JP6305190B2 - 水硬性材料用収縮低減剤 - Google Patents

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Description

本発明は、水硬性材料用収縮低減剤に関する。より詳しくは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物の収縮低減剤として好適に用いることができる水硬性材料用収縮低減剤に関する。
セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等として広く用いられている水硬性材料では、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、内部に残った未反応水分の散逸が起こり、これに起因すると考えられる乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じて強度及び耐久性が低下するという問題がある。このため、このような問題を解決するための収縮低減剤が開発されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
特許第4437369号 特許第4436921号
上記のとおり、水硬性材料の乾燥時の収縮を抑制するための収縮低減剤が開発されているが、より少量の添加で優れた収縮低減性能を発揮する収縮低減剤が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、少量の添加で優れた収縮低減性能を発揮する水硬性材料用の収縮低減剤を提供することを目的とする。
本発明者は、水硬性材料用の収縮低減剤について種々検討したところ、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端とが結合部位(X)を介して結合した構造を有する(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が、水硬性材料の乾燥時の収縮を低減する添加剤として優れた効果を発揮することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端とが結合部位(X)を介して結合した構造を有する(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含むことを特徴とする水硬性材料用収縮低減剤である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の水硬性材料用収縮低減剤が含む(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端とが結合部位(X)を介して結合した構造を有する点に特徴を有し、これにより、優れた収縮低減効果を発揮することができる。本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、このような構造を有する(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、このような構造的特徴を有する限り、共重合体全体としての構造は特に制限されないが、以下の(1)〜(4)のいずれかの構造を有する共重合体であることが好ましい。
(1)直鎖状の高分子鎖(B)の一方の末端のみが不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)の末端と結合部位(X)を介して結合した構造を有する共重合体。
(2)直鎖状の高分子鎖(B)の両方の末端が不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)の末端と結合部位(X)を介して結合した構造を有する共重合体。
(3)不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)との結合部位(X)を介した結合を必須とする多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、該多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、該高分子鎖(B)を多分岐構造の枝状部の一部又は全部とし、該枝状部を3つ以上有し、一部の枝状部の末端部位に該高分子鎖(A)を有する構造の共重合体。
(4)不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)との結合部位(X)を介した結合を必須とする多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、該多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、該高分子鎖(B)を多分岐構造の枝状部の一部とし、該枝状部を3つ以上有し、すべての枝状部の末端部位に該高分子鎖(A)を有する構造の共重合体。
以下においては、上記(1)〜(4)の構造を有する共重合体をそれぞれ(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)〜(4)と記載し、まず、これらの共重合体について説明し、次に、高分子鎖(A)、高分子鎖(B)、結合部位(X)、及び、分岐構造の枝分かれ部位を構成する活性水素を有する化合物の残基(Z)の具体的な構造について説明する。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)>
(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)は、直鎖状の(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の一方の末端のみが不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)の末端と結合部位(X)を介して結合した構造を有する。
ここで、結合部位(X)を介して高分子鎖(B)と結合する高分子鎖(A)の末端は、高分子鎖(A)の主鎖末端であってもよく、高分子鎖(A)の主鎖の末端の原子に側鎖が結合している場合には、当該側鎖の末端に結合していてもよいが、主鎖末端であることが好ましい。この点は、後述する共重合体(2)〜(4)についても同様である。
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)は、下記一般式(1);
−(B)n1−X−A (1)
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。(B)n1は、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を表し、Bは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。Xは、有機残基を表す。Aは、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)で表される構造を有するものであることが好ましい。
上記一般式(1)において、上記(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)n1の一方の末端の隣に位置するXは結合部位(X)であり、Xを介して不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖Aが(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)n1に結合している。また、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)n1の他方の末端には、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基のいずれかが結合している。
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)は、重量平均分子量が1000〜150000であることが好ましい。このような範囲にあることで、収縮低減剤としての効果をより充分に発揮することができる。重量平均分子量は、より好ましくは、2000〜50000であり、更に好ましくは、2000〜20000である。
また、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)の数平均分子量は、1000〜100000であることが好ましい。より好ましくは、1000〜30000であり、更に好ましくは、2000〜20000である。
本発明において、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(2)>
(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(2)は、直鎖状の(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の両方の末端が不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)の末端と結合部位(X)を介して結合した構造を有する。
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(2)は、下記一般式(2);
A−X−(B)n2−X−A (2)
(式中、(B)n2は、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を表し、Bは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。Xは、同一又は異なって、有機残基を表す。Aは、同一又は異なって、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖を表す。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。)で表される構造を有するものであることが好ましい。
上記一般式(2)において、(B)n2で表される高分子鎖(B)と、Aで表される高分子鎖(A)とが、Xで表される結合部位(X)を介して結合している点は、上記共重合体(1)の場合と同様である。
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(2)は、重量平均分子量が1000〜150000であることが好ましい。このような範囲にあることで、収縮低減剤としての効果をより充分に発揮することができる。重量平均分子量は、より好ましくは、2000〜50000であり、更に好ましくは、2000〜20000である。
また、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(2)の数平均分子量は、1000〜100000であることが好ましい。より好ましくは、1000〜30000であり、更に好ましくは、2000〜20000である。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)>
(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)は、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)との結合部位(X)を介した結合を必須とする多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、該多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、該高分子鎖(B)を多分岐構造の枝状部の一部又は全部とし、該枝状部を3つ以上有し、一部の枝状部の末端部位に該高分子鎖(A)を有する構造の多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体である。
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)は、下記一般式(3);
Figure 0006305190
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。Zは、活性水素を3個以上有する化合物の残基を表す。(B)n3は、同一又は異なって、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を表し、Bは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。Xは、同一又は異なって、有機残基を表す。Aは、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖を表す。n3は、同一又は異なって、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。m1及びp1は1以上の数であり、m1及びp1の合計は、3以上である。)で表される構造を有するものであることが好ましい。
上記一般式(3)において、(B)n3で表される高分子鎖(B)と、Aで表される高分子鎖(A)とが、Xで表される結合部位(X)を介して結合している点は、上記共重合体(1)の場合と同様である。
上記一般式(3)において、m1は、上記高分子鎖Aと上記高分子鎖(B)n3とが結合部位Xを介して結合した枝状部の数を表し、p1は、水素原子と上記高分子鎖(B)n3とが結合した枝状部の数を表す。m1及びp1の合計は3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。なお、上記高分子鎖(B)の一部の末端が結合部位(X)を介して上記高分子鎖(A)と結合するとは、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)の全共重合体分子において、高分子鎖(B)の全部の枝状部の末端部位モル数に対して、高分子鎖(A)が結合部位(X)を介して付加したモル数の割合の百分率が、100モル%未満となることである。上記一般式(3)でいえば、m1+p1が高分子鎖(B)の全部の枝状部の末端部位モル数となり、m1/m1+p1が高分子鎖(A)が結合部位(X)を介して付加したモル数の割合となる。{m1/(m1+p1)}×100の好ましい範囲は、10〜90モル%であり、より好ましくは30〜70モル%、更に好ましくは40〜60モル%である。
以下、本明細書において、単に「枝状部」という場合には、上記高分子鎖(A)と高分子鎖(B)とが結合部位Xを介して結合した枝状部、及び、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基のいずれかと上記高分子鎖(B)とが結合した枝状部の両方をいうものとする。また、「高分子鎖(B)を枝状部の一部又は全部とする」とは、「枝状部」が高分子鎖(A)と高分子鎖(B)とが結合したものである場合、高分子鎖(B)は枝状部の一部となり、「枝状部」が水素原子と高分子鎖(B)とが結合したものである場合、高分子鎖(B)は枝状部の全部となることを表す。
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)は、上記枝状部を3つ以上有する。
上記枝状部の数の好ましい下限値としては5である。好ましい上限値としては20であり、より好ましくは13であり、さらに好ましくは7である。
また、上記枝状部の数は、活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素数に等しいことが好ましい。すなわち、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素の全てに上記枝状部が結合した構造を有することが好適である。これによって、更に優れた収縮低減性能を発揮することが可能となる。
ここで、例えば、上記枝状部の数が、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素数に等しい場合の構造を模式的に示すと、下記式(4)又は(5)のように表すことができる。
Figure 0006305190
上記式(4)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がグリセリン残基(多価アルコール残基、活性水素3個)であり、グリセリンが有する活性水素全てに枝状部が結合し、3つの枝状部のうち、2つの枝状部の末端部位に不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)を有する構造を模式的に示したものである。
また上記式(5)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基、活性水素6個)であり、ソルビトールが有する活性水素全てに枝状部が結合し、6つの枝状部のうち、3つの枝状部の末端部位に不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)を有する構造を模式的に示したものである。
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)は、重量平均分子量が1000〜150000であることが好ましい。このような範囲にあることで、収縮低減剤としての効果をより充分に発揮することができる。重量平均分子量は、より好ましくは、2000〜50000であり、更に好ましくは、2000〜20000である。
また、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)の数平均分子量は、1000〜100000であることが好ましい。より好ましくは、1000〜30000であり、更に好ましくは、2000〜20000である。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(4)>
(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(4)は、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)との結合部位(X)を介した結合を必須とする多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、該多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、該高分子鎖(B)を多分岐構造の枝状部の一部とし、該枝状部を3つ以上有し、すべての枝状部の末端部位に該高分子鎖(A)を有する構造の多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体である。
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(4)は、下記一般式(6);
Figure 0006305190
(式中、Zは、活性水素を3個以上有する化合物の残基を表す。(B)n4は、同一又は異なって、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を表し、Bは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。Xは、同一又は異なって、有機残基を表す。Aは、不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖を表す。n4は、同一又は異なって、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。m2は、3以上の数である。)で表される構造を有するものであることが好ましい。
上記一般式(6)において、(B)n4で表される高分子鎖(B)と、Aで表される高分子鎖(A)とが、Xで表される結合部位(X)を介して結合している点は、上記共重合体(1)の場合と同様である。
上記一般式(6)で表される(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(4)において、m2は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した枝状部の数を表し、3以上の数であり、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。
また、高分子鎖(B)の全部の末端が不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)の末端と結合部位(X)を介して結合を有するとは、全共重合体分子において実質的にすべての枝状部の末端部位に高分子鎖(A)が結合していること、高分子鎖(B)による枝状部の末端部位の全モル数に対して高分子鎖(A)のモル数の百分率が実質的に100モル%である共重合体を意味する。
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(4)は、上記枝状部を3つ以上有する。上記枝状部の数の好ましい値は、上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)と同様である。
ここで、例えば、上記枝状部の数が、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素数に等しい場合の構造を模式的に示すと、下記式(7)又は(8)のように表すことができる。
Figure 0006305190
上記式(7)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がグリセリン残基(多価アルコール残基、活性水素3個)であり、グリセリンが有する活性水素全てに、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と、結合部位(X)を介して不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)とが結合した構造を模式的に示したものである。
また上記式(8)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基、活性水素6個)であり、ソルビトールが有する活性水素全てに、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と、結合部位(X)を介して不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)とが結合した構造を模式的に示したものである。
上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(4)は、重量平均分子量が1000〜150000であることが好ましい。このような範囲にあることで、収縮低減剤としての効果をより充分に発揮することができる。重量平均分子量は、より好ましくは、2000〜50000であり、更に好ましくは、2000〜20000である。
また、(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(4)の数平均分子量は、1000〜100000であることが好ましい。より好ましくは、1000〜30000であり、更に好ましくは、2000〜20000である。
以下、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)、結合部位(X)及び活性水素を3個以上有する化合物の残基(Z)について説明する。
<不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)>
本発明において、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)は、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分が重合した構造を有する構成単位である。
また、上記不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分が重合した構造を有する構成単位は、同じ構造の構成単位となるのであれば、他の単量体に由来する構成単位を変性したものであってもよい。
上記不飽和アニオン系単量体としては、不飽和カルボン酸系単量体(以下、単に「単量体(a)」ともいう。)、不飽和スルホン酸系単量体(以下、単に「単量体(b)」ともいう。)、不飽和リン酸系単量体(以下、単に「単量体(c)」ともいう。)が好ましい。
単量体(a)としては、例えば、下記式(9);
Figure 0006305190
(式中、R、R、R、Rは、少なくとも一つが−COOMであり、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、−(CH)zCOOM(−(CH)zCOOMは、COOM又はその他の−(CH)zCOOMと無水物を形成していてもよい)を表し、zは0〜2の整数を表す。M及びMは同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で示される化合物が好適である。
すなわち、単量体(a)は、C=C二重結合に結合した少なくとも一つのカルボキシル基又はその塩(−COOM)を有する、不飽和カルボン酸系単量体である。
なお、上記単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(9)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記一般式(9)において、M及びMで表される基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の一価金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価金属原子;アルミニウム、鉄等の三価金属原子が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。
上記一般式(9)で示される不飽和カルボン酸系単量体の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体、これらのジカルボン酸無水物及びこれらの塩(例えば、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウムまたは有機アミンの塩)が挙げられる。
中でも、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩が特に好ましい。
単量体(b)としては、例えば、スチレンスルホン酸、又は、これのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩若しくは置換アミン塩;スルホンエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スルホブチルメタクリレート、スルホエチルアクリレート、スルホプロピルアクリレート若しくはスルホブチルアクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート、又は、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩若しくは置換アミン塩;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又は、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩若しくは置換アミン塩等が使用される。好ましくは、スチレンスルホン酸若しくはスルホアルキル(メタ)アクリレート、又は、これらの塩である。また塩としてはアルカリ金属塩が好ましい。
単量体(c)としては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートモノリン酸エステル、ヒドロキシエチルプロピルメタクリレートモノリン酸エステル、ヒドロキシエチルブチルメタクリレートモノリン酸エステル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノリン酸エステル、又は、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩若しくは置換アミン塩等が使用される。
これらの不飽和アニオン系単量体は2種以上併用してもよい。
上記不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分は、不飽和アニオン系単量体以外のビニル系単量体を含んでいてもよい。
不飽和アニオン系単量体以外のビニル系単量体としては、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500の(ポリ)アルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500の(ポリ)アルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテルあるいは(メタ)アリルエーテル類;(メトキシ)ポリエチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル等の3−メチル−3−ブテニルエーテル類が挙げられ、これらを1種又は2種以上含んでいてもよい。
上記不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分は、ビニル単量体成分全体100質量%に対して、不飽和アニオン系単量体を1〜100質量%含むことが好ましい。より好ましくは、10〜100質量%であり、更に好ましくは、50〜100質量%であり、最も好ましくは、100質量%、すなわち、ビニル系単量体成分が不飽和アニオン系単量体のみからなることである。
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体において、高分子鎖(A)における不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数は1以上であることが好ましい。
ここで、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が多分岐構造を有するものである場合、不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数の値とは、枝状部1つに含まれる、不飽和アニオン系単量体単位の平均導入モル数を意味する。
上記平均導入モル数のより好ましい下限値としては1であり、更に好ましくは2であり、特に好ましくは5である。好ましい上限値としては50であり、より好ましくは30であり、更に好ましくは20である。
上記平均導入モル数を5以上とすることにより、上記共重合体に不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、上記平均導入モル数が50を超える場合には、分散性が発現することにより充分な収縮低減性を得るために必要な収縮低減剤を添加できなくなる。
<(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)>
(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)は、炭素数2〜18のアルキレンオキシドから構成される高分子鎖((ポリ)アルキレンオキシド)であることが好ましい。以下、(ポリ)アルキレングリコールをPAGともいう。
より好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキシドであり、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
上記(ポリ)アルキレングリコール系構成単位を構成するアルキレンオキシドとしては、セメント粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のアルキレンオキシド(オキシアルキレン基)が主体であることが好適である。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが主体であることであり、更に好ましくは、エチレンオキシドが主体であることである。
ここでいう「主体」とは、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)が、(ポリ)アルキレングリコール鎖が2種以上のアルキレンオキシドにより構成されるときに、全アルキレンオキシドの存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンオキシド100モル%中のエチレンオキシドのモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
上記(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)が2種以上のアルキレンオキシドにより構成される場合は、2種以上のアルキレンオキシドがランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
上記(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)としてはまた、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含む場合には、本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体に、ある程度の疎水性を付与することが可能となるため、上記共重合体を収縮低減剤に使用した場合には、セメント粒子に若干の構造(ネットワーク)をもたらし、セメント組成物の粘性やこわばり感を低減することができる。その一方で、炭素数3以上のアルキレンオキシドを導入し過ぎると、上記共重合体の疎水性が高くなり過ぎることから、水溶性がなくなり作業性の著しい低下、さらに消泡剤、空気連行剤と相互作用しやすくなるため、コンクリートおよびモルタルの空気量調整性の低下さらにそれに起因する凍結融解抵抗性の低下の要因となるおそれがある。このため、全アルキレンオキシド100質量%に対する炭素数3以上のアルキレンオキシドの含有量は、50質量%以下であることが好ましい。より好ましく30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
ここで、耐加水分解性の向上の面から、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端に炭素数3以上のオキシアルキレン基を導入してもよい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基、アルキルグリシジルエーテル残基等が挙げられる。中でも、製造の容易さからオキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基を導入する場合、その導入量としては、本発明のブロック共重合体における結合部位(X)が有する耐加水分解性を考慮して調整することが好ましく、例えば、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に対して、導入量を50モル%以上とすることが好ましい。より好ましくは100モル%以上であり、更に好ましくは150モル%以上であり、特に好ましくは200モル%以上である。
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体において、高分子鎖(B)におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)は、1〜1000であることが好ましい。
オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上の数であると、上記共重合体に(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1000を超える場合には、上記共重合体を製造するために使用する原料化合物の粘性が増大したり、反応性が充分とはならない等、作業性の点で好適なものとはならないおそれがある。
上記平均付加モル数の下限値としては、より好ましくは10、さらに好ましくは20であり、さらにより好ましくは50であり、特に好ましくは75であり、特により好ましくは80であり、最も好ましくは100である。上限値としては、より好ましくは800であり、さらに好ましくは700であり、さらにより好ましくは600であり、特に好ましくは500であり、特により好ましくは300であり、最も好ましくは200である。
なお、上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、枝状部1つにおいて付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が有する高分子鎖(B)のうち、結合部位(X)を介して高分子鎖(A)と結合していないものの末端は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基のいずれかであることが好ましい。より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェノール、メチルフェノール、ナフトールのいずれかである。
上記式(1)におけるRや、上記式(3)におけるRは、これらのいずれかであることが好ましい。
<結合部位(X)>
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体において、結合部位(X)は、高分子鎖(A)と高分子鎖(B)とを化学的に安定に結合し得る構造を有する部位であればその構造は特に限定されるものではない。
上記結合部位の好ましい構造としては、重合反応に用いられる連鎖移動剤となる構造に由来する有機残基が挙げられる。
結合部位(X)の例としては、(i)硫黄原子を含む結合部位、(ii)アゾ開始剤由来の結合部位、(iii)リン原子を含む残基由来の結合部位、(iv)その他の構造由来の結合部位等が挙げられる。
結合部位として複数箇所存在する有機残基の構造はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
(i)硫黄原子を含む結合部位
上記硫黄原子を含む結合部位(X)としては、高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成し、かつ、硫黄原子を含む構造と、高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成せず、かつ、硫黄原子を含む構造とがある。
上記硫黄原子を含む結合部位(X)としては、例えば、下記式(10):
Figure 0006305190
(式中、Rは有機残基であり、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、又は、チアゾール等の芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等で一部置換されていてもよい。))で示される構造が挙げられる。
上記式(10)で示される構造のRは(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する部位であり、硫黄原子(S)は不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と結合する部位である。
上記結合部位(X)が高分子鎖(B)の末端酸素原子とともにエステル結合を形成しないとは、上記式(10)で示される構造のRが(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端酸素原子と結合した場合、下記式(11):
Figure 0006305190
(式中、Rは上記と同様である。)で示される部位を形成することになるが、この部位においてエステル結合を含まないことである。
そのような構造は、後述するように(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端の水酸基をトシル化し、チオ酢酸によってチオアセチル化した後、加水分解して得られる末端のチオール基を連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和カルボン酸系単量体(a)をブロック重合させることにより形成することができる。
一方で、共重合体がメルカプトカルボン酸のカルボキシル基と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基との間で脱水エステル化反応を起こし、それによって得られたチオールエステルを連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和カルボン酸系単量体(a)をブロック重合させて得られる場合、結合部位(X)は、下記式(12):
Figure 0006305190
(式中、Rはメルカプトカルボン酸残基であり、例えば、炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾール等の芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等で一部置換されていてもよい。))で示される構造となる。
この場合、該結合部位は、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端酸素原子と下記式(13):
Figure 0006305190
(式中、Rは上記と同様である。)で示される部位を形成することになり、この部位においてエステル結合を含むことになる。
(ii)アゾ開始剤由来の結合部位
アゾ開始剤由来の結合部位としては、アゾ基を含む重合開始剤(アゾ開始剤)に由来する部位であり、例えば、下記式(14)に示すようなアゾ開始剤に由来する構造が好ましい。
Figure 0006305190
(式中、Rは、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキレン基(上記アルキレン基は、アルキル基、アルケニル基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基などで一部置換されていてもよい。)、カルボニル基またはカルボキシル基であるか、あるいは、炭素数1〜20のアルキレン基(上記アルキレン基は、アルキル基、アルケニル基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基などで一部置換されていてもよい。)がカルボニル基またはカルボキシル基に結合した基であり、R10は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基、カルボキシ置換(炭素数1〜10の)アルキル基、フェニル基または置換フェニル基であり、R11は、互いに独立して、シアノ基、アセトキシ基、カルバモイル基または(炭素数1〜10のアルコキシ)カルボニル基である。)で示される繰り返し単位を有するアゾ開始剤が挙げられる。
より好ましくは、下記式(15)で示されるアゾ開始剤が挙げられる。
Figure 0006305190
上記式(15)で示されるアゾ開始剤としては、その末端が(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造であることが好ましい。
上記式(14)、(15)で示されるアゾ開始剤由来の結合部位としての有機残基Xの構造は、下記式(16)、(17)で示す構造となる。
Figure 0006305190
(式中、R、R10、R11は式(14)におけるR、R10、R11と同様である)
Figure 0006305190
式(17)におけるカルボニル基の炭素が(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する側である。
(iii)リン原子を含む残基由来の結合部位
リン原子を含む結合部位としては、例えば、下記式(18):
Figure 0006305190
(式中、Yは有機残基を表す。Mは金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す)で示される構造が好ましい。
Yは(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する部位であり、Yと結合する次亜リン酸(塩)のリン原子は、不飽和アニオン系単量体単位による高分子鎖(A)と結合する部位である。
上記有機残基としては、炭素数2〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基や、炭素数6〜30の2価の芳香族基(フェニレン基、アルキルフェニレン基、及び、ピリジン、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾール由来の2価の基等)等が挙げられ、例えば、水酸基、アミノ基、アセチルアミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等の置換基で一部置換されていてもよい基が好ましい。
これらの中でも、より好ましくは、炭素数2〜18の2価の有機残基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものであり、更に好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものである。
次亜リン酸塩は、次亜リン酸と、金属、アンモニア又は有機アミンのいずれかとによって形成される塩が好ましい。金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が好ましい。有機アミンとしては、炭素数1〜18のアルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム、カリウム、アンモニア、トリエタノールアミンによって形成される塩が好ましい。
(iv)その他の構造由来の結合部位
その他の構造由来の結合部位の具体例としては、以下のような連鎖移動剤由来の結合部位が挙げられる。これらのうち、硫黄原子を有するものは、上記(i)硫黄原子を含む結合部位にも含まれる。
例えば、(ポリ)アルキレングリコールの末端の−OH基に、ハロゲン化亜鉛を用いて、チオ酢酸、チオ安息香酸などのチオカルボン酸を反応させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、−OH基を−SH基に変換した化合物;(ポリ)アルキレングリコールとチオ酢酸との存在下、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)とトリフェニルホスフィンとを反応させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、(ポリ)アルキレングリコールの末端の−OH基を−SH基に変換した化合物;(ポリ)アルキレングリコールの末端の−OH基に、臭化アリルなどのハロゲン化アリルをSN2反応させて(ポリ)アルキレングリコールの末端をアリル化した化合物;(ポリ)アルキレングリコールの末端にアリル基などの二重結合を有する化合物に、チオ酢酸、チオ安息香酸などのチオカルボン酸を付加させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、−SH基に変換した化合物;
これらの化合物(連鎖移動剤)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上述した種々の構造の中でも、結合部位(X)としては、(i)硫黄原子を含む結合部位であることが好ましい。
結合部位(X)が硫黄原子を含む結合部位である場合、本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体全体のうち、硫黄原子の含有量が0.001質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.005質量%以上であり、更に好ましくは、0.01質量%以上である。また、硫黄原子の含有量が5質量%以下となることが好ましく、より好ましくは、3質量%以下であり、更に好ましくは、2質量%以下である。
硫黄原子の含有量は、PAGチオール化合物における硫黄原子の含有量、高分子鎖(A)におけるビニル系単量体単位のチオール基(SH)1個に対する個数の平均値から計算することができる。硫黄原子の含有量が上記範囲内であると、後述する製造方法によって本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体をより効率的に製造することが可能となる。
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の好ましい形態としてはまた、共重合体の2質量%アルカリ水溶液中での15分後の高分子鎖(A)と高分子鎖(B)への分解率が10質量%以下である。より好ましくは、5質量%以下であり、更に好ましくは、2質量%以下である。最も好ましくは、実質的に0質量%となることである。
ここにいう分解率とは、アルカリ水溶液中での加水分解率のことであり、加水分解率が10質量%以下であると、収縮低減剤としてより優れた性能を発揮するものとなる。
加水分解率を低くする点からは、結合部位(X)は、硫黄原子を有する非エステル結合であることが好ましい。
このように、結合部位(X)のうち、少なくとも1つが硫黄原子を有する非エステル結合であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記加水分解率は、例えば、次のような加水分解試験によって測定することができる。
(1)共重合体の重量平均分子量(Mw)を後述するGPC測定条件によって測定し、反応前(分解前)分子量とする。
(2)共重合体をNaOH水溶液に溶解させ2質量%水溶液を作成する。その際、水溶液のpHが12.5となるように予めNaOH水溶液のpHを調整しておく。2%水溶液を15分間撹拌し、その後35%HCl水溶液にて中和を行いpHを5.0とする。
共重合体を取り出し、その重量平均分子量(Mw)を後述するGPC測定条件によって測定し、反応後(分解後)分子量とする。
(3)反応前後のGPCチャートから加水分解率を算出する。
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が、上述した(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)、(2)である場合、その中でも特に好ましい構造は、それぞれ下記式(19)、(20)で示す構造である。また、本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が、上述した(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)、(4)である場合、その中でも特に好ましい構造は、それぞれ下記式(21)、(22)で示す構造である。
Figure 0006305190
(式(19)〜(22)中、R12は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。R13は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。Zは、活性水素を3個以上有する化合物の残基を表す。n5、r1は、オキシエチレン基の平均付加モル数を表し、1〜500の数(好ましくは75〜500の数)である。m3は、1〜500の数(好ましくは20〜500の数)である。q1は、1〜50の数(好ましくは1〜30の数)である。m4及びp2はそれぞれ0以上の数であり、m4及びp2の合計は、3以上である。m5は、3以上の数である。)
上記式(19)〜(22)の構造は、不飽和カルボン酸系単量体がアクリル酸又はメタクリル酸、(ポリ)アルキレングリコール鎖が(ポリ)エチレングリコール鎖、結合部位(X)が、チオ酢酸又はその金属塩に由来する硫黄原子を含む結合部位である構造であることが好ましい。
なお、上記式式(19)〜(22)において、不飽和カルボン酸系単量体単位のR13及びCOOH基の位置は末端の水素原子側に描いているが、単量体単位ごとにおけるR13及びCOOH基の位置は硫黄原子側に位置していてもよい。上記式(19)〜(22)で示す構造では、単量体単位ごとにR13及びCOOH基の位置が水素原子側であるか硫黄原子側であるかがランダムに決定される。
<活性水素を有する化合物の残基(Z)>
本明細書において、活性水素を有する化合物の残基とは、活性水素を有する化合物から活性水素を除いた構造を有する基を意味し、該活性水素とは、アルキレンオキシドが付加できる水素を意味する。このような活性水素を有する化合物の残基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
上記活性水素を有する化合物の残基としては、具体的には、例えば、多価アルコールの水酸基から活性水素を除いた構造を有する多価アルコール残基、多価アミンのアミノ基から活性水素を除いた構造を有する多価アミン残基、多価イミンのイミノ基から活性水素を除いた構造を有する多価イミン残基、多価アミド化合物のアミド基から活性水素を除いた構造を有する多価アミド残基等が好適である。中でも、多価アミン残基、多価アルコール残基、及び、多価イミン残基のうちポリアルキレンイミン残基が好ましい。すなわち、上記活性水素を3個以上有する化合物の残基は、多価アミン残基、ポリアルキレンイミン残基及び多価アルコール残基からなる群より選択される少なくとも1種の多価化合物残基であることが好適である。
なお、活性水素を有する化合物残基の構造としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
上記活性水素を有する化合物の残基の好ましい具体例のうち、多価アミン(ポリアミン)としては、1分子中に平均2個以上のアミノ基を有する化合物であればよく、例えば、メチルアミン等のアルキルアミン;アリルアミン等のアルキレンアミン;アニリン等の芳香族アミン;アンモニア等のモノアミン化合物の1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体等が好適である。このような化合物により、上記多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が有する多価アミン残基が形成されることになる。
更に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の2価以上のアミン化合物や、それらの1種又は2種以上を重合して得られるポリアミンであってもよい。このようなポリアミンは、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
また上記ポリアルキレンイミンとしては、1分子中に平均3個以上のイミノ基を有する化合物であればよく、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン等の炭素数2〜8のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体等が好適である。このような化合物により、上記多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が有するポリアルキレンイミン残基が形成されることになる。なお、ポリアルキレンイミンは重合により三次元に架橋され、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子を持つ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
これらの中でも、上記多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が奏する性能の観点から、エチレンイミンを重合して得られるポリエチレンイミンがより好適である。
上記多価アミン及びポリアルキレンイミンの数平均分子量としては、100〜100000が好ましく、より好ましくは300〜50000、さらに好ましくは600〜10000であり、特に好ましくは800〜5000である。
上記多価アルコールとしては、1分子中に平均3個以上の水酸基を含有する化合物であればよいが、炭素、水素及び酸素の3つの元素から構成される化合物であることが好適である。具体的には、例えば、ポリグリシドール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、グルコースなどの糖類、グルシット等の糖アルコール類、グルコン酸などの糖酸類等が好適である。このような化合物により、上記多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が有する多価アルコール残基が形成されることになる。
これらの中でも、工業的な生産効率の観点から、より好ましくは、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタンである。
<本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法>
以下においては、まず、上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)、(2)の製造方法について説明し、次に、上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)、(4)の製造方法について説明する。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)、(2)の製造方法>
本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)、(2)の製造方法の一例として、チオ酢酸(又はその金属塩)に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合について以下に説明する。
本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)、(2)は、少なくとも1つの末端に((ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(2)を製造する場合は、両方の末端に)ヒドロキシル基末端を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を準備し、上記ヒドロキシル基末端に対してトシル化反応を行う工程(トシル化工程)、チオ酢酸又はその金属塩を反応させてチオアセチル化反応を行う工程(チオアセチル化工程)、チオアセチル化工程によって得られたチオアセチル基を加水分解する工程(加水分解工程)、末端にチオール基を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和ビニル系単量体をブロック重合させる工程(ブロック重合工程)を行うことにより製造することができる。
一方の末端又は両方の末端にチオール基を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)をPAG(ジ)チオール化合物ともいう。(ポリ)アルキレングリコールが(ポリ)エチレングリコールの場合は、PEG(ジ)チオール化合物ともいう。
<トシル化工程>
トシル化工程では、末端にヒドロキシル基末端を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖のヒドロキシル基末端とトシル化剤とを反応させてトシル基を生成し、トシル化(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を得る。
上記トシル化工程において用いられるトシル化剤、反応条件としては、水酸基をトシル化できる限り特に限定されず、例えば、トシルクロライド(TsCl)をトシル化剤とし、ジクロロメタン(CHCl)等を反応溶媒として用い、適宜反応条件を設定すればよい。
<チオアセチル化工程>
チオアセチル化工程では、トシル化工程によって得られた、ヒドロキシル基末端がトシル化された、末端にトシル基を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖のトシル基とチオアセチル化剤とを反応させてチオアセチル基を生成し、チオアセチル化(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を得る。
上記チオアセチル化工程において用いられるチオアセチル化剤、反応条件としては、トシル基をチオアセチル化できる限り特に限定されず、例えば、チオ酢酸カリウム(CHCOSK)をチオアセチル化剤とし、アセトニトリル(CHCN)を反応溶媒として用い、適宜反応条件を設定すればよい。
<加水分解工程>
加水分解工程では、チオアセチル化工程によって得られた、トシル基末端がチオアセチル化された、末端にチオアセチル基を有する(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖のチオアセチル基を加水分解してチオール基を生成し、(ジ)チオール化(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を得る。例えば、下記式(23)、(24)で示すPAG(ジ)チオール化合物を得ることができる。
下記式(23)、(24)で示すPAG(ジ)チオール化合物は、それぞれ本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)、(2)を生成する中間体として好ましいものである。
上記加水分解工程においも、チオアセチル基の加水分解が進行するように適宜反応条件を設定すればよい。
Figure 0006305190
(式(23)、(24)中、R、R、n1は上記と同様である。AOは、オキシアルキレン基を表す。)
また後述するように、本発明における(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)、(4)も、上記トシル化工程、チオアセチル化工程、加水分解工程を含む製造方法で製造することができる。その場合、加水分解工程を経て得られるPAG(ジ)チオール化合物は、下記式(25)、(26)で示される構造を有する化合物となる。
Figure 0006305190
(式(25)、(26)中、Z、B、R、R、n3、n4、p1、m1、m2は上記と同様である。AOは、オキシアルキレン基を表す。)
<ブロック重合工程>
上述したように、上記PAG(ジ)チオール化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて、ビニル系単量体成分をラジカル重合することにより、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)、(2)を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
ビニル系単量体成分が含む不飽和アニオン系単量体中、高分子鎖(A)を形成する不飽和カルボン酸系単量体(単量体(a))が主体であることが好ましく、実質的にすべてが高分子鎖(A)を形成する不飽和カルボン酸系単量体であることが好ましい。
上記重合反応により得られた重合体は、水溶液状態で弱酸性以上(好ましくはpH4以上、更に好ましくはpH5以上、特に好ましくはpH6以上)のpH範囲に調整しておくことで取り扱いやすいものとすることができる。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、収縮低減剤としての性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、更に好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。
<硫黄原子を含む結合部位以外の結合部位を有する共重合体の製造方法>
ここまで、硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合の例について説明したが、結合部位としてその他の構造を有する共重合体を製造する方法について以下に説明する。
アゾ開始剤由来の結合部位を有する共重合体を製造する場合、出発物質として、アゾ開始剤の末端が(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造を有するものを使用することができる。
アゾ開始剤の末端が(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造を有するものは、例えば、アゾ基の両末端にカルボキシル基を有するアゾ開始剤(V−501など、和光純薬工業株式会社製)と、(ポリ)アルキレングリコールとをエステル化することにより得ることもできる。エステル化の方法としては、加熱工程を行うとアゾ開始剤が分解するので、加熱工程を含まない製法が必要である。そのような製法としては、(1)アゾ開始剤に塩化チオニルを反応させて酸塩化物を合成した後、(ポリ)アルキレングリコールを反応させてアゾ開始剤を得る方法;(2)アゾ開始剤と(ポリ)アルキレングリコールとを、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および必要に応じて4−ジメチルアミノピリジンを用いて、脱水縮合することによりアゾ開始剤を得る方法;などが挙げられる。
上記アゾ開始剤を使用すれば、アゾ基が熱で分解して、ラジカルが発生し、そこから重合が開始する。それゆえ、オキシアルキレン基からなるポリアルキレンオキシド部分の一端に不飽和アニオン系単量体が次々に付加して、本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が形成される。
リン原子を含む残基由来の結合部位を有する共重合体を製造する場合、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端酸素原子に炭素−炭素二重結合を有する有機残基が結合した構造を有する化合物Cに、次亜リン酸(塩)を付加させて、リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物を製造することが好ましい。
なお、上記化合物Cは、公知の方法で合成することができる。
上記化合物Cは、(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に、不飽和基を有する化合物を付加させる方法によって合成してもよい。付加の形態としてはエステル化、エーテル化、アミド化など、公知の方法を用いることができる。付加させる不飽和化合物は、アルキレンオキシドに付加できるものであれば良い。
上記化合物Cに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程においては、化合物Cが含有する不飽和結合1モルに対して、次亜リン酸(塩)を0.01〜100モルの割合で添加して反応させることが好ましい。上記化合物Cの反応率を高める観点からは、1モルの化合物Cに対して次亜リン酸(塩)を好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、さらにより好ましくは0.5モル以上である。未反応の次亜リン酸(塩)を低減する観点からは、1モルの化合物Cに対して次亜リン酸(塩)を好ましくは10モル以下、より好ましくは5モル以下、さらにより好ましくは2モル以下である。
上記化合物Cに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程は、0〜200℃の温度で行うことが好ましい。より好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは40〜120℃、さらにより好ましくは50〜100℃の温度で行うことである。
上記化合物Cに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程の後、得られたリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物を精製することが好ましい。精製工程は、反応後の溶液を乾燥して溶媒を除去した後、精製溶媒に懸濁してろ過を行うこと、及び、抽出のいずれか又は両方により行うことができる。
精製溶媒は適宜選べばよいが、例えばTHF、アセトニトリル、クロロホルム、イソプロピルアルコール等が好ましい。
抽出溶媒は適宜選べばよいが、高極性溶媒として水、メタノール、アセトニトリル、ジオキサンなどを用いて行うことが好ましい。低極性溶媒としてジエチルエーテル、シクロヘキサン、クロロホルム、メチレンクロライドなどを用いて行うことが好ましい。
上記化合物Cと次亜リン酸(塩)とを付加反応させる工程は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶媒に溶解した溶液状態で行うことができる。その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、水を溶媒として用いることが好ましい。
上記化合物Cと次亜リン酸(塩)とを付加反応させる工程を、溶媒に水を用いて行う場合には、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが、反応後に不溶成分を除去する必要がないので好適である。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;t−ブチルヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等の水溶性アゾ系開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、過硫酸系開始剤が好適である。
上記リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて不飽和アニオン系単量体をラジカル重合することで、本発明の(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
不飽和アニオン系単量体をラジカル重合させる工程は、PAGチオール化合物を連鎖移動剤として使用するブロック重合工程と同様にして行うことが出来るため、その詳細な説明は省略する。
<(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)、(4)の製造方法>
本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(3)、(4)の製造方法は、多分岐(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を得る工程(第1の工程)と多分岐(ポリ)アルキレングリコール系重合体における上記枝状部の末端部位の一部又は全部に、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分を重合する工程(第2の工程)とを含み、この順にこれらの工程を行うことで製造することができる。
上記第1の工程は、活性水素を3個以上有する化合物に(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を付加することによって行うことができる。
第2の工程は、上述した本発明に係る(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体(1)、(2)の製造方法と同様の方法で行うことができる。
<収縮低減剤>
本発明の収縮低減剤は、上述した(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含み、優れた収縮低減性能を発揮することができる。
本発明の収縮低減剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性材料組成物に加えて用いることができ、このような本発明の収縮低減剤、水硬性材料及び水を含む水硬性材料組成物もまた、本発明の1つである。
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、特開2009−046655号公報に記載のものと同様のものを用いることができる。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
上記セメント組成物の1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)としては、例えば、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量200〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好適であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65とすることである。このように、本発明の収縮低減剤は、貧配合から富配合に至るまでの幅広い範囲で使用可能であり、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域でも使用可能であり、更に、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
本発明の収縮低減剤としては、高減水率領域においても優れた収縮低減性能を発揮できることから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に使用することが可能であり、更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等のモルタルやコンクリートにも有効である。
本発明の収縮低減剤をセメント組成物に使用する場合、その配合割合としては、本発明の必須成分である(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01〜10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02〜8質量%であり、更に好ましくは0.05〜6質量%である。
上記収縮低減剤としてはまた、他のセメント添加剤と組み合わせて用いることもできる。他のセメント添加剤としては、例えば、水溶性高分子物質;高分子エマルジョン;遅延剤;早強剤・促進剤;消泡剤;AE剤; その他界面活性剤;防水剤;防錆剤;ひび割れ低減剤;膨張材等の1種又は2種以上を使用することができる。これらの具体例としては、特開2009−046655号公報や特開2011−079721号公報に記載のものと同様のものを用いることができる。
中でも、オキシアルキレン系消泡剤や、AE剤を併用することが特に好ましい。
なお、セメント添加剤の添加割合としては、上記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体の固形分100質量部に対し、0.0001〜10質量部とすることが好適である。
その他のセメント添加剤(材)として、例えば、減水剤、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等が挙げられる。
本発明の収縮低減剤は、上述の構成よりなり、少量の添加でも水硬性組成物の乾燥時の収縮を効果的に低減することができるため、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性材料組成物の収縮低減剤として好適に用いることができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例における各種測定は、以下のようにして行った。
<GPC分析法>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsα+TSKgelα5000+α4000+α3000
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水15076g、アセトニトリル3800gの混合溶媒にホウ酸93.98gと水酸化ナトリウムを30.4g溶解したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成
した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL
試料濃度:溶離液で1%に調整した。
<LC分析法>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:Waters社製 Atlantis dC18 ガードカラム+カラム(粒径5μm、内径4.6mm×250mm×2本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL
試料濃度:溶離液で1%に調整した。
<CE分析法>
装置:ベックマンコールター MDQ
解析ソフト:32Karat
使用キャピラリー:シリカ素管、50cm EfectiveLength、75μm I.D、375μm O.D
溶離液:ホウ酸1.546gをイオン交換水498.45gに溶解させたもの
検出器:UV
電圧:20kV
キャピラリー温度:25℃
測定時間:60分
試料濃度:溶離液で2%に調整した。
(製造例1)共重合体1の製造
(1.トシル化工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、エチレンオキシドの平均付加モル数50のポリエチレングルコール(PEG50)を22.19部、トシルクロライド(TsCl)を4.576部、トリエチルアミン(EtN)を3.036部、ジクロロメタン(CHCl)を100.0部仕込んだ。反応系内を撹拌しながら、24時間反応を行った後、ろ過により塩を取り除き、ろ液を減圧下で脱溶媒を実施し、PEG50の両末端トシル化体(PEG50−2OTs)を得た。
(2.チオアセチル化工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、PEG50−2OTsを25.27部、チオ酢酸カリウム(CHCOSK)を2.741部、アセトニトリル(CHCN)を100.0部仕込んだ。反応系内を撹拌しながら、24時間反応を行った後、ろ過により塩を取り除き、減圧下で脱溶媒を実施しPEG50の両末端チオアセチル化体(PEG50−2SAc)を得た。
(3.加水分解工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、合成したPEG50−2SAcを23.35部、メタノール(MeOH)を50.00部仕込みPEG50−2SAcを溶解させ、1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を25.00部投入し10分間撹拌した後、1Nの塩酸(HCl)を25.00部投入しさらに10分間撹拌し、ジクロロメタンを投入し抽出を行い、有機層を回収し、減圧下で脱溶媒を実施しPAGジチオール化合物1を得た。
(4.ブロック重合工程)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水15.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、そこへメタクリル酸(MAA)2.680部とイオン交換水(PW)10.720部からなる水溶液(A)(酸水溶液)を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時にPAGジチオール化合物1を2.330部とイオン交換水5.437部からなる水溶液(B)(PAGチオール水溶液)を4.0時間かけ滴下した。また、(A)を滴下し始めると同時にアゾ開始剤2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩[2,2’−azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride](和光純薬工業株式会社製 V−50)0.2830部とイオン交換水8.843部からなる水溶液(C)を5.0時間かけ滴下した。その後、1時間引続いて80℃に温度を維持した後、冷却して、重合を終了し、本発明の共重合体1(好ましい実施形態であるセメント混和剤用共重合体を含む水溶液)を得た。GPCとLC、CEにより反応率(消費率)を求めたところ、PAGジチオール化合物1の反応率は95.00%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ95.00%であった。
(製造例2)共重合体2の製造
(1.トシル化工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、エチレンオキシドの平均付加モル数75のメトキシポリエチレングルコール(MPEG75)を33.33部、トシルクロライド(TsCl)を2.288部、トリエチルアミン(EtN)を1.518部、ジクロロメタン(CHCl)を100.0部仕込んだ。反応系内を撹拌しながら、24時間反応を行った後、ろ過により塩を取り除き、ろ液を減圧下で脱溶媒を実施し、MPEG75のトシル化体(MPEG75−OTs)を得た。
(2.チオアセチル化工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、MPEG75−OTsを34.87部、チオ酢酸カリウム(CHCOSK)を1.371部、アセトニトリル(CHCN)を100.0部仕込んだ。反応系内を撹拌しながら、24時間反応を行った後、ろ過により塩を取り除き、減圧下で脱溶媒を実施しMPEG75のチオアセチル化体(MPEG75−SAc)を得た。
(3.加水分解工程)
撹拌機を備えたガラス製反応器内に、合成したMPEG75−SAcを33.91部、メタノール(MeOH)を50.00部仕込みMPEG25−SAcを溶解させ、1Nの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を25.00部投入し10分間撹拌した後、1Nの塩酸(HCl)を25.00部投入しさらに10分間撹拌し、ジクロロメタンを投入し抽出を行い、有機層を回収し、減圧下で脱溶媒を実施しPAGモノチオール化合物1を得た。
(4.ブロック重合工程)
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水15.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、そこへメタクリル酸(MAA)1.390部と30%水酸化ナトリウム水溶液0.2583部とイオン交換水(PW)5.560部からなる水溶液(A)(酸水溶液)を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時にPAGモノチオール化合物1を3.610部とイオン交換水8.423部からなる水溶液(B)(PAGモノチオール水溶液)を4.0時間かけ滴下した。また、(A)を滴下し始めると同時にアゾ開始剤2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩[2,2’−azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride](和光純薬工業株式会社製 V−50)0.1462部とイオン交換水11.017部からなる水溶液(C)を5.0時間かけ滴下した。その後、1時間引続いて80℃に温度を維持した後、冷却して、重合を終了し、本発明の共重合体2(好ましい実施形態であるセメント混和剤用共重合体を含む水溶液)を得た。
(製造例3)共重合体3の製造
(1.トシル化工程)
エチレンオキシドの平均付加モル数100のポリエチレングルコール(PEG100)を44.19部使用した以外は製造例1のトシル化工程と同様の方法でPEG100の両末端トシル化体(PEG100−2OTs)を得た。
(2.チオアセチル化工程)
PEG100−2OTsを47.27部使用した以外は製造例1のチオアセチル化工程と同様の方法でPEG100の両末端チオアセチル化体(PEG100−2SAc)を得た。
(3.加水分解工程)
PEG100−2SAcを45.35部使用した以外は製造例1の加水分解工程と同様の方法でPAGジチオール化合物2を得た。
(4.ブロック重合工程)温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水15.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、そこへメタクリル酸(MAA)1.840部と30%水酸化ナトリウム水溶液0.342部とイオン交換水(PW)7.360部からなる水溶液(A)(酸水溶液)を4.0時間かけ滴下し、(A)を滴下し始めると同時にPAGジチオール化合物2を3.160部とイオン交換水7.373部からなる水溶液(B)(PAGチオール水溶液)を4.0時間かけ滴下した。また、(A)を滴下し始めると同時にアゾ開始剤2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩[2,2’−azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride](和光純薬工業株式会社製 V−50)0.1933部とイオン交換水10.267部からなる水溶液(C)を5.0時間かけ滴下した。その後、1時間引続いて80℃に温度を維持した後、冷却して、重合を終了し、本発明の共重合体3(好ましい実施形態であるセメント混和剤用共重合体を含む水溶液)を得た。
共重合体1〜3について、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の内訳を表1に示す。
Figure 0006305190
[モルタル、供試体作成および長さ変化の測定方法]
(モルタルW/C=50%条件)
モルタルの混練はJIS R 5201−1997附属書2の方法に従いホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)を用い、以下のとおり実施した。表2に示す所定量の添加剤(共重合体)を秤量して水で希釈したもの225gを練鉢に仕込み、これに普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)450gを入れ、直ちに低速(自転速度140±5rpm、公転速度62±10rpm)で始動させた。始動させてから30秒後にセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gを30秒間かけて入れた。砂投入後、高速(自転速度285±10rpm、公転速度125±10rpm)にてさらに30秒間混練し、90秒間混練を休止した。休止の最初の15秒間に練鉢に付着したモルタルを掻落し、底に付着したモルタルを中央に集めた。休止後、再度高速で60秒間混練し、混練を終了した。
混練終了後、練鉢からモルタルを取り出し、空気量およびモルタルフロー値の測定をそれぞれJIS 1174−1978およびJIS R 5201−1997の方法に従い行った。
また、実施例1〜3においてはモルタルの空気量を1.5±1%に調整するためにオキシアルキレン系の消泡剤を添加した。
Figure 0006305190
(供試体の作成)
乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(4×4×16cm)の作成をJIS R 5201附属書2の方法に従い実施した。
型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混練して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し20℃で保管し、初期養生(封緘養生)を行なった。1日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースをたわしを用いて水で洗浄し、続いて20℃の静水中で6日間養生(水中養生)した。
(長さ変化の測定)
JIS A 1129−3(ダイヤルゲージ方法)に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用した。静水中で6日間養生した供試体の表面の水を紙タオルでふき取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20±1℃、湿度60±5%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。
(実施例1〜4および比較例1)
乾燥材齢1、2および3週の各供試体の収縮ひずみ量を表3に示す。収縮ひずみ量が大きいほど、より収縮していることを示す。
Figure 0006305190
表3に示す様に、各乾燥材齢において共重合体1、2および3をそれぞれ使用した実施例1〜3においては、未使用の比較例1に比べて各乾燥材齢での収縮ひずみ量が小さくなっていることから、これらの重合体が供試体の乾燥収縮の低減に効果があることが確認された。

Claims (6)

  1. 不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端とが結合部位(X)を介して結合した構造を有し、
    結合部位(X)のうち少なくとも1つが、硫黄原子を有し、かつ、カルボニル基を有さない結合である(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体を含むことを特徴とする水硬性材料用収縮低減剤。
  2. 前記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、直鎖状の高分子鎖(B)の一方の末端のみが不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)の末端と結合部位(X)を介して結合した構造を有することを特徴とする請求項1に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
  3. 前記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、直鎖状の高分子鎖(B)の両方の末端が不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)の末端と結合部位(X)を介して結合した構造を有することを特徴とする請求項1に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
  4. 前記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)との結合部位(X)を介した結合を必須とする多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、該多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、該高分子鎖(B)を多分岐構造の枝状部の一部又は全部とし、該枝状部を3つ以上有し、一部の枝状部の末端部位に該高分子鎖(A)を有することを特徴とする請求項1に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
  5. 前記(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和アニオン系単量体を含むビニル系単量体成分由来の高分子鎖(A)と(ポリ)アルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)との結合部位(X)を介した結合を必須とする多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体であって、該多分岐(ポリ)アルキレングリコール系ブロック共重合体は、該高分子鎖(B)を多分岐構造の枝状部の一部とし、該枝状部を3つ以上有し、すべての枝状部の末端部位に該高分子鎖(A)を有することを特徴とする請求項1に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤、水硬性材料及び水を含むことを特徴とする水硬性材料組成物。
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