定装置101Dでは、図7に示す実施の形態1に係る速度推定装置101の構成において、第1の角速度推定部21が第1の角速度推定部21Dに置き替えられ、第2の角速度推定部22が第2の角速度推定部22Dに置き替えられている。第1の角速度推定部21Dでは、第1の角速度推定部21の構成から積分器25が省略され、第2の角速度推定部22Dでは、第2の角速度推定部22の構成から積分器31が省略されている。なお、その他の構成については、図7と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
第1の角速度推定部21Dに具備されるPI制御器24は、上記(5)式に示される演算処理を行う。即ち、第1の角速度推定部21Dは、積分器を用いずに、PI制御のみで第1の推定角速度ω^
r1を生成して、推定角速度演算器23に出力する。同様に、第2の角速度推定部22Dに具備される第2の角加速度推定部30も、積分器を用いずに第2の推定角速度ω^
r2を生成して、推定角速度演算器23に出力する。以降の動作は、実施の形態1で説明した通りである。
実施の形態3に係る速度推定装置101Dは、第2の角速度推定部22Dを備えているので、第1及び第2の比較例の速度推定装置に比べて、高周波の速度脈動を正確に推定することができる。その理由は、実施の形態1で説明した通りである。
なお、速度の推定精度に関して言えば、実施の形態3のものは、実施の形態1のものに比べて劣る。一方、推定演算に要する演算量の点では、積分演算を省略している分、実施の形態3の方が有利である。そのため、図11に示すプロセッサ901の演算性能が低く、少しでも計算量を減らしたい場合には、実施の形態3の構成が好適である。但し、詳細は後述するが、実施の形態5で説明する速度脈動抑制制御を行う場合には、実施の形態1に係る速度推定装置101の構成が好適である。
また、実施の形態3の類例として、第1の角速度推定部21Dが積分器25を備え、且つ、第2の角速度推定部22Dが積分器31を備えない構成としてもよい。或いは、第1の角速度推定部21Dが積分器25を備えず、且つ、第2の角速度推定部22Dが積分器31を備える構成としてもよい。
実施の形態4.
図14は、実施の形態4に係る速度推定装置101Eの構成を示すブロック図である。図14において、実施の形態4に係る速度推定装置101Eでは、図1に示す実施の形態1に係る速度推定装置101の構成において、第2の補償位相演算部56と、第3の角速度推定部33が追加されている。また、推定角速度演算器23が推定角速度演算器23Eに置き替えられている。即ち、実施の形態1から実施の形態3までは、2つの角速度推定部を有する構成であったが、実施の形態4は、3つの角速度推定部を有する構成である。なお、その他の構成については、図7と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図14は、実施の形態4に係る速度推定装置101Eの構成を示すブロック図である。図14において、実施の形態4に係る速度推定装置101Eでは、図1に示す実施の形態1に係る速度推定装置101の構成において、第2の補償位相演算部56と、第3の角速度推定部33が追加されている。また、推定角速度演算器23が推定角速度演算器23Eに置き替えられている。即ち、実施の形態1から実施の形態3までは、2つの角速度推定部を有する構成であったが、実施の形態4は、3つの角速度推定部を有する構成である。なお、その他の構成については、図7と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
一般的に、交流電動機は、適用されるアプリケーションによって、又は接続する負荷装置によって、交流電動機の回転角速度に含まれる角速度脈動の特徴は変化する。そこで、接続する負荷装置が周期的なトルク変動を有している場合について、ロータリー圧縮機を例として考える。
図15は、ロータリー圧縮機の負荷トルクの波形の一例を示す図である。横軸は回転角度を表し、縦軸は負荷トルクを表す。ここでは、ロータリー圧縮機の圧縮室の数をkと置く。回転角度の0~360度は、機械角の1周期、即ち機械角周期である。
まず、圧縮室が1つしかない場合、即ちk=1の場合、図15に実線で示すように、負荷トルクは、機械角周期で大きく振動している。2次、3次の高調波も負荷トルク波形には含まれるが、1次の振動が最も大きい。このため、実施の形態1から実施の形態3の構成を適用する場合、第2の推定角速度ω^
r2の演算に用いる外乱周波数fdを機械角周波数の1次周波数とすれば、最も大きい1次の角速度脈動を高精度で推定することができる。
実施の形態4では、角速度推定部が並列で複数個設けられている。このため、負荷トルク特性に含まれる2次及び3次のトルク変動による速度脈動も、高精度で推定することができる。図14の例では、推定する速度脈動の周波数を第2の外乱周波数fd2とし、これを第3の角速度推定部33で推定して第3の推定角速度ω^
r3として出力する。
圧縮室の数が2又は3の場合、即ちk=2又はk=3の場合についても同様に考えることができる。圧縮室の数を増やすほど構造的には複雑になり高コスト化するが、図15に示されるように脈動の小さい波形となっている。具体的に、k=2の場合は機械角周波数の2次高調波成分が大きくなり、k=3の場合は3次高調波成分が大きくなっている。
例えばk=2の場合、図15に示されるように、機械角周期の2次の振動が支配的である。このため、第2の角速度推定部22に入力される外乱周波数fdは、機械角周波数の2次の周波数として設定する。そして、更に推定したい2次を超える周波数があれば、それらを第2の外乱周波数fd2として、第3の角速度推定部33に入力すればよい。
また、例えばk=3の場合、図15に示されるように、機械角周期の3次の振動が支配的である。このため、第2の角速度推定部22に入力される外乱周波数fdは、機械角周波数の3次の周波数として設定する。そして、更に推定したい3次を超える周波数があれば、それらを第2の外乱周波数fd2として、第3の角速度推定部33に入力すればよい。
なお、実施の形態4では、角速度推定部を並列に複数個設け、それぞれの角速度推定部において位相補償を行っているが、これに限定されない。少なくとも1つの角速度推定部において位相補償が行われればよく、上述した位相補償による効果を得ることができる。
実施の形態5.
図16は、実施の形態5に係る交流電動機の駆動装置102の構成を示すブロック図である。実施の形態5に係る駆動装置102は、実施の形態1から実施の形態4で説明した速度推定装置101,101C,101D,101Eを用いて交流電動機2を制御する駆動装置である。図16では、実施の形態1に係る速度推定装置101を適用した構成を一例として示している。
図16は、実施の形態5に係る交流電動機の駆動装置102の構成を示すブロック図である。実施の形態5に係る駆動装置102は、実施の形態1から実施の形態4で説明した速度推定装置101,101C,101D,101Eを用いて交流電動機2を制御する駆動装置である。図16では、実施の形態1に係る速度推定装置101を適用した構成を一例として示している。
実施の形態5に係る駆動装置102は、図16に示されるように、速度制御部5と、加算器7と、トルク制御部6と、補償量演算部である補償トルク指令演算部8と、速度推定装置101とを備えている。補償トルク指令演算部8は、「補償指令演算部」として動作する。
まず、補償トルク指令演算部8の動作について説明する。なお、ここでは、補償トルク指令演算部8は、第2の角速度推定部22により演算された角加速度の情報を基に、演算を行う構成を例として説明する。
補償トルク指令演算部8は、下記(22)~(24)式を用いて補償トルク指令τ*
ripを演算する。
上記(22)、(23)式におけるKsi_ripは、補償トルク指令演算部8の積分ゲインである。また、上記(22)式におけるTcは、角加速度の脈動の余弦成分に対応する補償トルク指令τ*
ripの振幅であり、上記(23)式におけるTsは、角加速度の脈動の正弦成分に対応する補償トルク指令τ*
ripの振幅である。上記(22)、(23)式のように、角加速度の脈動の余弦成分及び角加速度の脈動の正弦成分のそれぞれが0となるような補償トルク指令τ*
ripが演算される。この補償トルク指令τ*
ripを用いて制御することにより、角加速度の脈動が低減でき、その結果、速度脈動も低減することができる。
上記(22)、(23)式で積分制御を用いているのは、角加速度を基に補償トルク指令τ*
ripを求める場合、制御対象の特性は比例特性であるためである。そして、制御器で積分特性を持たせてフィードバック制御を行うことで、理想的な閉ループ特性が得られるためである。なお、第2の角速度推定部22のように、補償位相演算部51によって決定された補償位相θplsを用いる構成の場合、補償位相θplsに基づいて、(24)式の位相を補償することもできる。また、補償位相θplsが外乱周波数fdに基づいた補償位相であれば、(24)式以外の式を用いて演算してもよい。また、原理は同じであるため説明は省略するが、上述の補償トルク指令演算は、第2の角速度推定部22により演算された第2の推定角速度ω^
r2を用いて、同様に計算することもできる。
次に、速度制御部5、トルク制御部6及び加算器7の動作について説明する。
速度制御部5は、角速度指令と推定角速度ω^
rを基に、基本トルク指令τ*
ωを演算する。基本トルク指令τ*
ωの演算には、一般的なPI制御器による速度制御を適用することができる。
加算器7は、補償トルク指令τ*
ripと基本トルク指令τ*
ωとを加算して、下記(25)式により、トルク指令τ*を演算する。
トルク制御部6は、図11に示す電圧印加部3を内包している。トルク制御部6は、トルク指令τ*に基づいて、交流電動機2に印加する電圧ベクトルを決定する。電圧ベクトルは、トルク指令τ*に基づいて演算された電流指令値に基づいて、PI制御などの電流制御を行うことで演算されたものでよい。或いは、トルク指令τ*に応じた適切な電圧指令値をメモリ902に記憶させておき、トルク指令τ*から直接求めてもよい。
実施の形態5に係る駆動装置102は、速度推定装置101によって求めた角速度脈動の情報を基に、速度脈動を低減する補償トルク指令を求めることができる。これにより、交流電動機2の回転むらを低減する効果が得られる。
なお、図16は、補償トルク指令τ*
ripを演算する補償トルク指令演算部8を備える構成であるが、この構成に限定されない。補償トルク指令演算部8に代えて、補償電流指令を演算する補償電流指令演算部を備える構成でもよい。この構成の場合、トルク制御部6の後段には、加算器及び電流制御部が備えられる。加算器は、トルク制御部6が生成する基本電流指令と、補償電流指令演算部が演算する補償電流指令とを加算して電流指令を生成する。電流制御部は、加算器から出力される電流指令に基づいて、交流電動機2に印加する電圧ベクトルを決定する。以降の動作は、上述の通りである。
実施の形態6.
図17は、実施の形態6に係る交流電動機の駆動装置102Aの構成を示すブロック図である。図17では、図16に示す交流電動機2が、交流電動機2を備えた冷媒圧縮機2aに置き替えられている。実施の形態6に係る駆動装置102Aは、冷媒圧縮機2aの速度脈動を軽減するため、実施の形態1に係る速度推定装置101を用いて構成されている。図17では、実施の形態1に係る速度推定装置101を適用した構成としているが、これに限定されない。実施の形態2から実施の形態4で説明した速度推定装置101C,101D,101Eの何れかを用いて駆動装置102Aが構成されていてもよい。なお、速度推定装置101,101C,101D,101Eの構成及び機能については前述した通りであり、ここでの説明は省略する。
図17は、実施の形態6に係る交流電動機の駆動装置102Aの構成を示すブロック図である。図17では、図16に示す交流電動機2が、交流電動機2を備えた冷媒圧縮機2aに置き替えられている。実施の形態6に係る駆動装置102Aは、冷媒圧縮機2aの速度脈動を軽減するため、実施の形態1に係る速度推定装置101を用いて構成されている。図17では、実施の形態1に係る速度推定装置101を適用した構成としているが、これに限定されない。実施の形態2から実施の形態4で説明した速度推定装置101C,101D,101Eの何れかを用いて駆動装置102Aが構成されていてもよい。なお、速度推定装置101,101C,101D,101Eの構成及び機能については前述した通りであり、ここでの説明は省略する。
次に、冷媒圧縮機2aの構造及び冷媒圧縮機2aにおける負荷トルクについて、図18及び図19を参照して詳細に説明する。図18は、図17に駆動対象として示した冷媒圧縮機2aの内部の概略構造を示す断面図である。また、図19は、図18に示す冷媒圧縮機2aの圧縮部202の内部の構造を示す断面図である。なお、ここでは、ロータリー圧縮機のローリングピストン式と呼ばれる冷媒圧縮機について説明するが、これに限定されない。冷媒圧縮機は、スクロール圧縮機といった他の種類の圧縮機であってもよい。
冷媒圧縮機2aは、密閉容器211と、密閉容器211に内蔵される交流電動機2と、交流電動機2を構成するロータ2-1に一端が貫通するシャフト201と、シャフト201の他端が貫通し密閉容器211の内側に固定される圧縮部202と、密閉容器211に設けられた吸入パイプ203と、密閉容器211に設けられた吐出パイプ204とを備える。
交流電動機2のステータ2-2は、密閉容器211に焼嵌め、冷嵌め、又は溶接により取り付けられ保持されている。ステータ2-2のコイル2-3には不図示の電線を介して電力が供給される。ロータ2-1は、ステータ2-2の内側に隙間2-4を介して配置され、ロータ2-1の中心部のシャフト201を介して、不図示の軸受により回転自在な状態で保持されている。
このように構成された冷媒圧縮機2aにおいて、交流電動機2が駆動することにより、吸入パイプ203を介して圧縮部202内に吸入された冷媒が圧縮され、圧縮された冷媒が吐出パイプ204から吐出される。冷媒圧縮機2aでは、交流電動機2が冷媒に浸かる構造を取る場合が多く、温度変化が激しいことから交流電動機2に位置センサを取り付けることは難しい。そのため冷媒圧縮機200では、交流電動機2を位置センサレス駆動しなければならない。
また、圧縮部202は、図19に示されるように、環状のシリンダ212と、シャフト201と一体で回転自在に形成されてシリンダ212の内側に配置されるピストン205と、シリンダ212の内周部に設けられた圧縮室213とを有する。
シリンダ212は、図18に示す吸入パイプ203と連通する吸入口206と、圧縮された冷媒を吐き出す吐出口207とを備える。吸入口206及び吐出口207は圧縮室213と連通している。またシリンダ212は、圧縮室213を吸入パイプ203に通じる低圧室と吐出口207に通じる高圧室とに区画するベーン210と、ベーン210を付勢するバネ209とを備える。
シャフト201は交流電動機2とピストン205とを相互に接続するものである。ピストン205は偏心しており、回転角度によって、吐出側と吸入側の容積が変化するようになっている。吸入口206から吸入された冷媒は、ピストン205によって圧縮され、圧縮室213の圧力が高まると、吐出弁208が開き、吐出口207から冷媒が吐出される。冷媒が吐出されると同時に吸入側には冷媒が流れ込む。交流電動機2を回し続けると、ピストン205の機械角1回転につき1度、冷媒が吐出される。
冷媒圧縮機2aの負荷トルク脈動は、交流電動機2に対しては周期外乱となるため、速度脈動の要因となる。冷媒圧縮機2aでは、速度脈動が大きいと、騒音及び振動が大きくなることが一般に知られている。
但し、負荷トルク脈動及び速度脈動の周波数は、冷媒圧縮機2aの構造によって決まるため、既知である。実施の形態6に係る冷媒圧縮機2aは、そのことを利用して図17に示す制御系を構築する。冷媒圧縮機2aは、第2の角速度推定部22により速度脈動の特定周波数成分を高精度に推定し、補償トルク指令演算部8でその脈動を抑えこむような補償トルク指令τ*
ripを演算する。これにより、事前調整を行わずとも速度脈動を低減することが可能となる。事前調整が不要になることで、出荷前の調整コストが大幅に低減でき、非常に有用である。
実施の形態7.
図20は、実施の形態7に係る冷凍サイクル装置の構成を示す図である。図20に示される冷凍サイクル装置300は、交流電動機の駆動装置102と、冷媒圧縮機2aと、冷媒圧縮機2aに配管305を介して接続される凝縮器301と、凝縮器301に配管305を介して接続される受液器302と、受液器302に配管305を介して接続される膨張弁303と、膨張弁303に配管305を介して接続される蒸発器304とを備える。蒸発器304は吸入パイプ203に接続される。
図20は、実施の形態7に係る冷凍サイクル装置の構成を示す図である。図20に示される冷凍サイクル装置300は、交流電動機の駆動装置102と、冷媒圧縮機2aと、冷媒圧縮機2aに配管305を介して接続される凝縮器301と、凝縮器301に配管305を介して接続される受液器302と、受液器302に配管305を介して接続される膨張弁303と、膨張弁303に配管305を介して接続される蒸発器304とを備える。蒸発器304は吸入パイプ203に接続される。
冷媒圧縮機2a、凝縮器301、受液器302、膨張弁303、蒸発器304及び吸入パイプ203が配管305で接続されることにより、冷媒圧縮機2a、凝縮器301、受液器302、膨張弁303、蒸発器304及び吸入パイプ203は、冷媒が循環する冷凍サイクル回路306を構成する。冷凍サイクル回路306では、冷媒の蒸発、圧縮、凝縮及び膨張という工程が繰り返され、冷媒が液体から気体へ、又は気体から液体へと変化を繰り返しながら、熱の移動が行われる。
冷凍サイクル装置300を構成する各機器の機能を説明する。蒸発器304は、低圧の状態で冷媒液を蒸発させ、周囲より熱を奪い、冷却作用を有するものである。冷媒圧縮機2aは、冷媒を凝縮させるために冷媒ガスを圧縮して高圧のガスにするものである。冷媒圧縮機2aは、実施の形態6に係る駆動装置102Aによって駆動される。凝縮器301は、熱を放出して高圧の冷媒ガスを凝縮して、冷媒液にするものである。膨張弁303は、冷媒を蒸発させるために、冷媒液を絞り膨張して低圧の液体にするものである。受液器302は、循環する冷媒量の調節のために設けられるもので、小型の装置では省略してもよい。
一般的に冷凍サイクル装置には、静音性の向上とコストの低減とが要求される。家庭用の冷凍サイクル装置では、特に低コスト化の要求が高く、シングルロータリー圧縮機が使用されることが多い。シングルロータリー圧縮機とは、図18及び図19で説明したロータリー圧縮機であり、圧縮室213を1つのみ備えるタイプの圧縮機である。ロータリー圧縮機は、負荷トルク脈動が非常に大きいため、振動及び騒音が大きくなりがちである。一方、従来のフィードフォワード制御方式では、振動及び騒音を抑制するために煩雑な制御調整が必要であった。
実施の形態7に係る冷凍サイクル装置300は、駆動装置102Aが速度脈動を自動的に零にするようにフィードバック制御をする。これにより、出荷前の調整に掛かるコストを格段に低減することができる。また、実施の形態7によれば、フィードバック制御で速度脈動を抑えこむことにより、製造時のバラつき、モータの定数変動、及び圧縮機の負荷条件の変化にも柔軟に対応できるようになる。これにより、耐環境性の高い冷凍サイクル装置300を実現することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
2 交流電動機、2a 冷媒圧縮機、3 電圧印加部、4 電流検出部、5 速度制御部、6 トルク制御部、7 加算器、8 補償トルク指令演算部、11 モデル偏差演算部、12 状態推定器、13 減算器、14 偏差演算器、21 第1の角速度推定部、22,22B,22C,22D 第2の角速度推定部、23 推定角速度演算器、24,27,28 PI制御器、25,31,32 積分器、26,52 フーリエ係数演算器、29,55 交流復元器、30,30B,30C 第2の角加速度推定部、33 第3の角速度推定部、51 補償位相演算部、53,54 I制御器、56 第2の補償位相演算部、101,101-1,101A,101B,101C,101D,101E 速度推定装置、102 駆動装置、200 冷媒圧縮機、201 シャフト、202 圧縮部、203 吸入パイプ、204 吐出パイプ、205 ピストン、206 吸入口、207 吐出口、208 吐出弁、209 バネ、210 ベーン、211 密閉容器、212 シリンダ、213 圧縮室、300 冷凍サイクル装置、301 凝縮器、302 受液器、303 膨張弁、304 蒸発器、305 配管、306 冷凍サイクル回路、901 プロセッサ、902 メモリ。
Claims (11)
- 交流電動機の電圧、電流、及び推定角速度に基づいてモデル偏差を演算するモデル偏差演算部と、
前記モデル偏差に基づいて第1の推定角速度を演算する第1の角速度推定部と、
前記モデル偏差に基づいて前記第1の推定角速度とは周波数が異なる第2の推定角速度を演算する第2の角速度推定部と、
外乱周波数に基づいて補償位相を演算する補償位相演算部と、
前記第1及び第2の推定角速度に基づいて前記交流電動機の推定角速度を演算する推定角速度演算器と、
を備え、
前記第1及び第2の推定角速度のうちの何れか一方は、前記補償位相に基づいて演算される
ことを特徴とする交流電動機の速度推定装置。 - 前記第1の推定角速度は、前記第2の推定角速度よりも周波数が低く、
前記第1の角速度推定部は、前記モデル偏差に基づいて前記第1の推定角速度を演算し、
前記第2の角速度推定部は、前記モデル偏差と、前記補償位相と、外乱周波数とに基づいて前記第2の推定角速度を演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の速度推定装置。 - 前記補償位相演算部は、前記第1の角速度推定部の位相特性を考慮して、前記補償位相を演算する
ことを特徴とする請求項2に記載の交流電動機の速度推定装置。 - 前記第2の角速度推定部は、
前記外乱周波数及び前記補償位相に基づいて前記モデル偏差の特定周波数成分を抽出する特定周波数抽出器と、
前記特定周波数成分に基づいて前記第2の推定角速度を演算する特定周波数角速度推定器と、
を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の交流電動機の速度推定装置。 - 前記第2の角速度推定部は、
前記外乱周波数に基づいて前記モデル偏差の特定周波数成分を抽出する特定周波数抽出器と、
前記特定周波数成分及び前記補償位相に基づいて前記第2の推定角速度を演算する特定周波数角速度推定器と、
を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の交流電動機の速度推定装置。 - 前記第1の角速度推定部は、
前記モデル偏差から第1の推定角加速度を演算する第1の角加速度推定器と、
前記第1の推定角加速度から前記第1の推定角速度を演算する第1の角速度演算器と、
を備え、
前記第2の角速度推定部は、
前記外乱周波数及び前記補償位相に基づいてモデル偏差の特定周波数成分を抽出する特定周波数抽出器と、
前記モデル偏差の特定周波数成分に基づいて第2の推定角加速度を演算する特定周波数角加速度推定器と、
前記第2の推定角加速度から前記第2の推定角速度を演算する第2の角速度演算器と、
を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の交流電動機の速度推定装置。 - 前記第2の角速度推定部は複数であり、
前記第2の角速度推定部のうちの少なくとも1つは、前記補償位相に基づいて前記第2の推定角速度を演算する
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の交流電動機の速度推定装置。 - 請求項1から7の何れか1項に記載の交流電動機の速度推定装置を備え、
前記交流電動機に流れる電流と、前記速度推定装置によって演算された前記推定角速度とに基づいて、前記交流電動機に印加する電圧を決定する
ことを特徴とする交流電動機の駆動装置。 - 前記第2の角速度推定部で演算された角速度又は角加速度に基づいて、補償電流指令又は補償トルク指令を演算する補償指令演算部を備えたことを特徴とする請求項8に記載の交流電動機の駆動装置。
- 請求項8又は9に記載の交流電動機の駆動装置と、
前記駆動装置により電圧を印加される交流電動機と、
前記交流電動機によって冷媒が圧縮される圧縮部と、
を備えたことを特徴とする冷媒圧縮機。 - 請求項10に記載の冷媒圧縮機を備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置。
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