JP2016081706A - 負極及びそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

負極及びそれを用いたリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】サイクル特性を向上することができる負極及びそれを用いたリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】本発明の負極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池は、黒鉛を含む負極活物質上に、V—C—O—P−Fから構成される層、を有する。【選択図】 図1

Description

本発明は、負極及びそれを用いたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池はニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。またハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される電源として有力な候補ともなっている。しかしながら、近年の携帯電子機器の小型化、高機能化に伴い、これらの電源となるリチウムイオン二次電池への更なる高容量化が期待されている。
リチウムイオン二次電池は、主として、正極、負極、セパレータ、非水電解液から構成されており、一般に、正極にリチウム金属複合酸化物、負極にリチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材等を用い、非水電解液として常温で液体の有機溶媒にリチウム塩を溶解させた液状の電解質が用いられている。しかし、負極の炭素材の表面では、充放電を繰り返すと有機溶媒が関与する副反応によりSEI(Solid Electrolyte Interface)が生じ、放電容量が低下し長期的に充放電を繰り返すことが出来ない(サイクル特性が低い)など特性に悪影響を及ぼしてしまう。このため、負極が有機溶媒と直接反応しないように、負極活物質および負極表面に被膜を形成するとともに、この被膜の状態や性質を制御することが重要である。
上述した課題を解決するために、セパレータと接する面の負極活物質上に、ホウ素、硫黄、窒素のうちいずれか1種以上の元素を含むカーボネート構造を有する層を被覆することで、有機溶媒が関与する副反応(SEI形成)を抑制し、サイクル特性の向上を図る技術が提案されている(特許文献1参照)。
特開2001−250535号公報
しかしながら、特許文献1ではサイクル特性の向上が十分ではなく、更なるサイクル特性の向上が望まれている。
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、サイクル特性を向上することができる負極及びそれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明にかかる負極は、黒鉛を含む負極活物質層上に、V―C―O―P―Fから構成される層、を有することを特徴とする。
本発明によれば、価数の変化が可能なVを含む被膜を形成することで、高い容量を維持したまま長期的なサイクルをまわすことが可能となる。このメカニズムははっきりと解明出来ていないが、被膜中のVの平均価数が充電時に3〜4価まで低下し、放電時に3.5〜5価まで増加する。この機能を用い、負極活物質にLiが挿入された際に生じる電荷をVが受け取ることで、電解液(有機溶媒)との反応を抑制していると推測される。
本発明にかかる負極は、前記V―C―O―P―Fから構成される層上に、さらにC―O―P―Fから構成される層を有することが好ましい。
C―O―P―Fから構成される層をV―C―O―P―Fから構成される層上に形成しておくことで、電解液とV―C―O―P―Fから構成される層との接触を抑制し、充放電を繰り返してもV―C―O―P―Fから構成される層を安定的に保つことが出来る。
本発明にかかる負極は、V−C―O―P―Fから構成される層の膜厚が20〜200nm、であることが好ましい。
上記本発明にかかる負極を用いることにより、V−C−O−P−Fから構成される層が活物質と電解液間の反応を十分に抑制するため、サイクルが経過しても高容量を維持できる。
本発明にかかる負極は、V―C―O―P―Fから構成される層とC−O−P−Fから構成される層の膜厚の合計が300nm以下、であることが好ましい。
また、本発明にかかるリチウムイオン二次電池は、正極と、前記負極と、電解質と、が容器に収容された構成であることが好ましい。
この様な構成にすることにより、優れたサイクル特性のリチウムイオン二次電池として利用可能である。
本発明によれば、優れたサイクル特性を有する負極及びそれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することが出来る。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の模式断面図である。 実施例1により得られた負極上のV−C−O−P−Fから構成される層とC−O−P−Fから構成される層の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
(リチウムイオン二次電池)
図1は、本実施形態とするリチウムイオン二次電池を示す模式断面図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60、62を備えている。
積層体30は、一対の正極10、負極20が、セパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14の主面及び負極活物質層24の主面が、セパレータ18の主面にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60、62が接続されており、リード60、62の端部はケース50の外部にまで延びている。
(正極集電体)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム又はそれらの合金、ステンレス等の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層14は、正極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMnMaO(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物が挙げられる。
(正極バインダー)
バインダーは、正極活物質同士を結合すると共に、正極活物質と集電体12とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。更に、上記の他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリフォスファゼン等)のモノマーと、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
正極活物質層14中のバインダーの含有量は特に限定されないが、正極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましい。正極活物質とバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、得られた正極活物質層14において、バインダーの量が少なすぎて強固な正極活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
(正極導電助剤)
導電助剤も、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
正極活物質層14中の導電助剤の含有量も特に限定されないが、添加する場合には正極活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、銅、ニッケル、ステンレス又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質としての黒鉛、バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
本実施形態の負極活物質層上には、V―C−O―P―Fから構成される層を有することを特徴とするものである。
上記負極活物質層上に、価数の変化が可能なVを含む被膜を形成することで、高い容量を維持したまま長期的なサイクルをまわすことが可能となる。このメカニズムははっきりと解明出来ていないが、被膜中のVの平均価数が充電時に3〜4価まで低下し、放電時に3.5〜5価まで増加する。この機能を用い、負極活物質にLiが挿入された際に生じる電荷をVが受け取ることで、電解液(有機溶媒)との反応を抑制していると推測される。
前記V―C−O―P―Fから構成される層上にC―O―P―Fから構成される層をさらに有することが好ましい。
C―O―P―Fから構成される層をV―C―O―P―Fから構成される層上に形成しておくことで、電解液とV―C―O―P―Fから構成される層との接触を抑制し充放電を繰り返してもV―C―O―P―Fから構成される層を安定的に保つことが出来る。
V−C−O−P−Fから構成される層は、Vが0.1から2atm%(元素%を意味する。)、Cが0.1から10atm%、Oが5から50atm%、Pが0.1から15atm%、Fが10から90atm%で構成されていることが好ましい。
またC−O−P−Fから構成される層は、Cが1から60atm%、Oが5から50atm%、Pが0.1から20atm%、Fが30から90atm%で構成されていることが好ましい。
各層を構成する組成の測定は、既存の方法で測定することができ、負極断面に対し、エネルギー分散形X線分析装置(STEM−EDS)を用いることで測定可能である。
なお、必ずしも上記範囲に限定されるものではない。
また前記V―C−O―P―Fから構成される層は、V(バナジウム)、C(炭素)、O(酸素)、P(リン)、F(フッ素)を含有して構成されていればよく、前記C−O―P―Fから構成される層もC(炭素)、O(酸素)、P(リン)、F(フッ素)を含有して構成されていればよい。いずれの層も結晶性であることを問わないが、アモルファス構造であることが好ましい。
V―C―O―P―Fから構成される層の膜厚は、20nmから200nm、であることが好ましい。この様な構成により、V―C―O―P―Fから構成される層が活物質と電解液間の反応を抑制するため、サイクルが経過しても高容量を維持できる。
より好ましくは、V―C―O―P―Fから構成される層の膜厚が50nmから120nmであるとき、電解液との反応抑制効果を持ちつつ、活物質が電解液と適度に接触することが可能なため、サイクルが経過してもより高容量を維持できる。
また、V―C―O―P―Fから構成される層とC−O−P−Fから構成される層の膜厚の合計が300nm以下、であることが好ましい。この様な構成により、サイクル特性だけでなく高いレート特性を示す。
なお、各層の膜厚の測定は、既存の方法で測定することができ、負極断面に対し、透過型電子顕微鏡(TEM)やX線光電子分光分析(ESCA)にて測定可能である。
また、V―C―O―P―Fから構成される層は、負極活物質粒子の表面を本発明の効果が発生すれば必ずしも完全に100%被覆している必要はないが、60%以上被覆していることが好ましい。
C−O−P−Fから構成される層についても、V―C―O―P―Fから構成される層の表面を本発明の効果が発生すれば必ずしも完全に100%被覆している必要はないが、60%以上被覆していることが好ましい。また本発明の効果が発生すればV―C―O―P―Fから構成される層が被覆していない負極活物質粒子の表面に付着していてもよい。
(負極活物質)
本実施形態では負極活物質粒子として、黒鉛を用いているが、例えば、表面に非晶質の層が形成された粒子を用いてもよい。
(負極導電助剤)
導電助剤は特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、カーボンブラックのような熱分解炭素、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成材料、炭素繊維、あるいは活性炭などの炭素材が挙げられる。また、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛などの負極活物質材料を、形状を変えて添加してもよい。
カーボンブラックとしては、特に、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が好ましく、ケッチェンブラックが特に好ましい。電子伝導性の多孔体を含有させることにより負極活物質材料の粒子と結着剤の界面に空孔を形成でき、その空孔により負極活物質層24への非水電解液の染み込みを容易にするので好ましい。
また、導電助剤の添加量は負極活物質の質量に対して、0.5〜5質量%であることが好ましい。
(負極バインダー)
バインダーには、正極バインダーとして例示した上述の材料に加え、PAA(ポリアクリル酸)等のアクリル系樹脂も用いることができる。また、バインダーの含有量も、負極活物質の体積変化の大きさや箔との密着性を加味しなければならない場合は適宜調整し、上述した正極10における含有量と同様の含有量を採用すればよい。バインダーの添加量は、負極活物質の質量に対して2〜20質量%であることが好ましい。
上述した構成要素により、電極10、20は、通常用いられる方法により作製できる。例えば、活物質(正極活物質または負極活物質)、バインダー(正極バインダーまたは負極バインダー)、溶媒、及び、導電助剤(正極導電助剤または負極導電助剤)を含む塗料を集電体上に塗布し、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、水等を用いることができる。
塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は特に限定されず、塗料が塗布された集電体12、22を、例えば80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。
次に、リチウムイオン二次電池100の他の構成要素を説明する。
(セパレータ)
セパレータは、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔質シート、又は不織布が挙げられる。
(電解質)
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解質として用いられるリチウム塩を用いることができる。例えば、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiFSI、LiBOB等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、(CFSONLi等の有機酸陰イオン塩等を用いることができる。
また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、等の非プロトン性高誘電率溶媒や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、等の酢酸エステル類あるいはプロピオン酸エステル類等の非プロトン性低粘度溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性高誘電率溶媒と非プロトン性低粘度溶媒を適当な混合比で併用することが望ましい。更には、イミダゾリウム、アンモニウム、及びピリジニウム型のカチオンを用いたイオン性液体を使用することができる。対アニオンは特に限定されるものではないが、BF 、PF 、(CFSO等が挙げられる。イオン性液体は前述の有機溶媒と混合して使用することが可能である。
電解液のリチウム塩の濃度は、電気伝導性の点から、0.5〜2.0Mが好ましい。なお、この電解質の温度25℃における導電率は0.01S/m以上であることが好ましく、電解質塩の種類あるいはその濃度により調整される。
電解質を固体電解質やゲル電解質とする場合には、ポリ(ビニリデンフルオライド)等を高分子材料として含有することが可能である。
更に、本実施形態の電解液中には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
(ケース)
ケース50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
(リード)
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池は図1に示した形状のものに限定されず、コイン形状に打ち抜いた電極とセパレータとを積層したコインタイプや、電極シートとセパレータとをスパイラル状に巻回したシリンダータイプ等であってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(正極の作製)
正極活物質としてLiVOPOを84重量%と、導電助剤としてカーボンブラックを6重量%と、グラファイトを2重量%と、バインダーとしてPVDFを8重量%と、N−メチル−2−ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に、均一に正極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて、110℃の大気雰囲気下で上記正極活物質中のN−メチル−2−ピロリドン溶媒を乾燥させた。正極活物質の塗布量は12.0mg/cmとした。なお、上記アルミニウム箔の両面に塗布された正極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。上記正極活物質が形成された正極をロールプレス機によって、正極活物質層を正極集電体の両面に圧着させ、正極活物質層の密度が2.3g/cmなるように正極を作製した。
(負極の作製)
黒鉛94重量%と、アセチレンブラック3重量%と、ポリアミドイミド樹脂3重量%と、N−メチル−2−ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、負極活物質層形成用のスラリーを調製した。このスラリーを、厚さ10μmの銅箔の両面に、負極活物質の塗布量が5.3mg/cmとなるように塗布し、100℃で乾燥することで負極活物質層を形成した。上記負極活物質が形成された負極をロールプレス機によって、負極活物質層を負極集電体の両面に圧着させ、負極活物質層の密度が1.5g/cmになるように負極を作製した。
(V−C−O−P−Fから構成される層の形成)
五酸化バナジウムをフッ化水素酸に溶解させ、さらにリン酸とPVAとの混合溶液を加え、混合することでV−C−O−P−F溶液を得た。
この混合溶液中に、負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて100℃で乾燥することにより負極活物質層上にV−C−O−P−Fから構成される層を形成した。またV―C―O―P―Fから構成される層のバナジウムの平均価数を評価したところ、4.0価であった。
なお、バナジウムの平均価数はX線吸収微細構造解析(XANES)を用いて評価した。
(C−O−P−Fから構成される層の形成)
PVAとジフルオロリン酸の混合溶液中に、リン酸とフッ化水素酸を加え混合することでC−O−P−F溶液を得た。
この混合溶液中に、負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて100℃で乾燥することによりV−C−O−P−F上にC−O−P−Fから構成される層を形成した。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、V−C−O−P−Fから構成される層とC−O−P−Fから構成される層の膜厚を評価した(図2)。図2のようにV−C−O−P−Fから構成される層(一対の黒色枠付き矢印で挟まれた層)とC−O−P−F(一対の黒色枠なし矢印で挟まれた層)から構成される層は明らかに構造が異なるので膜厚の評価が可能である。得られた膜厚の20箇所以上の平均値をそれぞれの層の膜厚とした。
またエネルギー分散形X線分析装置(STEM−EDS)を用いて、被膜の構成を評価した。V−C−O−P−Fから構成される層はV:0.4atm%、C:12atm%、O:46.9atm%、P:6.5atm%、F:34.3atm%、C−O−P−Fから構成される層はC:0.7atm%、O:13.3atm%、P:4.6atm%、F:81.4atm%で構成されていた。
(評価用リチウムイオン二次電池の作製)
上記で作製した正極、負極を用いて、これらの間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んで、アルミラミネートパックに入れ、このアルミラミネートパックに、電解液として1MのLiPF溶液(溶媒:EC/DEC=3/7(体積比))を注液した後に真空シールし、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
[実施例2]
V−C−O−P−F溶液に3回、C−O−P−F溶液に1回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例3]
V−C−O−P−F溶液に4回、C−O−P−F溶液に1回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例4]
V−C−O−P−F溶液に1回、C−O−P−F溶液に1回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例5]
C−O−P−F溶液に1回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例6]
V−C−O−P−F溶液に5回、C−O−P−F溶液に1回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例7]
C−O−P−F溶液をガラス棒の先端に付着させたものを、負極活物質層上に被覆させた事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例8]
V−C−O−P−F溶液をガラス棒の先端に付着させたものを、負極活物質層上に被覆させた事、C−O−P−F溶液に3回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例9]
V−C−O−P−F溶液をガラス棒の先端に付着させたものを、負極活物質層上に被覆させた事、C−O−P−F溶液に4回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例10]
V−C−O−P−F溶液に6回、C−O−P−F溶液に3回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[実施例11]
V−C−O−P−F溶液中に負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて80℃で乾燥することにより負極活物質層上にV−C−O−P−Fから構成される層を形成した。
さらにC−O−P−F溶液中に負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて100℃で乾燥することによりV−C−O−P−F上にC−O−P−Fから構成される層を形成した。
上記以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
このときV−C−O−P−Fから構成される層はV:0.1atm%、C:1.3atm%、O:35atm%、P:5.9atm%、F:57.7atm%、C−O−P−Fから構成される層は実施例1と同組成で構成されていた。
またV―C―O―P―Fから構成される層のバナジウムの平均価数を評価したところ、3.8価であった。
[実施例12]
V−C−O−P−F溶液中に負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて130℃で乾燥することにより負極活物質層上にV−C−O−P−Fから構成される層を形成した。
さらにC−O−P−F溶液中に負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて100℃で乾燥することによりV−C−O−P−F上にC−O−P−Fから構成される層を形成した。
上記以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
このときV−C−O−P−Fから構成される層はV:0.9atm%、C:5.5atm%、O:18.4atm%、P:8.9atm%、F:66.3atm%、C−O−P−Fから構成される層は実施例1と同組成で構成されていた。
またV―C―O―P―Fから構成される層のバナジウムの平均価数を評価したところ、4.3価であった。
[実施例13]
V−C−O−P−F溶液中に負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて150℃で乾燥することにより負極活物質層上にV−C−O−P−Fから構成される層を形成した。
さらにC−O−P−F溶液中に負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて100℃で乾燥することによりV−C−O−P−F上にC−O−P−Fから構成される層を形成した。
上記以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
このときV−C−O−P−Fから構成される層はV:1.5atm%、C:2.2atm%、O:8.1atm%、P:8.4atm%、F:79.8atm%、C−O−P−Fから構成される層は実施例1と同組成で構成されていた。
またV―C―O―P―Fから構成される層のバナジウムの平均価数を評価したところ、4.5価であった。
[実施例14]
V−C−O−P−F溶液中に負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて170℃で乾燥することにより負極活物質層上にV−C−O−P−Fから構成される層を形成した。
さらにC−O−P−F溶液中に負極を2回ディップし、アルゴン雰囲気中にて100℃で乾燥することによりV−C−O−P−F上にC−O−P−Fから構成される層を形成した。
上記以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
このときV−C−O−P−Fから構成される層はV:2.0atm%、C:1.9atm%、O:17.2atm%、P:10.5atm%、F:68.4atm%、C−O−P−Fから構成される層は実施例1と同組成で構成されていた。
またV―C―O―P―Fから構成される層のバナジウムの平均価数を評価したところ、4.6価であった。
[実施例15]
C−O−P−F溶液を使用せずV−C−O−P−F溶液のみを使用し、V−C−O−P−F溶液を2回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で負極活物質層上にV−C−O−P―Fから構成される層のみを形成した。
この負極を用いて評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
このときV−C−O−P−Fから構成される層は実施例1と同組成で構成されていた。
[比較例1]
V−C−O−P−F溶液は使用せず、C−O−P−F溶液のみを使用し、C−O−P−F溶液を3回ディップした事以外は実施例1と同様の方法で負極活物質層上にC−O−P―Fから構成される層のみを形成した。
この負極を用いて評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
[比較例2]
正極活物質としてLiVOPOを84重量%と、導電助剤としてカーボンブラックを6重量%と、グラファイトを2重量%と、バインダーとしてPVDFを7重量%と、Bを1重量%と、N−メチル−2−ピロリドンの溶媒とを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製し、負極はV−C−O−P−Fから構成される層と、C−O−P−Fから構成される層を被覆しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
この二次電池を20℃において1.5A、4.2Vの定電圧充電を施した後、50℃で3日間放置したところ、負極上にB及びCを有する被膜が形成された。なお、被膜の構成元素はX線光電子分光法(ESCA)によって確認した。
さらに実施例1と同様の方法で評価用リチウムイオン二次電池を作製し、サイクル特性の評価を行った。
<サイクル特性の評価方法>
実施例及び比較例で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、25℃の環境下でサイクル特性の測定を行った。0.5Cで4.2Vまで定電流定電圧充電し、1Cで2.8Vまで定電流放電する充放電サイクルを500サイクル繰り返し、500サイクル後の容量維持率を測定し、サイクル特性をサイクル維持率(%)として評価した。
表1に実施例1〜15及び比較例1〜2のV−C−O−P−Fから構成される層の膜厚、C−O−P−Fから構成される層の膜厚、V−C−O−P−Fから構成される層とC−O−P−Fから構成される層の膜厚の合計及びサイクル維持率について示す。
Figure 2016081706
実施例1から15の電池では高いサイクル維持率を示した。比較例1の電池ではV−C−O−P−Fから構成される層を有しおらず、サイクル維持率の低下が見られた。また比較例2の電池ではB2O3を正極に加え、充電状態で放置することによって被膜を形成したところ、サイクル特性維持率が向上したが、実施例1から15の方が高いサイクル維持率を示した。
本発明のリチウムイオン二次電池を用いることにより、サイクル特性が向上したリチウムイオン二次電池を提供することができる。
10…正極、12…正極集電体、14…正極活物質層、18…セパレータ、20…負極、22…負極集電体、24…負極活物質層、30…積層体、50…ケース、52…金属箔、54…高分子膜、60,62…リード、100…リチウムイオン二次電池。

Claims (5)

  1. 黒鉛を含む負極活物質層上に、V―C―O―P―Fから構成される層を有することを特徴とする負極。
  2. 前記V―C―O―P―Fから構成される層上に、さらにC―O―P―Fから構成される層を有することを特徴とする請求項1に記載の負極。
  3. 前記V―C―O―P―Fから構成される層の膜厚が20〜200nm、であることを特徴とする請求項1または2に記載の負極。
  4. 前記V−C―O―P―Fから構成される層と前記C−O−P−Fから構成される層の膜厚の合計が300nm以下であることを特徴とする請求項2乃至3のいずれか1項に記載の負極。
  5. 正極と、負極と、電解質と、が容器に収容されたリチウムイオン二次電池であって、前記負極が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の負極であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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