JP2016069346A - チオール化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐クレイ性の他、種々の特性に優れるポリマー構造を容易に与え得るチオール化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表されるチオール化合物。
Figure 2016069346

(R1はH又はC1〜3の炭化水素基;XはC1〜8の炭化水素基;AOはC2〜8のオキシアルキレン基;YはC1〜5の炭化水素基;aは0又は1の数;bは0〜4の数;cは0又は1の数;dは0又は1の数)
【選択図】なし

Description

本発明は、チオール化合物に関する。より詳しくは、各種ポリマーのモノマー成分として使用可能なチオール化合物に関する。
チオール化合物とは、1個以上のメルカプト基(チオール基、SH基)を有する化合物であり、メルカプト基が持つ特異な反応性を利用して様々な用途に使用されている。近年では、各種ポリマーのモノマー成分としての利用も検討されている。例えば、特許文献1には、ハイパーブランチ型ポリカルボン酸系ポリマーセメント分散剤を与えるモノマー成分として、−(CHCHO)−で表されるエチレングリコール単位を1分子中に平均5〜200モル含み、末端にメルカプト基を有する化合物が開示されている。
米国特許出願公開第2013/0102749号明細書
出願人は、これまでの検討により、ポリマー主鎖を与えるモノマー由来の構成単位の配列によって、各種無機粒子への吸着性や分散性を付与又は向上したり、無機粒子を含む組成物等の状態を改善してその取り扱い性や作業性を良好にしたりできることを見いだしていた。だが、これまでに知られているモノマーだけでは限界があり、これらの性能をより一層向上させたり、また、更に追加して求められる各種性能(例えば、耐クレイ性、早期強度発現性、消泡性、フライアッシュやスラグ等の非セメント粒子への対応性、空気連行性改善、セメント組成物の状態改良等)を高レベルで付与させたりすることができるポリマーを与えるのは容易ではなかった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐クレイ性の他、種々の特性に優れるポリマー構造を容易に与え得るチオール化合物を提供することを目的とする。
本発明者は、各種ポリマーの原料成分となり得る化合物について種々検討したところ、メルカプト基と不飽和部位とを含む特定構造の化合物とすれば、反応性に富み、各種ポリマーを与えるモノマー成分として有用であり、求められる各種性能を付与又は向上できるポリマー構造を容易に与えることが可能となることを見いだし、このチオール化合物を用いれば、耐クレイ性に特に優れるポリマーが得られることも見いだした。また、このような構造のチオール化合物がこれまでにない新規物質であることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
なお、特許文献1には、本発明の構造のチオール化合物は記載されていないし、特許文献1に記載のチオール化合物(エチレングリコール単位を1分子中に平均5〜200モル含み、末端にメルカプト基を有する化合物)では、耐クレイ性に特に優れるポリマーを与えることはできない。
すなわち本発明は、下記一般式(1):
Figure 2016069346
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。Xは、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。AOは、炭素数2〜8のオキシアルキレン基を表す。Yは、炭素数1〜5の炭化水素基を表す。aは、0又は1の数であり、bは、0〜4の数であり、cは、0又は1の数であり、dは、0又は1の数である。)で表されるチオール化合物である。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ又は3つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
〔チオール化合物〕
本発明のチオール化合物は、上記一般式(1)で表される構造を有する。
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表すが、製造上の観点からは、炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、中でもメチル基が特に好ましい。
Xは、炭素数1〜8の炭化水素基を表すが、炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましい。また、炭化水素基の炭素数は1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜2である。Xとして特に好ましくは、メチレン基又はエチレン基である。Xが炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表す形態や、その中でも、Rがメチル基を表し、Xがメチレン基又はエチレン基を表す形態は、本発明の特に好ましい形態である。
上記一般式(1)におけるXの数(a)は0又は1であるが、1であることが好ましい。
AOは、炭素数2〜8のオキシアルキレン基を表す。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシメチルエチレン基、オキシオクチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。中でも、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であることが好ましく、より好ましくはオキシエチレン基である。
−(AO)−で表される(ポリ)アルキレングリコール鎖は、2種以上のオキシアルキレン基により形成されるものであってもよく、この場合、2種以上のオキシアルキレン基の付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。2種以上のオキシアルキレン基を有する場合の組み合わせとしては、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)、(オキシエチレン基、オキシブチレン基)、(オキシエチレン基、オキシスチレン基)が好適である。中でも、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)がより好ましい。
bは、一般式(1)におけるAOの平均付加モル数であり、0〜4の数である。
これまでの研究から、(ポリ)アルキレングリコール(特に(ポリ)エチレングリコール)鎖がクレイ層間に吸着されることがわかっており、そのため、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する従来のポリカルボン酸分散剤もクレイ層間に吸着される。その結果、クレイ層間に取り込まれる分散剤量の増加は、本来分散させるべき無機粒子への吸着量を減少させ、無機粒子を分散させるための添加量を増加させる結果となる。このような観点から、クレイ層間に取り込まれないようにするためには、bは小さいほど好適であることを見いだし、特に4以下であると、チオール化合物やそれを用いて得られるポリマーがクレイ層に取り込まれることがより抑制される。この耐クレイ性の観点から、より好ましくは2以下、更に好ましくは1又は0である。
またbが4を超える数であると、−C(=O)−の数(c)が1である場合に、エステル結合が加水分解しやすくなり、チオール化合物を用いた各種合成反応をより有利に進めることができないことがある。だが、4以下の数であると加水分解が充分に抑制され、各種合成反応がより有利に進むことになる。また、4以下の数であると、チオール化合物を各種ポリマーの原料に用いる場合に、各種ポリマーを含む組成物(例えば、無機粒子含有組成物、セメント組成物等)の粘性がより低減される。
ここで、bが1以上である場合、例えば、分散性能の観点からは、−(AO)−で表される(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成するオキシアルキレン基の総量100モル%に対し、オキシエチレン基の割合は50モル%以上であることが好適である。より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
上記一般式(1)における−C(=O)−の数(c)は、0又は1であるが、1であることが好ましい。
Yは、炭素数1〜5の炭化水素基を表すが、炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましい。また、炭化水素基の炭素数として好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2である。Yとして特に好ましくは、メチレン基又はエチレン基である。
上記一般式(1)におけるYの数(d)は0又は1であるが、1であることが好ましい。
〔チオール化合物の製造方法〕
本発明のチオール化合物を得る方法は特に限定されず、例えば、(i)不飽和部位を有するアルコール化合物(単に「不飽和アルコール」とも称す)と、メルカプト基含有カルボン酸とをエステル化して製造する方法(製法(i)とも称す);(ii)ジスルフィド結合含有ジカルボン酸と不飽和アルコールとを脱水縮合させた後、ジスルフィド結合を還元して製造する方法(製法(ii)とも称す);等が挙げられる。中でも、反応効率を向上させる観点から、製法(ii)を用いることが好適である。なお、反応に使用される各成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
以下に、製法(i)及び(ii)の好ましい形態を更に説明する。
上記製法(i)で使用される不飽和アルコールとしては、例えば、下記一般式(2):
Figure 2016069346
(式中の記号は、上記一般式(1)における各記号と同じである。)で表される化合物が好適である。具体的には(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数1〜13の不飽和アルコールの他、これら不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
上記メルカプト基含有カルボン酸としては、例えば、下記一般式(3):
Figure 2016069346
(式中の記号は、上記一般式(1)における各記号と同じである。)で表される化合物が好適である。一般式(3)中、c及びdは、上述したとおりいずれも1であることが好ましい。
上記メルカプト基含有カルボン酸としては、メルカプト基とカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトイソブチル酸、チオリンゴ酸、メルカプトステアリン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酪酸、メルカプトオクタン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトニコチン酸、システイン、N−アセチルシステイン、メルカプトチアゾール酢酸等が挙げられる。これらの中でも、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸がより好ましい。
上記製法(i)において、不飽和アルコールとメルカプト基含有カルボン酸とのエステル化反応は、通常の手法で行えばよく、特に限定されるものではない。
上記製法(ii)で用いられる不飽和アルコール(不飽和部位を有するアルコール化合物)は、製法(i)に関して上述したとおりである。
上記ジスルフィド結合含有ジカルボン酸は、ジスルフィド結合と、2個のカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(4):
Figure 2016069346
(式中の記号は、上記一般式(1)における各記号と同じである。なお、c、dは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表される化合物が好適である。
上記ジスルフィド結合含有ジカルボン酸を得る方法として好ましくは、上述したメルカプト基含有カルボン酸をジスルフィド化反応させて得る方法である。ジスルフィド化反応は、通常の手法で行えばよく、特に限定されるものではない。
上記製法(ii)において、ジスルフィド結合含有ジカルボン酸と不飽和アルコールとの脱水縮合反応は、通常の手法で行えばよく特に限定されるものではないが、例えば、酸性物質の不存在下で脱水縮合反応を行うことが好適である。これにより、製造効率が著しく向上され、チオール化合物の収率を顕著に高めることができる。例えば、脱水縮合剤として、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等を用いることが好ましく、その際、触媒としてジメチルアミノピリジンを併用することが好適である。
上記製法(ii)では、上述した脱水縮合反応の後、ジスルフィド結合の還元化を行う。この還元反応も通常の手法で行えばよく特に限定されるものではないが、上述した脱水縮合反応と同様に、酸性物質の不存在下で還元反応を行うことも好適である。これにより、製造効率が著しく向上され、チオール化合物の収率を顕著に高めることができる。例えば、還元剤として、ジチオトレイトール等を用いることが好適である。
〔ポリマー〕
本発明のチオール化合物は、ポリマー原料として用いられることが好ましい。すなわち本発明のチオール化合物においては、下記一般式(5):
Figure 2016069346
(式中の記号は、上記一般式(1)における各記号と同じである。)で表される不飽和部位の反応性よりも、メルカプト基の反応性の方が高いため、この反応性の違いを利用してポリマー等の各種化合物の合成反応に用いることができる。
例えば、本発明のチオール化合物に、該チオール化合物の不飽和部位と重合しにくい不飽和単量体を反応させると、チオール化合物のメルカプト基から連鎖移動重合が進行し、その結果、チオール化合物の不飽和部位が残存するため、当該不飽和部位と不飽和単量体の重合鎖とを有する化合物(マクロモノマーと称す)を収率よく良好に合成することができる。このようなマクロモノマーもポリマーの一種であるが、マクロモノマーを更に他のポリマーの原料として用いることも好適である。例えば、このマクロモノマー中の不飽和部位(残存した不飽和部位)に各種単量体を反応させることで、各種ポリマーを得ることができる。
詳しくいうと、チオール化合物に、該チオール化合物が有する不飽和部位と重合しにくい不飽和単量体を重合させた場合、該不飽和単量体はチオール化合物の不飽和部位とは重合せずにチオール部位から連鎖移動重合を開始し、その結果、チオール化合物の不飽和部位を残存させたマクロモノマーを容易に得ることができるようになる。具体的には、上記一般式(5)中、Rはメチル基が特に好ましく、一般式(5)で表される不飽和部位は、メタリル基又は3−メチル−3−ブテニル基であることが特に好ましいが、例えば、このような不飽和部位を有するチオール化合物にメタクリル酸系単量体を反応(好ましくは重合反応)させると、メタクリル系単量体は、メタリル基や3−メチル−3−ブテニル基とは重合せずに、メルカプト基に選択的に反応し、該メタリル基や3−メチル−3−ブテニル基をマクロモノマー中に容易に残存させることができる。その結果、得られたマクロモノマーに、該マクロモノマーの不飽和部位(残存した不飽和部位)と重合可能な各種単量体を重合させることにより、各種ポリマーを更に良好に得ることができる。
−マクロモノマーの作製−
上記マクロモノマーは、上述のとおり、本発明のチオール化合物に、該チオール化合物の不飽和部位と重合しにくい不飽和単量体を反応させることにより得ることができる。
ここで、チオール化合物に反応させる不飽和単量体として、要求性能に応じた官能基を含む不飽和単量体(官能基含有単量体とも称す)を少なくとも用いると、得られるマクロモノマー及びそれに由来するポリマー中に当該官能基を容易に導入することができるため、得られるマクロモノマー及びそれに由来するポリマーは、耐クレイ性に加えて、当該官能基による性能も発揮することができる。このように本発明のチオール化合物を用いれば、耐クレイ性のみならず、所望の各種性能を付与又は向上できるポリマー構造(マクロモノマー構造を含む)を容易に与えることができるため、この点でも本発明は有利な効果を有する。
上記官能基含有単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と所望の官能基とを含む化合物であればよく、官能基としては要求される性能に応じたものであればよい。例えば、ノニオン基、カチオン基、アニオン基又はベタイン基の1種又は2種以上が好ましい。
これらの官能基の好ましい形態は、後述するとおりであるが、以下に導入する官能基の効果の一例を挙げる。
ノニオン基の場合、特にアルキレンオキシド鎖であれば立体障害による無機粒子の分散効果を期待することができる。また、アルキル基であれば無機粒子を含む組成物(例えば、コンクリート等のセメント組成物)の状態を改善する効果を期待することができる。
カチオン基の場合、アミノ基由来のカチオン性基が好ましく、コンクリート等のセメント組成物の強度向上、状態改良改善効果等が期待できる。
アニオン基の場合、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン基を導入することで、電気反発効果により無機粒子を分散させることが期待できる。
ベタイン基の場合、水中あるいは塩水中でベタイン基同士の反発によりベタイン基を有するポリマー鎖が大きく広がることから、立体反発により無機粒子を効果的に分散させることが期待でき、また水溶性に優れることから水中での起泡性が低い(水中での空気連行性が低い)ことが期待できる。
上記官能基含有単量体としては、例えば、ノニオン系単量体、カチオン系単量体、アニオン系単量及びベタイン系単量体等の1種又は2種以上が好ましい。なお、官能基含有単量体として、2種以上の官能基を含む単量体を用いてもよいことは言うまでもない。
以下に、官能基含有単量体として好適なノニオン系単量体、カチオン系単量体、アニオン系単量体及びベタイン系単量体について、更に説明する。
(i)ノニオン系単量体
ノニオン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)とノニオン基とを含む化合物である。ノニオン基(非イオン基、ノニオン性基とも称す)としては、例えば、エーテル基、ヒドロキシル基、アミド基、芳香族ビニル基、N−ビニルラクタム基、アルキル基等が挙げられる。エーテル基として具体的には、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコール基、アルキルエーテル基等が挙げられ、ヒドロキシル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
上記ノニオン系単量体として具体的には、例えば、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体;ヒドロキシル基含有単量体;アミド系単量体;芳香族ビニル系単量体;N−ビニルラクタム系単量体;エステル系単量体;等が挙げられる。中でも、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体やヒドロキシル基含有単量体が好適である。
−不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体−
不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体とは、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する不飽和単量体であるが、当該鎖の平均鎖長(オキシアルキレン基の平均付加モル数)は、2〜300であることが好適である。中でも、耐クレイ性向上の観点からは、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜20、特に好ましくは2〜10、最も好ましくは2〜5である。
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体のうちエーテル構造を有する単量体(不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体)としては、不飽和アルコール(ポリ)アルキレングリコール付加物が好適である。具体的には、例えば、ビニルアルコールアルキレンオキシド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキシド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、イソプレンアルコール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物等が好ましい。
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体のうちエステル構造を有する単量体(不飽和(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体)としては、不飽和カルボン酸(ポリ)アルキレングリコールエステル系化合物が好適であり、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートや、(ヒドロキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートがより好ましい。更に好ましくは、アルコキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。これらの中でも(メタ)アクリレートが好ましく、特にメタクリレートが好ましい。
−ヒドロキシル基含有単量体−
ヒドロキシル基含有単量体としては、ヒドロキシル基(水酸基)を含む(メタ)アクリレートが好適であり、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート(例えば、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等)、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、各種(メタ)アクリレートのアルキルエーテル(例えば、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート等)も挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、中でもメタクリレートが好ましい。
(ii)カチオン系単量体
カチオン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)とカチオン基とを含む化合物である。カチオン基としては、例えば、第3級アミン塩基、第4級アンモニウム塩基、ヒドラジド基、ピリジニウム塩基等が好適である。中でも、第3級アミン塩基、第4級アンモニウム塩基が好ましい。
上記カチオン系単量体として具体的には、例えば、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が好適である。第3級アミン塩としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の第3級アミンを、酸(例えば、塩酸、硫酸等の各種酸)で中和して得られる塩が挙げられる。
上記第4級アンモニウム塩としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩;ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等のビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のジアルルジアリルアンモニウム塩;等の他、第3級アミンを4級化して得た化合物(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライド4級塩等)等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル系4級塩が特に好ましい。
(iii)アニオン系単量体
アニオン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)とアニオン基とを含む化合物である。アニオン基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、炭酸基、ケイ酸基、ホスホン酸基、硝酸基、硫酸基等が挙げられる。これらの中でも、より優れた分散性能を発揮できる観点から、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の1種又は2種以上が好適であり、より好ましくはスルホン酸基である。
なお、アニオン基が塩の形態になっていてもよい。このようなアニオン塩の基も、「アニオン基」(アニオン性基とも称す)に含むものとする。
上記アニオン系単量体としては、例えば、カルボン酸系単量体、スルホン酸系単量体、リン酸系単量体等が好適である。
−カルボン酸系単量体−
カルボン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、カルボキシル基及び/又はカルボン酸塩(金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩)とを含む化合物である。
具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の不飽和モノカルボン酸や、これらの塩、ジカルボン酸系単量体とアルコール類とのハーフエステル等のモノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸や、これらの塩や無水物等のジカルボン酸系単量体;が好適である。中でも、重合性等の観点から、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸及びこれらの塩が好適である。より好ましくは、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(これらを総称して(メタ)アクリル酸系単量体とも称す)であり、上記マクロモノマーが(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構成単位を有することで、より少量でより一層優れた分散性能を発揮することが可能になる。更に好ましくは、メタクリル酸系単量体(メタクリル酸及び/又はその塩)である。
−スルホン酸系単量体−
スルホン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩(金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩)とを含む化合物である。
具体的には、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート等の不飽和スルホン酸類や、これらの塩等が挙げられる。これらの中でも、メタクリレートが特に好ましい。
−リン酸系単量体−
リン酸系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)と、リン酸基及び/又はリン酸塩(金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩)とを含む化合物であり、不飽和カルボン酸と1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物とのエステル化物と、リン酸とのエステル化物が好適である。
具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートとリン酸とのエステル化物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸とのエステル化物等が好適である。これらの中でも、メタクリレートが特に好ましい。
(iv)ベタイン系単量体
ベタイン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)とベタイン基とを含む化合物である。ベタイン基(双性イオン基とも称す)とは、カチオンとアニオンとを含む基を意味し、したがって、ベタイン系単量体とは、不飽和二重結合と、カチオン基と、アニオン基とを含む化合物ともいえる。カチオン基及びアニオン基としては、それぞれ上述した基が好ましく、また、これらの基は、それぞれ1分子中に1個であることが好ましい。
具体的には、例えば、2−メタクリロイルオキシエチル−ホスフォリルコリン、〔3−(メタクリロイルアミノ)プロピル〕ジメチル(3−スルホプロピル)アンニニウムヒドロキシド、〔2−(メタクリロイルオキシ)エチレル〕ジメチル(3−スルホプロピル)アンニニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらの中でも、メタクリレートが特に好ましい。
上記官能基含有単量体として特に好ましくは、下記一般式(6):
Figure 2016069346
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。Rは、任意の官能基を表す。)で表されるものである。
上記一般式(6)において、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。炭化水素基としては直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。製造上の観点からは、R及びRが水素原子を表し、かつRが炭素数1〜3の炭化水素基(特に好ましくはメチル基)を表すことが更に好適である。特に、R及びRが水素原子を表し、かつRがメチル基を表す形態は、本発明の特に好ましい形態である。
は、任意の官能基を表すが、要求性能に応じてRを適宜変更することができる。また、官能基含有単量体として上記一般式(6)で表される単量体を2以上用いる場合、それぞれの単量体におけるRとして同一又は異なる官能基を含んでもよく、この場合、得られるマクロモノマー及びそれに由来するポリマーは、それぞれの官能基に由来する性能を同時に発揮することができる。Rとして好ましくは、ノニオン基、カチオン基、アニオン基又はベタイン基である。
上記チオール化合物と官能基含有単量体との反応では、チオール化合物が有するメルカプト基から熱や光、放射線等を使用して発生したラジカル、又は、必要に応じて別に使用した重合開始剤によって発生したラジカルが、メルカプト基に連鎖移動し、その硫黄原子を介して、官能基含有単量体が次々に付加反応することが好適であり、これによりマクロモノマーが形成されることが好適である。
なお、この反応では、官能基含有単量体とともに、必要に応じて、官能基含有単量体以外の不飽和単量体を併用してもよい。
上記チオール化合物と官能基含有単量体との反応モル比は、求められる性能や用途によって適宜設定すればよい。例えば、チオール化合物が有するメルカプト基1モルに対し、官能基含有単量体が1〜300モルとなるように設定することが好ましい。例えば、官能基に由来する性能をより向上させる観点は、この数は大きいほど好適である。より好ましくは2以上、更に好ましくは5以上、特に好ましくは10以上である。また、例えば、今後所望のポリマーを得るために反応させる各種単量体に由来する性能を相対的により向上させる観点からは、250以下が好ましく、より好ましくは200以下である。
上記チオール化合物と官能基含有単量体との反応は、重合反応にて行うことが好ましい。中でも、重合開始剤を用いて、チオール化合物及び官能基含有単量体を少なくとも含む原料成分を共重合させることが好ましい。より好ましくは、重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いることである。
上記重合反応は、溶液重合や塊状重合等の通常の方法で行うことができる。中でも、溶液重合を行うことが好適である。溶液重合では、各種溶媒を使用することができるが、中でも、原料成分及び得られる重合体(マクロモノマー)の溶解性の観点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。溶液重合ではまた、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、溶媒の種類に応じてラジカル重合開始剤を選択することが好適である(例えば、溶媒として水を用いる場合は水溶性の重合開始剤を用いることが好ましい。)。
上記重合反応の反応温度は特に限定されないが、例えば、30〜100℃の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは45〜95℃である。また、反応時間(重合時間)も特に限定されないが、重合率や生産性を考慮すると、例えば、5分〜10時間の範囲が好ましく、より好ましくは30分〜6時間である。
上記重合反応において、重合開始剤、チオール化合物及び不飽和単量体(不飽和単量体とは、官能基含有単量体及び必要に応じて使用される官能基含有単量体以外の不飽和単量体の総称である。)の反応容器への投入方法は特に限定されず、それぞれ、全量を反応器に初期仕込みしてもよいし、全量を反応器に滴下してもよいし、一部を初期仕込みして残りを滴下してもよい。だが、最も好ましくは、反応容器に初期仕込みした溶媒中に、重合開始剤、チオール化合物及び不飽和単量体の全量を、滴下することである。これにより、所望のマクロモノマーを好適に得ることができる。
上記重合反応における、チオール化合物及び不飽和単量体の全使用量は、他の原料及び重合溶媒を含む全原料の総量100質量%に対し、10〜99質量%の範囲とすることが好適である。この範囲内で重合反応を行えば、重合率や生産性をより高めることができる。より好ましくは20〜98質量%、更に好ましくは30〜80質量%である。
上記反応で得られるマクロモノマーとして特に好ましくは、下記一般式(7):
Figure 2016069346
(式中の記号は、上述したとおりである。)で表すことができる。eは、上記チオール化合物が有するメルカプト基1モルに対する、官能基含有単量体のモル量を表す。好ましい範囲は、チオール化合物と官能基含有単量体との反応モル比として上述した範囲と同じである。
上記マクロモノマーの重量平均分子量は、マクロモノマーやそれに由来するポリマーの用途や要求性能等によって異なるが、例えば、500〜5万であることが好ましい。より好ましくは500〜3万、更に好ましくは1000〜1万である。
本明細書中、マクロモノマーやポリマーの分子量は、後述する実施例に記載の分析法(LS−GPC、GPCとはゲルパーミーエーションクロマトグラフィーを意味する。)により求めることができる。
上記チオール化合物と官能基含有単量体との反応によってマクロモノマーを得る工程の一例として、チオール化合物として2−メタリル−3−メルカプトプロパノエートを用い、官能基含有単量体としてメトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシド:9モル)メタクリレート(PGM9E)を用いた場合について、以下に概念的に簡略化して示す(式(A))。PEG鎖とは、ポリエチレングリコール鎖を意味する。
なお、2−メタリル−3−メルカプトプロパノエートの不飽和結合と、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等のメタクリル2重結合とは、重合性が悪くほとんど重合しない。このチオール化合物の不飽和結合とチオール基との反応性の違いを利用して、より一層効率的に、所望のマクロモノマーを得ることができる。具体的には、2−メタリル−3−メルカプトプロパノエートのチオール部位からメタクリレートとの連鎖移動重合が始まり、2−メタリル−3−メルカプトプロパノエートの不飽和結合を残存させたマクロモノマーを得ることができる。
Figure 2016069346
−マクロモノマー由来のポリマーの作製−
上述のようにして得られるマクロモノマーは、チオール化合物に由来する上記一般式(5)で表される不飽和部位と、不飽和単量体(好ましくは官能基含有単量体を含む)由来の構成単位とを含むため、当該マクロモノマー中の不飽和部位に各種単量体を反応させることで、上述したポリマーを容易かつ効率的に得ることができる。例えば、幹部分(幹ポリマー鎖)中に枝部分(枝ポリマー鎖)に繋がる三叉分岐点を有し、しかも該枝部分自体も、主鎖中に側鎖に繋がる三叉分岐点を有するという、極めて特殊な櫛型構造のポリマーを収率よく容易に得ることができる。このような櫛型ポリマーでは、マクロモノマーに由来して枝部分が生成され、マクロモノマーに反応させる各種単量体に由来して幹部分が構成されることになる。
上記マクロモノマーと各種単量体との反応は、マクロモノマー中に残存した不飽和部位と、各種単量体中の不飽和二重結合部分(C=C)とによる重合反応であることが好ましい。これによって、主鎖及び側鎖を含む枝部分と、幹部分とを有する櫛型ポリマーをより一層容易に得ることができる。櫛型ポリマーをより効率的に得るためには、各種単量体として、マクロモノマーが有する不飽和部位と重合性が良好な単量体を選択することが必要である。例えば、マクロモノマーの不飽和部位がメタリル基、3−メチル−3−ブテニル基の場合、良好な重合性の観点から、反応させる各種単量体としてはアクリル酸系単量体(アクリル酸及び/又はその塩)が好ましい。
上記反応で使用されるマクロモノマー及び各種単量体は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。単量体としては、不飽和二重結合部分(C=C)を含む化合物であれば特に限定されないが、例えば、得られるポリマーに分散性能を付与又は向上させる観点からは、アニオン性基を含む単量体(アニオン性基含有単量体とも称す)や、エステル基を含む単量体(エステル基含有単量体とも称す)が好ましく挙げられる。
上記マクロモノマーにアニオン性基含有単量体を反応させると、得られる櫛型ポリマーは、幹部分中にアニオン性基(アニオン基とも称す)を有することになるため、例えば、無機粒子への吸着性能、分散性能(流動性能とも称す)により優れるポリマーとなり得る。また、エステル基含有単量体を反応させると、得られる櫛型ポリマーは、幹部分中にエステル基を有することになるため、例えば、無機粒子を含む組成物中でエステル基が経時的に加水分解されてカルボキシル基が生成することに起因して、長時間にわたって無機粒子の分散性能を良好に発揮できるポリマーとなり得る。更に、上記マクロモノマーにアニオン性基含有単量体とエステル基含有単量体との両方を反応させることで、得られる櫛型ポリマーは、これら両者に由来する性能を同時に発揮することができる。
以下に、マクロモノマーに反応させる各種単量体として好適なアニオン性基含有単量体、エステル基含有単量体について、更に説明する。
(i)アニオン性基含有単量体
アニオン性基含有単量体は、不飽和二重結合部分(C=C)とアニオン性基とを含む化合物である。アニオン性基としては、上述した各種のアニオン基が挙げられる。中でも、より優れた分散性能を発揮できる観点から、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の1種又は2種以上が好適であり、より好ましくは、少なくともカルボキシル基を有することである。
上記アニオン性基含有単量体として具体的には、アニオン系単量体の好ましい例として上述した、カルボン酸系単量体、スルホン酸系単量体、リン酸系単量体等が好適である。これらの好ましい形態等は上述したとおりである。中でも、特に好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(これらを総称してアクリル酸系単量体とも称す)である。
なお、アニオン性基含有単量体として、1分子中に2種以上のアニオン性基を有する単量体を用いてもよいことは言うまでもない。
(ii)エステル基含有単量体
エステル基含有単量体は、不飽和二重結合部分(C=C)とエステル基とを含む化合物である。エステル基としては、例えば、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、炭酸エステル基、ケイ酸エステル基、ホスホン酸エステル基、硝酸エステル基、硫酸エステル基等が挙げられる。これらの中でも、より優れた分散性能を発揮できる観点から、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基等の1種又は2種以上が好適であり、より好ましくは、少なくともカルボン酸エステル基を有することである。
上記エステル基含有単量体として具体的には、カルボン酸エステル系単量体、スルホン酸エステル系単量体、リン酸エステル系単量体等が好適である。
カルボン酸エステル系単量体とは、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)を有し、かつカルボン酸エステル基(−COOR;Rは炭化水素基を表す)を1分子中に1又は2以上有する化合物であり、スルホン酸エステル系単量体とは、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)を有し、かつスルホン酸エステル基(−SOR;Rは炭化水素基を表す)を1分子中に1又は2以上有する化合物であり、リン酸エステル系単量体とは、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)を有し、かつリン酸エステル基(−(PO(R)(Rは炭化水素基を表し、異なる2種以上でもよい。mはPOの価数、nはRの価数である。)を1分子中に1又は2以上有する化合物である。これらは特に限定されるものではないが、各エステル基を構成するRは、例えば、炭素数1〜18のアルキル基であることが好適である。これらエステル基含有単量体の中でも、カルボン酸エステル系単量体が好ましく、特に好ましくはアクリル酸エステルである。
なお、エステル基含有単量体として、1分子中に2種以上のエステル基を有する単量体を用いてもよいことは言うまでもない。
上記反応で得られる櫛型ポリマーにおいては、例えば、無機粒子への吸着性能の観点から、アニオン性基含有単量体及び/又はエステル基含有単量体由来の構成単位と、枝部分に繋がる三叉分岐点となる構成単位(好ましくはエチレン性不飽和単量体由来の構成単位)と、アニオン性基含有単量体及びエステル基含有単量体以外の他の単量体由来の構成単位と、の合計量100質量%に対して、アニオン性基含有単量体及び/又はエステル基含有単量体由来の構成単位が占める割合が、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは3質量%以上である。
上記マクロモノマーと各種単量体との反応モル比は、求められる性能や用途によって適宜設定すればよい。例えば、得られる櫛型ポリマー中、各種単量体に由来する幹部分と、マクロモノマーに由来する枝部分との存在比(幹部分/枝部分、質量比)が、1〜99/99〜1になるように設定することが好適である。より好ましくは1〜50/99〜50、更に好ましくは5〜30/95〜70である。また、櫛型ポリマー中、枝部分に含まれる主鎖と側鎖との存在比(主鎖/側鎖、質量比)は、1〜99/99〜1であることが好ましく、より好ましくは1〜50/99〜50、更に好ましくは5〜30/95〜70である。
上記マクロモノマーと各種単量体との反応は、重合反応にて行うことが好ましい。中でも、重合開始剤を用いて、マクロモノマー及び各種単量体を少なくとも含む単量体成分を共重合させることが好ましい。より好ましくは、重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いることである。
上記重合反応は、溶液重合や塊状重合等の通常の方法で行うことができる。中でも、溶液重合を行うことが好適であり、溶液重合に関する好ましい形態等はチオール化合物と官能基含有単量体との反応に関して上述したとおりである。だが、得られる櫛型ポリマーを高分子量のものとするためには、溶媒として連鎖移動性が低いものを用いることが特に好ましく、最も好ましい溶媒は水である。また、マクロモノマー及び使用する各種単量体の溶媒への溶解度を考慮して、水、有機溶媒を選択することが好ましい。
上記重合反応の反応温度・反応時間は特に限定されないが、好ましくは、チオール化合物と官能基含有単量体との反応に関して上述した範囲である。
上記重合反応において、単量体成分及び重合開始剤の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応器に初期仕込みしてもよいし、全量を反応器に滴下してもよいし、一部を初期仕込みして残りを滴下してもよい。だが、各単量体成分間に反応性の違いがある場合は、それを考慮して投入方法を設定することが好適である。したがって、例えば、反応容器にマクロモノマーの一部又は全量を初期仕込みして、重合開始剤と各種単量体との全量を、滴下することが特に好ましい。これにより、所望の櫛型ポリマーをより一層効率的かつ容易に得ることができる。
上記重合反応における、全単量体成分の使用量は、他の原料及び重合溶媒を含む全原料の総量100質量%に対し、10〜99質量%の範囲とすることが好適である。この範囲内で重合反応を行えば、重合率や生産性をより高めることができる。より好ましくは20〜98質量%、更に好ましくは30〜80質量%である。
上記マクロモノマーと各種単量体との反応によって櫛型ポリマーを得る工程の一例として、マクロモノマーとして上記式(A)で得たマクロモノマーを用い、これに反応させる各種単量体としてアニオン性基含有単量体の一種であるアクリル酸(AA)を用いた場合について、以下に概念的に簡略化して示す(式(B))。
なお、マクロモノマーが有するメタリル2重結合と良好な共重合性を有するアクリル酸系単量体を用いることで、より一層良好な共重合性及び収率で櫛型ポリマーを得ることができる。
Figure 2016069346
〔好ましい用途〕
本発明のチオール化合物は、新規な化合物ゆえ種々様々な用途に用いることができるが、上述した一般式(1)で表される構造を有することに起因して、特に耐クレイ性を発揮することができるため、耐クレイ剤(クレイへの吸着性を抑制し、分散させるべき粒子に選択的に吸着する添加剤)用途に特に適している。本発明のチオール化合物を用いて得られる化合物(マクロモノマーやポリマー等)もまた、耐クレイ剤用途に特に適しているため、本発明のチオール化合物は、耐クレイ剤の調製に用いられることが特に好適である。最も好ましくは、耐クレイ性に加えて、無機粒子等の分散性能も同時に求められる用途である。
上記チオール化合物はまた、セメント、石炭微粉末等の他、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ジルコニア等の金属酸化物等の無機粒子に加える添加剤(無機粒子添加剤)用途にも適している。中でも、無機粒子分散剤用途に用いることが好ましく、より好ましくはセメント分散剤用途である。本発明のチオール化合物を用いて得られる化合物(マクロモノマーやポリマー等)もまた、無機粒子添加剤用途に適しているため、本発明のチオール化合物は、無機粒子添加剤の調製に用いられることが好ましい。中でも、セメント混和剤の調製に用いられることがより好ましく、更に好ましくは無機粒子分散剤の調製に用いられることであり、特に好ましくはセメント分散剤の調製に用いられることである。このように上記チオール化合物がセメント混和剤用原料、セメント分散剤用原料、無機粒子添加剤用原料又は無機粒子分散剤用原料である形態は、いずれも本発明の好適な形態である。また、上記チオール化合物を含むセメント混和剤用原料;上記チオール化合物を含むセメント分散剤用原料;上記チオール化合物を含む無機粒子添加剤用原料;上記チオール化合物を含む無機粒子分散剤用原料;のいずれも、本発明の好適な形態である。
上記チオール化合物は更に、早期強度発現剤、状態改善剤、空気連行剤、乾燥収縮低減剤等としても好適である他、これらの原料としても好適である。特に、耐クレイ性及び分散性能に加えて、早期強度発現性、状態改善特性、空気連行性又は乾燥収縮低減性等も同時に求められる用途に適している。
本発明のチオール化合物は、上述の構成よりなり、耐クレイ性に特に優れるポリマーを容易に与えることができる。それゆえ、本発明のチオール化合物を用いて得られる化合物(マクロモノマー及びポリマー)は種々様々な分野で有用なものであるが、中でも特に耐クレイ剤用途に適しており、当該ポリマーを含む耐クレイ剤は、土木・建築分野等の他、各種分野に有用なものである。
合成例1で得た反応生成物(チオール化合物(1))のH−NMRチャート図である。 製造例A−1における、PGM9Eとチオール化合物(1)との反応前の混合物のH−NMRチャート図である。 製造例A−1で得た反応生成物(マクロモノマー(1))のH−NMRチャート図である。 製造例B−1で得た反応生成物(櫛型ポリマー(1))のH−NMRチャート図である。 製造例A−2における、HEMAとチオール化合物(1)との反応前の混合物のH−NMRチャート図である。 製造例A−2で得た反応生成物(マクロモノマー(2))のH−NMRチャート図である。 製造例B−2で得た反応生成物(櫛型ポリマー(2))のH−NMRチャート図である。 試験例1、比較試験例1及び比較試験例2の減水性の評価結果を示した図である。 試験例2、試験例3及び比較試験例3のクレイへの吸着性の評価結果を示した図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部(又は重量部)」を、「%」は「質量%(又は重量%)」をそれぞれ意味するものとする。
以下の製造例等において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下のようにして測定した。
<分子量測定条件・測定方法(LS−GPC分析)>
使用カラム:東ソー社製、TSKguardcolumn α+TSKgel α−5000+TSKgel α−4000+TSKgel α−3000各1本ずつ連結。
使用溶離液:ホウ酸:49.46g、NaOH16.00gをイオン交換水7934.54gに溶解させた溶液に、アセトニトリル2000gを混合した溶液を用いる。
検出器:Viscotek社製トリプル検出器Model302
光散乱検出器:直角光散乱:90°散乱角度、低角度光散乱:7°散乱角度、セル容量:18μL、波長:670nm
標準試料:東ソー社製ポリエチレングリコールSE−8(Mw107000)を用い、そのdn/dCを0.135ml/g、使用溶離液の屈折率を1.333として装置定数を決定する。
標準試料:測定対象物の濃度が0.2vol%(体積%)になるように上記溶離液で溶解させた溶液を250μL注入
サンプル:測定対象物の濃度が1.0vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を250μL注入
流速:0.8ml/min
カラム温度:40℃
以下の製造例等において、各化合物のH−NMRチャートは、以下の条件で測定した。
<NMR測定条件>
1、チオール化合物のNMR測定条件
測定装置:バリアン社製 VNMRS600
観測周波数:600MHz
測定溶媒:CDCl
測定温度:25.0℃
積算回数:8回
化学シフト基準:TMS(0.00ppm)
2、マクロモノマーのNMR測定条件
測定装置:バリアン社製 VNMRS600
観測周波数:600MHz
測定溶媒:CDCl
測定温度:25.0℃
積算回数:8回
化学シフト基準:TMS(0.00ppm)
3、櫛型ポリマーのNMR測定条件
測定装置:バリアン社製 VNMRS600
観測周波数:600MHz
測定溶媒:CDCN
測定温度:25.0℃
積算回数:8回
化学シフト基準:CHCN(1.94ppm)
クレイへの吸着性評価では、以下の測定条件の下でTOCを測定した。
<TOC測定条件>
測定装置:全有機炭素計(SHIMADZU社製、TOC-L)
測定解析ソフト:TOC−ControlV Ver.2.00
検出器: 高感度NDIR(赤外線ガス分析)
キャリアガス: 高純度空気(住友精化社製、Air ZERO−F)
流量:150ml/分
燃焼管カラム温度:680℃
検量線用標準試料:フタル酸水素カリウムを100ppm、500ppmに調整
検量線用標準試料の作成方法:フタル酸水素カリウム(特級試薬)を2.125g秤量し、1Lメスフラスコを用い、イオン交換水を加え1000mgC/Lに調整した標準原液を2倍希釈、10倍希釈した希釈液を500ppm、100ppm検量線用調製液とし使用した。
合成例1(チオール化合物(1)の作製)
メルカプトプロピオン酸ジスルフィドを出発物質として用い、チオール化合物(1)(2−メタリル−3−メルカプトプロパノエート)を合成した。
具体的には、まずメルカプトプロピオン酸ジスルフィド(20g、95mmol)、メタリルアルコール(13.7g、209mmol)及びジメチルアミノピリジン(4.7g、 38mmol)のジクロロメタン溶液(60mL)に対して、10℃、窒素雰囲気下にてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(43.2g、209mmol)−ジクロロメタン溶液(40mL)をゆっくりと滴下した。次いで、室温で1時間攪拌した後、濾過操作にて析出してきた固体を除去した。得られた濾液にジクロロメタンを加え、総重量200gになるように調整し、トリエチルアミン(TEA)を18g加えた後、ジチオトレイトール(DTT)18.6gを加え1.5時間程度室温で撹拌した。分液漏斗を用いて反応系を0.1M塩酸で2回程度洗浄し、有機相を回収し、真空ラインを用いて溶媒を除去し淡黄色透明液体を得た。
この反応生成物のH−NMRチャート図を図1に示す。このH−NMRチャートより、反応生成物が下記式(a)で表されるチオール化合物(1)(2−メタリル−3−メルカプトプロパノエート)であることを確認した。
Figure 2016069346
製造例A−1(マクロモノマー(1)の作製)
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イソプロパノール68.75gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、下記式(b)で表されるメトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシド:9モル)メタクリレート(PGM9E)112.5gと、合成例1で得たチオール化合物(1)7.2gと、イソプロパノール23.99gとの混合物を反応容器内に4時間かけて滴下し、それと同時に、イソプロパノール37.39gに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製の「V−65」、以下「V−65」とも称す)0.1125gを溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られた生成物(マクロモノマー(1))をLS−GPCで分析すると、Mw=9000、Mn=5800、分散度(=Mw/Mn)=1.55であり、PGM9Eの消費率は81%、P純分(ポリマー純分)は81%であった。
Figure 2016069346
ここで、反応生成物(マクロモノマー(1))中にチオール化合物(1)由来のメタリル骨格の二重結合が残存していることを、H−NMRで確認した。PGM9Eとチオール化合物(1)との反応前の混合物のH−NMRチャート図を図2−1に、反応後の生成物についてのH−NMRチャート図を図2−2に、それぞれ示す。図2−1及び図2−2のいずれにおいても、ケミカルシフト5ppm付近にピーク(メタリル骨格の二重結合に由来するピーク)が認められるため、反応生成物中にチオール化合物(1)由来のメタリル骨格の二重結合(不飽和部位)が残存していることが確認できた。
また図2−2のH−NMRチャートより、反応生成物が、下記式(c)で表されるマクロモノマー(1)であることを確認した。式(c)中、ncは、括弧内の構成単位の平均繰り返し数を表し、Rは、水素原子、開始剤残基、連鎖移動剤残基等を表す。
Figure 2016069346
製造例B−1(櫛型ポリマー(1)の作製)
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、製造例A−1で得たマクロモノマー(1)のイソプロパノール48%溶液69.8gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、アクリル酸6.431gとイオン交換水5.635gとの混合物を反応容器内に1時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水7.465gに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬工業社製の「V−50」、以下「V−50」とも称す)0.5332gを溶解させた水溶液を1.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、櫛型ポリマー(1)を得た。
得られたポリマーをLS−GPCで分析すると、Mw=33000、 Mn=20000、分散度(=Mw/Mn)=1.65であり、アクリル酸の消費率は96%、マクロモノマー(1)の消費率は64%、P純分(ポリマー純分)は75%であった。
この反応生成物(櫛型ポリマー(1))のH−NMRチャート図を図3に示す。
製造例A−2(マクロモノマー(2)の作製)
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イソプロパノール61.34gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)112.5gと、合成例1で得たチオール化合物(1)9.0gと、イソプロパノール6.37gとの混合物を反応容器内に4時間かけて滴下し、それと同時に、イソプロパノール60.32gにV−65を0.4294g溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られた生成物(マクロモノマー(2))をLS−GPCで分析すると、Mw=10200、Mn=5600であった。
ここで、反応生成物(マクロモノマー(2))中にチオール化合物(1)由来のメタリル骨格の二重結合が残存していることを、H−NMRで確認した。HEMAとチオール化合物(1)との反応前の混合物のH−NMRチャート図を図4−1に、反応後の生成物についてのH−NMRチャート図を図4−2に、それぞれ示す。図4−1及び図4−2のいずれにおいても、ケミカルシフト7.25ppm付近にピーク(メタリル骨格の二重結合に由来するピーク)が認められるため、反応生成物中にチオール化合物(1)由来のメタリル骨格の二重結合(不飽和部位)が残存していることが確認できた。
また図4−2のH−NMRチャートより、反応生成物が下記式(d)で表されるマクロモノマー(2)であることを確認した。式(d)中、ndは、括弧内の構成単位の平均繰り返し数を表し、Rは、水素原子、開始剤残基、連鎖移動剤残基等を表す。
Figure 2016069346
製造例B−2(櫛型ポリマー(2)の作製)
製造例A−2で得たマクロモノマー(2)イソプロパノール溶液104.38gをジエチルエーテル500gに滴下し、沈殿物を濾過により回収した後、イオン交換水を加え、全量を83.56gにした(得られたものを「マクロモノマー(2)水溶液」と称す)。
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、マクロモノマー(2)水溶液83.56gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、アクリル酸2.225gとイオン交換水8.267gとの混合物を反応容器内に1時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水9.150gにV−50を0.208g溶解させた水溶液を1.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、櫛型ポリマー(2)を得た。
得られたポリマーをLS−GPCで分析すると、Mw=49000、Mn=26400であり、アクリル酸の消費率は98.81%、マクロモノマー(2)の消費率は74.28%であった。
この反応生成物(櫛型ポリマー(2))のH−NMRチャート図を図5に示す。
製造例A−3(マクロモノマー(3)の作製)
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イソプロパノール68.75gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)112.0gと、合成例1で得たチオール化合物(1)9.0gと、イソプロパノール22.26gとの混合物を反応容器内に4時間かけて滴下し、それと同時に、イソプロパノール63.77gにV−65を4.28g溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られた生成物(マクロモノマー(3))をLS−GPCで分析すると、Mw=28900、Mn=12900であった。
製造例A−4(マクロモノマー(4)の作製)
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イソプロパノール61.38gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)100.0gと、合成例1で得たチオール化合物(1)8.0gと、イソプロパノール19.87gとの混合物を反応容器内に4時間かけて滴下し、それと同時に、イソプロパノール56.93gにV−65を3.82g溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られた生成物(マクロモノマー(4))をLS−GPCで分析すると、Mw=6980、Mn=4300であった。
製造例B−3(櫛型ポリマー(3)の作製)
製造例A−2で得たマクロモノマー(2)イソプロパノール溶液79.04gをジエチルエーテル500gに滴下し、沈殿物を濾過により回収した後、イオン交換水を加え、全量を79.04gにした(得られたものを「マクロモノマー(2)水溶液」と称す)。
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、マクロモノマー(2)水溶液79.04gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、アクリル酸3.138gとイオン交換水9.825gとの混合物を反応容器内に1時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水4.780gにV−50を0.3414g溶解させた水溶液を1.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、櫛型ポリマー(3)を得た。
得られたポリマーをLS−GPCで分析すると、Mw=197500、Mn=50800であり、アクリル酸の消費率は99.24%、マクロモノマー(2)の消費率は95.61%であった。
比較製造例1
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、メタリルアルコールEO150モル付加物149.29g及びアクリル酸1.35gを仕込み水で総重量287.70gとし、58℃に昇温した。2%過酸化水素水溶液を33.80g加え、30分間58℃に維持した後、メタリルアルコールEO150モル付加物597.16gと水729.86gとの混合物を反応容器内に1時間かけて滴下し、それと同時に、アクリル酸62.20gと水15.55gとの混合物を反応容器内に3時間かけて滴下し、更にL−アスコルビン酸4.38gとメルカプトプロピオン酸4.96gと水64.40gとの混合物を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は45%であった。
得られた生成物(比較重合体1)をLS−GPCで分析すると、Mw=77300、Mn=28500であった。
<減水性評価>
以下の試験条件の下、櫛型ポリマー(2)を添加剤として用いて減水性(セメント分散性)を評価した(試験例1)。また、比較のため、添加剤としてリグニンスルホン酸塩(アルドリッチ社製:平均Mw8000、平均Mn3000)を用いた例(比較試験例1)、及び、プレーン(イオン交換水のみ。添加剤なし)(比較試験例2)についても、各々減水性を評価した。結果を図6に示す。
−試験条件−
セメント(太平洋セメント社製、普通ポルトランドセメント)500gに、添加剤を含むイオン交換水250g(水/セメント比(重量比)=0.50)を加え、ホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番N−50)を用いて30秒間低速で混練した後、ISO砂1350gを30秒間かけて加えた。その後30秒間中速で混練し、1分30秒間静置した後、更に1分間中速で混練することにより、セメントモルタルを調製した。
注水から5分半後のフロー値を、ミニスランプコーンを用いて測定した。
なお、試験例1では、セメントに対する櫛型ポリマーの使用量(固形分(不揮発分)の量、重量%)を0.2%として試験を行い、比較試験例1では、セメントに対するリグニンスルホン酸塩の使用量(固形分(不揮発分)の量、重量%)を0.2%及び0.4%として試験を行った。
<クレイへの吸着性評価>
以下の試験条件の下、櫛型ポリマー(2)又は(3)それぞれを添加剤として用いてクレイへの吸着性を評価した(試験例2、3)。また、比較のため、添加剤として比較製造例1で得た比較重合体1(メタリルアルコールEO付加物とアクリル酸との共重合体)を用いた例(比較試験例3)についても、クレイへの吸着性を評価した。結果を図7に示す。
−試験条件−
添加剤を含むセメント摸擬濾液(10mM CaSO・49mM NaSO・27mM KSO in 0.13M KOH水溶液)27gに、クニゲルV1(クニミネ工業社製)0.27gを加え、マグネチックスターラーを用いて10分間撹拌した後、メンブレンフィルター(粒径4.5um)を用いて溶液を濾過しクレイを取り除いた。その後TOC(全有機体炭素計、SHIMADZU社製、測定条件は上述のとおり。)を用いてクレイ混入前後の炭素濃度を測定することにより、添加剤のクレイへの吸着量を算出した。
各試験例では、ポリマーの添加量(クレイに対するポリマーの添加量(固形分(不揮発分)の量、重量%)を、0%、25%及び50%として試験を行った。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2016069346
    (式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。Xは、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。AOは、炭素数2〜8のオキシアルキレン基を表す。Yは、炭素数1〜5の炭化水素基を表す。aは、0又は1の数であり、bは、0〜4の数であり、cは、0又は1の数であり、dは、0又は1の数である。)で表されることを特徴とするチオール化合物。
  2. 前記Xは、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表すことを特徴とする請求項1に記載のチオール化合物。
  3. 前記Rは、メチル基を表し、
    前記Xは、メチレン基又はエチレン基を表すことを特徴とする請求項1に記載のチオール化合物。
  4. 前記チオール化合物は、耐クレイ剤の調製に用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチオール化合物。
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