JP6557005B2 - 無機粒子添加剤用櫛型ポリマー及びその用途 - Google Patents
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Description
本発明はまた、上記無機粒子添加剤用櫛型ポリマーを製造する方法であって、該製造方法は、エチレン性不飽和単量体由来の不飽和部位を含むマクロモノマーと、エステル基含有単量体とを反応させる工程を含む無機粒子添加剤用櫛型ポリマーの製造方法でもある。
本発明はまた、上記無機粒子添加剤用櫛型ポリマーを含むセメント混和剤でもある。
本発明は更に、上記無機粒子添加剤用櫛型ポリマーを含む無機粒子添加剤でもある。
本発明はそして、上記無機粒子添加剤用櫛型ポリマー、セメント及び水を含むセメント組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ又は3つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の無機粒子添加剤用櫛型ポリマー(単に「櫛型ポリマー」とも称す)は、幹部分と枝部分とを有する櫛型ポリマーであり、幹部分は、1種又は2種以上のエステル基を、1又は2以上有する。
幹部分(コア部分とも称す)が有するエステル基としては、例えば、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、炭酸エステル基、ケイ酸エステル基、ホスホン酸エステル基、硝酸エステル基、硫酸エステル基等が挙げられる。これらの中でも、より優れた分散性能を発揮できる観点から、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基及びリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましい。すなわちエステル基が、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基及びリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種の基である形態は、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、エステル基として、少なくともカルボン酸エステル基を有することである。
なお、エステル基含有単量体として、1分子中に2種以上のエステル基を有する単量体を用いてもよいことは言うまでもない。
以下に、エステル基含有単量体として好適なカルボン酸エステル系単量体、スルホン酸エステル系単量体及びリン酸エステル系単量体について、更に説明する。
カルボン酸エステル系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)を有し、かつカルボン酸エステル基を1分子中に1又は2以上有する化合物である。
Rで表される有機基は、櫛型ポリマーに要求される性能に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、炭化水素基;(アルコキシ)(ポリ)オキシアルキレン基;等が好適であり、これらの有機基は、水酸基等の置換基で置換されていてもよい。
なお、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して「(メタ)アクリル酸」という。
スルホン酸エステル系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)を有し、かつスルホン酸エステル基を1分子中に1又は2以上有する化合物である。
スルホン酸エステル基とは、−SO3R(Rは有機基を表す)で表される基であり、Rで表される有機基については、上述したとおりである。
リン酸エステル系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)を有し、かつリン酸エステル基を1分子中に1又は2以上有する化合物である。
リン酸エステル基とは、−(PO4)m(R)n(Rは有機基を表し、異なる2種以上でもよい。mはPO4の価数、nはRの価数である。)で表される基であり、Rで表される有機基については、上述したとおりである。
具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートとリン酸とのエステル化物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸とのエステル化物等が好適である。これらの中でも、アクリレートが特に好ましい。
他の単量体は特に限定されず、例えば、後述するノニオン系単量体、カチオン系単量体、アニオン系単量体、ベタイン系単量体等の1種又は2種以上を使用することができる。
櫛型ポリマーの枝部分(アーム部分とも称す)は、主鎖と側鎖とを含む。側鎖とは、枝部分のうち、主鎖から枝分かれしている炭素鎖を意味する。したがって、本発明の櫛型ポリマーは、枝部分自体も、主鎖中に、側鎖に繋がる三叉分岐点を有するという櫛型構造をもつものである。
なお、枝部分の主鎖に、一般式(2)で表される構成単位を2以上有する場合(すなわちyが2以上の場合)、R1及びQは、それぞれ同一であってもよいし異なっていてもよい。
このように本発明では、枝部分の側鎖に複数の同一又は異なる官能基を導入することができ、この場合、それぞれの官能基に由来する性能を同時に発揮することができる。本発明の櫛型ポリマーは、この点でも有利な効果を有する。
なお、一般式(3)中、−(X)a−の酸素原子とは反対側の結合手、及び、硫黄原子の−(Y)d−とは反対側の結合手は、任意である。
ノニオン基の場合、特にアルキレンオキシド鎖であれば立体障害による無機粒子の分散効果を期待することができる。また、アルキル基であれば無機粒子を含む組成物(例えば、コンクリート等のセメント組成物)の状態を改善する効果を期待することができる。
カチオン基の場合、アミノ基由来のカチオン性基が好ましく、コンクリート等のセメント組成物の強度向上、状態改良改善効果等が期待できる。
アニオン基の場合、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン基を導入することで、電気反発効果により無機粒子を分散させることが期待できる。
ベタイン基の場合、水中あるいは塩水中でベタイン基同士の反発によりベタイン基を有するポリマー鎖が大きく広がることから、立体反発により無機粒子を効果的に分散させることが期待でき、また水溶性に優れることから水中での起泡性が低い(水中での空気連行性が低い)ことが期待できる。
なお、官能基含有単量体として、2種以上の官能基を含む単量体を用いてもよいことは言うまでもない。
以下に、官能基含有単量体として好適なノニオン系単量体、カチオン系単量体、アニオン系単量体及びベタイン系単量体について、更に説明する。
ノニオン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)とノニオン基とを含む化合物である。ノニオン基(非イオン基、ノニオン性基とも称す)としては、例えば、エーテル基、ヒドロキシル基、アミド基、芳香族ビニル基、N−ビニルラクタム基、アルキル基等が挙げられる。エーテル基として具体的には、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコール基、アルキルエーテル基等が挙げられ、ヒドロキシル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
これらのノニオン系単量体について、以下、更に説明する。
不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体としては、例えば、下記一般式(I):
上記「C(R9)H=C(R10)−(CH2)p−」で表されるアルケニル基として具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基等が挙げられる。これらの中でも、ビニル基、アリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテニル基が好ましい。
なお、R9及びR10としては、R9が水素原子であり、かつR10がメチル基であることが特に好適である。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)、フェニル基、アルキル置換フェニル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等が好適である。中でも、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)がより好ましい。
R11として特に好ましくは、水素原子、炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又は、炭素数3の脂環式アルキル基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基である。
ヒドロキシル基含有単量体としては、ヒドロキシル基(水酸基)を含む(メタ)アクリレートが好適であり、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート(例えば、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等)、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、各種(メタ)アクリレートのアルキルエーテル(例えば、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート等)も挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、中でもメタクリレートが好ましい。
アミド系単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド又はその4級塩(塩酸、硫酸、スルホン酸、酢酸等の酸性物質との4級塩、塩化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキルとの4級塩等);N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド又はその4級塩(塩酸、硫酸、スルホン酸、酢酸等の酸性物質との4級塩、塩化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキルとの4級塩等);N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N−ビニルホルムアミド;N−ビニルアセトアミド;(メタ)アクリルアミドのアルキレンオキシド付加物;等が挙げられる。中でも特に、メタクリル系アミド化合物が好ましい。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メトキシスチレン等が挙げられる。
N−ビニルラクタム系単量体としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾリン等が挙げられる。
エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐状の飽和又は不飽和アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸と、芳香環又は複素環を有するアルコールとのエステル;等を挙げることができる。炭素数1〜18のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、sec−ブタノール、ter−ブタノール等の低級アルコール;オクチルアルコール、ドデシルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコール;を挙げることができる。芳香環を有するアルコールとしては、例えば、フェノール、ナフトール、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
カチオン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)とカチオン基とを含む化合物である。カチオン基としては、例えば、第3級アミン塩基、第4級アンモニウム塩基、ヒドラジド基、ピリジニウム塩基等が好適である。中でも、第3級アミン塩基、第4級アンモニウム塩基が好ましい。
アニオン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)とアニオン基とを含む化合物である。アニオン基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、炭酸基、ケイ酸基、ホスホン酸基、硝酸基、硫酸基等が挙げられる。中でも、より優れた分散性能を発揮できる観点から、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましい。より好ましくはカルボキシル基である。
ベタイン系単量体は、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合)とベタイン基とを含む化合物である。ベタイン基(双性イオン基とも称す)とは、カチオンとアニオンとを含む基を意味し、したがって、ベタイン系単量体とは、不飽和二重結合と、カチオン基と、アニオン基とを含む化合物ともいえる。カチオン基及びアニオン基としては、それぞれ上述した基が好ましく、また、これらの基は、それぞれ1分子中に1個であることが好ましい。
官能基含有単量体以外の不飽和単量体とは、特に限定されるものではなく、任意の不飽和単量体の1種又は2種以上を使用することができる。
また数平均分子量が1000〜50万であることが好適である。より好ましくは5000〜40万、更に好ましくは1万〜30万である。
本明細書中、ポリマーの分子量は、後述する実施例に記載の分析法(LS−GPC、GPCとはゲルパーミーエーションクロマトグラフィーを意味する。)により求めることができる。
なお、以下の概念図では、特徴的な部分のみを抜粋して記載した。波線は、(ポリ)アルキレングリコール基を表し、「HEMA」とは、ここではメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに由来する部分(メタクリル系2重結合以外の部分)を表す。
本発明の櫛型ポリマーは、エチレン性不飽和単量体由来の不飽和部位を含むマクロモノマー(単に「マクロモノマー」とも称す)と、エステル基含有単量体とを反応させて得られるものが好ましい。本発明の櫛型ポリマーでは、このマクロモノマーに由来して枝部分が構成されることが好ましく、エステル基含有単量体に由来して幹部分が構成されることが好適である。このようにエチレン性不飽和単量体由来の不飽和部位を含むマクロモノマーと、エステル基含有単量体とを反応させる工程を含む(ポリ)アニオン系櫛型ポリマーの製造方法は、本発明の1つである。
なお、上記製造方法で用いられる各化合物は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
上記マクロモノマーは、エチレン性不飽和単量体由来の不飽和部位を含む化合物である。その重量平均分子量は、本発明の櫛型ポリマーの用途や要求性能等によって異なるが、例えば、500〜5万であることが好ましく、より好ましくは500〜3万、更に好ましくは1000〜1万である。
なお、一般式(7)において、硫黄原子の−(Y)d−とは反対側の結合手は、任意である。
このような観点から、上記マクロモノマーは、上記エチレン性不飽和単量体とは異なる不飽和単量体由来の構成単位として、下記一般式(4):
官能基含有単量体以外の不飽和単量体とは、特に限定されるものではなく、任意の不飽和単量体の1種又は2種以上を使用することができる。
上記マクロモノマーを得る方法は特に限定されないが、例えば、メルカプト基と不飽和部位とを有するチオール化合物(単に「チオール化合物」とも称す)に、官能基含有単量体を反応させて得る手法が好ましく用いられる。具体的にいうと、マクロモノマー合成には、チオール化合物の不飽和部位とメルカプト基との反応性の違いを利用すれば、効率よくマクロモノマーを合成することができる。合成戦略の一例を挙げると、チオール化合物に、該チオール化合物の不飽和部位と共重合しない官能基含有単量体を反応させることができれば、チオール化合物のメルカプト基から連鎖移動重合が進行し、その結果、チオール化合物の不飽和部位を残存させ、かつ官能基含有単量体の重合鎖を導入したマクロモノマーを収率よく良好に合成することができる。
上記反応に使用される官能基含有単量体については上述したとおりであるが、官能基含有単量体とともに、官能基含有単量体以外の不飽和単量体を併用してもよい。例えば、上記反応に使用される全ての不飽和単量体の総量100質量%のうち、官能基含有単量体の割合が50質量%以上とすることが好適である。これによって、官能基に由来する各種性能がより一層発揮される。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
なお、官能基含有単量体以外の不飽和単量体についても上述したとおりである。
チオール化合物は、メルカプト基と不飽和部位とを有する化合物である。不飽和部位とは、エチレン性不飽和単量体由来のものが好ましく、より好ましくは上記一般式(6)で表されるものである。したがって、チオール化合物としては、メルカプト基と上記一般式(6)で表される不飽和部位とを有する化合物であることが特に好適である。これにより、生成したマクロモノマー中に当該不飽和部位が残存しやすく、この不飽和部位がその後の エステル基含有単量体との反応に利用されやすくなる。
具体的には、上記一般式(6)中、R1はメチル基が特に好ましく、一般式(6)で表される不飽和部位は、メタリル基又は3−メチル−3−ブテニル基であることが特に好ましいが、例えば、このような不飽和部位を有するチオール化合物に、官能基含有単量体としてメタクリル酸系単量体を反応(好ましくは重合反応)させると、メタクリル系単量体は、メタリル基や3−メチル−3−ブテニル基とは重合せずに、メルカプト基に選択的に反応し、該メタリル基や3−メチル−3−ブテニル基をマクロモノマー中に容易に残存させることができる。その結果、得られたマクロモノマーに、該マクロモノマーの不飽和部位(残存した不飽和部位)と重合可能なエステル基含有単量体を重合させることにより、本発明の櫛型ポリマーを更に良好に得ることができる。
以下に、製法(i)及び(ii)の好ましい形態を更に説明する。
上記ジスルフィド結合含有ジカルボン酸を得る方法として好ましくは、上述したメルカプト基含有カルボン酸をジスルフィド化反応させて得る方法である。ジスルフィド化反応は、通常の手法で行えばよく、特に限定されるものではない。
上記チオール化合物と官能基含有単量体との反応では、チオール化合物が有するメルカプト基から熱や光、放射線等を使用して発生したラジカル、又は、必要に応じて別に使用した重合開始剤によって発生したラジカルが、メルカプト基に連鎖移動し、その硫黄原子を介して、官能基含有単量体が次々に付加反応することが好適であり、これによりマクロモノマーが形成されることが好適である。
なお、この反応では、官能基含有単量体とともに、必要に応じて、官能基含有単量体以外の不飽和単量体を併用してもよい。
溶液重合は、回分式でも連続式でも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、原料成分及び得られる重合体(マクロモノマー)の溶解性の観点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
なお、2−メタリル−3−メルカプトプロパノエートの不飽和結合と、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等のメタクリル2重結合とは、重合性が悪くほとんど重合しない。このチオール化合物の不飽和結合とチオール基との反応性の違いを利用して、より一層効率的に、所望のマクロモノマーを得ることができる。具体的には、2−メタリル−3−メルカプトプロパノエートのチオール部位からメタクリレートとの連鎖移動重合が始まり、2−メタリル−3−メルカプトプロパノエートの不飽和結合を残存させたマクロモノマーを得ることができる。
上記マクロモノマーとエステル基含有単量体との反応は、マクロモノマー中に残存した不飽和部位と、エステル基含有単量体中の不飽和二重結合部分(C=C)とによる重合反応であることが好ましい。これによって、主鎖及び側鎖を含む枝部分と、幹部分とを有する本発明の櫛型ポリマーをより一層容易に得ることができる。更に櫛型ポリマーを効率的に得るためには、マクロモノマーが有する不飽和部位と重合性が良好なエステル基含有単量体を選択することが必要である。具体的には、マクロモノマーの不飽和部位がメタリル基、3−メチル−3−ブテニル基の場合、良好な重合性の観点から、エステル基含有単量体としてはアクリル酸エステル系単量体が好ましい。
なお、他の単量体については上述したとおりである。
なお、マクロモノマーが有するメタリル2重結合と良好な共重合性を有するアクリル酸系単量体を用いることで、より一層良好な共重合性及び収率で櫛型ポリマーを得ることができる。
本発明の櫛型ポリマーは、セメント、石炭微粉末等の他、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ジルコニア等の金属酸化物等の無機粒子に加える添加剤(無機粒子添加剤)用途に特に適している。特に、上記櫛型ポリマーは無機粒子の分散性及び分散保持性に優れるため、無機粒子分散剤用途に用いることが好ましく、より好ましくは、セメント分散剤用途である。このように上記櫛型ポリマーがセメント混和剤用ポリマー、セメント分散剤用ポリマー、無機粒子分散剤用ポリマーである形態も、いずれも本発明の好適な形態である。また、上記櫛型ポリマーを含むセメント混和剤;上記櫛型ポリマーを含むセメント分散剤;上記櫛型ポリマーを含む無機粒子添加剤;上記櫛型ポリマーを含む無機粒子分散剤;のいずれも、本発明の好適な形態である。
本発明のセメント組成物は、上述した本発明の櫛型ポリマー、セメント及び水を含むが、必要に応じて、更に骨材(細骨材、粗骨材等)を含むことが好適である。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
<分子量測定条件・測定方法(LS−GPC分析)>
使用カラム:東ソー社製、TSKguardcolumn α+TSKgel α−5000+TSKgel α−4000+TSKgel α−3000各1本ずつ連結。
使用溶離液:ホウ酸:49.46g、NaOH16.00gをイオン交換水7934.54gに溶解させた溶液に、アセトニトリル2000gを混合した溶液を用いる。
検出器:Viscotek社製トリプル検出器Model302
光散乱検出器:直角光散乱:90°散乱角度、低角度光散乱:7°散乱角度、セル容量:18μL、波長:670nm
標準試料:東ソー社製ポリエチレングリコールSE−8(Mw107000)を用い、そのdn/dCを0.135ml/g、使用溶離液の屈折率を1.333として装置定数を決定する。
標準試料:測定対象物の濃度が0.2vol%(体積%)になるように上記溶離液で溶解させた溶液を250μL注入
サンプル:測定対象物の濃度が1.0vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を250μL注入
流速:0.8ml/min
カラム温度:40℃
<NMR測定条件>
1、チオール化合物のNMR測定条件
測定装置:バリアン社製 VNMRS600
観測周波数:600MHz
測定溶媒:CD3Cl
測定温度:25.0℃
積算回数:8回
化学シフト基準:TMS(0.00ppm)
測定装置:バリアン社製 VNMRS600
観測周波数:600MHz
測定溶媒:CD3Cl
測定温度:25.0℃
積算回数:8回
化学シフト基準:TMS(0.00ppm)
メルカプトプロピオン酸ジスルフィドを出発物質として用い、チオール化合物(1)(2−メタリル−3−メルカプトプロパノエート)を合成した。
具体的には、まずメルカプトプロピオン酸ジスルフィド(20g、95mmol)、メタリルアルコール(13.7g、209mmol)及びジメチルアミノピリジン(4.7g、 38mmol)のジクロロメタン溶液(60mL)に対して、10℃、窒素雰囲気下にてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(43.2g、209mmol)−ジクロロメタン溶液(40mL)をゆっくりと滴下した。次いで、室温で1時間攪拌した後、濾過操作にて析出してきた固体を除去した。得られた濾液にジクロロメタンを加え、総重量200gになるように調整し、トリエチルアミン(TEA)を18g加えた後、ジチオトレイトール(DTT)18.6gを加え1.5時間程度室温で撹拌した。分液漏斗を用いて反応系を0.1M塩酸で2回程度洗浄し、有機相を回収し、真空ラインを用いて溶媒を除去し淡黄色透明液体を得た。
この反応生成物の1H−NMRチャート図を図1に示す。この1H−NMRチャートより、反応生成物が下記式(a)で表されるチオール化合物(1)(2−メタリル−3−メルカプトプロパノエート)であることを確認した。
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イソプロパノール55.05gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、下記一般式(b)で表されるメトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシド:平均9モル付加)メタクリレート90.0gと、合成例1で得たチオール化合物(1)5.8gと、イソプロパノール27.05gとの混合物を反応容器内に4時間かけて滴下し、それと同時に、イソプロパノール29.91gに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製の「V−65」、以下「V−65」とも称す)を0.09g溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は45%であった。
得られた生成物(マクロモノマー(1))をLS−GPCで分析すると、Mw=9400、Mn=5800であった。
また図2−2の1H−NMRチャートより、反応生成物が、下記式(c)で表されるマクロモノマー(1)であることを確認した。式(c)中、ncは、括弧内の構成単位の平均繰り返し数を表し、Rcは、水素原子、開始剤残基、連鎖移動剤残基等を表す。
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イソプロパノール61.34gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)112.5gと、合成例1で得たチオール化合物(1)9.0gと、イソプロパノール6.37gとの混合物を反応容器内に4時間かけて滴下し、それと同時に、イソプロパノール60.32gにV−65を0.4294g溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られた生成物(マクロモノマー(2))をLS−GPCで分析すると、Mw=10200、Mn=5600であった。
また図3−2の1H−NMRチャートより、反応生成物が下記式(d)で表されるマクロモノマー(2)であることを確認した。式(d)中、ndは、括弧内の構成単位の平均繰り返し数を表し、Rdは、水素原子、開始剤残基、連鎖移動剤残基等を表す。
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イソプロパノール68.75gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)112.0gと、合成例1で得たチオール化合物(1)9.0gと、イソプロパノール22.26gとの混合物を反応容器内に4時間かけて滴下し、それと同時に、イソプロパノール63.77gにV−65を4.28g溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られた生成物(マクロモノマー(3))をLS−GPCで分析すると、Mw=28900、Mn=12900であった。
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イソプロパノール61.38gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)100.0gと、合成例1で得たチオール化合物(1)8.0gと、イソプロパノール19.87gとの混合物を反応容器内に4時間かけて滴下し、それと同時に、イソプロパノール56.93gにV−65を3.82g溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られた生成物(マクロモノマー(4))をLS−GPCで分析すると、Mw=6980、Mn=4300であった。
製造例A−1で得たマクロモノマー(1)のイソプロパノール溶液中のイソプロパノールを減圧乾燥により留去した。
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、マクロモノマー(1)40.83g及びイオン交換水31.77gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、アクリル酸1.082g及び2−ヒドロキシエチルアクリル酸2.621gとイオン交換水7.002gとの混合物を反応容器内に1時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水10.463gに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬工業社製の「V−50」、以下「V−50」とも称す)を0.2378g溶解させた水溶液及びイオン交換水5.907gにメルカプトプロピオン酸を0.093g溶解させた水溶液を1.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られたポリマーをLS−GPCで分析すると、Mw=42000、Mn=25000、ポリマー純分は73%であった。
製造例A−1で得たマクロモノマー(1)のイソプロパノール溶液中のイソプロパノールを減圧乾燥により留去した。
温度計、攪拌機、滴下ライン、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、マクロモノマー(1)41.46g及びイオン交換水32.81gを仕込み、80℃に昇温した。30分間80℃に維持した後、アクリル酸3.138gとイオン交換水4.957gとの混合物を反応容器内に1時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水11.910gにV−50を0.2707g溶解させた水溶液及びイオン交換水5.8940gにメルカプトプロピオン酸を0.106g溶解させた水溶液を1.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する重量%濃度)は40%であった。
得られたポリマーをLS−GPCで分析すると、Mw=48400、Mn=25500、ポリマー純分は83%であった。
以下の試験条件の下、本発明の櫛形ポリマー(1)及び比較櫛形ポリマー(1)について、モルタル流動性保持の評価を行った。結果を表1に示す。
セメント(太平洋セメント製普通ポルトランドセメント)500gに、セメント分散剤を含むイオン交換水250g(水/セメント比(重量比)=0.50)を加え、ホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番N−50)を用いて30秒間低速で混練した後、ISO砂1350gを30秒間かけて加えた。その後30秒間中速で混練し、1分30秒間静置した後、更に1分間中速で混練することにより、セメントモルタルを調製した。注水から5分半後のフロー値を、ミニスランプコーンを用いて測定した。また、保持性を評価するために、初期フロー値が190±10mmとなる添加量(重量%)として、本発明の櫛形ポリマー(1)では0.15%、比較櫛形ポリマー(1)では0.07%を添加し、注水後30分後及び60分後のフロー値をそれぞれ測定した。
Claims (8)
- 無機粒子添加剤用途に使用される櫛型ポリマーであって、
該櫛型ポリマーは、幹部分と枝部分とを有し、
該幹部分は、カルボン酸エステル基を有し、
該枝部分は、主鎖と側鎖とを含み、該主鎖が、下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を有する
ことを特徴とする無機粒子添加剤用櫛型ポリマー。 - 前記カルボン酸エステル基は、−COOR(Rは、水酸基を有するアルキル基である)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載の無機粒子添加剤用櫛型ポリマー。
- 前記枝部分の側鎖は、ノニオン基、カチオン基、アニオン基及びベタイン基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の無機粒子添加剤用櫛型ポリマー。
- 前記無機粒子添加剤用櫛型ポリマーは、エチレン性不飽和単量体由来の不飽和部位を含むマクロモノマーと、カルボン酸エステル系単量体とを反応させて得られ、
該エチレン性不飽和単量体由来の不飽和部位を含むマクロモノマーは、下記一般式(8)
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機粒子添加剤用櫛型ポリマー。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の無機粒子添加剤用櫛型ポリマーを製造する方法であって、
該製造方法は、エチレン性不飽和単量体由来の不飽和部位を含むマクロモノマーと、カルボン酸エステル系単量体とを反応させる工程を含み、
該エチレン性不飽和単量体由来の不飽和部位を含むマクロモノマーは、下記一般式(8)
ことを特徴とする無機粒子添加剤用櫛型ポリマーの製造方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の無機粒子添加剤用櫛型ポリマーを含むことを特徴とするセメント混和剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の無機粒子添加剤用櫛型ポリマーを含むことを特徴とする無機粒子添加剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の無機粒子添加剤用櫛型ポリマー、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。
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