以下に、図面を用いて、本発明の一実施形態にかかる貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法について説明する。この貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法は、図2に示すように、後述する放流量調節プログラムがインストールされたコンピュータを制御手段20として機能させることで、貯水施設10からの水90Aの放流量を調節する方法である。
すなわち、上記コンピュータには、このコンピュータが自在にアクセスすることができるストレージ(記憶装置であり、図示省略)が接続されている。このストレージには、上記貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法を実現させるための放流量調節プログラムが、コンピュータ読み取り可能に記録されている。この放流量調節プログラムは、上記コンピュータを制御手段20として機能させることで、貯水施設10からの水90Aの放流量の調節を、監視作業員による操作がなくても自動的に行うことを実現させる。
ここで、貯水施設10の構成について説明する。この貯水施設10は、図1および図2に示すように、河川90の一部をせき止めることで、この河川90の水90Aを貯水された状態とすることを実現させるコンクリート製の取水えん堤11を備えている。この取水えん堤11は、本発明における「せき止め手段」に相当する。また、貯水施設10は、取水えん堤11によって貯水された状態とされた水90Aの一部を、取水路14Aへと導いて取水することを実現させるスライドゲートとして形成された取水手段14を備えている。ここで、取水路14Aは、本発明における「ルート」に相当する。
取水手段14は、図2および図3に示すように、制御手段20が出力する制御信号20Bに従って取水手段14の開度a1を一定の速度で調節することで、取水手段14から取水路14Aへの取水量を増減させることができる開閉装置14Dを備えている。言いかえると、制御手段20は、取水手段14の開度a1を調節することで、取水手段14による水90Aの取水量の制御を実現させるようになっている。なお、制御手段20は、図1に示すように、貯水施設10に設けられた建屋20Aの中に設置されている。
取水路14Aは、図2および図3に示すように、水路幅B1(図2参照、例えば本実施形態ではB1=7[m])が一定となるように形成された長方形断面開水路である。ここで、上記水路幅B1は、取水手段14の開口幅に設定される。また、取水路14Aは、一定の水路床勾配でほぼ直線状に延びることにより、水90Aを等流状態で流下させることができるように構成されている。この構成により、取水手段14による水90Aの取水は、取水手段14から取水路14Aへの水90Aのもぐり流出(図3参照)によって実現される。また、取水手段14による水90Aの取水量Q1は、以下の(式1)によって決定される。
ここで、C1は水の粘性による水流量の補正係数(すなわち流量係数)である。また、gは重力加速度である。また、a1は、図2および図3に示すように、上述した取水手段14の開度である。また、B1は、図2に示すように、上述した取水路14Aの水路幅である。また、H1は、図2および図3に示すように、取水手段14の上流側において貯水された状態の水90Aの水位を、取水路14Aの底を基準にして表したものである。また、hは、図3に示すように、取水路14Aにおいて取水手段14よりも距離Lだけ下流側を流下されている水90Aの水位を、取水路14Aの底を基準にして表したものである。ここで、距離Lは、水位hの測定において上述した水90Aのもぐり流出による水面の波立ちを無視することができる程度に長い距離(例えば本実施形態ではL=30×B1=210[m])として設定される。
なお、取水路14Aは、図1に示すように、水90Aを水力発電設備10A(図1参照)に向けて流下させる。この水力発電設備10Aは、取水路14Aから流下された水90Aによって水力発電を行い、この水力発電に使用された後の水90Aを貯水施設10よりも下流側の河川90に放流するようになっている。
また、取水えん堤11には、図2および図4に示すように、取水えん堤11によって貯水された状態とされた水90Aの一部を、取水えん堤11の下流側(図4で見て右側)の河川90に常時直接放流するように開けられたスライドゲートであるえん堤排砂門12が設けられている。このえん堤排砂門12は、図2に示すように、その開口幅がB2となるように形成されて、その開度が所定の開度であるa2となるように設定されている。また、えん堤排砂門12は、貯水施設10への水90Aの流入が過大となった洪水時においてその開度をa2よりも大きくすることで、過剰に流入される水90Aを河川90に逃がす洪水吐きとして機能できるようになっている。なお、えん堤排砂門12は、図4に示すように、上記直接放流を水90Aの自由流出によって実現させる。このため、えん堤排砂門12による水90Aの放流量Q2は、以下の(式2)によって決定される。
ここで、C2は水の粘性による水流量の補正係数(すなわち流量係数)である。また、gは重力加速度である。また、a2は、図2および図4に示すように、上述したえん堤排砂門12の開度である。また、B2は、図2に示すように、上述したえん堤排砂門12の開口幅である。また、H2は、図2および図4に示すように、えん堤排砂門12の上流側において貯水された状態の水90Aの水位を、えん堤排砂門12の開口の下縁を基準にして表したものである。
上記(式2)は、えん堤排砂門12による水90Aの放流量Q2が、取水えん堤11により貯水された水90Aの水位によって決定されることを意味している。また、えん堤排砂門12が水90Aの直接放流を行う河川90は、図1に示すように、取水手段14が水90Aを導く取水路14Aとは異なるものである。すなわち、えん堤排砂門12は、本発明における「放流手段」に相当する。
なお、上記直接放流において、水90Aは、図1および図4に示すように、えん堤排砂門12から射流として放流される。この射流は、河川90の河床が削り流される洗掘現象を発生させるおそれがあるほど流速が速いものである。このため、えん堤排砂門12の下流側となる河川90の河床には、この河床を補強して上記洗掘現象の発生を抑えるコンクリートパネルである護床工12Aが設置されている。この護床工12Aは、図4に示すように、本実施形態の貯水施設10においては、えん堤排砂門12に対して一体化されている。
また、上記射流は、河川90に生息する水棲生物90B(図5参照)にとっては、河川90における下流側から上流側への遡上を不可能にするほど流速が速いものである。このため、取水えん堤11には、図1および図5に示すように、上記水棲生物90B(図5参照)に取水えん堤11を越えた上記遡上を実現させる魚道13が設けられている。この魚道13は、取水えん堤11により貯水された水90Aの一部を、取水えん堤11の下流側(図1参照)の河川90に向けて上記射流よりも緩やかに常時直接放流することで、上記水棲生物90Bの上記遡上が可能な状態を常時維持するものである。
魚道13は、図2および図5に示すように、その幅が所定の幅B3(図2参照)となるように形成されて魚道13の長さ方向(図5で見て左右方向)に並ぶ隔壁13Aを備えた階段式の魚道である。この隔壁13Aは、図1および図5に示すように、魚道13において上流側(図5で見て右側)から下流側(図5で見て左側)に向かって所定の間隔を空けて並べられることで、魚道13に水90Aの流速が抑えられた湛水域13Bを複数設定するものである。この湛水域13Bは、図5に示すように、魚道13において上流側から下流側に向かって並ぶように設定されることで、魚道13を通って河川90(図1参照)の遡上を試みる水棲生物90Bが、魚道13内で休息しながら上記遡上をすることを可能とするものである。
なお、魚道13は、図5に示すように、取水えん堤11により貯水された水90Aの放流を、取水えん堤11により貯水された水90Aの自由越流として実現させるようになっている。また、魚道13の隔壁13Aのうち最も上流側(図5で見て右側)に位置される隔壁13Aは、その上面全体が水平な平面として形成されている。このため、魚道13による水90Aの放流量Q3は、以下の(式3)によって決定される。
ここで、C3は水の粘性による水流量の補正係数(すなわち流量係数)である。また、B3は、図2に示すように、上述した魚道13の幅である。また、H3は、図2および図5に示すように、取水えん堤11により貯水された水90Aの水位を、魚道13において最も上流側(図5で見て右側)に位置される隔壁13Aの上面を基準にして表したものである。
上記(式3)は、魚道13による水90Aの放流量Q3が、取水えん堤11により貯水された水90Aの水位によって決定されることを意味している。また、魚道13が水90Aの直接放流を行う河川90は、図1に示すように、取水手段14が水90Aを導く取水路14Aとは異なるものである。すなわち、魚道13は、本発明における「放流手段」に相当する。
上述した各構成によれば、えん堤排砂門12および魚道13からの水90Aの放流量の総和Q2+Q3は、貯水施設10に貯水された水90Aの水位によって決定される。この性質を利用して、制御手段20は、上述した貯水施設10からの水90Aの放流量の調節を、取水手段14による水90Aの取水量Q1を制御して貯水施設10に貯水された水90Aの水位を中心水位の近傍(図6参照)となる目標水位にすることで実現させる。これにより、制御手段20は、上記貯水施設10からの水90Aの放流量を、貯水施設10に流入される水90Aの流入量に応じた所定の流量範囲内に収まるように調節する。なお、上記中心水位は、上記放流量の総和Q2+Q3が河川90の維持流量と等しくなる水位である理想水位(図6参照)よりも高い水位として設定される。言いかえると、上記中心水位は、上記放流量の総和Q2+Q3が河川90の維持流量を下回るおそれがなく、かつ、取水手段14による水90Aの取水量Q1を水力発電設備10Aの常時使用水量よりも多くすることができる水位として前もって設定された水位である。なお、本明細書において、「水力発電設備10Aの常時使用水量」とは、河川90の水流量が想定されうる最小の水流量になった場合に、河川90の維持流量を確保しながらこの河川90から水力発電設備10Aに流下させることができる最大の水流量のことをいう。
〈●制御手段20による、第1の実施の形態にかかる処理(図7および図8)〉
続いて、制御手段20によりフィードバック制御を行って本発明を実施しようとした場合に実行される、第1の実施の形態にかかる処理について、主に図7の制御ブロック図を用いて説明する。
図7に示す制御ブロック図には、5つの制御ブロック21、22、23、24、25が設定されている。制御ブロック21には、中心水位と理想水位とがデータとして前もって入力される。また、制御ブロック21では、中心水位よりも高い水位である上側閾値水位および上昇目標水位と、中心水位と理想水位との間に位置される下側閾値水位および低下目標水位と、の4つの水位が前もって設定される。そして、制御ブロック21では、過去から現在に至る制御の状態および平滑化された貯水水位に基づいて、上記4つの水位のうち1つが目標水位として選択されてノードN10に加算項として出力される。なお、平滑化された貯水水位は、水位測定装置11Aにより検出された貯水施設10の貯水水位を制御ブロック22にて平滑化した水位である。また、目標水位は、貯水施設10に貯水された水90Aの水位の制御における制御目標値となる水位である。
ノードN10には、制御ブロック21からの目標水位が加算項として、制御ブロック22からの平滑化された貯水水位が減算項として、それぞれ入力される。これに対し、ノードN10は、入力された目標水位と平滑化された貯水水位との偏差を算定して制御ブロック23の第1部23Aに出力する。
制御ブロック23の第1部23Aには、制御ブロック21からの目標水位と、制御ブロック22からの平滑化された貯水水位と、制御ブロック25において平滑化された取水下流水位と、過去から現在に至る制御の状態と、が入力される。ここで、取水下流水位は、水位測定装置14Bにより検出された取水路14Aの水位である。また、制御ブロック23の第1部23Aは、入力された目標水位と、平滑化された貯水水位と、平滑化された取水下流水位と、過去から現在に至る制御の状態と、に基づいて、貯水水位補正量に対する処理を実行する。そして、制御ブロック23の第1部23Aは、処理後の貯水水位補正量を加算項としてノードN20に出力する。
ノードN20には、制御ブロック23の第1部23Aからの貯水水位補正量と、制御ブロック22からの平滑化された貯水水位と、がそれぞれ加算項として入力され、所定の水深差が減算項として入力される。これに対し、ノードN20は、上記各項の加減算の算定結果を取水水位として制御ブロック23の第2部23Bに出力する。なお、上記所定の水深差は、貯水施設10において水位測定装置11Aが設けられている場所の水深と、貯水施設10において取水手段14が設けられている場所の水深と、の水深差である。すなわち、上記所定の水深差は、図3に示す高低差αと等しい。また、取水水位は、取水手段14において水90Aの取水が行われる水位である。
制御ブロック23の第2部23Bには、制御ブロック21からの目標水位と、ノードN20からの取水水位と、制御ブロック25において平滑化された取水下流水位と、が入力される。これらの入力に対し、制御ブロック23の第2部23Bは、取水手段14の制御量をテーブルの検索により求めて制御ブロック24に出力する。
制御ブロック24は、入力された制御量に応じて開閉装置14Dに制御信号20Bを出力する。
開閉装置14Dは、入力された制御信号20Bに基づいて取水手段14の開度を変更する。これにより、取水手段14よりも上流側となる貯水施設10の水位および取水手段14よりも下流側となる取水路14Aの水位はそれぞれ変動される。なお、貯水施設10は外部の水が流入される(例えば図1に示す河川90から貯水施設10に流れ込む水90Aを参照)ものである。また、貯水施設10への水の流入量は、時間と共に変動されることで、貯水施設10の水位に対する外乱となるものである。
制御ブロック25は、取水路14Aに設けられた水位測定装置14Bにより検出された取水下流水位の入力を受けて、入力された取水下流水位を平滑化して出力する。
制御ブロック22は、貯水施設10に設けられた水位測定装置11Aにより検出された貯水水位の入力を受けて、入力された貯水水位を平滑化して出力する。
続いて、従来公知の不感帯方式の定水位制御において制御目標値となる水位(以下、「目標中心水位」とも称する。)と、上述した目標水位として選択される4つの水位(上側閾値水位、上昇目標水位、下側閾値水位、および、低下目標水位)との違いを説明する。また、上記4つの水位の中から目標水位をどのように選択するのかについてもあわせて説明する。なお、上記「従来公知の不感帯方式の定水位制御」は、例えば特開2000−122726号公報に開示された技術であり、ダムゲートや取水口ゲートの開閉によってダムや水路の水位(以下、「ダム水位」とも称する。)を一定に維持しようとする制御を行う技術である。
図8に示すように、従来公知の不感帯方式の定水位制御においては、入力された目標ダム水位を唯一の目標中心水位としていた。また、目標中心水位の上には上側不感帯水位が、目標中心水位の下には下側不感帯水位が、それぞれ設定されていた。ここで、上側不感帯水位と目標中心水位との水位差LZ3は、目標中心水位と下側不感帯水位との水位差LZ2と等しくなるようにされている。そして、現在のダム水位が下側不感帯水位よりも低いか、上側不感帯水位よりも高い場合には、ダムゲートや取水口ゲートの開閉が行われて、ダム水位を目標中心水位に一致させる制御が行われる。この際、ダムゲートや取水口ゲートは、その開閉の制御量が制御の開始時のみにおいて決定され、この制御に応じて水位が変化されるべき所定時間の間は、実際のダム水位がどの位置にあるかによらず追加の制御が実行されないものである。また、現在のダム水位と目標中心水位との水位差(の絶対値)が大きいほど、ダムゲートや取水口ゲートの開閉の制御量は大きくされる。
上記のような従来公知の不感帯方式の定水位制御において、維持流量の確保のためにダム水位が理想水位を下回らないようにする場合、下側不感帯水位を理想水位よりも水位差LZ1だけ高くする必要がある。ここで、従来公知の不感帯方式の定水位制御においては、ダム水位などの水位の精度が例えば1[cm]程度となるので、水位差LZ3および水位差LZ2は例えば25[mm]、水位差LZ1は例えば20[mm]として設定される。このため、従来公知の不感帯方式の定水位制御においては、目標中心水位となる目標ダム水位を理想水位よりもLZ1+LZ2(例えば45[mm])だけ高くする必要があった。なお、従来公知の不感帯方式の定水位制御においては、開閉の制御にともなって変動される種々のパラメータが後に制御結果に与えることになる影響を考慮に入れないので、水位のデータの刻みをより小さくした場合でも、水位の制御の精度は1[cm]程度となる。
これに対して、本発明においては、中心水位よりも高い水位である上側閾値水位および上昇目標水位と、中心水位と理想水位との間に位置される下側閾値水位および低下目標水位と、の4つの水位が設定される。ここで、上昇目標水位は上側閾値水位よりも低い水位であり、低下目標水位は下側閾値水位よりも高い水位である。
そして、認識された貯水水位が上側閾値水位よりも高い場合には、低下目標水位を目標水位として、認識された貯水水位を目標水位に一致させるように取水手段14の開度の制御が行われる。ここで、取水手段14の開度の制御は、その制御量の設定が制御の開始時のみにおいてなされ、この制御に応じて水位が変化されるべき所定時間の間は、実際の貯水水位がどの位置にあるかによらず追加の制御が実行されないものである。また、認識された貯水水位と目標水位との水位差が大きいほど、取水手段14の開度の制御量は大きくされる。このため、低下目標水位を目標水位とした場合には、中心水位を目標水位とした場合と比べて、取水手段14の開度の制御量はより大きくされ、貯水水位が上側閾値水位よりも高い状態はより早く解消される。
また、認識された貯水水位が下側閾値水位よりも低い場合には、上昇目標水位を目標水位として、認識された貯水水位を目標水位に一致させるように取水手段14の開度の制御が行われる。ここで、上昇目標水位を目標水位とした場合には、中心水位を目標水位とした場合と比べて、取水手段14の開度の制御量はより大きくされ、貯水水位が下側閾値水位よりも低い状態はより早く解消される。また、本発明においては、制御の対象となる貯水水位のデータを、現在の貯水水位そのものではなく、この貯水水位を平滑化して認識される貯水水位とすることで、認識された貯水水位の精度を例えば1[mm]程度にすることを実現させている。これらにより、本発明においては、貯水水位が理想水位を下回らないようにするために必要となる下側閾値水位と理想水位との水位差L1を、例えば2[mm]にまで小さくすることが可能となっている。
このとき、本発明のうち上述した第5の発明が適用されている場合には、取水手段14の開度の制御量を、取水手段14の開度の制御にともなって変動される種々のパラメータが後に制御結果に与えることになる影響を考慮に入れながら決定することが可能となる。ここで、上記「種々のパラメータ」は、例えば貯水施設14から魚道13への水90Aの越流の状態に応じて変動する流量係数などである。これにより、例えば認識された貯水水位の精度を例えば1[mm]程度にまで高めて、上側閾値水位と中心水位との水位差L3および中心水位と下側閾値水位との水位差L2のそれぞれを、例えば10[mm]にまで小さくすることが可能となる。このため、本発明において上述した第5の発明を適用した場合には、中心水位を理想水位よりL1+L2(例えば12[mm])だけ高い位置にまで引き下げた場合でも、貯水水位が理想水位を下回らないようにすることが可能となっている。
なお、上記の各制御のどちらかが最初に開始されるイニシャル時においては、上昇目標水位の代わりに上側閾値水位が、低下目標水位の代わりに下側閾値水位が、それぞれ使用される。この場合でも、上記の各制御により得られる作用効果と同様の作用効果が得られるので、ここではその詳細な説明を省略する。
また、認識された貯水水位が上側閾値水位と上昇目標水位との間のエリアM1に所定時間以上継続して位置されている場合、下側閾値水位を目標水位として、認識された貯水水位を目標水位に一致させるように取水手段14の開度の制御が行われる。これにより、認識された貯水水位が不感帯の範囲内で比較的高い位置(例えばエリアM1)に位置されている場合に、取水手段14による水の取水量を増やすことができる。ここで、貯水水位が上下限のある特定のエリア(例えばエリアM1)に長期間位置されているということは、貯水水位がほとんど変動されない状態にあることを意味している。このため、水位の制御における制御目標値となる目標水位を上記下側閾値水位に設定することで、貯水水位を上記不感帯の範囲内に位置させながら、取水手段14による水の取水量を可能な限り増やすことが可能となる。
〈●制御手段20による、第2の実施の形態にかかる処理(図9から図23)〉
続いて、上述した放流量調節プログラムにより上述したコンピュータが制御手段20として機能した場合に実行される、第2の実施の形態にかかる処理における一連の各ステップについて、主に図9から図23に示す各フローチャートを用いて説明する。なお、以下においては、用意した時系列の要素数を越える数のデータがこの時系列に入力される場合を含むエラー発生時に、各種設定を上述したストレージに保存して上記コンピュータの再起動を行うステップなどの付随的なステップについて、その図示および詳細な説明を省略する。
上記一連の各ステップの実行に際しては、まず、上記放流量調節プログラムが起動されたコンピュータ(すなわち制御手段20)にて実行され、この制御手段20は、図9に示すステップB10に進む。
ステップB10において、制御手段20は、上記ストレージ(図示省略)にアクセスしてこのストレージに前もって記録されたデータを取得し、以下の各ステップを実行するために必要となる初期設定を行い、ステップB20に進む。
ステップB20において、制御手段20は、この制御手段20に前もって接続された水位測定装置14Bから所定のサンプリング周期で発せられる検出信号14Cを取得し、この検出信号14Cから水位測定装置14Bの設置場所における現時点での水位を取得する。ここで、水位測定装置14Bは、図3に示すように、取水路14Aにおいて取水手段14よりも上述した距離Lだけ下流側となる底に設置されて、この底の高さを基準にした取水路14Aの水位を所定のサンプリング周期で検出して検出信号14Cを出力するものである。すなわち、ステップB20において取得される水位は、図3に示す水位hであり、本明細書においては「取水下流水位」とも称する。なお、ステップB20において、制御手段20は、水位測定装置14Bから新たに検出信号14Cが発せられるまでの間入力待ち状態(図示省略)となることで、水位測定装置14Bが水位を測定した時点での水位を取水下流水位として取得する。
ところで、水位測定装置14Bが検出信号14Cとして出力する水位は、瞬間的な水位であって信号対雑音比が悪い水位である。このため、制御手段20は、ステップB20による取水下流水位の取得後に、この取水下流水位を上述したストレージ(図示省略)に時系列として保存するステップB22(図9参照)を実行する。そして、制御手段20は、直近の所定の時間範囲において上記ストレージに保存された各取水下流水位を平均することで取水下流水位の移動平均を算定し、この算定結果を平滑化された取水下流水位hとして認識するステップB24(図9参照)を実行して、ステップB30に進む。ステップB22およびステップB24によれば、検出信号14Cから取得された信号対雑音比が悪い水位を移動平均により平滑化することで、検出信号14Cに含まれる雑音成分が制御手段20による制御に及ぼす悪影響を減らすことが可能となる。
ステップB30において、制御手段20は、この制御手段20に前もって接続された水位測定装置11Aから所定のサンプリング周期で発せられる検出信号11Bを取得し、この検出信号11Bから水位測定装置11Aの設置場所における現時点での水位を貯水水位として取得する。ここで、水位測定装置11Aは、図2および図3に示すように、貯水施設10において取水手段14よりも上流側に貯水された状態の水90Aの水位を、水位測定装置14Bのサンプリング周期と同期されたサンプリング周期で検出して検出信号11Bを出力するものである。また、水位測定装置11Aは、貯水施設10の底に接触された状態に設置されて、この底の高さを基準にした貯水施設10の水位を検出して検出信号11Bを出力するものである。また、ステップB30において、制御手段20は、水位測定装置11Aから発せられる検出信号11Bを入力待ち状態となることなく取得することで、水位測定装置14Bが水位を測定した時点での水位を貯水水位として取得する。
ところで、水位測定装置11Aが検出信号11Bとして出力する水位は、瞬間的な水位であって信号対雑音比が悪い水位である。このため、制御手段20は、ステップB30による貯水水位の取得後にステップB32に進む。
ステップB32において、制御手段20は、この貯水水位をストレージ(図示省略)に時系列データとして保存(図9参照)して、ステップB34に進む。
ステップB34において、制御手段20は、直近の所定の時間範囲において上記ストレージに保存された各貯水水位を平均することで水位の移動平均を算定し、この算定結果を平滑化された貯水水位として認識して、ステップB36に進む。ステップB32およびステップB34によれば、検出信号11Bから取得された信号対雑音比が悪い貯水水位を移動平均により平滑化することで、検出信号11Bに含まれる雑音成分が制御手段20による制御に及ぼす悪影響を減らすことが可能となる。なお、ステップB30からステップB34に至るまでの各ステップを併せたステップは、以下においては「水位認識ステップ」とも称する。
ステップB36において、制御手段20は、繰り返し実行される水位認識ステップにおいて制御手段20により平滑化されて認識された貯水水位を、認識が行われた時刻が対応された時系列データとして用意して、ステップB40に進む。すなわち、ステップB36は、本発明における「時系列データ用意ステップ」に相当する。
ステップB40において、制御手段20は、平滑化された貯水水位の時系列データから、後述する水位極小値および水位極大値を時刻が対応された形で抽出し、ステップB50に進む。ここで、水位極小値は、平滑化された貯水水位の変動が低下から上昇に切り替わる際の平滑化された貯水水位である。また、水位極大値は、平滑化された貯水水位の変動が上昇から低下に切り替わる際の平滑化された貯水水位である。すなわち、ステップB40は、本発明における「抽出ステップ」に相当する。
ステップB50において、制御手段20は、ストレージに保存されたデータを参照して、最後に取水手段14の開度を調節してから所定時間が経過していないといえるか否かについて判定を行う。ここで、上記所定時間は、取水手段14が開度a1の調節に必要とする開閉作動時間(例えば数秒〜十数秒程度)と、上記開度a1の調節により水90Aの水位が変化して取水量が調節されるまでに必要となる休止時間(例えば数分程度)とをあわせた時間である。制御手段20は、「No」と判定した場合(すなわち、所定時間前よりも後に取水手段14の開度が調節されたというデータが、上記ストレージ内において見つからなかった場合)は図9に示すようにステップB52に進む。ここで、ステップB52の具体的な処理は後述する。また制御手段20は、「Yes」と判定した場合(すなわち、所定時間前よりも後に取水手段14の開度が調節されたことが上記ストレージに保存されていた場合)は図9に示すようにステップB70に進む。
ステップB70において、制御手段20は、この制御手段20を停止させるための停止命令が制御手段20に対して入力されているか否かを判定する。制御手段20は、「Yes」と判定した場合(すなわち、上記停止命令が入力されている場合)、現在実行されている全ての処理を終了させた後にシャットダウンの処理を実行する。なお、上記停止命令は、制御手段20の外部から人の手により適宜入力されるものである。上記停止命令の入力は、例えば、取水手段14による水90Aの取水および水力発電設備10Aの運転を停止させて、この水力発電設備10Aのメンテナンスを行う場合などに行われる(図示省略)。
ステップB70において制御手段20が上記停止命令が出されていない(すなわち、「No」である)と判定した場合、制御手段20は、ステップB20に戻る。これにより、制御手段20は、この制御手段20に上記停止命令が入力されない限りにおいて、上述したステップB10を除く複数のステップを繰り返し実行する。この複数のステップは、本発明における水位認識ステップと、水位低下制御ステップと、水位上昇制御ステップと、を含むものである。
ステップB52、ステップB54、および、ステップB56の各ステップにおいて、制御手段20は、今回実行されたステップB34において認識された平滑化された貯水水位(すなわち平滑化された貯水水位の最新データ)を判定する。この判定は、平滑化された貯水水位の最新データが後述する水位エリア1、水位エリア2、水位エリア3、水位エリア4のいずれの水位エリアに位置されているかを判定するものである。この各水位エリアは、本実施形態においては、図6に示すように、上述した中心水位と、この中心水位よりも高い水位として前もって設定された上側閾値水位と、上記中心水位よりも低い水位として前もって設定された下側閾値水位とを閾値として設定されている。
ここで、上記上側閾値水位は、取水手段14の開度a1の調節におけるハンチング現象を防ぐために中心水位の上下に設定される不感帯の水位エリア(本明細書においては、「中心水位の近傍」とも称する。)における最高水位である。また、上記下側閾値水位は、上記不感帯の水位エリアにおける最低水位である。また、上記下側閾値水位は、上述した理想水位よりも高い水位として設定されている。
また、上記水位エリア1は、水位が上記上側閾値水位よりも高い水位エリアとして前もって設定される。また、上記水位エリア4は、水位が上記下側閾値水位よりも低い水位エリアとして前もって設定される。また、上記水位エリア2は、水位が上記上側閾値水位以下で上記中心水位よりも高い水位エリアとして前もって設定される。また、上記水位エリア3は、水位が上記下側閾値水位以上かつ上記中心水位以下となる水位エリアとして前もって設定される。
すなわち、ステップB52において、制御手段20は、平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア1に位置されているか否かを判定する。制御手段20は、「Yes」と判定した場合はステップB80に進み、「No」と判定した場合はステップB54に進む。
ステップB54において、制御手段20は、平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア4に位置されているか否かを判定し、「Yes」と判定した場合はステップB80に進み、「No」と判定した場合はステップB56に進む。
ステップB56において、制御手段20は、平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア3に位置されているか否かを判定し、「Yes」と判定した場合は上述したステップB70に進み、「No」と判定した場合はステップB58に進む。なお、上記の各水位エリアの説明からも明らかなように、制御手段20による処理がステップB58に進むのは、平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア2に位置されているときである。
〈●平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア1あるいは水位エリア4に位置されている場合〉
ステップB52からステップB56に至る各ステップにおいて、平滑化された貯水水位の最新データが上記水位エリア1あるいは水位エリア4(図6参照)にあると判定された場合、上述したように、制御手段20はステップB80に進む。
ステップB80において、制御手段20は、以下に示す表1により設定される条件判断(以下、「条件判断Z」とも称する。)を行い、この条件判断Zの判断結果によって以降の処理のパターンを分岐させる。この条件判断Zは、過去から現在に至る貯水水位の制御状態の変遷、および、後述する優先条件1、優先条件2、優先条件3の各条件が成立するか否かの判断を行うものである。
ここで、上記表1について説明する。本実施形態の放流量調節プログラムにおいては、制御手段20は、上記表1に記載の条件の一部について、条件の読み替えを行う。具体的には、上記表1に記載の「今回の制御状態」は、「現時点で実行中の条件判断Zにおける、制御手段20がこれから水位をどのように制御しようとするのかについての判断結果」と読み替えられる。また、上記表1に記載の「水位を上昇させる制御を実行した」は、「平滑化された貯水水位が水位エリア4にあるために水位を上昇させる制御を行うべきであると制御手段20が判断したことを示す情報が見つかった」と読み替えられる。また、上記表1に記載の「水位を低下させる制御を実行した」は、「平滑化された貯水水位が水位エリア1にあるために水位を低下させる制御を行うべきであると制御手段20が判断したことを示す情報が見つかった」と読み替えられる。また、上記表1に記載の「制御を実行していない」は、「平滑化された貯水水位が水位エリア1あるいは水位エリア4のいずれかにあることを理由として水位の制御を行うべきであると制御手段20が判断したことを示す情報が見つからなかった」と読み替えられる。すなわち、制御手段20は、平滑化された貯水水位が水位エリア2にあるときに実行される水位の制御(後述するステップB66の調節制御を参照)について、この制御を表1における「過去から現在に至る制御状態」から除外して処理を進める。
続いて、3回前から今回に至る各制御状態が全て「水位を低下させる制御を実行した」である(表1の場合分番号が15となる行の)場合を例として、表1の読み方を説明する。上記の行には、優先条件1成立時の列においてパターン4低下が、優先条件3成立時の列においてパターン7が、優先条件2成立時の列あるいは優先順位の指定がない列においてパターン3低下が、それぞれ適用される旨が記載されている。この場合、制御手段20は、3回前から今回に至る各制御状態の判断を行った後、優先条件1、優先条件2、優先条件3の判断を行う。
そして、優先条件1が成立しているときには、制御手段20は、パターン4低下(図16参照)に対応する処理を実行する。また、優先条件2が成立しているときには、制御手段20は、パターン3低下(図14参照)に対応する処理を実行する。また、優先条件3が成立しているときには、制御手段20は、パターン7(図22参照)に対応する処理を実行する。また、優先条件1、優先条件2、優先条件3の各条件のいずれもが成立していないときには、制御手段20は、パターン3低下(図14参照)に対応する処理を実行する。なお、条件判断Zによって分岐して処理される各パターンの具体的な処理については後述する。
優先条件1、優先条件2、優先条件3の各条件の具体的な内容は、以下の表2に示すものである。ここで、第5水位差は、最新の水位極小値と低下目標水位との水位差のことである。また、第6水位差は、最新の水位極大値と上昇目標水位との水位差のことである。また、第7水位差は、平滑化された貯水水位の最新データと低下目標水位との水位差のことである。また、第8水位差は、平滑化された貯水水位の最新データと上昇目標水位との水位差のことである。なお、図7の制御ブロック図を用いて説明した、本発明における第1の実施の形態にかかる処理においては、上記第7水位差および第8水位差は、ノードN10から制御ブロック23の第1部23Aに出力される偏差に置き換えられて適用されるものである。また、本明細書においては、第1水位差は、最新の水位極小値から低下目標水位を引いた水位差のことであり、第2水位差は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用される平滑化された貯水水位から、低下目標水位を引いた水位差のことであり、第3水位差は、最新の水位極大値を上昇目標水位から引いた水位差のことであり、第4水位差は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用される平滑化された貯水水位を、上昇目標水位から引いた水位差のことである。
表2においては、水位極小値および水位極大値は、上述したステップB40において抽出されたものであり、対応された時刻により最新のものであるか否かが分かるものである。また、低下目標水位は、図6に示すように、上述した不感帯の水位エリアにおいて下側閾値水位よりも高く、かつ、上述した中心水位よりも正の値である第2所定値だけ低い水位として設定されるものである。この第2所定値は、例えば7[mm]程度の値である。また、上昇目標水位は、図6に示す不感帯の水位エリアにおいて上側閾値水位よりも低く、かつ、上記中心水位よりも正の値である第1所定値だけ高い水位として設定されるものである。この第1所定値は、上記第2所定値よりも小さな値(例えば2[mm])である。
また、表2に示す第3所定値は、後述する貯水水位補正量を変える必要があるか否かを、第5水位差あるいは第6水位差の絶対値の大きさによって制御手段20に判断させるための閾値である。すなわち、制御手段20は、第5水位差あるいは第6水位差の絶対値の大きさが第3所定値よりも小さい場合に、後述する貯水水位補正量を変える必要はないと判断する。ここで、「貯水水位補正量」とは、実際に認識された平滑化された貯水水位をより適切な制御を行い得る平滑化された貯水水位に較正するためのパラメータである。この貯水水位補正量は、ステップB10において、その値が0(すなわち平滑化された貯水水位の較正が全く行われない値)となるように初期設定される。なお、本明細書において、「較正」とは、測定装置の出力に基づいて制御を行う際に、この制御における理想的な制御量を与える理想的な出力と実際の測定装置の出力とのずれを推定して、実際の測定装置の出力を上記理想的な出力に補正することをいう。
また、係数Rは、第7水位差および第8水位差の絶対値の最小値(すなわち上側閾値水位と低下目標水位との水位差および下側閾値水位と上昇目標水位との水位差、図6参照)に基づき、第7水位差および第8水位差が必ず第3所定値よりも大きな値となるように設定される。このため、優先条件1、優先条件2、優先条件3の各条件のいずれかが成立しうる(表1の場合分番号が7、14、15、22、23、30のいずれかとなる行の)場合には、上記各条件のいずれもが成立しないことはありえない。なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、係数Rの値は、ステップB1(図9参照)において例えば0.1に設定される。
続いて、3回前および2回前の制御状態がともに「制御を実行していない」であり、1回前および今回の制御状態がともに「水位を上昇させる制御を実行した」である(表1の場合分番号が6となる行の)場合を例として、表1の読み方についての補足説明を行う。上記の行には、優先順位の指定がない列においてパターン2上昇が適用される旨のみが記載されている。この場合、表2に示す優先条件1、優先条件2、優先条件3の各条件のいずれもが成立しないことが明らかであるので、制御手段20は、3回前から今回に至る各制御状態の判断を行った後、そのままパターン2上昇(図13参照)に対応する処理を実行する。
図9に示すように、条件判断Zに続く各パターンの分岐処理が終わると、制御手段20は、その処理を上述したステップB70に進める。なお、本明細書においては、制御手段20の処理が上記各パターンの分岐処理のいずれにも進んだことがない状態で、制御手段20が実行する全ての処理のことを、まとめて「イニシャル処理」とも称する。
〈●平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア2にある場合〉
ステップB52からステップB56に至る各ステップにおいて、平滑化された貯水水位の最新データが上記水位エリア2(図6参照)にあると判定された場合、上述したように、制御手段20による処理はステップB58に進む。このステップB58において、制御手段20は、上述したステップB36で保存された、平滑化された貯水水位の時系列データを参照し、平滑化された貯水水位が水位エリア2に所定時間以上留まっているか否かを判定する。
図9に示すように、ステップB58において、制御手段20は、「Yes」と判定した場合はステップB60に進み、「No」と判定した場合は上述したステップB70に進む。
図9に示すステップB60において、制御手段20は、貯水水位補正量の現時点における値をストレージ(図示省略)に保存値Oとして出力してバックアップする。そして、制御手段20は、ステップB62に進む。
ステップB62において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の現時点における値をリセットして、この貯水水位補正量が上述した平滑化された貯水水位を較正する機能を発揮しないようにする。そして制御手段20は、ステップB64に進む。
ステップB64において、制御手段20は、後述する目標水位を上述した下側閾値水位に設定して、その処理をステップB66に進める。このステップB66は、図23に示すサブルーチン1を呼び出すものであり、取水手段14から取水路14Aへの水90Aの取水量を多くする調節制御を行った後にステップB68に進むステップである。上記調節制御は、本実施形態の放流量調節プログラムにおいては、図2および図3に示す制御信号20Bを制御手段20から開閉装置14Dに出力して取水手段14の開度a1を調節する開度調節ステップ(図23のステップS60)を実行するものである。ただし、上記調節制御における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。なお、本明細書において、「目標水位」とは、貯水施設10に貯水された水90Aの水位の制御における制御目標値となる水位のことをいう。
上述した各ステップによれば、貯水施設10の水位が上述した不感帯の範囲内において比較的高い水位エリア2に位置された状態が長期間続いているか否かを、ステップB58により判定することができる。そして、上述した各ステップによれば、貯水施設10の水位が長期間水位エリア2に位置されている場合に、取水手段14による水90Aの取水量を増やすことができる。ここで、貯水施設10の水位が長期間水位エリア2に位置されているということは、貯水施設10の水位がほとんど変動されない状態にあることを意味している。このため、水位の制御における制御目標値となる目標水位を上記下側閾値水位に設定することで、貯水施設10の水位を上記不感帯の範囲内に位置させながら、取水手段14による水90Aの取水量を可能な限り増やすことが可能となる。また、上述したステップB62によれば、平滑化された貯水水位が水位エリア2にあるときに実行される水位の制御について、この制御に上述した表1における「過去から現在に至る制御状態」の影響が及ぶことを回避することができる。
図9に示すように、ステップB68において、制御手段20は、ステップB60においてストレージ(図示省略)にバックアップされた貯水水位補正量の値である保存値Oを取得する。続いて、制御手段20は、上記ステップB62によってリセットされた貯水水位補正量の値を上記保存値Oの値に復元し、上述したステップB70に進む。ステップB60とステップB68とによれば、上述したステップB62において行われた貯水水位補正量のリセットの影響が、ステップB68の後に実行される各ステップの処理に及ぶことを回避することができる。
〈●条件判断Zにおいてパターン1低下に進むと判定された場合(図10)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン1低下に進むと判定された場合、図9および図10に示すように、制御手段20は、ステップS1D30に進む。
ステップS1D30において、制御手段20は、上記目標水位を上述した下側閾値水位に設定して、ステップS1D32に進む。
ステップS1D32において、制御手段20は、図23に示すサブルーチン1を呼び出して、取水手段14から取水路14Aへの水90Aの取水量を調節制御し、ステップS1D34に進む。このパターン1低下の調節制御は、平滑化された貯水水位が、中心水位よりも高い水位として前もって設定された上側閾値水位よりも高い水位エリア1(図6参照)にある場合に実行されるものである。また、上記パターン1低下の調節制御は、取水手段14の開度a1を大きくする調節を行って取水手段14の取水量を増やすことで貯水施設10に貯水された水90Aの水位を低下させ、この水位を下側閾値水位となるようにする制御である。すなわち、上記ステップS1D30とステップS1D32とをあわせたステップは、「下側閾値水位」と「低下目標水位」との違いを除いて、本発明における「水位低下制御ステップ」に対応する。なお、上記調節制御における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
ステップS1D34において、制御手段20は、ステップS1D32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を低下させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
上記各ステップによれば、河川90における水90Aの流入量が増加されて貯水施設10の水位が上昇した場合に、貯水施設10の水位が目標水位にまで低下されるように取水手段14の開度a1が調節されて、取水手段14からの取水量の増加が図られる。この際、上記目標水位は、中心水位よりも低い水位として設定されることで、取水手段14の開度a1をより大きくして、貯水施設10の水位をより急速に低下させることを実現させる。これにより、貯水施設10に対する水90Aの流入量の増加に対応している間に河川90において維持流量を超えて流下される水90Aの量を低減させ、より多量の水90Aを取水手段14から取水することが可能となる。また、上記目標水位を上記下側閾値水位に設定することで、上記目標水位を中心水位の近傍に位置させながら、上記目標水位をより低くすることができる可能性を見落とすことをなくすことが可能となる。
〈●条件判断Zにおいてパターン1上昇に進むと判定された場合(図11)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン1上昇に進むと判定された場合、図9および図11に示すように、制御手段20は、ステップS1U30に進む。
ステップS1U30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した上側閾値水位に設定して、ステップS1U32に進む。
ステップS1U32において、制御手段20は、図23に示すサブルーチン1を呼び出して、取水手段14から取水路14Aへの水90Aの取水量を調節制御し、ステップS1U34に進む。このパターン1上昇の調節制御は、平滑化された貯水水位が、中心水位よりも低い水位として前もって設定された下側閾値水位よりも低い水位エリア4(図6参照)にある場合に実行されるものである。また、上記パターン1上昇の調節制御は、取水手段14の開度a1を小さくする調節を行って取水手段14の取水量を減らすことで貯水施設10に貯水された水90Aの水位を上昇させ、この水位を上側閾値水位となるようにする制御である。すなわち、ステップS1U30とステップS1U32とをあわせたステップは、「上側閾値水位」と「上昇目標水位」との違いを除いて、本発明における「水位上昇制御ステップ」に対応する。なお、上記調節制御における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
ステップS1U34において、制御手段20は、ステップS1U32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を上昇させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
上記各ステップによれば、河川90における水90Aの流入量が減少されて貯水施設10の水位が低下した場合に、貯水施設10の水位が目標水位にまで上昇されるように取水手段14の開度a1が調節されて、河川90の水流量の確保が図られる。この際、目標水位は、中心水位よりも高い水位として設定されることで、取水手段14の開度a1をより小さくして、貯水施設10の水位をより急速に上昇させることを実現させる。これにより、河川90の維持流量を確保しながら貯水施設10に対する水90Aの流入量の減少に対応することができる、河川90の水位の設定をより低くして河川90の最小限度の水流量を絞り込み、河川90から取水することができる水流量を増やすことができる。また、上記目標水位を上記上側閾値水位に設定することで、上記目標水位を中心水位の近傍に位置させながら、上記目標水位をより高くすることができる可能性を見落とすことをなくすことができる。
〈●条件判断Zにおいてパターン2低下に進むと判定された場合(図12)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン2低下に進むと判定された場合、制御手段20は、図12に示すステップS2D10に進む。
ステップS2D10において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極小値から低下目標水位を引いた水位差である第1水位差を求める。そして、制御手段20は、ステップS2D12に進む。なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、上述した水位認識ステップ(図9参照)において平滑化されて認識された貯水水位の時系列データから水位極小値を抽出する。このため、本実施形態の放流量調節プログラムにおいて第1水位差を求めるために使用される最新の水位極小値は、1回前に実行された調節制御の後の平滑化された貯水水位のうち最も低い水位であるとみなすことができる。
ステップS2D12において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の値を直前のステップS2D10において求められた第1水位差の値に変更して、ステップS2D14に進む。
ステップS2D14において、制御手段20は、今回のステップS2D10において求められた第1水位差に係数U1をかけた積を貯水水位補正量の修正量Yとして求め、ステップS2D16に進む。ここで、係数U1は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用された、平滑化された貯水水位から低下目標水位を引いた第2水位差、および、今回のステップS2D10において求められた第1水位差に基づいて、制御手段20がステップS2D14において設定する係数である。具体的には、上記第1水位差が比較的大きい(例えば上記第2水位差の0.2倍以上となる)正の値となる場合は、制御手段20は、上記係数U1を1に設定する。また、上記第1水位差が比較的小さい(例えば上記第2水位差の0.2倍未満となる)正の値となる場合は、制御手段20は、上記係数U1を1よりも小さな正の値(例えば0.5)に設定することで、上記貯水水位補正量による上記平滑化された貯水水位の細やかな較正を実現させる。また、上記第1水位差が負の値となる場合(言いかえると平滑化された貯水水位が低下目標水位に対してオーバーシュートした場合)は、制御手段20は、上記係数U1を−1よりも小さな値(例えば−1.5)に設定する。これにより、制御手段20は、上記平滑化された貯水水位を上記オーバーシュートから迅速に脱することを可能とする水位に較正することを実現させる。
ステップS2D16において、制御手段20は、ステップS2D14において求められた貯水水位補正量の修正量Yを保存修正量Xとしてストレージ(図示省略)に保存し、ステップS2D18に進む。
ステップS2D18において、制御手段20は、ステップS2D14において求められた貯水水位補正量の修正量YをステップS2D12において変更された貯水水位補正量に足し合わせることでこの貯水水位補正量の修正を行い、ステップS2D30に進む。
ステップS2D30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した低下目標水位に設定し、ステップS2D32に進む。
ステップS2D32において、制御手段20は、図23に示すサブルーチン1を呼び出して、取水手段14から取水路14Aへの水90Aの取水量を調節制御する。このパターン2低下の調節制御は、平滑化された貯水水位が、中心水位よりも高い水位として前もって設定された上側閾値水位よりも高い水位エリア1(図6参照)にある場合に実行されるものである。また、上記パターン2低下の調節制御は、取水手段14の開度a1を大きくする調節を行って取水手段14の取水量を増やすことで貯水施設10に貯水された水90Aの水位を低下させ、この水位を低下目標水位となるようにする制御である。すなわち、ステップS2D30とステップS2D32とをあわせたステップは、本発明における「水位低下制御ステップ」に相当する。なお、上記調節制御における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。また、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS2D34に進む。
ところで、条件判断Zにおいてパターン2低下に進むと判定される条件は、表1に示すように、1回前に実行された水位を低下させる制御が今回も繰り返されてその繰り返し回数が1回以上となると判明しているという条件を含むものである。このため、ステップS2D10からステップS2D18に至る一連のステップが実行される条件は、本発明における「第1の条件設定」に相当する。また、ステップS2D10からステップS2D18に至る一連のステップによれば、上記水位低下制御ステップの前に、最新の水位極小値と低下目標水位との水位差に基づいて貯水水位補正量の修正が行われる。このため、ステップS2D10からステップS2D18に至る一連のステップは、本発明における「修正ステップ」かつ「第1の選択処理」に相当する。
ステップS2D34において、制御手段20は、ステップS2D32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を低下させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
〈●条件判断Zにおいてパターン2上昇に進むと判定された場合(図13)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン2上昇に進むと判定された場合、制御手段20は、図13に示すステップS2U10に進む。
ステップS2U10において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極大値を上昇目標水位から引いた水位差である第3水位差を求め、ステップS2U12に進む。なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、上述した水位認識ステップ(図9参照)において平滑化されて認識された貯水水位の時系列データから水位極大値を抽出する。このため、本実施形態の放流量調節プログラムにおいて第3水位差を求めるために使用される最新の水位極大値は、1回前に実行された調節制御の後の平滑化された貯水水位のうち最も高い水位であるとみなすことができる。
ステップS2U12において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の値を直前のステップS2U10において求められた第3水位差の値に変更し、ステップS2U14に進む。
ステップS2U14において、制御手段20は、今回のステップS2U10において求められた第3水位差に係数U2をかけた積を貯水水位補正量の修正量Yとして求め、ステップS2U16に進む。
なお、上記係数U2は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用された平滑化された貯水水位を上昇目標水位から引いた第4水位差および直前のステップS2U10において求められた第3水位差に基づいて、制御手段20がステップS2U14において設定する係数である。具体的には、上記第3水位差が比較的大きい(例えば上記第4水位差の0.2倍以上となる)正の値となる場合は、制御手段20は、上記係数U2を1に設定する。また、上記第3水位差が比較的小さい(例えば上記第4水位差の0.2倍未満となる)正の値となる場合は、制御手段20は、上記係数U2を1よりも小さな正の値(例えば0.5)に設定することで、上記貯水水位補正量による上記平滑化された貯水水位の細やかな較正を実現させる。また、上記第3水位差が負の値となる場合(言いかえると平滑化された貯水水位が上昇目標水位に対してオーバーシュートした場合)は、制御手段20は、上記係数U2を−1よりも小さな値(例えば−1.5)に設定する。これにより、制御手段20は、上記平滑化された貯水水位を上記オーバーシュートから迅速に脱することを可能とする水位に較正することを実現させる。
ステップS2U16において、制御手段20は、ステップS2U14において求められた貯水水位補正量の修正量Yを保存修正量Xとしてストレージ(図示省略)に保存し、ステップS2U18に進む。
ステップS2U18において、制御手段20は、ステップS2U14において求められた貯水水位補正量の修正量YをステップS2U12において変更された貯水水位補正量に足し合わせることでこの貯水水位補正量の修正を行い、ステップS2U30に進む。
ステップS2U30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した上昇目標水位に設定し、ステップS2U32に進む。
ステップS2U32において、制御手段20は、図23に示すサブルーチン1を呼び出して、取水手段14から取水路14Aへの水90Aの取水量を調節制御する。このパターン2上昇の調節制御は、平滑化された貯水水位が、中心水位よりも低い水位として前もって設定された下側閾値水位よりも低い水位エリア4(図6参照)にある場合に実行されるものである。また、上記パターン2上昇の調節制御は、取水手段14の開度a1を小さくする調節を行って取水手段14の取水量を減らすことで貯水施設10に貯水された水90Aの水位を上昇させ、この水位を上昇目標水位となるようにする制御である。すなわち、ステップS2U30とステップS2U32とをあわせたステップは、本発明における「水位上昇制御ステップ」に相当する。なお、上記調節制御における具体的な処理は後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。また、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS2U34に進む。
ところで、条件判断Zにおいてパターン2上昇に進むと判定される条件は、表1に示すように、1回前に実行された水位を上昇させる制御が今回も繰り返されてその繰り返し回数が1回以上となることになると判明しているという条件を含むものである。このため、上述したステップS2U10からステップS2U18に至る一連のステップが実行される条件は、本発明における「第2の条件設定」に相当する。また、上記ステップS2U10からステップS2U18に至る一連のステップによれば、上述した水位上昇制御ステップの前に、最新の水位極大値と上昇目標水位との水位差に基づいて貯水水位補正量の修正が行われる。このため、ステップS2U10からステップS2U18に至る一連のステップは、本発明における「修正ステップ」かつ「第2の選択処理」に相当する。
ステップS2U34において、制御手段20は、ステップS2U32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を上昇させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
〈●条件判断Zにおいてパターン3低下に進むと判定された場合(図14)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン3低下に進むと判定された場合、制御手段20は、図14に示すステップS3D10に進む。
ステップS3D10において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極小値から低下目標水位を引いた第1水位差を求め、ステップS3D14に進む。
ステップS3D14において、制御手段20は、直前のステップS3D10において求められた第1水位差に係数U1をかけた積を貯水水位補正量の修正量Yとして求め、ステップS3D16に進む。ここで、係数U1は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用された、平滑化された貯水水位から低下目標水位を引いた第2水位差、および、直前のステップS3D10において求められた第1水位差に基づいて、制御手段20がステップS3D14において設定する係数である。なお、係数U1の具体的な数値の設定方法については、図12におけるステップS2D14の処理にて説明した方法と同様であるので、説明を省略する。
ステップS3D16において、制御手段20は、ステップS3D14において求められた貯水水位補正量の修正量Yを保存修正量Xとしてストレージ(図示省略)に保存し、ステップS3D18に進む。
ステップS3D18において、制御手段20は、現時点における貯水水位補正量にステップS3D14において求められた貯水水位補正量の修正量Yを足し合わせることで、貯水水位補正量の修正を行い、ステップS3D30に進む。
ステップS3D30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した低下目標水位に設定し、ステップS3D32に進む。
ステップS3D32の処理は、図12におけるステップS2D32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS3D30とステップS3D32とをあわせたステップは、本発明における「水位低下制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS3D34に進む。
ところで、条件判断Zにおいてパターン3低下に進むと判定される条件は、表1に示すように、1回前に実行された水位を低下させる制御が今回も繰り返されてその繰り返し回数が1回以上となると判明しているという条件を含むものである。また、ステップS3D10からステップS3D18に至る一連のステップによれば、上記水位低下制御ステップの前に、最新の水位極小値と低下目標水位との水位差に基づいて貯水水位補正量の修正が行われる。すなわち、ステップS3D10からステップS3D18に至る一連のステップは、本発明における「修正ステップ」かつ「第1の選択処理」に相当する。そして、ステップS3D10からS3D18に至る一連のステップが実行される条件は、本発明における「第1の条件設定」に相当する。
ステップS3D34において、制御手段20は、ステップS3D32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を低下させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
〈●条件判断Zにおいてパターン3上昇に進むと判定された場合(図15)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン3上昇に進むと判定された場合、制御手段20は、図15に示すステップS3U10に進む。
ステップS3U10において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極大値を上昇目標水位から引いた水位差である第3水位差を求め、ステップS3U14に進む。
ステップS3U14において、制御手段20は、直前のステップS3U10において求められた第3水位差に係数U2をかけた積を貯水水位補正量の修正量Yとして求め、ステップS3U16に進む。ここで、上記係数U2は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用された平滑化された貯水水位を上昇目標水位から引いた第4水位差および直前のステップS3U10において求められた第3水位差に基づいて、制御手段20がステップS3U14において設定する係数である。なお、係数U2の具体的な数値の設定方法については、図13におけるステップS2U14の処理にて説明した方法と同様であるので、説明を省略する。
図15に示すように、ステップS3U16において、制御手段20は、上記ステップS3U14において求められた貯水水位補正量の修正量Yを保存修正量Xとしてストレージ(図示省略)に保存し、ステップS3U18に進む。
ステップS3U18において、制御手段20は、ステップS3U14において求められた貯水水位補正量の修正量YをステップS3U12において変更された貯水水位補正量に足し合わせることで、この貯水水位補正量の修正を行い、ステップS3U30に進む。
ステップS3U30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した上昇目標水位に設定し、ステップS3U32に進む。
ステップS3U32の処理は、図13におけるステップS2U32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS3U30とステップS3U32とをあわせたステップは、本発明における「水位上昇制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS3U34に進む。
ところで、条件判断Zにおいてパターン3上昇に進むと判定される条件は、表1に示すように、1回前に実行された水位を上昇させる制御が今回も繰り返されてその繰り返し回数が1回以上となると判明しているという条件を含むものである。このため、上述したステップS3U10からステップS3U18に至る一連のステップが実行される条件は、本発明における「第2の条件設定」に相当する。また、上記ステップS3U10からステップS3U18に至る一連のステップによれば、上述した水位上昇制御ステップの前に、最新の水位極大値と上昇目標水位との水位差に基づいて貯水水位補正量の修正が行われる。このため、ステップS3U10からステップS3U18に至る一連のステップは、本発明における「修正ステップ」かつ「第2の選択処理」に相当する。
ステップS3U34において、制御手段20は、ステップS3U32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を上昇させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
〈●条件判断Zにおいてパターン4低下に進むと判定された場合(図16)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン4低下に進むと判定された場合、制御手段20は、図16に示すステップS4D10に進む。
ステップS4D10において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極小値から低下目標水位を引いた第1水位差を求め、ステップS4D12に進む。このステップS4D12において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の現時点における値をストレージ(図示省略)にバックアップして、ステップS4D14に進む。
ステップS4D14において、制御手段20は、今回のステップS4D10において求められた第1水位差に係数U1をかけた積を貯水水位補正量の修正量Yとして求め、ステップS4D18に進む。ここで、係数U1は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用された平滑化された貯水水位から低下目標水位を引いた第2水位差および今回のステップS4D10において求められた第1水位差に基づいて、制御手段20がステップS4D14において設定する係数である。なお、係数U1の具体的な数値の設定方法については、図12におけるステップS2D14の処理にて説明した方法と同様であるので、説明を省略する。
ステップS4D18において、制御手段20は、ステップS4D14において求められた貯水水位補正量の修正量Yを現時点における貯水水位補正量に足し合わせることで、この貯水水位補正量の修正を行い、ステップS4D20に進む。
ステップS4D20において、制御手段20は、ストレージ(図示省略)に保存されたデータを参照して、2回前に実行された水位低下制御ステップの実行開始時刻t1と1回前に実行された水位低下制御ステップの実行開始時刻t2との時間間隔を第1の時間間隔T1として取得し、ステップS4D22に進む。すなわち、ステップS4D20は、本発明における「第1の時間間隔取得ステップ」に相当する。なお、第1の時間間隔取得ステップにおいて取得される第1の時間間隔T1と上記t1およびt2との関係は、図31に表すとおりである。
ステップS4D22において、制御手段20は、ストレージ(図示省略)に保存されたデータを参照して、1回前に実行された水位低下制御ステップの実行開始時刻t2と、今回繰り返されることになる水位低下制御ステップが実行開始される予定である時刻t3との間の時間間隔を、第2の時間間隔T2として推定し、ステップS4D24に進む。すなわち、ステップS4D22は、本発明における「第2の時間間隔推定ステップ」に相当する。なお、第2の時間間隔取得ステップにおいて取得される第2の時間間隔T2と上記t2およびt3との関係は、図31に表すとおりである。ただし、図31において、「パターン4低下の処理の開始時刻」は、上記t3よりも前の時刻であることを明りょうにするため、上記t3との間の時間間隔を誇張させて描いている。また、ステップS4D22において、制御手段20は、上記t3を、ストレージ(図示省略)に前もって記憶された各ステップの処理時間のデータと現在時刻とから算定して推定する。
ステップS4D24において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の値を、今回の第2の時間間隔推定ステップにおいて推定された第2の時間間隔T2および今回の第1の時間間隔取得ステップにおいて取得された第1の時間間隔T1に基づいて修正する。この修正は、上記t3と次回に水位低下制御ステップが実行開始されると推定される時刻t4との時間間隔T3(図31参照)が第1の時間間隔T1に一致されるように、今回繰り返されることになる水位低下制御ステップで使用される貯水水位補正量の値を設定するものである。ただし、上記修正においては、水位低下制御ステップおよび上記t2から上記t3までの間における外乱の時間変化が、それぞれt3以降において同様に繰り返されることを大前提としている。言いかえると、制御手段20は、貯水水位補正量を第2の時間間隔T2と第1の時間間隔T1との比に基づいて修正して設定する。すなわち、ステップS4D24は、本発明における「設定ステップ」に相当する。そして制御手段20は、ステップS4D26に進む。
なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、ステップS4D24において、貯水水位補正量を、今回の第1の時間間隔取得ステップにおいて取得された第1の時間間隔T1および今回の第2の時間間隔推定ステップにおいて推定された第2の時間間隔T2に基づいて、以下のように修正して設定する。すなわち、貯水水位補正量の値は、[(第1の時間間隔T1)÷(第2の時間間隔T2)−1]×[(上側閾値水位)−(ステップB40において抽出された最新の水位極小値)]=(積E)の値に修正されて設定される。この設定は、貯水施設10に対する水90Aの流入量が比較的定常的に変化を続けている漸次変化状態にある場合に、上述した第1の発明を実現する制御(図7および図8を参照)を実行すると、平滑化された貯水水位が一定のパターンで時間変化するという知見に基づいてなされるものである。すなわち、例えば貯水施設10に対する水90Aの流入量が比較的定常的に増加し続けている漸次変化状態(図24および図27を参照)においては、平滑化された貯水水位91のグラフ(図26、図29、および、図30を参照)は、下に凸となる複数のカーブを連続させた形状となる。ここで、上記各カーブは、互いに相似しているとみなせるほどその形状が似ているものである。このため、1回前に実行された水位低下制御ステップにおいて貯水水位補正量として上記積Eと等しい値を使用すると、近似的に第2の時間間隔T2(これは上記時間間隔T3に等しい。)と第1の時間間隔T1とが一致される。この処理によれば、ステップS4D24における制御手段20の計算量を減らすことが可能となる。なお、上述した知見は、本発明者が上記第1の発明の効果を検証した検証実験の実験データ(図示省略)を解析することで、本発明者が新しく発見した知見である。
ステップS4D26において、制御手段20は、ステップS4D24によって修正されて設定された貯水水位補正量と、ステップS4D12によってバックアップされた貯水水位補正量とを比較する。ついで、制御手段20は、ステップS4D14からステップS4D24に至る一連のステップによる貯水水位補正量の総修正量Wを求め、ステップS4D28に進む。
ステップS4D28において、制御手段20は、直前のステップS4D26において求められた総修正量Wを保存修正量Xとしてストレージ(図示省略)に保存し、ステップS4D30に進む。
ステップS4D30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した低下目標水位に設定し、ステップS4D32に進む。
ステップS4D32の処理は、図12におけるステップS2D32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS4D30とステップS4D32とをあわせたステップは、本発明における「水位低下制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS4D34に進む。
ところで、条件判断Zにおいてパターン4低下に進むと判定される条件は、表1に示すように、1回前に実行された水位を低下させる制御が今回も繰り返されてその繰り返し回数が1回以上となると判明しているという条件を含むものである。このため、ステップS4D10からステップS4D28に至る一連のステップが実行される条件は、本発明における「第1の条件設定」に相当する。また、ステップS4D10からステップS4D28に至る一連のステップによれば、上記水位低下制御ステップの前に、最新の水位極小値と低下目標水位との水位差に基づいて貯水水位補正量の修正が行われる。このため、ステップS4D10からステップS4D28に至る一連のステップは、本発明における「修正ステップ」かつ「第1の選択処理」に相当する。
ステップS4D34において、制御手段20は、ステップS4D32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を低下させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
ところで、ステップS4D10からステップS4D28に至る一連のステップは、表1に示すように、以下の条件設定が満たされる場合に実行される。この条件設定は、今回繰り返されることになる水位低下制御ステップがこの水位低下制御ステップの繰り返しにおいてこの繰り返しが始まってから3回目以降に実行される水位低下制御ステップとなると判明し、かつ、上述した優先条件1が成立するという条件設定である。この条件設定は、本発明における「第3の条件設定」に相当する。上記条件設定が満たされる場合、貯水施設10に対する水90Aの流入量は比較的(水位低下制御ステップを3回以上繰り返す必要がある程度に)定常的な増加を続けている漸次変化状態にあり、かつ、貯水水位補正量を修正する必要があることになる。
すなわち、上記一連のステップによれば、上記条件設定が満たされる場合に、以下の処理が可能となる。この処理は、今回水位低下制御ステップが実行されてからその次に水位低下制御ステップが実行されるまでの間における貯水施設10への水90Aの平均流入量と貯水施設10から流出される水90Aの流量とを一致させる処理である。これにより、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動により的確に対応して、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能な、貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法を提供することができる。
〈●条件判断Zにおいてパターン4上昇に進むと判定された場合(図17)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン4上昇に進むと判定された場合、制御手段20は、図17に示すステップS4U10に進む。
ステップS4U10において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極大値を上昇目標水位から引いた水位差である第3水位差を求め、ステップS4U12に進む。
ステップS4U12において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の現時点における値をストレージ(図示省略)にバックアップして、ステップS4U14に進む。
ステップS4U14において、制御手段20は、今回のステップS4U10において求められた第3水位差に係数U2をかけた積を貯水水位補正量の修正量Yとして求め、ステップS4U18に進む。ここで、上記係数U2は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用された平滑化された貯水水位を上昇目標水位から引いた第4水位差および今回のステップS4U10において求められた第3水位差に基づいて、制御手段20がステップS4U14において設定する係数である。なお、係数U2の具体的な数値の設定方法については、図13におけるステップS2U14の処理にて説明した方法と同様であるので、説明を省略する。
ステップS4U18において、制御手段20は、ステップS4U14において求められた貯水水位補正量の修正量Yを現時点における貯水水位補正量に足し合わせることで、この貯水水位補正量の修正を行い、ステップS4U20に進む。
ステップS4U20において、制御手段20は、ストレージ(図示省略)に保存されたデータを参照して、2回前に実行された水位上昇制御ステップの実行開始時刻t5と1回前に実行された水位上昇制御ステップの実行開始時刻t6との時間間隔を第1の時間間隔T1として取得し、ステップS4U22に進む。すなわち、ステップS4U20は、本発明における「第1の時間間隔取得ステップ」に相当する。なお、第1の時間間隔取得ステップにおいて取得される第1の時間間隔T1と上記t5およびt6との関係は、図32に表すとおりである。
ステップS4U22において、制御手段20は、ストレージ(図示省略)に保存されたデータを参照して、1回前に実行された水位上昇制御ステップの実行開始時刻t6と、今回繰り返されることになる水位上昇制御ステップが実行開始される予定である時刻t7との間の時間間隔を、第2の時間間隔T2として推定し、ステップS4U24に進む。すなわち、ステップS4U22は、本発明における「第2の時間間隔推定ステップ」に相当する。なお、第2の時間間隔取得ステップにおいて取得される第2の時間間隔T2と上記t6およびt7との関係は、図32に表すとおりである。ただし、図32において、「パターン4上昇の処理の開始時刻」は、上記t7よりも前の時刻であることを明りょうにするため、上記t7との間の時間間隔を誇張させて描いている。また、ステップS4U22において、制御手段20は、上記t7を、ストレージ(図示省略)に前もって記憶された各ステップの処理時間のデータと現在時刻とから算定して推定する。
ステップS4U24において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の値を、今回の第2の時間間隔推定ステップにおいて推定された第2の時間間隔T2および今回の第1の時間間隔取得ステップにおいて取得された第1の時間間隔T1に基づいて修正する。この修正は、上記t7と次回に水位上昇制御ステップが実行開始されると推定される時刻t8との時間間隔T3(図31参照)が第1の時間間隔T1に一致されるように、今回繰り返されることになる水位上昇制御ステップで使用される貯水水位補正量の値を設定するものである。ただし、上記修正においては、水位上昇制御ステップおよび上記t6から上記t7までの間における外乱の時間変化が、それぞれt7以降において同様に繰り返されることを大前提としている。言いかえると、制御手段20は、貯水水位補正量を第2の時間間隔T2と第1の時間間隔T1との比に基づいて修正して設定する。すなわち、ステップS4U24は、本発明における「設定ステップ」に相当する。そして制御手段20は、ステップS4U26に進む。
なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、ステップS4U24において、貯水水位補正量を、今回の第1の時間間隔取得ステップにおいて取得された第1の時間間隔T1および今回の第2の時間間隔推定ステップにおいて推定された第2の時間間隔T2に基づいて、以下のように修正して設定する。すなわち、貯水水位補正量の値は、[(第1の時間間隔T1)÷(第2の時間間隔T2)−1]×[(上側閾値水位)−(ステップB40において抽出された最新の水位極大値)]=(積e)の値に修正されて設定される。この設定は、貯水施設10に対する水90Aの流入量が比較的定常的に変化を続けている漸次変化状態にある場合に、上述した第1の発明を実現する制御(図7および図8を参照)を実行すると、平滑化された貯水水位が一定のパターンで時間変化するという知見に基づいてなされるものである。この知見については上述したので、ここではその詳細な説明を省略する。
ステップS4U26において、制御手段20は、ステップS4U24によって修正されて設定された貯水水位補正量と、ステップS4U12によってバックアップされた貯水水位補正量とを比較する。ついで、制御手段20は、ステップS4U14からステップS4U24に至る一連のステップによる貯水水位補正量の総修正量Wを求め、ステップS4D28に進む。
ステップS4U28において、制御手段20は、直前のステップS4U26において求められた総修正量Wを保存修正量Xとしてストレージ(図示省略)に保存し、ステップS4U30に進む。
ステップS4U30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した上昇目標水位に設定して、ステップS4U32に進む。
ステップS4U32の処理は、図13におけるステップS2U32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS4U30とステップS4U32とをあわせたステップは、本発明における「水位上昇制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS4U34に進む。
ステップS4U34において、制御手段20は、今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を上昇させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
ところで、条件判断Zにおいてパターン4上昇に進むと判定される条件は、表1に示すように、1回前に実行された水位を上昇させる制御が今回も繰り返されてその繰り返し回数が1回以上となると判明しているという条件を含むものである。このため、ステップS4U10からステップS4U28に至る一連のステップが連続して実行される条件は、本発明における「第2の条件設定」に相当する。また、ステップS4U10からステップS4U28に至る一連のステップによれば、上記水位上昇制御ステップの前に、最新の水位極大値と上昇目標水位との水位差に基づいて貯水水位補正量の修正が行われる。このため、ステップS4U10からステップS4U28に至る一連のステップは、本発明における「修正ステップ」かつ「第2の選択処理」に相当する。
また、ステップS4U10からステップS4U28に至る一連のステップは、表1に示すように、以下の条件設定が満たされる場合に実行される。この条件設定は、今回繰り返されることになる水位上昇制御ステップがこの水位上昇制御ステップの繰り返しにおいてこの繰り返しが始まってから3回目以降に実行される水位上昇制御ステップとなると判明し、かつ、上述した優先条件1が成立するという条件設定である。この条件設定は、本発明における「第3の条件設定」に相当する。上記条件設定が満たされる場合、貯水施設10に対する水90Aの流入量は比較的(水位上昇制御ステップを3回以上繰り返す必要がある程度に)定常的な減少を続けている漸次変化状態にあり、かつ、貯水水位補正量を修正する必要があることになる。すなわち、上記一連のステップによれば、上記条件設定が満たされる場合に、以下の処理が可能となる。この処理は、今回水位上昇制御ステップが実行されてからその次に水位上昇制御ステップが実行されるまでの間における貯水施設10への水90Aの平均流入量と貯水施設10から流出される水90Aの流量とを一致させる処理である。これにより、貯水施設10への水90Aの流入量の変動により的確に対応して、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能な、貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法を提供することができる。
〈●条件判断Zにおいてパターン6低下に進むと判定された場合(図20)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン6低下に進むと判定された場合、制御手段20は、図20に示すステップS6D10に進む。
ステップS6D10において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極小値から低下目標水位を引いた水位差である第1水位差を求め、ステップS6D12に進む。
ステップS6D12において、制御手段20は、貯水水位補正量の現時点における値を上述したストレージに保存値Kとして出力してバックアップして、ステップS6D14に進む。ここで、上記保存値Kは図18に示すステップS5D10あるいは図19に示すステップS5U10においてのみ取得されて使用されるものであるので、ここではその詳細な説明を省略する。
ステップS6D14において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の値を今回のステップS6D10において求められた第1水位差の値に変更し、ステップS6D30に進む。
ステップS6D30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した低下目標水位に設定し、ステップS6D32に進む。
ステップS6D32の処理は、図12におけるステップS2D32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS6D30とステップS6D32とをあわせたステップは、本発明における「水位低下制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS6D34に進む。
ステップS6D34において、制御手段20は、ステップS6D32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を低下させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
〈●条件判断Zにおいてパターン6上昇に進むと判定された場合(図21)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン6上昇に進むと判定された場合、制御手段20は、図21に示すステップS6U10に進む。
ステップS6U10において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極大値を上昇目標水位から引いた水位差である第3水位差を求め、ステップS6U12に進む。
ステップS6U12において、制御手段20は、貯水水位補正量の現時点における値を上述したストレージに保存値Kとして出力してバックアップして、ステップS6U14に進む。ここで、上記保存値KはステップS5D10(図18参照)あるいはステップS5U10(図19参照)においてのみ取得されて使用されるものであるので、ここではその詳細な説明を省略する。
ステップS6U14において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の値を今回のステップS6U10において求められた第3水位差の値に変更し、ステップS6U30に進む。
ステップS6U30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した上昇目標水位に設定し、ステップS6U32に進む。
ステップS6U32の処理は、図13におけるステップS2U32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS6U30とステップS6U32とをあわせたステップは、本発明における「水位上昇制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS6U34に進む。
ステップS6U34において、制御手段20は、ステップS6U32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を上昇させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
〈●条件判断Zにおいてパターン5低下に進むと判定された場合(図18)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン5低下に進むと判定された場合、制御手段20は、図18に示すステップS5D10に進む。
ステップS5D10において、制御手段20は、ストレージ(図示省略)に最後にバックアップされた保存値Kを取得して、ステップS5D12に進む。ここで、条件判断Zからパターン5低下に進む場合、表1に示すように、1回前の制御ステップ開始タイミングにはパターン6上昇の水位上昇制御ステップ(図21参照)が、2回前および3回前の制御ステップ開始タイミングには水位低下制御ステップが開始される。すなわち、ステップS5D10で取得される保存値Kは、1回前のステップS6U12においてバックアップされた貯水水位補正量であり、2回前の制御ステップ開始タイミングの水位上昇制御ステップにおいて使用された貯水水位補正量と等しいということができる。言いかえると、ステップS5D10で取得される保存値Kは、水位低下制御ステップが連続して実行された後に水位上昇制御ステップが実行されることになった時点における貯水水位補正量の値に等しいということができる。
ステップS5D12において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の値を上記保存値Kの値に変更し、ステップS5D14に進む。これにより、制御手段20は、1回前のパターン6上昇の分岐(図21参照)において実行された貯水水位補正量の修正(具体的にはステップS6U14による貯水水位補正量の変更)を取り消す。
ステップS5D14において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極小値から低下目標水位を引いた水位差である第1水位差を求め、ステップS5D16に進む。なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、上述した水位認識ステップ(図9参照)において認識された平滑化された貯水水位の時系列データから水位極小値を抽出する。このため、ステップS5D14において第1水位差を求めるために使用される最新の水位極小値は、1回前の制御ステップ開始タイミングにおいて下側閾値水位を下回っている、平滑化された貯水水位であるとみなすことができる。
ステップS5D16において、制御手段20は、直前のステップS5D14において求められた第1水位差に係数U1をかけた積を貯水水位補正量の修正量Yとして求め、ステップS5D18に進む。ここで、係数U1は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用された平滑化された貯水水位から低下目標水位を引いた水位差である第2水位差および直前のステップS5D14において求められた第1水位差に基づいて、制御手段20がステップS5D16において設定する係数である。なお、係数U1の具体的な数値の設定方法については、図12におけるステップS2D14の処理にて説明した方法と同様であるので、説明を省略する。
ステップS5D18において、制御手段20は、現時点における貯水水位補正量にステップS5D16において求められた貯水水位補正量の修正量Yを足し合わせることで、貯水水位補正量の修正を行い、ステップS5D30に進む。
ステップS5D30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した低下目標水位に設定し、ステップS5D32に進む。
ステップS5D32の処理は、図12におけるステップS2D32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS5D30とステップS5D32とをあわせたステップは、本発明における「水位低下制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS5D34に進む。
ステップS5D34において、制御手段20は、ステップS5D32による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を低下させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
上述した各ステップによれば、水位低下制御ステップが繰り返されている中で水位上昇制御ステップが1回だけ実行された場合(表1に示すように、3回前の制御状態と2回前の制御状態と今回の制御状態が「水位を低下させる制御を実行した」であり、1回前の制御状態が「水位を上昇させる制御を実行した」である場合)に、上記水位上昇制御ステップに応じて変更された貯水水位補正量が、以降の貯水水位補正量に影響しないようにすることができる。これにより、水位極小値と低下目標水位との水位差が0になるように水位低下制御ステップを繰り返す中で貯水水位が下側閾値水位を下回った場合に、その影響が次に行われる水位低下制御ステップに及ぶことを回避して、水位をより安定的に制御することができる。
〈●条件判断Zにおいてパターン5上昇に進むと判定された場合(図19)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン5上昇に進むと判定された場合、制御手段20は、図19に示すステップS5U10に進む。
ステップS5U10において、制御手段20は、上述したストレージ(図示省略)に最後にバックアップされた保存値Kを取得して、ステップS5D12に進む。ここで、条件判断Zからパターン5上昇に進む場合、表1に示すように、1回前の制御ステップ開始タイミングにはパターン6低下の水位低下制御ステップ(図20参照)が、2回前および3回前の制御ステップ開始タイミングには水位上昇制御ステップが開始される。すなわち、ステップS5U10で取得される保存値Kは、1回前のステップS6D12においてバックアップされた貯水水位補正量であり、2回前の制御ステップ開始タイミングの水位低下制御ステップにおいて使用された貯水水位補正量と等しいということができる。言いかえると、ステップS5U10で取得される保存値Kは、水位上昇制御ステップが連続して実行された後に水位低下制御ステップが実行されることになった時点における貯水水位補正量の値に等しいということができる。
ステップS5U12において、制御手段20は、上述した貯水水位補正量の値を上記保存値Kの値に変更し、ステップS5U14に進む。これにより、制御手段20は、1回前のパターン6低下の分岐(図20参照)において実行された貯水水位補正量の修正(具体的にはステップS6D14による貯水水位補正量の変更)を取り消す。
ステップS5U14において、制御手段20は、図9に示すステップB40において抽出された最新の水位極大値を上昇目標水位から引いた水位差である第3水位差を求め、ステップS5U16に進む。なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、上述した水位認識ステップ(図9参照)において認識された平滑化された貯水水位の時系列データから水位極大値を抽出する。このため、ステップS5U14において第3水位差を求めるために使用される最新の水位極大値は、1回前の制御ステップ開始タイミングにおいて上側閾値水位を上回っている、平滑化された貯水水位であるとみなすことができる。
ステップS5U16において、制御手段20は、直前のステップS5U14において求められた第3水位差に係数U2をかけた積を貯水水位補正量の修正量Yとして求め、ステップS5U18に進む。ここで、上記係数U2は、今回の条件判断Z(図9におけるステップB80)において使用された平滑化された貯水水位を上昇目標水位から引いた水位差である第4水位差および直前のステップS5D14において求められた第3水位差に基づいて、制御手段20がステップS5U16において設定する係数である。なお、係数U2の具体的な数値の設定方法については、図13におけるステップS2U14の処理にて説明した方法と同様であるので、説明を省略する。
ステップS5U18において、制御手段20は、現時点における貯水水位補正量にステップS5U16において求められた貯水水位補正量の修正量Yを足し合わせることで、貯水水位補正量の修正を行い、ステップS5U30に進む。
ステップS5U30において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した上昇目標水位に設定し、ステップS5U32に進む。
ステップS5U32の処理は、図13におけるステップS2U32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS5U30とステップS5U32とをあわせたステップは、本発明における「水位上昇制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS5U34に進む。
ステップS5U34において、制御手段20は、今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を上昇させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
上述した各ステップによれば、水位上昇制御ステップが繰り返されている中で水位低下制御ステップが1回だけ実行された場合(表1に示すように、3回前の制御状態と2回前の制御状態と今回の制御状態が「水位を上昇させる制御を実行した」であり、1回前の制御状態が「水位を低下させる制御を実行した」である場合)に、上記水位低下制御ステップに応じて変更された貯水水位補正量が、以降の貯水水位補正量に影響しないようにすることができる。これにより、水位極大値と上昇目標水位との水位差が0になるように水位上昇制御ステップを繰り返す中で貯水水位が上側閾値水位を上回った場合に、その影響が次に行われる水位上昇制御ステップに及ぶことを回避して、水位をより安定的に制御することができる。
〈●条件判断Zにおいてパターン7に進むと判定された場合(図22)〉
上述した条件判断Z(図9におけるステップB80)においてパターン7に進むと判定された場合、制御手段20は、図22に示すステップS710に進む。
ステップS710において、制御手段20は、条件判断Zからパターン7に進むことが連続しているか否かを判定する。制御手段20は、「No」であると判定された場合はステップS714に進み、「Yes」であると判定された場合はステップS712に進む。
ここで、制御手段20は、表2を用いて上述したように、第5水位差あるいは第6水位差の絶対値の大きさが第3所定値よりも小さい場合には貯水水位補正量を変える必要はないと判断する。このため、制御手段20の処理がステップS710に進むのは、水位低下制御ステップおよび水位上昇制御ステップのうち一方のステップのみが3回以上繰り返されることになると判明し、かつ、貯水水位補正量を修正する必要がない場合である。また、ステップS710において制御手段20が「No」の判定結果を出すのは、上記一方のステップの繰り返しにおいて初めて貯水水位補正量を修正する必要がなくなった場合である。また、ステップS710において制御手段20が「Yes」の判定結果を出すのは、上記一方のステップの繰り返しにおいて貯水水位補正量を修正する必要がない状態が続いている場合である。
ステップS714において、制御手段20は、ストレージ(図示省略)に最後に保存された保存修正量Xを取得し、ステップS716に進む。
ステップ716において、制御手段20は、ステップS714において取得された保存修正量Xに基づいて、貯水水位補正量の微調整量Vの設定を行い、ステップS718に進む。なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、制御手段20は、ステップS716において、ステップS714において取得された保存修正量Xに1未満の正の数(例えば0.5)をかけた積を求め、この積を貯水水位補正量の微調整量Vとして設定する。
ステップS718において、制御手段20は、現時点における貯水水位補正量に貯水水位補正量の微調整量Vを足し合わせることで、貯水水位補正量の微調整を行い、ステップS720に進む。
なお、制御手段20の処理がステップS710からステップS712に進んだ場合は、制御手段20は、貯水水位補正量の微調整量Vを0に設定し、ステップS718に進む。
上記各ステップによれば、水位低下制御ステップおよび水位上昇制御ステップの一方のみが3回以上繰り返されることになると判明しており(表1に示す2回前から今回に至る各制御状態が全て「水位を上昇させる制御を実行した」であるか全て「水位を低下させる制御を実行した」であるかであり)、かつ、この繰り返しにおいて初めて貯水水位補正量を修正する必要がなくなった場合に、この貯水水位補正量を微調整する。これにより、貯水水位補正量の最適値の精度を高くすることが可能となる。また、ステップS710からステップS718までの間の各ステップによれば、上記微調整は、水位低下制御ステップおよび水位上昇制御ステップのうち、今回繰り返されることになる一方(後述するステップS730、S732、S740、S742を参照)を実行する前に行われる。このため、ステップS710からステップS718までの間の各ステップをあわせたステップは、本発明における「修正ステップ」に相当する。
ステップS720において、制御手段20は、平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア1に位置されているか否かを判定し、「Yes」と判定した場合はステップS730に進み、「No」と判定した場合はステップ740に進む。ここで、ステップS720は、図9および図22に示すように、平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア1あるいは水位エリア4のいずれか(図6参照)に位置されている場合のみに実行されるステップである。すなわち、ステップS720の判定結果が「No」となるのは、平滑化された貯水水位の最新データが水位エリア4に位置されている場合である。
ステップS730において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した低下目標水位に設定し、ステップS732に進む。
ステップS732の処理は、図12におけるステップS2D32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS730とステップS732とをあわせたステップは、本発明における「水位低下制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS734に進む。
ステップS734において、制御手段20は、ステップS732による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を低下させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
ステップS740において、制御手段20は、上述した目標水位を上述した上昇目標水位に設定し、ステップS742に進む。
ステップS742の処理は、図13におけるステップS2U32の調節制御と同様であるので、説明を省略する。ここで、ステップS740とステップS742とをあわせたステップは、本発明における「水位上昇制御ステップ」に相当する。なお、制御手段20は、上記調節制御の後にステップS744に進む。
ステップS744において、制御手段20は、ステップS742による今回の調節制御(すなわち図23のステップS60)の開始時刻と、この時刻において水位を上昇させようとしたことと、を対応させてストレージ(図示省略)に保存し、図9に示すステップB70に進む。なお、上記調節制御の開始時刻は、以下においては「制御ステップ開始タイミング」とも称する。
上述した各ステップによれば、水位低下制御ステップあるいは水位上昇制御ステップのいずれか一方のみが繰り返されることになる場合(表1に示す1回前から今回に至る各制御状態が全て「水位を上昇させる制御を実行した」であるか全て「水位を低下させる制御を実行した」であるかとなる場合)に、以下の処理が可能となる。この処理は、取水手段14の開度a1の調節量を決定する水位を較正して、繰り返される制御を水位の変動に対応したものにする処理である。これにより、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動に対応しきれていない状態が長期間続くことを回避して、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能な貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法を提供することができる。
〈●各水位低下制御ステップの効果〉
以上、図12にて説明した「パターン2低下」処理、図14にて説明した「パターン3低下」処理、図16にて説明した「パターン4低下」処理、図20にて説明した「パターン6低下」処理、図18にて説明した「パターン5低下」処理、図22にて説明した「パターン7」におけるステップS730、S732における水位低下制御ステップ、の各ステップによれば、河川90における水90Aの流入量が増加されて平滑化された貯水水位が上述した上側閾値水位を超えて上昇した場合に、貯水施設10の水位の低下が実現される。すなわち、制御手段20は、貯水水位が低下目標水位にまで低下されるように取水手段14の開度a1を大きくする調節を行うことで、取水手段14からの取水量の増加を図る。この際、上記低下目標水位は、上記中心水位よりも低い水位として設定されることで、取水手段14の開度a1をより大きくして、貯水施設10の水位をより急速に低下させることを制御手段20に実現させる。これにより、貯水施設10に対する水90Aの流入量の増加に対応している間に河川90において維持流量を超えて流下される水90Aの量を低減させ、より多量の水90Aを取水手段14から取水することが可能となる。
以上、図12にて説明した「パターン2低下」処理、図14にて説明した「パターン3低下」処理、図16にて説明した「パターン4低下」処理、の各ステップによれば、上述した水位低下制御ステップのみが繰り返されることになる場合(表1に示す1回前から今回に至る各制御状態が全て「水位を低下させる制御を実行した」である場合)に、取水手段14の開度a1の調節量を決定する水位を較正して、繰り返される制御を水位の変動に対応したものにすることができる。そして、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動に対応しきれていない状態が長期間続くことを回避して、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能な貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法を提供することができる。
以上、図12にて説明した「パターン2低下」処理、図14にて説明した「パターン3低下」処理、図16にて説明した「パターン4低下」処理、の各ステップによれば、図1に示す貯水施設10に対する水90Aの流入量が変動した場合に、この変動の影響を相殺して貯水施設10に貯水された水90Aの水位を中心水位の近傍(図6参照)に位置させる貯水水位補正量を設定することができる。これにより、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動により的確に対応して、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能となる。
〈●各水位上昇制御ステップの効果〉
以上、図13にて説明した「パターン2上昇」処理、図15にて説明した「パターン3上昇」処理、図17にて説明した「パターン4上昇」処理、図21にて説明した「パターン6上昇」処理、図19にて説明した「パターン5上昇」処理、図22にて説明した「パターン7」におけるステップS740、S742における水位上昇制御ステップ、の各ステップによれば、河川90における水90Aの流入量が減少されて平滑化された貯水水位が上述した下側閾値水位を下回るまで低下した場合に、貯水施設10の水位の上昇が実現される。すなわち、制御手段20は、貯水水位が上昇目標水位にまで上昇されるように取水手段14の開度a1を小さくする調節を行い、河川90の水流量の確保を図る。この際、上記上昇目標水位を上記中心水位以上の位置に位置された水位として設定するので、制御手段20は、貯水施設10の水位の制御目標を中心水位(図6参照)として取水手段14の開度a1を調節する場合と比べて、取水手段14の開度a1をより小さくして、貯水施設10の水位をより急速に上昇させることが可能となる。これにより、河川90の維持流量を確保しながら貯水施設10に対する水90Aの流入量の減少に対応することができる、河川90の水位の設定をより低くして河川90の最小限度の水流量を絞り込み、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能となる。言いかえると、図6に示す下側閾値水位をより低く設定して理想水位に近づけ、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能となる。
ここで、上記の各ステップの実行に際しては、図6に示すように、低下目標水位と中心水位との水位差である第2所定値は、上昇目標水位と中心水位との水位差である第1所定値よりも大きく設定される。この設定によれば、河川90の維持流量の確保を実現させながら、この維持流量の確保を考える必要がない状態(具体的には例えば豊水状態)においてより多量の水90Aを取水することが可能となる。
以上、図13にて説明した「パターン2上昇」処理、図15にて説明した「パターン3上昇」処理、図17にて説明した「パターン4上昇」処理、の各ステップによれば、上述した水位上昇制御ステップのみが繰り返されることになる場合(表1に示す1回前から今回に至る各制御状態が全て「水位を上昇させる制御を実行した」である場合)に、取水手段14の開度a1の調節量を決定する水位を較正して、繰り返される制御を水位の変動に対応したものにすることができる。そして、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動に対応しきれていない状態が長期間続くことを回避して、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能な貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法を提供することができる。
以上、図13にて説明した「パターン2上昇」処理、図15にて説明した「パターン3上昇」処理、図17にて説明した「パターン4上昇」処理、の各ステップによれば、図1に示す貯水施設10に対する水90Aの流入量が変動した場合に、この変動の影響を相殺して貯水施設10に貯水された水90Aの水位を中心水位の近傍(図6参照)に位置させる貯水水位補正量を設定することができる。これにより、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動により的確に対応して、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能となる。
〈●調節制御の詳細(図23のサブルーチン1)〉
取水手段14から取水路14Aへの水90Aの取水量を調節制御するサブルーチン1においては、図23に示すように、制御手段20は、まず、ステップS10に進む。このステップS10において、制御手段20は、ストレージ(図示省略)に保存されている種々のデータを引数として取得し、後述するサブルーチン1の各ステップを実行するために必要となる初期設定を行った後、ステップS20に進む。この初期設定においては、制御手段20によって今回認識された平滑化された取水下流水位および平滑化された貯水水位(すなわち最新データ)と、現時点で設定されている目標水位および貯水水位補正量と、を含む複数のパラメータが、制御手段20に取得されて設定される。
ステップS20において、制御手段20は、まず、ステップS10において取得された貯水水位補正量を同じくステップS10において取得された平滑化された貯水水位に足し合わせることで、この平滑化された貯水水位を制御手段20の制御において使用される水位に補正(すなわち較正)する。これにより、上述した水位低下制御ステップあるいは水位上昇制御ステップのいずれか一方のみが繰り返されることになる場合に、取水手段14の開度a1の調節量を決定する水位を較正して、繰り返される制御を水位の変動に対応したものにすることができる。そして、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動に対応しきれていない状態が長期間続くことを回避して、河川90から取水することができる水流量を増やすことが可能な貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法を提供することができる。なお、本明細書においては、ステップS20において貯水水位補正量と平滑化された貯水水位とを足し合わせた較正後の水位のことを「補正後貯水水位」とも称する。
ところで、水位測定装置11Aは、図2に示すように、えん堤排砂門12にせき止められた河川90において取水路14Aの底よりも水深が深い場所に設置されている。このため、上記補正後貯水水位は、取水手段14において水90Aの取水が行われる水位(すなわち本発明における「取水水位」)に対応する水位となる。また、制御手段20は、ステップS20を実行した後にステップS40に進む。
このステップS40において、制御手段20は、貯水施設10に貯水された水90Aの水位が上記補正後貯水水位からステップS10で取得された目標水位に変化した場合に、上記取水水位が変化される変化量を取水水位変化量として導出する。すなわち、ステップS40は、本発明における「取水水位変化量導出ステップ」に相当する。
ここで、上記取水水位は、図3に示す水位H1であり、取水路14Aにおいて取水手段14が設けられている部分の底の高さを基準にした貯水施設10の水位である。このため、本実施形態の放流量調節プログラムにおける取水水位変化量導出ステップでは、制御手段20は、ステップS20において求められた補正後貯水水位を上記取水水位に換算し、換算された取水水位から上記取水水位変化量を導出する。すなわち、制御手段20は、まず、ステップS10で取得された目標水位から、上記取水水位の基準となる高さと上述した貯水水位の基準となる高さとの高低差α(図3参照)を差し引く。この高低差αは、前もって上述したストレージ(図示省略)に設定されて、ステップS10で取得される所定値のデータである。ついで、制御手段20は、上記補正後貯水水位から上記高低差αを差し引くことで上記取水水位の算定を行う。そして、制御手段20は、上記目標水位から上記高低差αを差し引いた結果から上記取水水位を差し引くことで上記取水水位変化量の導出を行う。そして制御手段20は、ステップS40を実行した後にステップS50に進む。なお、本実施形態の放流量調節プログラムでは、貯水施設10からの水90Aの流出等による水面勾配の変化の影響および水平湛水面の面積変化の影響を無視できるほど小さいとみなしている。しかしながら、これらの影響は、取水水位の算定に際して補正後貯水水位から差し引く値を補正することで評価することができる。
ステップS50において、制御手段20は、上記ストレージ(図示省略)に前もって記憶された調節量テーブルを検索する。これにより、制御手段20は、以下の(式4)により導出される取水手段14の開度a1の調節量Δa1に対応する量である、取水手段14の開閉動作方向および開閉作動時間を取得する。そして制御手段20は、ステップS50を実行した後にステップS60に進む。ここで、上記開閉動作方向は、取水手段14を開ける方向に動かすか閉める方向に動かすかを表すものである。また、上記開閉作動時間は、取水手段14を上記開閉動作方向にどれだけの時間動かすかを表すものである。なお、上記調節量Δa1は、本発明における「第2微小変化量」に相当する。
上記(式4)において、hは今回に実行されたステップB24で認識された、平滑化された取水下流水位hである。本実施形態の放流量調節プログラムでは、hはその変動量が無視できるほど小さいものとして、このhを所定の計測値として扱う。また、H1は上述したステップS40において上述した補正後貯水水位および高低差α(図3参照)のデータから算定された取水水位である。また、a1は現時点での取水手段14の開度a1である。また、C1は水の粘性による水流量の補正係数(すなわち流量係数)であり、取水路14Aを流下する水90Aと取水路14Aとが接触する潤辺に依存して決まるものである。このため、C1は、厳密には取水手段14の開度a1および上記水位hの両方に応じて変動する。ただし、本実施形態の放流量調節プログラムでは、C1は上述した取水手段14の開度a1および上記水位hの各変動に応じた上記潤辺の変動の影響が無視できるほど小さいものとして、この開度a1および上記水位hによって決定される上記水位H1の関数として扱われる。また、B1およびgは、それぞれ上述した(式1)におけるB1およびgと同じものであり、本実施形態の放流量調節プログラムではそれぞれ定数として扱われる。また、a2、B2、および、C2は、それぞれ上述した(式2)におけるa2、B2、および、C2と同じものであり、本実施形態の放流量調節プログラムではそれぞれ定数として扱われる。また、B3は、上述した(式3)におけるB3と同じものであり、本実施形態の放流量調節プログラムでは定数として扱われる。また、C3は水の粘性による水流量の補正係数(すなわち流量係数)であり、厳密には貯水施設14から魚道13(図5参照)への水90Aの越流の状態に依存して変動するものである。ただし、本実施形態の放流量調節プログラムでは、C3は上述した補正後貯水水位の変動に応じて上記越流の状態が変化することの影響が無視できるほど小さいものとして、定数として扱われる。また、H2は、上記(式2)におけるH2と同じものであり、上記補正後貯水水位およびえん堤排砂門12の開口の下縁と上述した貯水水位の基準となる高さとの高低差β(図2参照)のデータから算定できるものである。この高低差βのデータは、前もってストレージ(図示省略)に設定されて、ステップS10で取得される所定値のデータである。また、H3は、上記(式3)におけるH3と同じものであり、上記補正後貯水水位および魚道13において最も上流側に位置される隔壁13Aの上面と上述した貯水水位の基準となる高さとの高低差γ(図2参照)のデータから算定できるものである。この高低差γのデータは、前もってストレージ(図示省略)に設定されて、ステップS10で取得される所定値のデータである。また、ΔHは直前に実行されたステップS40により導出された取水水位変化量であり、本発明における「第1微小変化量」に相当する。また、ΔC1は上記ΔHに対応する上記C1の微小変化量である。
なお、制御手段20は、各パラメータの計算が複雑である上記(式4)について、直接計算することをしない。すなわち、本実施形態の放流量調節プログラムでは、想定される任意の補正後貯水水位における第2微小変化量Δa1に対応する取水手段14の制御量を上記(式4)の計算を行うことなく導出することができるように、上記調節量テーブルを設定している。また、上述した補正後貯水水位の変動が比較的小さい場合、かつ、取水手段14において取水下流水位hを一定の水位とする定常的な取水が行われている場合には、上記調整量テーブルは、取水下流水位hによって係数が決定されるΔHの1次関数に置き換えることもできる。
ここで、上記(式4)の意味について説明する。なお、以下においては、ステップS50において制御手段20が定数として扱う各パラメータは変化されないことを前提として説明を行う。
取水えん堤11から河川90あるいは取水路14Aに流下される流下水流量Qは、上記(式1)から(式3)の3つの式で示したQ1、Q2、および、Q3により、以下の(式5)(本発明における「流下水流量の導出式」に相当する。)により与えられる。
上記(式5)は、上記(式1)ないし(式3)に示すように、取水手段14の開度a1、水位H1、H2、H3、および、流量係数C1を、流下水流量Qを変動させうるパラメータとして含んでいる。また、上述した前提により、上述した水路幅B1、開口幅B2、幅B3、開度a2、流量係数C2、C3、水位h、および、重力加速度gは、それぞれ変化されないパラメータとなる。このため、上記流下水流量Qの変動量である全微分量ΔQを導出するための全微分式は、以下の(式6)により定義される。
ここで、(式6)に記載されたΔH1、ΔH2、および、ΔH3は、同一の水位(図2参照)の変動を示すものであるため、1つの微小変化量ΔHにまとめて書き直すことができるものである。このため、(式6)において、流下水流量Qの全微分量ΔQは、上記同一の水位の変動に対応する第1微小変化量ΔHの項と、取水手段14の開度a1の変動に対応する第2微小変化量Δa1の項と、流量係数C1の変動に対応する微小変化量ΔCの項と、を含む形で与えられる。
ところで、上記全微分量ΔQが0であることは、上述した各パラメータの各微小変化量Δa1、ΔC1、ΔHの影響が互いに相殺して0になることを意味し、上述した取水量Qが上記各パラメータの変動に対して変化しないことを意味する。このため、上記(式6)のΔQに0を代入した式をΔa1の方程式とみなしてこの方程式を解くことで、上記微小変化量ΔC1、ΔHに対して、上記全微分量ΔQを0として流下水流量Qを一定に保つために与えられるべきΔa1を求めることができる。
ここで、上記Δa1の方程式は、上記微小変化量ΔC1、ΔHのうち、いずれか一方が0である解を特解として含むことが明らかである。この特解を用いて上記Δa1の方程式を解くと、その一般解が上述した(式4)の形で与えられる。
すなわち、上述した方法によれば、取水えん堤11からの流下水流量Qの導出式(式5)の全微分式(式6)に第2微小変化量(すなわち、取水手段14の開度a1の調節量Δa1)を除く微小変化量を代入する。そして、代入された値に対して流下水流量Qの変動量である全微分量ΔQを0とするために与えられるべき第2微小変化量Δa1に基づいて取水手段14の開度a1を調節する。このため、定常的な取水(すなわち、取水量および水位が変動しない取水)を得るために必要とされる取水手段14の開度a1の調節量Δa1を、微小変化量の代入値から理論的に求めることができる。また、第1微小変化量として代入される取水水位変化量ΔHを制御手段20が認識する平滑化された貯水水位および水位の制御目標値である目標水位に基づいて求めることで、監視作業員の監視および判断を必要とすることなく、水位を中心水位に近づけるように取水量を調節することが可能となる。
ステップS60において、制御手段20は、ステップS50において得られた取水手段14の開閉動作方向および開閉作動時間に基づいて、この取水手段14の開度a1を調節量Δa1だけ調整する開度調整を実行する。このため、本明細書においては、ステップS60のことを「開度調節ステップ」とも称する。この開度調節ステップを実行した制御手段20は、現在実行しているサブルーチン1を終了させる。
〈●シミュレーション実験の説明(図24から図32)〉
なお、本発明者は、上述した本発明の第2の実施形態にかかる、貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法(以下、「方法F」とも称する。)の効果を評価する第1および第2のシミュレーション実験を行った。
上記第1のシミュレーション実験では、上記方法Fの実行直後から、貯水施設10への水90Aの流入量を一定速度で増加させ続けた(図24参照)場合の、貯水施設10からの水90Aの放流量(図25参照)および平滑化された貯水水位(図26参照)の時間変化を評価した。なお、上記第1のシミュレーション実験では、上記方法Fの実行直後(図26において時間が0(分)となる時刻)において、平滑化された貯水水位は中心水位と等しいものとして実験を行った。
上記第1のシミュレーション実験では、図24および図25に示すように、貯水施設10からの水90Aの放流量は貯水施設10への水90Aの流入量に追従して変化された。また、上記第1のシミュレーション実験では、図26に示すように、平滑化された貯水水位は上記方法Fの実行直後から上昇されて上側閾値水位を上回る水位低下制御開始水位91Aに達し、その後に下に凸となるカーブを描いて次の水位低下制御開始水位91Aに達するという時間変化を繰り返した。この時間変化を見ると、イニシャル処理により達成された水位極小値91B(図示一番左の水位極小値91B)は、低下目標水位よりも3[mm]程度高い位置に位置されていることが分かる。一方、上記イニシャル処理の後で実行された各調節制御においては、水位極小値91Bは低下目標水位の近く(上下約1[mm]の範囲)に位置されていることが分かる。
ここで、上記条件下におけるイニシャル処理とこのイニシャル処理の後で実行される各調節制御との違いは、目標水位を下側閾値水位とするか低下目標水位とするか、および、貯水水位補正量の設定を行うか否かの2点である。また、イニシャル処理においては、低下目標水位よりも低い下側閾値水位(図6および図8を参照)を目標水位とするにもかかわらず、達成される水位極小値91Bはイニシャル処理の後で達成される各水位極小値91Bよりも高い位置に位置された。ここから、上記貯水水位補正量の設定を行う方法Fによれば、繰り返される調節制御を水位の変動に対応させて、この水位をより低いものに制御することができるといえる。
上述した第2のシミュレーション実験では、図27に示すように、上記方法Fの実行直後から貯水施設10への水90Aの流入量を比較的速い一定の増加速度で増加させ、その後に比較的遅い一定の増加速度で増加させた。ここで、図27の仮想線および破線は、水90Aの流入量の増加速度が変更された増加速度変更時刻92(110(分)頃)を分かりやすくするための補助線である。また、上記第2のシミュレーション実験では、貯水施設10からの水90Aの放流量(図28参照)および平滑化された貯水水位(図29参照)の時間変化を評価した。なお、上記第2のシミュレーション実験では、上記方法Fの実行直後(図29において時間が0(分)となる時刻)において、平滑化された貯水水位は低下目標水位と等しいものとして実験を行った。
上記第2のシミュレーション実験では、図27および図28に示すように、貯水施設10からの水90Aの放流量は貯水施設10への水90Aの流入量に追従して変化された。また、上記第2のシミュレーション実験では、図29に示すように、平滑化された貯水水位は上記方法Fの実行直後から上昇されて上側閾値水位を上回る水位低下制御開始水位91Aに達し、その後に下に凸となるカーブを描いて次の水位低下制御開始水位91Aに達するという時間変化を繰り返した。この時間変化は、以下においては「時間変化F」とも称する。この時間変化Fを見ると、イニシャル処理の後の各調節制御において、水位極小値と低下目標水位との間に比較的大きな水位差91Cが見られた場合(図示60(分)頃および125(分)頃の水位差91Cを参照)でも、次の調節制御においては水位極小値91Bが低下目標水位に近づけられている。ここから、上記貯水水位補正量の設定を行う方法Fによれば、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動速度が変化される場合であっても、繰り返される調節制御を水位の変動に対応させることができるといえる。そして、上記方法Fによれば、河川90の維持流量を確保しながら上記流入量の変動速度の変化に対応することができる水位をより低く設定することができるといえる。
なお、上記第2のシミュレーション実験は、上記方法Fの変形例となる貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法(以下、「方法N」とも称する。)に対しても同じ条件で行った。この方法Nは、上記方法Fにおける各ステップのうち、ステップS4D10の後に実行されるステップをステップS3D14に(図14および図16を参照)、ステップS4U10の後に実行されるステップをステップS3D14に(図15および図17を参照)、それぞれ変更したものである。すなわち、上記方法Nは、上述した第1の発明、第2の発明、第3の発明、および、第5の発明を併せて実行するが、上述した第4の発明は実行しない、貯水施設における放流手段から河川への放流量の調節方法である。
上記方法Nに対する第2のシミュレーション実験での平滑化された貯水水位の時間変化(以下、「時間変化N」とも称する。)は、図30に示すように、増加速度変更時刻92以降においてのみ上記時間変化F(図29参照)との違いが見られた。より詳しくは、図29および図30に示すように、上記時間変化Nは、増加速度変更時刻92以降に、上記時間変化Fよりも各水位低下制御開始水位91A間の時間間隔および各水位極小値91Bの上下位置のばらつきが大きくなった(図30で見て175(分)頃および255(分)頃の水位差91Cを参照)。ここから、本発明の第4の発明を実行する方法Fは、上記第4の発明を実行しない方法Nと比べて、貯水施設10に対する水90Aの流入量の変動速度が変化した場合における追従能力がより高く、水位の変動に対応して繰り返される調節制御において水位を制御目標である目標水位により近くすることができるといえる。そして、上記方法Fによれば、上記方法Nと比べて、河川90の維持流量を確保しながら上記流入量の変動速度の変化に対応することができる水位をより低く設定することができるといえる。
本発明は、フローチャートなどを用いて上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
(1)本発明において、上述した第1所定値(図6参照)を0にした変形例を採用することができる。
(2)本発明における取水手段の取水は、取水路を介して水力発電設備に水を流下させるものに限定されず、例えば上水道の取水あるいは農業用水の取水など、任意の用途の取水に変更することができる。また、上記取水手段をスライドゲートからテンターゲートまたはオリフィスゲートに変更する、または、上記取水路を幅が一定の長方形断面開水路から任意の形状の開水路に変更するなど、取水手段における具体的な設備を適宜変更することができる。この場合において、流下水流量Qの全微分量ΔQを導出するための全微分式は、上記取水手段における具体的な設備の変更に伴って適宜変更される。
(3)本発明における放流手段は、えん堤排砂門と魚道とによって放流を行う構成である必要はなく、例えば魚道のみから放流を行う構成や取水えん堤の上縁に設けたクレストゲートを介して越流される水を追加して放流する構成など、任意の構成に変更することができる。また、上記えん堤排砂門を開度の調節が不可能なコンジットに変更する、または、上記魚道を階段式の魚道からバーチカルスロット式の魚道あるいは全断面型の魚道に変更するなど、放流手段における具体的な設備を適宜変更することができる。この場合において、流下水流量Qの全微分量ΔQを導出するための全微分式は、上記放流手段における具体的な設備の変更に伴って適宜変更される。