JP2014088273A - 多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体、分散剤、セメント混和剤、及び、セメント組成物 - Google Patents

多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体、分散剤、セメント混和剤、及び、セメント組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】セメント組成物等における減水性や作業性等の性能を高いレベルで発揮することができ、分子構造がシンプルである共重合体を提供する。
【解決手段】不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、上記枝状部を3つ以上有し、すべての上記枝状部の末端部位が上記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、上記高分子鎖(A)における上記不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数が6以上であることを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体に関する。より詳しくは、分散剤、セメント混和剤等に好適に用いられる多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体に関する。
ポリアルキレングリコール鎖を含有する重合体(以下、ポリアルキレングリコール系重合体ともいう。)は、その鎖長や構成するアルキレンオキシドを適宜調整することによって親水性や疎水性、立体反発等の特性が付与され、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に添加されるセメント混和剤用途が検討されている。このようなセメント混和剤は、通常、減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を発揮させることを目的として使用される。減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、ポリアルキレングリコール鎖がその立体反発によりセメント粒子を分散させる分散基として作用することができるため、ポリアルキレングリコール鎖を含有するポリカルボン酸系減水剤が高い減水作用を発揮するものとして新たに提案され、最近では高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
従来のポリアルキレングリコール鎖を含有する重合体に関し、例えば、両末端又は片末端に二重結合を有するポリエーテルにチオカルボン酸を付加させた後、生成するチオエステル基を分解して得られる両末端又は片末端にメルカプト基を有するポリエーテル(例えば、特許文献1参照。)や、また、洗剤ビルダーに用いる生分解性水溶性重合体として、メルカプト基を有する化合物をポリエーテル化合物にエステル反応で導入した変性ポリエーテル化合物に対し、モノエチレン性不飽和単量体成分をブロック又はグラフト重合させて得られる重合体が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、ポリアルキレングリコール鎖と、該鎖の少なくとも一端に結合した不飽和単量体由来の構成単位とを含むポリマー単位を有する新規な重合体が、特にセメント混和剤として有用である旨が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。更に、活性水素を3個以上有する化合物の残基にポリアルキレングリコール鎖を有する重合鎖が結合した多分岐構造を有する重合体がセメント混和剤として有用である旨が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
特開平7−13141号公報 特開平7−109487号公報 特開2007−119736号公報 特開2010−65145号公報
上記のようにポリアルキレングリコール鎖を含有する重合体として種々の構造のものが開示されているが、未だ、昨今要望される極めて高い性能(セメント分散性(減水性)、スランプフロー)を充分に発揮できる程度には至っていない。セメントの分散性は、セメントを扱う現場での作業性やセメントの硬化後の強度に関係する極めて重要な要素であり、性能がより優れたセメント組成物を実現するセメント混和剤が求められている。
特に、分子構造及び製造方法がシンプルであり、優れた特性を発揮するセメント混和剤が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント組成物等における減水性や作業性等の性能を高いレベルで発揮することができ、分子構造がシンプルである共重合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、セメント分散性(減水性)等の性能に優れたセメント混和剤として使用できる重合体について種々検討したところ、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、上記枝状部を3つ以上有し、すべての上記枝状部の末端部位が上記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、上記高分子鎖(A)における上記不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数が6以上である構造を有する共重合体が、シンプルな構造にもかかわらずセメント分散性(減水性)やスランプフロー等の特性に優れ、セメント混和剤として好適に用いることができる重合体となることを見出した。
また、本発明者らは、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、上記枝状部を3つ以上有し、すべての上記枝状部の末端部位が上記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)との結合部位(X)が硫黄原子を有することを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が、シンプルな構造にもかかわらずセメント分散性(減水性)やスランプフロー等の特性に優れ、セメント混和剤として好適に用いることができる重合体となることを見出した。
すなわち、第一の本発明は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、上記枝状部を3つ以上有し、すべての上記枝状部の末端部位が上記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、上記高分子鎖(A)における上記不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数が6以上であることを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体である。
また、第二の本発明は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、上記枝状部を3つ以上有し、すべての上記枝状部の末端部位が上記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)との結合部位(X)が硫黄原子を有することを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体である。
以下、本明細書中において、単に「本発明」という場合には第一及び第二の本発明に共通する事項を意味するものとする。
以下、第一の本発明について説明し、その後に第二の本発明について説明する。
第二の本発明の説明においては第一の本発明と異なる技術的特徴について説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<第一の本発明>
第一の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、上記枝状部を3つ以上有し、すべての上記枝状部の末端部位が上記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、上記高分子鎖(A)における上記不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数が6以上であることを特徴とする。
<多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体>
まず、本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の構造について説明する。
本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、上記枝状部を3つ以上有し、すべての上記枝状部の末端部位が上記高分子鎖(A)からなる構造を有するものである。
本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系ブロック共重合体である。
ここでいう多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系ブロック共重合体とは、好ましくは、3つ以上の枝状部が、活性水素を有する化合物の残基(Z)を基点として、枝分かれした構造である。すなわち、活性水素を有する化合物の残基を基点として、そこから、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)、結合部位(X)を介して、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)が結合した構造である。
このような多分岐構造を有する本発明の重合体は、特にセメント分散性能に優れており、しかも新規な重合体であるために今後様々な分野に応用できる可能性を有するものである。
本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の一例として、下記一般式(1)の構造を有する共重合体が挙げられる。
Figure 2014088273
(式中、Zは、活性水素を3個以上有する化合物の残基を表す。(B)nは、同一又は異なって、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を表し、Bは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。Xは、同一又は異なって、有機残基を表す。Aは、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖を表す。nは、同一又は異なって、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。mは、3以上の数である。)
上記一般式(1)において、上記ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の隣に位置するXは結合部位(X)であり、Xを介して不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に結合している。
mは、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した枝状部の数を表し、3以上の数である。
本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記枝状部を3つ以上有する。
上記枝状部の数の好ましい下限値としては5である。好ましい上限値としては20であり、より好ましくは13であり、さらに好ましくは7である。
また、上記枝状部の数は、活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素数に等しいことが好ましい。すなわち、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素原子全てに上記枝状部が結合した構造を有することが好適である。これによって、更に優れた分散性能を発揮し得るセメント混和剤を与えることが可能となる。
ここで、例えば、上記枝状部の数が、上記活性水素を3個以上有する化合物中の活性水素数に等しい場合の構造を模式的に示すと、下記式(2)又は(3)のように表すことができる。
Figure 2014088273
上記式(2)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がグリセリン残基(多価アルコール残基、活性水素3個)であり、グリセリンが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と、結合部位(X)を介して不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)とが結合した構造を模式的に示したものである。
また上記式(3)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基、活性水素6個)であり、ソルビトールが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と、結合部位(X)を介して不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)とが結合した構造を模式的に示したものである。
本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体としては、その取り扱い性や、上記重合体をセメント混和剤用途に使用した場合のセメント組成物の保持性等を考慮すると、重量平均分子量(Mw)が100万以下であることが好適である。より好ましくは50万以下、さらに好ましくは30万以下、さらにより好ましくは20万以下、特に好ましくは15万以下、特により好ましくは10万以下、最も好ましくは5万以下である。また、セメント混和剤用途に用いる場合、ある程度セメント粒子に吸着した方が性能を発揮しやすく、Mwが大きいほど吸着力が大きくなるという観点から、Mwは1000以上であることが好ましい。より好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは1万以上であり、特に好ましくは2万以上、最も好ましくは、3万以上である。
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは25万以下、さらに好ましくは15万以下、さらにより好ましくは10万以下、特に好ましくは75000以下、最も好ましくは35000以下である。また、1000以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上であり、さらに好ましくは5000以上であり、特に好ましくは10000以上であり、最も好ましくは、15000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
以下、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)、結合部位(X)及び活性水素を3個以上有する化合物の残基(Z)について説明する。
<不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)>
本発明において、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)は、不飽和カルボン酸系単量体(a)(以下、単に「単量体(a)」ともいう。)が重合した構造を有する構成単位である。
また、上記不飽和カルボン酸系単量体単位は、単量体(a)に由来するのと同じ構造の構成単位となるのであれば、他の単量体に由来する構成単位を変性したものであってもよい。
単量体(a)としては、例えば、下記式(4):
Figure 2014088273
(式中、R、R、R、Rは、少なくとも一つが−COOMであり、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、−(CH)zCOOM(−(CH)zCOOMは、COOMまたはその他の−(CH)zCOOMと無水物を形成していてもよい)を表し、zは0〜2の整数を表す。M及びMは同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。)で示される化合物が好適である。
すなわち、単量体(a)は、C=C二重結合に結合した少なくとも一つのカルボキシル基又はその塩(−COOM)を有する、不飽和カルボン酸系単量体である。
なお、上記単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(4)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記一般式(4)において、M及びMで表される基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の一価金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価金属原子;アルミニウム、鉄等の三価金属原子が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。
上記一般式(4)で示される不飽和カルボン酸系単量体の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体、これらのジカルボン酸無水物及びこれらの塩(例えば、一価金属、二価金属、三価金属、第4級アンモニウムまたは有機アミンの塩)が挙げられる。
中でも、重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩が特に好ましい。
また、これらの単量体は2種以上併用してもよい。
第一の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体において、上記不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)における不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数は6以上である。
以下、不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数の値とは、高分子鎖(A)と高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した枝状部1つに含まれる、不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数を意味する。
上記平均導入モル数の好ましい下限値としては8であり、より好ましくは10である。好ましい上限値としては30であり、より好ましくは22であり、さらに好ましくは14である。
上記平均導入モル数を6以上とすることにより、上記共重合体に不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、上記平均導入モル数が50を超える場合には、共重合体全体における不飽和カルボン酸系単量体の導入量が多くなり、その結果セメントを分散させるポリアルキレングリコール系構成単位が少なくなりすぎるためにセメント分散性能が低下することになる。適切に不飽和カルボン酸系単量体単位とポリアルキレングリコール系構成単位の比率を設定する必要がある。
本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体において、結合部位(X)と結合していない高分子鎖(A)の末端は化学的に安定に結合し得る構造を有する部位であればその構造は特に限定されるものではない。好ましくは水素、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルケニル基である。また、重合溶媒や重合開始剤の分解物も末端に結合することもある。
<ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)>
ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)は、炭素数2〜18のアルキレンオキシドから構成される高分子鎖(ポリアルキレンオキシド)であればよい。以下、ポリアルキレングリコールをPAGともいう。
より好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキシドであり、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等を用いることもできる。
上記ポリアルキレングリコール系構成単位を構成するアルキレンオキシドとしては、本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体に求められる用途等に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、セメント混和剤成分の製造のために用いる場合には、セメント粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のアルキレンオキシド(オキシアルキレン基)が主体であることが好適である。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが主体であることであり、更に好ましくは、エチレンオキシドが主体であることである。
ここでいう「主体」とは、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)がポリアルキレングリコール鎖が2種以上のアルキレンオキシドにより構成されるときに、全アルキレンオキシドの存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンオキシド100モル%中のエチレンオキシドのモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
上記ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)が2種以上のアルキレンオキシドにより構成される場合は、2種以上のアルキレンオキシドがランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加したものであってもよい。
上記ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)としてはまた、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含む場合には、本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体にある程度の疎水性を付与することが可能となるため、上記共重合体をセメント混和剤に使用した場合には、セメント粒子に若干の構造(ネットワーク)をもたらし、セメント組成物の粘性やこわばり感を低減することができる。その一方で、炭素数3以上のアルキレンオキシドを導入し過ぎると、上記共重合体の疎水性が高くなり過ぎることから、かえってセメント粒子を分散させる性能が充分とはならないおそれがある。このため、全アルキレンオキシド100質量%に対する炭素数3以上のアルキレンオキシドの含有量は、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
なお、上記共重合体に求められる用途によっては、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含まない態様が好ましい場合もある。
ここで、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)は、結合部位(X)の構造によっては加水分解により切断されることがある。耐加水分解性の向上が必要な場合、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端に炭素数3以上のオキシアルキレン基を導入することが好ましい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基、アルキルグリシジルエーテル残基等が挙げられる。中でも、製造の容易さからオキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基の導入量としては、求められる耐加水分解性の程度によるが、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端に対して、導入量が50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは100モル%以上であり、さらに好ましくは150モル%以上であり、特に好ましくは200モル%以上である。
本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体において、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)は、1〜1000であることが好ましい。
オキシアルキレン基の平均付加モル数が1以上の数であると、上記共重合体にポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に基づく性能を充分に発揮させることが可能となる。
また、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1000を超える場合には、上記共重合体を製造するために使用する原料化合物の粘性が増大したり、反応性が充分とはならない等、作業性の点で好適なものとはならないおそれがある。
上記平均付加モル数の下限値としては、より好ましくは10、さらに好ましくは20であり、さらにより好ましくは50であり、特に好ましくは75であり、特により好ましくは80であり、最も好ましくは100である。上限値としては、より好ましくは800であり、さらに好ましくは700であり、さらにより好ましくは600であり、特に好ましくは500であり、特により好ましくは300であり、最も好ましくは200である。
なお、上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、高分子鎖(A)と高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した枝状部1つにおいて付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
<結合部位(X)>
第一の本発明に係る共重合体における結合部位(X)としては、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)とポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とを化学的に安定に結合し得る構造を有する部位であればその構造は特に限定されるものではない。
上記結合部位の好ましい構造としては、重合反応に用いられる連鎖移動剤となる構造に由来する有機残基が挙げられる。
結合部位(X)の例としては、(i)硫黄原子を含む結合部位、(ii)アゾ開始剤由来の結合部位、(iii)リン原子を含む残基由来の結合部位、(iv)その他の構造由来の結合部位等が挙げられる。
結合部位として複数箇所存在する有機残基の構造はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
(i)硫黄原子を含む結合部位
硫黄原子を含む結合部位としては、例えば、下記式(5):
Figure 2014088273
[式中、Rは有機残基であり、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾールなどの芳香族基、又は、メルカプトカルボン酸残基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基などで一部置換されていてもよい。)]で示される構造が好ましい。
上記硫黄原子を含む結合部位の中でも、特に下記式(6):
Figure 2014088273
[式中、Rはメルカプトカルボン酸残基であり、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖アルキレン基、フェニル基、アルキルフェニル基、ピリジニル基、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾールなどの芳香族基(ただし、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基などで一部置換されていてもよい。)]で示される構造が好ましい。
上記式(5)で示される構造のRはポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する部位であり、硫黄原子(S)は不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と結合する部位である。
上記式(6)で示される結合部位の一端の構造(式(6)の左側の結合)は、メルカプトカルボン酸のカルボキシル基とポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基との間で脱水エステル化反応を起すことによって得られる。
上記脱水エステル化反応により得られたチオールエステルを連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和モノカルボン酸系単量体(a)をブロック重合させることができ、その結果として上記式(6)に示す構造の結合部位となる。
メルカプトカルボン酸の例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、3―メルカプトイソ酪酸、11−メルカプトウンデカン酸等が挙げられる。これらの中でも3―メルカプトイソ酪酸、3−メルカプトプロピオン酸が好ましい。
(ii)アゾ開始剤由来の結合部位
アゾ開始剤由来の結合部位としては、アゾ基を含む重合開始剤(アゾ開始剤)に由来する部位であり、例えば、下記式(7)に示すようなアゾ開始剤に由来する構造が好ましい。
Figure 2014088273
[式中、Rは、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキレン基(上記アルキレン基は、アルキル基、アルケニル基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基などで一部置換されていてもよい。)、カルボニル基またはカルボキシル基であるか、あるいは、炭素数1〜20のアルキレン基(上記アルキレン基は、アルキル基、アルケニル基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基などで一部置換されていてもよい。)がカルボニル基またはカルボキシル基に結合した基であり、Rは、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基、カルボキシ置換(炭素数1〜10の)アルキル基、フェニル基または置換フェニル基であり、Rは、互いに独立して、シアノ基、アセトキシ基、カルバモイル基または(炭素数1〜10のアルコキシ)カルボニル基である。]で示される繰り返し単位を有するアゾ開始剤が挙げられる。
より好ましくは、下記式(8)で示されるアゾ開始剤が挙げられる。
Figure 2014088273
上記式(8)で示されるアゾ開始剤としては、その末端がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造であることが好ましい。
上記式(7)、(8)で示されるアゾ開始剤由来の結合部位としての有機残基Xの構造は、下記式(9)、(10)で示す構造となる。
Figure 2014088273
[式中、R、R、Rは式(7)におけるR、R、Rと同様である]
Figure 2014088273
式(10)におけるカルボニル基の炭素がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する側である。
(iii)リン原子を含む残基由来の結合部位
リン原子を含む結合部位としては、例えば、下記式(11):
Figure 2014088273
[式中、Yは有機残基を表す。Mは金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す]で示される構造が好ましい。
Yはポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)と結合する部位であり、Yと結合する次亜リン酸(塩)のリン原子は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と結合する部位である。
上記有機残基としては、炭素数2〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基や、炭素数6〜30の2価の芳香族基(フェニレン基、アルキルフェニレン基、及び、ピリジン、チオフェン、ピロール、フラン、チアゾール由来の2価の基等)等が挙げられ、例えば、水酸基、アミノ基、アセチルアミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等の置換基で一部置換されていてもよい基が好ましい。
これらの中でも、より好ましくは、炭素数2〜18の2価の有機残基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものであり、更に好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものである。
次亜リン酸塩は、次亜リン酸と、金属、アンモニア又は有機アミンのいずれかとによって形成される塩が好ましい。金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が好ましい。有機アミンとしては、炭素数1〜18のアルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム、カリウム、アンモニア、トリエタノールアミンによって形成される塩が好ましい。
(iv)その他の構造由来の結合部位
その他の構造由来の結合部位の具体例としては、以下のような連鎖移動剤由来の結合部位が挙げられる。これらのうち、硫黄原子を有するものは、上記(i)硫黄原子を含む結合部位にも含まれる。
例えば、ポリアルキレングリコールの末端の−OH基に、ハロゲン化亜鉛を用いて、チオ酢酸、チオ安息香酸などのチオカルボン酸を反応させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、−OH基を−SH基に変換した化合物;ポリアルキレングリコールとチオ酢酸との存在下、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)とトリフェニルホスフィンとを反応させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、ポリアルキレングリコールの末端の−OH基を−SH基に変換した化合物;ポリアルキレングリコールの末端の−OH基に、臭化アリルなどのハロゲン化アリルをSN2反応させてポリアルキレングリコールの末端をアリル化した化合物;ポリアルキレングリコールの末端にアリル基などの二重結合を有する化合物に、チオ酢酸、チオ安息香酸などのチオカルボン酸を付加させた後、アルカリ加水分解を行うことにより、−SH基に変換した化合物;
これらの化合物(連鎖移動剤)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
<活性水素を有する化合物の残基(Z)>
本明細書において、活性水素を有する化合物の残基とは、活性水素を有する化合物から活性水素を除いた構造を有する基を意味し、該活性水素とは、アルキレンオキシドが付加できる水素を意味する。このような活性水素を有する化合物の残基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
上記活性水素を有する化合物の残基としては、具体的には、例えば、多価アルコールの水酸基から活性水素を除いた構造を有する多価アルコール残基、多価アミンのアミノ基から活性水素を除いた構造を有する多価アミン残基、多価イミンのイミノ基から活性水素を除いた構造を有する多価イミン残基、多価アミド化合物のアミド基から活性水素を除いた構造を有する多価アミド残基等が好適である。中でも、多価アミン残基、多価アルコール残基、及び、多価イミン残基のうちポリアルキレンイミン残基が好ましい。すなわち、上記活性水素を3個以上有する化合物の残基は、多価アミン残基、ポリアルキレンイミン残基及び多価アルコール残基からなる群より選択される少なくとも1種の多価化合物残基であることが好適である。
なお、活性水素を有する化合物残基の構造としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
上記活性水素を有する化合物の残基の好ましい具体例のうち、多価アミン(ポリアミン)としては、1分子中に平均2個以上のアミノ基を有する化合物であればよく、例えば、メチルアミン等のアルキルアミン;アリルアミン等のアルキレンアミン;アニリン等の芳香族アミン;アンモニア等のモノアミン化合物の1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体等が好適である。このような化合物により、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が有する多価アミン残基が形成されることになる。
更に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の2価以上のアミン化合物や、それらの1種又は2種以上を重合して得られるポリアミンであってもよい。このようなポリアミンは、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
また上記ポリアルキレンイミンとしては、1分子中に平均3個以上のイミノ基を有する化合物であればよく、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン等の炭素数2〜8のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体等が好適である。このような化合物により、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が有するポリアルキレンイミン残基が形成されることになる。なお、ポリアルキレンイミンは重合により三次元に架橋され、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子を持つ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
これらの中でも、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が奏する性能の観点から、エチレンイミンを重合して得られるポリエチレンイミンがより好適である。
上記多価アミン及びポリアルキレンイミンの数平均分子量としては、100〜100000が好ましく、より好ましくは300〜50000、さらに好ましくは600〜10000であり、特に好ましくは800〜5000である。
上記多価アルコールとしては、1分子中に平均3個以上の水酸基を含有する化合物であればよいが、炭素、水素及び酸素の3つの元素から構成される化合物であることが好適である。具体的には、例えば、ポリグリシドール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、グルコースなどの糖類、グルシット等の糖アルコール類、グルコン酸などの糖酸類等が好適である。このような化合物により、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が有する多価アルコール残基が形成されることになる。
これらの中でも、工業的な生産効率の観点から、より好ましくは、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタンである。
<多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法>
次に、本発明における多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法の一例として、メルカプトカルボン酸に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合について以下に説明する。
本発明における多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、活性水素を3個以上有する化合物にポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を付加させた多分岐型のポリアルキレングリコールを準備し、上記高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基に対してメルカプトカルボン酸のカルボキシル基を反応させてエステル化反応を行う工程(エステル化反応工程)によりチオールエステルを得て、上記チオールエステルを連鎖移動剤として、ラジカル重合開始剤を用いて不飽和カルボン酸系単量体をブロック重合させる工程(ブロック重合工程)を行うことにより製造することができる。
このようなポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
<エステル化反応工程>
エステル化反応工程では、活性水素を3個以上有する化合物にポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)を付加させた後、上記高分子鎖(B)の末端のヒドロキシル基に対してメルカプトカルボン酸のカルボキシル基を反応させてエステル結合を生成し、下記式(12)で示すチオールエステルを得る。
以下では、下記構造のチオールエステルをPAGチオール化合物ともいう。
Figure 2014088273
[式中、Zは、活性水素を3個以上有する化合物の残基を表す。(B)nは、同一又は異なって、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖を表し、Bは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。Xは、メルカプトカルボン酸の残基を表す。nは、同一又は異なって、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜1000の数である。mは、3以上の数である。]
<ブロック重合工程>
上述したように、上記PAGチオール化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて不飽和カルボン酸系単量体成分をラジカル重合することにより、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
上記一般式(12)で表されるPAGチオール化合物を連鎖移動剤として用いて、重合体を製造する場合、PAGチオール化合物の硫黄原子(S)を介して不飽和カルボン酸系単量体成分が次々に付加して重合体部分が形成され、このようにして形成される重合体が主成分として生成することになる。
上記重合反応にはまた、通常の連鎖移動剤を併用してもよい。使用可能な連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。
上記連鎖移動剤としてはまた、疎水性連鎖移動剤を使用することもできる。疎水性連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適に使用される。
上記PAGチオール化合物以外に上記連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、適宜設定すればよいが、不飽和カルボン酸系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、さらに好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
単量体(a)の重合率を向上させるためには、単量体(a)のカルボキシル基の中和率を適切に設定することが重要である。単量体(a)の重合率向上のためにはカルボキシル基をできるだけ中和しない方が好ましい。しかしながら、カルボキシル基の中和率が低い場合、酸型のカルボキシル基とポリアルキレングリコール系構成単位の酸素原子が水素結合し、水不溶性の中間体を形成することがあり、その結果として単量体(a)の重合率が低下することがある。また、単量体(a)のカルボキシル基の中和率を上げすぎた場合、単量体(a)の重合性が低下するので、その結果として単量体(a)の重合率が低下する。
単量体(a)のカルボキシル基の中和率は好ましくは0〜50mol%、さらに好ましくは3〜40mol%、特に好ましくは5〜30mol%である。
上記重合反応は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶液重合は、回分式でも連続式でも又はそれらの組み合わせでも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、例えば、セメント混和剤用途のように水溶液として使用されることが多い用途に用いる場合には、水溶液重合法によって重合することが好適である。
上記溶液重合のうち、水溶液重合では、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが、重合後に不溶成分を除去する必要がないので好適である。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等の水溶性アゾ系開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、アゾアミジン化合物系開始剤が好適である。
この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤(還元剤)を併用することもできる。例えば、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせが可能であり、有機系還元剤としては、L−アスコルビン酸(塩)、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸(塩)、エリソルビン酸エステル等を好適に用いることができる。これらのラジカル重合開始剤や促進剤(還元剤)はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、併用する重合開始剤の総量を100モルとすると、好ましくは10モル以上、より好ましくは20モル以上、さらに好ましくは50モル以上であり、また、好ましくは1000モル以下、より好ましくは500モル以下、さらに好ましくは400モル以下である。
また低級アルコール類、芳香族若しくは脂肪族炭化水素類、エステル類又はケトン類を溶媒とする溶液重合や塊状重合では、ラジカル重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等のアゾ系開始剤等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、後述するようにアゾ系開始剤が好適である。なお、この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
上記ラジカル重合開始剤の使用量としては、PAGチオール化合物や不飽和カルボン酸系単量体成分の態様や量に応じて適宜設定すればよいが、ラジカル重合開始剤が重合に供する不飽和カルボン酸系単量体成分に対して少なすぎると、ラジカル濃度が低すぎて重合反応が遅くなるおそれがあり、また逆に多すぎると、ラジカル濃度が高すぎて、硫黄原子に起因する重合反応より不飽和カルボン酸系単量体成分からの重合反応が優先し、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の収率を高めることができないおそれがある。したがって、上記ラジカル重合開始剤の使用量は、不飽和カルボン酸系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上、さらに好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.2モル以上、特により好ましくは1モル以上、最も好ましくは5モル以上であり、また、好ましくは50モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下、さらにより好ましくは5モル以下、特に好ましくは2モル以下、最も好ましくは1モル以下である。
上記重合反応において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
また上記不飽和カルボン酸系単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されるものではなく、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法のいずれであってもよい。なお、ラジカル重合開始剤や連鎖移動剤は、反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また、目的に応じてこれらを組み合わせてもよいが、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記PAGチオール化合物の全量を反応容器に初期に一括投入しておき、そこに、不飽和カルボン酸系単量体成分を連続的に投入する方法により製造されることが好ましい。このような方法で製造すると、得られる重合体がセメント混和剤として用いたときにセメントの流動性をより向上させることができるものとなる。
上記重合反応においてはまた、所定の分子量の重合体を再現性よく得るために、重合反応を安定に進行させることが好適である。そのため、溶液重合では、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下(好ましくは0.01〜4ppm、より好ましくは0.01〜2ppm、さらに好ましくは0.01〜1ppm)の範囲に設定することが好ましい。なお、溶媒に不飽和カルボン酸系単量体成分を添加した後に窒素置換等を行う場合には、不飽和カルボン酸系単量体成分をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲内とすることが適当である。
上記溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、予め溶存酸素量を調整したものを用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。その際、窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
上記重合反応により得られた重合体は、水溶液状態で弱酸性以上(より好ましくはpH4以上、さらに好ましくはpH5以上、特に好ましくはpH6以上)のpH範囲に調整しておくことで取り扱いやすいものとすることができる。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、例えば、セメント混和剤用途に用いた場合に分散性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、さらに好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。このように重合系が酸性から中性となる好ましい重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物等の水溶性アゾ開始剤、過酸化水素、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせ等を用いることが好ましい。
上記の重合反応により得られる反応生成物には、ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の他、副生成物としての種々の重合体や未反応原料、原料に含まれる不純物を含むことがあるため、必要に応じて、個々の重合体を単離する工程に付してもよいが、通常、作業効率や製造コスト等の観点から、個々の重合体を単離することなく、各種用途に使用してもよい。
<硫黄原子を含む結合部位以外の結合部位を有する共重合体の製造方法>
ここまで、メルカプトカルボン酸に由来する硫黄原子を含む結合部位を有する共重合体を製造する場合の例について説明したが、結合部位としてその他の構造を有する共重合体を製造する方法について以下に説明する。
アゾ開始剤由来の結合部位を有する共重合体を製造する場合、出発物質として、アゾ開始剤の末端がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造を有するものを使用することができる。
アゾ開始剤の末端がポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とエステル結合により予め結合した構造を有するものは、例えば、アゾ基の両末端にカルボキシル基を有するアゾ開始剤(V−501など、和光純薬工業株式会社製)と、ポリアルキレングリコールとをエステル化することにより得ることもできる。エステル化の方法としては、加熱工程を行うとアゾ開始剤が分解するので、加熱工程を含まない製法が必要である。そのような製法としては、(1)アゾ開始剤に塩化チオニルを反応させて酸塩化物を合成した後、ポリアルキレングリコールを反応させてアゾ開始剤を得る方法;(2)アゾ開始剤とポリアルキレングリコールとを、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および必要に応じて4−ジメチルアミノピリジンを用いて、脱水縮合することによりアゾ開始剤を得る方法;などが挙げられる。
上記アゾ開始剤を使用すれば、アゾ基が熱で分解して、ラジカルが発生し、そこから重合が開始する。それゆえ、オキシアルキレン基からなるポリアルキレンオキシド部分の一端に不飽和カルボン酸系単量体が次々に付加して、本発明に係るポリアルキレングリコール系ブロック共重合体が形成される。
リン原子を含む残基由来の結合部位を有する共重合体を製造する場合、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)の末端酸素原子に炭素−炭素二重結合を有する有機残基が結合した構造を有する化合物Cに、次亜リン酸(塩)を付加させて、リン原子含有ポリアルキレングリコール系化合物を製造することが好ましい。
なお、上記化合物Cは、公知の方法で合成することができる。
上記化合物Cは、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)に、不飽和基を有する化合物を付加させる方法によって合成してもよい。付加の形態としてはエステル化、エーテル化、アミド化など、公知の方法を用いることができる。付加させる不飽和化合物は、アルキレンオキシドに付加できるものであれば良い。
上記化合物Cに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程においては、化合物Cが含有する不飽和結合1モルに対して、次亜リン酸(塩)を0.01〜100モルの割合で添加して反応させることが好ましい。上記化合物Cの反応率を高める観点からは、1モルの化合物Cに対して次亜リン酸(塩)をより好ましくは0.1モル以上、さらに好ましくは0.2モル以上、特に好ましくは0.5モル以上である。未反応の次亜リン酸(塩)を低減する観点からは、1モルの化合物Cに対して次亜リン酸(塩)をより好ましくは10モル以下、さらに好ましくは5モル以下、特に好ましくは2モル以下である。
上記化合物Cに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程は、0〜200℃の温度で行うことが好ましい。より好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは40〜120℃、さらにより好ましくは50〜100℃の温度で行うことである。
上記化合物Cに次亜リン酸(塩)を付加反応させる工程の後、得られたリン原子含有ポリアルキレングリコール系化合物を精製することが好ましい。精製工程は、反応後の溶液を乾燥して溶媒を除去した後、精製溶媒に懸濁してろ過を行うこと、及び、抽出のいずれか又は両方により行うことができる。
精製溶媒は適宜選べばよいが、例えばTHF、アセトニトリル、クロロホルム、イソプロピルアルコール等が好ましい。
抽出溶媒は適宜選べばよいが、高極性溶媒として水、メタノール、アセトニトリル、ジオキサンなどを用いて行うことが好ましい。低極性溶媒としてジエチルエーテル、シクロヘキサン、クロロホルム、メチレンクロライドなどを用いて行うことが好ましい。
上記化合物Cと次亜リン酸(塩)とを付加反応させる工程は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶媒に溶解した溶液状態で行うことができる。その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、水を溶媒として用いることが好ましい。
上記化合物Cと次亜リン酸(塩)とを付加反応させる工程を、溶媒に水を用いて行う場合には、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが、反応後に不溶成分を除去する必要がないので好適である。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;t−ブチルヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等の水溶性アゾ系開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、過硫酸系開始剤が好適である。
上記リン原子含有ポリアルキレングリコール系化合物は、連鎖移動剤としての機能を有するものであり、この化合物を連鎖移動剤として用いて不飽和カルボン酸系単量体をラジカル重合することで、本発明のポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる。
不飽和カルボン酸系単量体をラジカル重合させる工程は、PAGチオール化合物を連鎖移動剤として使用するブロック重合工程と同様にして行うことが出来るため、その詳細な説明は省略する。
本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、例えば、接着剤、シーリング剤、各種重合体への柔軟性付与成分、洗剤ビルダー等の種々の用途に好適に用いることができることに加え、セメントや石膏のような無機微粒子を含む組成物において、無機微粒子を分散させる分散剤としても好適に用いることができる。
このような本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を含む分散剤もまた、本発明の1つである。
中でも、本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上述したように極めて高度のセメント分散性能を発揮できることから、セメント混和剤用途に用いることが好適である。このように、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体を含むセメント混和剤もまた、本発明の1つである。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
本発明のセメント混和剤としては、高減水率領域においても流動性、保持性及び作業性をバランスよく高性能で発揮でき、優れた作業性を有することから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に使用することが可能であり、更に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
上記セメント混和剤としてはまた、他の公知のセメント添加剤と組み合わせて用いることもできる。中でも、消泡剤や、AE剤を併用することが特に好ましい。
<第二の本発明>
第二の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、上記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、上記枝状部を3つ以上有し、すべての上記枝状部の末端部位が上記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)との結合部位(X)が硫黄原子を有することを特徴とする。
以下、第二の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の技術的特徴のうち、上述した第一の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体の有する技術的特徴と異なる点について説明する。
第二の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体では、上記高分子鎖(A)における上記不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数は特に限定されるものではない。
上記平均導入モル数の好ましい下限値としては1であり、より好ましくは6であり、さらに好ましくは8であり、特に好ましくは10である。好ましい上限値としては50であり、より好ましくは35であり、さらに好ましくは20である。
第二の本発明に係る多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体では、上記高分子鎖(A)と上記高分子鎖(B)との結合部位(X)が硫黄原子を有する。
結合部位(X)が硫黄原子を有すると、その製造時に、硫黄原子の反応性に起因して硫黄原子を介して上記不飽和カルボン酸系単量体が次々に付加し、不飽和カルボン酸系単量体成分由来の構成単位を含む重合体部位を形成することになるため、製造に有利である。
本発明の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、上述の構成よりなり、セメント分散性(減水性)やスランプフロー等の性能に優れたセメント混和剤用途に用いることができるとともに、無機微粒子を分散させる分散剤としても好適に用いることができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例における各種測定は、以下のようにして行った。
<LCによるポリエチレングリコールの消費率測定>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:Waters社製 Atlantis dC18 ガードカラム+カラム(粒径5μm、内径4.6mm×250mm×2本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
試料液注入量:100μL(試料濃度1〜2質量%の溶離液溶液)
<GPCによる重合体の測定>
重合体の重量平均分子量、数平均分子量及びピークトップ分子量の測定は、以下の条件により行った。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(PAG、PAGチオール化合物は試料濃度0.4質量%の溶離液溶液)
(GPC解析条件)
得られたRIクロマトグラムにおいて、ポリマー溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ポリマーを検出・解析した。ただしモノマーやモノマー由来の不純物のピークがポリマーピークに一部重なって測定された場合、それらとポリマーの重なり部分の最凹部において垂直分割してポリマー部とモノマー部を分離し、ポリマー部のみの分子量・分子量分布を測定した。ポリマー部とそれ以外が完全に重なり分離できない場合はまとめて計算した。
またポリマーの収率の目安として、RI検出器によるピーク面積の比より、「ポリマー純分」を下記のようにして計算した。
ポリマー純分=(ポリマーピーク面積)/(ポリマーピーク面積+モノマーや不純物のピーク面積)
<キャピラリー電気泳動(CE)分析>
CE分析は、以下の条件により行った。
装置:ベックマンコールター MDQ
解析ソフト:32Karat
使用キャピラリー:シリカ素管、50cm EfectiveLength、75μmI.D、375μm O.D
溶離液:リン酸二水素ナトリウム二水和物43.68gとリン酸水素二ナトリウム十二水和物42.98gをイオン交換水313.34gに溶解させたもの
検出器:UV
電圧:20kV
キャピラリー温度:25℃
測定時間:60分
<製造例1:PAGチオール化合物(1)の製造>
(1)脱水エステル化反応工程
ジムロート冷却管付のディーン・スターク装置、SUS製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えたガラス製反応器内に、ソルビトールにエチレンオキシドを平均モル数450付加させた6分岐型のポリエチレングリコール(SB450、日本乳化剤社製)を1000.00部、3−メルカプトイソ酪酸(MiBA、東京化成社製)を40.18部、p−トルエンスルホン酸一水和物(PTS・1HO、和光純薬工業社製)20.80部、フェノチアジン(PTZ、和光純薬工業社製)0.52部、シクロへキサン(CyH)52.01部を仕込んだ。ディーン・スターク装置をシクロへキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。また、加温用オイルバスの温度は120±5℃とした。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロヘキサンを加え、62.0時間水を留去しながら加温還流し反応を行った。
(2)脱溶媒工程
反応終了後、固化しないように撹拌しながら60℃まで放冷した後、30%NaOH水溶液13.85部にイオン交換水991.91部を加えた水溶液を、速やかに反応器内に投入した。続いて徐々に約100℃まで加温し、シクロへキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で60分バブリングして残存シクロへキサンを除去し、PAGチオール化合物(1)の水溶液を得た。
得られた目的化合物のLC分析結果は、SB450の消費率が95.0%、SB450一分子に対する平均SH導入数が6.0個であった。
<実施例1:重合体(1)の製造>
単量体(a)の溶液として、メタクリル酸11.38部、30%水酸化ナトリウム水溶液1.76部にイオン交換水40.76部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液66.66部にイオン交換水44.44部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.3585部にイオン交換水29.64部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、60℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(1)の水溶液を得た。
不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ90.00%であった。
<実施例2:重合体(2)の製造>
単量体(a)の溶液として、メタクリル酸3.652部、30%水酸化ナトリウム水溶液0.566部にイオン交換水23.27部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液82.51部にイオン交換水55.01部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.5751部にイオン交換水29.43部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、60℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(2)の水溶液を得た。
不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ95.00%であった。
<実施例3:重合体(3)の製造>
単量体(a)の溶液として、メタクリル酸2.358部、30%水酸化ナトリウム水溶液0.365部にイオン交換水20.34部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液85.16部にイオン交換水56.78部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.2229部にイオン交換水29.78部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、70℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(3)の水溶液を得た。
不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ85.00%であった。
<実施例4:重合体(4)の製造>
単量体(a)の溶液として、メタクリル酸1.081部、30%水酸化ナトリウム水溶液0.167部にイオン交換水17.45部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液87.78部にイオン交換水58.52部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.1022部にイオン交換水29.90部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、70℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(4)の水溶液を得た。
不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ75.00%であった。
<実施例5:重合体(5)の製造>
単量体(a)の溶液として、メタクリル酸9.392部、30%水酸化ナトリウム水溶液1.455部にイオン交換水17.45部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液70.74部にイオン交換水47.16部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.5917部にイオン交換水29.41部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、60℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(5)の水溶液を得た。
不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ90.00%であった。
<実施例6:重合体(6)の製造>
単量体(a)の溶液として、メタクリル酸7.849部、30%水酸化ナトリウム水溶液1.216部にイオン交換水32.77部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液73.90部にイオン交換水49.27部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.4945部にイオン交換水29.51部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、60℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(6)の水溶液を得た。
不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、メタクリル酸の反応率はそれぞれ90.00%であった。
<実施例7:重合体(7)の製造>
単量体(a)の溶液として、アクリル酸9.155部にイオン交換水36.36部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液71.69部にイオン交換水47.79部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.6891部にイオン交換水29.31部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、60℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(7)の水溶液を得た。
不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、アクリル酸の反応率はそれぞれ90.00%であった。
<実施例8:重合体(8)の製造>
単量体(a)の溶液として、アクリル酸5.360部にイオン交換水27.51部を加えた。
製造例1で得たPAGチオール化合物(1)水溶液79.28部にイオン交換水52.85部を加えて、PAGチオール化合物水溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 V−50)0.4034部にイオン交換水29.60部を加えた溶液を調製した。
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入官及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水105.0部を仕込み、攪拌下に反応装置を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した。
続いて、上記単量体(a)の溶液と上記PAGチオール化合物水溶液を3.0時間、上記開始剤溶液を3.5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下完了後1時間、60℃に温度を維持した後、冷却して、重合体(8)の水溶液を得た。
不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数、重合条件、GPCによる重合体測定の結果を表1に示す。
また、GPC分析及びCE分析の結果により反応率を求めたところ、PAGチオール化合物の反応率は100.0%、アクリル酸の反応率はそれぞれ60.00%であった。
Figure 2014088273
<比較例1:比較重合体(1)の製造>
比較例1では、下記に示す方法で、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステルにメタクリル酸が重合した非分岐型の重合体を製造した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水1698部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃まで加温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数25個)1668部、メタクリル酸332部及びイオン交換水500部を混合し、さらに連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸16.7部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調製した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸アンモニウム水溶液184部をそれぞれ4時間で滴下し、滴下終了後更に10%過硫酸アンモニウム水溶液46部を1時間で滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。そして、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、比較重合体(1)の水溶液を得た。
GPCによる重合体測定の結果、Mw=23800、Mp=18200、Mn=12000であった。また、重合体純分は95.5%であった。
<コンクリート試験>
実施例1〜8及び比較例1で製造した重合体をセメント混和剤として用いて、以下のようにしてコンクリートのスランプフロー値を測定した。
(1)使用材料
セメント(C):太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント(密度:3.16g/cm
細骨材(S):大井川水系陸砂(密度:2.69g/cm、吸水率:1.3%)/千葉県君津山砂(密度:2.57g/cm、吸水率:2.9%)を重量比9:1で混合したもの
粗骨材(G):青梅産硬質砂岩砕石(表面密度:2.66g/cm、最大寸法:20mm)
水(W):上水道水
(2)単位量(kg/m
W/C=53.1
s/a=48.0
セメント=320.2
水=170.0
砂=878.8
石=942.1
(3)使用ミキサー:太平洋機工社製、TM55(55リットル強制練パン型ミキサー)、練り量30リットル
(4)試験方法
AE剤としてマイクロエア202(BASFポゾリス社製)と、消泡剤としてマイクロエア404(BASFポゾリス社製)を用いた。細骨材(S)とセメント(C)をミキサーに投入し、10秒間空練りを行い、次いで、セメント混和剤とAE剤と消泡剤込みの水(W)、粗骨材(G)を投入し、45、60又は90秒間混錬を行った後、コンクリートを排出した。
得られたコンクリートのスランプフロー値は、日本工業規格(JIS A1101−2005年、A1128−2005年、A6204−2006年)に準拠して測定した。なお、スランプフロー値は大きいほど、コンクリートの流動性が高いことを示す。スランプフロー値が同等であれば、添加量が少ない混和剤ほど、セメント分散性能が良好であり、減水性能が高いことを示す。
コンクリート試験の結果を表2及び3に示した。
Figure 2014088273
Figure 2014088273
高分子鎖(A)と高分子鎖(B)との結合部位に硫黄原子を有する実施例では、混錬時間を短くしても、結合部位を有さない比較例1に比べてフロー値変化率が大きく、優れた流動性を有することがわかった。
また、表2の結果から、不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数が6以上の重合体(1)では、フロー値変化率がより大きく、より優れた流動性を有することがわかった。
以上から、本発明の共重合体がセメント混和剤として好適に用いることができる重合体であることが明確になった。

Claims (10)

  1. 不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、
    前記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、
    前記高分子鎖(A)と前記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、前記枝状部を3つ以上有し、すべての前記枝状部の末端部位が前記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、
    前記高分子鎖(A)における前記不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数が6以上であることを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。
  2. 前記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、前記高分子鎖(A)と前記高分子鎖(B)との結合部位(X)が硫黄原子を有することを特徴とする請求項1に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。
  3. 請求項1又は2に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック重合体を含むことを特徴とする分散剤。
  4. 請求項1又は2に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック重合体を含むことを特徴とするセメント混和剤。
  5. 請求項4に記載のセメント混和剤、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。
  6. 不飽和カルボン酸系単量体単位による高分子鎖(A)と、ポリアルキレングリコール系構成単位による高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を必須とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体であって、
    前記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、
    前記高分子鎖(A)と前記高分子鎖(B)とが結合部位(X)を介して結合した構造を枝状部とし、前記枝状部を3つ以上有し、すべての前記枝状部の末端部位が前記高分子鎖(A)からなる多分岐ブロック共重合体であり、
    前記高分子鎖(A)と前記高分子鎖(B)との結合部位(X)が硫黄原子を有することを特徴とする多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。
  7. 前記多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体は、前記高分子鎖(A)における前記不飽和カルボン酸系単量体単位の平均導入モル数が6以上であることを特徴とする請求項6に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック共重合体。
  8. 請求項6又は7に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック重合体を含むことを特徴とする分散剤。
  9. 請求項6又は7に記載の多分岐ポリアルキレングリコール系ブロック重合体を含むことを特徴とするセメント混和剤。
  10. 請求項9に記載のセメント混和剤、セメント及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。

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