JP2014088479A - 多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体、分散剤、セメント混和剤、セメント組成物、及び、多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents
多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体、分散剤、セメント混和剤、セメント組成物、及び、多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(B)を枝状部の一部又は全部とし、上記枝状部を3つ以上有し、一部の上記枝状部の末端部位に上記高分子鎖(A)を有する構造を持つことを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。
【選択図】なし
Description
特に、分子構造及び製造方法がシンプルであり、優れた特性を発揮するセメント混和剤が求められている。
また、本発明者らは、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系重合体は、上記高分子鎖を枝状部の一部又は全部とし、上記枝状部を3つ以上有し、一部の上記枝状部の末端部位に有機残基を有する構造を持つことを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が、シンプルな構造にもかかわらずセメント分散性(減水性)やスランプフロー等の特性に優れ、セメント混和剤として好適に用いることができる重合体となることを見出した。
また、第二の本発明は、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系重合体は、上記高分子鎖を枝状部の一部又は全部とし、上記枝状部を3つ以上有し、一部の上記枝状部の末端部位に有機残基を有する構造を持つことを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体である。
以下、本明細書中において、単に「本発明」という場合には第一及び第二の本発明に共通する事項を意味するものとする。
以下、第一の本発明について説明し、その後に第二の本発明について説明する。
第二の本発明の説明においては第一の本発明と異なる技術的特徴について説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
第一の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(B)を枝状部の一部又は全部とし、上記枝状部を3つ以上有し、一部の上記枝状部の末端部位に上記高分子鎖(A)を有する構造を持つことを特徴とする。
まず、第一の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の構造について説明する。
第一の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(B)を枝状部の一部又は全部とし、上記枝状部を3つ以上有し、一部の上記枝状部の末端部位に上記高分子鎖(A)を有する構造を持つものである。
ここでいう多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系ブロック共重合体とは、好ましくは、3つ以上の枝状部が、活性水素を有する化合物の残基(Z)を基点として、枝分かれした構造である。すなわち、活性水素を有する化合物の残基を基点として、そこから、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)が結合した構造である。
このような多分岐構造を有する本発明の重合体は、特にセメント分散性能に優れており、しかも新規な重合体であるために今後様々な分野に応用できる可能性を有するものである。
mは、上記高分子鎖Aと上記高分子鎖(B)nとが結合部位Xを介して結合した枝状部の数を表し、pは、水素原子と上記高分子鎖(B)nとが結合した枝状部の数を表す。m及びpの合計は3以上の数である。
以下、本明細書において、単に「枝状部」という場合には、上記高分子鎖Aと上記高分子鎖(B)nとが結合部位Xを介して結合した枝状部、及び、水素原子と上記高分子鎖(B)nとが結合した枝状部の両方をいうものとする。
上記枝状部の数の好ましい下限値としては5である。好ましい上限値としては20であり、より好ましくは13であり、さらに好ましくは7である。
また、上記枝状部の数は、活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素数に等しいことが好ましい。すなわち、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素の一部に上記枝状部が結合した構造を有することが好適である。これによって、更に優れた分散性能を発揮し得るセメント混和剤を与えることが可能となる。
また上記式(3)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基、活性水素6個)であり、ソルビトールが有する活性水素全てに枝状部が結合し、6つの枝状部のうち、3つの枝状部の末端部位に不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)を有する構造を模式的に示したものである。
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは25万以下、さらに好ましくは15万以下、さらにより好ましくは10万以下、特に好ましくは75000以下、最も好ましくは35000以下である。また、1000以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上であり、さらに好ましくは5000以上であり、特に好ましくは10000以上であり、最も好ましくは、15000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
本発明において、不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)は、不飽和アニオン系単量体が重合した構造を有する構成単位である。
また、上記不飽和アニオン系単量体単位は、不飽和アニオン系単量体に由来するのと同じ構造の構成単位となるのであれば、他の単量体に由来する構成単位を変性したものであってもよい。
不飽和アニオン系単量体としては、不飽和カルボン酸系単量体(以下、単に「単量体(a)」ともいう。)、不飽和スルホン酸系単量体(以下、単に「単量体(b)」ともいう。)、不飽和リン酸系単量体(以下、単に「単量体(c)」ともいう。)が好ましい。
単量体(a)としては、例えば、下記式(4):
すなわち、単量体(a)は、C=C二重結合に結合した少なくとも一つのカルボキシル基又はその塩(−COOM1)を有する、不飽和カルボン酸系単量体である。
なお、上記単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(4)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
中でも、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩が特に好ましい。
これらの不飽和アニオン系単量体は2種以上併用してもよい。
以下、不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数の値とは、枝状部1つに含まれる、不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数を意味する。
上記平均導入モル数のより好ましい下限値としては6であり、さらに好ましくは8であり、特に好ましくは10である。好ましい上限値としては50であり、より好ましくは35であり、さらに好ましくは20である。
上記平均導入モル数を6以上とすることにより、上記共重合体に不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、上記平均導入モル数が100を超える場合には、共重合体全体における不飽和アニオン系単量体の導入量が多くなり、その結果セメントを分散させるポリアルキレングリコール系構成単位が少なくなりすぎるためにセメント分散性能が低下することになる。適切に不飽和アニオン系単量体単位とポリアルキレングリコール系構成単位の比率を設定する必要がある。
ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)は、炭素数2〜18のアルキレンオキシドから構成される高分子鎖(ポリアルキレンオキシド)であればよい。以下、ポリアルキレングリコールをPAGともいう。
より好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキシドであり、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
なお、上記共重合体に求められる用途によっては、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含まない態様が好ましい場合もある。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基、アルキルグリシジルエーテル残基等が挙げられる。中でも、製造の容易さからオキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基の導入量としては、求められる耐加水分解性の程度によるが、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端に対して、導入量が50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは100モル%以上であり、さらに好ましくは150モル%以上であり、特に好ましくは200モル%以上である。
オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上の数であると、上記共重合体にポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1000を超える場合には、上記共重合体を製造するために使用する原料化合物の粘性が増大したり、反応性が充分とはならない等、作業性の点で好適なものとはならないおそれがある。
上記平均付加モル数の下限値としては、より好ましくは10、さらに好ましくは20であり、さらにより好ましくは50であり、特に好ましくは75であり、特により好ましくは80であり、最も好ましくは100である。上限値としては、より好ましくは800であり、さらに好ましくは700であり、さらにより好ましくは600であり、特に好ましくは500であり、特により好ましくは300であり、最も好ましくは200である。
なお、上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、枝状部1つにおいて付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
第一の本発明に係る共重合体における結合部位(X)としては、不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)とポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とを化学的に安定に結合し得る構造を有する部位であればその構造は特に限定されるものではない。
上記結合部位の好ましい構造としては、重合反応に用いられる連鎖移動剤となる構造に由来する有機残基が挙げられる。
結合部位(X)の例としては、(i)硫黄原子を含む結合部位、(ii)アゾ開始剤由来の結合部位、(iii)リン原子を含む残基由来の結合部位、(iv)その他の構造由来の結合部位等が挙げられる。
結合部位として複数箇所存在する有機残基の構造はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
硫黄原子を含む結合部位としては、例えば、下記式(5):
上記硫黄原子を含む結合部位の中でも、特に下記式(6):
上記式(6)で示される結合部位の一端の構造(式(6)の左側の結合)は、メルカプトカルボン酸のカルボキシル基とポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基との間で脱水エステル化反応を起すことによって得られる。
上記エステル化反応により得られたチオールエステルを連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和モノカルボン酸系単量体(a)をブロック重合させることができ、その結果として上記式(6)に示す構造の結合部位となる。
メルカプトカルボン酸の例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、3―メルカプトイソ酪酸、11−メルカプトウンデカン酸等が挙げられる。これらの中でも3―メルカプトイソ酪酸、3−メルカプトプロピオン酸が好ましい。
アゾ開始剤由来の結合部位としては、アゾ基を含む重合開始剤(アゾ開始剤)に由来する部位であり、例えば、下記式(7)に示すようなアゾ開始剤に由来する構造が好ましい。
より好ましくは、下記式(8)で示されるアゾ開始剤が挙げられる。
リン原子を含む結合部位としては、例えば、下記式(11):
Yはポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する部位であり、Yと結合する次亜リン酸(塩)のリン原子は、不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)と結合する部位である。
これらの中でも、より好ましくは、炭素数2〜18の2価の有機残基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものであり、更に好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものである。
その他の構造由来の結合部位の具体例としては、以下のような連鎖移動剤由来の結合部位が挙げられる。これらのうち、硫黄原子を有するものは、上記(i)硫黄原子を含む結合部位にも含まれる。
例えば、ポリアルキレングリコールの末端の−OH基に、ハロゲン化亜鉛を用いて、チオ酢酸、チオ安息香酸などのチオカルボン酸を反応させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、−OH基を−SH基に変換した化合物;ポリアルキレングリコールとチオ酢酸との存在下、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)とトリフェニルホスフィンとを反応させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、ポリアルキレングリコールの末端の−OH基を−SH基に変換した化合物;ポリアルキレングリコールの末端の−OH基に、臭化アリルなどのハロゲン化アリルをSN2反応させてポリアルキレングリコールの末端をアリル化した化合物;ポリアルキレングリコールの末端にアリル基などの二重結合を有する化合物に、チオ酢酸、チオ安息香酸などのチオカルボン酸を付加させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、−SH基に変換した化合物;
これらの化合物(連鎖移動剤)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本明細書において、活性水素を有する化合物の残基とは、活性水素を有する化合物から活性水素を除いた構造を有する基を意味し、該活性水素とは、アルキレンオキシドが付加できる水素を意味する。このような活性水素を有する化合物の残基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
なお、活性水素を有する化合物残基の構造としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
更に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の2価以上のアミン化合物や、それらの1種又は2種以上を重合して得られるポリアミンであってもよい。このようなポリアミンは、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
これらの中でも、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が奏する性能の観点から、エチレンイミンを重合して得られるポリエチレンイミンがより好適である。
これらの中でも、工業的な生産効率の観点から、より好ましくは、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタンである。
次に、本発明における多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法の一例として、メルカプトカルボン酸に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合について以下に説明する。
このようなポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
エステル化反応工程では、活性水素を3個以上有する化合物にポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を付加させた後、上記高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基の一部に対してメルカプトカルボン酸のカルボキシル基を反応させてエステル結合を生成し、下記式(12)で示すチオールエステルを得る。
以下では、下記構造のチオールエステルをPAGチオール化合物ともいう。
上述したように、上記PAGチオール化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて不飽和アニオン系単量体成分をラジカル重合することにより、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
単量体(a)のカルボキシル基の中和率は好ましくは0〜50mol%、さらに好ましくは3〜40mol%、特に好ましくは5〜30mol%である。
なお、上記促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、併用する重合開始剤の総量を100モルとすると、好ましくは10モル以上、より好ましくは20モル以上、さらに好ましくは50モル以上であり、また、好ましくは1000モル以下、より好ましくは500モル以下、さらに好ましくは400モル以下である。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。その際、窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、例えば、セメント混和剤用途に用いた場合に分散性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、さらに好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。このように重合系が酸性から中性となる好ましい重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物等の水溶性アゾ開始剤、過酸化水素、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせ等を用いることが好ましい。
ここまで、メルカプトカルボン酸に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合の例について説明したが、結合部位としてその他の構造を有する共重合体を製造する方法について以下に説明する。
アゾ開始剤の末端がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造を有するものは、例えば、アゾ基の両末端にカルボキシル基を有するアゾ開始剤(V−501など、和光純薬工業株式会社製)と、ポリアルキレングリコールとをエステル化することにより得ることもできる。エステル化の方法としては、加熱工程を行うとアゾ開始剤が分解するので、加熱工程を含まない製法が必要である。そのような製法としては、(1)アゾ開始剤に塩化チオニルを反応させて酸塩化物を合成した後、ポリアルキレングリコールを反応させてアゾ開始剤を得る方法;(2)アゾ開始剤とポリアルキレングリコールとを、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および必要に応じて4−ジメチルアミノピリジンを用いて、脱水縮合することによりアゾ開始剤を得る方法;などが挙げられる。
上記化合物Cは、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に、不飽和基を有する化合物を付加させる方法によって合成してもよい。付加の形態としてはエステル化、エーテル化、アミド化など、公知の方法を用いることができる。付加させる不飽和化合物は、アルキレンオキシドに付加できるものであれば良い。
精製溶媒は適宜選べばよいが、例えばTHF、アセトニトリル、クロロホルム、イソプロピルアルコール等が好ましい。
抽出溶媒は適宜選べばよいが、高極性溶媒として水、メタノール、アセトニトリル、ジオキサンなどを用いて行うことが好ましい。低極性溶媒としてジエチルエーテル、シクロヘキサン、クロロホルム、メチレンクロライドなどを用いて行うことが好ましい。
不飽和アニオン系単量体をラジカル重合させる工程は、PAGチオール化合物を連鎖移動剤として使用するブロック重合工程と同様にして行うことが出来るため、その詳細な説明は省略する。
このような本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を含む分散剤もまた、本発明の1つである。
中でも、本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上述したように極めて高度のセメント分散性能を発揮できることから、セメント混和剤用途に用いることが好適である。このように、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を含むセメント混和剤もまた、本発明の1つである。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
第二の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系重合体は、上記高分子鎖を枝状部の一部又は全部とし、上記枝状部を3つ以上有し、一部の上記枝状部の末端部位に有機残基を有する構造を持つことを特徴とする。
このような構造を有することで、第一の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を製造することができる。
<LCによるポリエチレングリコールの消費率測定>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:Waters社製 Atlantis dC18 ガードカラム+カラム(粒径5μm、内径4.6mm×250mm×2本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
試料液注入量:100μL(試料濃度1〜2質量%の溶離液溶液)
重合体の重量平均分子量、数平均分子量及びピークトップ分子量の測定は、以下の条件により行った。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(PAG、PAGチオール化合物は試料濃度0.4質量%の溶離液溶液)
得られたRIクロマトグラムにおいて、ポリマー溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ポリマーを検出・解析した。ただしモノマーやモノマー由来の不純物のピークがポリマーピークに一部重なって測定された場合、それらとポリマーの重なり部分の最凹部において垂直分割してポリマー部とモノマー部を分離し、ポリマー部のみの分子量・分子量分布を測定した。ポリマー部とそれ以外が完全に重なり分離できない場合はまとめて計算した。
またポリマーの収率の目安として、RI検出器によるピーク面積の比より、「ポリマー純分」を下記のようにして計算した。
ポリマー純分=(ポリマーピーク面積)/(ポリマーピーク面積+モノマーや不純物のピーク面積)
CE分析は、以下の条件により行った。
装置:ベックマンコールター MDQ
解析ソフト:32Karat
使用キャピラリー:シリカ素管、50cm EfectiveLength、75μmI.D、375μm O.D
溶離液:リン酸二水素ナトリウム二水和物43.68gとリン酸水素二ナトリウム十二水和物42.98gをイオン交換水313.34gに溶解させたもの
検出器:UV
電圧:20kV
キャピラリー温度:25℃
測定時間:60分
(1)脱水エステル化反応工程
ジムロート冷却管付のディーン・スターク装置、SUS製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えたガラス製反応器内に、ソルビトールにエチレンオキシドを平均モル数450付加させた6分岐型のポリエチレングリコール(SB450、日本乳化剤社製)を1000.00部、3−メルカプトイソ酪酸(MiBA、東京化成社製)を19.82部、p−トルエンスルホン酸一水和物(PTS・1H2O、和光純薬工業社製)を20.40部、フェノチアジン(PTZ、和光純薬工業社製)を0.51部、シクロへキサン(CyH)を50.99部を仕込んだ。ディーン・スターク装置をシクロへキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。また、加温用オイルバスの温度は120±5℃とした。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロヘキサンを加え、62.5時間水を留去しながら加温還流し反応を行った。
反応終了後、固化しないように撹拌しながら60℃まで放冷した後、30%NaOH水溶液13.58部にイオン交換水978.72部を加えた水溶液を、速やかに反応器内に投入した。続いて徐々に約100℃まで加温し、シクロへキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で60分バブリングして残存シクロへキサンを除去し、PAGチオール化合物(1)の水溶液を得た。
得られた目的化合物のLC分析結果は、SB450の消費率が95.0%、SB450一分子に対する平均SH導入数が3.0個であった。
単量体(a)の溶液として、メタクリル酸9.392部、30%水酸化ナトリウム水溶液1.455部にイオン交換水36.26部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液70.74部にイオン交換水47.16部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.5917部にイオン交換水29.41部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、60℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(1)の水溶液を得た。
不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ95.00%であった。
単量体(a)の溶液として、メタクリル酸5.529部、30%水酸化ナトリウム水溶液0.856部にイオン交換水27.52部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液78.66部にイオン交換水52.44部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.3483部にイオン交換水29.65部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、60℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(2)の水溶液を得た。
不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ90.00%であった。
比較例1では、下記に示す方法で、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステルにメタクリル酸が重合した非分岐型の重合体を製造した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水1698部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃まで加温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数25個)1668部、メタクリル酸332部及びイオン交換水500部を混合し、さらに連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸16.7部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調製した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸アンモニウム水溶液184部をそれぞれ4時間で滴下し、滴下終了後更に10%過硫酸アンモニウム水溶液46部を1時間で滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。そして、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、比較重合体(1)の水溶液を得た。
GPCによる重合体測定の結果、Mw=23800、Mp=18200、Mn=12000であった。また、重合体純分は95.5%であった。
実施例1、2及び比較例1で製造した重合体をセメント混和剤として用いて、以下のようにしてコンクリートのスランプフロー値を測定した。
セメント(C):太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント(密度:3.16g/cm3)
細骨材(S):大井川水系陸砂(密度:2.69g/cm3、吸水率:1.3%)/千葉県君津山砂(密度:2.57g/cm3、吸水率:2.9%)を重量比9:1で混合したもの
粗骨材(G):青梅産硬質砂岩砕石(表面密度:2.66g/cm3、最大寸法:20mm)
水(W):上水道水
(2)単位量(kg/m3)
W/C=53.1
s/a=48.0
セメント=320.2
水=170.0
砂=878.8
石=942.1
(3)使用ミキサー:太平洋機工社製、TM55(55リットル強制練パン型ミキサー)、練り量30リットル
(4)試験方法
AE剤としてマイクロエア202(BASFポゾリス社製)と、消泡剤としてマイクロエア404(BASFポゾリス社製)を用いた。細骨材(S)とセメント(C)をミキサーに投入し、10秒間空練りを行い、次いで、セメント混和剤とAE剤と消泡剤込みの水(W)、粗骨材(G)を投入し、45又は60秒間混錬を行った後、コンクリートを排出した。
得られたコンクリートのスランプフロー値は、日本工業規格(JIS A1101−2005年、A1128−2005年、A6204−2006年)に準拠して測定した。なお、スランプフロー値は大きいほど、コンクリートの流動性が高いことを示す。スランプフロー値が同等であれば、添加量が少ない混和剤ほど、セメント分散性能が良好であり、減水性能が高いことを示す。
以上から、本発明の共重合体がセメント混和剤として好適に用いることができる重合体であることが明確になった。
Claims (11)
- 不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、
前記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、
前記高分子鎖(B)を枝状部の一部又は全部とし、前記枝状部を3つ以上有し、一部の前記枝状部の末端部位に前記高分子鎖(A)を有する構造を持つことを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。 - 前記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、前記結合部位(X)が硫黄原子を有することを特徴とする請求項1に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。
- 請求項1又は2に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック重合体を含むことを特徴とする分散剤。
- 請求項1又は2に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック重合体を含むことを特徴とするセメント混和剤。
- 請求項4に記載のセメント混和剤、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。
- ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系重合体であって、
前記多分岐ポリアルキレングリコール系重合体は、
前記高分子鎖を枝状部の一部又は全部とし、前記枝状部を3つ以上有し、一部の前記枝状部の末端部位に有機残基を有する構造を持つことを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。 - 前記多分岐ポリアルキレングリコール系重合体は、一部の前記枝状部の末端部位に硫黄原子を有する構造を持つことを特徴とする請求項6に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。
- 請求項6又は7に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック重合体を含むことを特徴とする分散剤。
- 請求項6又は7に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック重合体を含むことを特徴とするセメント混和剤。
- 請求項9に記載のセメント混和剤、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。
- 請求項1又は2に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法であって、
前記製造方法は、請求項6又は7に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体における一部の前記枝状部の末端部位に、不飽和アニオン系単量体を重合する工程を含むことを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法。
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