JP5710862B2 - ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物及びその用途 - Google Patents
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Description
本発明は更に、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体を含む分散剤又はセメント混和剤でもある。
本発明はそして、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体を含むセメント組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明のポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物は、ポリアルキレングリコール鎖が活性水素を3個以上有する化合物の残基に結合し、かつ該ポリアルキレングリコール鎖の他末端の少なくとも1つが、カルボニル基を有する基を介してメルカプト基(チオール基、SH基)に結合した構造を有するものである。
このような構造において、活性水素を有する化合物の残基とは、活性水素を有する化合物から活性水素を除いた構造を有する基を意味し、該活性水素とは、アルキレンオキシドが付加できる水素を意味する。このような活性水素を3個以上有する化合物の残基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
なお、活性水素を有する化合物残基の形態としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
これらの中でも、ポリアルキルアミンを用いることが好ましく、ポリアルキルアミンを構成するアルキルアミンとしては、ラウリルアミン等の炭素数8〜18のアルキルアミンが好適である。
これらの中でも、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が奏する性能の観点から、エチレンイミンが主体を占めるポリアルキレンイミンであることがより好適である。
これらの中でも、工業的な生産効率の観点から、より好ましくは、トリメチロールプロパンやソルビトールである。
なお、以下では、上記ポリアルキレングリコール鎖(すなわち、上記活性水素を3個以上有する化合物の残基と、上記カルボニル基を有する基とに結合するポリアルキレングリコール鎖)を、「ポリアルキレングリコール鎖(1)」ともいう。
下記式(A)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がグリセリン残基(多価アルコール残基)であり、グリセリンが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール鎖及びカルボニル基を有する基を介してメルカプト基が結合した構造を模式的に示したものである。
また下記式(B)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基)であり、ソルビトールが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール鎖及びカルボニル基を有する基を介してメルカプト基が結合した構造を模式的に示したものである。
上記ポリアルキレングリコール鎖(1)としては、炭素数2以上のアルキレンオキシドから構成されるもの(ポリアルキレンオキシド)であればよく、該アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜18のアルキレンオキシドが好適である。より好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキシドであり、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
また上記炭素数3以上のオキシアルキレン基は、ブロック状に導入されていてもよく、ランダム状に導入されていてもよいが、(炭素数2以上のオキシアルキレン基からなる(ポリ)アルキレングリコール鎖)−(炭素数3以上のオキシアルキレン基からなる(ポリ)アルキレングリコール鎖)−(炭素数2以上のオキシアルキレン基からなる(ポリ)アルキレングリコール鎖)のようにブロック状に導入されることが好ましい。これにより、より高い分散性を発揮することが可能になる。
なお、上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が有するポリアルキレングリコール鎖(1)1モル中において付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
なお、ポリアルキレングリコール鎖(1)の末端酸素原子と、カルボニル基を有する基中のカルボニル基とにより、エステル結合(−COO−)が形成されることになる。
上記有機残基とは、基や化合物を構成する基本構造に結合している有機基を意味し、例えば、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基や、炭素数6〜11の芳香族基(フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾール等)等が挙げられる。中でも、反応性の観点からは、炭素数1〜8の炭化水素基を含む基であることが好ましく、より好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基を含む基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基であり、特に好ましくは、炭素数1〜6の分岐アルキレン基又は炭素数6の芳香族基である。また耐加水分解性の観点からは、炭素数2以上であることが好ましい。最も好ましくは、炭素数2〜6の分岐アルキレン基又は炭素数6の芳香族基であり、例えば、メルカプトイソブチル酸又はチオサリチル酸由来の2価の有機残基である。
なお、上記有機残基は、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等で一部置換されていてもよい。
なお、上記エステル結合とは、ポリアルキレングリコール鎖(1)の末端酸素原子(−O−)と、カルボニル基を有する基中のカルボニル基(−CO−)とから構成されるエステル結合を意味する。
この場合、上記カルボニル基を有する基としては、炭素数2〜6の分岐アルキレン基又は炭素数6の芳香族基に、カルボニル基(又はアミド基)が結合してなる基であることが好ましい。より好ましくは、上記カルボニル基を有する基が、例えば、メルカプトイソブチル酸又はチオサリチル酸由来の基(2価の有機残基及びカルボニル基を有する基)であることである。
このようなポリアルキレングリコール鎖の末端(活性水素を3個以上有する化合物の残基とは反対側の末端)は、例えば、水素原子、1価金属原子、2価金属原子、アンモニウム基、有機アミン基、炭素数1〜30の炭化水素基、オキソ炭化水素基、アミド炭化水素基、カルボキシル炭化水素基、炭素数0〜30のスルホニル(炭化水素)基等のいずれかに結合した構造を有することが好適であり、1分子内に2つ以上の当該ポリアルキレングリコール鎖を有する場合には、その末端構造が同一であってもよく異なっていてもよい。このような末端構造の中でも、汎用性の点から、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基、より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜10の炭素水素基に結合した構造であり、炭素数1〜10の炭化水素基の中でもアルキル基やアルキレン基が好適である。
すなわち、例えば上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が上記一般式(1)で表される化合物である場合、該化合物は、下記一般式(2);
上記pは、Xで表される活性水素を3個以上有する化合物の活性水素数及びmの数に依存して最大数が決まる数であるが、カルボニル基を有する基を介してメルカプト基に結合するポリアルキレングリコール鎖に起因した効果を充分に発揮させるため、活性水素を3個以上有する化合物が結合する該ポリアルキレングリコール鎖の数が3以上となるように、pが、〔(活性水素を3個以上有する化合物の全活性水素数)−3〕以下の数であることが好適である。
本発明はまた、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物を製造する方法であって、上記製造方法は、活性水素を3個以上有する化合物にアルキレンオキシドを付加してなる化合物と、カルボキシル基を有するチオール化合物とを脱水縮合させる工程を含むポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物の製造方法でもある。
上記アルキレンオキシドもまた、上述したとおりである。
また上記活性水素を3個以上有する化合物と、アルキレンオキシドとの反応モル比としては、上述したポリアルキレングリコール鎖におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数の好適範囲になるよう、適宜設定することが好ましい。
上記付加反応工程の反応時間は、用いる触媒の種類や量、上記アルキレンオキシドの活性水素を3個以上有する化合物への付加モル数、溶液濃度等に応じて適宜設定すればよい。
なお、上記活性水素を3個以上有する化合物にアルキレンオキシドを付加してなる化合物(以下、単に「付加物」ともいう。)として、市販の化合物を用いることもできる。
上記脱水縮合工程において、カルボキシル基を有するチオール化合物(チオール基含有化合物)とは、1分子中にカルボキシル基(カルボン酸基)とメルカプト基とを有するメルカプトカルボン酸基含有化合物であればよい。
このようなメルカプトカルボン酸基含有化合物としては、例えば、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトイソブチル酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、メルカプトステアリン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酪酸、メルカプトオクタン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトニコチン酸、システイン、N−アセチルシステイン、メルカプトチアゾール酢酸等が挙げられる。中でも、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプトイソブチル酸、チオサリチル酸が好適である。
なお、活性水素を3個以上有する化合物にアルキレンオキシドを付加反応させる際には、炭素数3以上のオキシアルキレン基(より好ましくは第二級アルコール残基)の導入率を高めるために、触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属及びそれらの酸化物又は水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムであり、最も好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
また付加反応の際の反応温度は、これらの基の導入率を高めるために50〜200℃であることが好ましい。より好ましくは70〜170℃、更に好ましくは90〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。
なお、上記チオール基含有化合物が有するメルカプト基の性質上、上記脱水縮合工程は、酸触媒下で行うことが好適である。酸触媒としては、上述したとおりである。
このように上記付加物とチオール基含有化合物との脱水縮合工程は、酸触媒を用いたエステル化反応工程であることが好適である。
なお、作業工程が増えることによる製造コストの高騰、及び、溶剤の使用による環境への負荷を考慮すると、上記溶剤を用いた洗浄作業は避けることが好ましい。この場合、原料化合物である上記付加物とチオール基含有化合物との混合比は、上述したように上記付加物が有する反応に供される水酸基量に対し、上記チオール基含有化合物が有するカルボキシル基をモル比で2倍以下とすることが好適である。
このように、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が、副生成物として多量化物を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
下記式は、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が、上述した式(B)(活性水素を3個以上有する化合物がソルビトールであり、ソルビトールが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール鎖及びカルボニル基を有する基を介してメルカプト基が結合した形態)である場合に、2つのメルカプト基がジスルフィド結合を生成して二量体を生成した形態を模式的に示したものである。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、通常使用されているものを用いればよいが、例えば、フェノチアジン及びその誘導体;ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、メトキノン、ブチルハイドロキノン、ブチルカテコール、ナフトハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール、トコトリエノール、カテキン等のフェノール化合物;トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジフェニルピクリルヒドロジン、ピクリン酸等のニトロ化合物;ニトロソベンゼン、クペロン等のニトロソ化合物;ジフェニルアミン、ジ−p−フルオロフェニルアミン、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド等のアミン系化合物;TEMPOラジカル(2,2,6,6−tetramethyl−1−piperidinyloxyl)、ジフェニルピクリルヒドラジル、ガルビノキシル、フェルダジル等の安定ラジカル;アルコルビン酸やエリソルビン酸及びその塩又はエステル;ジチオベンゾイルジスルフィド;塩化銅(II)等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、フェノチアジン及びその誘導体、フェノール系化合物、アルコルビン酸やエリソルビン酸及びそのエステルが好適であり、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンがより好適である。これらの酸化防止剤は、脱水縮合工程においても溶剤留去工程においても極めて有効に重合禁止能を発揮することができる点から有用である。
本発明はまた、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物を用いて得られるポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体でもある。
このような重合体は、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物に由来するポリアルキレングリコール鎖(1)の立体反発と、上記(i)及び/又は(ii)の特定構造とに由来して、極めて高い分散性能及び耐加水分解性能を発揮でき、長期にわたって安定して高い分散性能を発現することができるため、より多くの分野に有用な重合体となる。この場合、例えば、下記一般式(3);
上記重合反応においては、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物の存在下で行うことによって、メルカプト基から熱や光、放射線等によって発生したラジカル若しくは必要に応じて別に使用した重合開始剤によって発生したラジカルが、メルカプト基に連鎖移動するか、又は、ジスルフィド結合を開裂させ、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が有する末端の硫黄原子(S)を介して単量体が次々に付加し、重合体が形成されることになる。
すなわち、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体は、ポリアルキレングリコール鎖の少なくとも一端のカルボニル基を有する基及びメルカプト基を介して、ビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体部位を有する構造を持つことになるが、このような形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
なお、上記単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(4)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
なお、上記単量体(b)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(5)で示される単量体(b)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記R7で表される末端基としては、セメント混和剤用途に用いる場合には、セメント粒子の分散性の観点から親水性基であることが好適であり、具体的には、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
ここで、「主として」とは、例えば、ポリアルキレングリコール鎖(2)を構成する全オキシアルキレン基(アルキレングリコール単位)100モル%中のオキシエチレン基をモル%で表すとき、50〜100モル%となるものであることが好ましい。50モル%未満であると、オキシアルキレン基の親水性が充分とはならず、セメント粒子の分散性能を充分に付与することができないおそれがある。より好ましくは60モル%以上であり、更に好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは90モル%以上である。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、製造の容易さの観点から、プロピレンオキシド基及びブチレンオキシド基が好ましく、中でも、プロピレンオキシド基がより好適である。
上記不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物としては、不飽和基を有するアルコールにポリアルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物であればよい。
上記ポリアルキレングリコールエステル系単量体としては、不飽和基とポリアルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された構造を有する単量体であればよく、不飽和カルボン酸ポリアルキレングリコールエステル系化合物が好適であり、中でも、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好適である。
上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1〜30の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の炭素数3〜30の脂環族アルコール類;(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数3〜30の不飽和アルコール類等が挙げられる。
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、
この場合、上記重合体(ii)は、更に上記単量体(c)由来の構成単位を含むことになるが、上記単量体(c)由来の構成単位とは、重合反応によって単量体(c)の有する重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記単量体(c)を用いる場合、その含有量としては、全ビニル系単量体成分100質量%に対し、30質量%以下とすることが好適である。より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数23〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数23〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸系単量体とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数5〜18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;マレアミン酸と炭素原子数5〜18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
なお、上記促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、併用する重合開始剤の総量を100モルとすると、好ましくは10モル以上、より好ましくは20モル以上、更に好ましくは50モル以上であり、また、好ましくは1000モル以下、より好ましくは500モル以下、更に好ましくは400モル以下である。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
なお、重合開始剤として、過硫酸塩や過酸化水素を用いた場合には、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物が有するメルカプト基が酸化され、得られる重合体の収率が充分とはならないおそれがある。
上記連鎖移動剤の使用量は、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物の態様や量に応じて適宜設定すればよいが、ビニル系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。その際、窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、例えば、セメント混和剤用途に用いた場合に分散性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(より好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、更に好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。このように重合系が酸性から中性となる好ましい重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物等の水溶性アゾ開始剤、過酸化水素、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせ等を用いることが好ましい。なお、より好ましくは、上述したようにアゾ系開始剤を少なくとも使用することである。
pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行うことができる。また、pHを下げる場合、特に重合の際にpHの調整が必要な場合、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸等の酸性物質を用いてpHの調整を行うことができ、これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等からリン酸や少量の添加でpHを下げることができる硫酸が好ましい。また、反応終了後、必要に応じて濃度調整を行うこともできる。
なお、重合体の重量平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤(上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体)を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
なお、セメント添加剤の添加割合としては、上記重合体の固形分100重量部に対し、0.0001〜10重量部とすることが好適である。
(3)遅延剤:グルコン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
まず、ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物(「PAGチオール化合物」ともいう。)やその重合体及び比較用重合体の分析方法として、液体クロマトグラフィー(LC)分析条件・解析条件、及び、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析条件・解析条件について説明する。また、これらの固形分を求める測定法についても説明する。
LCによる分析法の一例を示す。但し、PAGチオールの構造によってはこの条件で分析できないものがあり、その際は適宜LCカラムや溶離液等の条件を変更して分析を行った。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:GLサイエンス Inertsil ODS−2 ガードカラム+カラム(内径4.6mm×250mm×3本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:0.6mL/分
カラム温度:40℃
試料液注入量:100μL(試料濃度1質量%の溶離液溶液)
原料成分である付加物の消費率は、以下のようにして概算した。
LC分析により、メルカプト基が全く導入されなかったもの(未反応原料)、メルカプト基が1つ導入されたポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物(PAGチオール化合物)、・・・、メルカプト基が(m+p)個導入されたPAGチオール化合物のピークが分離される。これらのRI(示差屈折率計)面積比(%)をS0、S1、・・・Sm+pとし、原料成分の付加物の消費率は、以下の式(1)により概算した。
ポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体や比較用重合体の重量平均分子量は、以下の測定条件により測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(PAG、PAGチオール化合物は試料濃度0.4質量%、重合体は試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
RIクロマトグラムにおいて、溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ピークを検出・解析した。多量体や不純物が目的ピークに一部重なって測定された場合は、ピークの重なり部分の最凹部において垂直分割し、目的物の分子量を測定した。
単量体純分量及び多量化物量の計算;
RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
単量体純分量=(PAGチオール化合物面積)/(多量化物ピーク面積+PAGチオール化合物面積)
多量化物量=(多量化物ピーク面積)/(多量化物ピーク面積+PAGチオール化合物面積)
得られたRIクロマトグラムにおいて、重合体溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、重合体を検出・解析した。ただし、単量体や単量体由来の不純物のピークが重合体ピークに一部重なって測定された場合、それらと重合体の重なり部分の最凹部において垂直分割して重合体部と単量体部とを分離し、重合体部のみの分子量・分子量分布を測定した。重合体部とそれ以外が完全に重なり分離できない場合はまとめて計算した。
重合体純分の計算:
RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
重合体純分=(重合体ピーク面積)/(重合体ピーク面積+単量体や不純物のピーク面積)
サンプル約0.5gをアルミ皿に量り採り、水約1gで希釈して均一に広げた。窒素雰囲気下、130℃で1時間乾燥させ、デシケーター中で放冷した後、乾燥後質量を量った。乾燥前後の質量差により固形分(不揮発分)濃度を計算した。
PAGチオール化合物や重合体の水溶液の濃度としては、特に断りがない限り、上記の手順で測定した固形分を用いた。
合成例1:SB→SB−30
ソルビトール(和光純薬社、250g、以下では「SB」ともいう。)、30%水酸化ナトリウム水溶液(3.44g)を、撹拌器を備えた耐圧反応容器に仕込んだ。オイルバスを用いて反応系内を130℃に加温し、系内に窒素をゆっくりとバブリングしながら、真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧し、水を留去した。更に真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧した後、窒素を導入して内圧を0.5MPaに調整した。反応器内温を130±2℃に保ちながら、エチレンオキシド(1813.6g、SBに対して30モル倍)を添加した。ただし反応器内圧は0.8MPaを超えないようにした。エチレンオキシドの添加終了後、反応器内を1時間130℃に保ち、反応を完結させた。反応前後の重量から、収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド29.9モル付加物(以下では「SB−30」ともいう。)が得られた。
原料をSB−30(600g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(2.66g)、エチレンオキシド(1595.4g、SB−30に対して90.5モル倍)としたこと以外は、合成例1と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド120モル付加物(以下では「SB−120」ともいう。)が得られた。
原料をSB−120(800g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(1.94g)、エチレンオキシド(1166.5g、SB−30に対して181モル倍)としたこと以外は、合成例1と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド300モル付加物(以下では「SB−300」ともいう。)が得られた。
原料を合成例3のSB−300(800g)、ブチレンオキシド(51.0g)とし、かつ30%水酸化ナトリウム水溶液を用いず、反応温度を125℃としたこと以外は、合成例1と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド300モル+ブチレンオキシドオキシド12モル付加物(以下では「SB−300+12BO」ともいう。)が得られた。
参考例1
(1)脱水エステル化反応工程
ジムロート冷却管付のディーン・スターク装置、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えたガラス製反応器内に、ソルビトールのエチレンオキシド300モル付加物(SB−300)、3−メルカプトプロピオン酸(3−MPA)、p−トルエンスルホン酸−水和物(PTS・1H2O)、フェノチアジン(PTZ)、シクロへキサンを表1−1に示す量で仕込んだ。ディーン・スターク装置をシクロへキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。また、加温用オイルバスの温度は120±5℃とした。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロヘキサンを加えながら、44.5時間加温還流して反応終了とした。
エステル反応終了後のLC分析結果は、表1−2に示すとおりである。
反応終了後、固化しないように撹拌しながら60℃まで放冷した後、表1−1に示す量で30%NaOH水溶液に水を加えた水溶液を、速やかに反応器内に投入した。続いて徐々に約100℃まで加温し、シクロへキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で90分バブリングして残存シクロへキサンを除去し、目的化合物(PAGチオール化合物(1))の水溶液を得た。
得られた目的化合物のLC分析結果及びGPC分析結果は、表1−2に示すとおりである。
参考例1において原料化合物や反応条件等を表1−1〜1−2に記載のように変更した他は、参考例1と同様にして目的化合物(PAGチオール化合物(2)〜(3))の水溶液を得た。
エステル化工程後及び脱溶媒工程後のLC分析結果及びGPC分析結果を表1−2に示す。なお、MiBAとは、メルカプトイソブチル酸を意味する。
参考例2(BPT−107)
単量体溶液として、表2−1に示す量で、メタクリル酸ナトリウム(SMAA)、メタクリル酸(MAA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(平均エチレンオキシド付加数25モル、PGM25E)、参考例1で得たPAGチオール化合物(1)及び水酸化ナトリウム(NaOH)にイオン交換水を加えて合計100gにした溶液を調整した。
開始剤溶液として、表2−1に示す量で、2,2’-azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride(和光純薬社製 V−50)にイオン交換水を加えて合計50gにした溶液を調整した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水(100g)を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を4時間、開始剤溶液を5時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液を加えてpHを6.0に調整し、目的重合体の水溶液を得た。GPC分析結果を表2−2に示す。
参考例2において単量体溶液及び開始剤溶液の種類や仕込み量等を表2−1〜2−2に記載のように変更した他は、参考例2と同様にして目的重合体の水溶液を得た。GPC分析結果を表2−2に示す。
<加水分解性(60℃)試験方法>
参考例2で得た重合体BPT−107、実施例3で得た重合体BPT−127、又は、実施例4で得た重合体BPT−128を45質量%含む水溶液を各々準備し、該重合体水溶液のpH値を、pH=7に設定した。これら3つの重合体水溶液について、液温60℃にて0〜84日間保存した場合の重量平均分子量(Mw)及び重合体純分を経時的に測定した。また、pH調整直後(保存0日)を基準とする重量平均分子量(Mw)の低下率を算出した。保存期間中、重合体水溶液の液温は60℃に維持した。結果を表3に示す。また、表3に記載のMw低下率をpH値ごとに対比したグラフを図1に示す。
この観点から、表3及び図1よりMw低下率を比較すると、本発明のポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物を用いて得た重合体BPT−127(実施例3)及び重合体BPT−128(実施例4)はいずれも、本発明の上記(i)又は(ii)の特定構造を有さない重合体BPT−107(参考例2)に比較して、Mw低下率が著しく小さい。その差は、例えば、84日経過後において約30%以上もある。この結果から、本発明のポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物を用いることによって、重合体の耐加水分解性が顕著に改善され、よって、長期にわたってより安定的に性能を発揮できることが分かった。
単量体溶液として、表4−1に示す量で、メタクリル酸ナトリウム(SMAA)、メタクリル酸(MAA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(平均エチレンオキシド付加数25モル、PGM25E)、3−メルカプトプロピオン酸(MPA)、及び、イオン交換水の溶液を調整した。
開始剤溶液として、表4−1に示す量で、過硫酸アンモニウム(APS、和光純薬製)及びイオン交換水の溶液を調整した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水(350g)を仕込み、200rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃まで加温した。
続いて上述の単量体溶液を4時間、開始剤溶液を5時間かけて反応容器中に滴下し、滴下完了後1時間反応80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液を加えてpH=7.0に調整し、比較重合体の水溶液を得た。GPC分析結果を表4−2に示す。
試験例1〜5
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=550/1350/220(g)とした。ただし、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:本発明重合体又は比較重合体、及び、消泡剤のイオン交換水溶液
Wとして、表5に示した添加量の重合体水溶液を量り採り、消泡剤MA−404(ポゾリス物産製)を有姿で重合体固形分に対して10質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。表5における重合体の添加量は、セメント質量に対する重合体固形分の質量%で表されている。
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2連で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
なお、0打フロー値及び15打フロー値は、数値が大きいほど、分散性能が優れている。
モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
表5の結果から、以下のことが分かった。
試験例2〜3で用いた本発明のポリアルキレングリコール鎖含有チオール重合体は、同一添加量(0.065%)では、試験例4で用いた比較重合体F−1より、15打フロー値が10mm以上大きくなった。また、比較重合体F−1の添加量を増やした試験結果(試験例5)から、比較重合体F−1を用いて15打フロー値を、試験例2〜3と同等の200mmにするには、添加量が0.0725%程度必要であることが分かる。つまり本発明の重合体は、比較重合体F−1に比較して10%少ない添加量(0.065/0.0725=90%)で同一のフロー値が得られるといえるため、セメント分散性が非常に高いことが分かった。
しかし、上述した加水分解性試験結果から明らかなように、上記(i)又は(ii)の特定構造を有さない重合体BPT−107は、経時的に加水分解しやすいのに対し、本発明の重合体(重合体BPT−127及びBPT−128)は耐加水分解性が著しく高いため、長期にわたってより安定して高い分散性能を発揮できるという点で、本発明の重合体が極めて優れた効果を有するといえる。
Claims (11)
- ポリアルキレングリコール鎖を有するチオール化合物であって、
該チオール化合物は、ポリアルキレングリコール鎖が活性水素を3個以上有する化合物の残基に結合し、かつ該ポリアルキレングリコール鎖の他末端の少なくとも1つが、カルボニル基を有する基を介してメルカプト基に結合した構造を有し、
該構造は、下記一般式(1);
該ポリアルキレングリコール鎖の、カルボニル基を有する基側の末端の少なくとも一単位が、炭素数3以上のオキシアルキレン基であるか、又は、該カルボニル基を有する基が、カルボニル基と該カルボニル基に結合する第三級以上の炭素原子とを有するものであり、
該カルボニル基を有する基は、−Y 2 −C(O)−、又は、−Y 2 −N(H)−C(O)−で表される基(Y 2 は、分子量が1000以下の、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。該カルボニル基を有する基中の−C(O)−を構成する炭素原子と、一般式(1)中の(AO) n で表されるポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接し、Y 2 と、一般式(1)中のSH基を構成する硫黄原子とが隣接する。但し、カルボニル基を有する基が、カルボニル基と該カルボニル基に結合する第三級以上の炭素原子とを有するものである場合、該カルボニル基を有する基は、−Y 2 −C(O)−で表され、Y 2 は、第三級以上の炭素原子を含む、分子量が1000以下の、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。)である
ことを特徴とするポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物。 - 前記一般式(1)中のnは、25〜1000の数である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物。 - 前記カルボニル基を有する基は、−Y 2 −C(O)−で表される基(Y 2 は、分子量が1000以下の、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。該カルボニル基を有する基中の−C(O)−を構成する炭素原子と、前記一般式(1)中の(AO) n で表されるポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接し、Y 2 と、一般式(1)中のSH基を構成する硫黄原子とが隣接する。)である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物を製造する方法であって、
該製造方法は、活性水素を3個以上有する化合物にアルキレンオキシドを付加してなる化合物と、カルボキシル基を有するチオール化合物とを脱水縮合させる工程を含む
ことを特徴とするポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物を用いて得られるポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体であって、
該重合体は、下記一般式(3);
該カルボニル基を有する基は、−Y 2 −C(O)−、又は、−Y 2 −N(H)−C(O)−で表される基(Y 2 は、分子量が1000以下の、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。該カルボニル基を有する基中の−C(O)−を構成する炭素原子と、一般式(3)中の(AO) n で表されるポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接し、Y 2 と、一般式(3)中の硫黄原子とが隣接する。)である
ことを特徴とするポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体。 - 前記ビニル系単量体成分は、不飽和カルボン酸系単量体を含む
ことを特徴とする請求項5に記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体。 - 前記一般式(3)中のnは、25〜1000の数である
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体。 - 前記カルボニル基を有する基は、−Y 2 −C(O)−で表される基(Y 2 は、分子量が1000以下の、炭素数1〜18のアルキレン基又は炭素数6〜11の芳香族基を表す。該カルボニル基を有する基中の−C(O)−を構成する炭素原子と、前記一般式(3)中の(AO) n で表されるポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接し、Y 2 と、一般式(3)中の硫黄原子とが隣接する。)である
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体。 - 請求項5〜8のいずれかに記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体を含む
ことを特徴とする分散剤。 - 請求項5〜8のいずれかに記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体を含む
ことを特徴とするセメント混和剤。 - 請求項5〜8のいずれかに記載のポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体を含む
ことを特徴とするセメント組成物。
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