JP5976507B2 - 水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法 - Google Patents

水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法 Download PDF

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本発明は、水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法に関する。詳しくは、取水ゲートと取水路とを備えて、取水ゲートの開度を調整することによりこの取水ゲートから取水路を通して取水を行う、水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法に関する。
水力発電設備は、一般に、その取水量に依存して発電出力が変動するため、この発電出力を大きくするために、取水量を多くすることが望まれる。一方、水力発電における取水には、その取水量に最大値が設定されて、その最大値を常に超過しないように取水を行うことが従来求められてきた。
しかしながら、流水の特性から、取水量が瞬間たりとも上記最大値を超えない状態でこの最大値の取水を行うことは難しい。このため、従来は最大値を下回る運用値を上限とした取水制限を行っていたが、最近は、逼迫する電力需給に対応するために、水力発電における取水制限を緩和する動きが存在する。すなわち、上記取水において、その取水量が一時的に上記最大値を超過する場合でも、所定の時間範囲における累計取水量が目標取水量を超えないように取水を行えばよいとする動きがある。
ところで、水力発電設備においては、河川や湧泉などの水源に取水堰堤やダム湖などの貯水設備を設け、この貯水設備に貯水された水を取水設備から取水路を通して流下させることで取水する。上記取水設備は、開度を調整することができる取水ゲートから取水を行うことで、この取水の取水量を上記取水ゲートの開度により調整することができるようになっている。
ここで、上記調整の方法としては、取水される水の水位に基準となる基準水位およびハンチングを防止するための不感帯を設定し、上記基準水位に対して上記不感帯を越えて上記水位が変動した際にこの水位の調整を行う方法が知られている(例えば特許文献1を参照)。
特許第3544704号公報
上記特許文献1に記載された技術では、不感帯を越えて水位が変動することをトリガーとして水位の調整を行う。すなわち、上記技術では、水位が基準水位よりも高い状態であっても、水位の基準水位に対する偏差が不感帯の範囲内に収まっている場合には、水位の調整が行われないため、実際の取水量が目標取水量よりも多くなることがある。このため、上記技術では、所定の時間範囲における取水の累計取水量が目標取水量を超えないようにするためには、所定の時間範囲における目標取水量の水を取水する際の水位である理想水位よりも上記基準水位を低く設定し、水位が基準水位に対して不感帯の範囲内で上回っている状態であっても、上記水位が理想水位を越えないようにして、常時取水量を減らした状態とすることが必要となる。その結果、上記技術では、水力発電設備の発電出力が低くなるという問題があった。
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、所定の時間範囲における取水の平均水位を、理想水位に対して、より近くすることができる、水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法は次の手段をとる。
まず、第1の発明は、取水ゲートと取水路とを備えて、取水ゲートの開度を調整することによりこの取水ゲートから取水路を通して取水を行う、水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法である。この水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法では、所定時間範囲における累計取水量を目標取水量に一致させるために上記所定時間範囲における取水路の平均水位を理想水位に一致させる制御を、取水路に設けられた第1水位測定手段によって検出された取水路の水位が入力されて、この水位に基づいて取水ゲートの開度を調整する制御手段を用いて実行する。この際に、上記水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法では、上記所定時間範囲を所定の分割割合で分割された前時間帯と後時間帯とに分割する。また、上記水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法は、前時間帯では、1回以上の前調整タイミングを設定して、連続的に取水路の水位を記憶しながら、前調整タイミングにおいて、取水路の実際の水位を理想水位に一致させるように、取水ゲートの開度の調整制御を実行する第1水位調整ステップと、後時間帯では、前時間帯における実際の取水路の平均水位に基づいて、上記所定時間範囲の全体における平均水位を理想水位に一致させるために後時間帯における平均水位として与えられるべき平均水位を導出して目標平均水位として設定し、1回以上の後調整タイミングを設定して、この後調整タイミングにおいて、取水路の実際の水位を目標平均水位に一致させるように、取水ゲートの開度の調整制御を実行する第2水位調整ステップと、を有している。
この第1の発明によれば、前時間帯において第1水位調整ステップによって理想水位に対する実際の水位のずれが発生した場合であっても、後時間帯における第2水位調整ステップにより所定時間範囲の全体における取水の平均水位を理想水位に一致させるように補正する。このため、所定時間範囲の全体における取水の平均水位を、理想水位に対して、より近くすることができる、水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法を提供することができる。
ついで、第2の発明は、上述した第1の発明にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、後時間帯において、後調整タイミングを2回以上設定して、連続的に取水路の水位を記憶しながら、後時間帯において最後に実行される後調整タイミングを除く各後調整タイミングにおいて、後時間帯の開始時点から次の後調整タイミングまでの間の時間範囲における取水路の平均水位を予測平均水位として予測し、予測した次の後調整タイミングにおいて、後時間帯の開始時点からこの後調整タイミングまでの間の時間範囲における実際の取水路の平均水位を予測平均水位と比較し、この予測平均水位と実際の取水路の平均水位とが一致しない場合に、上記目標平均水位を、上記所定時間範囲の全体における平均水位を理想水位に一致させるために現時点から次に到来する後調整タイミングまたは後時間帯の終了時点のうち早く到来する方のタイミングまでの時間範囲における平均水位として与えられるべき平均水位に変更するものである。
この第2の発明によれば、2回目以降の後調整タイミングにおいて水位の補正が予定通りに進んでいるか否かを前もって予測した予測平均水位を用いて判定し、上記補正が予定通りに進んでいない場合に目標平均水位を変更する。これにより、後時間帯において水位変動が発生した場合であっても、この水位変動が所定時間範囲の全体における取水の平均水位に及ぼす影響を抑えることができる。
さらに、第3の発明は、上述した第1または第2の発明にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、上記第1水位測定手段は、取水ゲートから取水路の下流側に向かって所定距離だけ離れた位置における取水路の水位を測定するものである。また、第3の発明は、上記第2水位調整ステップにおいて、取水ゲートの開度の調整制御を実行したことによって変化した水位が、上記第1水位測定手段の実際の検出結果に基づいて導出される取水路の水位の変化として制御手段に認識されるまでにかかる時間である水位変化認識遅延時間と、取水ゲートの開度の調整制御を実行した際に、水位変化認識遅延時間を経過した後で、取水路の水位の変化が開始されてからこの水位が取水ゲートの開度の調整制御後の水位として安定するまでにかかる時間である水位変化安定時間と、後調整タイミングにおいて、この後調整タイミングから後時間帯の終了時点までの残り時間とから、この残り時間から上記水位変化認識遅延時間と上記水位変化安定時間とを差し引いた調整可能時間と、に対して、上記水位変化認識遅延時間と、上記調整可能時間と、に基づいて、所定の導出手段により目標平均水位として設定されるべき平均水位を導出する。
この第3の発明によれば、第1水位測定手段は、取水ゲートから取水路の下流側に向かって離れた位置における取水路の水位を測定する。これにより、第1水位測定手段は、跳水などの取水ゲートにおいて発生する水位の擾乱の影響を抑えて、取水路の水位をより精度よく測定することができる。ところで、取水路の水位を測定する位置を取水ゲートから取水路の下流側に向かって離れた位置とすると、取水ゲートの開度の調整制御を実行した際に、この取水ゲートの開度の調整制御による水位の変化の認識が遅れ、その後さらに時間が経過してから水位が調整制御後の水位として安定するため、取水ゲートの開度の調整制御後の水位を調整することができる調整可能時間が短くなる。ここで、上記第3の発明によれば、水位変化認識遅延時間と、この水位変化認識遅延時間および水位変化安定時間を用いて導出される調整可能時間と、に基づいて目標平均水位として設定されるべき平均水位を導出する。これにより、上述した調整可能時間が短くなることによる目標平均水位のずれを抑えることができる。
さらに、第4の発明は、上述した第1から第3のいずれか1つの発明にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、上記第1水位調整ステップまたは上記第2水位調整ステップにおいて実行される取水ゲートの開度の調整制御は、取水路を流下する水の水位を第1実測水位として上記第1水位測定手段を用いて実測する第1実測水位測定ステップと、この第1実測水位測定ステップにより実測された第1実測水位と、上記理想水位と、の水位差を第1水位差として導出する第1水位差導出ステップと、少なくとも取水ゲートの開度および第1実測水位をパラメータとして含む式である取水量導出式に対して、取水量の変動量である全微分量を導出するための全微分式が、少なくとも第1実測水位の変動に対応する第1微小変化量の項と、取水ゲートの開度の変動に対応する第2微小変化量の項と、を含む形で定義されており、上記全微分式における第1微小変化量に第1水位差導出ステップにより導出された第1水位差を代入し、上記全微分式に代入された値に対して上記全微分量を0とするために与えられるべき第2微小変化量の大きさに対応させて、取水ゲートの開度を調整する開度調整ステップと、を有しているものである。
複数のパラメータを含む所定量の導出式に対して、上記所定量の全微分量が0であることは、各パラメータの微小変化量の上記所定量への影響が互いに相殺して0になることを意味する。ここで、上記第4の発明によれば、取水量導出式の全微分式に第2微小変化量(すなわち、取水ゲートの開度の調整量)を除く微小変化量を代入し、代入された値に対して取水量の変動量である全微分量を0とするために与えられるべき第2微小変化量に基づいて取水ゲートの開度を調整する。このため、定常的な取水(すなわち、取水量および平均水位が変動しない取水)を得るために必要とされる取水ゲートの開度の調整量を、微小変化量の代入値から理論的に求めることができる。また、第1微小変化量として代入される第1水位差を、取水路において実測された第1実測水位と、理想水位と、の水位差として求めることで、平均水位の基準に理想水位を設定することができる。これにより、監視作業員の監視および判断を必要とすることなく、取水の平均水位を理想水位に一致させるように取水量を調整することができる。
さらに、第5の発明は、上述した第4の発明にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、上記開度調整ステップにおいて、取水量導出式は、パラメータの1つとして水の粘性による水流量の補正係数である流量係数を含み、上記全微分式は、流量係数の変動に対応する第3微小変化量の項を含む形で定義され、上記全微分式の第1微小変化量に第1水位差を代入する際に、あわせて上記全微分式の第3微小変化量に流量係数の変動量を代入するものである。
水路を流下する水の水流量を理論的に求める際には、水を粘性のない完全流体であるとみなした場合における水の水流量を理論的に求めてから、この水流量を流量係数により補正する。この流量係数は、少なくとも水路を流下する水と上記水路とが接触する潤辺に依存する値であり、この潤辺が取水路の水位変動によって延長または短縮されると、この変化に伴って変動するものである。ここで、上記第5の発明によれば、上述した取水路の水位変動に伴う上記流量係数の変動を、上述した取水量導出式の全微分式における第3微小変化量とすることで、上述した取水ゲートの開度の調整量をより高い精度で求めることができる。
さらに、第6の発明は、上述した第4または第5の発明にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、上記水力発電設備は、この水力発電設備に設けられた貯水設備に貯水された水を取水ゲートから取り込むことで取水を行うものである。また、第6の発明において、上記第1水位調整ステップまたは上記第2水位調整ステップにおいて実行される取水ゲートの開度の調整制御は、貯水設備に貯水された水の水位を検出することができる第2水位測定手段を用いて、貯水設備に貯水された水の水位を第2実測水位として実測する第2実測水位測定ステップと、この第2実測水位測定ステップにより直近に実測された第2実測水位と、1回前の第2実測水位測定ステップによって実測された第2実測水位と、の水位差を、第2水位差として導出する第2水位差導出ステップと、を有している。また、第6の発明の開度調整ステップにおいて、上記取水量導出式は、パラメータの1つとして上記貯水設備に貯水された水の水位を含み、上記全微分式は、上記貯水設備に貯水された水の水位の変動に対応する第4微小変化量の項を含む形で定義され、上記全微分式の第1微小変化量に第1水位差を代入する際に、あわせて上記全微分式の第4微小変化量に直近の第2水位差導出ステップにより導出された第2水位差を代入する。
貯水設備に貯水された水を取水ゲートから取水路に取り込む場合、上記貯水設備の水位が高いほど、上記取水ゲートにおける射流の流速が速くなって取水量が増大し、取水路の水位が上昇する。ここで、上記第6の発明によれば、貯水設備に貯水された水の水位の時間変化を、上述した取水量導出式の全微分式における第4微小変化量とすることで、上述した取水ゲートの開度の調整量をより高い精度で求めることができる。
本発明の一実施形態にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量を調整する方法が適用される水力発電設備の概略構成を表した説明図である。 図1の取水ゲートおよび取水路における主要部分の構成を表した平面図である。 図2のIII−III線断面図である。 本発明の一実施形態にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量を調整する方法を表したフローチャートである。 図4および図6におけるサブルーチン1を表したフローチャートである。 図4におけるサブルーチン2を表したフローチャートである。 図6におけるサブルーチン3を表したフローチャートである。 本発明において設定される各時間範囲および各タイミングを説明する説明図である。 本発明において設定される目標平均水位を説明する説明図である。
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。本発明の一実施形態にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量を調整する方法は、取水量調整プログラムが、水力発電設備10の制御コンピュータ10A(図1参照)を本発明の各ステップを実行するための制御手段として機能させることで、上記水力発電設備10における取水ゲート11A(図1参照)によって取水量を調整する方法である。ここで、制御コンピュータ10Aは、水力発電設備10の取水設備11に設けられた取水設備建屋11F(図1参照)の中に設置されている。
上記取水量調整プログラムは、前もって上記制御コンピュータ10Aの記憶装置にコンピュータ読み取り可能に記憶されて、上記水力発電設備10の毎正時から次の正時までの所定時間範囲における累計取水量を、監視作業員による操作がなくても自動的に所定の目標取水量に一致させるように調整するようになっている。
なお、本明細書においては、不感帯を越えて水位が変動することをトリガーとして水位の調整を行う臨時水位調整ステップ(図4に示すステップS80)などの付随的であり、かつ、従来から用いられているステップについては、その詳細な説明を省略する。また、上記水力発電設備10の各構成のうち、発電機およびこの発電機にかかる負荷の微小変動を調整するためのヘッドタンクならびに取水した水に含まれる砂などの異物を沈殿させて除去する異物沈殿池などの付随的な構成については、その図示および詳細な説明を省略する。
上記水力発電設備10は、図1に示すように、水源となる河川20に取水堰堤12Aを有する貯水設備12を設け、この貯水設備12に貯水された水20Aを取水設備11から取水路11Bを通して流下させることで取水する水路式の水力発電所である。ここで、取水された水20Aは、取水路11Bから水圧管路11Cを介して発電機(図示省略)に導かれてこの発電機による発電に使用された後に、放水路10Bを通して河川20に戻されるようになっている。
上記取水設備11は、図3に示すように、上述した制御コンピュータ10Aが出力する制御信号10Cにより開度aを調整することができるスライドゲートである取水ゲート11Aから取水を行うことで、この取水の取水量を上記取水ゲート11Aの開度aにより上記制御コンピュータ10Aが調整することができるようになっている。また、上記取水路11Bは、図2および図3に示すように、水路幅B(図2参照、本実施形態ではB=5[m])が一定となるように形成された長方形断面開水路であり、一定の水路床勾配でほぼ直線状に延びることにより、水20Aを等流状態で流下させることができるように構成されている。
上記取水路11Bには、図2および図3に示すように、上述した取水ゲート11Aからの距離Lが十分に長く水20Aが等流状態で流下しているとみなせる位置(本実施形態ではL=30×B=150[m]となる位置)に、水圧式の水位計である水位測定装置11Dが設けられている。この水位測定装置11Dは、取水路11Bを流下する水20Aの水位h(図3参照)を測定するための水位計であり、本発明における「第1水位測定手段」に相当する。
ここで、上記水位測定装置11Dにおいては、取水ゲート11Aからの距離Lが十分に長く設定されていることにより、跳水などの取水ゲート11Aにおいて発生する水位の擾乱の影響が抑えられるようになっている。これにより、水位測定装置11Dは、取水路11Bの水位hをより精度よく測定することができる。
また、上述した貯水設備12には、図2および図3に示すように、水位測定装置11Dと同様の水圧式の水位計である水位測定装置12Bが設置されている。この水位測定装置12Bは、貯水設備12に貯水された水20Aの水位Hを測定するものであるが、この測定の際に取水される水20Aに影響を及ぼすことがないように、取水ゲート11Aから離間された位置に設置されている。この水位測定装置12Bは、本発明における「第2水位測定手段」に相当する。
なお、上記水位測定装置11Dおよび上記水位測定装置12Bは、それぞれ常時連続的に水位を測定して、それぞれの測定結果を常時連続的に検出信号11E、12C(図3参照)として上述した制御コンピュータ10Aに出力するようになっている。この各出力に対して、制御コンピュータ10Aは、上記各検出信号11E、12Cに基づいて検出される水位h、Hのサンプリング処理を、例えば1[Hz]のサンプリング周波数(1[秒]のサンプリング周期)で同期させて行う。
そして、制御コンピュータ10Aは、現時点に対して30秒前の水位h、Hを、その前後30[秒]の間に測定された各水位h、Hを用いて単純移動平均して水位h、Hの実測値とするようになっている。これにより、制御コンピュータ10Aは、上記水位測定装置11Dおよび上記水位測定装置12Bにおける測定では1[cm]の桁までとなる水位h、Hの測定精度を、1[mm]の桁までの測定精度に向上させた状態で利用することができる。
●[制御コンピュータ10Aの処理手順(図4)]
ここで、上述した取水量調整プログラムにより上述した制御コンピュータ10Aが水力発電設備10の取水量を調整するための制御手段として機能した場合に実行される一連の各ステップについて、図4に示すフローチャートを用いて説明する。この一連の各ステップは、上記制御コンピュータ10Aが上述したサンプリング処理によって上述した水位h、Hの実測値を導出すると、この導出に応じて実行される。ただし、上述した水位測定装置12Bの検出信号12Cに基づいて検出される水位Hが低く、所定時間範囲(1時間)において取水の累計取水量が目標取水量を上回る可能性がないと上記制御コンピュータ10Aが判定している場合には、一連の各ステップは実行されない。
なお、一連の各ステップを実行するために上記制御コンピュータ10Aが必要とする時間は、上記サンプリング周期(1[秒])よりも短い。このため、上記制御コンピュータ10Aは、上記サンプリング処理により上記水位h、Hの実測値を導出するたびに、一連の各ステップを遅滞なく実行することができる。
上述した制御コンピュータ10Aが上述した制御手段として機能した場合、制御コンピュータ10Aによる処理は、まず、ステップS10に進む。このステップS10において、制御コンピュータ10Aは、この制御コンピュータ10Aの記憶装置に前もって設定された理想水位fと、上記制御コンピュータ10Aが直近のサンプリング処理により導出した水位hと、制御コンピュータ10Aが備える計時装置(図示省略)が出力する現在時刻と、をそれぞれ取得する。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS20に進む。
ここで、上記理想水位fは、上述した水力発電設備10を設計した技術者(以下、単に「技術者」とも称する。)が、上述した取水ゲート11Aからの取水の1時間当たりの累計取水量が所定の目標取水量に一致した状態が定常的に続くとした場合に上述した取水路11Bに流下されるべき水の水位として導出し、上記制御コンピュータ10Aの記憶装置に記憶させて設定したものである。また、上記水位hは、水位測定装置11Dが実測した取水路11Bの水位として、この水位が測定された時間と対応付けられて上記記憶装置に記憶されるものである。
ステップS20において、制御コンピュータ10Aは、ステップS10において取得された現在時刻と所定時間範囲の開始時刻とが秒の単位で一致しているか否かを判定する。一致している場合(はい)は、ステップS30に進み、一致していない場合(いいえ)は、ステップS40に進む。
ここで、上記所定時間範囲は、水力発電設備10における取水の累計取水量が目標取水量に一致させられるべき時間範囲である。本実施形態においては、上記所定時間範囲は上述した技術者により毎正時から次の正時までの間の1時間の時間範囲として設定されて、上記制御コンピュータ10Aの記憶装置に記憶されている。
また、上記技術者は、図8に示すように、上記所定時間範囲を1対1の分割割合(本発明における「所定の分割割合」に相当する。)で分割して、上記記憶装置に設定して記憶させている。すなわち、上記技術者は、上記所定時間範囲の開始時刻(以下、「基準時刻」とも称する。)を0分として、0分から30分までの間の時間範囲である前時間帯と、30分から60分(すなわち、次の基準時刻)までの間の時間範囲である後時間帯と、に分割して、上記記憶装置に設定して記憶させている。
さらに、上記技術者は、上記前時間帯に、上記基準時刻からの経過時間が0分(E1)、10分(E2)、20分(E3)となる各タイミングを前調整タイミング、30分(i1)、40分(i2)、50分(i3)となる各タイミングを後調整タイミングとして、上記記憶装置に設定して記憶させている。ここで、上述した各時間範囲および各タイミングは、上述した基準時刻に対する相対的な時間範囲または時刻により設定されている。これにより、上述した基準時刻がステップ30により変更された際に、上述した各時間範囲および各タイミングを自動的に変更された状態とすることができる。
ステップS30において、制御コンピュータ10Aは、基準時刻として設定された時刻をステップS10で取得された現在時刻に変更する。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS40に進む。
ここで、制御コンピュータ10Aは、その起動時であって基準時刻が設定されていない場合に、上記基準時刻の初期値としてダミーデータを設定する。これにより、制御コンピュータ10Aは、その起動後に初めて上述した制御手段として機能される場合でも、基準時刻の変更を行うステップS30においてエラーが発生しないようになっている。
ステップS40において、制御コンピュータ10Aは、上述した各前調整タイミング(図8に示すE1、E2、E3)とステップS10で取得された現在時刻とを比較して、この現在時刻が上記各前調整タイミングのいずれかに秒の単位で一致しているか否かを判定する。一致している場合(はい)は、ステップS70に進み、一致していない場合(いいえ)は、ステップS50に進む。
ステップS50において、制御コンピュータ10Aは、上述した各後調整タイミング(図8に示すi1、i2、i3)とステップS10で取得された現在時刻とを比較して、この現在時刻が上記各後調整タイミングのいずれかに秒の単位で一致しているか否かを判定する。一致している場合(はい)は、ステップS90に進み、一致していない場合(いいえ)は、ステップS60に進む。
ステップS70において、制御コンピュータ10Aは、基準水位kにステップS10で取得された理想水位fを代入する。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS100に進む。このステップS100において、制御コンピュータ10Aは、取水路11Bの水位hを基準水位kに一致させるための、取水ゲート11Aの開度a(図3参照)の調整制御を実行する。そして、制御コンピュータ10Aは、その一連の処理を終了させる。
ここで、ステップS70とステップS100とを組み合わせたステップは、本発明における「第1水位調整ステップ」に相当する。なお、上記調整制御(ステップS100)の詳細については後述する。
ステップS60において、制御コンピュータ10Aは、ステップS10で取得された水位hが前もって制御コンピュータ10Aの記憶装置に記憶されて設定された不感帯の範囲内であるか否かを判定する。上記水位hが上記不感帯の範囲内である場合(はい)は、制御コンピュータ10Aは、そのままその一連の処理を終了させる。上記水位hが上記不感帯の範囲内にない場合(いいえ)は、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS80(臨時水位調整ステップ)に進む。
ステップS80において、制御コンピュータ10Aは、ステップS10で取得された水位hが上記不感帯に対して上方に外れているか下方に外れているかを判定し、上記水位hが上記不感帯に対して上方に外れている場合は取水ゲート11Aの開度aを小さくし、下方に外れている場合は上記開度aを大きくすることで、上記水位hを上記不感帯内に収めるように調整する制御を行う。そして、制御コンピュータ10Aは、その一連の処理を終了させる。
なお、ステップS80は、豪雨などの要因による貯水設備12の水位Hの急激な上昇、または、取水ゲート11Aの貯水設備12側の部分に設けられた取水口スクリーン(図示省略)の目詰まりを解消する除塵作業によって、取水路11Bの水位hが急激に上昇する事態に対処するために設定されるステップである。
●[第2水位調整ステップの詳細(図6、図7)]
ステップS90は、本発明における「第2水位調整ステップ」に相当するステップであり、本実施形態の取水量調整プログラムにおいてはサブルーチンとして設定されている。また、ステップS90は、そのサブルーチンの実行後に制御コンピュータ10Aの一連の処理を終了させるように設定されている。
以下、ステップS90のサブルーチンおよびこのサブルーチンによって呼び出されるサブルーチン(図6のステップS160およびステップS170を参照)の詳細について、図6および図7のフローチャートを用いて説明する。
ステップS90のサブルーチンにおいて、制御コンピュータ10Aによる処理は、図6に示すように、まず、ステップS110に進む。
ステップS110において、制御コンピュータ10Aは、上述した各後調整タイミングにおける最初の後調整タイミングとステップS10で取得された現在時刻とを比較して、この現在時刻が上記最初の後調整タイミングに秒の単位で一致しているか否かを判定する。一致している場合(はい)は、ステップS120に進み、一致していない場合(いいえ)は、ステップS150に進む。
ステップS120において、制御コンピュータ10Aは、その記憶装置に水位測定装置11Dの毎秒の実測値として記憶された水位hの時間変化に基づいて、上述した前時間帯における実際の取水路11Bの平均水位hを導出する。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS130に進む。
ステップS130において、制御コンピュータ10Aは、所定時間範囲の全体における平均水位を理想水位fに一致させるために後時間帯における平均水位として与えられるべき平均水位を導出して目標平均水位mとして設定する。本実施形態では、制御コンピュータ10Aは、その記憶装置に前もって記憶された第1のテーブル(本発明における「導出手段」に相当する。)を検索することで、以下の(式1)と同等のデータ処理を行って上述した目標平均水位mを導出して設定する。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS140に進む。
Figure 0005976507

ここで、fはステップS10で取得された理想水位である。また、hはステップS120で導出された平均水位である。Pは上述した前時間帯の長さである。本実施形態では、Pには30[分]という値が上述した制御コンピュータ10Aの記憶装置に前もって記憶されている。また、Pは上述した後時間帯の長さである。本実施形態では、Pには30[分]という値が上記記憶装置に前もって記憶されている。また、tは取水ゲート11Aの開度a(図3参照)の調整制御を実行したことによって変化した水位が、上述した水位測定装置11Dの実際の検出結果に基づいて導出される水位hの変化として制御コンピュータ10Aに認識されるまでにかかる時間(図9参照)である。tは、本発明における「水位変化認識遅延時間」に相当する。tは、前もって取水路11Bの通水試験を実施することで観測された、取水ゲート11Aからの取水量の時間変化に対応する水位hの時間変化の遅れ時間と、制御コンピュータ10Aにおける移動平均処理などのデータ処理による遅れ時間と、の和として導出される。本実施形態では、tには1.0[分]という値が技術者により前もって導出されて上記記憶装置に記憶されている。また、Tは制御コンピュータ10Aが取水ゲート11Aの開度a(図3参照)の調整制御を実行した際に、上記水位変化認識遅延時間tを経過した後で、水位の変化が開始されてからこの水位が取水ゲート11Aの開度aの調整制御後の水位として安定するまでにかかる時間(図9参照)である。Tは、本発明における「水位変化安定時間」に相当する。Tは前もって実施された実験の結果を技術者が解析することによって導出され、上記記憶装置に前もって記憶される。本実施形態では、Tには1.0[分]という値が与えられている。また、Xは取水路11Bの平均水位と、現時点における取水路11Bの水位hと、の差を0にするためのオフセット成分の補正量である。
ここで、上記(式1)の意味について、図9を用いて説明する。なお、以下においては、後時間帯における水位の擾乱は無視できるほど小さいものとして説明を行う。
平均水位のオフセット成分が無視できるほど小さい場合であって、上述したhが理想水位fよりもずれ(h−f)だけ大きい場合を考える。このずれ(h−f)を所定の調整可能時間において補正するためには、この調整可能時間における平均水位を、理想水位fよりも(平均水位がhである時間範囲の長さ)÷(調整可能時間の長さ)×(h−f)だけ小さい目標平均水位mとすればよい。
ここで、平均水位がhである時間範囲は、前時間帯と水位変化認識遅延時間tとの和であり、その長さは(P+t)と表される。また、上記調整可能時間は、後時間帯の終了時点までの残り時間から水位変化認識遅延時間tと水位変化安定時間Tとを差し引いた時間であり、その長さは(P−t−T)と表される。
なお、上記水位変化安定時間Tにおいて、水位hは理想水位fを挟んで上下動するため、水位hが理想水位fよりも高いときの影響と水位hが理想水位fよりも低いときの影響とは互いに相殺する。このため、上記水位変化安定時間Tにおける水位hの上下動が平均水位に及ぼす影響は無視できるほど小さくなるとみなす。
ところで、実際の目標平均水位mには、平均水位のオフセット成分の補正が必要となるため、その補正量Xの項が追加される。これにより、上述した目標平均水位mを定めるための式が、上述した(式1)の形として導かれる。
上述した(式1)によれば、水位変化認識遅延時間tと、この水位変化認識遅延時間tおよび水位変化安定時間Tを用いて導出される調整可能時間(P−t−T)と、に基づいて目標平均水位mとして設定されるべき平均水位を導出する。これにより、上述した調整可能時間(P−t−T)が短くなることによる目標平均水位mのずれを抑えることができる。
ステップS140において、制御コンピュータ10Aは、その記憶装置に水位測定装置11Dの毎秒の実測値として記憶された水位hの時間変化、および、ステップS130で設定された目標平均水位mに基づいて、後時間帯の開始時刻(図8に示すi1)から次回以降の各後調整タイミング(図8に示すi2およびi3)までの水位hの累積移動平均の予測値を、それぞれ予測平均水位yとして予測して設定する。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS230に進む。
ここで、上記各予測平均水位yは、所定の理論に基づいて技術者により導かれて、上記制御コンピュータ10Aの記憶装置に前もって記憶された導出式に基づいて、上記記憶装置に水位測定装置11Dの毎秒の実測値として記憶された水位hの時間変化、および、ステップS130で設定された目標平均水位mから導出されることでそれぞれ予測される。このため、上記各予測平均水位yは、取水路11Bの平均水位のオフセット成分が補正された値として導出される。
ステップS150において、制御コンピュータ10Aは、上述した各後調整タイミングにおける最後の後調整タイミングとステップS10で取得された現在時刻とを比較して、この現在時刻が上記最後の後調整タイミングに秒の単位で一致しているか否かを判定する。一致している場合(はい)は、ステップS160に進み、一致していない場合(いいえ)は、ステップS170に進む。
ここで、ステップS160とステップS170とは、ともに目標平均水位mの評価を行うステップであり、ステップS160においては処理の実行後にステップS190に進み、ステップS170においては処理の実行後にステップS230に進む点を除いて、全く同じ処理を実行する。また、本実施形態の取水量調整プログラムでは、ステップS160とステップS170とは同一のサブルーチン(図7のサブルーチン3を参照)を使用する。このため、本明細書においては、ステップS160およびステップS170について、その詳細な説明およびフローチャートの図示をステップS160の説明およびフローチャートの図示により代表させて行う。そして、ステップS170の詳細な説明およびフローチャートの図示は省略する。
ステップS160のサブルーチンにおいて、制御コンピュータ10Aによる処理は、図7に示すように、まず、ステップS200に進む。このステップS200において、制御コンピュータ10Aは、その記憶装置に水位測定装置11Dの毎秒の実測値として記憶された水位hの時間変化に基づいて、後時間帯の開始時刻(図8に示すi1)から現時点までの間における、実際の水位hの累積移動平均Zを導出する。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS210に進む。
ステップS210において、制御コンピュータ10Aは、ステップS200で導出された実際の水位hの累積移動平均Zと、現時点における予測平均水位yと、を比較評価し、このyと上記実際の水位hの累積移動平均Zとが一致しているか否かを判定する。一致している場合(はい)は、ステップS160のサブルーチンの処理を終了させ、一致していない場合(いいえ)は、ステップS220に進む。
ステップS220において、制御コンピュータ10Aは、その記憶装置に前もって記憶された第2のテーブルを検索することで、以下の(式2)と同等のデータ処理を行って目標平均水位mの変更を行う。そして、制御コンピュータ10Aは、ステップS160のサブルーチンの処理を終了させる。
ここで、以下の(式2)は、上記目標平均水位mを、上述した所定時間範囲の全体における平均水位(すなわち、基準時刻以降での水位hの累積移動平均における次の基準時刻の時点での値)を理想水位fに一致させるために現時点から次に到来する後調整タイミングまたは後時間帯の終了時点(すなわち、次の基準時刻の時点)のうち早く到来する方のタイミングまでの時間範囲における平均水位として与えられるべき平均水位に変更して再設定する式である。
Figure 0005976507

ここで、yは現時点における予測平均水位である。また、Pは後時間帯の開始時刻(図8に示すi1)から現在時刻までの経過時間の長さである。また、Pは現在時刻から次に到来する後調整タイミングまたは後時間帯の終了時点(すなわち、基準時刻からの経過時間が60分となる時点)のうち早く到来する方のタイミングまでの残り時間である。PおよびPは、ステップS10で取得された現在時刻に基づいて導出される。また、tは上述した水位変化認識遅延時間であり、上述した(式1)で使用される値と同一の値を使用する。また、Tは上述した水位変化安定時間であり、上述した(式1)で使用される値と同一の値を使用する。また、Zは上述したステップS200において導出された、後時間帯の開始時刻から現時点までの間の水位hの累積移動平均である。
上記(式2)の意味について説明する。平均水位のオフセット成分が補正されて無視できるほど小さい予測平均水位の現時点における値yに対して、後時間帯の開始時刻から現時点までの間の水位hの累積移動平均Zがずれ(Z−y)だけ大きい場合を考える。このずれ(Z−y)を調整可能時間(すなわち、現時点から次に到来する後調整タイミングまたは後時間帯の終了時点のうち早く到来する方のタイミングまでの時間)において補正するためには、この調整可能時間における平均水位を、予測平均水位の現時点における値yよりも(平均水位がZである時間範囲の長さ)÷(調整可能時間の長さ)×(Z−y)だけ小さい目標平均水位mに変更すればよい。
ここで、平均水位がZである時間範囲は、後時間帯の開始時刻から現在時刻までの経過時間と水位変化認識遅延時間tとの和であり、その長さは(P+t)と表される。また、上記調整可能時間は、現時点から次に到来する後調整タイミングまたは後時間帯の終了時点のうち早く到来する方のタイミングまでの残り時間Pから水位変化認識遅延時間tと水位変化安定時間Tとを差し引いた時間であり、その長さは(P−t−T)と表される。
なお、上記水位変化安定時間Tにおいて、水位hは予測平均水位の現時点における値yを挟んで上下動するため、水位hが予測平均水位の現時点における値yよりも高いときの影響と水位hが予測平均水位の現時点における値yよりも低いときの影響とは互いに相殺する。このため、上記水位変化安定時間Tにおける水位hの上下動が平均水位に及ぼす影響は無視できるほど小さくなるとみなす。
これにより、上述したずれ(Z−y)を上述した調整可能時間において補正して上述した所定時間範囲の全体における平均水位を理想水位fに一致させる目標平均水位mを導出するための導出式が、上述した(式2)の形で定められる。
上述した各予測平均水位yおよび目標平均水位mの変更の意味について説明する。なお、以下の説明において、「●●分時点」の形で指定してある時刻は、基準時刻を0分として、この基準時刻からの経過時間により時刻を指定したものである。
前時間帯において発生した理想水位fに対する水位のずれ(h−f)を後時間帯において補正する場合であって、この後時間帯における水位の擾乱が無視できるほど小さいとみなせる場合を考える。この場合、後時間帯の開始時刻以降での水位hの累積移動平均の時間変化は、水位変化認識遅延時間tおよび水位変化安定時間Tの長さと、水位変化安定時間Tにおける水位の時間変化と、から理論的にf−D×(h−f)の形で求めることができる。ここで、Jは対象の時刻が何分時点であるかを示すための引数であり、Dは引数Jに依存して変化する係数である。
例えば、本実施形態では、t=1.0[分]、T=1.0[分]であり、水位変化安定時間Tにおいて水位が一定の速度で変化するとみなしている。この場合、後時間帯の開始時刻以降での水位hの累積移動平均は、40分時点でf−D40×(h−f)=f−0.786×(h−f)、50分時点でf−D50×(h−f)=f−0.946×(h−f)と求められる。ただし、計算の有効数字はいずれも3桁である。
このため、後時間帯の開始時刻以降での水位hの累積移動平均における2回目以降の後調整タイミングにおける値は、前もって所定の理論に基づいて導出してそれぞれ予測することができる。この各予測値が上述した各予測平均水位yである。
ところで、後時間帯の所定のタイミングにおける後時間帯の開始時刻以降での水位hの累積移動平均において、理論的に導出された値と水位hの実測に基づいて導出された値との間にずれがある場合、後時間帯の開始時点から上記所定のタイミングまでの間に無視できない大きさの水位の擾乱が存在する。言い換えると、2回目以降の後調整タイミングにおける予測平均水位yと同タイミングにおける実際の取水路における後時間帯の開始時刻以降での水位hの累積移動平均の値Zとが一致しない場合、水位の補正が予定通りに進むことを妨げている水位変動が存在する。
このため、前もって所定の理論に基づいて各予測平均水位yを予測し、上記所定のタイミングにおける予測平均水位yと実際の取水路における後時間帯の開始時刻以降での水位hの累積移動平均の値Zとを比較することで、水位の補正が予定通りに進んでいるか否かを判定することができる。また、補正が予測通りに進んでいない場合に目標平均水位mを変更することで、水位の補正が予定通りに進むことを妨げている水位変動が所定時間範囲の全体における取水の平均水位に及ぼす影響を抑えることができる。
ステップS190において、制御コンピュータ10Aは、この制御コンピュータ10AがステップS140においてそれぞれ予測した各予測平均水位yを、それぞれ技術者が前もって設定して上記制御コンピュータ10Aの記憶装置に記憶させた所定値に置き換えて、各予測平均水位yを初期化された状態とする。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS230に進む。
ステップS230において、制御コンピュータ10Aは、基準水位kに現時点で設定されている目標平均水位mを代入する。そして、制御コンピュータ10Aによる処理は、ステップS240に進む。
ステップS240において、制御コンピュータ10Aは、取水路11Bの水位hを基準水位kに一致させるための、取水ゲート11Aの開度a(図3参照)の調整制御(後述)を実行する。そして、制御コンピュータ10Aは、ステップS90のサブルーチンの処理を終了させる。
ここで、ステップS240は、ステップS100と全く同じ処理であり、本実施形態の取水量調整プログラムでは同一のサブルーチン(図5のサブルーチン1を参照)を使用する。このため、本明細書においては、ステップS100およびステップS240について、その詳細な説明およびフローチャートの図示をステップS100の説明およびフローチャートの図示により代表させて行う。そして、ステップS240の詳細な説明およびフローチャートの図示は省略する。
上述した各ステップによれば、前時間帯において第1水位調整ステップによって理想水位fに対する実際の水位hのずれが発生した場合であっても、後時間帯における第2水位調整ステップにより所定時間範囲(毎正時から次の正時までの間の1時間の時間範囲)の全体における取水の平均水位を理想水位fに一致させるように補正する。このため、所定時間範囲の全体における取水の平均水位を、理想水位fに対して、より近くすることができる、水力発電設備10における取水ゲート11Aによる取水量の調整方法を提供することができる。
また、2回目以降の後調整タイミングにおいて水位の補正が予定通りに進んでいるか否かを前もって予測した予測平均水位yを用いて判定し、上記補正が予定通りに進んでいない場合に目標平均水位mを変更する。これにより、後時間帯において水位変動が発生した場合であっても、この水位変動が所定時間範囲の全体における取水の平均水位に及ぼす影響を抑えることができる。
●[取水ゲートの開度の調整制御の詳細(図5)]
続いて、水位の調整制御を行うステップS100の詳細について、図5のフローチャートを用いて説明する。ステップS100は、本実施形態の取水量調整プログラムにおいてはサブルーチンとして設定されている。このサブルーチンにおいて、制御コンピュータ10Aによる処理は、まず、ステップS250に進む。
ステップS250において、制御コンピュータ10Aは、現時点において与えられている基準水位kを取得し、ステップS260に進む。
ステップS260において、制御コンピュータ10Aは、上述した水位測定装置12Bから直近に制御コンピュータ10Aに出力された検出信号12Cを取得することで貯水設備12の水位H(図3参照)を測定して制御コンピュータ10Aの記憶装置に記憶して、ステップS270に進む。
ここで、ステップS260は、本発明における「第2実測水位測定ステップ」に相当する。また、ステップS260によって測定される水位Hは、本発明における「第2実測水位」に相当する。
ステップS270において、制御コンピュータ10Aは、直近のステップS260により測定された水位Hからその1回前に実行されたステップS260により測定された水位Hを差し引いた水位差ΔHを算定し、ステップS280に進む。
ここで、ステップS270は、本発明における「第2水位差導出ステップ」に相当する。また、上記水位差ΔHは、本発明における「第2水位差」に相当する。なお、制御コンピュータ10Aは、ステップS270において1回前に実行されたステップS260により測定された水位Hが存在しない場合に、上記水位差ΔHの値の算定結果として0を出力する。これにより、制御コンピュータ10Aは、その起動後に初めて上述した制御手段として機能される場合でも、ステップS270においてエラーが発生しないようになっている。
ところで、ステップS270は、現時点から次に水位hの調整制御が実行されるまでの貯水設備12の水位Hの変化が、過去から現時点までの間に発生した貯水設備12の水位Hの変化とほぼ同様の変化であるとみなすことを前提としたステップである。このため、制御コンピュータ10Aは、貯水設備12の水位Hが上昇および下降を繰り返していると判定している場合において、ステップS270における水位差ΔHの値の算定結果をその値によらず0に変更することで、この算定結果を後述するステップS300において反映させないようになっている。
ステップS280において、制御コンピュータ10Aは、ステップS10で取得された水位hを取得し、ステップS290に進む。
ここで、ステップS10により取得される水位hは、直近に入力された検出信号11Eに基づいて上記記憶装置に実測値として記憶される水位hである。このため、ステップS280は、本発明における「第1実測水位測定ステップ」として機能する。また、ステップS280によって取得される水位hは、本発明における「第1実測水位」として機能する。
ステップS290において、制御コンピュータ10Aは、ステップS280で取得された水位hからステップS250で取得された基準水位kを差し引いた水位差Δhを算定し、ステップS300に進む。
ここで、ステップS290は、本発明における「第1水位差導出ステップ」に相当する。また、上記水位差Δhは、本発明における「第1水位差」に相当する。
ステップS300において、制御コンピュータ10Aは、その記憶装置にそれぞれ前もって記憶された第1水位差Δhに対する調整量テーブルおよび第2水位差ΔHに対する調整量テーブルをそれぞれ検索する。ついで、制御コンピュータ10Aは、上記第1水位差Δhに対する調整量テーブルおよび上記第2水位差ΔHに対する調整量テーブルの各検索結果を合算する。これにより、制御コンピュータ10Aは、以下の(式3)により導出される取水ゲート11Aの開度aの調整量Δaに対応する量である、取水ゲート11Aの動作方向(すなわち、取水ゲート11Aを開ける方向に動かすか閉める方向に動かすか)および動作時間(すなわち、取水ゲート11Aを上記動作方向に何秒動かすか)を取得し、ステップS310に進む。
ここで、上記調整量Δaは、本発明における「第2微小変化量」に相当する。
Figure 0005976507

上記(式3)において、hはステップS280で取得された取水路11Bの水位である。また、Hは直近に実行されたステップS260において測定された貯水設備12の水位である。また、Cは水の粘性による水流量の補正係数である流量係数であり、取水路11Bを流下する水20Aと取水路11Bとが接触する潤辺に依存して変動する。本実施形態においては、Cは上述した取水ゲート11Aの開度aの変動による上記潤辺への影響が無視できるほど小さいものとして、この開度aを定数とみなした上記水位hおよび上記水位Hの関数として定められる。また、Δhは直近に実行されたステップS290において導出された水位差Δhであり、本発明における「第1微小変化量」に相当する。また、ΔHは直近に実行されたステップS270において導出された水位差ΔHであり、本発明における「第4微小変化量」に相当する。また、ΔCは上記ΔhおよびΔHに対応する上記Cの微小変化量であり、本発明における「第3微小変化量」に相当する。
なお、制御コンピュータ10Aは、上記(式3)に含まれる各パラメータの値のうち、上記CおよびΔCを除いた全てのパラメータの値を制御コンピュータ10Aの記憶装置に記憶させた状態で、ステップS300を実行するようになっている。ここで、上記CおよびΔCは、それぞれの計算が複雑であるため、ステップS300において直接計算されることはない。
すなわち、本実施形態では、全てのパラメータが反映された上記(式3)を、想定される任意の水位Hにおける第2微小変化量Δaに対応する取水ゲート11Aの制御量を上記CおよびΔCの計算を行うことなく第1水位差Δhから容易に導出することができるように、上述した技術者によりあらかじめ簡略化させることで、上記第1水位差Δhに対する調整量テーブルとしている。
また、本実施形態において、上記第1水位差Δhに対する調整量テーブルは、水位の調整制御(ステップS100またはステップS240)が行われた後に発生した水位Hの変化が十分に小さいとみなせる時点(例えば前調整タイミングまたは後調整タイミングから上述した水位変化認識遅延時間tおよび水位変化安定時間Tが経過した時点)において、水位hと基準水位kとの差を0とするために必要な取水ゲート11Aの制御量を与えるものである。
このため、本実施形態では、上記水位の調整制御が行われた後に予測される水位Hの変化(本実施形態ではステップS270において導出された水位差ΔHによって代用している。)に対応するための取水ゲート11Aの制御量(すなわち、上記(式3)の右辺第2項に対応するための取水ゲート11Aの制御量)として、上記第2水位差ΔHに対する調整量テーブルとして設定している。
ステップS310において、制御コンピュータ10Aは、ステップS300により取得された取水ゲート11Aの動作方向および動作時間に基づいて、この取水ゲート11Aの開度aを調整量Δaだけ調整する開度調整を実行し、ステップS100のサブルーチンの処理を終了させる。
ここで、ステップS310は、本発明における「開度調整ステップ」に相当する。
ここで、上述した(式3)の意味について説明する。なお、以下においては、重力加速度gおよび取水路の幅Bは変化しないものとして説明を行う。また、本実施形態の取水量調整プログラムは、所定時間範囲において取水の累計取水量が目標取水量を上回る可能性がある豊水時にのみ、制御コンピュータ10Aに取水量を制御する機能を実現させるものである。このため、以下においては、貯水設備の水位は常に取水路の水位よりも高い状態にあることを前提として説明を行う。
図2および図3に示すように、水位Hの貯水設備12から、開度aの取水ゲート11Aを介して、幅Bが一定の長方形断面開水路である取水路11Bに、水20Aを等流状態に流下させて取水を行うことを考える。この際の取水路の水位をh(ただしH>h>0)とすると、この取水路における単位時間当たりの取水量Qは、以下の(式4)(本発明における「取水量導出式」に相当する。)により与えられることが知られている。ここで、Cは水の粘性による水流量の補正係数(すなわち流量係数)である。また、gは重力加速度である。
Figure 0005976507

上記取水量導出式(式4)は、水位hと、取水ゲートの開度aと、流量係数Cと、水位Hと、を取水量Qを変動させうるパラメータとして含んでいる。このため、上記取水量Qの変動量である全微分量ΔQを導出するための全微分式は、以下の(式5)により定義される。
Figure 0005976507

この(式5)において、取水量Qの全微分量ΔQは、水位hの変動に対応する第1微小変化量Δhの項と、取水ゲートの開度aの変動に対応する第2微小変化量Δaの項と、流量係数Cの変動に対応する第3微小変化量ΔCの項と、水位Hの変動に対応する第4微小変化量ΔHの項と、を含む形で与えられる。
ところで、上記全微分量ΔQが0であることは、上述した各パラメータh、a、C、Hの各微小変化量Δh、Δa、ΔC、ΔHの影響が互いに相殺して0になることを意味し、上述した取水量Qが各パラメータh、a、C、Hの変動に対して変化しないことを意味する。このため、上記(式5)のΔQに0を代入した式をΔaの方程式とみなしてこの方程式を解くことで、各パラメータh、C、Hの微小変化量Δh、ΔC、ΔHに対して、取水量Qの変動量である全微分量ΔQを0として取水量Qを一定に保つために与えられるべきΔaを求めることができる。
ここで、上記Δaの方程式は、上記各微小変化量Δh、ΔC、ΔHのうち、いずれか2つが0である解を特解として含むことが明らかである。この特解を用いて上記Δaの方程式を解くと、その一般解が上述した(式3)の形で与えられる。
すなわち、上述した方法によれば、定常的な取水(すなわち、取水量および平均水位が変動しない取水)を得るために必要とされる取水ゲートの開度の調整量を、微小変化量の代入値から理論的に求めることができる。また、第1微小変化量として代入される第1水位差Δhを、上述したステップS280で実測値として取得された第1実測水位hと、理想水位fと、の水位差として求めることで、平均水位の基準に理想水位fを設定することができる。これにより、監視作業員の監視および判断を必要とすることなく、取水の平均水位を理想水位fに一致させるように取水量を調整することができる。
また、上述した流量係数Cの変動を、上述した取水量Qの全微分式(式5)における第3微小変化量ΔCとすることで、上述した取水ゲートの開度の調整量をより高い精度で求めることができる。
さらに、上述した第4微小変化量ΔHを、直近のステップS260により測定された水位Hからその1回前に実行されたステップS260により測定された水位Hを差し引いた第2水位差ΔHとして求めることで、第4微小変化量ΔHを水位Hの時間変化に対応させることができる。
すなわち、上述した方法によれば、水位Hの時間変化を上述した取水量Qの全微分式(式5)における第4微小変化量ΔHとすることで、上述した取水ゲートの開度の調整量をより高い精度で求めることができる。
なお、本発明者は、上述した本発明の水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法(以下、「方法W」とも称する。)と、不感帯を越えて水位が変動することをトリガーとして水位の調整を行う臨時水位調整ステップ(図4に示すステップS80)のみを用いた水力発電設備における取水ゲートによる取水量の従来の調整方法(以下、「方法V」とも称する。)と、を比較するシミュレーション実験を行った。このシミュレーション実験は、貯水設備12の水位Hを20[cm/時間]の速度で上昇させる豪雨または貯水設備12の水位Hを5[cm/時間]の速度で下降させるフラッシュ放流など、水力発電設備10の取水ゲート11Aによる取水量に影響を及ぼす種々の条件の有無を変更しながら繰り返し行われた。
上記シミュレーション実験によれば、上記方法Vにおいては、1時間の時間範囲における取水路11Bの平均水位が理想水位に対して最大±12[mm]程度ずれた。一方、上記方法Wにおいては、上記方法Vに適用したのと全く同じ条件下において、1時間の時間範囲における取水路11Bの平均水位の理想水位に対するずれが、最大±1[mm]程度に抑えられた。
ところで、本発明にかかる水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法においては、最後の後調整タイミング(図8に示すi3)の後に最終確認タイミング(図8に示すU)を追加で設定して、この最終確認タイミングにおいて、水位hの急な増加に対応してこの水位hを調整するための最終確認ステップ(図示省略)を追加で実行する実施形態を用いることもできる。
ここで、上記最終確認タイミングは、上述した技術者によって、例えば基準時刻から55分後となるタイミング(図8参照)として設定して、制御コンピュータ10Aの記憶装置に前もって記憶させておくことができる。
また、上記最終確認ステップにおいては、制御コンピュータ10Aは、上記最終確認タイミングにおける実測値としての取水路11Bの水位hが理想水位fを上回っているか否かを判定する。そして、制御コンピュータ10Aは、上記判定の結果が(はい)である場合(すなわち、上記最終確認タイミングにおける実測値としての取水路11Bの水位hが理想水位fを上回っている場合)に、上述したステップS100(図5参照)と同様の水位hの調整制御を実行する。
上記最終確認ステップによれば、制御コンピュータ10Aは、最後の後調整タイミング(図8に示すi3)の後で発生した水位hの急な増加に対応してこの水位hを調整することができる。これにより、上述した所定時間範囲の全体における平均水位が理想水位fを上回るおそれをさらに少なくすることができる。
なお、上記最終確認ステップにおいて、上記最終確認タイミングにおける実測値としての取水路11Bの水位hが理想水位f以下である場合には、制御コンピュータ10Aは、水位hの調整制御を実行しない。これは、上記最終確認タイミングにおいて取水路11Bの水位hが理想水位f以下である場合には、追加で水位hの調整制御を実行しなくても、上述した所定時間範囲の全体における平均水位が理想水位fを上回ることがないとみなせるためである。
本発明は、上述した各実施形態の説明において、フローチャートなどを用いて表した処理手順に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
例えば、本発明における水位の測定方法は上述したものに限定されない。すなわち、例えば水圧式の水位計である水位測定装置を超音波式の水位計またはフロート式の水位計に変更したり、水位測定装置の検出信号のサンプリング処理におけるサンプリング周波数を変更したり、水位測定装置の測定結果にかけられる移動平均処理における具体的な計算または移動平均処理の有無を変更したりするなど、水位の測定方法の変更を適宜行うことができる。
また、本発明において設定される各時間範囲および各タイミングは、図8に示される各時間範囲および各タイミングに限定されない。すなわち、例えば所定時間範囲の長さの変更、前時間帯および後時間帯の分割比率の変更、および、各前調整タイミングおよび各後調整タイミングにおける設定回数および設定時刻の変更など、設定される各時間範囲および各タイミングの変更を適宜行うことができる。
また、取水量Qの全微分量ΔQを導出するための全微分式は、上述した(式5)の形で定義されるものに限定されない。すなわち、例えば貯水設備の水位Hの変動を無視しても取水量Qの調整には大きな影響がないとみなせる場合に、上記全微分式から第4微小変化量ΔHの項を省略するなど、第1微小変化量Δhの項および第2微小変化量Δaの項を除く各項を適宜省略することができる。また、水温による水の膨張の影響など、取水路における水流量に影響する別のパラメータを取水量導出式に追加することで、上記全微分式に別の微小変化量の項を追加することができる。
また、本発明の水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法は、水路式の水力発電設備でなくても適用することができる。すなわち、本発明の水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法は、ダム水路式の水力発電設備など、取水ゲートと取水路とを備えて、取水ゲートの開度を調整することによりこの取水ゲートから取水路を通して取水を行う任意の水力発電設備に適用することができる。さらに、上記取水ゲートをスライドゲートからテンターゲートまたはオリフィスゲートに変更する、または、上記取水路を幅が一定の長方形断面開水路から任意の形状の開水路に変更するなど、水力発電設備の具体的な設備を適宜変更することができる。
また、上述した本発明の一実施形態の説明において使用された具体的な数値および水位変化の推移は本発明の一例に過ぎず、本発明の実施形態が上記数値および水位変化の推移に限定されるものではない。また、上述した本発明の一実施形態における臨時水位調整ステップ(図4に示すステップS80)および上述した最終確認ステップ(図示省略)などの不等号を使用した判定を行うステップにおいて、上記不等号を等号が含まれたもの(≧または≦)とするか等号が含まれないもの(>または<)とするかは、適宜変更することができる。
10 水力発電設備
10A 制御コンピュータ(制御手段)
10B 放水路
10C 制御信号
11 取水設備
11A 取水ゲート
11B 取水路
11C 水圧管路
11D 水位測定装置(第1水位測定手段)
11E 検出信号
11F 取水設備建屋
12 貯水設備
12A 取水堰堤
12B 水位測定装置(第2水位測定手段)
12C 検出信号
20 河川
20A 水

Claims (6)

  1. 取水ゲートと取水路とを備えて、前記取水ゲートの開度を調整することにより当該取水ゲートから取水路を通して取水を行う、水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法において、
    所定時間範囲における累計取水量を目標取水量に一致させるために前記所定時間範囲における前記取水路の平均水位を理想水位に一致させる制御を、前記取水路に設けられた第1水位測定手段によって検出された前記取水路の水位が入力されて、当該水位に基づいて前記取水ゲートの開度を調整する制御手段を用いて実行する際に、
    前記所定時間範囲を所定の分割割合で分割された前時間帯と後時間帯とに分割し、
    前記前時間帯では、1回以上の前調整タイミングを設定して、連続的に前記取水路の水位を記憶しながら、前記前調整タイミングにおいて、前記取水路の実際の水位を前記理想水位に一致させるように、前記取水ゲートの開度の調整制御を実行する第1水位調整ステップと、
    前記後時間帯では、前記前時間帯における実際の前記取水路の平均水位に基づいて、前記所定時間範囲の全体における平均水位を前記理想水位に一致させるために前記後時間帯における平均水位として与えられるべき平均水位を導出して目標平均水位として設定し、1回以上の後調整タイミングを設定して、当該後調整タイミングにおいて、前記取水路の実際の水位を前記目標平均水位に一致させるように、前記取水ゲートの開度の調整制御を実行する第2水位調整ステップと、
    を有している、
    水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法。
  2. 請求項1に記載された水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、
    前記後時間帯において、前記後調整タイミングを2回以上設定して、連続的に前記取水路の水位を記憶しながら、
    前記後時間帯において最後に実行される前記後調整タイミングを除く前記各後調整タイミングにおいて、前記後時間帯の開始時点から次の前記後調整タイミングまでの間の時間範囲における前記取水路の平均水位を予測平均水位として予測し、
    予測した次の前記後調整タイミングにおいて、前記後時間帯の開始時点からこの前記後調整タイミングまでの間の時間範囲における実際の前記取水路の平均水位を前記予測平均水位と比較し、当該予測平均水位と実際の前記取水路の平均水位とが一致しない場合に、前記目標平均水位を、前記所定時間範囲の全体における平均水位を前記理想水位に一致させるために現時点から次に到来する前記後調整タイミングまたは前記後時間帯の終了時点のうち早く到来する方のタイミングまでの時間範囲における平均水位として与えられるべき平均水位に変更する、
    水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載された水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、
    前記第1水位測定手段は、前記取水ゲートから前記取水路の下流側に向かって所定距離だけ離れた位置における前記取水路の水位を検出するものであり、
    前記第2水位調整ステップにおいて、
    前記取水ゲートの開度の調整制御を実行したことによって変化した水位が、前記第1水位測定手段の実際の検出結果に基づいて導出される前記取水路の水位の変化として前記制御手段に認識されるまでにかかる時間である水位変化認識遅延時間と、
    前記取水ゲートの開度の調整制御を実行した際に、前記水位変化認識遅延時間を経過した後で、前記取水路の水位の変化が開始されてから当該水位が前記取水ゲートの開度の調整制御後の水位として安定するまでにかかる時間である水位変化安定時間と、
    前記後調整タイミングにおいて、当該後調整タイミングから前記後時間帯の終了時点までの残り時間と、から、当該残り時間から前記水位変化認識遅延時間と前記水位変化安定時間とを差し引いた調整可能時間と、に対して、
    前記水位変化認識遅延時間と、前記調整可能時間と、に基づいて、所定の導出手段により前記目標平均水位として設定されるべき平均水位を導出する、
    水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、
    前記第1水位調整ステップまたは前記第2水位調整ステップにおいて実行される前記取水ゲートの開度の調整制御は、
    前記取水路を流下する水の水位を第1実測水位として前記第1水位測定手段を用いて実測する第1実測水位測定ステップと、
    前記第1実測水位測定ステップにより実測された前記第1実測水位と、前記理想水位と、の水位差を第1水位差として導出する第1水位差導出ステップと、
    少なくとも前記取水ゲートの前記開度および前記第1実測水位をパラメータとして含む式である取水量導出式に対して、取水量の変動量である全微分量を導出するための全微分式が、少なくとも前記第1実測水位の変動に対応する第1微小変化量の項と、前記取水ゲートの前記開度の変動に対応する第2微小変化量の項と、を含む形で定義されており、前記全微分式における前記第1微小変化量に前記第1水位差導出ステップにより導出された前記第1水位差を代入し、前記全微分式に代入された値に対して前記全微分量を0とするために与えられるべき前記第2微小変化量の大きさに対応させて、前記取水ゲートの前記開度を調整する開度調整ステップと、
    を有している、
    水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法。
  5. 請求項4に記載された水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、
    前記開度調整ステップにおいて、
    前記取水量導出式は、前記パラメータの1つとして水の粘性による水流量の補正係数である流量係数を含み、
    前記全微分式は、前記流量係数の変動に対応する第3微小変化量の項を含む形で定義され、
    前記全微分式の前記第1微小変化量に前記第1水位差を代入する際に、あわせて前記全微分式の前記第3微小変化量に前記流量係数の変動量を代入する、
    水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法。
  6. 請求項4または請求項5に記載された水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法であって、
    前記水力発電設備は、当該水力発電設備に設けられた貯水設備に貯水された水を前記取水ゲートから取り込むことで前記取水を行うものであり、
    前記第1水位調整ステップまたは前記第2水位調整ステップにおいて実行される前記取水ゲートの開度の調整制御は、
    前記貯水設備に貯水された水の水位を検出することができる第2水位測定手段を用いて、前記貯水設備に貯水された水の水位を第2実測水位として実測する第2実測水位測定ステップと、
    前記第2実測水位測定ステップにより直近に実測された前記第2実測水位と、1回前の前記第2実測水位測定ステップによって実測された前記第2実測水位と、の水位差を、第2水位差として導出する第2水位差導出ステップと、
    を有し、
    前記開度調整ステップにおいて、
    前記取水量導出式は、前記パラメータの1つとして前記貯水設備に貯水された水の水位を含み、
    前記全微分式は、前記貯水設備に貯水された水の水位の変動に対応する第4微小変化量の項を含む形で定義され、
    前記全微分式の前記第1微小変化量に前記第1水位差を代入する際に、あわせて前記全微分式の前記第4微小変化量に直近の前記第2水位差導出ステップにより導出された前記第2水位差を代入する、
    水力発電設備における取水ゲートによる取水量の調整方法。
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