JP5710860B2 - 多分岐ポリアルキレングリコール系重合体及びその製造方法、セメント混和剤並びにセメント組成物 - Google Patents
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Description
そして近年では、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に添加されるセメント混和剤用途が検討されている。このようなセメント混和剤は、通常、減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を発揮させることを目的として使用される。減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、ポリアルキレングリコール鎖がその立体反発によりセメント粒子を分散させる分散基として作用することができるため、ポリアルキレングリコール鎖を含有するポリカルボン酸系減水剤が高い減水作用を発揮するものとして新たに提案され、最近では高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
そして、本発明の重合体を用いて得られるセメント混和剤が、かつてない程に分散性能を発揮できることを見いだし、これを含んでなるセメント組成物がその分野で特に有用なものとなることを見いだし、本発明に到達したものである。
以下に本発明を詳述する。
本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体は、ポリアルキレングリコール鎖が活性水素を3個以上有する化合物の残基に結合し、かつ上記ポリアルキレングリコール鎖の他末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、ビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体の主鎖末端と有機残基を介して結合した構造を有するものである。
以下では、本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体を「重合体(i)」、そのポリアルキレングリコール鎖が有機残基を介して結合することになるビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体を「重合体(ii)」ともいう。
なお、活性水素を有する化合物残基の形態としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
これらの中でも、ポリアルキルアミンを用いることが好ましく、ポリアルキルアミンを構成するアルキルアミンとしては、ラウリルアミン等の炭素数8〜18のアルキルアミンが好適である。
これらの中でも、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が奏する性能の観点から、エチレンイミンが主体を占めるポリアルキレンイミンであることがより好適である。
これらの中でも、工業的な生産効率の観点から、より好ましくは、トリメチロールプロパンやソルビトールである。
上記活性水素を3個以上有する化合物が結合する上記ポリアルキレングリコール鎖の数としてはまた、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素数に等しいことが好ましい。すなわち、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素原子全てにポリアルキレングリコール鎖が結合した構造を有することが好適である。これによって、更に優れた分散性能を発揮し得るセメント混和剤を与えることが可能となるため、様々な用途に適用可能な化合物とすることができる。
下記式(A)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がグリセリン残基(多価アルコール残基)であり、グリセリンが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール鎖と、硫黄原子を含む有機残基を介して重合体(ii)とが結合した構造を模式的に示したものである。
また下記式(B)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基)であり、ソルビトールが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール鎖と、硫黄原子を含む有機残基を介して重合体(ii)とが結合した構造を模式的に示したものである。
上記ポリアルキレングリコール鎖としては、炭素数2以上のアルキレンオキシドから構成されるもの(ポリアルキレンオキシド)であればよく、該アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜18のアルキレンオキシドが好適である。より好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキシドであり、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
なお、上記重合体(i)に求められる用途によっては、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含まない態様が好ましい場合もある。
なお、上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、上記重合体(i)が有するポリアルキレングリコール鎖1モル中において付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
上記有機残基としては、分子量が1000以下の基であることが好適である。1000を超えると、該基自体が加水分解し易くなり、安定的に重合体(ii)とポリアルキレングリコール鎖とを結合することができないおそれがあり、また、該基の導入が困難になり、経済性が損なわれるおそれがある。より好ましくは500以下であり、更に好ましくは300以下である。
このように上記有機残基が硫黄原子を有する場合には、該硫黄原子を介して上記重合体(ii)の主鎖末端とが結合することが好適である。このような形態では、後述するように、その製造時に、硫黄原子の反応性に起因して硫黄原子を介して単量体が次々に付加し、重合体(ii)部位を形成することになるため、製造に有利である。
この場合、上記有機残基とポリアルキレングリコール鎖との結合部位においては、カルボニル基(アミド基中の−CO基を含む)に含まれる炭素原子と、ポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接することが好適である。すなわち、上記重合体(i)は、ポリアルキレングリコール鎖とY2とがエステル結合又はアミド結合を介して結合したものであることが好ましい。
なお、上記単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(1)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
なお、上記単量体(b)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(2)で示される単量体(b)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記R7で表される末端基としては、セメント混和剤用途に用いる場合には、セメント粒子の分散性の観点から親水性基であることが好適であり、具体的には、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
ここで、「主として」とは、例えば、ポリアルキレングリコール鎖を構成する全オキシアルキレン基(アルキレングリコール単位)100モル%中のオキシエチレン基をモル%で表すとき、50〜100モル%となるものであることが好ましい。50モル%未満であると、オキシアルキレン基の親水性が充分とはならず、セメント粒子の分散性能を充分に付与することができないおそれがある。より好ましくは60モル%以上であり、更に好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは90モル%以上である。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、製造の容易さの観点から、プロピレンオキシド基及びブチレンオキシド基が好ましく、中でも、プロピレンオキシド基がより好適である。
上記不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物としては、不飽和基を有するアルコールにポリアルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物であればよい。
上記ポリアルキレングリコールエステル系単量体としては、不飽和基とポリアルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された構造を有する単量体であればよく、不飽和カルボン酸ポリアルキレングリコールエステル系化合物が好適であり、中でも、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好適である。
上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1〜30の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の炭素数3〜30の脂環族アルコール類;(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数3〜30の不飽和アルコール類等が挙げられる。
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、
この場合、上記重合体(ii)は、更に上記単量体(c)由来の構成単位を含むことになるが、上記単量体(c)由来の構成単位とは、重合反応によって単量体(c)の有する重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記単量体(c)を用いる場合、その含有量としては、全ビニル系単量体成分100質量%に対し、30質量%以下とすることが好適である。より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数23〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数23〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸系単量体とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数5〜18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;マレアミン酸と炭素原子数5〜18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
このようなポリアルキレングリコール鎖の末端(活性水素を3個以上有する化合物の残基とは反対側の末端)は、例えば、水素原子、1価金属原子、2価金属原子、アンモニウム基、有機アミン基、炭素数1〜30の炭化水素基、オキソ炭化水素基、アミド炭化水素基、カルボキシル炭化水素基、炭素数0〜30のスルホニル(炭化水素)基等のいずれかに結合した構造を有することが好適であり、1分子内に2つ以上の当該ポリアルキレングリコール鎖を有する場合には、その末端構造が同一であってもよく異なっていてもよい。このような末端構造の中でも、汎用性の点から、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基、より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜10の炭素水素基に結合した構造であり、炭素数1〜10の炭化水素基の中でもアルキル基やアルキレン基が好適である。
すなわち、例えば上記多分岐ポリアルキレングリコール系重合体(i)が上記一般式(3)で表される重合体である場合、該重合体は、下記一般式(4);
上記pは、Xで表される活性水素を3個以上有する化合物の活性水素数及びmの数に依存して最大数が決まる数であるが、有機残基を介して重合体(ii)に結合するポリアルキレングリコール鎖に起因した効果を充分に発揮させるため、活性水素を3個以上有する化合物が結合する該ポリアルキレングリコール鎖の数が3以上となるように、pが、〔(活性水素を3個以上有する化合物の全活性水素数)−3〕以下の数であることが好適である。
なお、重合体の重量平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
本発明はまた、上記多分岐ポリアルキレングリコール系重合体(i)を製造する方法であって、上記製造方法は、下記一般式(5);
なお、ポリアルキレングリコール鎖を含み、多分岐構造を有する重合体であって、上記一般式(5)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有化合物の存在下でビニル系単量体成分を重合して得られる多分岐ポリアルキレングリコール系重合体もまた、本発明の1つである。
なお、Xで表される活性水素を3個以上有する化合物の残基、AOで表される炭素数2〜18のオキシアルキレン基、Y1で表される有機残基、及び、nで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数については、上述したとおりである。またmは、上記Xで表される活性水素を3個以上有する化合物が結合する、有機残基を介して上記重合体(ii)に結合したポリアルキレングリコール鎖の数を表し、これについても上述したとおりである。
なお、このようなポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物以外にも、上記ポリアルキレングリコール鎖含有化合物として、メルカプト基以外の、重合体(ii)の主鎖末端との反応性を有するものであって、連鎖移動剤又はラジカル開始剤となり得る基を有するものを用いることも可能である。このような基としては、例えば、過酸化物基、アゾ基が挙げられる。このような化合物でも、ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物と同様に重合反応が行われることになる。
このような製造方法において、上記活性水素を3個以上有する化合物としては、上述したように、多価アルコール、多価アミン、多価イミン、多価アミド化合物等が好ましく、中でも、多価アミン、ポリアルキレンイミン及び多価アルコールが好適である。これらについては、上述したとおりである。
上記アルキレンオキシドもまた、上述したとおりである。
また上記活性水素を3個以上有する化合物と、アルキレンオキシドとの反応モル比としては、上述したポリアルキレングリコール鎖におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数の好適範囲になるよう、適宜設定することが好ましい。
なお、上記活性水素を3個以上有する化合物にアルキレンオキシドを付加してなる化合物(以下、単に「付加物」ともいう。)として、市販の化合物を用いることもできる。
上記脱水縮合工程において、カルボキシル基を有するチオール化合物とは、1分子中にカルボキシル基(カルボン酸基)とメルカプト基とを有するメルカプトカルボン酸基含有化合物であればよい。
このようなメルカプトカルボン酸基含有化合物としては、例えば、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトイソブチル酸、チオリンゴ酸、メルカプトステアリン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酪酸、メルカプトオクタン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトニコチン酸、システイン、N−アセチルシステイン、メルカプトチアゾール酢酸等が挙げられる。中でも、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプトイソブチル酸が好適である。
なお、上記チオール化合物が有するメルカプト基の性質上、上記脱水縮合工程は、酸触媒下で行うことが好適である。酸触媒としては、上述したとおりである。
このように上記付加物とチオール化合物との脱水縮合工程は、酸触媒を用いたエステル化反応工程であることが好適である。
なお、作業工程が増えることによる製造コストの高騰、及び、溶剤の使用による環境への負荷を考慮すると、上記溶剤を用いた洗浄作業は避けることが好ましい。この場合、原料化合物である上記付加物とチオール化合物との混合比は、上述したように上記付加物が有する反応に供される水酸基量に対し、上記チオール化合物が有するカルボキシル基をモル比で2倍以下とすることが好適である。
このように、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が、副生成物として多量化物を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
下記式は、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が、上述した式(b)(活性水素を3個以上有する化合物がソルビトールであり、ソルビトールが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール鎖及びカルボニル基を有する基を介してメルカプト基が結合した形態)である場合に、2つのメルカプト基がジスルフィド結合を生成して二量体を生成した形態を模式的に示したものである。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、通常使用されているものを用いればよいが、例えば、フェノチアジン及びその誘導体;ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、メトキノン、ブチルハイドロキノン、ブチルカテコール、ナフトハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール、トコトリエノール、カテキン等のフェノール化合物;トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジフェニルピクリルヒドロジン、ピクリン酸等のニトロ化合物;ニトロソベンゼン、クペロン等のニトロソ化合物;ジフェニルアミン、ジ−p−フルオロフェニルアミン、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド等のアミン系化合物;TEMPOラジカル(2,2,6,6−tetramethyl−1−piperidinyloxyl)、ジフェニルピクリルヒドラジル、ガルビノキシル、フェルダジル等の安定ラジカル;アルコルビン酸やエリソルビン酸及びその塩又はエステル;ジチオベンゾイルジスルフィド;塩化銅(II)等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、フェノチアジン及びその誘導体、フェノール系化合物、アルコルビン酸やエリソルビン酸及びそのエステルが好適であり、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンがより好適である。これらの酸化防止剤は、脱水縮合工程においても溶剤留去工程においても極めて有効に重合禁止能を発揮することができる点から有用である。
例えば、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物の存在下で重合反応を行った場合には、上述したように末端の硫黄原子(S)を介して単量体が次々に付加して上記重合体(ii)が形成され、よって、本発明の重合体(i)が主成分として生成することになるが、上記重合体(ii)の構造が2以上繰り返されている形態や、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)のうち1以上の単量体に由来する構成単位を有する重合体が副次的に生成することもある。
なお、上記促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、併用する重合開始剤の総量を100モルとすると、好ましくは10モル以上、より好ましくは20モル以上、更に好ましくは50モル以上であり、また、好ましくは1000モル以下、より好ましくは500モル以下、更に好ましくは400モル以下である。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
なお、重合開始剤として、過硫酸塩や過酸化水素を用いた場合には、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が有するメルカプト基が酸化され、得られる重合体の収率が充分とはならないおそれがある。
上記連鎖移動剤の使用量は、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物の態様や量に応じて適宜設定すればよいが、ビニル系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。その際、窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、例えば、セメント混和剤用途に用いた場合に分散性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(より好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、更に好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。このように重合系が酸性から中性となる好ましい重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物等の水溶性アゾ開始剤、過酸化水素、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせ等を用いることが好ましい。なお、より好ましくは、上述したようにアゾ系開始剤を少なくとも使用することである。
pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行うことができる。また、pHを下げる場合、特に重合の際にpHの調整が必要な場合、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸等の酸性物質を用いてpHの調整を行うことができ、これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等からリン酸や少量の添加でpHを下げることができる硫酸が好ましい。また、反応終了後、必要に応じて濃度調整を行うこともできる。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
なお、セメント添加剤の添加割合としては、上記重合体(i)の固形分100重量部に対し、0.0001〜10重量部とすることが好適である。
(3)遅延剤:グルコン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
まず、ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物やその重合体及び比較用重合体の分析方法として、液体クロマトグラフィー(LC)分析条件・解析条件、及び、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析条件・解析条件について説明する。また、これらの固形分を求める測定法についても説明する。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:GLサイエンス Inertsil ODS−2 ガードカラム+カラム(内径4.6mm×250mm×3本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:0.6mL/分
カラム温度:40℃
試料液注入量:100μL(試料濃度1質量%の溶離液溶液)
原料成分である付加物の消費率は、以下のようにして概算した。
LC分析により、メルカプト基が全く導入されなかったもの(未反応原料)、メルカプト基が1つ導入されたポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物(「PAGチオール化合物」ともいう。)、・・・、メルカプト基が(m+p)個導入されたPAGチオール化合物のピークが分離される。これらのRI(示差屈折率計)面積比(%)をS0、S1、・・・Sm+pとし、原料成分の付加物の消費率は、以下の式(1)により概算した。
ポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体や比較用重合体の重量平均分子量は、以下の測定条件により測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(PAG、PAGチオール化合物は試料濃度0.4質量%、重合体は試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
RIクロマトグラムにおいて、溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ピークを検出・解析した。多量体や不純物が目的ピークに一部重なって測定された場合は、ピークの重なり部分の最凹部において垂直分割し、目的物の分子量を測定した。
単量体純分量及び多量化物量の計算;
RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
単量体純分量=(PAGチオール化合物面積)/(多量化物ピーク面積+PAGチオール化合物面積)
多量化物量=(多量化物ピーク面積)/(多量化物ピーク面積+PAGチオール化合物面積)
得られたRIクロマトグラムにおいて、重合体溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、重合体を検出・解析した。ただし、単量体や単量体由来の不純物のピークが重合体ピークに一部重なって測定された場合、それらと重合体の重なり部分の最凹部において垂直分割して重合体部と単量体部とを分離し、重合体部のみの分子量・分子量分布を測定した。重合体部とそれ以外が完全に重なり分離できない場合はまとめて計算した。
重合体純分の計算:
RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
重合体純分=(重合体ピーク面積)/(重合体ピーク面積+単量体や不純物のピーク面積)
サンプル約0.5gをアルミ皿に量り採り、水約1gで希釈して均一に広げた。窒素雰囲気下、130℃で1時間乾燥させ、デシケーター中で放冷した後、乾燥後質量を量った。乾燥前後の質量差により固形分(不揮発分)濃度を計算した。
PAGチオール化合物や重合体の水溶液の濃度としては、特に断りがない限り、上記の手順で測定した固形分を用いた。
合成例1:TMP→TMP−30
トリメチロールプロパン(和光純薬社、200g、以下では「TMP」ともいう。)、30%水酸化ナトリウム水溶液(3.62g)を、撹拌器を備えた耐圧反応容器に仕込んだ。オイルバスを用いて反応系内を100℃に加温し、系内に窒素をゆっくりとバブリングしながら、真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧し、水2.53gを留去した。更に真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧した後、反応器内を130℃に加温し、窒素を導入して内圧を0.5MPaに調整した。反応器内温を130±2℃に保ちながら、エチレンオキシド(1969.9g、TMPに対して30モル倍)を添加した。ただし反応器内圧は0.8MPaを越えないようにした。エチレンオキシドの添加終了後、反応器内を1時間130℃に保ち、反応を完結させた。反応前後の質量から、収率は99.7%であり、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド29.9モル付加物(以下では「TMP−30」ともいう。)が得られた。
原料をTMP−30(300g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(2.97g)、エチレンオキシド(1784.7g、TMP−30に対して196モル倍)としたこと以外は、合成例1と同様の手順で反応を行った。収率は99.6%であり、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド225モル付加物(以下では「TMP−225」ともいう。)が得られた。
原料をTMP−30(200g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(3.05g)、エチレンオキシド(1827.8g、TMP−30に対して301.1モル倍)としたこと以外は、合成例1と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド330モル付加物(以下では「TMP−330」ともいう。)が得られた。
原料をTMP−225(1000g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(1.77g)、エチレンオキシド(1059.0g、TMP−225に対して241.5モル倍)としたこと以外は、合成例1と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド465モル付加物(以下では「TMP−465」ともいう。)が得られた。
ソルビトール(和光純薬社、250g、以下では「SB」ともいう。)、30%水酸化ナトリウム水溶液(3.44g)を、撹拌器を備えた耐圧反応容器に仕込んだ。オイルバスを用いて反応系内を130℃に加温し、系内に窒素をゆっくりとバブリングしながら、真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧し、水を留去した。更に真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧した後、窒素を導入して内圧を0.5MPaに調整した。反応器内温を130±2℃に保ちながら、エチレンオキシド(1813.6g、SBに対して30モル倍)を添加した。ただし反応器内圧は0.8MPaを越えないようにした。エチレンオキシドの添加終了後、反応器内を1時間130℃に保ち、反応を完結させた。反応前後の重量から、収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド29.9モル付加物(以下では「SB−30」ともいう。)が得られた。
原料をSB−30(600g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(2.66g)、エチレンオキシド(1595.4g、SB−30に対して90.5モル倍)としたこと以外は、合成例6と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド120モル付加物(以下では「SB−120」ともいう。)が得られた。
原料をSB−120(800g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(1.94g)、エチレンオキシド(1166.5g、SB−30に対して181モル倍)としたこと以外は、合成例6と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド300モル付加物(以下では「SB−300」ともいう。)が得られた。
原料をSB−30(600g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(0.90g)、エチレンオキシド(537.7g、SB−30に対して30.5モル倍)としたこと以外は、合成例6と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド60モル付加物(以下では「SB−60」ともいう。)が得られた。
製造例1
(1)脱水エステル化反応工程
ジムロート冷却管付のディーン・スターク装置、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えたガラス製反応器内に、トリメチロールプロパン1モルにエチレンオキシドを225モル付加したポリアルキレングリコール鎖含有トリオール(TMP−225、250.00g)、3−メルカプトプロピオン酸(3−MPA、8.72g)、p−トルエンスルホン酸−水和物(PTS、5.17g)、フェノチアジン(PTZ、0.0517g)、シクロへキサン(12.94g)を仕込んだ。ディーン・スターク装置をシクロへキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。また、加温用オイルバスの温度は120±5℃とした。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロヘキサンを加えながら、44.5時間加温還流して反応終了とした。
反応終了後のLC分析結果は、TMP−225の消費率99.6%、TMP−225一分子に対する平均SH導入数は2.79個であった。
反応終了後、固化しないように撹拌しながら60℃まで放冷した後、30%NaOH水溶液(3.45g)に水(247.88g)を加えた水溶液を、速やかに反応器内に投入した。続いて徐々に約100℃まで加温し、シクロへキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で90分バブリングして残存シクロへキサンを除去し、目的化合物(PAGチオール化合物(1))の水溶液を得た。
得られた目的化合物のLC分析結果は、TMP−225の消費率99.1%、TMP−225一分子に対する平均SH導入数は2.73個であった。またGPC分析結果は、単量体量78.0%、残りが多量体であった。
製造例1において原料化合物や反応条件等を表1及び2に記載のように変更した他は、製造例1と同様にして目的化合物(PAGチオール化合物(2)〜(6))の水溶液を得た。
エステル化工程後及び脱溶媒工程後のLC分析結果及びGPC分析結果を表2に示す。
実施例1(BPT−91)
単量体溶液として、メタクリル酸ナトリウム(SMAA、0.92g)、メタクリル酸(MAA、6.57g)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(平均エチレンオキシド付加数25モル、PGM25E、51.95g)、製造例1で得たPAGチオール化合物(1)(3.06g)、水酸化ナトリウム(NaOH、0.30g)にイオン交換水を加えて合計100gにした溶液を調整した。
開始剤溶液として、2,2’-azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride(和光純薬社製 V−50、0.069g)にイオン交換水を加えて合計50gにした溶液を調整した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水(100g)を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を4時間、開始剤溶液を5時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液を加えてpHを6.0に調整し、目的重合体の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=113751、Mp=126140、Mn=55041であった。また重合体純分は96.8%であった。
実施例1において単量体溶液及び開始剤溶液の種類や仕込み量等を表3及び4に記載のように変更した他は、実施例1と同様にして目的重合体の水溶液を得た。
GPC分析結果を表4に示す。
単量体溶液として、アクリル酸(AA、9.33g)、製造例1で得たPAGチオール化合物(1)(6.09g)、イオン交換水(31.05g)の溶液を調整した。
開始剤溶液として、2,2’-azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride(和光純薬社製 V−50、0.0962g)にイオン交換水を加えて合計37.5gにした溶液を調整した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(平均エチレンオキシド付加数50モル、IPN−50、109.58g)、イオン交換水(56.45g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を3時間、開始剤溶液を3.5時間かけて反応容器中に滴下した。
滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液を加えてpHを6.0に調整し、目的重合体の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=53597、Mp=60508、Mn=25696であった。また重合体純分は86.4%であった。
実施例25において単量体溶液及び開始剤溶液の種類や仕込み量等を表5及び6に記載のように変更した他は、実施例25と同様にして目的重合体の水溶液を得た。GPC分析結果を表6に示す。
単量体溶液として、メタクリル酸ナトリウム(SMAA、0.93g)、メタクリル酸(MAA、73.29g)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(平均エチレンオキシド付加数25モル、PGM25E、371.72g)、3−メルカプトプロピオン酸(MPA、4.06g)、イオン交換水(112.5g)の溶液を調整した。
開始剤溶液として、過硫酸アンモニウム(APS、和光純薬製、5.13g)、イオン交換水(82.37g)の溶液を調整した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水(350.00g)を仕込み、200rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃まで加温した。
続いて上述の単量体溶液を4時間、開始剤溶液を5時間かけて反応容器中に滴下し、滴下完了後1時間反応80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液を加えてpH=7.0に調整し、比較重合体の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=24200、Mp=18600、Mn=12600であった。また重合体純分は95.3%であった。
表9に示す量で、単量体溶液として、アクリル酸(AA、日本触媒製)及びイオン交換水の溶液を、釜仕込開始剤溶液として、30%過酸化水素(H2O2、和光純薬製)及びイオン交換水の水溶液を、移動剤溶液として、L−アスコルビン酸(L−AS、和光純薬製)、3−メルカプトプロピオン酸(MPA)及びイオン交換水の溶液を、それぞれ調整した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、表9に示す量の3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(平均エチレンオキシド付加数50モル、IPN−50)、アクリル酸(AA、日本触媒製)及びイオン交換水を仕込み、200rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら58℃まで加温した。次に、釜仕込開始剤水溶液を全量投入し、58℃まで加温した。続いて上記の単量体溶液を3時間、移動剤溶液を3.5時間かけて反応容器中に滴下し、滴下完了後1時間58℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液を加えてpH=6.0に調整し、比較重合体の水溶液を得た。各化合物等の使用量を表9に、得られた比較重合体水溶液のGPC分析結果を表10にそれぞれ示す。
実施例37〜46、比較例8〜11
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=550/1350/220(g)とした。ただし、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:本発明重合体又は比較重合体、及び、消泡剤のイオン交換水溶液
Wとして、表11及び12に示した添加量の重合体水溶液を量り採り、消泡剤MA−404(ポゾリス物産製)を有姿で重合体固形分に対して10質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。表11及び12において重合体の添加量は、セメント質量に対する重合体固形分の質量%で表されている。
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2連で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
なお、0打フロー値及び15打フロー値は、数値が大きいほど、分散性能が優れている。
モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
モルタル試験の結果、実施例37〜41で用いたポリアルキレングリコール鎖含有チオール重合体は、同一添加量では比較例8の重合体より15打フロー値が10mm以上大きくなった。
比較例8の重合体の添加量を増やした結果(比較例9)から、比較例8を用いて15打フロー値を200mmにするには、添加量が0.0725%程度になると考えられる。ポリアルキレングリコール鎖含有チオール重合体は、いずれも添加量0.065%で15打フロー値が200mm以上である。つまり当該重合体は、比較例8に比較して10%以上少ない添加量で同一のフロー値が得られ(0.065/0.0725=90%)、セメント分散性が非常に高いことを示している。
モルタル試験の結果、実施例42〜46で用いたポリアルキレングリコール鎖含有チオール重合体は、同一添加量では比較例10の重合体より15打フロー値が9mm以上大きくなった。
比較例10の重合体の添加量を増やした結果(比較例11)から、比較例10を用いて15打フロー値を205mmにするには、添加量が0.084%程度になると考えられる。ポリアルキレングリコール鎖含有チオール重合体は、いずれも添加量0.08%で15打フロー値が205mm以上である。つまり当該重合体は、比較例10に比較して5%以上少ない添加量で同一のフロー値が得られ(0.08/0.084=95%)、セメント分散性が非常に高いことを示している。
Claims (9)
- ポリアルキレングリコール鎖を含み、多分岐構造を有する重合体であって、
該多分岐ポリアルキレングリコール系重合体は、ポリアルキレングリコール鎖が活性水素を3個以上有する化合物の残基に結合し、かつ該ポリアルキレングリコール鎖の他末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、ビニル系単量体成分由来の構成単位を単量体単位とする重合体の主鎖末端と有機残基を介して結合した構造を有し、
該構造は、下記一般式(3);
該有機残基は、分子量が1000以下の基であって、かつ、−S−Y2−C(O)−、又は、−S−Y2−N(H)−C(O)−(Y2は、2価の基であり、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。該有機残基中のC(O)基を構成する炭素原子と、一般式(3)中の(AO) n で表されるポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接し、該有機残基中の硫黄原子と、一般式(3)中のZで表される重合体中の重合性二重結合(C=C)に由来する炭素原子とが隣接する。)であり、
該ビニル系単量体成分は、不飽和カルボン酸系単量体を含む
ことを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系重合体(但し、以下のポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物Aの存在下、不飽和カルボン酸系単量体を必須に含むビニル系単量体成分を重合することにより得られ、かつ該ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物Aが有する末端の硫黄原子に、該単量体成分由来の構成単位を単量体単位とする重合体部位が結合した構造を有する、重合体を除く。
ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物A:ポリアルキレングリコール鎖を有するチオール化合物であって、ポリアルキレングリコール鎖が活性水素を3個以上有する化合物の残基に結合し、かつ該ポリアルキレングリコール鎖の他末端の少なくとも1つが、カルボニル基又はアミド基を有する有機残基を介してメルカプト基に結合した構造を有し、該構造は、下記一般式(y);
- 前記ビニル系単量体成分は、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体。 - 前記活性水素を3個以上有する化合物の残基は、多価アミン残基、ポリアルキレンイミン残基及び多価アルコール残基からなる群より選択される少なくとも1種の多価化合物残基である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体。 - 前記有機残基は、−S−Y2−C(O)−で表される基(Y2は、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。)である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、下記一般式(5);
該有機残基は、分子量が1000以下の基であって、かつ、−S−Y2−C(O)−、又は、−S−Y2−N(H)−C(O)−(Y2は、2価の基であり、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。該有機残基中の硫黄原子と、一般式(5)中の水素原子とが隣接し、該有機残基中のC(O)基を構成する炭素原子と、一般式(5)中の(AO)nで表されるポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接する。)である
ことを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系重合体の製造方法。 - 前記重合工程は、炭素ラジカル発生剤を使用する
ことを特徴とする請求項5に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体の製造方法。 - 前記有機残基は、−S−Y2−C(O)−で表される基(Y2は、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。該有機残基中のC(O)基を構成する炭素原子と、前記一般式(5)中の(AO)nで表されるポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接し、該有機残基中の硫黄原子と、一般式(5)中の水素原子とが隣接する。)である
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の多分岐ポリアルキレングリコール系重合体を含む
ことを特徴とするセメント混和剤。 - 請求項8に記載のセメント混和剤を含む
ことを特徴とするセメント組成物。
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